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【発明の名称】 乾燥鋳物砂組成物の製造方法及びそれによって得られた乾燥鋳物砂組成物並びにそれを用いた鋳型の製造方法
【発明者】 【氏名】甲斐 勲

【要約】 【課題】アルカリレゾール樹脂水溶液を用いつつ、経時変化が著しく少なく、且つ充填性の良好な、常温流動性を有する乾態の粉末状乾燥鋳物砂組成物を製造する方法、またそのような乾燥鋳物砂組成物を用いて、鋳型強度の向上した鋳型を有利に製造する方法を提供すること。

【構成】予め加熱された鋳物砂に、アルカリレゾール樹脂水溶液を混練乃至は混合せしめて、鋳物砂の表面をアルカリレゾール樹脂水溶液にて被覆すると共に、かかるアルカリレゾール樹脂水溶液の水分を鋳物砂の熱にて蒸散せしめることにより、常温流動性を有する乾態の粉末状樹脂被覆砂を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め加熱された鋳物砂にアルカリレゾール樹脂水溶液を混練乃至は混合して、該鋳物砂の表面を該アルカリレゾール樹脂水溶液にて被覆すると共に、かかるアルカリレゾール樹脂水溶液の水分を該鋳物砂の熱にて蒸散せしめることにより、常温流動性を有する乾態の粉末状樹脂被覆砂を得ることを特徴とする乾燥鋳物砂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記鋳物砂が、予め100〜140℃の温度に加熱されていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥鋳物砂組成物の製造方法。
【請求項3】
鋳物砂とアルカリレゾール樹脂水溶液とを、減圧下において、混練乃至は混合して、該鋳物砂の表面を該アルカリレゾール樹脂水溶液にて被覆すると共に、かかるアルカリレゾール樹脂水溶液の水分を蒸散せしめることにより、常温流動性を有する乾態の粉末状樹脂被覆砂を得ることを特徴とする乾燥鋳物砂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記鋳物砂が、予め加熱されていることを特徴とする請求項3に記載の乾燥鋳物砂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記鋳物砂の加熱温度が、40〜90℃であることを特徴とする請求項4に記載の乾燥鋳物砂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の製造方法によって得られた、鋳物砂表面がアルカリレゾール樹脂にて被覆されてなる樹脂被覆砂であって、その水分率が0.5%以下の乾態の粉体とされて、常温流動性が付与されていることを特徴とする乾燥鋳物砂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の乾燥鋳物砂組成物を用い、それを、目的とする鋳型を与える成形型内に充填した後、水蒸気を通気させて、かかる成形型内で硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
【請求項8】
アルキレンカーボネート及び/又は有機エステルが、前記水蒸気と共に、又はそれとは別個に、前記成形型内に導入されることを特徴とする請求項7に記載の鋳型の製造方法。
【請求項9】
前記水蒸気の通気の後、さらに炭酸ガスが前記成形型内に通気せしめられることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の鋳型の製造方法。
【請求項10】
前記水蒸気の通気の後、さらに乾燥空気又は加熱乾燥空気が前記成形型内に通気せしめられることを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れか一つに記載の鋳型の製造方法。
【請求項11】
