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【発明の名称】 中心偏析の少ないスラブ鋼の連続鋳造方法
【発明者】 【氏名】山本 裕基

【氏名】中田 等

【要約】 【課題】凝固速度に対して支配的な具体的操業条件に基づいて、中心偏析を少なくできるスラブ鋼の連続鋳造方法を提供することにある。

【構成】C含有量C[wt%]を0.08〜0.55とし、Si含有量Si[wt%]を0.02〜0.60とし、Mn含有量Mn[wt%]を0.3〜1.5とするスラブ鋼の連続鋳造を、以下のような方法で行う。即ち、鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を280≦D≦310とする。鋳造速度Vc[m/min]を1.10≦Vc≦1.30とする。比水量Wt[L/kgSteel]を0.5≦Wt≦1.5とする。前記鋳型内に注湯される溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路に沿って観念するメニスカス距離M[m]が28〜37である区間としての第1区間Int1におけるロール圧下勾配GRD[mm/m]を0.5〜1.20とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C含有量C[wt%]を0.08〜0.55とし、Si含有量Si[wt%]を0.02〜0.60とし、Mn含有量Mn[wt%]を0.3〜1.5とするスラブ鋼の連続鋳造方法において、
鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を280≦D≦310とし、
鋳造速度Vc[m/min]を1.10≦Vc≦1.30とし、
比水量Wt[L/kgSteel]を0.5≦Wt≦1.5とし、
前記鋳型内に注湯される溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路に沿って観念するメニスカス距離M[m]が28〜37である区間としての第1区間Int1におけるロール圧下勾配GRD[mm/m]を0.5〜1.2とする、
ことを特徴とするスラブ鋼の連続鋳造方法。
【請求項2】
前記メニスカス距離M[m]が23〜28である区間としての第2区間Int2におけるロール圧下勾配GRD[mm/m]を0.1〜1.2とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のスラブ鋼の連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ鋼の連続鋳造方法に係り、より詳しくは、スラブ鋼の中心偏析を少なくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、特許文献1は、鋳片厚み中心部の計算固相率が所定値となる時点から完全凝固する時点に至るまで鋳片に対して軽圧下する技術を開示する。
【0003】
【特許文献1】特開2001−259810号公報(請求項3、段落番号0013、0036、0037)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に開示される方法では、鋳片内部の固相率に応じて圧下条件を設定するものであるが故、当該鋳片内部の固相率を十分に精度よく把握する必要がある。この固相率は、実際の連続鋳造工程にて計測することが極めて困難であるから、一般的には凝固伝熱計算により求められている。(上記特許文献1中、「“計算”固相率」という記載からも理解されよう。)
【0005】
この連続鋳造工程における凝固伝熱計算を精度よく実行するためには、少なくとも、鋼種の高温域における物性データ(例えば、凝固潜熱/熱伝導度/比熱など)及び外部からの抜熱条件(鋳型内部での抜熱/2次冷却帯におけるスプレー又はミスト冷却による熱伝達係数/ロール冷却による熱伝達係数など)などの計算条件を精度良くに把握する必要がある。
上記の計算条件のうち特にその計算結果に大きく影響を与えるものとして、(1)(物性データ)凝固潜熱と、(2)(外部からの抜熱条件)2次冷却帯における熱伝達係数/ロール冷却による熱伝達係数と、が挙げられる。
【0006】
前者(1)の凝固潜熱は、一般的に約55〜65cal/gの値が採用されているが、多くの元素を含む鋼の凝固潜熱を精確に求めるのは極めて困難である。
【0007】
後者(2)の2次冷却帯における熱伝達係数は、一般的に、鋼材を所定のスプレー流量で冷却させたときの温度変化を実験的に測定してみて、その測定結果に基づいて推定している。
