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【発明の名称】 発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法
【発明者】 【氏名】山田 一己

【氏名】鍵谷 昌彦

【要約】 【課題】成形性が損なわれること無く、残渣欠陥が顕著に改良された鋳物用の消失模型を得ることのできる発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法を提供する。

【解決手段】鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属を含有するビニル系樹脂種粒子を含む水性分散液中にビニル系モノマーを供給し、このビニル系モノマーを重合させてビニル系樹脂種粒子を成長させることにより得られた発泡性ビニル系樹脂粒子を発泡成形して鋳型用消失模型とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤を含有する発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法であって、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属を含有するビニル系樹脂種粒子を含む水性分散液中にビニル系モノマーを供給し、このビニル系モノマーを重合させてビニル系樹脂種粒子を成長させることにより、ビニル系樹脂粒子を製造する、発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法。
【請求項2】
鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属の量が、発泡性ビニル系樹脂粒子中0.1〜10重量%である請求項1記載の発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法。
【請求項3】
鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属が、(1)ケイ素、ニッケル、チタン、アルミニウム及び銅、並びに(2)(1)の金属と鉄との合金からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法。
【請求項4】
ビニル系樹脂がスチレン系樹脂である請求項1〜3いずれかに記載の発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法。
【請求項5】
ビニル系樹脂種粒子が、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属とビニル系樹脂とを溶融混錬、押出しして得られるペレット粒子である請求項1〜4記載の発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載の製造法により製造された発泡性ビニル系樹脂粒子。
【請求項7】
請求項6記載の発泡性ビニル系樹脂粒子を発泡成形して得られる鋳型用消失模型。
【請求項8】
鋳物砂内に模型を埋設してなる鋳型に溶融金属を注湯し、注湯した該溶融金属によって請求項7記載の模型を消失させながら製品を鋳造する消失模型鋳造法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性ビニル系樹脂粒子及びその製造法、鋳型用消失模型、並びに消失模型鋳造法に関する。
【背景技術】
【0002】
消失模型鋳造法はフルモールド法とも言われ、発泡プラスチックにて製作した模型(消失模型)を鋳物砂に埋設したまま鋳型として利用するプロセスであり、残渣欠陥の改良が望まれている。なお、残渣欠陥とは、鋳込まれた溶湯による発泡プラスチックの熱分解により発生する、多量の残渣による鋳物の欠陥である。
【0003】
このような残渣欠陥を改良する為に、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属を発泡プラスチックの原料ビーズと混合して成型、又は発泡プラスチックの成型後に表面に塗布する方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−307135号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の添加剤を用いる場合でも、更なる発泡成形性と残渣欠陥低減の向上が求められている。
【0005】
本発明の課題は、成形性が損なわれること無く、残渣欠陥が顕著に改良された鋳物用の消失模型を得ることのできる発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発泡剤を含有する発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法であって、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属を含有するビニル系樹脂種粒子を含む水性分散液中にビニル系モノマーを供給し、このビニル系モノマーを重合させてビニル系樹脂種粒子を成長させることにより、ビニル系樹脂粒子を製造する、発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法に関する。なお、水性分散液についての水性とは、分散媒が水もしくは水を主体とする液体であることを意味し、重合を阻害しない範囲であれば、アルコール等の水以外の液体を含んでいても良い。