前記成形型が、100℃以上の温度に加熱されていることを特徴とする請求項7乃至請求項10の何れか一つに記載の鋳型の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥鋳物砂組成物の製造方法及びそれによって得られた乾燥鋳物砂組成物並びにそれを用いた鋳型の製造方法に係り、特に、常温流動性を有する乾態の粉末状樹脂被覆鋳物砂を製造する方法と、そのような樹脂被覆鋳物砂を用いた鋳造用鋳型の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水溶性フェノール樹脂、具体的には水溶性アルカリレゾール樹脂を、粘結剤(バインダー)として用い、その水溶液にて、鋳物砂の表面を被覆して、得られるレジン・コーテッド・サンド(RCS:樹脂被覆砂)により、目的とする鋳造用鋳型を製造する方法が、有機自硬性鋳型造型法やガス硬化性鋳型造型法等の鋳型造型法における一つの手法として、知られている。
【0003】
例えば、特開昭58−154433号公報や特開昭58−154434号公報等においては、粒状耐火材料に、アルカリレゾール樹脂水溶液や有機エステル等を配合してなる鋳造用組成物が、明らかにされており、そこでは、かかる鋳造用組成物を用いて、鋳型や中子を製造するに際して、アルカリレゾール樹脂が、有機エステルにて硬化せしめられて、所望の鋳型強度が確保され得るようになっているのである。しかしながら、そのような鋳造用組成物にあっては、アルカリレゾール樹脂が、水溶液形態のバインダーとして用いられることとなるところから、粒状耐火材料に配合せしめられると、湿態(湿潤状態)の組成物となり、そのために、その取扱い性や鋳型成形型への充填性等において、大きな問題を内在していることに加えて、保管可能期間が短く、長期保存が困難であるという問題を有するものであった。
【0004】
このため、特開平7−178507号公報においては、貯蔵安定性に優れ、しかも使用時の自由度が広く、造型・注湯時の作業環境を改善し、且つ輸送コストを低減することが出来る、粉末状の水溶性フェノラート樹脂、換言すれば水溶性アルカリレゾール樹脂をバインダーとして使用した、鋳型の製造法が提案されており、そこでは、粉末状の水溶性アルカリレゾール樹脂(フェノラート樹脂)を水に接触させて硬化せしめることにより、目的とする鋳型を製造することが、明らかにされている。そして、そこでは、粉末状のバインダーが使用されているところから、乾態(乾燥状態)の鋳型材料(組成物)が得られるものの、粉末状のバインダーを製造する必要があり、そのために、コストアップを伴うという問題が新たに発生することとなるのである。即ち、粉末状のバインダーを得るには、所定の樹脂水溶液を作製した後、それを固体状態まで脱水、濃縮する必要があるからであり、そのために、上記公報においては、加熱減圧機能を有する二軸式ニーダーやスプレードライヤーにより処理し、更に必要に応じて粉砕する等の工程が、必要とされているのである。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−154433号公報
【特許文献2】特開昭58−154434号公報
【特許文献3】特開平7−178507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、かくの如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、アルカリレゾール樹脂水溶液を用いつつ、経時変化が著しく少なく、且つ充填性の良好な、常温流動性を有する乾態の粉末状乾燥鋳物砂組成物を製造する方法を提供することにあり、また、そのような乾燥鋳物砂組成物を用いて、鋳型強度の良好な鋳型を有利に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明にあっては、かくの如き課題を解決するために、予め加熱された鋳物砂にアルカリレゾール樹脂水溶液を混練乃至は混合して、該鋳物砂の表面を該アルカリレゾール樹脂水溶液にて被覆すると共に、かかるアルカリレゾール樹脂水溶液の水分を該鋳物砂の熱にて蒸散せしめることにより、常温流動性を有する乾態の粉末状樹脂被覆砂を得ることを特徴とする乾燥鋳物砂組成物の製造方法を、その要旨とするものである。
【0008】
