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【発明の名称】 石膏鋳型の乾燥方法
【発明者】 【氏名】久多良木 義和

【要約】 【課題】石膏鋳型において、製品面での乾燥を非製品面での乾燥に比べて抑制することにより、石膏鋳型により鋳造される製品の鋳造欠陥の発生を防止することができる石膏鋳型の乾燥方法を提供する。

【構成】製品を鋳造するための石膏鋳型10の乾燥は乾燥雰囲気中で行われる。石膏鋳型10は、前記製品に接触する製品面11と、前記製品に接触しない非製品面12とを有する。製品面11の乾燥速度が非製品面12の乾燥速度よりも小さくなるように、製品面11は乾燥雰囲気に対して敷板32により密閉され、製品面11では、非製品面12に比べて乾燥雰囲気との接触が抑制される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を鋳造するための石膏鋳型が、前記製品に接触する製品面と前記製品に接触しない非製品面とを有し、前記石膏鋳型の乾燥が乾燥雰囲気中で行われる石膏鋳型の乾燥方法において、
前記製品面の乾燥速度が前記非製品面の乾燥速度よりも小さくされることを特徴とする石膏鋳型の乾燥方法。
【請求項2】
製品を鋳造するための石膏鋳型が、前記製品に接触する製品面と前記製品に接触しない非製品面とを有し、前記石膏鋳型の乾燥が乾燥雰囲気中で行われる石膏鋳型の乾燥方法において、
前記製品面では、前記非製品面に比べて乾燥雰囲気との接触が抑制されることを特徴とする石膏鋳型の乾燥方法。
【請求項3】
前記製品面は乾燥雰囲気に対して密閉されることを特徴とする請求項1または2記載の石膏鋳型の乾燥方法。
【請求項4】
前記非製品面の一部分が吸湿性部材に接触することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の石膏鋳型の乾燥方法。
【請求項5】
前記石膏鋳型は吸湿性を有する載置台に置かれ、前記製品面は前記載置台により密閉されることを特徴とする請求項3記載の石膏鋳型の乾燥方法。
【請求項6】
前記非製品面は送風された乾燥雰囲気に曝されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の石膏鋳型の乾燥方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、製品を鋳造するために使用される石膏鋳型を乾燥雰囲気中で乾燥させる方法に関し、該製品は、例えばタイヤ成形用の金型である。
【背景技術】
【0002】
石膏鋳型により鋳造される製品として、車両等に使用されるゴム製タイヤの製造に使用されるタイヤ成形用金型がある。この金型は、グリーンタイヤに加硫が施される際に使用され、通常、複数に分割された金型(以下、「ピース金型」という。)が組み合わされて形成される。例えば、いわゆるセクショナルモールドでは、金型はタイヤの円周方向に分割された複数のピース金型から構成される。
そして、石膏鋳型は、マスターモデルが転写されて成形されたゴム型に石膏スラリーが流し込まれて成型され、次いで、乾燥処理が施された後に、ピース金型を鋳造するために使用される。
ここで、石膏鋳型に乾燥処理が施されるのは次の理由による。石膏パウダーに水を混合させて得られる石膏スラリーが凝固して形成される石膏鋳型は、結晶水および遊離水の形で多くの水分を含んでおり、そのままの状態でピース金型の鋳造に使用されると、該水分に起因する鋳造欠陥が発生することから、この鋳造欠陥の発生を防止するためである。
そこで、石膏鋳型の水分を除去するために、乾燥炉内に石膏鋳型を配置することにより、石膏鋳型を乾燥させる雰囲気(以下、「乾燥雰囲気」という。)中で乾燥が行われている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−256392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、石膏鋳型を製作するに当たって、石膏スラリーには、石膏パウダーの分散性や鋳型の強度の向上、また凝固時間の調整などのために、通常、有機添加剤や無機添加剤が加えられる。さらに、石膏スラリーには、石膏パウダーや添加剤などを通じて不純物が混入していることがある。そして、該添加剤または不純物は、石膏鋳型の乾燥中に、石膏鋳型の表面からの水分の蒸発に伴う毛細管現象により石膏鋳型の内部の水分が表面に向かって移動するとき、該水分と共に表面に向かって移動して、表面またはその付近に残留または析出することがある。
