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【発明の名称】 溶融金属の連続鋳造方法および連続鋳造用浸漬ランス
【発明者】 【氏名】水上 英夫

【氏名】山中 章裕

【氏名】金井 達生

【要約】 【課題】低融点または低沸点の金属元素の適量を溶融金属中に添加し、鋳片内に均一に安定して分散させることが可能な連続鋳造方法および鋳造用浸漬ランスを提供する。

【構成】(1)タンディッシュ内または鋳型内の溶融金属に浸漬させた浸漬ランス内に、金属元素を含有するワイヤーまたはロッドを挿入して、溶融金属中に金属元素を添加する連続鋳造方法であって、浸漬ランス内部の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲または浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲に、ワイヤーまたはロッドを冷却するための冷却装置を配置し、金属元素を不活性ガスとともに溶融金属中に添加する溶融金属の連続鋳造方法、およびそのための鋳造用浸漬ランス。(2)前記(1)の方法において、溶融金属が溶鋼であり、ワイヤーまたはロッドがMg、Bi、Ca、Te、Pb、Mn、Ybなどのうちの1種以上の金属元素を含むものである連続鋳造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンディッシュ内の溶融金属に浸漬させた浸漬ランス内または鋳型内の溶融金属に浸漬させた浸漬ランス内に、該溶融金属に添加する金属元素を含有するワイヤーまたはロッドを挿入して、該溶融金属中に該金属元素を添加する連続鋳造方法であって、該浸漬ランス内部の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲の位置または該浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲の位置に、上記の挿入されるワイヤーまたはロッドを冷却するための冷却装置を配置するとともに、該浸漬ランス内部の下部先端近傍において、該金属元素の蒸気および/または粒子を発生させ、発生した該金属蒸気および/または該金属粒子を不活性ガスとともに該溶融金属中に添加することを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法。
【請求項2】
前記溶融金属が溶鋼であり、前記ワイヤーまたは前記ロッドがマグネシウム、ビスマス、カルシウム、テルル、鉛、マンガン、イッテリビウム、ネオジウム、ランタン、セリウムおよびタリウムから選ばれた1種以上の金属元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の溶融金属の連続鋳造方法。
【請求項3】
タンディッシュ内の溶融金属または鋳型内の溶融金属に浸漬され、該溶融金属中に添加する金属元素を含有したワイヤーまたはロッドを該溶融金属中に挿入し、該浸漬ランス内部の下部先端近傍において、該金属元素の蒸気および/または粒子を発生させ、該金属蒸気および/または該金属粒子を不活性ガスとともに該溶融金属中に添加するために用いる浸漬ランスであって、該浸漬ランス内部の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲の位置または該浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲の位置に、上記の挿入されるワイヤーまたはロッドを不活性ガスにより冷却するための冷却装置が配置されていることを特徴とする溶融金属の連続鋳造用浸漬ランス。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の連続鋳造の過程で、溶融金属中に金属元素を高い歩留りで添加し、鋳片内に均一に安定して分散させることができる連続鋳造方法および連続鋳造用浸漬ランスに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属中に金属元素を添加するには、塊状の金属元素を溶融金属の湯面に投入するか、あるいは金属元素単味で作製したワイヤー、それらの金属元素をアルミニウムや鋼などで被覆したワイヤー、それらの金属元素を含有する合金で作製したワイヤーにより添加する方法などが採用されている。