なお、このような本発明に従う乾燥鋳物砂組成物の製造方法の望ましい態様によれば、前記鋳物砂は、予め100〜140℃の温度に加熱せしめられている。
【0009】
また、本発明は、先の課題を解決するために、鋳物砂とアルカリレゾール樹脂水溶液とを、減圧下において、混練乃至は混合して、該鋳物砂の表面を該アルカリレゾール樹脂水溶液にて被覆すると共に、かかるアルカリレゾール樹脂水溶液の水分を蒸散せしめることにより、常温流動性を有する乾態の粉末状樹脂被覆砂を得ることを特徴とする乾燥鋳物砂組成物の製造方法をも、その要旨の一つとするものである。
【0010】
なお、この本発明に従う乾燥鋳物砂組成物の製造方法の望ましい態様によれば、前記鋳物砂は、予め加熱されており、そして望ましくは、そのような鋳物砂の加熱温度は、40〜90℃とされている。
【0011】
さらに、本発明にあっては、上述せる如き製造方法によって得られた鋳物砂表面が、アルカリレゾール樹脂にて被覆されてなる樹脂被覆砂であって、その水分率が0.5%以下の乾態の粉体とされて、常温流動性が付与されていることを特徴とする乾燥鋳物砂組成物をも、その要旨とするものである。
【0012】
加えて、本発明にあっては、かくの如き乾燥鋳物砂組成物を用い、それを、目的とする鋳型を与える成形型内に充填した後、水蒸気を通気させて、かかる成形型内で硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法をも、その要旨としている。
【0013】
なお、かかる本発明に従う鋳型の製造方法の望ましい態様によれば、アルキレンカーボネート及び/又は有機エステルが、前記水蒸気と共に、又はそれとは別個に、前記成形型内に導入されるのである。
【0014】
また、本発明の他の望ましい態様によれば、前記水蒸気の通気の後、さらに炭酸ガスが前記成形型内に通気せしめられることとなる。
【0015】
さらに、本発明に従う鋳型の製造方法の他の望ましい態様によれば、前記水蒸気の通気の後、さらに乾燥空気又は加熱乾燥空気が前記成形型内に通気せしめられるのである。
【0016】
加えて、本発明に従う鋳型の製造方法の他の異なる望ましい態様によれば、前記成形型が、100℃以上の温度に加熱されている構成が、有利に採用されるのである。
【発明の効果】
【0017】
従って、かくの如き本発明によれば、アルカリレゾール樹脂水溶液を用いた鋳型の製造に際して、目的とする鋳型を与える鋳物砂組成物(RCS)が、その製造時に、直接に乾態の粉末状態において調製され得ることとなるところから、そのような鋳物砂組成物の取扱い性が容易となることに加えて、その経時変化が著しく少ないものとなり、そのために、長期保存が有利に実現され得ることとなったのであり、また、鋳型造型のための成形型の成形キャビティ内への鋳物砂組成物の充填性が、著しく向上され得ることとなり、そしてそれによって、複雑な形状の鋳型の造型も有利に実現され得ると共に、得られた鋳型の強度を効果的に向上せしめ得るのである。
【0018】
また、本発明に従う鋳型の製造方法によれば、目的とする鋳型を与える成形型の成形キャビティ内に充填された鋳物砂組成物の硬化が、水蒸気の通気によって進行せしめられ得ることとなるところから、従来の有機硬化剤を用いた場合の如く、高価な装置を必要とすることなく、また環境にも悪影響を及ぼすことなく、優れた特性を有する鋳型を得ることが出来ることとなるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ところで、本発明に従う、RCSである乾燥鋳物砂組成物の製造方法にあっては、粘結剤として、アルカリレゾール樹脂水溶液を用いると共に、そのようなアルカリレゾール樹脂水溶液にて鋳物砂の表面を被覆するに際して、その含有水分を同時に蒸散せしめるようにすることにより、常温流動性を有する乾態の粉末状樹脂被覆砂(アルカリ性の乾燥砂粒子)を、乾燥鋳物砂組成物として得るようにしたところに、大きな特徴を有しているのである。
【0020】
