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金属鋳物処理方法、処理された金属鋳物及び金属鋳物処理装置 - 特開2008−12556 | j-tokkyo
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【発明の名称】 金属鋳物処理方法、処理された金属鋳物及び金属鋳物処理装置
【発明者】 【氏名】早坂 敏明

【要約】 【課題】金属鋳物処理方法において、金属鋳物に形成された鋳巣を抑制することである。

【構成】金属鋳物を熱間等方加圧する熱間等方加圧工程を有する金属鋳物処理方法であって、熱間等方加圧工程(S12)中および/または熱間等方加圧工程(S12)後において、金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させる。そして、溶融塩と金属鋳物とを、0.04m/sec以上所定の速度以下で相対的に移動させることが好ましい。金属鋳物には、アルミニウム合金鋳物、マグネシウム合金鋳物またはチタン合金鋳物が用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鋳物を熱間等方加圧する熱間等方加圧工程を有する金属鋳物処理方法であって、
熱間等方加圧工程中および/または熱間等方加圧工程後において、
金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させることを特徴とする金属鋳物処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属鋳物処理方法であって、
溶融塩と金属鋳物とを、0.04m/sec以上所定の速度以下で相対的に移動させることを特徴とする金属鋳物処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の金属鋳物処理方法であって、
金属鋳物を振動させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする金属鋳物処理方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の金属鋳物処理方法であって、
金属鋳物を回転させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする金属鋳物処理方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の金属鋳物処理方法であって、
溶融塩を攪拌させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする金属鋳物処理方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1に記載の金属鋳物処理方法であって、
金属鋳物は、アルミニウム合金鋳物、マグネシウム合金鋳物またはチタン合金鋳物であることを特徴とする金属鋳物処理方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1に記載の金属鋳物処理方法であって、
金属鋳物は、サスペンション部品用鋳物であることを特徴とする金属鋳物処理方法。
【請求項8】
金属鋳物を熱間等方加圧する熱間等方加圧工程を有する金属鋳物処理方法により処理された金属鋳物であって、
熱間等方加圧工程中および/または熱間等方加圧工程後において、
金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させることを特徴とする処理された金属鋳物。
【請求項9】
請求項8に記載の処理された金属鋳物であって、
溶融塩と金属鋳物とを、0.04m/sec以上所定の速度以下で相対的に移動させることを特徴とする処理された金属鋳物。
【請求項10】
請求項8または9に記載の処理された金属鋳物であって、
金属鋳物を振動させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする処理された金属鋳物。
【請求項11】
請求項8または9に記載の処理された金属鋳物であって、
金属鋳物を回転させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする処理された金属鋳物。
【請求項12】
請求項8または9に記載の処理された金属鋳物であって、
溶融塩を攪拌させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする処理された金属鋳物。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか1に記載の処理された金属鋳物であって、
金属鋳物は、アルミニウム合金鋳物、マグネシウム合金鋳物またはチタン合金鋳物であることを特徴とする処理された金属鋳物。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか1に記載の処理された金属鋳物であって、
金属鋳物は、サスペンション部品用鋳物であることを特徴とする処理された金属鋳物。
【請求項15】
金属鋳物を熱間等方加圧して処理する金属鋳物処理装置であって、
金属鋳物が浸漬される溶融塩を溜めた容器と、
溶融塩を溜めた容器の中で、金属鋳物と溶融塩とを相対的に移動させる相対移動手段と、
を有することを特徴とする金属鋳物処理装置。
【請求項16】
請求項15に記載の金属鋳物処理装置であって、
相対移動手段は、溶融塩を溜めた容器の中で、金属鋳物を振動させる振動装置であることを特徴とする金属鋳物処理装置。
【請求項17】
請求項15に記載の金属鋳物処理装置であって、
相対移動手段は、溶融塩を溜めた容器の中で、金属鋳物を回転させる回転装置であることを特徴とする金属鋳物処理装置。
【請求項18】
請求項15に記載の金属鋳物処理装置であって、
