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【発明の名称】 鋳造型およびその製造方法
【発明者】 【氏名】小川 兼司

【要約】 【課題】キャビティ空間の内外で生じた異物を除去して、異物混入による鋳造欠陥の発生を効果的に防止することが可能な鋳造型およびその製造方法を提供する。

【構成】砂型10は、溶融した金属を流し込んで凝固させ、任意の形状の製品Pを成形するための鋳型であって、製品Pに相当するキャビティ空間Sを内部に形成する製品成形部11と、湯口12aおよび湯道12bを含む注入部12と、湯道12bを経由してキャビティ空間S内に流入した溶湯をキャビティ空間Sの外へ導く砂止め成形部14,15と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型内に製品部分に相当する空間を形成するキャビティ部と、
前記キャビティ部に溶湯を流し込む湯口と、
前記キャビティ部と前記湯口とを連通させる湯道と、
前記湯道から前記キャビティ部に流入した前記溶湯を前記キャビティ部の外へ導くように、前記キャビティ部に連通した異物除去空間部と、
を備えている鋳造型。
【請求項2】
砂型である、
請求項1に記載の鋳造型。
【請求項3】
前記異物除去空間部は、前記異物除去空間部よりも断面積が小さい連通部を介して、前記キャビティ部と連通している、
請求項1または2に記載の鋳造型。
【請求項4】
前記異物除去空間部は、前記キャビティ部内に溶湯を注入する際の姿勢における前記キャビティ部の側面に形成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の鋳造型。
【請求項5】
前記異物除去空間部は、前記湯道を介して前記キャビティ部内に注入された溶湯の流れの進行方向に対して対向する位置に、前記キャビティ部と連通する開口を有している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の鋳造型。
【請求項6】
前記異物除去空間部と前記キャビティ部とを連通させる連通部は、曲線状の部分を含むように形成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の鋳造型。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の鋳造型の製造方法であって、
前記鋳造型について前記溶湯の流れに関する湯流れシミュレーションを行う第1のステップと、
前記湯流れシミュレーションの結果に基づいて、前記キャビティ部に対する前記異物除去空間部の配置を決定する第2のステップと、
を備えた鋳造型の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を溶融させた溶湯を型内に注入して鋳造品を形成する鋳造型およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄やアルミニウム、鉛等の金属を溶融させた溶湯を流し込んで、鋳造品を形成するための金型や砂型等の鋳造型が用いられている。
例えば、特許文献1には、溶湯中に含まれるガスや比重の小さな異物を除去することを目的として、ガストラップ、スラグトラップおよび異物トラップをそれぞれ形成した鋳造用金型が開示されている。
【0003】
ここでは、ガストラップを上向きに形成し、スラグトラップの上方に比重の小さい異物を除去するための異物トラップが設けられているため、溶湯が横湯道において整流化する過程において溶湯中に含まれるガスを除去するとともに、スラグトラップに追い込んだ比重の小さい異物を、スラグを分離した上で異物トラップにおいて捕集することができる。
【特許文献1】特開平5−305387号公報(平成5年11月19日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の鋳造用金型では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された鋳造用金型では、キャビティ空間へ溶湯を導入する湯道側にスラグトラップおよび異物トラップを形成して、溶湯中に含まれるガスや比重の小さい異物を除去している。このため、例えば、砂型等の鋳造型を用いた場合には、型内のキャビティ空間において、キャビティ空間を形成する型の内面の一部が欠けて異物が発生した場合には、この異物を除去することは困難である。
【0005】
本発明の課題は、キャビティ空間の内外で生じた異物を除去して、異物混入による鋳造欠陥の発生を効果的に防止することが可能な鋳造型およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る鋳造型は、キャビティ部と、湯口と、湯道と、異物除去空間部と、を備えている。キャビティ部は、型内に製品部分に相当する空間を形成する。湯口は、キャビティ部に溶湯を流し込む。湯道は、キャビティ部と湯口とを連通させる。異物除去空間部は、湯道からキャビティ部に流入した溶湯をキャビティ部の外へ導くように、キャビティ部に連通している。
【0007】