しかし、当該2次冷却帯におけるスプレー/ミスト冷却の熱伝達係数は多種のパラメータが連関する複雑な関数として表されることが報告されている(三塚ら:鉄と鋼、69(1983)、262/三塚:鉄と鋼、91(2005)、1を参照)。当該パラメータは例えば、スプレー流量/水滴のサイズ及び運動量/エアーの量及び圧力/鋳片の表面温度などのことである。
そして上記熱伝達係数は、これらのパラメータが適宜に決定されたとしても測定条件によって結局は大きくバラついているのが現状である。
加えて、上記の実験では、(a)鋳片の上下面における冷却能の差異の、鋳片の移動に伴う変化や、(b)浸漬ノズルの詰まりによる影響、(c)ガイドロール間の溜り水による影響、(d)低温ロールからの冷却による影響、(e)鋳片の酸化具合(スケールの付着厚み)による影響、など実機において発生し得る種々の影響を見積もることが当然できない。
【0008】
上述(1)(2)の如く、凝固伝熱計算の計算条件が不確定な要素を数多く含んでいる限り、個々の鋼種/鋳造条件に応じて鋳片内部の固相率を精度よく予測することは現状では極めて困難である。
参考として、凝固伝熱計算の計算結果の一例を図7に示す。本図は、前述した三塚らの文献に記載された予測式を用い、上記凝固潜熱を55又は65cal/gとして計算してみたものである。本図において、実線は当該凝固潜熱を65cal/gとして計算したものであり、破線は55cal/gとして計算したものである。本図から判る通り、前記凝固潜熱を略主観的に決定している現状では、結果として、当該固相率とメニスカス距離との関係に、例えば数mオーダにまで及ぶ大きなズレが生じてしまうのである。また、前述した三塚らの予測式が全ての鋳造条件に適合するとは考え難く、何れの予測式を採用するかによっても、同様に当該固相率とメニスカス距離との関係に大きなズレが生じることが容易に推測される。
【0009】
従って、上記の特許文献1に開示される方法では、その圧下条件の設定基準たる固相率すら精度よく予測できないのであるから、中心偏析の低減効果が本当に奏されるかは確率の問題である。事実、中心偏析の低減効果には大きなバラツキのあることが判明しており、鋼種成分や操業条件などが変動しても良好な鋳片を鋳造できるということは極めて困難とされている。
【0010】
なお、上記の特許文献1には、鋳型内溶鋼湯面から20〜32mの範囲に軽圧下帯が設けられている点が記載されているが、この記載は、とりあえず軽圧下帯を設けたという事実を表現しているに過ぎず、何ら、技術的に有用な情報を新規に公開したことにはならない(段落番号0034参照)。
【0011】
本発明は係る諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、凝固速度に対して支配的な具体的操業条件に基づいて、中心偏析を少なくできるスラブ鋼の連続鋳造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0013】
本発明の第1の観点によれば、C含有量C[wt%]を0.08〜0.55とし、Si含有量Si[wt%]を0.02〜0.60とし、Mn含有量Mn[wt%]を0.3〜1.5とするスラブ鋼の連続鋳造は、以下のような方法で、行われる。
・鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を280≦D≦310とする。
・鋳造速度Vc[m/min]を1.10≦Vc≦1.30とする。
・比水量Wt[L/kgSteel]を0.5≦Wt≦1.5とする。
・前記鋳型内に注湯される溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路に沿って観念するメニスカス距離M[m]が28〜37である区間としての第1区間Int1におけるロール圧下勾配GRD[mm/m]を0.5〜1.2とする。
【0014】
これによれば、スラブ鋼の中心偏析を抑制できる。
【0015】
また、上記のスラブ鋼の連続鋳造において、好ましくは、前記メニスカス距離M[m]が23〜28である区間としての第2区間Int2におけるロール圧下勾配GRD[mm/m]を0.1〜1.2とすると良い。これによれば、スラブ鋼の中心偏析を極めて効果的に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(用語の定義:ロール圧下勾配)
先ず、本明細書中において用いる「ロール圧下勾配」を以下の如く定義する。図1は、ロール圧下勾配の定義を説明するための模式図である。
即ち、鋳造経路に沿って複数並設されるロール対のうち、任意のロール対と、該ロール対に対して前記鋳造経路の下流側に隣り合うように配設されるロール対と、の間のロール圧下勾配GRD1-2は、前者ロール対のロールギャップG1[mm]と、後者ロール対のロールギャップG2[mm]と、両ロール対のロールピッチL1-2と、に基づいて下記式により求められるものとする。
