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【発明の名称】 ストークおよびこれを用いた低圧鋳造装置
【発明者】 【氏名】吉田 政生

【要約】 【課題】自動車部品等の製造工程に用いられる低圧鋳造法では、鋳型内に金属溶湯を注入する際に、鋳型内で金属溶湯の一部が飛沫となって分離し、壁面へ付着して真っ先に冷却・凝固するため、鋳込み後、本体部と一体化せず剥離するため問題となっていた。また、従来から金属溶湯中には空気の巻き込みや不純物成分が多く存在するため、これらの偏析を防止しながら金属溶湯を鋳型へ注入する必要があった。

【構成】金属溶湯3に浸漬され、これを鋳型8内に注入するストーク2において、筒状の本体部21の内面の少なくとも一部に内径の半径以上の高さで1回転以上の螺旋状の凸部24を設けたものである。金属溶湯3はこの凸部24に沿ってストーク2内を螺旋回転し攪拌されながら鋳型8へ注入するので、飛沫の発生もなく金属溶湯3が均一化して、鋳込み製品が剥離したり偏析したりすることを防止できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯に浸漬され、該金属溶湯を鋳型中に注入するストークであって、筒状の本体部の内面の少なくとも一部に内径の半径以上の高さで1回転以上の螺旋状の凸部が設けられていることを特徴とするストーク。
【請求項2】
前記螺旋状の凸部のリード角を10〜60°としたことを特徴とする請求項1に記載のストーク。
【請求項3】
前記本体部が窒化珪素質焼結体からなることを特徴とする請求項1または2に記載のストーク。
【請求項4】
金属溶湯を請求項1〜3のいずれかに記載のストークを介して鋳型に注入することを特徴とする低圧鋳造装置。
【請求項5】
前記ストークが、前記鋳型側に向かって内面がテーパ形状またはR面形状を有している湯口を介して前記鋳型に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の低圧鋳造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムやその合金等の金属溶湯の低圧鋳造装置に用いられるストークおよびこれを用いた低圧鋳造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の価格競争は激化の一途をたどり、自動車メーカー各社では、製造コストダウンのため、自動車製造工程の徹底改善、特に各工程の歩留まり改善に取り組んでいる。自動車の主要構成部品の成形工程に用いられる低圧鋳造法の歩留まり改善も例外ではなくその対象となっていた。
【0003】
低圧鋳造法における歩留まり低下の原因として考えられるのは、アルミニウムやその他の合金の金属溶湯中にガスや不純物が含有されると、加工による不具合箇所の切除が困難であることがあげられる。また、金属溶湯を低圧鋳造法に用いる鋳型内に注入する際に、金属溶湯の一部が飛沫となって鋳型の内壁に付着して金属溶湯の本流よりも先に凝固し、金属溶湯の本流と一体化して凝固しないため、鋳型から鋳込み製品を離型した後にその部分が剥離することがあげられる。
【0004】
このような歩留まり低下原因の対策としては、鋳型の形状変更等が考えられるが、コストがかかることから、鋳型以外の部品について見直す必要がある。特に、鋳型への金属溶湯注入に用いられるストークについては、金属溶湯を貯留する耐圧容器から鋳型へよりスムーズに金属溶湯を充填する点において、その形状について様々な検討がなされており、ストークおよびこのストークを用いた低圧鋳造装置の提案がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1では、給湯管(ストーク)の内周面にスパイラル状の誘導突起を設け、この給湯管に導かれた金属溶湯に回転磁界を作用させて金属溶湯を回転させるための回転磁界発生器を給湯管の外周面側に設けた低圧鋳造装置の提案がなされていた。より具体的には、給湯管の外周面側に設けられている回転磁界発生器を作動させると、金属溶湯が二次導体となり、給湯管の内周面に設けたスパイラル状の誘電突起により誘導されて回転し、回転力の一部が推力に変換され、これにより上昇して鋳型へ金属溶湯を注入される。金属溶湯注入後は給湯管内で金属溶湯が固化しないように、磁界を解き、金属溶湯を自然落下させるか、もしくは、回転磁界の回転方向を注入時と逆にして給湯管内の金属溶湯をるつぼ内へ戻す。この提案によれば、回転磁界の強さの調整によって、鋳型への注入量を自由に調整できるため、注入速度が大きすぎた場合に発生する金属溶湯の飛散を防止することが可能となるというものである。