相対移動手段は、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩を攪拌させる攪拌装置であることを特徴とする金属鋳物処理装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属鋳物処理方法、処理された金属鋳物及び金属鋳物処理装置に係り、特に、金属鋳物を熱間等方加圧する熱間等方加圧工程を有する金属鋳物処理方法、処理された金属鋳物及び金属鋳物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、特に、自動車用部品には、アルミニウム合金等の鋳造品である金属鋳物が使用されている。金属鋳物は、アルミニウム合金等の金属溶湯を砂型等に鋳込んで鋳造される。ここで、金属鋳物には、金属溶湯の凝固収縮等により鋳巣が形成される場合がある。金属鋳物に鋳巣が形成されると、金属鋳物に割れ等が発生する場合や金属鋳物の機械的強度が低下する場合がある。そのため、金属鋳物を不活性ガスや溶融塩等を圧力媒体として熱間等方加圧して、金属鋳物に形成される鋳巣を抑制することが行われている。
【0003】
特許文献1には、アルミニウム合金鋳物等を、融点が190℃〜290℃の溶融塩を圧力媒体等としてHIP(Hot Isostatic Press:熱間静水圧プレス)処理をすることにより、鋳物内部における鋳巣の低減等を行うアルミニウム合金鋳物等の溶融塩媒体によるHIP処理方法が示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−82162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属鋳物には、鋳物内部における鋳巣である閉口した鋳巣だけでなく、鋳物表面である鋳肌面に開口した鋳巣が形成される場合がある。金属鋳物の鋳肌面に開口した鋳巣がある場合には、開口した鋳巣が疲労破壊の起点となりやすいため、金属鋳物における耐疲労特性が低下等する可能性がある。
【0006】
図12は、金属鋳物における開口した鋳巣の例を示す写真である。このような金属鋳物に形成された開口した鋳巣は、上記HIP処理等で金属鋳物に圧力を付与しても消滅または低減されない場合がある。開口した鋳巣の場合、鋳巣の内圧がHIP処理により付与される圧力と等しくなるからである。
【0007】
そこで、本発明の目的は、金属鋳物に形成された鋳巣を抑制する金属鋳物処理方法、処理された金属鋳物及び金属鋳物処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る金属鋳物処理方法は、金属鋳物を熱間等方加圧する熱間等方加圧工程を有する金属鋳物処理方法であって、熱間等方加圧工程中および/または熱間等方加圧工程後において、金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る金属鋳物処理方法は、溶融塩と金属鋳物とを、0.04m/sec以上所定の速度以下で相対的に移動させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る金属鋳物処理方法は、金属鋳物を振動させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る金属鋳物処理方法は、金属鋳物を回転させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る金属鋳物処理方法は、溶融塩を攪拌させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る金属鋳物処理方法において、金属鋳物は、アルミニウム合金鋳物、マグネシウム合金鋳物またはチタン合金鋳物であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る金属鋳物処理方法において、金属鋳物は、サスペンション部品用鋳物であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る処理された金属鋳物は、金属鋳物を熱間等方加圧する熱間等方加圧工程を有する金属鋳物処理方法により処理された金属鋳物であって、熱間等方加圧工程中および/または熱間等方加圧工程後において、金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る処理された金属鋳物は、溶融塩と金属鋳物とを、0.04m/sec以上所定の速度以下で相対的に移動させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る処理された金属鋳物は、金属鋳物を振動させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る処理された金属鋳物は、金属鋳物を回転させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る処理された金属鋳物は、溶融塩を攪拌させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る処理された金属鋳物において、金属鋳物は、アルミニウム合金鋳物、マグネシウム合金鋳物またはチタン合金鋳物であることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る処理された金属鋳物において、金属鋳物は、サスペンション部品用鋳物であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る金属鋳物処理装置は、金属鋳物を熱間等方加圧して処理する金属鋳物処理装置であって、金属鋳物が浸漬される溶融塩を溜めた容器と、溶融塩を溜めた容器の中で、金属鋳物と溶融塩とを相対的に移動させる相対移動手段とを有することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る金属鋳物処理装置において、相対移動手段は、溶融塩を溜めた容器の中で、金属鋳物を振動させる振動装置であることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る金属鋳物処理装置において、相対移動手段は、溶融塩を溜めた容器の中で、金属鋳物を回転させる回転装置であることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る金属鋳物処理装置において、相対移動手段は、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩を攪拌させる攪拌装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