添加剤のうち、有機添加剤は、乾燥雰囲気の温度を高めることにより消失させることができるが、温度が高すぎると石膏鋳型の強度の確保が困難になり、また急速な温度上昇は石膏鋳型の型割れを招来するため、有機添加剤を簡単に消失させることができない。
そして、石膏鋳型の表面のうち、製品であるピース金型に接触する表面である製品面に添加剤や不純物があると、添加剤が溶湯と反応して発生するピース金型の表面の変色や添加剤または不純物により発生するピース金型の表面の凹凸などの鋳造欠陥が発生する原因になる。
一方、石膏鋳型の急速な乾燥による型割れを防止するために、乾燥処理が、乾燥雰囲気の昇温を緩やかにして、かつ十分な時間をかけて行われるのでは、石膏鋳型の製作に時間がかかるために生産効率が低く、金型の鋳造サイクルに合わせるためには多数の乾燥設備が必要になるなど多額の設備投資が必要になって、コストが高くなる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1〜6記載の発明は、石膏鋳型において、製品面での乾燥を非製品面での乾燥に比べて抑制することにより、石膏鋳型により鋳造される製品の鋳造欠陥の発生を防止することができる石膏鋳型の乾燥方法を提供することを目的とする。そして、請求項4〜5記載の発明は、さらに、石膏鋳型の乾燥効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、製品を鋳造するための石膏鋳型が、前記製品に接触する製品面と前記製品に接触しない非製品面とを有し、前記石膏鋳型の乾燥が乾燥雰囲気中で行われる石膏鋳型の乾燥方法において、前記製品面の乾燥速度が前記非製品面の乾燥速度よりも小さくされる石膏鋳型の乾燥方法である。
請求項2記載の発明は、製品を鋳造するための石膏鋳型が、前記製品に接触する製品面と前記製品に接触しない非製品面とを有し、前記石膏鋳型の乾燥が乾燥雰囲気中で行われる石膏鋳型の乾燥方法において、前記製品面では、前記非製品面に比べて乾燥雰囲気との接触が抑制される石膏鋳型の乾燥方法である。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の石膏鋳型の乾燥方法において、前記製品面は乾燥雰囲気に対して密閉されるものである。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の石膏鋳型の乾燥方法において、前記非製品面の一部分が吸湿性部材に接触するものである。
請求項5記載の発明は、請求項3記載の石膏鋳型の乾燥方法において、前記石膏鋳型は吸湿性を有する載置台に置かれ、前記製品面は前記載置台により密閉されるものである。
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の石膏鋳型の乾燥方法において、前記非製品面は送風された乾燥雰囲気に曝されるものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、非製品面の乾燥速度は製品面よりも大きく、製品面での乾燥が非製品面での乾燥に比べて抑制されるので、非製品面およびその付近が製品面およびその付近に比べてより乾燥した状態にある。このため、石膏鋳型に含まれている添加剤や不純物は、毛細管現象により非製品面およびその付近に向かって移動する遊離水などの水分と共に非製品面およびその付近に向かって移動するので、添加剤や不純物が製品面およびその付近に残留または析出することが防止される。この結果、石膏鋳型により鋳造される製品の鋳造時に添加剤または不純物と溶融状態にある製品の形成材料との化学反応などによる製品の表面の変色や、添加剤または不純物による製品の表面の凹凸などの鋳造欠陥の発生が防止される。
請求項2記載の事項によれば、製品面での乾燥が非製品面での乾燥に比べて抑制されるので、請求項1記載の発明と同様に、添加剤や不純物が製品面およびその付近に残留または析出することが防止されて、石膏鋳型により鋳造される製品の、添加剤または不純物に起因する製品の表面の変色や表面の凹凸などの鋳造欠陥の発生が防止される。