GRD1-2=(G1−G2)/L1-2
なお、ロールギャップG[mm]とは、鋳片を挟んで一対で設けられる両ロールの面間最短距離[mm]のことである。
【0017】
(用語の定義:メニスカス距離)
次に、本明細書中において用いる「メニスカス距離M[m]」の定義に関して説明する。本明細書中において「メニスカス距離M[m]」とは、注湯された溶鋼を冷却して所定の形状の凝固シェルを形成するための鋳型内に収容されている溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路に沿って観念する距離[m]とする。
【0018】
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0019】
先ず、本実施形態に係るスラブ鋼の連続鋳造方法に用いられる連続鋳造機100について、図2を参照しつつ概説する。図2は、本発明の第1実施形態に係る連続鋳造機の概略図である。
【0020】
本図に示す如く本実施形態において前記の連続鋳造機100は、注湯される溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型1と、当該鋳型1へ溶鋼を所定流量で注湯するために設けられる図略のタンディッシュと、鋳型1の直下から鋳造経路に沿って複数で並設されるロール対2・2・・・と、を備えている。本実施形態において前記の鋳造経路は、その上流側から順に、略鉛直方向に延びる垂直領域と、この垂直領域に接続され、円弧状に延びる円弧領域と、更にその下流側に設けられ、水平方向に延びる水平領域と、前記の円弧領域及び水平領域とを滑らかなに接続するための矯正領域と、から構成されるようになっている。
【0021】
また、前記のロール対2・2・・・の夫々は、鋳造対象としてのスラブ鋼を、両広面でもって挟持する一対のロール2a・2aから構成されている。この一対のロール2a・2aのロールギャップGは適宜の手段により調節可能に構成されている。
【0022】
また、前記の垂直領域には、鋳型1内で形成され、該鋳型1から引き抜かれる凝固シェルに対して所定の流量で冷却水を噴霧する冷却スプレー4・4・・・が適宜に設けられている。一般に、前記の鋳型1が1次冷却帯と称されるのに対して、この意味で、この垂直領域は2次冷却帯と称されている。
【0023】
鋳型1から引き抜かれ、鋳造経路に沿って搬送される凝固シェルは、自然放熱や、上記冷却スプレー4・4・・・などにより更に冷却されて収縮するようになっている。従って、上記のロール対2・2・・・のロールギャップGの夫々は、一般的に、鋳造経路の下流側へ進むに連れて緩やかに狭くなるように調節されている。換言すれば、前記のロール圧下勾配GRDは、原則として、鋳造経路の全域に亘って、常に、ゼロ以上となるように設定されている。
【0024】
次に、上記の連続鋳造機100の作動について概説する。
【0025】
1.スラブ鋼の連続鋳造を開始する前に予め図略のダミーバーを前記の連続鋳造機100内に適宜に挿入しておく。
2.前述した図略のタンディッシュから鋳型1へ所定の流量で溶鋼を注湯する。
3.鋳型1内に所定量の溶鋼が注湯されたら、前記のダミーバーを鋳造経路の下流側へ所定の速度で引き抜く。
4.所定のメニスカス距離において上記ダミーバーを適宜の手段により回収し、もって、スラブ鋼は、連続的に鋳造され始める。
【0026】
本実施形態においてスラブ鋼を鋳造する速度としての鋳造速度Vc[m/min]は、1.10≦Vc≦1.30としている。
また、前記の鋳型1の上端における鋳型厚D[mm]は、280≦D≦310としている。
また、上記の2次冷却帯に設けられている複数の冷却スプレー4・4・・・によって噴霧される冷却水の量としての所謂比水量Wt[L/kgSteel]は、0.5≦Wt≦1.5としている。
【0027】
次に、本実施形態において連続鋳造の対象たるスラブ鋼の主要な成分(主要元素)について詳細に説明する。
即ち、このスラブ鋼のC含有量C[wt%]は、0.08〜0.55とする。以下、簡単に表記する。
・Si[wt%]:0.02〜0.60
・Mn[wt%]:0.3〜1.5
これらの3成分(これらの3成分の偏析具合)は、スラブ鋼を例えば最終製品板厚20mm以上の所謂厚板鋼板として使用する場合、その品質(例えばUT欠陥)に対して特に影響を及ぼすものとされている。
【0028】
なお、参考のために、本スラブ鋼の他の成分(添加元素)を以下に簡単に例示する。
・Cu[wt%]:0〜0.50
・Al[wt%]:0〜0.08
・Ni[wt%]:0〜1.0
・Cr[wt%]:0〜1.0
・Mo[wt%]:0〜0.60
・V[wt%]:0〜0.10