上記のように本発明に係る金属鋳物処理方法、処理された金属鋳物及び金属鋳物処理装置によれば、金属鋳物に形成された鋳巣を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。図1は、金属鋳物処理方法の処理工程を示すフローチャートである。金属鋳物処理方法の処理工程は、鋳造工程(S10)と、熱間等方加圧工程(S12)とを備えている。
【0028】
鋳造工程(S10)は、金属材料を溶融させた金属溶湯を鋳造して金属鋳物を製造する工程である。金属材料には、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、マグネシウム(Mg)、マグネシウム合金、チタン(Ti)、チタン合金等の金属材料が用いられる。勿論、他の条件次第では、金属材料は上記材料に限定されることはなく、他の金属材料を用いてもよい。
【0029】
金属材料における鋳造には、一般的に用いられている鋳造法により鋳造することができる。例えば、金属材料における鋳造には、金属溶湯を砂型に鋳込んで鋳造する砂型鋳造法や、金属溶湯を金型に鋳込んで鋳造する低圧鋳造法等の金型鋳造法等を用いることができる。勿論、金属材料における鋳造は、上記鋳造法に限定されることはない。
【0030】
熱間等方加圧工程(S12)は、鋳造工程(S10)で製造された金属鋳物を熱間等方加圧する工程である。金属鋳物には、上述したように、金属溶湯の凝固収縮等により閉口した鋳巣と開口した鋳巣とが形成される。そのため、金属鋳物を圧力媒体で熱間等方加圧することにより閉口した鋳巣を圧着等して、金属鋳物に形成された閉口した鋳巣を抑制し、低減することができる。
【0031】
金属鋳物を熱間等方加圧するための圧力媒体には、溶融塩またはガス等を使用することができる。溶融塩には、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の炭酸塩や、硝酸ナトリウムや硝酸カリウム等の硝酸塩等を使用することができる。また、溶融塩の溶融温度を低下させるために2種類以上の塩、例えば、硝酸塩を混合した混合塩等を用いてもよい。勿論、他の条件次第では、溶融塩は、上記材料に限定されることはない。
【0032】
また、圧力媒体用のガスには、アルゴンガスやヘリウムガス等の不活性ガスや窒素ガス等を用いることができる。勿論、圧力媒体用のガスは、上記ガスに限定されることはない。
【0033】
熱間等方加圧における圧力は、50MPa以上100MPa以下とすることが好ましい。上記圧力範囲で金属鋳物を熱間等方加圧することにより、鋳巣を圧着等して閉口した鋳巣を抑制することができるからである。勿論、他の条件次第では、熱間等方加圧における圧力は、上記圧力範囲に限定されることはない。また、熱間等方加圧における加圧時間は、例えば、200秒間とすることができる。勿論、熱間等方加圧における加圧時間は、200秒間に限定されることはない。
【0034】
熱間等方加圧における温度は、金属鋳物に形成された閉口した鋳巣を圧着等できるように金属鋳物を軟化させる温度とすることが好ましい。熱間等方加圧における温度は、例えば、金属鋳物に使用される金属材料の固相線温度より低く、固相線温度近傍の温度とすることができる。熱間等方加圧における温度を固相線温度より低い温度とするのは、金属鋳物が溶融する場合があるからである。勿論、他の条件次第では、熱間等方加圧における温度は、上記温度範囲に限定されることはない。
【0035】
金属鋳物に使用される金属材料に、例えば、アルミニウム合金であるJIS AC2B合金(Al−6.0Si−3.0Cu,不純物としてFeを0.7%程度含む)やJIS AC4CH合金(Al−7.0Si−0.3Mg,不純物としてFeを0.1%程度含む)を用いる場合には、JIS AC2B合金の熱間等方加圧温度は、480℃以上520℃以下とすることが好ましく、JIS AC4CH合金の熱間等方加圧温度は、515℃以上555℃以下とすることが好ましい。また、JIS AC2B合金の熱間等方加圧温度は、495℃以上505℃以下とすることが更に好ましく、JIS AC4CH合金の熱間等方加圧温度は、530℃以上540℃以下とすることが更に好ましい。
【0036】
熱間等方加圧するための装置には、熱間静水圧プレス装置であるHIP装置等を用いることができる。勿論、他の条件次第では、熱間等方加圧するための装置は、HIP装置等に限定されることはない。
【0037】
熱間等方加圧工程中(S12)および/または熱間等方加圧工程後(S12)において、金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させることにより、金属鋳物の表面が研削される。金属鋳物の表面を研削することにより、金属鋳物の表面である鋳肌面に形成された開口した鋳巣を抑えることができる。なお、金属鋳物の表面は、機械的または化学的に研削されて、開口した鋳巣が除去される。
【0038】
まず、熱間等方加圧工程(S12)中に、金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させて、金属鋳物の表面を研削する場合について説明する。
【0039】
溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる温度は、上述した金属鋳物を熱間等方加圧する温度と略同じである。金属鋳物を軟化させることで、金属鋳物の表面を研削することができるからである。また、熱間等方加圧工程(S12)中に、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる場合には、熱間等方加圧の圧力媒体は、不活性ガス等ではなく溶融塩が用いられる。
【0040】
溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる場合には、例えば、金属鋳物を振動、回転または揺動等させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させることができる。また、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩を攪拌させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させてもよい。勿論、他の条件次第では、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる方法は、上記方法に限定されることはない。
【0041】
溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを、0.04m/sec以上所定の速度以下で相対的に移動させることが好ましい。そして、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを、0.06m/sec以上所定の速度以下で相対的に移動させることが更に好ましい。なお、金属鋳物を回転させて、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる場合には、上記速度は周速度である。
【0042】
溶融塩と金属鋳物とを、0.04m/sec以上の速度で相対的に移動させるのは、溶融塩と金属鋳物とを、0.04m/secより小さい速度で相対的に移動させると、金属鋳物の表面を研削する速度が遅くなり、開口した鋳巣を除去するための時間が長くなるからである。また、溶融塩と金属鋳物とを所定の速度、例えば、0.08m/sec以下で相対的に移動させるのは、0.08m/secよりも大きい速度で溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させても、金属鋳物の表面を研削する速度は略一定となるからである。勿論、他の条件次第では、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる速度は、上記速度に限定されることはない。
【0043】
溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを上記速度で相対的に移動させる時間は、3秒間以上であることが好ましい。溶融塩と金属鋳物とを、例えば、0.04m/secで3秒間以上相対的に移動させて、金属鋳物の表面を研削することができる。溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる時間が3秒間以上であるのは、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる時間が3秒より短いと、金属鋳物の表面を研削する量が少なくなり、開口した鋳巣を十分に除去または抑制することができない場合があるからである。勿論、他の条件次第では、溶融塩と金属鋳物とを上記速度で相対的に移動させる時間は、上記時間に限定されることはない。
【0044】
次に、熱間等方加圧工程(S12)後に、金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させて、金属鋳物の表面を研削する場合について説明する。
【0045】
溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる温度は、金属鋳物の表面を研削できる程度に金属鋳物を軟化させることができる温度とすることが好ましい。溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる温度は、例えば、上述したように、金属鋳物に使用される金属材料の固相線温度より低く、固相線温度近傍の温度とすることができる。溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる温度は、熱間等方加圧工程(S12)における熱間等方加圧する温度と同じ温度としてもよいし、異なる温度としてもよい。
【0046】
熱間等方加圧工程(S12)後に、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる場合には、溶融塩を圧力媒体として金属鋳物を加圧して溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させてもよいし、金属鋳物を加圧せずに溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させてもよい。
【0047】
熱間等方加圧工程(S12)で圧力媒体として不活性ガス等でなく溶融塩を使用する場合には、金属鋳物を浸漬する溶融塩は、熱間等方加圧工程(S12)で用いられる溶融塩と同じ溶融塩を用いることが生産性向上や製造コスト低減等から好ましい。勿論、他の条件次第では、熱間等方加圧工程(S12)で用いられた溶融塩と異なる溶融塩を使用することができる。
【0048】
溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる速度は、上述したように、0.04m/sec以上の速度とすることが好ましい。また、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを相対的に移動させる時間は、上述したように、0.04m/sec以上の速度で3秒間以上であることが好ましい。
【0049】
なお、上記構成においては、熱間等方加圧工程(S12)中または熱間等方加圧工程(S12)後において、金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させる金属鋳物処理方法について説明したが、熱間等方加圧工程(S12)中及び熱間等方加圧工程(S12)後において、金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させて金属鋳物を処理してもよい。
【0050】