請求項3記載の事項によれば、製品面を密閉するという簡単な構造により、製品面が乾燥雰囲気に曝されることが殆どないので、製品面での乾燥が非製品面での乾燥に比べて抑制されて、製品の鋳造欠陥の発生が防止される。
請求項4記載の事項によれば、石膏鋳型の水分が、吸湿性材料の吸水により除去されるので、石膏鋳型の乾燥効率が向上する。しかも、吸湿性材料による吸水は、非製品面を通じて行われるので、添加剤や不純物が製品面およびその付近に残留または析出することの防止に寄与する。
請求項5記載の事項によれば、石膏鋳型の水分が、石膏鋳型が置かれる載置台の吸水により除去されるので、簡単な構造により石膏鋳型の乾燥効率が向上する。
請求項6記載の事項によれば、非製品面が送風された乾燥雰囲気に当たるので、石膏鋳型の乾燥効率が向上する。しかも、石膏鋳型内での毛細管現象による非製品面およびその付近に向かう水分の移動が促進されて、添加剤や不純物が製品面およびその付近に残留または析出することの防止に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4を参照して説明する。
本発明の乾燥方法による乾燥工程を経て製作される石膏鋳型10は、図1に示されるタイヤ成形用金型1を鋳造するために使用される。この金型1は、複数のピース金型に分割される分割型の金型であり、この実施形態では、図1(a)に示されるように、金型1により成形される成形品としてのタイヤの周方向に分割された複数のピース金型2と、図1(b)に二点鎖線で示されるいずれもピース金型である上金型3および下金型4とから構成される。
【0008】
以下、一例として、製品としてのピース金型2を鋳造するための石膏鋳型10の製作方法について説明する。
図2を参照すると、タイヤWのトレッド部W1を成形するためのピース金型2は、概略、次のようにして鋳造される。
先ず、合成樹脂等によりトレッド部W1のマスターモデル5が製作され(図2(a)参照))、次いで溶融したゴム材料がマスターモデル5に流し込まれてゴム型6が成型される(図2(b)参照)。そして、石膏鋳型10の成型工程において、石膏スラリーがゴム型6に流し込まれて石膏鋳型10が成型される(図2(c)参照)。この成型工程で得られた石膏鋳型10(すなわち生石膏鋳型)には水分が多く含まれているため、この水分を除去する乾燥処理が施される。その後、水分が減少した石膏鋳型10に、ピース金型2の、溶融状態での形成材料としての溶湯(例えばアルミニウム合金)が流し込まれてピース金型2が鋳造され(図2(d)参照)、図2(e)に示されるピース金型2が得られる。
【0009】
図2(c),図2(d)に示されるように、石膏鋳型10は、鋳造時にピース金型2(または溶融状態でのピース金型2の形成材料としての溶湯)に接触する面である製品面11と、鋳造時にピース金型2(または溶湯)に接触しない面である非製品面12とを有する。そして、製品面11は、タイヤ成形時にタイヤW(またはグリーンタイヤ)(図1参照)に接触する成形面11aと、タイヤ成形時にタイヤW(またはグリーンタイヤ)に接触しない非成形面11bとから構成される。
【0010】
ここで、成形面11aは、本発明が適用された石膏鋳型10により鋳造された製品の最も重要な面または該製品が成形品(この実施形態ではタイヤWである。)の成形に使用される場合に該成形品に接触する面であり、非成形面11bは、該成形面11a以外の面である。なお、図2(c),図2(d)には、説明の便宜上、成形面11aが太い実線で示されている。
また、前記鋳造工程で使用される石膏スラリーには、水と混合される石膏パウダーの分散性の向上や鋳型の強度の向上、また凝固時間の調整などのための添加剤(例えば、有機添加剤としての凝固遅延剤、界面活性剤や、無機添加剤としての粒度調整フィラーである。)が加えられている。
【0011】
次に、前記鋳造工程で得られた石膏鋳型10の乾燥が行われる乾燥工程について説明する。
図3を参照すると、石膏鋳型10を乾燥雰囲気中で乾燥するために、乾燥室21が形成された乾燥炉20が使用される。乾燥炉20は、乾燥室21内に置かれた石膏鋳型10に乾燥雰囲気の風を当てるための送風手段としてのファン22と、ファン22により送られる乾燥雰囲気を加熱する加熱手段としてのヒータ23と、ファン22が回転するように作動させる作動手段としての電動機24と、ヒータ23および電動機24を制御する制御装置25とを備える。