・Nb[wt%]:0〜0.05
・Ti[wt%]:0〜0.10
・B[wt%]:0〜0.002
・Ca[wt%]:0〜0.002
【0029】
更に、参考のために、本スラブ鋼が一般的に含有してしまう他の成分(不純物元素)についても以下に紹介する。
・P[wt%]:≦0.03
・S[wt%]:≦0.015
【0030】
次に、鋳造経路に沿って複数で並設される前記のロール対2・2・・・の夫々のロールギャップGを適宜に設定することにより調整される前記のロール圧下勾配GRDについて、図3を参照しつつ、詳細に説明する。
【0031】
即ち、図3において斜線領域で示す如く本実施形態においては、前記のメニスカス距離M[m]が28〜37である区間としての第1区間Int1における該ロール圧下勾配GRD[mm/m]は、0.5〜1.2としている。なお、この第1区間Int1における該ロール圧下勾配GRD[mm/m]は、この数値範囲内であれば、一定であっても変動するものであっても何れでもよい。
【0032】
次に、本実施形態における前記ロール圧下勾配GRD[mm/m]の設定の仕方について、図5を参照しつつ、詳細に説明する。図5は、ロール圧下勾配の一設定方法を例示する図である。
【0033】
ここでは、本図に示す如く前記複数のロール対2・2・・・が、所定対毎にロールスタンドに回転自在に支持されている場合における前記ロール圧下勾配GRD[mm/m]の設定方法について説明する。なお、この場合、一のロールスタンドに支持されている複数のロール2a・2a・・・のロールアライメントは可及的に均一であることが好ましい。
【0034】
説明の都合上、本図において上流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も下流側のロール対2をロール対2iと称し、同じく下流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・を、ロール対2i+1、2i+2、・・・、2i+j-1、2i+jと称する。そして、この下流側のロールスタンドに支持されているロール対2・2・・・(2i+1〜2i+j)の対の数をn対とする。つまり、(i+j)-(i+1)+1=nとする。
同様に、説明の都合上、上記夫々のロール対2・2・・・(2iや2i+jなど)のメニスカス距離Mは、各ロール対2・2・・・の符号に付される添え字を伴って表記することとする。例えば、上記のロール対2iのメニスカス距離Mはメニスカス距離Miと表記し、ロール対2i+jのメニスカス距離Mはメニスカス距離Mi+jと表記することとする。
【0035】
以下、ロール圧下勾配GRDの設定方法を、本図に示す如くSTEP1とSTEP2に分けて説明する。一例として、メニスカス距離M[m]がMi〜Mi+jである区間のロール圧下勾配GRD[mm/m]を設定してみる。なお、上流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も下流側のもの(ロール対2i)がメニスカス距離Mi[m]に配置され、下流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も下流側のもの(ロール対2i+j)がメニスカス距離Mi+j[m]に配置されている。
【0036】
<STEP1:(1)〜(3)>
(1) メニスカス距離Mi[m]に配置されているロール対2iのロールギャップGiを測定する。
例:Gi[mm]=290
(2) メニスカス距離Mi+j[m]に配置されているロール対2i+jと、前記のロール対2iと、の間の距離(Mi+j−Mi)[m]を測定する。
例:Mi+j−Mi[m]=1.5
(3) 下記式に示す如く、前記のロール対2i+jのロールギャップGi+jを求める。そして、鋳片を挟むように一対で設けられる前記のロールスタンドのうち少なくとも一方を適宜の手段により移動操作することにより、求められたロールギャップGi+jを前記のロール対2i+jに対して適用する。
Gi+j=Gi−GRD×(Mi+j−Mi)
例:GRD[mm]=0.6、Gi+j[mm]=290−0.6×1.5=289.1
【0037】
<STEP2:(4)〜(5)>
(4) メニスカス距離Mi+j[m]に配置されているロール対2i+jと、下流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も上流側のロール対2i+1と、の間の距離(Mi+j−Mi+1)[m]を求める。
例:(Mi+j−Mi+1)[m]=1.2
(5) 下記式に示す如く、前記のロール対2i+1に対して適用すべきロールギャップGi+1を求める。そして、鋳片を挟むように一対で設けられる前記のロールスタンドのうち少なくとも一方を同様に適宜の手段により移動操作することにより、求められたロールギャップGi+1を前記のロール対2i+1に対して適用する。