【0006】
また、特許文献2には、内周壁面に複数の凹み部をもち、凹み部は出湯口の軸長方向に進行するにつれて螺旋状に形成されているスリーブ(ストーク)の提案がなされている。この提案によれば、スリーブの出湯口から吐出される金属溶湯の粘性抵抗が低減され、金属溶湯を従来よりもスムーズに流出できるというものである。
【特許文献1】特開昭63−235058号公報
【特許文献2】特開2005−320607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のスパイラル状の突起部を有する給湯管では、その第3図に横断面図で示されているように、給湯管の中心部にその長さ方向に亘ってスパイラル状の突起部のない領域が存在する。このような給湯管の構成では、中心部を通る金属溶湯を充分に攪拌することが困難であるため、鋳込み製品が偏析を生じ易くなるという問題があった。また、給湯管の外周面側に回転磁界発生器を設置する空間を設けなければならないので、るつぼ内の金属溶湯を給湯管外周面に接触させて給湯管内を流れる金属溶湯を保温することができず、給湯管内の金属溶湯が冷却により凝固し易くなり、連続的に鋳込み成形を実施することが困難であるという問題もあった。加えて、回転磁界発生器を設けると装置の構造が複雑化するとともに装置がコストアップするという問題もあった。
【0008】
また、特許文献2に記載のスリーブは、内周面に螺旋状の凹み部を形成したことによって、この凹み部に沿って金属溶湯をスムーズに流出させることはできるが、給湯管に用いたときには、例えば銃身内壁に螺旋溝を形成して銃弾に推進力を付与するのと同じように、スリーブ内での金属溶湯の推進力を向上させるものの、逆に勢いを増した金属溶湯の流れは湯口を通り鋳型内面に激しくぶつかるため飛沫を生じ、金属溶湯の流れから分離した飛沫が鋳型内面に先に付着して凝固するため、一体化した鋳込み製品を作ることが難しく、一部に剥離が生じるという問題があった。
【0009】
本発明は以上のような従来の問題点を解決すべく案出されたものであり、ストークを通過して鋳型内へ金属溶湯を注入して作製する鋳込み製品が偏析を生じず、回転磁界発生器などの付属装置の必要もなく、剥離のない鋳込み製品を得ることができるストークおよびこれを用いた低圧鋳造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のストークは、金属溶湯に浸漬され、該金属溶湯を鋳型中に注入するストークであって、筒状の本体部の内面の少なくとも一部に内径の半径以上の高さで1回転以上の螺旋状の凸部が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のストークは、上記構成において、前記螺旋状の凸部のリード角を10〜60°としたことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明のストークは、上記いずれかの構成において、前記本体部が窒化珪素質焼結体からなることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の低圧鋳造装置は、金属溶湯を上記いずれかの構成の本発明のストークを介して鋳型に注入することを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の低圧鋳造装置は、上記構成において、前記ストークが、前記鋳型側に向かって内面がテーパ形状またはR面形状を有している湯口を介して前記鋳型に接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のストークによれば、筒状の本体部の内面の少なくとも一部に内径の半径以上の高さで1回転以上の螺旋状の凸部が設けられていることから、金属溶湯はこの凸部に沿ってストーク内を螺旋回転し充分に攪拌されながら鋳型へ注入されるので、金属溶湯が均一化し、鋳込み製品が偏析することがない。
【0016】
また、本発明のストークによれば、筒状の本体部の内径の半径以上の高さで1回転以上の螺旋状の凸部を形成したことで、従来のストークよりも本体部の内面と金属溶湯との接触面積を増加させており、これにより金属溶湯の注入速度を抑制できるので、金属溶湯の流れから分離した飛沫が先に凝固して鋳込み製品の一部に剥離を生じるという問題を解決することが可能となる。
【0017】
