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【発明の名称】 表面特性が改善された鋳造部品およびそれらを製造する方法
【発明者】 【氏名】ウィリアム・エイ・クロフォード

【氏名】トレーシー・ジェイ・ポッター

【氏名】ドナルド・エフ・ヒーニー

【氏名】ブライアン・エス・デフォース

【氏名】サマルド・オヌクリ

【要約】 【課題】本出願書類に、患者の内部領域と接触させるのに適した鋳造装置のための鋳造部品を形成するための技術を記述する。

【解決手段】そのような部品は、規模が小さい(例えば、7.62mm(0.3インチ)未満の長軸、および/または、約2.03mm(約0.08インチ)未満の短軸を有する)場合があり、高融点、および環境成分または鋳型表面との高い反応性を有する金属(例えば、ステンレス鋼およびチタン合金)で形成することができる。そのような技術は、溶融金属がスプルーの閉鎖端と衝突した後、サイドランナーが埋め戻しされるような具合に、溶融金属を鋳型ツリーのスプルーの中に注入する工程を含むことができる。サイドランナーは埋め戻しを促進するために、特定の方向と位置とに配向されることができる。更に、型枠温度、および界面活性剤の使用もまた、表面欠陥の形成を妨げながら、鋳造部品の形成を促進することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造された医療用要素において、
医療装置の要素として使用されるように構成された金属鋳造部品であって、ステンレス鋼、およびチタン合金のうちの少なくとも1つで形成されており、かつ、約100未満のRa値によって特徴付けられる粗さを備えた鋳造表面を有する、金属鋳造部品、
を備える、鋳造された医療用要素。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳造された医療用要素において、
前記金属鋳造部品は、約25.4mm(約1インチ)未満の長軸長さを含む、鋳造された医療用要素。
【請求項3】
請求項1に記載の鋳造された医療用要素において、
前記金属鋳造部品は、約9.53mm(約3/8インチ)未満の短軸長さを含む、鋳造された医療用要素。
【請求項4】
請求項1に記載の鋳造された医療用要素において、
前記Ra値は、約50未満である、鋳造された医療用要素。
【請求項5】
請求項1に記載の鋳造された医療用要素において、
前記金属鋳造部品は、SS17−4ステンレス鋼、およびTi6Al4V合金のうちの少なくとも1つで形成されている、鋳造された医療用要素。
【請求項6】
患者の体の内部領域に暴露するのに適した医療装置において、
前記医療装置の少なくとも一部分は、ステンレス鋼、およびチタン合金のうちの少なくとも1つを含有しており、
前記医療装置の前記一部分は、約25.4mm(約1インチ)未満の長軸長さを有しており、
前記医療装置の前記一部分は、鋳造によって形成されている、医療装置。
【発明の詳細な説明】【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、鋳造部品(cast parts)に関し、更に詳しくは、そのような鋳造部品を製造して、鋳造材料がそれの融点付近で高い反応性を有するとき、改善された鋳造表面特性(cast surface properties)を提供する技術に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
外科用途および/または患者に対する植え込みに適する金属製医療装置部品は、作り出すことが困難である場合がある。それらの部品は典型的には、該部品の表面を物理的に成形して仕上げる機械加工技術を使用して形成される。しかし、部品が、(例えば、約7.62mm(約0.3インチ)未満の長軸、および/または、約2.03mm(約0.08インチ)未満の短軸を有する)十分小さな規模に達する場合、従来の機械加工によってこのような部品を形成するのに必要な許容誤差(tolerances)を満たすコストは、著しく高くなりうる。
【0003】
鋳造によって、上記の小規模部品を形成するための潜在的に費用対効果の大きな代替的技術が提供されている。しかし、そのような部品を形成するための溶融状態の医療品質等級金属(medical-grade metals)の鋳造は、多くの課題を提起している。一般に、医学的適用に適した諸金属材料は、該材料の高融点または高い溶融範囲に近い温度では、化学反応性が大きいため、該材料は、小規模部品(small-scale pieces)に鋳造することが困難である。とりわけ、これらの溶融金属は、それらの融点または溶融範囲よりますます高い温度に加熱されるにつれて、それら溶融金属は、反応性(例えば、鋳型表面との酸化反応または他の望ましくない反応を受けること)がますます大きくなる傾向がある。そのような反応は、金属部品を汚染する不純物の形成を引き起こし、その結果、様々な有害な結果が生じる。不純物の存在は、該金属の組成が医療品質等級の材料の望ましい基準を満たさないかもしれないような具合に、該金属の組成をゆがめ、そうさせることによって、鋳造部品を意図された適用に使用することができなくなる。また、不純物の存在は、金属材料の機械特性に悪影響を及ぼす(例えば、該材料の強度を低下させる)ことがある。更に、そのような反応は、表面テクスチャリング(surface texturing)を引き起こすことがあり、その結果、鋳造部品の表面にかなりの望ましくない粗さが生じる。例えば、表面粗さを特徴付けるために当該技術分野で知られている表面粗さ値(surface roughness value)Raを用いれば、ステンレス鋼合金および/またはチタン合金を利用する鋳造部品は典型的には、良好な作業条件の下、約100〜200の間のRa値を示す。表面粗さの特徴の尺度(scale)は個々の部品の尺度に近似するため、実際、そのような材料を用いて小規模鋳造部品を製造することは、非常に困難である場合がある。これらの有害作用のため、人は、より低い温度を使用して鋳型を充填せざるを得ない。しかし、溶融金属の温度が十分に加熱されていなければ、鋳造用材料はあまりにも急激に冷却されて、鋳造鋳型の不完全な充填が引き起こされうる。
【0004】
したがって、外科的適用および植え込み(implantation)の適用で使用されるための、適切な大きさに作られた医療部品を鋳造することができるように小規模金属部品を鋳造する、改善された技術の必要性が存在する。
【0005】
〔発明の概要〕
1つの典型的な実施形態は、鋳造された医療用要素(cast medical component)に向けられている。該要素には、医療装置と共に使用されるように構成された金属鋳造部品(cast metal part)が包含される。そのような金属鋳造部品は、患者の体の内部領域に暴露するのに適することができる。該部品は、ステンレス鋼合金(例えば、析出硬化SS17−4合金)および/またはチタン合金(例えば、αβTi6Al4V合金)から形成することができる。該部品は、約100未満または約50未満のRa値によって特徴付けられる粗さを備えた鋳放し表面(as cast surface)を有することができる。該部品は、約7.62mm(約0.3インチ)未満の長軸長さ、および/または、約2.03mm(約0.08インチ)未満の短軸長さを有する場合がある。