Gi+1=Gi+j+GRD×(Mi+j−Mi+1)
例:Gi+1[m]=289.1+0.6×1.2=289.8
【0038】
以下、本実施形態に係るスラブ鋼の連続鋳造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
【0039】
先ず、各試験における技術的効果の評価の方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図6は、長手方向に対して垂直に切断されたスラブ鋼の斜視図である。
【0040】
本図において破線で示す如く、一般的に鋳片の長手方向に垂直な断面には、所謂濃化溶鋼が凝固することで残る偏析痕が観測される。そして、スラブ鋼の該偏析痕は、鋳片厚み方向略中央において広面に平行に現れる1本の第1偏析痕と、この第1偏析痕の両端部と鋳片隅部とを結ぶように斜めに現れる4本の第2偏析痕と、から構成される。本評価は、上記の第1偏析痕に沿って、C・Si・Mnの偏析具合を調査するものである。
【0041】
具体的には、以下の通りである。
即ち、第1に、鋳片を長手方向に対して垂直に切断する。
第2に、該切断面に現れた前記の第1偏析痕に沿って、複数の小サンプルを10mm間隔で採取する。より具体的には、該切断面に対して垂直にドリル(φ5mm)をあてがい、鋳片を深さ20mm程度に穿孔する。
第3に、第2の穿孔により採取した小サンプルとしての切粉のC含有量C[wt%]を燃焼赤外線吸収法により測定する。
第4に、一の鋳片から採取された各小サンプルのうち最もC含有量C[wt%]の高い小サンプルの該C含有量C[wt%](Cmax[wt%])を記録する。
第5に、本評価の対象たる鋳片の鋳造に対応する取鍋チャージのC含有量C[wt%]であって、タンディッシュ内で鋳造中に別途測定しておいたC含有量C[wt%](Co[wt%])と、上記第4のCmax[wt%]と、を比較して、これらの比Cmax/Coを算出して記録する。
第6に、当該比Cmax/Coが1.2以下だった試験を「◎(中心偏析極少)」と、同じく1.3以下だった試験を「○(中心偏析少)」と、同じく1.4以上だった試験を「×(中心偏析顕著)」と、評価した。
なお、下記表1に示す如くSi及びMnの偏析に関しても同様に評価した。即ち、下記表1中、Simax/Sio及びMnmax/Mnoの列が夫々の偏析評価に対応している。
【0042】
以上に各試験における技術的効果の評価の方法を説明した。次に、各試験の試験条件とその試験結果を下記表1に示す。
【0043】
【表1】


【0044】
なお、各試験の試験条件であって上記表1に記載のない試験条件については以下の通りである。
<ロールピッチ>:鋳造経路に沿って複数で並設される前記のロール対2・2・・・の該並設間隔としてのロールピッチは、300mmとした。
<ロール径>:前記のロール対2・2・・・を構成する各ロール2a・2aの外径は、280mmとした。
<特記ない鋳造経路におけるロール圧下勾配>:上記の第1区間Int1以外の区間におけるロール圧下勾配GRD[mm/m]は、特記ない限り、0〜0.25とした。
【0045】
以上説明したように上記第1実施形態において、C含有量C[wt%]を0.08〜0.55とし、Si含有量Si[wt%]を0.02〜0.60とし、Mn含有量Mn[wt%]を0.3〜1.5とするスラブ鋼の連続鋳造は、以下のような方法で、行われる。
・鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を280≦D≦310とする。
・鋳造速度Vc[m/min]を1.10≦Vc≦1.30とする。
・比水量Wt[L/kgSteel]を0.5≦Wt≦1.5とする。
・前記鋳型内に注湯される溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路に沿って観念するメニスカス距離M[m]が28〜37である区間としての第1区間Int1におけるロール圧下勾配GRD[mm/m]を0.5〜1.2とする。
【0046】
これによれば、スラブ鋼の中心偏析を抑制できる(上記表1参照)。
【0047】
また、別の観点から言えば、上記第1実施形態に係るスラブ鋼の連続鋳造方法は、従来技術と比較して以下のような優れた効果を発揮できる。
即ち、上記の連続鋳造は、計算誤差や操業バラツキに起因して精確には求め得ない中心固相率は基準とせず、凝固速度に対して支配的な具体的操業条件(具体的には、鋳型厚D・鋳造速度Vc・比水量Wt・メニスカス距離Mとロール圧下勾配GRDとの具体的関係)に基づいて実施される。