しかしながら、これらの方法を用いてマグネシウム、ビスマス、カルシウム、希土類元素、テルル、鉛などのように蒸気圧が高く、融点の低い金属元素を精度良く添加することは困難である。その理由は、蒸気圧が高い金属元素が溶融金属中に添加されると、溶融金属の湯面近傍において、金属元素が気化して大気中に放散されるため、溶融金属中への添加量を制御することが難しく、添加歩留りも低下して、均一に添加することは困難だからである。
【0003】
また、金属元素が気化する際の体積膨張が大きいことから、溶融金属の湯面近傍で気化した場合には、溶融金属の飛散が激しく、操業上の安全の確保が困難である。さらに、添加金属元素の融点が低い場合には、添加前に溶融金属の輻射熱により軟化あるいは溶融し、所定量を添加することが困難となる。溶融金属よりも密度の小さい金属元素を添加する場合には、添加された金属が溶融金属の表層部のみに偏在し、溶融金属の内部にまで侵入しない。密度の大きな金属元素を添加する場合には、添加位置から溶融金属内部に沈降するのみで、溶融金属全体に均一に混合させることは困難である。
【0004】
近年、製品の機械的特性の向上のために、結晶粒の微細化および析出物の微細化が積極的に進められている。結晶粒および析出物の微細化には、微小な化合物の晶出および析出によるピン止め効果の利用あるいは不均質核生成の利用が有効である。このような効果を享受するためには、金属元素を適正位置にて、適正量だけ添加することが重要である。
【0005】
特許文献1には、取鍋を出てタンディッシュ内溶鋼浴面へ移動中の溶鋼流にビスマスを添加する方法が開示されている。しかし、ビスマスは沸点が低く、溶鋼流と接触すると爆発的に反応し、蒸気となって雰囲気中に飛散するため、添加歩留まりが低く、溶鋼中に均一に添加できず、したがって、連続鋳造鋳片内に均一に分散させることができない。
【0006】
特許文献2には、取鍋内の溶鋼にランスを用いてインジェクションにより鉛、ビスマス、または鉛およびビスマス含有物質を添加するとともに、取鍋底部のポーラスプラグからガスを噴出させて攪拌する方法が開示されている。同文献で開示された方法においても、融点あるいは沸点の低い鉛およびビスマスを添加する場合には、これらの金属が溶鋼と接触すると爆発的な反応が生じ、溶鋼中への金属の添加が不均一になるとともに歩留りが低く、金属が連続鋳造鋳片内に均一に分散しない。また、溶鋼中に添加した鉛やビスマスの反応生成物を任意に調整することは難しい。
【0007】
【特許文献1】特開2001−1116号公報(特許請求の範囲および段落[0013])
【特許文献2】特開平9−13119号公報(特許請求の範囲および段落[0004]および[0005])
【特許文献3】特開2004−249315号公報(特許請求の範囲および段落[0011]〜[0015])
【特許文献4】特開2005−169404号公報(特許請求の範囲および段落[0012]〜[0015])
【特許文献5】特開2005−219072号公報(特許請求の範囲および段落[0014]〜[0017])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、低融点または低沸点の金属元素を溶融金属中に添加するに際して、連続鋳造鋳片内に上記の金属元素の適正量を均一にしかも安定して分散させることが可能な連続鋳造方法および連続鋳造用浸漬ランスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、低融点または低沸点の金属元素の適正量を溶融金属中に添加し、連続鋳造鋳片内に均一にしかも安定して分散させることが可能な連続鋳造方法および連続鋳造用浸漬ランスを検討し、下記の知見を得た。
【0010】