【0006】
もう1つの典型的な実施形態は、医療装置の鋳造部分を形成する方法に向けられている。鋳造鋳型のスプルーの流体入り口端の中に溶融金属を注入することができる;その注入を実施するために、遠心分離等の技術を利用することができる。該溶融金属は、ステンレス鋼およびチタン合金のうち少なくとも1つを含有することができる。スプルーは、1個以上のサイドランナーと流体連通することができる。それらサイドランナーの1個以上は、閉鎖端よりもスプルーの前記流体入り口端の方により近くなるように任意的に角度を成す長軸を有する(例えば、該スプルーの長軸と該サイドランナーとは、約45°の角度を形成する)。加えて、または、代替的に、スプルーと、該スプルーの閉鎖端に最も近接して位置しているサイドランナーである閉鎖端サイドランナーとの間の連結部は、前記スプルーの閉鎖端から、スプルーの横断面長さの少なくとも約2倍の距離に位置していてよい。溶融金属の少なくとも一部分は、スプルーの閉鎖端と衝突することができる。1個以上のサイドランナーは、溶融金属で埋め戻しして(backfilled)、対応する鋳造物を形成することができる。
【0007】
もう1つの実施形態において、溶融金属を鋳造鋳型の中に注入する前、鋳造鋳型を保持するための型枠は、約870℃より高い温度に維持することができる。例えば、型枠は、約870℃〜約1000℃の間の温度範囲、または、約900℃の温度に維持することができる。鋳造鋳型は、酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素のような材料を含有することができる。
【0008】
他の実施形態は、鋳造プロセスにおいて、界面活性剤を使用することに向けられている。1つの例において、鋳造鋳型は、界面活性剤の容量百分率を、鋳型形成用スラリー(mold-forming slurry)中に存在する水分の約0.9容量%〜約4.5容量%の範囲で有する界面活性剤溶液を含有する鋳型形成用スラリーで形成することができる。鋳型形成用スラリーは、粉末100部ごとに水が約26部〜約30部である、粉末と水との混合物で形成することができる。鋳型形成用スラリーは、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素のうち少なくとも1つを含有することができる。もう1つの例において、鋳造ツリー(casting tree)の表面を界面活性剤と接触させて、該ツリー表面を湿らすことができる。界面活性剤は、水溶液の状態で存在する場合があるか、または、水である場合がある。その後、鋳造鋳型は、鋳型形成用スラリーを使用し、該スラリーを湿ったツリー表面と接触させることによって形成され、その結果、ツリー表面を湿らせない場合と比べて、鋳造鋳型製品パターン表面の表面仕上がりを改善することができる。
【0009】
本発明は、(必ずしも一定の縮尺ではない)添付図面と関連して記載された次の詳細な記述から、更に十分に理解されるであろう。
【0010】
〔本発明の詳細な記述〕
次に、幾つかの典型的な実施形態を記述して、本明細書に開示される装置および方法の構造と機能と製造と使用との原理の総合的理解を提供する。これらの実施形態の1つ以上の例を、添付図面に例示する。本明細書に具体的に記述され添付図面に例示された装置および方法が非制限的な典型的な実施形態であること、ならびに、本発明の範囲が特許請求の範囲によってのみ定められることを、当業者は理解するであろう。1つの典型的な実施形態に関連して例示されたか、または記述された特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。そのような部分的変更および変形は、本発明の範囲に含まれるように意図されている。
【0011】
本発明の幾つかの実施形態は、医療用要素または医療装置を鋳造するために選び出されている。鋳造部品(cast pieces)は、患者の内部領域に露出するのに適する場合がある(即ち、当該材料は不活性であり、患者の中に有害物質を浸出しない)。幾つかの実施形態において、それらの要素または装置は、ステンレス鋼合金(例えば、析出硬化SS17−4合金)またはチタン合金(例えば、αβTi6Al4V合金)のような金属材料から鋳造することができる。特定の実施形態では、狭い温度動作範囲(temperature working range)、即ち、溶融物が受け入れ難いほど反応性になる前の当該材料の融点または溶融範囲を超える小さな温度範囲を示すことがある金属材料を利用することができ、このような温度範囲により、鋳造部品の不純物汚染(即ち、もはや医療品質等級として見なされない材料が得られる結果となる)、および/もしくは、機械特性もしくは表面特性の損失、および/もしくは、鋳型中における不完全部品の形成、が引き起こされることがある。また、該金属材料は、適切な温度動作範囲内でさえ制限された流動性(例えば、高粘度)を示すことがある。当然ながら、金属および合金のような特定の鋳造用材料に対し特定的に言及したにもかかわらず、本出願の様々な態様に関連し、部品を鋳造するための他の種類の材料(例えば、材料の融点付近における高反応性と粘度とに関する類似の問題を示す非金属)を利用することも可能である。
【0012】
幾つかの実施形態は、概して小規模である要素および装置を鋳造することに向けられている。そのような要素のサイズは、長軸および/または短軸の長さに関連して記述することができる。長軸は、鋳造部品の最長寸法である場合があり、また、短軸は、長軸に対して直交する最短距離であって、それらの軸によって形成される平面の中に鋳造部品を取り囲む矩形を長軸と共に画定することのできる、最短距離である場合がある。例えば、鋳造部品は、約25.4mm(約1インチ)未満もしくは約7.62mm(約0.3インチ)未満の長軸長さ、および/または、約9.53mm(約3/8インチ)未満もしくは約2.03mm(約0.08インチ)未満の短軸長さを有する場合がある。用語「長軸(major axis)」および「短軸(minor axis)」は更に、他の構造体[例えば、本明細書に解説される鋳造ツリー(cast tree)を形成するための鋳型の内部におけるキャビティ(cavity)のサイドランナー(side runner)もしくはスプルー(sprue)]のサイズを画定するために使用することができる。幾つかの実施形態では更に、鋳造部品を、約100未満(即ち、商業的に認められている鋳造用材料の等級より小さい)または約50未満のRa値によって特徴付けられる表面粗さ(surface roughness)で形成することができる。
【0013】