【0012】
図4を併せて参照すると、乾燥雰囲気中に配置された石膏鋳型10は、乾燥室21内に配置された支持部材である支持棚31に載せられて支持される。製品面11により規定されてピース金型2の鋳造時に溶湯が充填されるキャビティ13を形成する石膏鋳型10は、該キャビティ13の開口13aを全周に渡って囲む周縁部10aを有する。
【0013】
そして、石膏鋳型10は、吸湿性部材としての敷板32(例えば、耐火ボードである。)に周縁部10aが接触した状態で置かれて、乾燥雰囲気に曝される敷板32を介して支持棚31に置かれる。この状態で、製品面11は、支持棚31に置かれた載置台としての敷板32の載置面32aに対面しており、キャビティ13、したがって製品面11は、敷板32により密閉されている。このため、製品面11は、乾燥雰囲気に対して密閉されて、乾燥雰囲気から遮蔽されている。また、成形面11aはキャビティ13を介して敷板32から離隔した位置にある。
一方、非製品面12については、その大部分が、乾燥雰囲気に曝されていて、さらにファン22により送られる乾燥雰囲気の風に当てられ、残りの一部分は、周縁部10aにおける敷板32との接触面12bになっている。
【0014】
このため、敷板32により覆われて乾燥雰囲気に対して密閉されている製品面11は、乾燥雰囲気に全くまたは殆ど曝されないので、非製品面12に比べて乾燥雰囲気との接触が抑制された状態にある。この結果、製品面11からの水分の蒸発は非製品面12に比べて緩慢であり、石膏鋳型10において、製品面11およびその付近での乾燥速度は、乾燥雰囲気に曝されている非製品面12およびその付近の乾燥速度、および吸湿性を有する敷板32により吸水される接触面12bおよびその付近の乾燥速度よりも小さい。
【0015】
制御装置25は、石膏鋳型10の乾燥を促進するために、石膏鋳型10の乾燥状態に応じて乾燥雰囲気の温度および風量を制御すべく、それぞれファン22およびヒータ23を制御する。
より具体的には、石膏鋳型10の温度が急上昇することで乾燥が急速に行われて型割れが生じないように、乾燥雰囲気の温度は、乾燥処理の開始後の時間経過と共に、段階的に次第に上昇(以下、「段階的昇温」という。)または連続的に次第に上昇(以下、「連続的昇温」という。)して最高温度に達するように制御される。そして、この温度制御に当たっては、石膏鋳型10の温度を検出する温度センサ、または乾燥処理の開始からの時間を検出するタイマが使用され、石膏鋳型10の温度または乾燥処理の経過時間に応じて、制御装置25がヒータ23の加熱量を制御する。
また、乾燥雰囲気の風量は、石膏鋳型10の温度の急上昇に起因する型割れを防止するために乾燥雰囲気の温度が高くなるにつれて減少するように制御され、または、乾燥処理の時間経過と共に石膏鋳型10の水分が減少することから、前記タイマが使用されることで、石膏鋳型10の水分量または乾燥処理の経過時間に応じて制御され、水分量が少なくなるにつれて、または経過時間が長くなるにつれて風量が減少するように、制御装置25が電動機24を介してファン22の風量を制御する。
【0016】
乾燥炉20が運転されると、ヒータ23で加熱されてファン22により石膏鋳型10に向けて送られる乾燥雰囲気は乾燥室21内で循環する。このとき、石膏鋳型10の非製品面12はファン22により送風された乾燥雰囲気(熱風)に曝される一方、製品面11は乾燥雰囲気(熱風)に曝されることがない。このため、水分の蒸発が緩慢な製品面11に対して、非製品面12からは、水分の蒸発が効率的に行われて、非製品面12およびその付近からの水分の除去が、製品面11およびその付近に比べて、優先的に、かつ効率よく行われて、石膏鋳型10の乾燥が行われる。また、非製品面12である接触面12bからは、水分が吸湿性を有する敷板32に吸収されるので、石膏鋳型10の乾燥が促進される。
【0017】