【0007】
また、本発明は、上記本発明の製造法により製造された発泡性ビニル系樹脂粒子、該発泡性ビニル系樹脂粒子を発泡成形して得られる鋳型用消失模型、並びに、鋳物砂内に模型を埋設してなる鋳型に溶融金属を注湯し、注湯した該溶融金属によって前記本発明の模型を消失させながら製品を鋳造する消失模型鋳造法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発泡プラスチックの成形性が損なわれること無く、残渣欠陥が顕著に改良された消失模型が得られる発泡性ビニル系樹脂粒子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法>
本発明の発泡性ビニル系樹脂粒子の製造法は、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属を溶融混錬した熱可塑性樹脂に混合し、ストランドを押出し、ペレタイズ等をすることによって得られたペレット等のビニル系樹脂種粒子を水性媒体中に分散し、好ましくはビニル系樹脂種粒子100重量部に対し、スチレン系モノマー等のビニル系モノマー10〜300重量部を添加し、ビニル系モノマーを重合させ、ビニル系樹脂種粒子を成長させて(シード重合)ビニル系樹脂粒子を製造する。なお、水性媒体についての水性とは、媒体が水もしくは水を主体とする液体であることを意味し、重合を阻害しない範囲であれば、アルコール等の水以外の液体を含んでいても良い。
【0010】
本発明において、ビニル系樹脂種粒子を構成するビニル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられ、残渣欠陥の発生抑制や、発泡プラスチックの成形性向上(ひいては、鋳物の平滑性向上)の観点から、スチレンを50重量%以上含有するスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0011】
又、上記スチレン系モノマー以外の、スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、セチルアクリレート、セチルメタクリレート等のアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
【0012】
本発明に用いられる金属は、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属(以下、単に金属という場合もある)であり、金属がこのような性質を有するかは次の方法で確認することができる。すなわち、内径4.0mmの石英保護管の一端を封じ、その先端部分に金属3gを5%のコロイダルシリカ溶液1.0gと混練したものを、金属粉末の付着量が0.1gとなるように塗布(塗布長さ30mm)する。24時間自然乾燥後、この保護管にC−A熱電対を装填する。本熱電対と、石英保護管に金属粉末を塗布していない熱電対を同時に1400℃の鋳鉄熔湯に浸漬し、両熱電対の温度差を計測する。金属粉末を塗布した熱電対の計測温度が高い場合、発熱が起こっていることを示すものとする。このような発熱は、通常、反応熱、例えば燃焼熱、溶解熱、生成熱等として把握でき、溶解の標準自由エネルギーの計算「第3版 鉄鋼便覧 第I巻 基礎」(丸善株式会社、昭和58年3月30日、第3刷)の19頁、表1・2を参考にすることもできる。本発明に用いられる金属は、この測定方法による発熱温度(熱電対の温度差)が5℃以上、更に10〜200℃、特に20〜100℃であることが好ましい。このような金属としては、本発明の効果を発現する観点から、(1)ケイ素、ニッケル、チタン、アルミニウム及び銅、並びに(2)(1)の金属と鉄との合金からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。尚、合金としては、Fe−Mg合金、Fe−Si合金、Fe−Cr合金、Fe−Mn合金、Fe−Ni合金、Fe−Si−Mg合金などが挙げられる。これら合金の組成は限定されない。本発明では、鉄系鋳物に対してはケイ素、チタン、アルミニウム及びこれらと鉄との合金、中でもケイ素、チタン及びこれらと鉄との合金が、また、アルミニウム系鋳物に対してはニッケルが、また、銅系鋳物に対してはニッケル、銅が、発熱効果が高く好ましい。金属は、一種又は複数を併用することもできる。
【0013】
これらの金属は、本発明の効果を発現する観点から、メジアン径1〜50μmの粉末が好ましく、メジアン径3〜20μmの粉末を用いることがより好ましく、更に好ましくは3〜10μmである。
【0014】