特定のいかなる理論にも制限されることなく、本明細書に解説される技術は、ステンレス鋼合金(例えば、析出硬化SS17−4)およびチタン合金(例えば、α−βTi6Al4V)のような医療品質等級合金を使用して、本明細書に解説されるサイズおよび/または粗さ特性で、鋳造部品および鋳造装置を作り出すことができるものと確信する。なぜなら、そのような技術は、非常に粗い製品、または、部品のサイズに匹敵する(即ち、動作不能な部品を生じる)粗さ特性を有する製品、または、完全に鋳造された部品を確実には形成することのできない製品、を生じる従来の鋳造法に関する特有の問題を少なくとも部分的に解決することができるからである。例えば、図1Aに示されるように、金属合金の従来の鋳造法を用いて形成された継ぎ手(joint)は、かなりの粗さ110を示す。図1Bは、鋳型に気泡が形成されたことに起因して顎部品(jaw piece)に形成された気泡120を示す。
【0014】
本明細書に記述される典型的な実施形態と一致した鋳造部品および鋳造装置は、鋳造ツリーと共に形成することができる。図2は、幾つかの典型的な実施形態と一致した鋳造ツリー200を示す。鋳造ツリー200は、溶融した鋳造用材料をスプルー(sprue)に通して注ぎ、対応する幹構造体(trunk structure)210を形成することによって形成することができる。スプルーは、1個以上のサイドランナー(side runners)と流体連通(fluid communication)することができる。各々のサイドランナーは、所望の鋳造部品を含む、製品のブランチアーム(product branch arm)220であって、図2に示されるように、鉗子の顎(foreceps jaw)の一部分として例示される、ブランチアーム220に相当する場合がある。鋳造ツリー全体200が形成され硬化した直後、各々のブランチアーム220は、幹構造体210から切り離され、次いで、対応する医療装置の少なくとも一部分として利用されることができる。典型的な実施形態に一致した鋳造ツリーは、様々なサイズと形状とを有する幹構造体とブランチアームとを有することがある。例えば、ブランチアームは、必ずしも同一サイズである必要はなく、左右対称パターンに配向させる必要もない。なお、ブランチアームの数と、幹構造体に対するブランチアームの相対配向(relative orientation)とは、様々である場合があり、本出願書類の中で明示的に言及されたもの以外の様式を包含する。
【0015】
図2に示されるツリーのようなツリーは、インベストメント鋳造法(investment casting process)を用いて形成することができる。図3の流れ図を参照して、典型的なインベストメント鋳造法300の諸工程を説明する。ツリーパターン(tree pattern)は、プロセス300の工程310においてキャビティ成形用物体(cavity-shaping object)の役割を果たすように形成される。該ツリーパターンは、ワックスおよび/もしくはプラスチックのようなポリマー材料(例えば、ポリスチレンアーム);ならびに/または、「焼き尽くし(burn out)」工程の間に除去することのできる他の材料;で構築することができる。該ツリーパターンの1つ以上のサイドランナーはそれぞれ、該プロセスが終了したときの鋳造部品に対応するキャビティまでの流体通路を形成するように作用することができる。該ツリーパターンは、鋳型を形成するインベストメント・スラリー(investment slurry)を保持するように作用する型枠(flask)の中に挿入される(320)ことができる。利用することのできるインベストメント・スラリーの種類には、選定した溶融材料を鋳造するのに適するものが包含される。諸例には、酸化アルミニウムベーススラリー、ならびに、ケイ素および酸素をベースとするスラリー、[例えば、ニューヨーク州アミティービル(Amityville)、ロマノフ・インターナショナル社(Romanoff International)からのジェイ・フォーミュラ・プラチナム・インベストメント(J Formula Platinum Investment);オハイオ州モーミー(Maumee)、デンツプライ・インターナショナル−ランサム・アンド・ランドルフ(Dentsply International-Ransom & Randolph)からの780インベストメント(780 Investment)]が包含される。インベストメント・スラリーは、ツリーパターンを含有する型枠に加えられ(330)、その後、真空室に置かれて、気泡を除去することができる。該インベストメント・スラリーが硬化したとき、該型枠および鋳型をオーブンに入れて、ツリーパターンの諸要素[例えば、スプルー形成用ワックス製幹(wax trunk)、プラスチックアーム、および/または、プラスチックパターンの他の部分]を焼き尽くし(340)、結果的に、硬化したインベストメント鋳型の内部にキャビティを残して鋳造材料を挿入することができる。次いで、該鋳型は、ある充填機構(filling mechanism)(例えば、減圧ガス室を有する市販の遠心分離機)を使用して、溶融した鋳造用材料(例えば、溶融金属350)で充填することができる。型枠および鋳型は、遠心分離機内部に位置させられ、かつ、固体金属の鋳造材料をるつぼの中に入れ、その後、溶融および注入を行うことができる。遠心分離機の蓋を閉鎖した直後、減圧ガス室は、真空にし、次いで、非反応性ガス(例えば、アルゴン)で埋め戻しすることができ、一方、金属の鋳造材料は、(例えば、電気誘導加熱によって)適切な温度にさらされて溶融することができる。該遠心分離機を加速することによって、溶融金属をインベストメント鋳型の中に挿入することができる。そのような注入は高速で起こり、該溶融金属が固化し始める前に、鋳型キャビティの充填を促進することができる。該溶融金属が冷却され固化した後、該鋳型を除去して(360)、金属の鋳造ツリーを露呈することができる。前記諸要素は、例えばゲート除去(degating)を行うことによって、該鋳造ツリーのブランチアーム(branch arm)から除去され(370)、その後、医療装置の部品として使用されることができる
【0016】
鋳造ツリーは、前述のようにインベストメント鋳造法を用いて形成することができるが、かなり多数の既知の鋳造技術を用いることも可能である。本明細書に解説される諸技術を任意の組合せで既知の他の鋳造方法に適用して、本明細書に解説されるような部品および他の製品を形成することができることを、当業者は容易に認識するであろう。
【0017】
以下の諸実施形態は、鋳造(例えば、インベストメント鋳造)において使用して、本明細書に解説されるように、金属鋳造部品の表面品質および/または収率を改善することができる技術を説明している。各々の実施形態は、別個の技術として実施することができるが、それらの技術の1つ以上を組み合わせて、他の実施形態を形成することができる。それらの技術のいずれも、単独で実施することができるか、または、任意の他の1つ以上の技術と組み合わせることができ、そのような変更(permutations)は全て、本出願の範囲内にあるものと解釈される。