次に、上記構成における金属鋳物処理方法で処理するための金属鋳物処理装置について説明する。金属鋳物処理装置は、金属鋳物を熱間等方加圧して処理する金属鋳物処理装置であって、金属鋳物が浸漬される溶融塩を溜めた容器と、溶融塩を溜めた容器の中で、金属鋳物と溶融塩とを相対的に移動させる相対移動手段とを含んで構成される。
【0051】
図2は、相対移動手段が金属鋳物を振動させる振動装置からなる金属鋳物処理装置10を示す図である。金属鋳物処理装置10は、溶融塩溶解保持炉12と、加圧減圧装置14と、金属鋳物18が浸漬される溶融塩16を溜めた容器20と、溶融塩16を溜めた容器20の中で金属鋳物18を振動させる振動装置22とを備えている。ここで、振動装置22には、例えば、サーボシリンダ等を使用することができる。振動装置22にロッド等で金属鋳物18を連結させることにより、溶融塩16を溜めた容器20の中で、金属鋳物18を振動させて、金属鋳物18と溶融塩16とを相対的に移動させることができる。
【0052】
図3は、相対移動手段が金属鋳物を回転させる回転装置からなる金属鋳物処理装置30を示す図である。金属鋳物処理装置30は、溶融塩溶解保持炉12と、加圧減圧装置14と、金属鋳物18が浸漬される溶融塩16を溜めた容器20と、金属鋳物18を回転させる回転装置32とを備えている。ここで、回転装置32には、例えば、モータ等を使用することができる。回転装置32の回転軸等に金属鋳物18を連結させることにより、溶融塩16を溜めた容器20の中で、金属鋳物18を回転させて、金属鋳物18と溶融塩16とを相対的に移動させることができる。
【0053】
図4は、相対移動手段が溶融塩を攪拌させる攪拌装置からなる金属鋳物処理装置40を示す図である。金属鋳物処理装置40は、溶融塩溶解保持炉12と、加圧減圧装置14と、金属鋳物18が浸漬される溶融塩16を溜めた容器20と、溶融塩16を攪拌させる攪拌装置42とを備えている。ここで、攪拌装置42には、例えば、攪拌翼を有する装置等を使用することができる。溶融塩16を溜めた容器20の中で、例えば、攪拌翼を回転させることにより溶融塩16を攪拌して、金属鋳物18と溶融塩16とを相対的に移動させることができる。
【0054】
図5は、金属鋳物処理装置10、30、40を使用して金属鋳物を処理する場合の特長を示す図である。金属鋳物処理装置10を使用して金属鋳物18を振動させる場合には、金属鋳物18が溝等の凹部を有する形状のときに、凹部における溶融塩16の滞留を抑えて、金属鋳物18の表面を研削することができる。金属鋳物処理装置30を使用して金属鋳物18を回転させる場合には、装置の構造がより簡素化される。そして、円形断面を有する金属鋳物18の処理において、金属鋳物18を振動させるよりも効率的に金属鋳物18の表面を研削することができる。金属鋳物処理装置40を使用して溶融塩16を攪拌する場合には、溶融塩の温度勾配をより小さくすることができる。そして、円形断面を有する金属鋳物18の処理において、金属鋳物18を振動させるよりも効率的に金属鋳物18の表面を研削することができる。
【0055】
なお、上記構成における金属鋳物処理方法により処理された金属鋳物は、機械加工等されて車両用部品、例えば、サスペンション部品等に好適に用いることができる。勿論、上記構成における金属鋳物処理方法により処理された金属鋳物は、サスペンション部品用に限定されることはない。
【0056】
上記構成によれば、熱間等方加圧により閉口した鋳巣を抑えて、金属鋳物を溶融塩に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩と金属鋳物とを所定の温度で相対的に移動させることにより金属鋳物の表面を研削して、金属鋳物の開口した鋳巣を抑えることにより、金属鋳物の鋳巣を抑制することができる。
【0057】
上記構成によれば、溶融塩と金属鋳物とを0.04m/sec以上で相対的に移動させてより速く金属鋳物の表面を研削することにより、生産性を向上させて製造コストを抑えることができる。
【0058】
上記構成によれば、金属鋳物の開口した鋳巣が除去または抑制されるため、疲労破壊の起点となりやすい開口した鋳巣を低減して金属鋳物の耐疲労特性を向上させることができる。
【実施例1】
【0059】
溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩とアルミニウム合金鋳物とを相対的に移動させる速度の影響について検討した。アルミニウム合金鋳物のアルミニウム材料には、JIS AC2B合金(Al−6.0Si−3.0Cu,不純物としてFeを0.7%含む)を用いた。
【0060】
JIS AC2B合金の溶湯を砂型に鋳込んで、アルミニウム合金鋳物を鋳造した。アルミニウム合金鋳物の形状は、直径30mm、高さ200mmの円柱状とした。
【0061】
アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、HIP装置にて圧力100(MPa)で200秒間加圧して、アルミニウム合金鋳物を熱間等方加圧した。
【0062】
熱間等方加圧後に、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で5rpmから50rpmまでの以下に示す8条件の回転速度で回転させて、アルミニウム合金鋳物の表面を研削した。なお、括弧内に示す速度は、鋳肌面の速度に換算した数値である。アルミニウム合金鋳物の回転時間は、各々回転速度に対して5秒間とした。
【0063】
〔回転速度〕
5rpm(0.008m/sec)
10rpm(0.016m/sec)
15rpm(0.024m/sec)
20rpm(0.032m/sec)
25rpm(0.04m/sec)
30rpm(0.05m/sec)
40rpm(0.06m/sec)
50rpm(0.08m/sec)
【0064】
アルミニウム合金鋳物を溶融塩から取り出して冷却した後、高さ方向に板厚10mmとなるようにスライスし、15個の試験片を作製した。各々の試験片を樹脂埋めし、研磨して、鋳肌面における開口した鋳巣を光学顕微鏡により観察した。そして、試験片15個において、長径0.2mm以上の開口した鋳巣の数を調査した。各々試験片の開口した鋳巣の数を合計して、合計数を試験片の数である15で除し、試験片1個当たりの平均値を算出した。
【0065】