ここにおいて、そのような乾燥鋳物砂組成物の製造に用いられる鋳物砂としては、従来から鋳型用に用いられている耐火性粒状材料が、何れも、用いられ得るものであって、具体的には、ケイ砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナサンド、合成ムライト砂等を挙げることが出来る。なお、これらの鋳物砂は、新砂であっても、或いは、鋳物砂として、鋳型の造型に一回或いは複数回使用された再生砂又は回収砂であっても、更には、そのような再生砂や回収砂に新砂を加えて、混合した混合砂であっても、何等差支えないのである。そして、そのような鋳物砂は、一般に、AFS指数で40〜80程度の粒度のものとして、好ましくは60程度の粒度のものとして、用いられることとなる。
【0021】
また、そのような鋳物砂に混練乃至は混合されて、その粒子表面に被覆される粘結剤(バインダー)としてのアルカリレゾール樹脂水溶液には、従来から公知の各種の水溶性アルカリレゾール樹脂の水溶液が用いられ得、また、市販品の中から適宜に選択されて、用いられることとなる。なお、かかる水溶性アルカリレゾール樹脂としては、フェノールやクレゾール、レゾルシノール、キシレノール、ビスフェノールA、その他置換フェノール等のフェノール類を、大量のアルカリ性物質の存在下において、例えばフェノール類に対するアルカリ性物質のモル数が0.01〜2.0倍モル程度となる割合において、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒド等のアルデヒド類と反応させることにより得られる、アルカリ性のレゾール型のフェノール樹脂である。また、そこで用いられるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物等を例示することが出来、それらが、単独で、或いは二種以上が混合されて、用いられ得るものであるが、アルカリ性物質の中でも、特に、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムにあっては、触媒活性が良好であるところから、好適に用いられることとなる。
【0022】
なお、目的とする乾燥鋳物砂組成物の製造に際して、かかるアルカリレゾール樹脂水溶液は、鋳物砂に対して、従来のRCSの製造の場合と同様な配合量において用いられ得るものであって、例えば、そのようなアルカリレゾール樹脂水溶液の配合量としては、鋳物砂の100質量部に対して、固形分換算で、一般に、0.3〜5質量部程度の割合が、好ましくは0.5〜3質量部程度となる割合が、採用されることとなる。
【0023】
そして、本発明にあっては、それら鋳物砂とアルカリレゾール樹脂水溶液とを混練乃至は混合せしめて、鋳物砂の表面をアルカリレゾール樹脂水溶液にて被覆するようにすると共に、そのようなアルカリレゾール樹脂水溶液の水分を蒸散せしめて、常温流動性を有する乾態の粉末状樹脂被覆砂を得るようにしたものであるが、そのようなアルカリレゾール樹脂水溶液の水分の蒸散は、樹脂の硬化が進む前に、迅速に行われる必要があり、一般に5分以内、好ましくは2分以内に含有水分を飛ばして、乾態の粉末状樹脂被覆砂とする必要があるのである。
【0024】
このため、本発明にあっては、かかるアルカリレゾール樹脂水溶液中の水分を迅速に蒸散せしめるための一つの手段として、鋳物砂を予め加熱しておき、それに、アルカリレゾール樹脂水溶液を混練乃至は混合せしめるようにしたのである。この予め加熱された鋳物砂に、アルカリレゾール樹脂水溶液を混練乃至は混合することによって、アルカリレゾール樹脂水溶液の水分は、そのような鋳物砂の熱にて、極めて迅速に蒸散せしめられ得ることとなるのであり、以て、得られる樹脂被覆砂の水分率を低下せしめて、常温流動性を有する乾態の粉体が、有利に得られることとなる。なお、この鋳物砂の予熱温度としては、アルカリレゾール樹脂水溶液の含有水分量やその配合量等に応じて、適宜に選定されることとなるが、一般に100〜140℃程度の温度に、鋳物砂を加熱しておくことが、望ましい。この予熱温度が低くなり過ぎると、水分の蒸散を効果的に行い難くなるからであり、また予熱温度が高くなり過ぎると、樹脂の硬化が進む恐れがあり、樹脂被覆砂としての機能に問題を生じるようになるからである。