本発明において、ビニル系樹脂種粒子は、ビニル系樹脂と、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属とを含んで構成される。このような金属はビニル系樹脂種粒子中、0.1〜40重量%、更に0.1〜30重量%、特に0.7〜20重量%含有することが、該金属が溶融金属と接触して発熱することにより、熔湯温度の低下抑制に有効に働き、発泡プラスチックが効率よくガス化して残渣が低減できる観点から好ましい。
【0015】
尚、ビニル系樹脂種粒子は、発明の効果を阻害しない範囲であれば、ビニル系樹脂、該金属以外の樹脂や金属を含有していてもよく、それらはビニル系樹脂種粒子中、10重量%以下が好ましい。
【0016】
鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属を含有するビニル系樹脂種粒子の製造方法としては、汎用の方法が用いられ、例えば、ビニル系モノマー中に該金属を分散させた後、水性媒体中にてビニル系モノマーを懸濁重合させてビニル系樹脂種粒子を製造する方法、ビニル系樹脂及び該金属を押出機に供給して溶融混練し、押出機からストランド状に押出して所定長さ毎に切断してビニル系樹脂種粒子を製造する方法などが挙げられる。
【0017】
これらの方法の中では、金属の樹脂への分散性(ひいては表面残渣率低減)の観点から、ビニル系樹脂及び該金属を押出機に供給して溶融混練し、押出機からストランド状に押出して所定長さ毎に切断してビニル系樹脂種粒子を製造する方法が好ましい。
【0018】
上記水性分散液中に供給するビニル系モノマーとしては、上述したビニル系樹脂種粒子で用いられるビニル系モノマー、好ましくはスチレン系モノマーを用いることができ、このスチレン系モノマーと共重合可能な上述したビニルモノマーを併用してもよい。スチレン系モノマー以外のビニルモノマーとしては、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0019】
ビニル系モノマーの供給量は、ビニル系樹脂種粒子100重量部に対し、好ましくは10〜300重量部であり、より好ましくは50〜200重量部である。
【0020】
ビニル系樹脂種粒子に対するビニル系モノマーの供給方法は、ビニル系樹脂種粒子を種粒子として成長途上の粒子中におけるビニル系モノマー量が50重量%以下となるように後述するビニル系モノマー量を測定しながら供給することが好ましい。より好ましくは、ビニル系モノマー量が30重量%以下となるように供給し、更に好ましくは20重量%以下となるように供給する。なお、供給するビニル系モノマーは、ビニル系樹脂種粒子を構成するビニル系モノマーと種類、組成が同一でも異なっていてもよい。
【0021】
鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属を含んだビニル系樹脂粒子中におけるビニル系モノマー量が多いと、ビニル系モノマーがビニル系樹脂粒子の中心部付近で重合してしまい、その結果、得られる発泡性ビニル系樹脂粒子の表面に、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属が多く含有されてしまうため、前記の比率でビニル系モノマーを供給するのが好ましい。
【0022】
このように、発泡性ビニル系樹脂粒子の表面に鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属が多量に含有されていると、発泡性ビニル系樹脂粒子を予備発泡させて得られる予備発泡粒子を二次発泡させた際に予備発泡粒子の表面部が鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属が原因となって破泡し、予備発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となり、NC加工等で切削する場合に、加工面の平滑性が乏しく、優れた模型を得ることができない。
【0023】
ビニル系樹脂種粒子を種粒子として成長途上にある粒子中のビニル系モノマー量の測定方法は、下記要領で測定されたものをいう。即ち、成長途上にある粒子を水性分散液中から取り出し、成長粒子の表面に付着した水分をガーゼを用いて拭き取り除去する。
【0024】
そして、成長粒子を0.08g採取し、この採取した成長粒子をトルエン24ミリリットル中に溶解させてトルエン溶液を作製する。次に、このトルエン溶液中に、ウイス試薬10ミリリットル、5重量%のヨウ化カリウム水溶液30ミリリットル及び1重量%のでんぷん水溶液30ミリリットルを供給し、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して試料の滴定数(ミリリットル)とする。なお、ウイス試薬は、氷酢酸2リットルにヨウ素8.7g及び三塩化ヨウ素7.9gを溶解してなるものである。
【0025】
一方、成長粒子を溶解させることなく、トルエン24ミリリットル中に、ウイス試薬10ミリリットル、5重量%のヨウ化カリウム水溶液30ミリリットル及び1重量%のでんぷん水溶液30ミリリットルを供給し、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定してブランクの滴定数(ミリリットル)とする