この乾燥工程において、非製品面12およびその付近が製品面11およびその付近に比べてより乾燥した状態にあるために、石膏鋳型10に含まれている添加剤や不純物は、毛細管現象により非製品面12およびその付近に向かって移動する遊離水などの水分と共に非製品面12およびその付近に向かって移動するので、添加剤や不純物が製品面11およびその付近に残留または析出することが防止される。この結果、石膏鋳型10により鋳造されるピース金型2(図1参照)には、添加剤または不純物と溶湯との化学反応などによるピース金型2の表面の変色や、添加剤または不純物によるピース金型2の表面の凹凸などの鋳造欠陥の発生が防止または抑制される。また、キャビティ13を介して敷板32から離隔した位置にある成形面11aでは、接触面12b近傍の非成形面11bの部分11b1に比べて、敷板32の吸湿により水分と共に移動する添加剤または不純物が残留または析出しにくくなる。
さらに、石膏鋳型10には、段階的昇温または連続的昇温となるように乾燥雰囲気の温度が制御されることにより型割れの発生が防止されたうえで、風量が制御された乾燥雰囲気が当てられて乾燥効率が高められる。
【実施例】
【0018】
同一仕様の石膏鋳型10に関して、支持棚31に対する石膏鋳型10の置き方(製品面11の向き)、敷板32の有無、乾燥雰囲気の温度制御(段階的昇温)の有無および乾燥雰囲気の風量制御の有無をパラメータとして、該石膏鋳型10の乾燥が行われ、乾燥後の石膏鋳型10により鋳造されたピース金型2の品質についての結果を、本発明の実施例1〜3と、比較例1〜3について、表1に示す。
【0019】
【表1】


【0020】
実施例3と比較例3との比較を含め、実施例1〜3と比較例1〜3とを比較することにより、石膏鋳型10の製品面11が乾燥雰囲気に対して密閉されて、製品面11の乾燥速度が非製品面12の乾燥速度よりも小さくされるか、または製品面11での乾燥雰囲気との接触が非製品面12に比べて抑制されることにより、ピース金型2の鋳造欠陥の発生が防止されることが分かる。
実施例1および実施例3を比較することにより、吸湿性を有する敷板32により石膏鋳型10の乾燥効率が向上することが分かる。また、実施例1および実施例2を比較することにより、風量制御を行うことにより石膏鋳型10の乾燥効率が向上することが分かる
実施例1〜3および比較例2を比較することにより、吸湿性を有する敷板32と風量制御との組合せにより、乾燥効率が著しく向上することが分かる。この理由は、石膏鋳型10から敷板32に吸収された水分がファン22により送風された乾燥雰囲気に曝される敷板32から除去されることにより、敷板32の吸水効率が高い状態に維持されて、敷板32による石膏鋳型10の水分の除去が一層促進されたためと考えられる。
実施例1〜3および比較例2,3と比較例1とを比較することにより、段階的昇温が、型割れを防止するうえで効果的であることが分かる。
【0021】
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
石膏鋳型10の乾燥が乾燥雰囲気中で行われる石膏鋳型10の乾燥方法において、製品面11の乾燥速度が非製品面12の乾燥速度よりも小さくされる、または、製品面11では非製品面12に比べて乾燥雰囲気との接触が抑制されることにより、非製品面12の乾燥速度は製品面11よりも大きく、製品面11での乾燥が非製品面12での乾燥に比べて抑制されるので、非製品面12およびその付近が製品面11およびその付近に比べてより乾燥した状態にある。このため、石膏鋳型10に含まれている添加剤や不純物は、毛細管現象により非製品面12およびその付近に向かって移動する遊離水などの水分と共に非製品面12およびその付近に向かって移動するので、添加剤や不純物が製品面11およびその付近に残留または析出することが防止または抑制される。この結果、石膏鋳型10により鋳造されるピース金型2の鋳造時に添加剤または不純物と溶湯との化学反応などによるピース金型2の表面の変色や、添加剤または不純物によるピース金型2の表面の凹凸などの鋳造欠陥の発生が防止される。
【0022】
製品面11は乾燥雰囲気に対して密閉されることにより、製品面11を密閉するという簡単な構造で、製品面11が乾燥雰囲気に曝されることが殆どないようにでき、製品面11での乾燥が非製品面12での乾燥に比べて抑制されて、ピース金型2の鋳造欠陥の発生が防止される。
【0023】
非製品面12の一部分が吸湿性部材である敷板32に接触することにより、石膏鋳型10の水分が、乾燥雰囲気による蒸発に加えて、敷板32の吸水により除去されるので、石膏鋳型10の乾燥効率が向上する。しかも、敷板32による吸水は、非製品面12を通じて行われるので、添加剤や不純物が製品面11およびその付近に残留または析出することの防止に寄与する。