【0025】
また、本発明においては、鋳物砂に混練乃至は混合せしめられるアルカリレゾール樹脂水溶液の水分を迅速に蒸散せしめるための他の一つの手段として、それら鋳物砂とアルカリレゾール樹脂水溶液との混練乃至は混合操作を、減圧下において行うことも、有利に採用されるところである。そして、そのような減圧作用によって、アルカリレゾール樹脂水溶液中の水分がより一層効果的に除去され得て、目的とする乾態の粉末状樹脂被覆砂を有利に得ることが出来ることとなる。
【0026】
なお、そのような鋳物砂とアルカリレゾール樹脂水溶液との混練乃至は混合に際して、適用される減圧状態は、かかるアルカリレゾール樹脂水溶液の含有水分量やその配合量等に応じて、その水分の有効な除去が図られ得るように、大気圧よりも所定の低い圧力が、適宜に採用されることとなるが、一般に、ゲージ圧が6.7×10-2MPa以下、好ましくは4.0×10-2MPa以下となる減圧状態が、採用されることとなる。この減圧下の圧力が低くなるほど(真空度が高くなる程)、アルカリレゾール樹脂水溶液中の水分の除去(蒸散)を、より一層効果的に行うことが可能となる。
【0027】
また、かかる減圧下における水分の蒸散に際しては、鋳物砂を予め加熱しておくことにより、より一層効果的な水分の除去が可能となるのである。なお、そのような鋳物砂の加熱に際して、加熱温度としては、水分の蒸散効率の観点から、一般に、40〜90℃、好ましくは50〜80℃程度の温度が採用されることとなる。
【0028】
そして、このようにして得られた乾燥鋳物砂組成物にあっては、鋳物砂表面が、アルカリレゾール樹脂にて被覆されてなる樹脂被覆砂(RCS)となっており、しかも、水分率が0.5%以下、有利には、0.3%以下にまで低下せしめられていることにより、サラサラな乾態の粉体となって、常温流動性が付与された、優れた特性を有するものとなっているのである。
【0029】
従って、そのような乾燥鋳物砂組成物(アルカリ性の乾燥砂粒子)として得られることにより、湿態のものと比べて、その経時変化が著しく少なく、それ故に、長期保存が可能となったことは、その取扱い性が良好であることに加えて、本発明の大きな特徴となっているのであり、また、そのような鋳物砂組成物の充填性が効果的に向上せしめられ得て、複雑な形状の鋳型の成形型の成形キャビティ内への充填も、有効に行なわれ得ることとなる他、得られた鋳型の強度も、有利に向上せしめられ得ることとなる。
【0030】
本発明にあっては、かくの如くして得られた乾燥鋳物砂組成物を用い、それを成形型の成形キャビティ内に充填して、目的とする鋳型の造型が行われることとなるのであるが、その際、かかる成形型内に充填された乾燥鋳物砂組成物の硬化が、単に水蒸気を通気させることのみによって、行われ得ることとなるところから、従来の有機硬化剤を用いた場合のように、回収装置や防爆装置、更には耐薬品性の装置等の、高価な装置を使用することは必ずしも必要でなく、これによって、造型コストを有利に低減せしめ得ることに加えて、環境への悪影響も顧慮する必要がない等の利点を享受することが出来る。
【0031】
特に、このような鋳型の造型に際しては、成形型に充填された乾燥鋳物砂組成物が、加熱状態下において、水蒸気の通気により硬化せしめられることが望ましく、そのために、有利には、かかる成形型が加熱されていることが望ましいのであり、一般に、100℃以上の温度に、特に120〜150℃の温度に加熱されていることが、望ましい。このような温度に加熱された成形型を用いることによって、充填された乾燥鋳物砂組成物の硬化を、水蒸気によって、より一層効果的に進行せしめ得て、得られる鋳型の強度をより一層有利に向上せしめ得ることとなる。
【0032】
なお、かかる鋳型の造型において、鋳物砂組成物の充填操作から、その硬化操作に至る造型時間、中でもそれらの操作で熱の加わる時間が長くなると、アルカリ劣化等の問題が惹起され易くなるところから、そのような造型時間は、一般に、3分以内、好ましくは2分以内、更に好ましくは1分以内となるようにして、目的とする鋳型の造型が行われることとなる。