【0026】
そして、成長粒子中におけるビニル系系モノマー量を下記式に基づいて算出することができる。
成長粒子中におけるビニル系モノマー量(重量%)=0.1322×(ブランクの滴定数−試料の滴定数)/試料の滴定数
【0027】
そのビニル系樹脂を種粒子として成長途上にある粒子中におけるビニル系モノマー量の制御については、上記ビニル系モノマー量の測定方法で確認しながら、また、ビニル系モノマーの供給速度、ビニル系モノマーを重合させるための重合開始剤の選定、重合温度を選定することで行われる。
【0028】
重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネートなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられ、単独で用いられても併用されてもよいが、10時間の半減期を得る為の分解温度が65〜120℃にある複数種類の重合開始剤を併用することが好ましい。添加量は、ビニル系モノマーの供給量100重量部に対して、0.05〜1.0重量部が好ましい。重合温度としては、60〜120℃が好ましい。
【0029】
本発明の発泡性ビニル系樹脂粒子中における、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属の含有量は、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。0.1重量%未満では残渣欠陥の低減効果が得られないおそれがあり、10重量%を超えると成形性が悪くなるおそれがある。
【0030】
本発明の発泡性ビニル系樹脂粒子中における、ビニル系種粒子の含有量は、15〜80重量%が好ましく、15〜70重量%がより好ましい。
【0031】
尚、ビニル系樹脂粒子中のビニル系種粒子の含有量は、式(ビニル系樹脂粒子中のビニル系種粒子の含有量=ビニル系樹脂種粒子の平均重量/ビニル系樹脂粒子の平均重量×100)によって求められる。ビニル系樹脂種粒子の平均重量は、種粒子100個の重量を測定し、平均値を平均重量として算出し、同様にビニル系樹脂粒子の平均重量は、粒子100個の重量を測定し、平均値を平均重量として算出される。又、ビニル系樹脂粒子中の金属の含有量は、ビニル系樹脂粒子中のビニル系種粒子の含有量に、ビニル系種粒子中の金属の仕込み割合を乗じて求められる。
【0032】
本発明の発泡性ビニル系樹脂粒子は、上記シード重合によって得られたビニル系樹脂粒子と発泡剤とを含有する。発泡剤は、ビニル系樹脂種粒子を成長させてビニル系樹脂粒子を製造した後に、発泡剤を含浸させて発泡性ビニル系樹脂粒子を得てもよいし、或いはビニル系樹脂粒子の成長途上にて発泡剤を含浸させて発泡性ビニル系樹脂粒子を得てもよい。
【0033】
上記発泡剤としては、汎用のものが用いられ、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素;1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのフロン系発泡剤が挙げられ、脂肪族炭化水素が好ましい。なお、発泡剤は単独で使用されても併用されてもよい。
【0034】
そして、発泡性ビニル系樹脂粒子中における発泡剤の含有量は、少ないと、発泡性ビニル系樹脂粒子を用いて得られるビニル系樹脂発泡成形体の高発泡倍率化が困難となることがあると共に、発泡性ビニル系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士の熱融着が不充分となってビニル系樹脂発泡成形体の外観性が低下することがある一方、多いと、発泡性ビニル系樹脂粒子を用いて発泡成形した際、得られるビニル系樹脂発泡成形体に収縮が生じたり或いは発泡性ビニル系樹脂粒子を予備発泡させて得られるビニル系樹脂予備発泡粒子中の発泡ガスの調整や発泡成形に時間を要して製造効率が低下することがあるので、2.0〜9.0重量%が好ましく、3.0〜7.0重量%がより好ましい。なお、発泡性ビニル系樹脂粒子中における発泡剤の含有量は、製造直後に13℃の恒温室内に5日間放置した上で測定されたものである。なお、発泡剤の調整だけでは必要な発泡倍率が得られない場合は、必要により発泡助剤を併用できる。発泡助剤としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、オレイン酸、フタル酸エステル、アジピン酸エステル等の高沸点可塑剤が挙げられる。これらは単独で使用されても併用されてもよい。
【0035】
本発明の発泡性ビニル系樹脂粒子は、前記記載の製造方法で得られる結果、その中心部に鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属が豊富に含有されている一方、表面部には含有されていないか或いは含有されていても少量しか含まれていない構造となっているものと考えられる。
【0036】