【0018】
サイドランナーの埋め戻し(backfilling)
1つの典型的な実施形態は、医療装置の鋳造部分を形成することに向けられている。溶融金属は、例えば遠心分離機を使用することによって、鋳型中のスプルーの流体入り口端の中に注入することができる。溶融金属の種類には、前に本明細書で解説した全ての種類(例えば、ステンレス鋼合金またはチタン合金)が包含される。スプルーは、該スプルーと流体連通している1つ以上のサイドランナーを有することができる。溶融金属は、(例えば、該溶融金属がサイドランナーを完全に充填することができる前に)スプルーの閉鎖端の方へ迅速に横切り、該閉鎖端に衝突し、かつ、流れ方向を変えることができる。該溶融金属は、続いて、該サイドランナーのうちの1つ以上を埋め戻しすることができる。そのような埋め戻しを行うことにより、結果的にサイドランナーが完全に充填され、そうされることによって、該金属を冷却したとき、鋳造物が形成される。
【0019】
前記溶融金属を実質的にそれの融点より高い温度まで加熱して、該溶融金属を前記鋳造鋳型サイドランナーに十分充填することができるので、上記実施形態は有利となることがある。特定のいかなる理論にも必ずしも拘束されずに、前記溶融材料は、該溶融材料が高温であることに起因して、鋳型表面との何らかの酸化または他の表面反応を受けることがあるが、前記スプルーの閉鎖端と衝突すれば、結果的に、外側幹構造体(extraneous trunk structure)に不純物が沈降することもある。図4Aに示されるように、ステンレス鋼SS17−4で形成されたツリーのスプルーの閉鎖端410は、粗面420を示す。図4Bのグラフによって示されるような、該粗面の走査電子顕微鏡およびX線(SEM/EDX)分析によって、該粗面上にかなりの量のケイ素成分と酸素成分とが示される。これらの成分は、該鋳型上の表面反応に対応するものと推定することができる。したがって、反応は、該スプルーの閉鎖端で生じる。該溶融金属は、衝突した後、より低い温度(とは言え、サイドランナーの埋め戻しを可能にするのに適切な粘度を維持するのに依然として十分高い温度)まで冷却することができる。溶融材料をより低い温度で注入すれば、不純物を形成する傾向を妨げることができるが、その後、溶融金属が鋳型キャビティを充填しながら冷却されると、該溶融金属が鋳型の隙間(interstices)を完全に充填する前に固化する結果となることがある。
【0020】
もう1つの典型的な実施形態において、鋳型のツリーパターンには、閉鎖端と流体入り口端とを有するスプルーが包含される。該流体入り口端は、溶融材料を挿入するための開口部を含む。該スプルーは、横断面長さ(cross-sectional length)によって特徴付けることができる。該ツリーパターンは、流体連通する1つ以上のサイドランナーであって、スプルーに対する、閉鎖端サイドランナー(即ち、該スプルーの閉鎖端に最も隣接して位置するサイドランナー)の連結部が、該スプルーの閉鎖端から、該スプルーの横断面長さの少なくとも2倍の位置に存在する(例えば、該スプルーの閉鎖端から該スプルーと該閉鎖端サイドランナーとの間の連結部の始まりまでの距離が、該スプルーの横断面長さの少なくとも約2倍となる)ように位置させられることのある、1つ以上のサイドランナーを有することができる。図5Aは、スプルー530の閉鎖端520に接近して位置する閉鎖端サイドブランチ(closed-end side branches)510を備えた、鋳型のツリーパターン500を示す。比較して言えば、図5Bに示されるように、ツリーパターン505のサイドランナー515は、スプルー535の閉鎖端525から離して位置させられることができ、そのことによって、流れ線545によって示されるように、不純物の反応と、溶融金属がそれらサイドランナーの中に埋め戻される前に該溶融金属を冷却する工程とが促進される。代わりの実施形態において、スプルーに対する閉鎖端サイドランナーの連結部は、該スプルーの閉鎖端から、該スプルーの横断面長さの少なくとも3倍の位置に位置させられている。スプルーが長過ぎると、結果的に、ランナーの充填を妨げる溶融金属の冷却を引き起こすことがあるので、他の諸実施形態は、閉鎖端サイドランナーの連結部とスプルーの閉鎖端との間の長さが、スプルーの横断面長さの約2倍〜約4倍、または、約2倍〜約3倍であるものに向けられる。
【0021】
スプルーが実質的に均一な円形の断面を有する場合、潜在的な横断面長さは、該スプルーの直径を含む。非円形断面については、横断面長さは、標準的な円の公式を用いてスプルーの適切な横断面積を与える有効直径に相当することがある。横断面積が非均一である場合、選定されたスプルー長さに沿った平均横断面積またはメジアン横断面積を利用して、有効直径を算出することができ、したがって横断面長さを算出することができる。横断面長さに対する他の潜在的尺度(measures)には、スプルーの所定の長さ部分に沿った平均横断面積またはメジアン横断面積の平方根が包含される。
【0022】
もう1つの実施形態において、鋳型のツリーパターンは、溶融金属がスプルーの閉鎖端に衝突した後、1つ以上のサイドランナーの埋め戻しを促進するために位置させられた該サイドランナーを用いて配向させることができる。例えば、1つ以上のサイドランナーの長軸が、スプルーの閉鎖端よりも該スプルーの流体入り口端にいっそう近接して角度が付けられるような具合に、該サイドランナーを位置させることができる。図6Aに示されるように、ツリー600のスプルー610は、長軸614であって、それに沿って方向613に溶融材料を注入することができる長軸614を有する。サイドランナー620は、閉鎖端611よりもスプルー610の流体入り口端612にいっそう近接して角度が付けられた長軸624を有する(即ち、長軸614および624は鋭角α1を形成している)。他のサイドランナー630,640は、角度α2およびα3を形成するように配向されている。それらのサイドランナーは、それぞれ、スプルー610の閉鎖端611よりも流体入り口端612にいっそう近接して角度が付けられている。1つの特定の実施形態において、サイドランナーのうちの1つ以上は、それらがスプルーの流体入り口端にいっそう近接したサイドランナーの側面においてスプルーの長軸614と交差するとき、約45°の角度を形成する長軸を有する。
【0023】