【0033】
このように、本発明にあっては、成形型内に充填された乾燥鋳物砂組成物の硬化は、単なる水蒸気の通気のみによっても、行なわれ得るものであるが、また、必要に応じて、アルキレンカーボネート及び/又は有機エステルを、通気せしめられる水蒸気と共に、又は水蒸気とは別個に、成形型内に導入して、樹脂のより一層迅速な硬化を図るようにすることも、可能である。なお、これらアルキレンカーボネートや有機エステルは、あくまでも補助的に使用されるものであって、その使用に際しては、特に、それらの漏出によって環境に悪影響を及ぼさないように、配慮されることとなる。
【0034】
ここで、かかる用いられるアルキレンカーボネートや有機エステルは、何れも、アルカリレゾール樹脂の硬化剤として公知のものであって、その公知の各種のものの中から、適宜に選定されて、用いられることとなる。その中で、例えば、アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、4−エチルジオキソロン、4−ブチルジオキソロン、4,4−ジメチルオキソロン、4,5−ジメチルジオキソロン等を挙げることが出来、また、有機エステルとしては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸エチル、乳酸エチル、クエン酸トリエチル、コハク酸ジメチル、マロン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、シュウ酸ジメチル、アクリル酸メチル、エチレングリコールジアセテート、ジアセチン、トリアセチン等のカルボン酸エステル類や、γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類を挙げることが出来る。中でも、蟻酸メチル、トリアセチン、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が、好適に用いられることとなる。
【0035】
また、本発明にあっては、水蒸気と共に、樹脂の硬化に寄与させるべく、炭酸ガスが、前記した水蒸気の通気の後、更に成形型内に通気せしめられるようにされる。
【0036】
そして、このようにして成形型内に充填された鋳物砂組成物が、水蒸気の通気により、更にはアルキレンカーボネートや有機エステル、炭酸ガスの補助的な導入乃至は通気により、所定の硬化物とされた後、更に乾燥空気又は加熱乾燥空気が、成形型内に吹き込まれて、かかる硬化物に通気せしめられるようにすることが、望ましい。このような乾燥空気又は加熱乾燥空気の通気により、硬化物の内部まで乾燥させるようにすることによって、鋳型の強度が有利に高められ得ることとなるのである。
【実施例】
【0037】
以下に、幾つかの実施例を用いて、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明は、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。なお、本実施例において、百分率は、特に断りのない限りにおいて、質量基準にて示されている。また、実施例で得られた粉末状樹脂被覆砂(RCS)の水分率、砂の状態、かさ密度、保管可能期間、及びそれぞれのRCSを用いて得られる鋳型の抗折強度、鋳型の充填密度の測定は、それぞれ、以下のようにして行った。
【0038】
−水分率の測定−
得られたRCSの2.0gを、アクアミクロン脱水溶剤ML(三菱化学株式会社製)の100ccが入った、カールフィッシャー水分測定機(平沼産業株式会社製;AQV−7 HIRANUMA AQUACOUNTER)のフラスコ[予め、カールフィッシャー試薬(Sigma−Aldrich Laborchemikalien Gmbh社製;ハイドラナールコンポジット5)を滴下して、水分を0にしておく。]内に投入し、マグネチックスターラーを用いて数分間撹拌し、その後、前記ハイドロナールコンポジット5を滴下して、水分量を定量し、その得られた値から、水分率を算出した。
【0039】
−砂の状態−