すなわち、タンディッシュ内の溶融金属に浸漬された浸漬ランスは、ランス自体の熱伝導により温度が上昇し、その上端部の温度も上昇する。この上昇温度が金属ワイヤーまたは金属ロッドの融点付近まで達すると、浸漬ランスと金属ワイヤーまたは金属ロッドとが固着し、連続鋳造の開始時に金属ワイヤーまたは金属ロッドを浸漬ランス内に挿入できなくなり、操業が不可能となるおそれがある。このような固着を回避するためには、浸漬ランスの上端部の温度が添加金属元素の融点付近まで上昇するのを抑制する必要がある。
【0011】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)および(2)に示す溶融金属の連続鋳造ならびに(3)に示す溶融金属の連続鋳造用浸漬ランスにある。
【0012】
(1)タンディッシュ内の溶融金属に浸漬させた浸漬ランス内または鋳型内の溶融金属に浸漬させた浸漬ランス内に、該溶融金属に添加する金属元素を含有するワイヤーまたはロッドを挿入して、該溶融金属中に該金属元素を添加する連続鋳造方法であって、該浸漬ランス内部の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲の位置または該浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲の位置に、上記の挿入されるワイヤーまたはロッドを冷却するための冷却装置を配置するとともに、該浸漬ランス内部の下部先端近傍において、該金属元素の蒸気および/または粒子を発生させ、発生した該金属蒸気および/または該金属粒子を不活性ガスとともに該溶融金属中に添加することを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法。
【0013】
(2)前記溶融金属が溶鋼であり、前記ワイヤーまたは前記ロッドがマグネシウム、ビスマス、カルシウム、テルル、鉛、マンガン、イッテリビウム、ネオジウム、ランタン、セリウムおよびタリウムから選ばれた1種以上の金属元素を含むことを特徴とする前記(1)に記載の溶融金属の連続鋳造方法。
【0014】
(3)タンディッシュ内の溶融金属または鋳型内の溶融金属に浸漬され、該溶融金属中に添加する金属元素を含有したワイヤーまたはロッドを該溶融金属中に挿入し、該浸漬ランス内部の下部先端近傍において、該金属元素の蒸気および/または粒子を発生させ、該金属蒸気および/または該金属粒子を不活性ガスとともに該溶融金属中に添加するために用いる浸漬ランスであって、該浸漬ランス内部の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲の位置または該浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲の位置に、上記の挿入されるワイヤーまたはロッドを不活性ガスにより冷却するための冷却装置が配置されていることを特徴とする溶融金属の連続鋳造用浸漬ランス。
【0015】
本発明において、「金属蒸気および/または金属粒子」とは、金属蒸気および/または、蒸発が不十分なために液体または固体粒子として存在する金属粒子、もしくは金属蒸気が凝縮して形成される金属粒子を意味する。また、「金属」とは、純金属および金属の合金を含む。
【0016】
そして、「不活性ガス」とは、周期律表の18族元素のヘリウム、ネオン、アルゴンなどのガスを意味する。
【0017】
「冷却装置」としては、後述するとおり、金属元素を含有するワイヤーまたはロッドを包囲するように冷却パイプを設けて冷却パイプ内に冷却ガスを流すとともに冷却パイプと浸漬ランスとの間に断熱材を配置する方式、上記断熱材に替えて冷却パイプと浸漬ランスとの間に水冷ジャケットを配置する方式、上記断熱材に替えて冷却パイプと浸漬ランスとの間にガス冷却ジャケットを配置する方式などがある。
【発明の効果】
【0018】