従って、本発明の発泡性ビニル系樹脂粒子を予備発泡させてなるビニル系樹脂予備発泡粒子を二次発泡させてビニル系樹脂発泡成形体を製造する際に、ビニル系樹脂予備発泡粒子の表層部における、本発明に係る金属を原因とした破泡を防止して、ビニル系予備発泡粒子同士の熱融着に必要な発泡圧を確実に確保することができ、成形品中心部の内部融着を50%以上とすることができる。
【0037】
よって、ビニル系樹脂予備発泡粒子の表面部における熱融着性の低下が無いか或いは最小限に抑えることができ、ビニル系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填して発泡させた場合、ビニル系樹脂予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士は互いに強固に熱融着一体化し、得られるビニル系樹脂発泡成形体は優れた機械的強度を有している為、NC加工等で切削する場合に、加工面の平滑性に優れた模型を得ることができる。そして、ビニル系樹脂予備発泡粒子の表面部における破泡を上述の様に効果的に防止していることから、得られるビニル系樹脂発泡成形体の高発泡倍率化を確実に図ることもできる。
【0038】
更に、本発明の発泡性ビニル系樹脂粒子の中心部に豊富に充填されている、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属は、発泡性樹脂粒子の発泡に伴って、ビニル系樹脂粒子の発泡性を損なったり或いは上記発泡粒子同士の熱融着性を阻害することなく発泡粒子全体に略均一に拡散し、得られるビニル系樹脂発泡成形体の全体に略均一に含有された状態となるため、よって、ビニル系樹脂発泡体は優れた発熱性を有し、良好な鋳造品が得られる。
【0039】
本発明の製造法により得られた発泡性ビニル系樹脂粒子の平均粒子径は、予備発泡粒子の金型内への充填性の点から、0.3〜2.0mm、更に0.3〜1.4mmが好ましい。尚、ここで、発泡性ビニル系樹脂粒子の平均粒子径は、試料約50〜100gをロータップ型篩振とう機((株)飯田製作所製)を用いて、ふるい目開き4.00mm、目開き3.35mm、目開き2.80mm、目開き2.36mm、目開き2.00mm、目開き1.70mm、目開き1.40mm、目開き1.18mm、目開き1.00mm、目開き0.85mm、目開き0.71mm、目開き0.60mm、目開き0.50mm、目開き0.425mm、目開き0.355mm、目開き0.300mm、目開き0.250mm、目開き0.212mm、目開き0.180mmのJIS標準ふるいで10分間分級し、ふるい網上の試料重量を測定し、その結果から得られた累積重量分布曲線を元にして累積重量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径(mm)として求めることができる。
【0040】
<鋳型用消失模型>
本発明の鋳型用消失模型は、本発明の製造法により製造された発泡性ビニル系樹脂粒子を発泡成形して得られる。具体的には、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属を発泡性ビニル系樹脂粒子の消失模型にほぼ均一に含有させるには、鋳物用の溶融金属と接触して熱を発する金属を溶融混錬した熱可塑性樹脂に混合し、ストランドを押出し、ペレタイズ等をすることによって得られたペレットにビニル系モノマーを添加し表面を改質し、その後、発泡剤を加えて得た本発明の発泡性ビニル系樹脂粒子を公知の発泡成形に供することが好ましい。
【0041】
本発明の消失模型において、このような金属は、鋳物材質に対する影響の点から、最終消失模型の重量に対して、0.1〜10重量%、更に0.5〜5重量%、特に1〜3重量%の比率で用いられるのが好ましい。
【0042】
本発明の消失模型は、発泡プラスチック製の消失模型を用いる通常のフルモールド法において用いられる。鋳造に用いる鋳物砂としては、石英質を主成分とする珪砂の他、ジルコン砂、クロマイト砂、合成セラミック砂等の新砂又は再生砂が挙げられる。鋳物砂は粘結剤を添加せずに用いることもでき、その場合には充填性が良好であるが、強度が必要な場合には、粘結剤を添加し、硬化剤により硬化させるのが好ましい。本発明の発泡性ビニル系樹脂粒子から得られた消失模型は、通常の塗型剤による処理がなされ、鋳造に用いられる。
【0043】
また、本発明の消失模型は、アルミニウム等の非鉄金属系鋳物や鋳鉄、鋳鋼等の鉄系鋳物の何れにも用いることができる。特に、残渣欠陥の起こりやすい鉄系鋳物用として用いることが、本発明の効果を有効に利用することができ、好ましい。
【0044】
本発明の消失模型に用いられる発泡プラスチックは、発泡ポリスチレン又は発泡ポリメタクリル酸メチルが好ましい。
【実施例】
【0045】
実施例1
スチレン換算分子量が38万であるポリスチレン樹脂95重量部と目開きが20μmの篩いを通過した金属珪素粉末5重量部とを二軸押出機に供給して220℃にて溶融混錬して押出機からストランド状に押出し、このストランドを所定長さ毎に切断して、金属珪素粉末を5.0重量%〔=5/(95+5)×100〕含有する円柱状スチレン系樹脂種粒子(直径0.8mm、長さ1.5mm)を作製した。
