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【発明の名称】 鋳造用金型及び鋳造品の製造方法
【発明者】 【氏名】橋本 政幸

【要約】 【課題】インサート金型を鋳造品から容易に抜くことができると共に鋳造品に欠陥を生じさせることのない鋳造用金型を提供する。

【解決手段】ボトムダイ1及びサイドダイ2からなる下型3と、下型3とでキャビティー4を形成する上型5と、キャビティー4内に配置されて鋳造品6に円筒形状の凹部7を形成するインサート金型8と、インサート金型8を軸方向に回転させるロータリーアクチュエータ9を有し、溶湯温度が凝固温度まで低下したときに、インサート金型8を回転させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と、
前記下型とでキャビティーを形成する上型と、
前記キャビティー内に配置されて鋳造品に円筒形状の凹部を形成するインサート金型と、
前記インサート金型を軸方向に回転させる回転手段と、
を備えたことを特徴とする鋳造用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳造用金型であって、
前記インサート金型を複数設けると共に前記各インサート金型にそれぞれ前記回転手段を設けて、各インサート金型を独立して回転させる
ことを特徴とする鋳造用金型。
【請求項3】
請求項1に記載の鋳造用金型であって、
前記インサート金型を複数設け、これらインサート金型をベルトで連結し、該ベルトを駆動源にて回転させて全てのインサート金型を同期させて回転させる
ことを特徴とする鋳造用金型。
【請求項4】
請求項1に記載の鋳造用金型であって、
前記インサート金型を複数設け、ラックアンドピニオンにより全てのインサート金型を同期させて回転させる
ことを特徴とする鋳造用金型。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一つに記載の鋳造用金型であって、
前記インサート金型に、前記キャビティー内に充填される溶湯温度を検知する温度検知手段を設け、溶湯温度が凝固温度まで低下した時に前記インサート金型を回転させる制御部を備えた
ことを特徴とする鋳造用金型。
【請求項6】
下型と上型で形成されたキャビティー内に、鋳造品に円筒形状の凹部を形成するインサート金型を配置して型閉じを行った後、前記キャビティー内に溶湯を充填し、溶湯温度が凝固温度まで低下したときに、前記インサート金型を回転させる
ことを特徴とする鋳造品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の鋳造品の製造方法であって、
前記鋳造品は、前記インサート金型で形成する部位をシリンダボアとするシリンダーブロックである
ことを特徴とする鋳造品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の一部に凹部を持つ鋳造品を製造するための鋳造用金型及び鋳造品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
孔などの凹部を持つ鋳造品を製造するには、中子(インサート金型)を使用するが、溶湯が凝固する時の熱収縮の問題で中子を鋳造品から容易に引き抜くための手法がこれまでに種々提案されている。
【0003】
その一つの手法として、例えば、溶湯金属の熱膨張率と同等以上の熱膨張率を持つ材料で中子を形成する手法が開示されている(例えば、特許文献1など参照)。この他、中子に抜きテーパ角度を付ける手法も提案されている。
【特許文献1】特開平7−60399号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中子に抜きテーパ角度を付ける手法では、中子を鋳造品から離型するために、抜け勾配を大きくとらなければならない。また、中子に抜け勾配があると、加工代が大きくなり、加工サイクルタイムの増加及びそれに伴う工具摩耗量の増大といった問題が発生する。
【0005】
さらに、加工代が大きくなると、加工面が粗材表面から深くなるため、ヒケなどの鋳造欠陥が表れ易くなる。つまり、鋳造したものは表面(粗材表面)が粗く、機械加工を行って表面を滑らかにするときに、加工量が多くなることからヒケなどが生じ易い。
【0006】
また、鋳造品は、溶湯凝固時に収縮して中子に抱きつくため、離型抵抗が大きくなり、かじりが発生する。
【0007】