本発明の溶融金属の連続鋳造方法によれば、低融点または低沸点の金属元素を溶融金属中に安定して歩留まり良く安定して添加でき、連続鋳造鋳片内に均一に分散させることができる。また、本発明の連続鋳造用浸漬ランスは、浸漬ランスとの固着を発生することなく、上記金属元素を含有する金属ワイヤーまたは金属ロッドを溶融金属中に挿入するための好適な浸漬ランスである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(1)本発明の基本的構成
蒸気圧が高い金属元素または融点が低い金属元素を溶融金属中に添加する場合、それらの添加金属は、溶融金属と接触するかまたは溶融金属からの輻射熱を受けて溶融するかまたは気化する。溶融金属中に添加する以前、あるいは添加した瞬間に金属元素が溶融または気化すると、これらの金属元素を溶融金属中に均一に歩留り良く添加することは困難である。また、連続鋳造鋳片内に金属元素を均一に添加するには、連続鋳造鋳型に近いタンディッシュ内、または連続鋳造鋳型内の溶融金属に添加する方法が最適である。
【0020】
本発明者らは、先に特許文献3、特許文献4および特許文献5において、金属元素の蒸気または金属元素の化合物をタンディッシュ内または連続鋳造鋳型内の溶融金属中に添加する方法を提案した。これらの方法により、金属元素または金属元素の化合物を溶融金属中に均一に、しかも歩留り良く添加することが可能になった。
【0021】
ところで、タンディッシュは、連続鋳造開始前にガスバーナーにより加熱される。浸漬ランスが耐火物の場合、この浸漬ランスも予熱しておく必要があり、鋳造操業ではタンディッシュの加熱前に浸漬ランスをタンディッシュに設置しておき、タンディッシュのガスバーナー加熱と同時に浸漬ランスも加熱する。浸漬ランスの上端部には連続鋳造開始と同時に金属蒸気または金属粒子をタンディッシュ内の溶融金属に添加するため、金属ワイヤーまたは金属ロッドが挿入された状態にある。
【0022】
浸漬ランスの上端部はガスバーナーの火炎が直接当たらないように防熱板や断熱材が取り付けられているが、浸漬ランス自体の熱伝導により上端部の温度が上昇する。この温度が金属ワイヤーまたは金属ロッドの融点に近くなると、浸漬ランスと金属ワイヤーまたは金属ロッドが固着するおそれがあり、その場合には、連続鋳造の開始時に金属ワイヤーまたは金属ロッドを浸漬ランス内に挿入できなくなり、鋳造操業に支障をきたす。このような固着の発生を防止するためには、浸漬ランスの上端部の温度が添加金属の融点付近まで上昇するのを抑制すればよい。
【0023】
図1は、溶融金属中に浸漬した浸漬ランス内に金属ワイヤーを挿入することにより添加金属元素の蒸気を発生させ、不活性ガスとともに溶融金属中に供給する連続鋳造方法を示す図である。
【0024】
取鍋3からタンディッシュ2に供給された溶鋼1は、浸漬ノズル6を経由して鋳型8内に注入され、下方に引き抜かれながら凝固シェル7を形成して鋳片となる。添加金属元素を含有する金属ワイヤー50が、タンディッシュ2内の溶鋼1中に浸漬された浸漬ランス4内に挿入され、添加金属元素は最終的に金属蒸気となってタンディッシュ2内の溶鋼1中に供給される。
【0025】
浸漬ランス4の上端部45は連結管44の一端に接続されており、連結管44の他端は金属ワイヤー供給機5に接続されている。浸漬ランス4の上部には金属ワイヤー50を冷却するための冷却パイプ41が挿入されており、冷却パイプ41の内部には冷却ガス43として不活性ガスが供給される。この冷却パイプ41は、金属ワイヤー50または金属ロッドを、浸漬ランス4の内壁に接触することなく、浸漬ランス4内に挿入する役割を有し、また、浸漬ランス4から金属ワイヤー50または金属ロッドへの伝熱を遮断するとともに、導入される冷却ガス43に適度の流速を与えて金属ワイヤー50または金属ロッドの冷却効果を高める効果を有する。
【0026】
この冷却パイプ41の外周には断熱材42が取り付けられている。金属ワイヤー供給機5にはワイヤーリール51が装填されており、ワイヤー繰出し速度制御装置53によりその繰出し速度を制御されたワイヤー繰出しロール52により、金属ワイヤー50が浸漬ランス4内に挿入される。金属ワイヤー供給機5にはキャリヤーガス54が導入され、金属ワイヤー50とともに浸漬ランス4内に供給される。