得られたRCSについて、目視にて観察を行ない、評価した。自由流動性を示すものを乾態、示さないものを湿態とし、また、振動を与えると、自由流動性を示すようになるものを、準乾態とした。
【0040】
−かさ密度−
各RCSを用いて、JACT試験法S−10;鋳物砂の充填性(かさ密度)試験法に準じて、測定した。
【0041】
−保管可能期間−
造型直後の抗折強度において、RCS製造直後の80%を下回らない抗折強度を与えるRCS保管期間とした。(ただし、RCS製造例3については、造型後木型に詰めて、常温下に24時間放置後の抗折強度において、かかる抗折強度の80%を下回らない抗折強度を与えるRCS保管期間とした。)
【0042】
−抗折強度−
所定温度の金型や木型にて、25×25×200mmの大きさの試験片を製作し、常温まで冷却した後、抗折強度測定機(高千穂精機株式会社製;デジタル鋳物砂強度試験機)を用いて、試験片製作直後の抗折強度を測定した。なお、抗折強度は、下記式を用いて算出した。
抗折強度=1.5×LW/ab2
L:支点間の距離(cm)
W:破壊荷重(kg)の測定値
a:試験片の幅(cm)
b:試験片の高さ(cm)
【0043】
−充填密度−
前記試験片の重量を測定し、それを体積で除して、算出した。
【0044】
−RCS製造例1−
先ず、鋳物砂として、フラタリーサンドを準備し、またアルカリレゾール樹脂水溶液としては、市販品:HPR830(旭有機材工業株式会社製)を準備した。次いで、120℃に予熱したフラタリーサンドを混合機(遠州鉄工株式会社製スピードマラー)に投入し、撹拌しつつ、かかるフラタリーサンドの100質量部に対して、固形分換算で、1.5質量部のアルカリレゾール樹脂水溶液を添加して、撹拌混合せしめた。そして、その混合開始から50秒後に、30秒間の送風を行うことにより、かかる鋳物砂の熱にて水分を蒸発せしめる一方、その蒸発した水分を外部に排出して、常温で流動性のある乾態の粉末状樹脂被覆砂(RCS)を得た。そして、この得られたRCSの水分率とかさ密度を測定し、更にその保管可能期間を調べて、それらの結果を、下記表1に示した。
【0045】
−RCS製造例2−
フラタリーサンドの予熱温度を70℃とすると共に、混合機を密閉して、減圧下(真空度:6.7×10-2MPa)において、2分間の混練を行い(送風なし)、鋳物砂表面に被覆されるアルカリレゾール樹脂水溶液中の水分を蒸散せしめること以外は、RCS製造例1と同様にして、フラタリーサンド表面をアルカリレゾール樹脂にて被覆することにより、目的とする乾態の粉末状RCSを作製した。なお、この得られたRCSについて、その水分率とかさ密度を測定する一方、保管可能期間を調べて、それらの結果を、下記表1に併せ示した。
【0046】
−鋳型製造例1−
RCS製造例1で得られたRCSを用い、それを、130℃に加熱した金型(成形型)中に、ブロー圧:0.3MPaにて吹き込み、かかる金型内に、RCSを充填した後、0.3MPaの圧力で水蒸気を吹き込み、4秒間通気させ、更にその後、2分間保持することにより、充填RCSの硬化を行った。次いで、その金型から、硬化したRCS充填物にて構成される鋳型を取り出し、その充填密度と造型直後の抗折強度を測定し、それらの結果を、下記表2に示した。
【0047】
−鋳型製造例2−
RCS製造例2において得られたRCSを用い、鋳型製造例1と同様にして、硬化鋳型を製造し、その造型直後の抗折強度及び充填密度をそれぞれ測定して、それらの結果を、下記表2に示した。
【0048】
−鋳型製造例3−
鋳型製造例1において、金型内に水蒸気を通気せしめた後、更に120℃の熱風を5秒間通気させることにより、水分を蒸発させて、目的とする硬化鋳型を得た。そして、その得られた鋳型について、造型直後の抗折強度及び充填密度をそれぞれ測定して、それらの結果を、下記表2に示した。
【0049】
−鋳型製造例4、5−
鋳型製造例3において、金型への水蒸気の通気と120℃熱風の通気との間に、蟻酸メチル(ガス)又は炭酸ガスを、10秒間又は20秒間通気せしめることにより、それぞれ、鋳型製造例4,5の硬化鋳型を製造した。次いで、それら得られた硬化鋳型について、それぞれ造型直後の抗折強度及び充填密度を測定して、それらの結果を、下記表2又は表3に示した。