また、本発明のストークによれば、前記螺旋状の凸部のリード角を10〜60°とすると、筒状の本体部内面の螺旋状の凸部の螺旋回転数および螺旋角度が金属溶湯を充分に攪拌し、また注入速度を好適に抑制するという作用がより効果的に発揮されるので、金属溶湯がより均一化され、鋳込み製品が偏析することがなく、さらに、金属溶湯の流れから分離した飛沫が先に凝固して鋳込み製品の一部に剥離を生じるという問題をより効率的に解決することができるという効果が得られる。
【0018】
さらに、本発明のストークによれば、窒化珪素質焼結体で構成すると、窒化珪素質焼結体と金属溶湯との濡れ性が悪いことと、窒化珪素質焼結体は高温で機械的特性の劣化が少ないということによって、ストークの寿命をより長寿命化できるという効果が得られる。
【0019】
また、本発明のストークを用いた本発明の低圧鋳造装置によれば、金属溶湯をストーク内で充分に攪拌でき、さらに、その注入速度を抑制できるということによって、金属鋳込み製品の製造工程において、長期間にわたって歩留まり良く、より高品質な金属鋳込み製品を製造することができるという効果が得られる。
【0020】
さらに、本発明の低圧鋳造装置によれば、本発明のストークが、鋳型側に向かって内面がテーパ形状またはR面形状を有している湯口を介して鋳型と接続されているときには、湯口の出口部が金属溶湯との摩擦によって摩耗しにくいものとすることができるので、鋳型を長寿命化することができるばかりか、金属溶湯が湯口から鋳型内部へ勢いよく注入されにくくなり、金属溶湯の一部が飛沫となって内壁面に付着しにくくなるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0022】
図1は本発明の低圧鋳造装置の概略断面図である。
【0023】
この低圧鋳造装置1は、金属溶湯3を貯留する、蓋5を備えた耐圧容器4と、耐圧容器4の上部に備えられた支持台6と、支持台6上に載置され、湯口9を備えた下型7aおよび上型7bからなる鋳型8とを有し、さらに、蓋5と支持台6とを貫通して耐圧容器4と鋳型8の下型7aの湯口9とに連通したストーク2とを有する構成である。
【0024】
そして、この低圧鋳造装置1の動作としては、耐圧容器4内に貯留した金属溶湯3の湯面に対して5〜30MPa程度の圧力を付与することによって、金属溶湯3がストーク2の内部を通り、鋳型8の下型7aに設けられた湯口9を介して鋳型8内に注入される。金属溶湯3の鋳型8への注入を終えると、鋳型8内の金属溶湯3を冷却して凝固させることによって、鋳込み製品が出来上がる。その後、鋳型8の下型7aと上型7bとを分離して取り出した鋳込み製品は、必要に応じて研削工程等の仕上げ加工工程を経て最終製品として仕上げられる。また、金属溶湯3を注入した直後の鋳型8については、金属溶湯3への加圧を一旦停止してから、鋳型8ごと支持台6上から取り外して移動させることができ、新たに未充填の別の鋳型8を載置して、鋳型8の湯口9とストーク2とを接続させた後、再び耐圧容器4内に気体を注入して金属溶湯3を加圧すれば、引き続いて鋳型8内に金属溶湯3を注入することができる。この繰り返しにより、連続した鋳込み成形が可能となる。
【0025】
そして、本発明では、耐圧容器4と鋳型8の湯口9とに連通したストーク2が、筒状の本体部の内面の少なくとも一部に内径の半径以上の高さで1回転以上の螺旋状の凸部が設けられていることが重要である。
【0026】
図2に本発明のストークの概略断面図を示す。図2(a)は螺旋状の凸部の高さが筒状の本体部の内径の半径よりもわずかに高いストークの概略断面図であり、(b)は螺旋状の凸部の高さが内径の半径よりも大幅に高いストークの概略断面図である。(a),(b)ともに、筒状の本体内壁に2回転半の螺旋状の凸部を設けた構造としている。さらに螺旋状の凸部については断面のみ図示してある。
【0027】
これらのストーク2は、筒状の本体部21の内面にほぼ全長に亘って螺旋状の凸部24を設けてあり、低圧鋳造装置1の内部において支持台6によって支えるためのフランジ部22および鋳型8に接続するための接続部23を有している。このような構造とすることによって、金属溶湯3は螺旋状の凸部24に沿って螺旋を描きながらストーク2内を通過する。このとき、金属溶湯3の流れには遠心力が付与されるとともに、螺旋状の凸部24が攪拌羽根のような役割を果たすため、充分に攪拌されながらストーク2内を通過する。そのため、従来の技術における問題点であった金属溶湯3内の偏析が起こらず、より均一な金属溶湯3を鋳型8内へ注入することが可能となる。さらに、螺旋状の凸部24の高さや筒状の本体部21内での螺旋状の凸部24の巻数(回転数)などを調整することにより、ストーク2内を流れる金属溶湯3の流速を抑制することが可能となり、必要とされる圧力でストーク2から湯口9を介して鋳型8へ注入される金属溶湯3の勢いを抑えることができ、鋳型8内での金属溶湯3の飛沫の発生を防止することができる。この飛沫の発生が防止できるので、飛沫が鋳型8の内壁へ飛び散って金属溶湯3の流入より先に凝固することがないので、剥離等の欠陥のない鋳込み製品を得ることが可能となる。