特定のいかなる理論にも必ずしも拘束される訳ではないが、スプルーの流れ方向に対するサイドランナーの配置方向(orientation)によって、溶融金属が該スプルーの閉鎖端と衝突した後のサイドランナーの埋め戻しを促進することができるものと思われる。例えば、図6Bに示されるツリー構造は、サイドランナーがスプルーの閉鎖端に向かって角度を成している従来のアプローチを示す。しかし、サイドランナー644は、流体入り口端652よりもスプルー650の閉鎖端651にいっそう近接して角度を成しているので、方向653の方にスプルー650を流れ落ちる溶融金属は、該溶融金属が閉鎖端651と衝突する前、図6Aのツリー構造と比べていっそう容易にサイドランナーを充填する傾向を有する。結果として、該溶融金属の有害な反応が、サイドランナー内でいっそう容易に起こり、不純物を含有する鋳造製品材料を潜在的に取り込む(entraining)ことがある。対照的に、図6Aに示されるツリーの、角度を成すサイドランナーは、該サイドランナーが埋め戻し方向(backfilling direction)(即ち、矢印613によって与えられる流れ方向と反対の方向)に充填されるのを促進する。したがって、サイドランナー内における不純物の形成は、例えば、スプルーの閉鎖端セグメントに向かって何かそのような不純物の形成を促進することによって、妨げられる。
【0024】
特定の実施形態において、閉鎖端に向かって伸びるスプルー長さを利用すること、および、サイドランナーを該スプルーの閉鎖端から離して配向することの特徴(features)はいずれも、鋳造を行う間(例えば、遠心力を利用したインベストメント鋳造を行う間)、用いることができる。遠心力を利用したインベストメント鋳造では、遠心力によって作り出された圧力を用いて流れ(flow)を押し出す。本実施形態と一致して、該遠心力は、2つの局面(dimensions)、即ち、第1に、溶融るつぼの中からスプルーの中に溶融金属を押し出し、次いで、第2に、該スプルーから諸ランナーおよび部品キャビティの中に溶融金属を押し出す局面、即ち、埋め戻し(driving backfilling)で作用する。従来の重力送りランナーシステム(gravity feed runner system)で利用されている特徴に関連して、より長いスプルーとランナーシステムの逆方向との特徴を組み合わせることによって、固化する前に、該キャビティの完全な充填が達成されるのを助けることができる。
【0025】
温度の上昇
もう1つの典型的な実施形態は、鋳造部品中の欠陥を減らすのに役立つように、鋳型を、ある指定温度よりも高い温度にさらすことに向けられる。例えば、鋳型を形成するためにインベストメント鋳造で使用される型枠(flasks)を、約780℃より高い温度または約870℃より高い温度に維持して、(例えば、鋳込み(pouring)または注入によって)溶融金属を挿入する間の、鋳型材料の温度を上昇させることができる。その温度は、特定の温度範囲内(例えば、約780℃〜約1000℃の間、もしくは、約870℃〜約1000℃の間、もしくは、約870℃〜約950℃の間)、または、特定温度の周辺(例えば、約900℃)に維持することができる。1つの実施形態において、インベストメント鋳造が行われる間、従来から利用されている温度範囲より高い温度または温度範囲であるものの、溶融金属が挿入されている間、鋳型が、鋳型内部の望ましくない化学反応を悪化させるか、または促進すると思われる温度よりも低い温度もしくは温度範囲に、鋳型をさらす。酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素をベースとする鋳型材料は、潜在的に、技術から利益を得ることがある。上記の温度または温度範囲は、1つの典型的な例において、炉内のパターン焼き尽くし工程(pattern burnout step)と協同して達成することができる。該炉は、焼き尽くし(burnout)と適切な型枠温度とを達成するために、約12時間の間1つの連続サイクルで稼動させることができる。続いて、該焼き尽くし工程が終了した直後、溶融金属を鋳型に添加する(例えば、鋳型の中に鋳込む)ことができる。従来の重力供給法(gravity feeding)のような幾つかの例において、溶融金属を鋳型の中に供給するための管もまた、該溶融金属が該鋳型の中に入り込むときに該溶融金属が過剰に冷却されるのを妨げるために特定温度または特定の温度範囲に維持することができる。遠心力を利用した鋳造を採用する場合、管も運搬装置も必要でない。溶融金属は、るつぼの頂部端の近辺の上方に穴(hole)または注ぎ口を有する該るつぼの中で溶融し、次いで、鋳型のスプルー開口部(sprue opening)に非常に近接して位置させられることができる。遠心力の下、液体金属が、該るつぼの傾斜側面を昇って注ぎ口の外に流れ、該るつぼの注ぎ口と該鋳型との間の短い自由空間距離(free space distance)を横切り、次いで、該るつぼの注ぎ口と直接一線上に並んでいる、該鋳型のスプルー開口部の中に直接流れるような具合に、該るつぼは、僅かな角度を成して位置させられることができる。
【0026】
型枠の温度を上昇させて行った諸実験によると、結果的に780℃未満の温度を用いた実験と比べて、不完全なサイドランナーの充填は、ほぼ1桁(nearly an order of magnitude)少なかった。前記の温度上昇によって、完成された鋳造部品の仕上がりは改善される傾向があった(即ち、結果的に鋳造部品の表面に、より少ない空隙、より少ない気泡、および、より少ないセラミック不純物が存在した)。上昇した型枠温度は、特定の溶融金属合金をそれらの溶融温度より高い温度に維持し、その結果、該溶融材料が、鋳型のキャビティ内部に完全に含有されている間、冷却され固化される前に部品のキャビティを完全に充填するのを可能にするのに役立つことができるものと思われる。加えて、供給ランナー(feeding runner)、および、ダンプ(dump)または溶融材料貯蔵器は、鋳型のキャビティが完全に充填されて該鋳型のキャビティ内で冷却し始める前は、冷却しないように設計されることが好都合である場合がある。
【0027】
界面活性剤の使用
典型的な実施形態に一致したもう1つの技術は、鋳型中に気泡(bubble)が形成される傾向を減少させるために界面活性剤を使用する。気泡の形成は、鋳造部品の表面の品質に悪影響を及ぼすことがある。1つの実施形態において、固化時における鋳型キャビティの表面仕上がりを改善するのに役立つように、界面活性剤を鋳型スラリー(mold slurry)に添加することができる。例えば、界面活性剤は、鋳型スラリーの中に添加され、次いで、ツリーパターンを有する型枠の中に挿入されて、所望の鋳型パターンを形成することができる。界面活性剤は、水性洗浄溶液[例えば、水に分散された、プロクター・アンド・ガンブル社(Procter & Gamble)によって配給されているドーン・リキッド食器用洗剤(Dawn Liquid Dishwashing Detergent)のような市販の液体洗剤]として処置されている場合がある。鋳型スラリーでは、様々な濃度の液体洗剤を利用することができるが、1つの特定の実施形態において、界面活性剤は、鋳型スラリー中に存在する水分の約0.9容量%(v/v)より高い濃度、または、約1.8容量%(v/v)より高い濃度を有する液体洗剤溶液として流通している。一般に、より高い濃度の界面活性剤を利用することも可能である。