石膏鋳型10は吸湿性を有する敷板32の上に置かれ、製品面11は敷板32により密閉されることにより、石膏鋳型10の水分が、石膏鋳型10が置かれる敷板32の吸水により除去されるので、簡単な構造により石膏鋳型10の乾燥効率が向上する。
【0024】
また、成形面11aがキャビティ13を介して敷板32から離隔した位置にあることにより、成形面11aは、接触面12bを通じて敷板32に吸水される水分と共に接触面12bに向かって移動する添加剤または不純物から離れているので、成形面11aでの添加剤または不純物の残留または析出が効果的に防止され、ピース金型2の鋳造欠陥の発生が防止される。
【0025】
非製品面12は送風された乾燥雰囲気に曝されることにより、非製品面12が送風された乾燥雰囲気に当たるので、石膏鋳型10の乾燥効率が向上する。しかも、石膏鋳型10内での毛細管現象による非製品面12およびその付近に向かう水分の移動が促進されて、添加剤や不純物が製品面11およびその付近に残留または析出することの防止に寄与する。
【0026】
また、吸湿性を有する敷板32がファン22により送風された乾燥雰囲気に曝されることにより、石膏鋳型10から敷板32に吸水された水分が乾燥雰囲気に曝される敷板32から効率的に除去されるので、敷板32の吸水効率が高い状態に維持されて、敷板32による石膏鋳型10の水分の除去が一層促進される結果、石膏鋳型10の乾燥効率が著しく向上する。
【0027】
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
乾燥雰囲気中の石膏鋳型10において、製品面11およびその付近の乾燥速度が、乾燥雰囲気に曝される非製品面12およびその付近の乾燥速度に比べて小さくなる条件の下で、製品面11が、非製品面12に比べて抑制された状態、例えばキャビティ13内に流入する乾燥雰囲気の流量が絞られた状態で、乾燥雰囲気に曝されてもよく、この場合も、製品面11では、非製品面12に比べて乾燥雰囲気との接触が抑制されることになる。
敷板32が使用されることなく、石膏鋳型10が支持棚31に直接置かれてもよい。そして、この場合、支持棚31自体が吸湿性部材を構成してもよい。製品面11は可撓性のシート状の覆いにより密閉されてもよい。
吸湿性部材は、石膏鋳型において敷板32または支持棚31との接触面以外の非製品面12と接触するように設けられてもよく、さらには成形面11a以外の面と接触するように設けられてもよい。
石膏鋳型により鋳造される製品は、タイヤ成形用以外の金型または金型以外の物品であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明が適用された乾燥方法による乾燥工程を経て製作される石膏鋳型により鋳造されたタイヤ成形用金型を示し、(a)は、タイヤの周方向に分割された金型の要部の概略の平面図を示し、(b)は、(a)のb−b線断面図である。
【図2】図1の金型を構成するピース金型を鋳造するための石膏鋳型の製作工程およびピース金型の鋳造工程の概略を説明する断面図であり、(a)はマスターモデルを示し、(b)はマスターモデルによりゴム型が成型される工程を示し、(c)はゴム型により石膏鋳型が成型される工程を示し、(d)は石膏鋳型によりピース金型が鋳造される工程を示し、(e)は鋳造されたピース金型を示す。
【図3】図2の石膏鋳型の乾燥を行うための乾燥炉の概略の図である。
【図4】図3の乾燥炉内に置かれた石膏鋳型の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0029】
2…ピース金型、10…石膏鋳型、11…製品面、12…非製品面、20…乾燥炉、32…敷板、
W…タイヤ。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成18年9月7日(2006.9.7)
【代理人】 【識別番号】100067840
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 望


【公開番号】 特開2008−62270(P2008−62270A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−242668(P2006−242668)