ここでは、鋳造型に形成された湯口から注入されて湯道を介して製品部分に相当するキャビティ部へと流入された溶湯をキャビティ部の外部へと導く異物除去空間部を、湯道を除くキャビティ部の周辺部分に形成している。
ここで、キャビティ部は、製品部分に相当する空間であって、溶湯が凝固する際における体積収縮分の溶湯を補給するために製品部分に近接する位置に設けられる押し湯部分等も含まれる。異物除去空間部は、キャビティ部との連通部分だけが開口した閉空間である。
【0008】
通常、このような鋳造型においては、ガスや酸化物等の異物をキャビティ部の空間内に流入しないようにするために、キャビティ部に連通する湯道の途中等にガストラップや異物トラップ等を配置している。しかし、このような構成では、キャビティ部に流入する前に溶湯に混入した異物を除去することはできるものの、キャビティ部内に溶湯が充填される際に溶湯に混入した異物を除去することはできない。特に、鋳造型として砂型等を用いる場合には、砂型内に形成されるキャビティ部において溶湯が充填されていく際に砂型の一部が欠けて異物として溶湯内に混入するおそれがある。
【0009】
そこで、本発明の鋳造型では、湯口から湯道を介してキャビティ部に流入した溶湯がキャビティ部内に充填されていく間に、溶湯をキャビティ部の外部へと導く異物除去空間部を、キャビティ部の周辺に設けている。
これにより、湯口から湯道を介して流入した溶湯がキャビティ部において充填されていく過程において、溶湯に混入しているガスや介在物等を含む異物を異物除去空間に導くことができる。この結果、異物除去空間内に異物を留めた状態でキャビティ部内に溶湯を充填することができるため、キャビティ部の内外において発生した異物がキャビティ部内へ混入した際における鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0010】
第2の発明に係る鋳造型は、第1の発明に係る鋳造型であって、砂型である。
ここでは、鋳造型として、金型と比較して低コストで造形が容易な砂型を用いている。
一般的に、砂型は、山砂や合成砂等の砂を固めて形成されているため、湯口から湯道を介して溶湯を流し込んだ場合には、キャビティ部内における溶湯の流れによってキャビティ部の一部が欠けて異物が発生するおそれがある。
本発明の鋳造型では、溶湯が流し込まれたキャビティ部内において異物が発生した場合でも、その異物をキャビティ部の外部である異物除去空間部へと送り出すことができる。この結果、砂型を用いて鋳造を行った場合でも、キャビティ部内への異物の混入による鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0011】
第3の発明に係る鋳造型は、第1または第2の発明に係る鋳造型であって、異物除去空間部は、異物除去空間部よりも断面積が小さい連通部を介して、キャビティ部と連通している。
【0012】
ここでは、異物除去空間部とキャビティ部とが、断面積が小さい連通部を介して互いに連通している。
ここで、連通部の断面積は、溶湯の流入方向に交差する方向に沿った平面によって切断された際の断面積を意味している。
これにより、キャビティ部内に溶湯が充填されていく際に、断面積が小さい連通部によって異物除去空間部内において溶湯の滞留を発生させることで、異物除去空間部へと流れ込んだガスや酸化物等を含む異物が異物除去空間外へ流れ出すことを抑制することができる。この結果、異物除去空間部によって異物を捕獲してキャビティ部へ流れ出すことを防止して、異物混入による鋳造欠陥の発生をより効果的に防止することができる。
【0013】
第4の発明に係る鋳造型は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る鋳造型であって、異物除去空間部は、キャビティ部内に溶湯を注入する際の姿勢におけるキャビティ部の側面に形成されている。
ここでは、溶湯を型内へ注入する際の向きにおけるキャビティ部の側面側に異物除去空間を形成している。
これにより、キャビティ部内に注入された溶湯が充填されていく過程において、溶湯が充填される前の流れがある状態でキャビティ部の側面側に形成された異物除去空間部へと溶湯を導くことができる。この結果、溶湯に含まれる異物を効果的に異物除去空間部へと導いて捕獲し、異物混入による鋳造欠陥の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0014】
第5の発明に係る鋳造型は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る鋳造型であって、異物除去空間部は、湯道を介してキャビティ部内に注入された溶湯の流れの進行方向に対して対向する位置に、キャビティ部に連通する開口を有している。
【0015】
ここでは、キャビティ部における溶湯の流れ方向を基準にして、キャビティ部に対する異物除去空間の開口位置を決定している。
これにより、キャビティ部内における溶湯の流れの延長線上に、異物除去空間部へと続く開口部分が形成されることになるため、キャビティ部に充填される際に、溶湯を効率よく異物除去空間部へと流れ込ませることができる。この結果、異物除去空間部において溶湯に混入した異物を捕獲することで、キャビティ部内への異物の混入による鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0016】