幾つかの例において、液体洗剤の濃度は、あまりにも高くなり、促進されたインベストメントの凝固(investment setting)を引き起こすことができないことがある。したがって、幾つかの実施形態において、液体洗剤は、鋳型スラリー中に存在する水分の約4.5容量%(v/v)未満の濃度、または、約3.6容量%(v/v)未満の濃度、または、約2.7容量%(v/v)未満の濃度を有することがある。また、液体洗剤の濃度は、鋳型スラリー中に存在する水分の約0.9〜約4.5容量%(v/v)の間、または、約0.9〜約3.6容量%(v/v)の間、または、約1.8〜約2.7容量%(v/v)の間である場合がある。そのような範囲は、気泡の形成を減少させるのに十分な界面活性剤を利用するという利点と、鋳型スラリーの凝固の促進触媒作用(accelerated catalysis)によって、鋳型スラリーの作用時間を潜在的に短縮することのある過剰の界面活性剤が使用されるのを防止するという利点とを有することができる。鋳型スラリーの残余成分の濃度は、利用された鋳型材料の種類によって決まる場合がある。例えば、ケイ素および酸素ベースのインベストメント・スラリー(investment slurry)(例えば、オハイオ州モーミー、デンツプライ・インターナショナル−ランサム・アンド・ランドルフからの780インベストメント)は、乾燥インベストメント粉末100重量部に対して、水を約26〜約30重量部の範囲で利用することができる。当然ながら、酸化アルミニウムのような他の鋳型材料を使用することもできる。
【0028】
界面活性剤の使用を含まない鋳型に気泡欠陥(bubble defects)が形成されることを比較しながら行った実験は、界面活性剤を使用する鋳型と比較して、気泡欠陥が33%〜約3%減少することを示した。通常、気泡欠陥の数は、鋳型中の界面活性剤の量が増大するにつれて減少する傾向にある。
【0029】
もう1つの実施形態において、界面活性剤は、後で鋳型内部にキャビティを形成するパターン(例えば、ツリーパターン)の上に塗布することができる。例えば、該パターンは、インベストメント鋳造法の一部であって、界面活性剤を塗布したパターンを型枠内に置き、次いで、スラリーを成形するための鋳型スラリーを入れて、固化した鋳型の内部に所望のキャビティを形成する、該鋳造法の一部である場合がある。界面活性剤は、水溶液(例えば、水中に分散した洗剤)の中に存在する場合がある。また、該水溶液は水である場合がある。本明細書で使用される用語「水(water)」には、典型的には商業的適用および実験室適用の範囲内で利用される様々な品質等級の水(例えば、蒸留水、濾過水、市販の活性炭システムを通過した水、様々な品質等級の脱イオン水、典型的な飲料水、等)が包含される。本実施形態はまた、本明細書に記述されるような、鋳型スラリーに界面活性剤を添加するあらゆる変形(variations)に従って実施することができる。
【0030】
溶融金属合金のインベストメント鋳造を行う間、水性洗浄溶液をワックスツリーに塗布することによって行った諸実験によって、結果的に表面仕上がりが改善された鋳造部品が得られた。パターンツリー上に界面活性剤を全く使用しないことと対照して、界面活性剤として水を使用する諸実験を比較した場合、湿潤パターンのツリーは、結果的に、チャネル特徴部(channel feature)と一致する表面仕上がりを有する鋳造部品を有することに関し、約3倍高い収率が得られた。
【0031】
実験
本出願の幾つかの態様を例示するために、次の実験結果を提供する。しかし、当該実験は、本発明のいずれの実施形態の範囲をも限定することを意図していない。
【0032】
概して、以下に記述される諸実験は、遠心分離機を使用しながら、図3の流れ図に記述されるプロセスに従うインベストメント鋳造操作を利用し、かつ、本明細書に記述される特定の部分的変更を採用する。特に明記しない限り、全ての実験で利用した溶融金属は、析出硬化17−4ステンレス鋼であった。また、インベストメント材料(investment material)は、デンツプライ・インターナショナル−ランサム・アンド・ランドルフ(Dentsply International Ransom & Randolph)(オハイオ州モーミー(Maumee))からの780インベストメントであった。
【0033】
実験1: スプルーの閉鎖端に向かう長さの影響
合計16個の製品ツリー(product trees)であって、各々のツリーが12個の製品サイドランナーアーム(product side runner arms)を有する、製品ツリーを、下の表1に挙げられるような様々な条件の下で鋳造した。スプルーの直径は、約9.92mm(約25/64インチ)であった。
【表1】


【0034】
63.5mm(2.5インチ)の型枠高さは、スプルーの閉鎖端に最も近いサイドランナーであって、実質的に該スプルーの閉鎖端に隣接して位置付けられている、サイドランナーを有することに対応した。88.9mm(3.5インチ)の型枠高さは、スプルーの閉鎖端から約25.4mm(約1インチ)の位置に位置付けられている、該スプルーの閉鎖端に最も近いサイドランナーを有することに対応した(即ち、閉鎖端サイドランナーの連結部は、該スプルーの閉鎖端から、スプルー直径の約2.56倍の位置にある)。型枠温度とは、溶融金属が注入される間の、型枠および鋳型組立体の温度をいう。スピン時間(spin time)とは、遠心分離機が作動して溶融金属を注入する時間の長さをいう。鋳造温度に関し、MPは、前記金属が完全に液化する温度である約1250℃に一致する。該材料は温度範囲を超えて溶融する。
【0035】
ツリーの諸部品の上の表面反応(surface reaction)の量(即ち、サイドランナー上の表面反応の量)に及ぼす型枠高さの影響を、1〜3の尺度で定性的に等級分けした。1は、諸部品上の表面反応が最大量であったことであり、3は、諸部品上の表面反応が最小量であったことである。そのような尺度を用いて、諸部品の表面反応等級を、上記表1の最右列に記載する。平均値に関し、63.5mm(2.5インチ)の型枠高さは、約1.8の平均表面反応等級に相当するのに対し、88.9mm(3.5インチ)の型枠高さは、約2.5の平均表面反応等級に相当する。したがって、閉鎖端サイドランナーの後のスプルーの長さがより長い場合、ツリー中に部品が形成されるときの副反応はより小さくなることが、本実験によって分かる。
【0036】
実験2: サイドランナーの角度方向の影響
合計4個の製品ツリーであって、各々のツリーが12個の製品サイドアームランナー(product side arm runners)を有する、製品ツリーを作り出した。それら製品ツリーのうち2個は、(例えば、図6Aに示されるように)スプルーの流体入り口端の方に角度を成すサイドアームランナーと共に鋳造されたのに対し、他の2個の製品ツリーは、スプルーの閉鎖端の方に角度を成すサイドアームランナー(例えば、図6Bに示される閉鎖端ランナー)と共に鋳造された。製品サイドアームは、多数の歯を備えた医療装置の顎部品(jaw pieces)として鋳造した。該製品サイドアームの表面粗さは、1または2の定性的な尺度で測定され、サイドランナーの配置方向(orientation)に起因するあらゆる潜在的影響を決定した。