【0028】
ここで、筒状の本体部21の内面に設けた螺旋状の凸部24の高さを、筒状の本体部21の内径の半径以上の高さとするのは、半径より低い高さでは、ストーク2の中央部で長さ方向に亘って、螺旋状の凸部24の交差しない(長さ方向で見て重なり合わない)領域が生じるためである。この領域は、ストーク2の内部を長さ方向に見たときに、ストーク2の金属溶湯3の入口から出口までを見通せる形でストーク2内の中央部に存在するので、このような領域の存在は、ストーク2内を流れる金属溶湯3の流速が、この領域の金属溶湯3の流速は速いが、筒状の本体部21内面と螺旋状の凸部24に沿って流れる金属溶湯3は遅くなるというアンバランスを生みだし、金属溶湯3の流れを不安定化させる要因となる。そのため、流速の速い中央部からの金属溶湯3が湯口9を介して鋳型8へ注入した際に飛沫が発生し易くなるために好ましくない。また、ストーク2の中央部を長さ方向に流れる金属溶湯3は、筒状の本体部21の内径の半径より低い螺旋状の凸部24に沿って流れる金属溶湯3とは分離した流れでストーク2内を流れることになると考えられるため、金属溶湯3を充分に攪拌することができず、鋳込み製品に偏析を起こす原因になると考えられる。このような偏析が鋳込み製品内に発生すると、その部分で鋳込み製品の機械的特性が低下し、製品品質のバラツキが生じるために好ましくない。偏析を防止するために金属溶湯3を十分攪拌するには、螺旋状の凸部24の高さを、筒状の本体部21の内径の半径の60%〜90%とするのがより好ましい。
【0029】
なお、螺旋状の凸部24は、少なくとも一部を筒状の本体部21の内径の半径以上の高さとしてストーク2の中央部を長さ方向に見通せないようにすれば良く、これにより、金属溶湯3を充分に攪拌することができ、金属溶湯3の全体の流速も抑制することが可能となる。金属溶湯3と螺旋状の凸部24との摩擦によって螺旋状の凸部24が摩耗することを考慮すれば、筒状の本体部21の内径の半径よりも高い螺旋状の凸部24の比率はなるべく多くするのがより好ましい。
【0030】
また、螺旋状の凸部24の螺旋回転数を1回転以上とするのは、1回転未満であると、ストーク2の内部に長さ方向に見通せる部分が残り、金属溶湯3に充分な流速抑制効果、攪拌効果を付与できないからである。
【0031】
さらに、螺旋状の凸部24は、その螺旋形のリード角を10〜60°の範囲内とするのが良い。リード角が10°より小さいと、ストーク2内に多数(多くの回転数)の螺旋状の凸部24を形成しなければならず、その製造が困難となるばかりか、ストーク2内に金属溶湯3を送り込むための圧力を非常に大きなものとしなければならなくなるため、低圧鋳造装置1の耐圧容器4内の金属溶湯3の湯面により大きな圧力を付与しなければならなくなる。そして、大きな圧力を付与しようとすれば、大きな加圧装置が必要となるとともに耐圧容器4を始めとして各部の補強が必要となり、設置スペースと製造コストの点を考慮すると好ましくない。また、リード角が60°より大きいと、より低圧力で金属溶湯3を注入することが可能となるものの、螺旋状の凸部24の巻数(回転数)が著しく減少することとなり、金属溶湯3に充分な流速抑制効果と攪拌効果とを付与することが難しくなるために好ましくない。
【0032】
また、螺旋状の凸部24の厚みは、ストーク2内に金属溶湯3を注入する圧力がかかることや金属溶湯3との摩擦により摩耗することを考慮すると厚くするのが良いが、厚すぎると金属溶湯3の流路が狭くなり、鋳型8への金属溶湯3の注入量が少なくなるために好ましくない。
【0033】
また、筒状の本体部21の長さ方向の中心線と平行な断面から見た場合の螺旋状の凸部24の断面形状は、螺旋形状を形成することが可能であれば四角形状,三角形状,台形状等どのような形状でも良いが、筒状の本体部21と螺旋状の凸部24を別々に作製して接合する場合は、本体部21と接触面積を増加できる台形状とするのが良い。
【0034】
また、本発明のストーク2を構成する材料としては、高温に加熱された金属溶湯3に接触しなければならないことから、高温耐久性を有するセラミック材料により形成するのが良く、特に窒化珪素質焼結体からなるセラミック材料を用いるのが良い。この理由としては、窒化珪素質焼結体は高温での機械的特性の劣化や変形が少ない点、金属溶湯3、特にアルミニウム溶湯との濡れ性が悪いので金属溶湯3が付着しにくい点、他のセラミック材料と比較して金属溶湯3との接触部での摩耗が少なく、耐摩耗性に優れる点があげられる。
