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【発明の名称】 鋳型用押湯スリーブ
【発明者】 【氏名】塚本 道信

【氏名】今井 實

【要約】 【課題】型ばらしを行っても破損することなく、再利用が可能な鋳型用押湯スリーブを提供する。

【解決手段】鋳型用押湯スリーブ1は、円筒形状に形成された高保温性を有する無機繊維質材料からなるスリーブ本体2を備え、耐熱性を有する補強膜3が、前記スリーブ本体2の少なくとも外周面に形成されている。補強膜3は、スリーブ本体2の両端面、さらには内周面に形成するのも好ましい。また、補強膜3は、少なくとも無機粘結剤成分(必要に応じて耐火物成分)を含有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型の押湯部に配される鋳型用押湯スリーブであって、
円筒形状に形成された高保温性を有する無機繊維質材料からなるスリーブ本体を備え、
耐熱性を有する補強膜が、前記スリーブ本体の少なくとも外周面に形成されていることを特徴とする鋳型用押湯スリーブ。
【請求項2】
前記補強膜は、外周面及び両端面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の鋳型用押湯スリーブ。
【請求項3】
前記補強膜は、前記スリーブ本体の全表面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の鋳型用押湯スリーブ。
【請求項4】
前記補強膜は、少なくとも無機粘結剤成分を含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鋳型用押湯スリーブ。
【請求項5】
前記補強膜には耐火物成分が含有されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の鋳型用押湯スリーブ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は鋳型用押湯スリーブに関し、より詳しくは鋳型の押湯部に配される鋳型用押湯スリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金等の軽合金材料を使用した鋳造品を製造する場合、従来より、比較的安価に製造することが可能な砂型鋳造法が広く使用されている。
【0003】
この種の砂型鋳造法では、上型及び下型からなる枠内に目的形状の模型(木型樹脂型、アルミ型等)を配した後、模型の周辺に砂を詰めて突き固め、砂型の適所にガス抜き穴、湯口及び押湯等を設けた後、上型及び下型を分離して模型を抜き取り、再び上型及び下型を合わせて一組の鋳型を造型する。そして、湯口より湯道を介して鋳型内の空胴部(キャビティ)に溶湯を注入し、凝固させ、その後、型ばらしを行って鋳型を壊し、鋳物に付着している砂を除去して製品である鋳造品を得ている。
【0004】
また、上記凝固時には、凝固収縮によって所謂「ひけ巣」等の欠陥が鋳物に生じるのを回避すべく、鋳型の適所に押湯スリーブを配し、該押湯スリーブ内に溶湯を補給して押湯部分の凝固を遅らせることが広く行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、鋳型としては、近年、粘土と水を粘結剤として使用した生砂型鋳型に代えて、レゾールタイプのフェノール樹脂やフラン樹脂等の有機粘結剤を使用した有機自硬性鋳型の使用が増加している。この有機自硬性鋳型は、有機粘結剤及び硬化剤を珪砂に少量混合し、直ちに模型と上型及び下型を用いて造型し、これを放置して硬化(自硬)させることにより、強固な鋳型を得るようにしたものであり、生砂型鋳型に比べ、品質の向上した鋳造品を得ることが可能となる。
【0006】
また、上記押湯スリーブとしては、アルミナ−シリカ等の高保温性を有するセラミックファイバーで形成されたものが広く使用されている。
【0007】
ところで、前記砂型鋳造法では、上述したように鋳造後に型ばらしを行って鋳型から鋳造品を取り出す必要がある。特に、有機自硬性鋳型の場合は生砂型よりも機械的強度が強いため、型ばらしにはより強力な力が必要となる。
【0008】
そこで、従来より、鋳型に大きな振動を負荷した後、大ハンマにより衝撃を加えて型ばらしを行うことが一般に行われている。
【0009】
【特許文献1】特開平6−246426号公報
【特許文献2】特開平5−337601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように大ハンマにより衝撃を加える方法は、人力に依存するため、多大な労力を要し、また年齢や習熟度に左右され易い。
【0011】
そこで、最近、これら年齢や習熟度に左右され難いサンドブラスト法で型ばらしを行う方法が考えられている。
【0012】