従って、中心固相率を計算するための高価な機材の導入や高度な計算技術、計算に長けた人員の確保を不要とできるし、現存の如何なる連続鋳造機においても極めて容易にその実施をできる。しかも、技術的効果の再現性(効果の現出安定性)も極めて高い。
【0048】
更に、別の観点から言えば、上記第1実施形態に係るスラブ鋼の連続鋳造方法は、以下のような優れた効果を発揮できる。
即ち、スラブ鋼を母材として圧延により製造される鋼板の中で、中心偏析に起因する欠陥が問題となるのは、所謂圧下比が10以上であって最終製品厚が20mm以上である、造船又は建築、橋梁用の鋼板である。
上記欠陥のうち代表的なものは、超音波探傷試験においてエコーとして検出される内部欠陥としての所謂UT欠陥である。このUT欠陥は、その程度によっては溶接時の開孔欠陥を招いたり、腐食の優先的な進行を促進させてしまう(「腐食の優先的な進行」とは具体的には、「偏析のない部位と比較して、偏析がある部位(UT欠陥がある部位)の所謂腐食速度を大きくする」ことを意味する。)。
従って、上記超音波探傷試験において検出されるUT欠陥に対して所定の合格基準が設けられており、具体的にはJIS-G-0801の合格基準が設けられている。
そして、本願発明の発明者らによる他の試験研究によれば、前述した比Cmax/Co・比Simax/Sio・比Mnmax/Mnoを1.3以下に(より確実には1.2以下に)抑えれば、前記のUT欠陥に係る合格基準を満たせることが判っている。
要するに、上記第1実施形態に係るスラブ鋼の連続鋳造方法によれば、上記各比(比Cmax/Co・比Simax/Sio・比Mnmax/Mno)を1.3以下に抑えられるので、UT欠陥の合格基準を満たすことができる。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、上記の第1実施形態と共通する説明については割愛する。
【0050】
上記の第1実施形態においては、前記第1区間Int1(メニスカス距離M[m]=28〜37)におけるロール圧下勾配GRD[mm/m]を0.5〜1.2と設定した。
これに加えて、図4において斜線領域で示す如く本実施形態においては、メニスカス距離M[m]が23〜28である区間としての第2区間Int2におけるロール圧下勾配GRD[mm/m]を0.1〜1.2としている。なお、この第2区間Int2における該ロール圧下勾配GRD[mm/m]は、この数値範囲内であれば、一定であっても変動するものであっても何れでもよい。
【0051】
以下、本実施形態に係るスラブ鋼の連続鋳造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。各試験の試験条件と試験結果を下記表2に示す。
【0052】
【表2】


【0053】
以上説明したように上記第2実施形態においては、上記第1実施形態に係るスラブ鋼の連続鋳造方法において、前記メニスカス距離M[m]が23〜28である区間としての第2区間Int2におけるロール圧下勾配GRD[mm/m]を0.1〜1.2とする。
【0054】
これによれば、スラブ鋼の中心偏析を極めて効果的に抑制できる(上記表2参照)。
【0055】
また、別の観点から言えば、上記第2実施形態に係るスラブ鋼の連続鋳造方法によれば、上記各比(比Cmax/Co・比Simax/Sio・比Mnmax/Mno)を1.2以下に抑えられるので、UT欠陥の合格基準を一層確実に満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ロール圧下勾配の定義を説明するための模式図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る連続鋳造機の概略図。
【図3】本発明の第1実施形態に係るロール圧下勾配の説明図。
【図4】本発明の第2実施形態に係るロール圧下勾配の説明図。
【図5】ロール圧下勾配の一設定方法を例示する図。
【図6】長手方向に対して垂直に切断されたスラブ鋼の斜視図。
【図7】中心固相率の算出困難性に関する説明図。
【符号の説明】
【0057】
M メニスカス距離
GRD ロール圧下勾配
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年7月11日(2006.7.11)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之

【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠


【公開番号】 特開2008−18439(P2008−18439A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−190471(P2006−190471)