【0035】
この窒化珪素質焼結体の平均結晶粒径としては、1〜50μmの範囲とするのが良い。これは、窒化珪素質焼結体の機械的特性の劣化が粒界から生じるからであり、金属溶湯3と接触する粒界部分をより少なくすることが窒化珪素質焼結体からなるストーク2の寿命に大きく影響するからである。つまり、一定体積下における平均結晶粒径と粒界の体積の関係は平均結晶粒径が小さいほど粒界の体積は減少するので、できる限り平均結晶粒径は小さいほうがよい。平均結晶粒径が1〜50μmであるのが好ましいのは1μm未満だと1次原料の平均粒径をより小さなものとしなければならず、また、50μmを超えると製造上困難なほどに焼成温度を高くしなければならず製造コストが著しく高くなるという点を考慮する必要が生じるからである。
【0036】
このような本発明のストーク2を、図1に示すような本発明の低圧鋳造装置1に用い、耐圧容器4内に貯留された金属溶湯3の湯面に圧力を付与すると、その圧力によって押し出された金属溶湯3がストーク2の内部を通り、鋳型8の下型7aに設けられた湯口9を介して鋳型8内に充分に攪拌され流速が抑えられて注入される。鋳型8への注入を終え、鋳型8内の金属溶湯3を冷却して凝固させると、鋳込み製品が出来上がる。その後、鋳型8の下型7aと上型7bとを分離して取り出された鋳込み製品は、必要に応じて研削工程等の仕上げ加工工程を経て最終製品として仕上げられる。この製品は、本発明のストーク2を用いた効果により、製品内に偏析や剥離による欠陥がなく、外観上も品質上も極めて良好な特性を有するものとなる。さらに、これら高品質の製品を長期間にわたって良好な歩留まりでもって製造することが可能となる。
【0037】
次に、本発明のストーク2と接続する鋳型8の湯口9の形状について、図3を用いて説明する。
【0038】
図3は本発明の低圧鋳造装置を示した図1のA部を示す要部拡大断面図であり、(a)は鋳型とストークの接続部および鋳型の内面側のテーパ形状の要部拡大断面図であり、(b)は(a)のテーパ形状をR面形状に置き換えた要部拡大断面図である。
鋳型8の湯口9は、図3(a)に示すように、鋳型8の内側に向かって内面をテーパ形状31とするのが良い。また、図3(b)に示すように、R面形状34としても良い。湯口9の鋳型8側をテーパ形状31やR面形状34とせずストレート形状とした場合には、ストーク2に設けた螺旋状の凸部24により金属溶湯3の流速を抑制したとしても、湯口9から鋳型8へ金属溶湯3が勢いよく流入することがあり、鋳型8の内壁面と衝突して飛沫を生じるために好ましくない。また、鋳型8の湯口9は、特に鋳型8側ほど金属溶湯3との摩擦を生じ易く摩耗し易いが、テーパ形状31またはR面形状34とすれば摩耗しにくく、これにより鋳型8を長寿命化することが可能となる。さらに、湯口9の鋳型8側をテーパ形状31またはR面形状34とすれば、鋳込み製品を鋳型8から離型し易くなる。
【0039】
また、本発明のストーク2と湯口9との接続部を図3に示す。ストーク2側の湯口9の形状を、ストーク2の接続部23と嵌合可能な嵌合部32を設けた形状とするのが良い。また、湯口9については、図3に示すように、嵌合部32からさらにテーパ形状33を設ける構造としても良い。このような構造とすることにより、湯口9とストーク2の接続部23とのシール性をより向上できるために好ましい。なお、湯口9の加工は、鋳型8の下型7aに設けられたストーク2側の湯口9をストークの接続部23の外径に合わせた形で予め切削加工すれば良い。
【0040】
次に、本発明のストーク2の製造方法について以下に詳細に説明する。
【0041】
本発明のストーク2をセラミック材料、特に窒化珪素質焼結体にて製造する場合には、筒状の本体部21と螺旋状の凸部24とを別々に製造した後、これらを接合して製造するとよい。
【0042】
まず、筒状の本体部21の製造方法としては、焼結助剤として、例えばYやAlを含む純度99〜99.8%の窒化珪素原料粉末を準備し、これにバインダー,分散剤,溶媒を加え、スラリーとした後、噴霧造粒装置(スプレードライヤー)にて造粒して、球状の2次原料粉末を作製する。しかる後、この2次原料粉末を用いて、湿式静水圧プレス成形(ラバープレス)法により、筒状成形体を作製する。その後、所定形状の筒状体となるよう切削加工を施した後、窒素雰囲気中、1700〜2000℃の最高温度で焼成する。そして、仕上げの研削加工を施すことにより、本発明のストーク2の筒状の本体部21の焼結体が得られる。