図6は、アルミニウム合金鋳物の回転速度と開口した鋳巣の数との関係を示すグラフである。図6では、横軸にアルミニウム合金鋳物の回転速度を取り、縦軸に開口した鋳巣の数(試験片1個当たりの平均値)を取り、各データを黒菱形でプロットした。
【0066】
図6に示すように、アルミニウム合金鋳物の回転速度が大きくなるに従って、開口した鋳巣の数は少しずつ減少した。そして、アルミニウム合金鋳物の回転速度が20rpm(0.032m/sec)より大きくなると、開口した鋳巣の数はより大きく減少した。アルミニウム合金鋳物の回転速度が25rpm(0.04m/sec)より大きくなると、開口した鋳巣の減少率は低下した。
【実施例2】
【0067】
溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩とアルミニウム合金鋳物とを相対的に移動させる時間の影響について検討した。アルミニウム合金鋳物のアルミニウム材料には、JIS AC2B合金(Al−6.0Si−3.0Cu,不純物としてFeを0.7%含む)を用いた。
【0068】
JIS AC2B合金の溶湯を砂型に鋳込んで、アルミニウム合金鋳物を鋳造した。アルミニウム合金鋳物の形状は、直径30mm、高さ200mmの円柱状とした。
【0069】
アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、HIP装置にて圧力100(MPa)で200秒間加圧して熱間等方加圧した。
【0070】
熱間等方加圧後に、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で0.25秒間、0.5秒間、1秒間、2秒間、3秒間、4秒間、5秒間、6秒間の8条件の回転時間で回転させて、アルミニウム合金鋳物の表面を研削した。なお、アルミニウム合金鋳物の回転速度は、各々回転時間に対して40rpmとした。
【0071】
アルミニウム合金鋳物を溶融塩から取り出して冷却した後、実施例1と同様にして、鋳肌面における開口している鋳巣を光学顕微鏡により観察し、試験片1個当たりの開口した鋳巣の数を算出した。
【0072】
図7は、アルミニウム合金鋳物の回転時間と開口した鋳巣の数との関係を示すグラフである。図7では、横軸にアルミニウム合金鋳物の回転時間を取り、縦軸に開口した鋳巣の数(試験片1個当たりの平均値)を取り、各データを黒菱形でプロットした。
【0073】
図7に示すように、アルミニウム合金鋳物の回転時間が長くなるに従って、開口した鋳巣の数は少しずつ減少した。そして、アルミニウム合金鋳物の回転時間が2秒間より大きくなると、開口した鋳巣の数は大きく減少した。アルミニウム合金鋳物の回転時間が3秒間より大きくなると、開口した鋳巣の減少率は低下した。
【実施例3】
【0074】
異なる製造方法のアルミニウム合金鋳物について、開口した鋳巣を評価した。鋳造工程(S10)後のアルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物比較例Aとし、熱間等方加圧のみ行ったアルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物比較例Bとした。そして、熱間等方加圧工程(S12)後に、溶融塩を溜めた容器の中でアルミニウム合金鋳物を動かすことによりアルミニウム合金鋳物の表面を研削したアルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物実施例Aとした。また、熱間等方加圧工程(S12)後に、溶融塩を溜めた容器の中で、溶融塩を動かすことによりアルミニウム合金鋳物の表面を研削したアルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物実施例Bとした。
【0075】
アルミニウム合金鋳物実施例A、アルミニウム合金鋳物実施例B、アルミニウム合金鋳物比較例A及びアルミニウム合金鋳物比較例Bにおけるアルミニウム合金鋳物のアルミニウム材料には、いずれもJIS AC2B合金(Al−6.0Si−3.0Cu,不純物としてFeを0.7%含む)を用いた。また、いずれのアルミニウム合金鋳物の形状についても、直径30mm、高さ200mmの円柱状とした。
【0076】
アルミニウム合金鋳物比較例Aは、JIS AC2B合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造して製造された。
【0077】
アルミニウム合金鋳物比較例Bは、JIS AC2B合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造した後、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、HIP装置にて圧力100(MPa)で200秒間加圧して熱間等方加圧することにより製造された。
【0078】
アルミニウム合金鋳物実施例Aは、JIS AC2B合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造した後、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、HIP装置にて圧力100(MPa)、200秒間で熱間等方加圧して、熱間等方加圧後に、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中でアルミニウム合金鋳物を回転速度40rpmで5秒間回転させて製造された。
【0079】
アルミニウム合金鋳物実施例Bは、JIS AC2B合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造した後、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、HIP装置にて圧力100(MPa)、200秒間で熱間等方加圧して、熱間等方加圧後に、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で溶融塩を回転速度40rpmで5秒間、回転させて製造された。
【0080】