そこで、本発明は、インサート金型を鋳造品から容易に抜くことができると共に鋳造品に欠陥を生じさせることのない鋳造用金型及び鋳造品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鋳造用金型は、下型と、前記下型とでキャビティーを形成する上型と、前記キャビティー内に配置されて鋳造品に円筒形状の凹部を形成するインサート金型と、前記インサート金型を軸方向に回転させる回転手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の鋳造品の製造方法は、下型と上型で形成されたキャビティー内に、鋳造品に円筒形状の凹部を形成するインサート金型を配置して型閉じを行った後、前記キャビティー内に溶湯を充填し、溶湯温度が凝固温度まで低下したときに、前記インサート金型を回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鋳造用金型によれば、インサート金型を軸方向に回転させる回転手段を備えていることから、この回転手段を回転させればインサート金型を鋳造品からスムーズに抜くことができる。つまり、インサート金型の離型は、軸方向への抵抗力で決まるため、抜け勾配を考慮しなくてもよいから、抜け勾配ゼロ化とすることができる。
【0011】
本発明の鋳造品の製造方法によれば、溶湯温度が凝固温度まで低下したときに、インサート金型を回転させるので、その回転によりインサート金型を鋳造品からスムーズに抜くことができる。すなわち、溶湯が凝固完了直後の製品収縮が小さい段階でインサート金型を回転させることで、インサート金型と鋳造品間の離型抵抗が大幅に低減し、鋳造品にかじりなどを発生させる恐れがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
「実施の形態1」
本実施の形態では、鋳造品として4気筒エンジンの4つのシリンダボアを有したシリンダーブロックを製造する例として説明する。
【0014】
図1は溶湯をキャビティー内に充填し所定時間経過後にインサート金型を回転させる状態を示す鋳造用金型の断面図、図2はインサート金型を軸方向に回転させる回転手段の一例を示す斜視図、図3はインサート金型にシース熱電対を設けた状態を示し、(A)は上型を下面側から見たときの平面図、(B)はインサート金型の断面図、図4は型を開いて鋳造品をエジェクトする状態を示す鋳造用金型の断面図、図5は鋳造品を離型させる状態を示す鋳造用金型の断面図である。なお、図2は、回転手段の構成が判り易いように図1,図4,図5とはその大きさを異にして描いてある。
【0015】
本実施の形態の鋳造用金型は、図1から図5に示すように、ボトムダイ1及びサイドダイ2からなる下型3と、前記下型3とでキャビティー4を形成する上型5と、キャビティー4内に配置されて鋳造品6に円筒形状の凹部7を形成するインサート金型8と、インサート金型8を軸方向(周方向)に回転させる回転手段であるロータリーアクチュエータ9と、溶湯温度が凝固温度まで低下した時にインサート金型8を回転させる制御部10と、を備えて構成されている。
【0016】
ボトムダイ1は、上面1aが平坦面とされたプレートとして形成され、鋳造品6の底部を成形するために使用される。サイドダイ2は、ボトムダイ1の上にスライド自在に設けられ、鋳造品6のサイド部を成形するために使用される。
【0017】
上型5は、下面5aが平坦面とされたプレートとして形成され、鋳造品6の上部を成形するために使用される。かかる上型5は、下型3に接近してこの下型3とでキャビティー4を形成すると共に下型3から離間して型開きするように上下動される。
【0018】
上型5には、インサート金型8が4つ設けられている。かかるインサート金型8は、鋳造品6であるシリンダーブロックのシリンダボアを形成するための中子として機能する。かかるインサート金型8は、円柱体として形成され、前記上型5に対して軸方向(周方向)に回転自在に設けられている。
【0019】
ロータリーアクチュエータ9は、前記上型5の下面5aに配置されたインサート金型8をそれぞれ独立して回転させるための回転手段である。かかるロータリーアクチュエータ9は、前記インサート金型8を配置させる前記上型5の下面5aとは反対側の上面5bに設けられている。このロータリーアクチュエータ9の回転は、上型5を貫通して設けられた回転軸11によって前記インサート金型8に伝達される。ロータリーアクチュエータ9を駆動することによって、その回転が回転軸11を介してインサート金型8に伝達され、当該インサート金型8が軸方向に360度回転するようになっている。