【0027】
上記の冷却パイプ内における金属ワイヤー50または金属ロッドの冷却後の温度は、ワイヤーまたはロッドが軟化または溶融しない温度範囲である必要があり、金属ワイヤーまたは金属ロッドの融点の2/3以下の温度範囲であることが好ましい。
【0028】
(2)金属ワイヤーまたは金属ロッドの冷却方式
(2)−1 冷却パイプおよび断熱材を配置する方式
金属元素を含有する金属ワイヤーまたはロッドを取り囲むように冷却パイプを設けて冷却パイプ内に冷却ガスを流すとともに冷却パイプと浸漬ランスとの間に断熱材を配置する方式である。図2は、上記の冷却方式を実施するための冷却装置を示す図であり、同図(a)は浸漬ランス内の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲に冷却パイプを配置し、冷却パイプと浸漬ランスとの間に断熱材を配置する方式、同図(b)は浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲に冷却パイプを配置する方式を示す。
【0029】
同図(a)の冷却方式では、金属元素を含有する金属ワイヤー50または金属ロッド57は、冷却パイプの冷却ガス入口46から導入された冷却ガス43および一部キャリヤーガスによっても冷却される。また、浸漬ランスから冷却パイプへの伝熱による温度上昇を防止して冷却パイプ内における冷却効果を高めるために、冷却パイプ41と浸漬ランス4との間には断熱材42が配置される。
【0030】
冷却パイプ41の材質としては、500℃程度の高温において耐食性および強度を有するものであればよく、例えばSUS304が好ましい。冷却パイプ41の内径は、冷却される金属ワイヤー50または金属ロッド57の外径よりも2mm以上大きいことが好ましい。冷却パイプ41の内径が金属ワイヤー50または金属ロッド57の外径よりも2mm以上大きくない場合には、挿入される金属ワイヤー50または金属ロッド57が振動などにより冷却パイプ41の内面に接触するおそれがある。
【0031】
また、冷却パイプ41を浸漬ランス4内に挿入する同図(a)の方式の場合は、冷却パイプ41の外径は、浸漬ランス4の内径よりも10mm以上小さくすることが好ましい。冷却パイプ41の外径と浸漬ランス4の内径との間隙が10mm以上確保できない場合には、冷却パイプ41と浸漬ランス4との間隙に設置する断熱材42の厚さが薄くなり、断熱効果が低下するからである。
【0032】
冷却パイプ41の浸漬ランス4内への挿入長さは、浸漬ランス4の上端部45から下方、すなわち浸漬ランス内部に向かって200mm以内とすることが好ましい。挿入長さが200mm以上になると、冷却パイプの周囲の温度が高くなるため冷却効果が低下するおそれがある。
【0033】
同図(b)に示すとおり、浸漬ランス4の内径が大きく、浸漬ランス4からの伝熱による金属ワイヤー50またはロッド57の温度上昇が大きくない場合は、冷却パイプ41を浸漬ランス4の内部にまで挿入して冷却を強化する必要がないので、冷却パイプ41は、浸漬ランスの上端部45から上方にわたる範囲に設置すればよい。
【0034】
断熱材42としては、アルミナを主成分として断熱性のよいカオウールなどが好ましい。これらを冷却パイプ4の外面と浸漬ランス4の内面との間隙を埋めるように、冷却パイプ41の外側に巻き付けるか、または、カオウールなどの断熱材を中空円筒状に加工したもの若しくはそれを円周方向に分割した部材を冷却パイプ41の外側に配置すればよい。
【0035】
冷却ガス43の流量は、3〜40リットル(L)/分の範囲とすることが好ましい。流量が3L/分未満では冷却効果が小さく、一方、流量が40L/分を超えて多くなると、冷却効果は増大するものの、タンディッシュ2内の溶鋼1の飛散が激しくなるおそれがある。
【0036】
(2)−2 冷却パイプおよび水冷ジャケットを配置する方式