【0037】
定性的な観察によって、前記顎部品は、前記スプルーの流体入り口端の方に角度を成すサイドアームを備えた前記ツリーでは、目に見える欠陥を全く有さないこと(等級1)が定量化された。対照的に、前記スプルーの閉鎖端の方に角度を成す製品サイドアームを備えた前記ツリーは、少量の表面粗さ、および目に見える欠陥を有した(等級2)。
【0038】
実験3: 鋳造製品に及ぼす型枠温度の影響
8個の製品ツリーであって、各々のツリーが12個の製品サイドアームを有する、該製品ツリーを鋳造した。それらの製品ツリーは、オハイオ州モーミー、デンツプライ・インターナショナル−ランサム・アンド・ランドルフからの780インベストメント(780 Investment)を用いて鋳造した。それらの製品ツリーのうち4個は、760℃の型枠温度を用いて鋳造され、残り4個は、900℃の型枠温度を用いて鋳造された。後者は、製造業者がインベストメント材料をさらすべきであると推奨する温度を超えている。各々のツリーについて、諸製品サイドランナーを、不完全な充填と表面粗さとについて試験した。とりわけ、表面粗さは、1〜5の尺度で定性的に等級分けした。1は、最小粗さ〜粗さなしであり、5は、鋳造部品上で観察された粗さの最大等級である。
【0039】
型枠温度および観察データを、表2に示す。
【表2】


表2の諸数値を用いると、760℃の型枠温度にさらされたツリーに対するサイドランナーの不完全な充填の平均数は、4であり、表面粗さの平均等級は1.5である。対照的に、900℃の型枠温度にさらされたツリーに対するサイドランナーの不完全な充填の平均数は、0.25であり、表面粗さの平均等級は1である。したがって、平均すると、型枠温度がより高くなれば、サイドランナーの不完全な充填はより少なくなり、かつ、表面粗さは通常、より小さくなる。
【0040】
実験4: 製品表面の気泡形成に及ぼすインベストメントへの界面活性剤添加の影響
16個の製品ツリーであって、各々のツリーが12個のサイドランナーを有している、該製品ツリーを鋳造した。それらの製品ツリーは、オハイオ州モーミー、デンツプライ・インターナショナル−ランサム・アンド・ランドルフからの780インベストメントを用いて鋳造された。該インベストメント材料の調製は、シンプル・グリーン・ソープ・クリーナー(Simple Green Soap Cleaner)[カリフォルニア州ハンティングトン・ハーバー(Huntington Harbour)のサンシャイン・メーカーズ・インコーポレイティッド(Sunshine Makers, Inc.)]2mLを、該鋳造ツリーのうち8個の鋳型で使用されるように、等容量の水と交換し、残り8個のツリーは標準的なインベストメント調製法に従ったこと以外は、前記製造業者の指示に従った。それらツリーの鋳造が終了したとき、各々のツリーの製品アームは全て、気泡の存在について調べられた。特定の鋳造ツリーに対する全ての製品サイドランナーに関連する総気泡数を記録した。
【0041】
16個の鋳造ツリーに関する結果の概要を表3に示す。
【表3】


前記実験結果は、形成された96個の部品の結果を示しており(即ち、各々の部品は、1個の製品サイドランナーと一致する)、部品の33.3%には、インベストメント材料中に界面活性剤を使用することなく形成されたツリーに対する気泡形成に起因して、欠陥があった。対照的に、石鹸液(soap solution)2mLを取り込んだインベストメント材料を用いて形成されたツリーでは、表面気泡(surface bubbles)が存在することに起因して、部品の3.1%のみに欠陥があった。
【0042】
実験5: 部品の表面仕上がりに及ぼす水分の影響
8個の製品ツリーであって、各々のツリーが12個の製品サイドランナーを有する、該製品ツリーを鋳造した。該製品サイドアームは、多数の歯を備えた医療装置の顎部品として鋳造された。それらの歯の間の領域の表面仕上がりを調査して、鋳造ツリーの諸サイドアームのいずれかによって滑らかな仕上げを達成することができたのかを調べた。とりわけ、それら製品ツリーのうち4個については、インベストメントを型枠に加える直前に、ワックスツリーの12個の製品サイドブランチ全ての歯の列の間に、一滴の脱イオン水をたらした。残り4個の製品ツリーについては、インベストメントを型枠に加える直前に、ワックスツリーの12個の製品サイドブランチのうち6個のサイドブランチの歯の列の間に、一滴の脱イオン水をたらした。鋳造した最終の製品ツリーの歯の間の表面は、表面反応の存在について調べられた。表面反応の存在は、0〜5の尺度で定性的に等級分けした。0は、最小表面反応〜表面反応なしを示し、5は、最大表面反応等級に相当する。
【0043】
前記実験の結果を、表4に示す。
【表4】


表4に示されるように、乾燥している部品の歯の間の領域は、脱イオン水で湿らした領域よりも高い表面粗さの等級を概して有する。乾燥領域に対する表面粗さの平均等級が3.25であることと比べて、湿潤領域に対する表面粗さの等級の平均値は1.25である。
【0044】
当業者は、上述の諸実施形態に基づき、本発明の更なる特徴と利点とを認識するであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲によって示されるものは別として、詳細に図示され記述されてきたものによって限定されない。実際、前述のとおり、諸技術の1つ以上は、製品鋳造部品を提供するために、単独で、または、他のいずれかの技術と組み合わせて実施することができる(例えば、サイドランナーに角度を付ける工程は、スプルーの閉鎖端から横断面長さの少なくとも2倍の位置に閉鎖端サイドランナーを位置させる工程と組み合わせることができる)。本明細書に引用された刊行物および参考文献は全て、参照によって、そっくりそのまま本明細書に明示的に組み入れられる。
【0045】
〔実施の態様〕
(1)鋳造された医療用要素において、
医療装置の要素として使用されるように構成された金属鋳造部品であって、ステンレス鋼、およびチタン合金のうちの少なくとも1つで形成されており、かつ、約100未満のRa値によって特徴付けられる粗さを備えた鋳造表面を有する、金属鋳造部品、
を備える、鋳造された医療用要素。
(2)実施態様1に記載の鋳造された医療用要素において、
前記金属鋳造部品は、約25.4mm(約1インチ)未満の長軸長さを含む、鋳造された医療用要素。
(3)実施態様1に記載の鋳造された医療用要素において、
前記金属鋳造部品は、約9.53mm(約3/8インチ)未満の短軸長さを含む、鋳造された医療用要素。
(4)実施態様1に記載の鋳造された医療用要素において、
前記Ra値は、約50未満である、鋳造された医療用要素。
(5)実施態様1に記載の鋳造された医療用要素において、