【0020】
上型5の上部には、型開きしたときに上型5と共に上昇する鋳造品6をエジェクトするためエジェクト手段が設けられている。エジェクト手段は、エジェクトピン12と、このエジェクトピン12を保持するエジェクトプレート13と、このエジェクトピン12を押す押圧手段(図示は省略する)とからなる。
【0021】
エジェクトピン12は、エジェクトプレート13にその基端部を固定させ、エジェクト時に先端部を上型5の下面5aから突出させて前記インサート金型8を前記鋳造品6から引き抜く機能をする。かかるエジェクトピン12は、上型5に貫通して保持されるようになっている。なお、上型5とエジェクトプレート13の間には、ロータリーアクチュエータ9を押し潰さないようにするためのスペーサ14が設けられている。かかるスペーサ14は、上型5の上面5bに固定されている。
【0022】
また、本実施の形態の鋳造用金型では、キャビティー4内に充填される溶湯温度を検知する温度検知手段であるシース熱電対15を、各インサート金型8に設けている。このシース熱電対15で検知された温度は、制御部10に送られる。制御部10は、前記シース熱電対15で検知された温度をサーチし、溶湯温度が凝固温度まで低下した時に、前記インサート金型8を回転させるように前記ロータリーアクチュエータ9に指令するようになっている。
【0023】
このように構成された鋳造用金型を使用して鋳造品6を鋳造するには、図1に示すように、下型3と上型5を閉じてキャビティー4を形成し、そのキャビティー4内にインサート金型8を配置させる。次に、図示を省略する湯口から溶湯金属をキャビティー4内に流し込む。
【0024】
キャビティー4内に充填された溶湯は、金型と接触することで冷却されて次第に凝固されて行く。溶湯金属が冷却されて行く過程の温度変化を前記シース熱電対15で検知し、溶湯温度が凝固温度まで低下した時に、前記制御部10がロータリーアクチュエータ9を駆動させて各インサート金型8をそれぞれ独立して回転させる。この時のインサート金型8の回転は、鋳造品6に対する離型が目的であるため、回転角度を10度程度とする。もちろん、鋳造品6を離型できるまで、前記インサート金型8を10度以上回転させてもよい。
【0025】
溶湯金属が凝固完了直後の製品収縮が小さい段階でインサート金型8が軸方向(周方向)に回転すると、円柱体であるインサート金型8と鋳造品6との離型抵抗がその円周方向への抵抗力となることから離型抵抗が軽減され、インサート金型8を回転させずに単に鉛直方向に引き抜く場合に生じていたかじりを無くすことができる。
【0026】
そして、インサート金型8を回転させた後、金型を加圧すると共に冷却完了までそのままの状態を保持する。冷却完了後は、図4に示すように、サイドダイ2をスライドさせた後、上型5を上昇させて金型を開く。そして、インサート金型8を回転させながら図5に示すようにエジェクトプレート13を下降させ、エジェクトピン12で鋳造品6を下方へ押し、当該鋳造品6をインサート金型8から引き抜く。これにより、インサート金型8から鋳造品6がかじりを生じることなくスムーズに取り出される。
【0027】
以上のようにして構成された鋳造用金型によれば、インサート金型8を軸方向(円周方向)に回転させる回転手段であるロータリーアクチュエータ9を備えているので、従来構造のようにインサート金型8を固定して鉛直方向に引く抜くのとは異なり、離型が円周方向への抵抗力で決まることから、抜け勾配を考慮することなく、スムーズに鋳造品6を離型させることができる。したがって、本実施の形態によれば、抜け勾配をゼロ化することが可能となり、それによりシリンダボア内面の切削加工代を少なくでき、加工サイクルタイムの減少及びそれに伴う工具摩耗の減少を実現することができる。
【0028】
また、本実施の形態の鋳造用金型によれば、複数設けたインサート金型8を独立して回転させる回転手段であるロータリーアクチュエータ9をそれぞれのインサート金型8に設けたので、全てのインサート金型8を一度に引き抜く場合に比べて、4気筒エンジンの場合、1/4の離型力で済む。
【0029】
「実施の形態2」
図6は実施の形態2の鋳造用金型を示し、インサート金型をベルトで連結して全てのインサート金型を同期させて回転させるようにした例を示す図である。
【0030】