しかしながら、前記サンドブラスト法では、3×10〜7×10Paの圧縮空気で研磨材を鋳型に吹き付け、これにより型ばらしを行っているため、その際に押湯スリーブも同時に破損してしまうことが多く、製造コストが高くなるという問題点があった。すなわち、サンドブラスト法を使用して型ばらしを行った場合は、押湯スリーブも同時に破損してしまうことが多い。そして、押湯スリーブが破損すると、鋳型作製時に押湯スリーブも同時に作製するか、或いは高価な市販の押湯スリーブを新たに購入しなければならず、製造コストが高くなるという問題点があった。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みなされてものであって、型ばらしを行っても破損することなく、再利用が可能な鋳型用押湯スリーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明に係る鋳型用押湯スリーブは、鋳型の押湯部に配される鋳型用押湯スリーブであって、円筒形状に形成された高保温性を有する無機繊維質材料からなるスリーブ本体を備え、耐熱性を有する補強膜が、前記スリーブ本体の少なくとも外周面に形成されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の鋳型用押湯スリーブは、前記補強膜が、外周面及び両端面に形成されていることを特徴としている。
【0016】
さらに、本発明の鋳型用押湯スリーブは、前記補強膜が、前記スリーブ本体の全表面に形成されていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の鋳型用押湯スリーブは、前記補強膜が、少なくとも無機粘結剤成分を含有していることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の鋳型用押湯スリーブは、前記補強膜には耐火物成分が含有されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
上記鋳型用押湯スリーブによれば、円筒形状に形成された高保温性を有する無機繊維質材料からなるスリーブ本体を備え、耐熱性を有する補強膜が前記スリーブ本体の少なくとも外周面に形成されているので、サンドブラスト法等で鋳型の型ばらし作業を行っても、鋳型用押湯スリーブの破損を回避しつつ鋳型のみを壊すことができる。すなわち、鋳型用押湯スリーブの耐久性が向上し、製造コストを節減することができる。
【0020】
また、前記補強膜が、外周面及び両端面に形成されているので、サンドブラストにおける研磨材等が鋳型用押湯スリーブの端面に衝突しても該鋳型用押湯スリーブが破損するのを防止することができる。
【0021】
さらに、前記補強膜が、前記スリーブ本体の全表面に形成されているので、上述と同様、鋳型のみを壊すことができ、鋳型用押湯スリーブが破損するのを極力回避することができる。すなわち、押湯スリーブの耐久性が向上し、製造コストを節減することができる。
【0022】
さらに、前記補強膜が、少なくとも無機粘結剤成分(必要に応じて耐火物成分)を含有しているので、保温性に影響を与えることなく、鋳型用押湯スリーブの機械的強度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
【0024】
図1は本発明に係る鋳型用押湯スリーブ(以下、単に「押湯スリーブ」という。)の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す断面図であって、該押湯スリーブ1は、円筒形状に形成されたスリーブ本体2を有し、補強膜3がスリーブ本体2の外周面に形成されている。
【0025】
スリーブ本体2は、高保温性を有する無機繊維質材料で形成され、例えば、シリカ−アルミナ系のセラミックファイバーが好んで使用される。
【0026】
補強膜3は、無機粘結剤成分及び耐火物成分が含有されてなる。具体的には、この補強膜3は、無機粘結剤成分及び耐火物成分を含有したペースト状の塗布剤をスリーブ本体2の外周面に塗布した後、所定温度(例えば、100℃)で所定時間(例えば、2〜3時間)乾燥して形成される。無機粘結剤成分と耐火物成分との混合比率は、塗布剤がペースト状を呈する必要性から、好ましくは重量%で、無機粘結剤成分:耐火物成分=20〜25:75〜80に配合される。また、必要に応じて増粘剤や界面活性剤、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド等を適量添加するのも好ましい。
【0027】
無機粘結剤成分としては、所要の効果を奏するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、コロイダルシリカ、シリカゾル、アルミナゾル、珪酸ソーダ、ホウ酸カルシウム、珪石、酸化ホウ素、モンモリナイト粘土、ガラスフリット等を使用することができる。
【0028】