【0050】
−RCS製造例3・鋳型製造例6−
常温のフラタリーサンド100質量部に対して、固形分換算で、1.5質量部のアルカリレゾール樹脂(商品名:HPR836)水溶液と、γ−ブチロラクトンの0.3質量部を加えて、品川ミキサー(株式会社ダルトン製)にて混合し、湿態の鋳型材料(RCS)を得た。この鋳型材料の保管可能期間は、3分であった。また、この鋳型材料の水分率とかさ密度を測定し、それらの結果を、下記表1に示した。
【0051】
次いで、かかる得られた鋳型材料を、直ちに木型に詰めて、目的とする鋳型の造型を行った。そして、この得られた鋳型について、その充填密度と造型直後の抗折強度について測定し、それらの結果を、下記表3に示した。
【0052】
−RCS製造例4・鋳型製造例7−
常温のフラタリーサンド100質量部に対して、固形分換算で、1.5質量部のアルカリフェノール樹脂(商品名:HPR830)水溶液を加えて、品川ミキサーにて混合することにより、湿態の鋳型材料(RCS)を得た。なお、この鋳型材料の保管可能期間は3分であった。また、この鋳型材料について、その水分率とかさ密度を測定し、それらの結果を、下記表1に示した。
【0053】
次いで、かかる得られた鋳型材料を、直ちに木型に詰めた後、蟻酸メチルガスを、10秒間通気して、硬化鋳型を得た。そして、この得られた硬化鋳型について、その充填密度と造型直後の抗折強度を測定し、それらの結果を、下記表3に示した。
【0054】
−RCS製造例5・鋳型製造例8−
常温のフラタリーサンド100質量部に対して、バインダーとしてのポリビニルアルコール60%水溶液を、固形分換算にて、1.5質量部加え、品川ミキサーにて混合せしめた後、150℃の熱風で水分を蒸発させることにより、準乾態の鋳型材料(RCS)を得た。この得られた鋳型材料について、その水分率、かさ密度及び保管可能期間を調べ、その結果を、下記表1に示した。
【0055】
次いで、かかる得られた鋳型材料の100質量部に対して、水6質量部を混合した後、−30℃以下の窒素ガスで冷凍・固化し、そして冷凍庫内に設置した混合機により、単粒構造と為し、更にその後、それを金型中に吹き込んで、成形し、目的とする鋳型の造型を行った。そして、この得られた鋳型について、その充填密度及び造型直後の抗折強度を測定し、その結果を、下記表3に示した。
【0056】
【表1】


【0057】
【表2】


【0058】
【表3】


【0059】
かかる表1〜表3の結果の対比から明らかなように、本発明に従って得られた乾燥鋳物砂組成物は、優れた特徴を有するものであることが確認された。即ち、表1において、RCS製造例1、2とRCS製造例3〜5との対比から、本発明に従うRCS製造例1、2において得られたRCSは、水分量が極めて少なく、乾態状態の粉末であると共に、かさ密度が1.5g/cm3 以上もあり、優れた充填性を示すものであり、しかも保管可能期間が3ヶ月以上と極めて長く、経時変化が著しく少ないことが、認められるのである。また、本発明に従う鋳型の製造方法に係る鋳型製造例1〜5と比較例である鋳型製造例6〜8との対比から明らかなように、鋳型製造例1〜5において得られた鋳型は、充分な抗折強度を有していると共に、高い充填密度を示すものであることが、認められるのである。

【出願人】 【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材工業株式会社
【出願日】 平成18年8月31日(2006.8.31)
【代理人】 【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄

【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博


【公開番号】 特開2008−55468(P2008−55468A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−235698(P2006−235698)