【0043】
次に、筒状の本体部21に用いた窒化珪素原料粉末と同じものを用いて螺旋状の凸部24の製造を行なう。成形方法に関しては、湿式静水圧プレス成形法にて所定形状の円柱状成形体を得た後、これを旋盤等の回転加工機により円柱状成形体の軸を中心に回転させて切削加工することにより得られる。また、湿式静水圧プレス成形法を用いて螺旋状の凸部24を製造する場合には、製品の長さよりも長めに成形し、予め軸方向両端部に加工する際のチャッキング部を設けておく。そしてこのチャッキング部を旋盤等の加工機のチャッキング部でつかみ、回転させながら加工する。また、他の成形方法としては、鋳込み成形法を用いることもできる。鋳込み成形法を用いる場合には、例えば前記窒化珪素原料粉末と所定量のバインダー,分散剤,硬化剤,溶媒を混合して鋳込み成形用スラリーを作製した後、これを螺旋状の凸部24の形状の空間を有した石膏製の鋳込み成形型に流し込み、スラリーを乾燥・固化させ成形型から離型して螺旋状の凸部24の形状をした成形体を得る。しかる後、前記筒状の本体部21と同様に、窒素雰囲気中、1700〜2000℃の最高温度で焼成し、必要に応じて研削加工を施すことにより、本発明のストーク2の螺旋状の凸部24の焼結体が得られる。
【0044】
次に、得られた筒状の本体部21と螺旋状の凸部24とを接合する。接合には、所定量の窒化珪素質焼結体の焼結助剤成分、例えばY,Al,SiOの混合粉末に、バインダー,分散剤,溶媒を加え、攪拌混合してスラリー化したものを接合剤として用いる。この接合剤を螺旋状の凸部24の焼結体が筒状の本体部21の焼結体の内面と接する部分の全面に100μm以上の厚さで塗布した後、これを筒状の本体部21の内面に挿入する。これを窒素雰囲気中1200〜1600℃で熱処理すれば両者が強固に接合され、本発明のストーク2が得られる。
【0045】
なお、本発明のストーク2は、金属材料を用いて製造することも可能であるが、この場合も筒状の本体部21と螺旋状の凸部24とを分離させた形で別々に製造した後に接合する方法を用いるとよい。まず、筒状の本体部21を金属鋳込み成形法により形成し、これとは別に、螺旋状の凸部24を同様に金属鋳込み成形法により製造した後、両者をロウ付けや溶接法等の接合方法を用いて接合した後、必要に応じて、表面を研磨加工して製造時に残るいわゆるバリや凹凸を取る仕上げ加工を施すことによって作製できる。しかしながら、金属の接合では、接合部に生じた隙間を塞ぐことが窒化珪素質焼結体等のセラミック材料の場合と比較すると非常に困難であるので、セラミック材料によりストーク2を構成するのがより良好といえる。
【0046】
このようにして製造された本発明のストーク2は、図1に示す低圧鋳造装置1用のストーク2として用いれば、従来の金属溶湯3の偏析の問題や鋳型8内での飛沫の問題が発生することがなく、良好な金属鋳込み成形を実施することが可能となる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態の例について説明したが、上述の内容に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲内であれば種々変更をしてもよいことは言うまでもない。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例について詳細を説明する。
【0049】
(実施例1)
まず、本発明のストーク2を用いた低圧鋳造装置1で製造した鋳込み製品の一例を概略図で図4に示す。この鋳込み製品40について、図1に示す低圧鋳造装置1を用いて以下のようにして製造を実施した。この鋳込み製品40はアルミニウム製であって、図4に示すように断面形状がH型の部材であり、製品寸法は図4中にA〜Eで示す寸法がA=600mm,B=500mm,C=200mm,D=50mm,E=10mmである。
【0050】
図2に示すストーク2の製造方法としては、YとAlとを含む純度99〜99.8%の窒化珪素原料粉末を準備し、これにバインダー,分散剤,溶媒を加えてスラリーとした後、噴霧造粒装置(スプレードライヤー)にて造粒して、球状の2次原料粉末を作製した。しかる後、この2次原料粉末を用いて、湿式静水圧プレス成形(ラバープレス)法により、筒状成形体を作製した。その後、所定形状の筒状体となるよう切削加工を施した後、窒素雰囲気中、1900℃の最高温度で焼成することにより、ストーク2の筒状の本体部21を作製した。これとともに、窒化珪素原料粉末と所定量のバインダー,分散剤,硬化剤,溶媒を混合して鋳込み成形用スラリーを作製した後、これを螺旋状の凸部24の形状の空間を有した石膏製の鋳込み成形型に流し込み、スラリーを乾燥・固化させて石膏製の鋳込み成形型から離型して、螺旋形の成形体を得た。しかる後、筒状の本体部21と同様に、窒素雰囲気中、1900℃の最高温度で焼成し、必要に応じて研削加工を施すことにより、ストーク2の螺旋状の凸部24に相当する焼結体を製造した。