前記金属鋳造部品は、SS17−4ステンレス鋼、およびTi6Al4V合金のうちの少なくとも1つで形成されている、鋳造された医療用要素。
(6)患者の体の内部領域に暴露するのに適した医療装置において、
前記医療装置の少なくとも一部分は、ステンレス鋼、およびチタン合金のうちの少なくとも1つを含有しており、
前記医療装置の前記一部分は、約25.4mm(約1インチ)未満の長軸長さを有しており、
前記医療装置の前記一部分は、鋳造によって形成されている、医療装置。
(7)実施態様6に記載の医療装置において、
前記医療装置の前記一部分は、約9.53mm(約3/8インチ)未満の短軸長さを有している、医療装置。
(8)実施態様6に記載の医療装置において、
前記医療装置の前記一部分は、約100未満のRa値によって特徴付けられる粗さを有する表面を含む、医療装置。
(9)実施態様6に記載の医療装置において、
前記医療装置は、SS17−4ステンレス鋼、およびTi6Al4V合金のうちの少なくとも1つを含有している、医療装置。
【0046】
(10)医療装置の鋳造部分を形成する方法において、
鋳造鋳型のスプルーの流体入り口端の中に溶融金属を注入する工程であって、前記スプルーが少なくとも1つのサイドランナーと流体連通している、工程と、
前記溶融金属の少なくとも一部分を、前記スプルーの閉鎖端に衝突(impact)させる工程と、
前記少なくとも1つのサイドランナーを前記溶融金属で埋め戻しして、少なくとも1つの鋳造物を形成する工程と、
を含む、方法。
(11)実施態様10に記載の方法において、
前記少なくとも1つのサイドランナーは、前記閉鎖端よりも前記流体入り口端の方により近くなるように角度を成す長軸を含む、方法。
(12)実施態様11に記載の方法において、
前記少なくとも1つのサイドランナーの前記長軸と前記スプルーの長軸との間に形成される鋭角は、約45°である、方法。
(13)実施態様10に記載の方法において、
前記スプルーと閉鎖端サイドランナーとの間の連結部は、前記スプルーの前記閉鎖端から、スプルーの横断面長さの少なくとも約2倍の距離に位置させられる、方法。
(14)実施態様10に記載の方法において、
前記溶融金属は、ステンレス鋼、およびチタン合金のうちの少なくとも1つを含有する、方法。
(15)実施態様10に記載の方法において、
前記溶融金属を注入する工程は、遠心分離を利用して前記溶融金属を注入する工程を含む、方法。
(16)実施態様10に記載の方法において、
前記溶融金属を前記鋳造鋳型の中に注入する前に、前記鋳造鋳型を保持するための型枠を約780℃より高い温度に維持する工程、
を更に含む、方法。
(17)実施態様16に記載の方法において、
前記鋳造鋳型を形成する工程は、前記型枠を約870℃〜約1000℃の間の温度にさらす工程を含む、方法。
(18)実施態様16に記載の方法において、
鋳型スラリーは、酸化アルミニウム、および酸化ケイ素のうちの少なくとも1つを含有する、方法。
(19)実施態様10に記載の方法において、
界面活性剤の容量百分率を水分の約0.9容量%〜約4.5容量%の範囲で有する界面活性剤溶液を含有する鋳型形成用スラリーで前記鋳造鋳型を形成する工程、
を更に含む、方法。
(20)実施態様19に記載の方法において、
前記鋳型形成用スラリー中の粉末に対する前記界面活性剤溶液の容積比は、粉末100部当り水が約26部〜約30部の範囲である、方法。
(21)実施態様19に記載の方法において、
前記鋳型形成用スラリーは、酸化アルミニウム、および酸化ケイ素のうちの少なくとも1つを含有する、方法。
(22)実施態様10に記載の方法において、
鋳造ツリーの表面を界面活性剤と接触させて、前記表面を湿らす工程と、
鋳型形成用スラリーを前記鋳造ツリーの湿潤した前記表面と接触させることにより、前記鋳造鋳型を前記鋳型形成用スラリーで形成して、前記鋳造ツリーの前記表面を湿らさないことと比べて、鋳造鋳型製品パターンの表面の表面仕上がりを改善する工程と、
を更に含む、方法。
(23)実施態様22に記載の方法において、
前記界面活性剤は、水溶液中に存在する、方法。
(24)実施態様23に記載の方法において、
前記水溶液は、水である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1A】従来の鋳造方法を用いて形成された、粗面を有する鋳造継ぎ手の写真である。
【図1B】従来の鋳造方法を用いて形成された鋳造顎(cast jaw)であって、それの表面に気泡が形成されている、鋳造顎の写真である。
【図2】本発明の1つの実施形態に一致する、スプルーと製品サイドブランチとを有する鋳造ツリーを示す斜視図を示す。
【図3】本発明の幾つかの実施形態に一致する、典型的なインベストメント鋳造法の諸工程の流れ図を示す。
【図4A】典型的な実施形態に一致する、鋳造用スラリーとインベストメントとの反応に基づく表面粗さを示す、鋳造ツリーの閉鎖端の写真である。
【図4B】図4Aに示されるスプルーの閉鎖端の粗面の、走査電子顕微鏡およびX線による分析に基づくグラフであり、該粗面近辺に高ケイ素含有量を示す。
【図5A】スプルーの閉鎖端に隣接する位置で、サイドランナーが該スプルーに連結されているツリーパターンを示す概略側面図を示し、流れパターン線(flow pattern lines)は、溶融材料が該スプルーの閉鎖端に衝突する前に、該溶融材料が該サイドランナーの中に入ることを示す。
【図5B】図5Aに示されるツリーパターンと比べて、スプルーの閉鎖端からいっそう遠い位置で、サイドランナーがツリーパターンに連結されているツリーパターンを示す斜視図を示し、流れパターン線は、溶融材料が該スプルーの閉鎖端に衝突した後、該溶融材料が該サイドランナーの中に埋め戻しされることを示す。
【図6A】サイドランナーが、スプルーの閉鎖端よりも流体入り口端の方により近くなるように角度を成しているツリーパターンの概略断面図である。
【図6B】サイドランナーが、スプルーの長軸に垂直であるか、または、該スプルーの流体入り口端よりも閉鎖端の方により近くなるように角度を成しているツリーパターンの概略断面図である。
【出願人】 【識別番号】595057890
【氏名又は名称】エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
【出願日】 平成19年9月27日(2007.9.27)
【代理人】 【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延

【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭

【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音


【公開番号】 特開2008−80403(P2008−80403A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2007−251949(P2007−251949)