【0046】
次に、撹拌機付き重合容器に、水200重量部、スチレン系樹脂種粒子100重量部、ピロリン酸マグネシウム4重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05重量部を供給して撹拌しつつ70℃に加熱して水性分散液を作製した。
【0047】
続いて、ベンゾイルパーオキサイド0.3重量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.07重量部をスチレンモノマー15重量部に溶解させ、このスチレンモノマーを上記水性分散液中に撹拌しつつ供給した。
【0048】
そして、水性分散液中にスチレンモノマーを供給し終えてから30分経過後に水性分散液を90℃に加熱し、この水性分散液中に更にスチレンモノマー85重量部を2時間かけて一定の供給速度で供給して、スチレン系樹脂種粒子を種粒子としてシード重合を行ってスチレン系樹脂種粒子を成長させ、全てのスチレンモノマーを供給し終えてから125℃に加熱して2時間に亘って放置した後に冷却して金属珪素粉末を含有したスチレン系樹脂粒子を得た。水性分散液中にスチレンモノマーを供給し始めてから10分間隔毎に、成長途上にあるスチレン系樹脂粒子中のスチレンモノマー量を測定したところ、最高値は21.8重量%であった。従って、本発明のスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂種粒子の表面がスチレンモノマーの重合物の大部分で覆われたスチレン系樹脂粒子が得られていると考えられる。
【0049】
次にスチレン系樹脂粒子が分散した水性分散液に発泡助剤としてトルエン2重量部を添加後、重合容器を密閉して110℃に加熱し、続いて重合容器内に発泡剤としてペンタン20重量部を圧入して8時間に亘って保持し、スチレン系樹脂粒子中にペンタンを含浸させた後、重合容器を25℃に冷却して、金属珪素を含有した発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。なお、得られた発泡性スチレン系樹脂粒子は、その金属珪素の含有量は、2.5重量%〔=金属珪素量5/(種粒子100+スチレン100+開始剤(0.3+0.07))×100〕であった。
【0050】
上記発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した後に、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布した。なお、ステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドはそれぞれ、発泡性スチレン系樹脂粒子中、0.05重量%となるように調整した。
【0051】
しかる後、発泡性スチレン系樹脂粒子を13℃の恒温室にて7日間に亘って放置した。そして、発泡性スチレン系樹脂粒子を蒸気にて加熱して嵩密度0.02g/cm3に予備発泡させてスチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。このスチレン系樹脂予備発泡粒子を20℃で24時間に亘って熟成させた。次に、上記スチレン系予備発泡粒子を金型内に充填して加熱発泡させて、縦400mm×横500mm×高さ300mmのスチレン系樹脂発泡体を得た。得られた発泡体の融着率は、70%であった。ここで、融着率は次のようにして測定されたものである。
【0052】
縦400mm×横500mm×高さ300mmの成形品を成形後、高さ125mm、175mmの位置にそれぞれ水平に電圧をかけたニクロム線より切削し、縦400mm、横500mm、厚み50mmの平板形状の発泡成形体を得る。その発泡成形体の表面に、一対の長辺の中心同士を結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約5mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って発泡成形体を手で二分割し、その破断面における発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子どうしの界面で破断している粒子の数(b)とを数え、式[(a)/((a)十(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とした。結果を表1に示す。ここで、融着率が高い結果ほど、成形性(特に成形品の切削部の平滑性)が優れることを表す。
【0053】
また、得られた発泡体を縦380mm×横480mm×高さ285mmに加工した模型を鋳造試験に用いた。
【0054】
比較例1
スチレン換算分子量が38万であるポリスチレン樹脂97.5重量部と目開きが20μmの篩いを通過した金属珪素粉末2.5重量部とを二軸押出機に供給して220℃にて溶融混錬して押出機からストランド状に押出し、このストランドを所定長さ毎に切断して、金属珪素粉末を2.5重量%〔=2.5/(97.5+2.5)×100〕含有する円柱状スチレン系樹脂粒子(直径0.8mm、長さ1.5mm)を作製した。