耐火物成分についても、所要の効果を奏するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミナ、ムライト、シャモット、ジルコニア、酸化クロム、コージライト、炭化ケイ素、マグネシア、シリカ、チタニア、クロミア等の各種粉末を使用することができる。
【0029】
また、上記塗布剤としては、既に市販されているものを使用することもでき、例えば、神戸理化学工業社製「ロストメディアMK−008」を好んで使用することができる。
【0030】
図2は上記押湯スリーブ1を使用した鋳型の断面図である。
【0031】
すなわち、この鋳型は、所定形状の鋳造品に対応した上型4及び下型5を備え、上型4及び下型5間に空洞部(キャビティ)6が形成されている。また、上型4には溶湯が供給される湯口7及び溶湯を空洞部6に案内する湯道8が設けられている。そして、上型4の上部(押湯部)には押湯スリーブ1が埋め込まれている。
【0032】
このように形成された鋳型では、図3に示すように、湯口7からアルミニウム合金等の溶湯11が注入され、該溶湯11は湯道8に案内されて空洞部6に供給され、押湯スリーブ1内の押湯部10にも溶湯11が供給される。そして、このまま放置すると溶湯11は凝固するが、押湯部10では溶湯11が押湯スリーブ1によって保温されるため該押湯部10での凝固を遅らせることができ、これによりひけ巣等の欠陥が生じることもなく、鋳造品が作製される。
【0033】
この後、サンドブラスト法を使用して型ばらしを行い、鋳型を壊して鋳造品を得ることができる。この際、押湯スリーブ1は、補強膜3がスリーブ本体2の外周面に形成されているので、破損するのを回避しつつ上型4から分離することができ、これにより押湯スリーブ1を再利用に供することができる。
【0034】
図4は押湯スリーブの第2の実施の形態を示す断面図であって、該押湯スリーブ12は、スリーブ本体2の外周面のみならず両端面にも補強膜13が形成されている。
【0035】
本第2の実施の形態では、押湯スリーブ12を鋳型の押湯部に配した後、鋳造処理が行われる。そしてその後型ばらしを行うが、その際、サンドブラストによる研磨材が押湯スリーブ12の両端面に衝突しても、該両端面も補強膜13で補強されているので、押湯スリーブ12が破損するのを防止することができ、押湯スリーブ12の再利用が可能となる。
【0036】
図5は押湯スリーブの第3の実施の形態を示す断面図であって、該押湯スリーブ14は、スリーブ本体2の全表面、すなわち内外周面及び両端面に補強膜15が形成されている。
【0037】
このようにすることにより第1及び第2の実施の形態と同様、押湯スリーブ14は、型ばらし時にも破損することなく上型4から分離することができ、再利用に供することができる。尚、このような押湯スリーブ14は、ペースト状の塗布剤中に浸漬させて含浸させることにより容易に製造することができる。
【0038】
本第3の実施の形態では、押湯スリーブ14の内周面の平滑性を確保して押湯部10での溶湯との剥離性を良好なものとする必要があり、このため第1及び第2の実施の形態で使用した塗布剤よりも低粘度に調製された塗布剤が使用される。
【0039】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、押湯スリーブ1、12、14を鋳型の上型に埋め込んでいるが、接着剤等で固定するようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施の形態では、補強膜3、13、15には、無機粘結剤成分及び耐火物成分が含有されているが、無機粘結剤成分のみでも所要の補強効果を発揮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る押湯スリーブの第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】上記押湯スリーブを使用した鋳型の一例を示す図である。
【図3】図2の鋳型に溶湯を流し込んだ状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る押湯スリーブの第2の実施の形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る押湯スリーブの第3の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
2 スリーブ本体
3 補強膜
13 補強膜
15 補強膜
【出願人】 【識別番号】599084887
【氏名又は名称】塚本 道信
【出願日】 平成18年9月19日(2006.9.19)
【代理人】 【識別番号】100117477
【弁理士】
【氏名又は名称】國弘 安俊


【公開番号】 特開2008−73696(P2008−73696A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−252375(P2006−252375)