実施の形態2では、ロータリーアクチュエータ9に代えて回転軸11の基端部にプーリ16を取り付けると共に、これらプーリ16をベルト17で連結し、駆動源であるモータ18の駆動軸19に固定させたプーリ20にベルト17を巻き付け、該モータ18を回転させることで全てのインサート金型8を同期させて回転させるように構成されている。なお、プーリ16、20の外周を歯車化すると共にベルト17にもこの歯車と係合する波部を形成することで、それらプーリ16、20とベルト17との滑りを防止するようにしている。
【0031】
このように構成された鋳造用金型によれば、全てのインサート金型8をベルト17で連結してこれらを同期させて回転させれば、当該インサート金型8の回転スピードを調整し易くなる。
【0032】
「実施の形態3」
図7は実施の形態3の鋳造用金型を示し、複数のインサート金型をラックアンドピニオンにより全てのインサート金型を同期させて回転させるようした例を示す図である。
【0033】
実施の形態3では、ロータリーアクチュエータ9に代えて回転軸11の基端部にピニオンギア21を取り付けると共に、これらピニオンギア21にラックギア22を歯合させ、そのラックギア22を左右方向にスライドさせることで、全てのインサート金型8を同期させて回転させるように構成されている。
【0034】
このように構成された鋳造用金型によれば、直線運度を回転運動に変えるラックアンドピニオンによる簡単な構造で全てのインサート金型8の回転を同期化できると共に回転構造を簡略化できメンテナンス性を高めることができる。
【0035】
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に制限されることなく種々の変更が可能である。
【0036】
例えば、実施の形態1〜3では、何れも鋳造品としてシリンダボアを備えたシリンダーブロックとしたが、円筒形状の凹部が形成されたものであればシリンダーブロックに制限されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】溶湯をキャビティー内に充填し所定時間経過後にインサート金型を回転させる状態を示す鋳造用金型の断面図である。
【図2】インサート金型を軸方向に回転させる回転手段の一例を示す斜視図である。
【図3】インサート金型にシース熱電対を設けた状態を示し、(A)は上型を下面側から見たときの平面図、(B)はインサート金型の断面図である。
【図4】型を開いて鋳造品をエジェクトする状態を示す鋳造用金型の断面図である。
【図5】鋳造品を離型させる状態を示す鋳造用金型の断面図である。
【図6】実施の形態2の鋳造用金型を示し、インサート金型をベルトで連結して全てのインサート金型を同期させて回転させるようにした例を示す図である。
【図7】実施の形態3の鋳造用金型を示し、複数のインサート金型をラックアンドピニオンにより全てのインサート金型を同期させて回転させるようした例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…ボトムダイ(下型)
2…サイドダイ(下型)
3…下型
4…キャビティー
5…上型
6…鋳造品(シリンダーブロック)
8…インサート金型
9…ロータリーアクチュエータ(回転手段)
10…制御部
11…回転軸
12…エジェクトピン(エジェクト手段)
13…エジェクトプレート(エジェクト手段)
16…プーリ
17…ベルト
21…ピニオンギア
22…ラックギア
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年9月22日(2006.9.22)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和

【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦

【識別番号】100100929
【弁理士】
【氏名又は名称】川又 澄雄

【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和

【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一

【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄


【公開番号】 特開2008−73745(P2008−73745A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−257722(P2006−257722)