図3は、冷却パイプおよび水冷ジャケットを配置する冷却方式を実施するための冷却装置を示す図であり、同図(a)は浸漬ランス内の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲に冷却パイプを配置し、浸漬ランスの上端部および冷却パイプと浸漬ランスとの間に水冷ジャケットを配置する方式、同図(b)は浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲に冷却パイプを配置し、浸漬ランスの上端部に水冷ジャケットを配置する方式を示す。
【0037】
同図(a)の冷却方式では、浸漬ランスの上端部45、および冷却パイプ41と浸漬ランス4との間が水冷ジャケット47により冷却されるので、前記図2(a)の冷却方式に比して、金属ワイヤー50またはロッド57の冷却効果がさらに増大する。
【0038】
冷却パイプ41の材質としては、高温において耐食性および強度を有する、例えばSUS304が好ましい。冷却パイプ41の内径は、冷却される金属ワイヤー50またはロッド57の外径よりも2mm以上大きいことが好ましい。また、冷却パイプ41を浸漬ランス4内に挿入する同図(a)の方式の場合は、冷却パイプ41の外径は、浸漬ランス4の内径よりも10mm以上小さくすることが好ましい。冷却パイプ41の外径と浸漬ランス4の内径との間隙が10mm以上確保できない場合には、水冷構造のジャケットを設置することが難しくなるからである。
【0039】
冷却パイプ41の浸漬ランス4内への挿入長さは、浸漬ランス4の上端部45から下方、すなわち浸漬ランス内部に向かって200mm以内とすることが好ましい。挿入長さが長すぎると、冷却パイプの周囲の温度が高くなって冷却効果が低下するおそれがある。
【0040】
同図(b)に示すとおり、浸漬ランス4の内径が大きい場合は、冷却パイプ41を浸漬ランス4の内部にまで挿入して冷却を強化する必要がないので、冷却パイプ41は、浸漬ランスの上端部45から上方にわたる範囲に設置すればよい。
【0041】
冷却ガス43の流量は、1〜40リットル(L)/分の範囲とすることが好ましい。流量が1L/分未満では冷却効果が小さく、一方、流量が40L/分を超えて多くなると、冷却効果は増大するものの、タンディッシュ2内の溶鋼1の飛散が激しくなるおそれがあるからである。
【0042】
水冷ジャケット47に流す冷却水49の流量は、1〜20リットル(L)/分の範囲とすることが好ましい。流量が1L/分未満では冷却効果が小さく、一方、流量を20L/分を超えて多くしても冷却効果が飽和するからである。
【0043】
(2)−3 冷却パイプおよびガス冷却ジャケットを配置する方式
図4は、冷却パイプおよびガス冷却ジャケットを配置する冷却方式を実施するための冷却装置を示す図であり、同図(a)は浸漬ランス内の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲に冷却パイプを配置し、浸漬ランスの上端部および冷却パイプと浸漬ランスとの間にガス冷却ジャケットを配置する方式、同図(b)は浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲に冷却パイプを配置し、浸漬ランスの上端部にガス冷却ジャケットを配置する方式を示す。
【0044】
同図(a)の冷却方式では、浸漬ランスの上端部45、および冷却パイプ41と浸漬ランス4との間がガス冷却ジャケット48により冷却される。本方式もまた、前記図2(a)の冷却方式に比して、金属ワイヤー50またはロッド57の冷却効果を高めることができる。
【0045】
前記(2)−1および(2)−3の方式の場合と同様に、冷却パイプ41の材質は、例えばSUS304とするのが好ましい。冷却パイプ41の内径は、冷却される金属ワイヤー50またはロッド57の外径よりも2mm以上大きいことが好ましく、また、冷却パイプ41を浸漬ランス4内に挿入する同図(a)の方式の場合は、冷却パイプ41の外径は、浸漬ランス4の内径よりも10mm以上小さくすることが好ましい。
【0046】