【0051】
得られた筒状の本体部21と螺旋状の凸部24との接合は、所定量のY,Al,SiOの混合粉末に、バインダー,分散剤,溶媒を加えて攪拌混合しスラリー化したものを接合剤として用いた。この接合剤を螺旋状の凸部24に相当する焼結体の筒状の本体部21の内面と接する部分の全面に100μmの厚さで塗布した後、螺旋状の凸部24に相当する焼結体を筒状の本体部21の内面に挿入した。これを窒素雰囲気中1500℃で熱処理して、本発明のストーク2を得た。得られたストーク2は、純度が99%以上,気孔率が1%以下,嵩密度が3.28g/cmの窒化珪素質焼結体から構成され、本体部21は外径が120mm,内径が100mm,長さが800mmの筒状体であり、内部にはリード角40°の螺旋状の凸部24が形成されているものである。また、螺旋状の凸部24の断面形状は台形としている。なお、ストーク2には、図2に示すような長さが20mm、厚さが10mmのフランジ部22が形成されており、図1の低圧鋳造装置1の支持台6にフランジ部22を介して設置されるようになっており、さらに、高さが10mmの接続部23が、この接続部23と鋳型8の湯口9の嵌合部32とが嵌合される形で設置されている。
【0052】
また、鋳型8の湯口9については、鋳型8側に向かって内面に角度120°のテーパ形状を設けてあるものを用いた。
【0053】
このようなストーク2の設置された低圧鋳造装置1により、鋳型8内に金属(アルミニウム)溶湯3を注入し、その後に金属(アルミニウム)溶湯3を凝固させ、離型し、アルミニウム製の鋳込み製品40を製造した。鋳込み製品40には、その表面に、飛沫によるものと見られる剥離は認められなかった。また、鋳込み製品40の各部から抗折試験片を切り出し、JIS Z 2204に基づく曲げ強度試験を実施したところ、その強度値のバラツキはなく、金属(アルミニウム)溶湯3の偏析による強度劣化等が発生していないことが確認された。
【0054】
(実施例2)
実施例1と同様の形状の窒化珪素質焼結体からなるストーク2について、螺旋状の凸部24のリード角を8°,10°,30°,60°,65°としたものを同様の製造方法にてそれぞれ製造した。そして、これらを図1に示す低圧鋳造装置1に設置して、鋳型8に金属(アルミニウム)溶湯3を流し込み、それぞれのリード角を有するストーク2を用いて、実施例1で用いた図4に示す形状の鋳込み製品40を各10個製造した。
【0055】
この結果、リード角8°のものについては、良好な製品10個が得られたものの、低圧鋳造装置1の耐圧容器4内の金属(アルミニウム)溶湯3の湯面に80MPa以上の高圧を付与しなければ、鋳型8へ金属(アルミニウム)溶湯3を注入することができず、低圧鋳造装置1に常設された加圧装置以外の圧力付与装置を用いて製造しなければならなかった。また、リード角65°のストーク2を使用した場合には、鋳込み成形後、10個中1個の製品の表面に剥離を生じ、同じく1個の製品に偏析が生じていた。
【0056】
なお、偏析については、実施例1と同様に各々の製品の各部から抗折試験片を切り出し、JIS Z 2204に基づく曲げ強度試験を実施して、その平均値と予め偏析のない試験片にて実施した曲げ強度試験の結果とを比較し、著しい強度劣化の部分が存在した製品を偏析が生じているとした。
【0057】
これらと比較して、リード角が10°,30°,60°のストークを用いて製造した製品は、低圧鋳造装置1に常設されている加圧装置の規格内の圧力で問題なく鋳込み成形を実施でき、鋳込み製品40についても表面の剥離や偏析が生じることはなく、10個の製品の製造歩留まりは100%であった。
【0058】
(実施例3)
次に、螺旋状の凸部24を設けた金属(S45C)製ストーク、ジルコニア製ストーク、窒化珪素製ストークをそれぞれ製造し、これらを図1に示す低圧鋳造装置1に用いて、アルミニウム溶湯の鋳込み成形を実施した。
【0059】
窒化珪素製ストークについては実施例1と同様の形状で、同様の製造方法を用いて製造したものを用いた。
【0060】
また、金属製ストークは、その材質に耐熱製の高いS45Cを採用し、まず曲げ加工によりS45Cの筒を作製した後、つなぎ目を溶接することで筒状の本体部21を製造し、それとは別に螺旋状の凸部24を鋳込み成形により成形して、これを筒状の本体部21の内面にロウ付けして製造した。