第6の発明に係る鋳造型は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る鋳造型であって、異物除去空間部とキャビティ部とを連通させる連通部は、曲線状の部分を含むように形成されている。
ここでは、異物除去空間部を、緩い曲線部分を含む連通部を介してキャビティ部と接続している。
【0017】
これにより、異物除去空間をキャビティ部に対して近接して配置させるような場合には、連通部に曲線部分を設けることで、製品部分となるキャビティ部から離間させるように異物除去空間部を形成することができる。また、連通部の曲げ形状を曲線状としているため、溶湯の流れを妨げることなく、スムーズに異物除去空間部へと溶湯を導くことができる。この結果、異物除去空間部の熱等が、製品部分であるキャビティ部に対して悪影響を及ぼすことを回避することが可能になる。
【0018】
第7の発明に係る鋳造型の製造方法は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る鋳造型の製造方法であって、第1のステップと第2のステップとを備えている。そして、第1のステップでは、鋳造型について溶湯の流れに関する湯流れシミュレーションを行う。第2のステップでは、湯流れシミュレーションの結果に基づいて、キャビティ部に対する異物除去空間部の配置を決定する。
【0019】
ここでは、鋳造型ごとに湯流れシミュレーションを行った結果に基づいて、異物混入による鋳造欠陥が発生する可能性が高い箇所を特定した上で、キャビティ部に対する異物除去空間部の位置を決定する。
これにより、異物が滞留することにより鋳造欠陥が集中し易い箇所の近傍に異物除去空間部を形成することができるため、異物を異物除去空間部へと誘導することで、その部分における異物混入による鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る鋳造型によれば、キャビティ空間の内外で生じた異物を除去して、異物混入による鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[実施形態1]
本発明の一実施形態に係る砂型(鋳造型)10について、図1〜図8を用いて説明すれば以下の通りである。
[砂型10全体の構成]
本実施形態に係る砂型10は、鉄やアルミニウム、鉛等の金属あるいはこれらの合金を溶融させて流し込み、例えば、建設機械に搭載される鋳造品としての製品P(図2参照)を形成するために用いられる鋳物成形用の型であって、図1に示すように、製品部分Paを含む製品成形部11と、注入部12と、砂止め成形部(異物除去空間部)14,15と、を備えている。
【0022】
(製品成形部11)
製品成形部11は、キャビティ空間(キャビティ部)S(図7参照)を形成する製品部分Paと、溶湯が凝固する際における体積収縮分の溶湯を補給するために製品部分Paに近接する位置に設けられた押し湯11a〜11eと、を有している。
製品部分Paは、図2に示す製品Pの形状に合わせて、内部にキャビティ空間Sを形成している。
【0023】
押し湯11aは、製品部分Paの上部に、押し湯11b〜11eは、製品部分Paの側方における四隅付近に、それぞれ設けられており、型内に注入された溶湯が凝固する際の溶湯の収縮分を補うための溶湯を溜め込む。
(注入部12)
注入部12は、製品部分Paや押し湯11a〜11eに対して溶湯を注入するために製品部分Paの側方に設けられており、湯口12aと、湯道12bと、を有している。
【0024】
湯口12aは、湯道12bの先端部分に形成されており、型内に注入するための圧力が付与された溶湯が流し込まれる。
湯道12bは、湯口12aから流し込まれた溶湯を、製品部分Paの方へと導く管状の部分であって、製品部分Paのキャビティ空間Sに対して側方から連通している。
(砂止め成形部14,15)
砂止め成形部14,15は、後述する湯流れシミュレーションの結果に基づいて製品Pにおけるガスや酸化物、砂等の介在物(異物)M(図3参照)が集中しやすいと予想される部位の周辺に設けられており、内部に介在物Mを含む溶湯が流れ込んで砂止め14a,15aを成形するための空間を形成している。そして、砂止め成形部14,15は、製品部分Paの内部に形成されるキャビティ空間Sに対して、堰(連通部)16a,16bを介して連通している。このため、湯口12aから湯道12bを経由してキャビティ空間S内に注入された溶湯は、注入時の砂型10の姿勢において製品部分Paの側方に形成された堰16a,16bを介して砂止め成形部14,15に流入しながらキャビティ空間Sに充填される。
【0025】
砂止め14a,15aは、図2および図3に示すように、製品Pに対して側方に設けられており、図3に示すように、介在物Mを含む溶湯を滞留させることで介在物Mを捕獲する。なお、図3では、砂止め14a側のみを図示しているが、砂止め15a側についても同様である。