冷却パイプ41の浸漬ランス4内への挿入長さは、浸漬ランス4の上端部45から下方、すなわち浸漬ランス内部に向かって200mm以内とすることが好ましい。挿入長さが200mm以上になると、冷却パイプの周囲の温度が高くなるため冷却効果が低下するおそれがある。
【0047】
また、同図(b)に示すとおり、浸漬ランス4の内径が大きい場合は、冷却パイプ41を浸漬ランス4の内部にまで挿入して冷却を強化する必要がないので、冷却パイプ41は、浸漬ランスの上端部45から上方にわたる範囲に設置すればよい。
【0048】
冷却パイプ41の冷却ガス入口46から供給する冷却ガス43の流量は、1〜40リットル(L)/分の範囲とすることが好ましい。流量が1L/分未満では冷却効果が小さく、一方、流量が40L/分を超えて多くなると、冷却効果は増大するものの、タンディッシュ2内の溶鋼1の飛散が激しくなるおそれがあるからである。
【0049】
ガス冷却ジャケット48に流す冷却ガス43の流量は、10〜100L/分の範囲とすることが好ましい。流量が10L/分未満では冷却効果が小さく、一方、流量が100L/分を超えて多くても冷却効果が飽和するからである。
【実施例】
【0050】
本発明の連続鋳造方法および連続鋳造用浸漬ランスの効果を確認するため、以下に示す連続鋳造試験を実施して、その結果を評価した。
〔鋳造条件〕
溶融金属:低炭素鋼(質量%で、C:0.04%、Si:0.1%、Mn:1.3%、P:0.01%、S:0.001%、Ti:0.12%)、
溶融金属量:5トン(t)/分で連続鋳造、
添加金属:マグネシウム、ビスマス、ビスマスを5質量%含有するマグネシウム合金、カルシウム、またはテルルを、それぞれ単独に添加、
添加方法:金属ワイヤー(ワイヤー直径は3mmφ)、
添加量:溶鋼1t当たり各添加金属換算値で2g、
添加位置:タンディッシュ内、
冷却方式:前記(2)−1に記載の冷却パイプおよび断熱材を配置する方式、
冷却パイプ:内直径:8mm、外直径:12mm、浸漬ランス内への挿入長さ:200mm、材質:SUS304、
浸漬ランス:内直径:22mm、外直径:42mm、
断熱材:冷却パイプの外周面に、カオウールを、冷却パイプ外面と浸漬ランス内面との間隙に相当する厚さ分だけ被覆、
冷却ガス:アルゴンガス、5L/分、
キャリヤーガス:アルゴンガス5L/分
図1に示す方法により、浸漬ランス内に金属ワイヤーを挿入することにより添加金属元素の蒸気を発生させ、不活性ガスとともに溶融金属中に供給する連続鋳造試験を行った。
【0051】
溶鋼1をタンディッシュ2に供給し、さらに浸漬ノズル6を経て鋳型8内に注入して、鋳型8内で凝固シェル7を形成させた後、鋳型下方に引き抜いて、鋳片を製造した。タンディッシュ2内の溶鋼1中に浸漬した浸漬ランス4内に、添加金属元素を含有する金属ワイヤー50を挿入することにより、最終的に金属蒸気を発生させて、これを冷却ガス43およびキャリヤーガス54とともにタンディッシュ2内の溶鋼1中に供給した。
【0052】
浸漬ランス4の上部には金属ワイヤー50を冷却するための冷却パイプ41が挿入されており、冷却パイプ41の内部には、冷却ガス43としてアルゴンガスを供給した。この冷却パイプ41の外周には断熱材42としてカオウールを巻き付けた。金属ワイヤー供給機5内に装填したワイヤーリール51に巻かれた金属ワイヤー50を、ワイヤー繰出しロール52の速度を制御することにより、所望の繰出し速度でキャリヤーガス54および冷却ガス43とともに浸漬ランス4内に挿入した。
【0053】
一方、上記実施例の比較例として、冷却装置を有しない浸漬ランスを用いて、同様の連続鋳造試験を行った。
【0054】
本発明の浸漬ランスを用いて行った上記の本発明法による連続鋳造試験では、全試験操業にわたり、順調に浸漬ランス4内へ金属ワイヤー50を挿入することができた。その結果、金属元素であるマグネシウム、ビスマス、カルシウム、テルル、およびビスマスを含有するマグネシウム合金を、それぞれ単独で、溶融金属中に40〜70%の良好な歩留まりのもとに安定して添加でき、連続鋳造鋳片内の濃度変動も±10%以内に納まるように均一に分散させることができた。
【0055】