【0061】
さらに、ジルコニア製ストークは、市販のジルコニア1次原料を用いて、所定量を焼結助剤,バインダー,分散剤,溶媒とともに混合してスラリー化し、これを噴霧乾燥造粒装置(スプレードライヤー)に投入してジルコニア2次原料を造粒した後、窒化珪素製ストークと同様に、湿式静水圧プレス成形(ラバープレス)法により筒状成形体を作製して、これを1500℃の最高温度で焼成し、ジルコニア製の筒状の本体部21を得た。これとともに、窒化珪素製ストークと同様に、鋳込み成形法により螺旋形の成形体を得た後、1500℃の最高温度で焼成して螺旋状の凸部24の焼結体を得た。しかる後、筒状の本体部21と螺旋状の凸部24とを、SiOを主成分とする接合剤を用いて窒化珪素製ストークと同様の接合手順にて接合した後、酸化雰囲気中800〜1000℃にて加熱処理することにより、ジルコニア製ストーク2を製造した。なお、ストーク2の形状およびリード角は実施例1と同じとした。
【0062】
このようにして製造した各々の材質のストーク2を図1の低圧鋳造装置1の所定位置に設置し、実施例1と同様に、図4に示す形状の鋳込み製品40を製造した。鋳込み製品40の製造個数は100個とした。
【0063】
この結果、金属製のストーク2については、50個までは不具合なく良好な鋳込み成形を実施可能であり、高品質な製品が得られたが、それ以降、ストーク2に詰まりを生じ、著しく成形時間の効率が低下した。この時点で製品歩留まりも70%まで低下し、さらに成形を進めると60個の成形を終えたところで、ストーク2の内面に金属(アルミニウム)溶湯3が付着して注入ができなくなり、鋳込み成形を中止せざるを得なかった。さらに、鋳込み成形中止後に低圧鋳造装置1よりストーク2を取り外して外観を確認したところ、螺旋状の凸部24の先端部が著しく摩耗が見られ、これに加えて本体部21の一部に変形が生じていた。
【0064】
また、ジルコニア製ストーク2については、70個までは良好な鋳込み成形を実施することが可能であったものの、90個前後でやはりストーク2の内面に金属(アルミニウム)溶湯3が付着して金属溶湯3の注入ができなくなり、鋳込み成形を中止した。低圧鋳造装置1より取り出して外観を確認したところ、螺旋状の凸部24の先端部に若干の摩耗が見られた。
【0065】
これらと比較して、窒化珪素製ストークについては、金属(アルミニウム)溶湯3との濡れ性が悪いという特性を有しているため、100個の成形を問題なく100%の歩留まりで終えることができた。さらに、鋳込み成形後のストーク2の外観も成形前と変わりがなく、耐摩耗性と高温安定性に優れており、ストーク2として優れた性能を有していることが確認できた。
【0066】
また、実施例1〜3に用いた本発明のストーク2を設置した低圧鋳造装置1は、従来のストークを設置した低圧鋳造装置と比較して、製品の一部に偏析による欠陥や剥離による欠陥がなく、より高品質な金属鋳込み製品を歩留まり良く製造できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の低圧鋳造装置の構成例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のストークの構成例を示す概略断面図であり、(a)は螺旋状の凸部の高さが筒状の本体部の内径の半径よりもわずかに高いストークの例であり、(b)は螺旋状の凸部の高さが内径の半径よりも大幅に高いストークの例である。
【図3】本発明の低圧鋳造装置を示した図1のA部を示す要部拡大断面図であり、(a)は鋳型とストークの接続部および鋳型の内面側のテーパ形状の要部拡大断面図であり、(b)は(a)のテーパ形状をR面形状に置き換えた要部拡大断面図である。
【図4】本発明のストークを用いた低圧鋳造装置で製造した鋳込み製品の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1:低圧鋳造装置
2:ストーク
3:金属溶湯
4:耐圧容器
5:蓋
6:支持台
7a:下型
7a:上型
8:鋳型
9:湯口
21:本体部
22:フランジ部
23:接続部
24:凸部
31,33:テーパ形状
32:嵌合部
34:R面形状
40:鋳込み製品
【出願人】 【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−6456(P2008−6456A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−178215(P2006−178215)