【0055】
次に、撹拌機付き重合容器に、水200重量部、スチレン系樹脂粒子200重量部、ピロリン酸マグネシウム4重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05重量部を供給して撹拌しつつ70℃に加熱して水性分散液を作製した。
【0056】
次にスチレン系樹脂粒子が分散した水性分散液に発泡助剤としてトルエン2重量部添加後、重合容器を密閉して110℃に加熱し、続いて重合容器内にペンタン20重量部圧入して8時間に亘って保持し、スチレン系樹脂粒子中にペンタンを含浸させた後、重合容器を25℃に冷却して、金属珪素を含有した発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。なお、得られた発泡性スチレン系樹脂粒子は、その金属珪素の含有量は、2.5重量%であった。
【0057】
上記発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した後に、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布した。なお、ステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドはそれぞれ、発泡性スチレン系樹脂粒子中、0.05重量%となるように調整した。
【0058】
しかる後、発泡性スチレン系樹脂粒子を13℃の恒温室にて7日間に亘って放置した。そして、発泡性スチレン系樹脂粒子を蒸気にて加熱して嵩密度0.02g/cm3に予備発泡させてスチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。このスチレン系樹脂予備発泡粒子を20℃で24時間に亘って熟成させた。次に、上記スチレン系予備発泡粒子を金型内に充填して加熱発泡させて、縦400mm×横500mm×高さ300mmのスチレン系樹脂発泡体を得た。得られた発泡体の融着率は、20%であった。また、得られた発泡体を縦380mm×横480mm×高さ285mmに加工した模型を鋳造試験に用いた。
【0059】
比較例2
予備発泡を行ったスチレン系樹脂予備発泡粒子(積水化成品工業(株)製:エスレンビーズHDMF)に対して、表1に示す重量%(対スチレンビーズ重量)の金属(種類は表1に示す)をドライブレンドした。金属を添加したスチレンビーズを金型に充填し、水蒸気により2次発泡を行い成型した。得られた発泡ポリスチレン成型体の発泡倍率は約50倍(比重0.02)であった。得られた発泡体の融着率は、70%であった。また、得られた発泡体を縦380mm×横480mm×高さ285mmに加工した模型を鋳造試験に用いた。
【0060】
比較例3
予備発泡を行ったスチレン系樹脂予備発泡粒子(積水化成品工業(株)製:エスレンビーズHDMF)を、金型に充填し、水蒸気により2次発泡を行い成型した。得られた発泡ポリスチレン成型体の発泡倍率は約50倍(比重0.02)であった。得られた発泡体の融着率は、80%であった。また、得られた発泡体を縦380mm×横480mm×高さ285mmに加工した模型を鋳造試験に用いた。
【0061】
<鋳造試験>
上記で得られた模型に、塗型剤(市販のフルモールド用塗型剤)を70ボーメで塗布した。その後、50℃で12時間乾燥させ、フラン鋳型に埋設し鋳込み評価を行った。
【0062】
すなわち、フリーマントル珪砂(5号)に有機スルホン酸硬化剤(花王クエーカー(株)製TK−3)を0.2重量部添加混練した後に、フラン樹脂(花王クエーカー(株)製340B)を珪砂に対して0.5重量部混合した。この混練砂に上記の模型を埋設した。溶湯があふれない速度で堰(湯道、堰には内径50mmの陶管を使用)の部分から鋳込みを行なった(材質FCD−540、鋳込み温度1330℃)。
【0063】
鋳物品質は、鋳物表面を目視で観察し求めた表面残渣率〔表面残渣率=残渣欠陥の面積÷全体の面積×100(%)〕で評価した。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】


【出願人】 【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
【識別番号】591076800
【氏名又は名称】花王クエーカー株式会社
【出願日】 平成18年9月21日(2006.9.21)
【代理人】 【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡

【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦

【識別番号】100091845
【弁理士】
【氏名又は名称】持田 信二

【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌


【公開番号】 特開2008−73720(P2008−73720A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−255237(P2006−255237)