これに対して、冷却装置を有しない浸漬ランスを用いた比較例についての連続鋳造試験では、金属ワイヤー50の軟化による曲がりや浸漬ランスとの固着などが原因して、連続鋳造開始時において浸漬ランス内への金属ワイヤーの挿入が不可能な場合が全試験操業の10%程度発生し、所望の連続鋳造鋳片を製造することができなかった。ただし、金属元素を安定して添加できた場合には、上記のいずれの金属元素を添加した場合においても、冷却装置を有する浸漬ランスを用いた場合と同様の金属元素の添加歩留まりおよび鋳片内の濃度変動を示した。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の溶融金属の連続鋳造方法によれば、低融点または低沸点の金属元素を溶融金属中に安定して歩留まり良く安定して添加でき、連続鋳造鋳片内に均一に分散させることができる。また、本発明の連続鋳造用浸漬ランスは、浸漬ランスとの固着を発生することなく、上記金属元素を含有する金属ワイヤーまたは金属ロッドを溶融金属中に挿入するための好適な浸漬ランスである。
【0057】
したがって、本発明の連続鋳造方法および浸漬ランスは、鋳片内における添加金属元素の分布をはじめとする鋳片品質の均一化、さらには鋳造および加工製品の品質向上に広範に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】溶融金属中に浸漬した浸漬ランス内に金属ワイヤーを挿入することにより添加金属元素の蒸気を発生させ、不活性ガスとともに溶融金属中に供給する連続鋳造方法を示す図である。
【図2】冷却装置を示す図であり、同図(a)は浸漬ランス内の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲に冷却パイプを配置し、冷却パイプと浸漬ランスとの間に断熱材を配置する方式、同図(b)は浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲に冷却パイプを配置する方式を示す。
【図3】冷却装置を示す図であり、同図(a)は浸漬ランス内の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲に冷却パイプを配置し、浸漬ランスの上端部および冷却パイプと浸漬ランスとの間に水冷ジャケットを配置する方式、同図(b)は浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲に冷却パイプを配置し、浸漬ランスの上端部に水冷ジャケットを配置する方式を示す。
【図4】冷却装置を示す図であり、同図(a)は浸漬ランス内の上部位置から浸漬ランスの上端を突き抜けて上方にわたる範囲に冷却パイプを配置し、浸漬ランスの上端部および冷却パイプと浸漬ランスとの間にガス冷却ジャケットを配置する方式、同図(b)は浸漬ランスの上端から上方にわたる範囲に冷却パイプを配置し、浸漬ランスの上端部にガス冷却ジャケットを配置する方式を示す。
【符号の説明】
【0059】
1:溶鋼、 2:タンディッシュ、 3:取鍋、 4:浸漬ランス、
41:冷却パイプ、 42:断熱材、 43:冷却ガス、 44:連結管、
45:浸漬ランスの上端部、 46:冷却パイプの冷却ガス入口、
47:水冷ジャケット、 48:ガス冷却ジャケット、 49:冷却水、
5:金属ワイヤー供給機、 50:金属ワイヤー、 51:ワイヤーリール、
52:ワイヤー繰出しロール、 53:ワイヤー繰出し速度制御装置、
54:キャリヤーガス、 55:圧力計、 56:流量制御弁、 57:金属ロッド、
6:浸漬ノズル、 7:凝固シェル、 8:連続鋳造鋳型
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【代理人】 【識別番号】100103481
【弁理士】
【氏名又は名称】森 道雄


【公開番号】 特開2008−18453(P2008−18453A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−192311(P2006−192311)