アルミニウム合金鋳物を溶融塩から取り出して冷却した後、実施例1と同様にして、鋳肌面における開口している鋳巣を光学顕微鏡により観察し、試験片1個当たりの開口した鋳巣の数を算出した。
【0081】
図8は、各アルミニウム合金鋳物と開口した鋳巣の数との関係を示すグラフである。図8では、横軸にアルミニウム合金鋳物の種類を取り、縦軸に開口した鋳巣の数(試験片1個当たりの平均値)を取り、各データを棒状で示した。
【0082】
図8に示すように、アルミニウム合金鋳物実施例A及びアルミニウム合金鋳物実施例Bにおける開口した鋳巣の数は、アルミニウム合金鋳物比較例Aとアルミニウム合金鋳物比較例Bにおける開口した鋳巣の数より小さかった。アルミニウム合金鋳物実施例A及びアルミニウム合金鋳物実施例Bにおける開口した鋳巣は、抑制されていた。
【実施例4】
【0083】
実施例3とは異なる形状のアルミニウム合金鋳物を用いて、開口した鋳巣を評価した。鋳造工程(S10)後のアルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物比較例Cとし、熱間等方加圧のみ行ったアルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物比較例Dとした。そして、熱間等方加圧工程(S12)後に、溶融塩を溜めた容器の中でアルミニウム合金鋳物を回転させることによりアルミニウム合金鋳物の表面を研削したアルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物実施例Cとした。また、熱間等方加圧工程(S12)後に、溶融塩を溜めた容器の中で、アルミニウム合金鋳物を振動させることによりアルミニウム合金鋳物の表面を研削したアルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物実施例Dとした。
【0084】
アルミニウム合金鋳物実施例C、アルミニウム合金鋳物実施例D、アルミニウム合金鋳物比較例C及びアルミニウム合金鋳物比較例Dにおけるアルミニウム合金鋳物のアルミニウム材料には、いずれもJIS AC2B合金(Al−6.0Si−3.0Cu,不純物としてFeを0.7%含む)を用いた。また、いずれのアルミニウム合金鋳物の形状についても、直径30mm、高さ200mmの凹部を有する円柱状とした。図9は、アルミニウム合金鋳物の断面形状を示す図である。
【0085】
アルミニウム合金鋳物比較例Cは、JIS AC2B合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造して製造された。
【0086】
アルミニウム合金鋳物比較例Dは、JIS AC2B合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造した後、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱した溶融塩中に浸漬して、HIP装置により圧力100(MPa)、200秒間で熱間等方加圧のみして製造された。
【0087】
アルミニウム合金鋳物実施例Cは、JIS AC2B合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造した後、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱した溶融塩中に浸漬して、HIP装置により圧力100(MPa)、200秒間で熱間等方加圧して、熱間等方加圧後に、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中でアルミニウム合金鋳物を円周方向に回転速度40rpmで5秒間回転させて製造された。
【0088】
アルミニウム合金鋳物実施例Dは、JIS AC2B合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造した後、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱した溶融塩中に浸漬して、HIP装置により圧力100(MPa)、200秒間で熱間等方加圧して、熱間等方加圧後に、アルミニウム合金鋳物を500℃に加熱した溶融塩中に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中でアルミニウム合金鋳物を振動させて製造された。振動方法は、アルミニウム合金鋳物を0.06m/secで1秒間下方に動かし、0.5秒後に、0.06m/secで1秒間上方に動かして元の位置に戻した。そして、0.5秒後に、再度下方に動かし、停止時間を除く合計5秒間、アルミニウム合金鋳物を溶融塩中で上下に振動させた。
【0089】
アルミニウム合金鋳物を溶融塩から取り出して冷却した後、実施例1と同様にして、鋳肌面における開口している鋳巣を光学顕微鏡により観察し、試験片1個当たりの開口した鋳巣の数を算出した。
【0090】
図10は、各アルミニウム合金鋳物と開口した鋳巣の数との関係を示すグラフである。図10では、横軸にアルミニウム合金鋳物の種類を取り、縦軸に開口した鋳巣の数(試験片1個当たりの平均値)を取り、各データを棒状で示した。
【0091】
図10に示すように、アルミニウム合金鋳物実施例C及びアルミニウム合金鋳物実施例Dにおける開口した鋳巣の数は、アルミニウム合金鋳物比較例Cとアルミニウム合金鋳物比較例Dにおける開口した鋳巣の数より小さかった。これにより、アルミニウム合金鋳物実施例C及びアルミニウム合金鋳物実施例Dにおいて、開口した鋳巣が抑制されていた。
【0092】
また、アルミニウム合金鋳物実施例Dは、アルミニウム合金鋳物実施例Cよりも開口した鋳巣の数が少なく、開口した鋳巣が抑制されていた。したがって、凹部を有するアルミニウム合金鋳物の場合には、溶融塩を溜めた容器の中でアルミニウム合金鋳物を回転させるよりも振動させたほうが開口した鋳巣の抑制効果が向上した。
【実施例5】
【0093】
サスペンションアーム用アルミニウム合金鋳物を製造し、耐疲労特性について評価した。鋳造工程(S10)後のサスペンションアーム用アルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物比較例Eとし、熱間等方加圧のみ行ったサスペンションアーム用アルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物比較例Fとし、熱間等方加圧工程(S12)後に、溶融塩を溜めた容器の中で動かすことによりアルミニウム合金鋳物の表面を研削したサスペンションアーム用アルミニウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物実施例Eとした。
【0094】
アルミニウム合金鋳物実施例E、アルミニウム合金鋳物比較例E及びアルミニウム合金鋳物比較例Fにおけるアルミニウム合金鋳物のアルミニウム材料には、いずれもJIS AC4CH合金(Al−7.0Si−0.3Mg,不純物としてFeを0.1%含む)を用いた。また、いずれのアルミニウム合金鋳物の形状は、直径30mm、高さ200mmの円柱状とした。
【0095】
アルミニウム合金鋳物比較例Eは、JIS AC4CH合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造して製造された。
【0096】
アルミニウム合金鋳物比較例Fは、JIS AC4CH合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造した後、アルミニウム合金鋳物を535℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、HIP装置により圧力100(MPa)、200秒間で熱間等方加圧して製造された。
【0097】
アルミニウム合金鋳物実施例Eは、JIS AC4CH合金の溶湯を砂型に鋳込んで鋳造した後、アルミニウム合金鋳物を535℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、HIP装置により圧力100(MPa)、200秒間で熱間等方加圧し、熱間等方加圧後に、アルミニウム合金鋳物を535℃に加熱された溶融塩中に浸漬して、溶融塩を溜めた容器の中で速度0.07m/secで15秒間、振動させて製造された。
【0098】
各々サスペンションアーム用アルミニウム合金鋳物を溶融塩から取り出して冷却した後、各々サスペンションアーム用アルミニウム合金鋳物について油圧サーボ式疲労試験機により疲労試験を行った。疲労試験条件は、繰り返し荷重を±7kNとし、周波数を30Hzとした。
【0099】
図11は、各サスペンションアーム用アルミニウム合金鋳物と破断までの繰り返し数の比との関係を示すグラフである。図11では、横軸に製造した各サスペンションアーム用アルミニウム合金鋳物の種類を取り、縦軸に破断までの繰り返し数の比を取り、各データを棒状で示した。破断までの繰り返し数の比は、アルミニウム合金鋳物比較例Eにおける破断までの繰り返し数を1とした。
【0100】
図11に示すように、アルミニウム合金鋳物実施例Eは、アルミニウム合金鋳物比較例E及びアルミニウム合金鋳物比較例Fよりも破断までの繰り返し数が大きく、耐疲労特性が向上した。アルミニウム合金鋳物実施例Eでは、疲労破壊の起点となりやすい開口した鋳巣の数が減少したこと等によるからである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態において、金属鋳物処理方法の処理工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態において、相対移動手段が金属鋳物を振動させる振動装置からなる金属鋳物処理装置10を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、相対移動手段が金属鋳物を回転させる回転装置からなる金属鋳物処理装置30を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、相対移動手段が溶融塩を攪拌させる攪拌装置からなる金属鋳物処理装置40を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態において、金属鋳物処理装置10、30、40を使用して金属鋳物を処理する場合の特長を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態において、アルミニウム合金鋳物の回転速度と開口した鋳巣の数との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態において、アルミニウム合金鋳物の回転時間と開口した鋳巣の数との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態において、各アルミニウム合金鋳物と開口した鋳巣の数との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態において、アルミニウム合金鋳物の断面形状を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態において、各アルミニウム合金鋳物と開口した鋳巣の数との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の実施の形態において、各サスペンションアーム用アルミニウム合金鋳物と破断までの繰り返し数の比との関係を示すグラフである。
【図12】金属鋳物における開口した鋳巣の例を示す写真である。
【符号の説明】
【0102】
10,30,40 金属鋳物処理装置、12 溶融塩溶解保持炉、14 加圧減圧装置、16 溶融塩、18 金属鋳物、20 容器、22 振動装置、32 回転装置、42 攪拌装置。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二

【識別番号】100096976
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 純


【公開番号】 特開2008−12556(P2008−12556A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−185060(P2006−185060)