堰16a,16bは、図3および図7に示すように、溶湯の湯流れ方向に対して交差する平面による断面の面積が、製品部分Paに相当するキャビティ空間Sや砂止め成形部14,15の断面積に対して小さくなるように形成されている。すなわち、湯道12aからキャビティ空間S内へ流入した溶湯は、細い通路(堰16a,16b)を経て砂止め成形部14,15内へと流れ込む。これにより、溶湯が流れる空間の断面積を変化させることで、後述するように、砂止め成形部14,15の内部において溶湯の滞留を発生させることができるため、溶湯内に存在する介在物Mを砂止め14a,15a内の壁面に付着させて捕獲することができる。
【0026】
また、堰16a,16bは、図7に示すように、湯口12aから湯道12bを経由して製品部分Paの内部に形成されるキャビティ空間S内に流入した溶湯の進行方向の正面向きに開口していることが好ましい。これにより、キャビティ空間S内に流入した溶湯を積極的に砂止め成形部14,15内へと誘導することで、溶湯がキャビティ空間S等に充填されるまでに砂止め成形部14,15内において介在物Mを多く含む流入初期段階の溶湯を捕獲して、介在物Mに起因する製品Pにおける鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0027】
<砂止め成形部14,15内における湯流れシミュレーション>
本実施形態の砂型10は、以上のように、後述する溶湯の湯流れシミュレーションの結果に基づいて砂型の一部が剥がれた砂や酸化物、ガス等の介在物Mを捕獲して、製品部分Paに相当するキャビティ空間Sへの流入を防止するための砂止め成形部14,15を備えている。
【0028】
ここでは、この砂止め成形部14,15を設けた場合における砂止め成形部14,15内での溶湯の湯流れ方向についてシミュレーションを行った結果について、図4(a)〜図6(b)を用いて説明する。
なお、ここでは砂止め成形部15を例として挙げて説明するが、他方の砂止め成形部14においても同様の結果が得られることから、ここではその説明を省略する。
【0029】
また、ここで説明する湯流れシミュレーションは、流入初期段階の溶湯にマーキングを施し、充填経路や滞留部位の特定を行う速度ベクトルによって渦の発生部位を特定するという方法を採用している。
まず、図4(a)等に示すXYZ軸を基準にして、各平面における湯流れ方向をシミュレーションによって調べたところ、XY平面においては、湯道12bからキャビティ空間Sを経由して、堰16bを介して砂止め成形部15内に流入してきた溶湯は、図4(a)および図4(b)に示すように、下から上へと旋回して渦状に流れることが分かった。
【0030】
同様に、XZ平面においても、湯道12bからキャビティ空間Sを経由して、堰16bを介して砂止め成形部15内に流入してきた溶湯は、図5(a)および図5(b)に示すように、左右に旋回して渦状に流れることが分かった。
同じく、YZ平面においても、湯道12bからキャビティ空間Sを経由して、堰16bを介して砂止め成形部15内に流入した溶湯は、図6(a)および図6(b)に示すように、砂止め成形部15における堰16bの形成された面の対向面にぶつかった後、上昇して左右に旋回しながら渦状に流れることが分かった。
【0031】
以上のシミュレーションの結果から、湯道12bからキャビティ空間Sを経由して、堰16a,16bを介して砂止め成形部14,15内へ流入した溶湯は、砂止め成形部14,15内において渦状に旋回しながら内部に留まる。これにより、砂止め成形部14,15内に流入した溶湯がキャビティ空間Sへ逆流することを防止することで、砂止め成形部14,15内に流入した溶湯に含まれる介在物Mがキャビティ空間S内に残されることを防止することができる。
【0032】
さらに、高強度、高剛性が要求される部位についても、その周辺に介在物Mが留まることがないように砂止め成形部を設けることで、介在物Mの存在に起因する強度や剛性の低下を防止することができる。
<砂型10の製造方法>
本実施形態では、図8に示すフローチャートに従って、上述した砂型10を成形する。
【0033】
すなわち、まず、ステップS1においては、成形する製品Pの形状に応じて、鋳造型(砂型10)を選定する。
次に、ステップS2においては、ステップS1において選定した砂型10について、型内に注入された溶湯の挙動を調べるための湯流れシミュレーションを行う。
次に、ステップS3においては、ステップS2における湯流れシミュレーションの結果(図13(a)〜図14参照)を踏まえて、介在物Mが集中して鋳造欠陥が発生するおそれが高い部位(欠陥発生予測部位)を特定する。
【0034】
次に、ステップS4においては、ステップS3において特定された欠陥発生予測部位の位置およびキャビティ空間S内における溶湯の挙動に基づいて、キャビティ空間Sに隣接する位置に、砂止め14a,15aを形成するための砂止め成形部14,15の位置を決定する。具体的には、鋳造欠陥が発生するおそれが高い部位の近傍における、溶湯の流れる方向に対向する向きに開口が向くように、砂止め成形部14,15および堰16a,16bを配置する。
【0035】
次に、ステップS5においては、製品Pの形状に合わせてステップS1において選定された砂型10における特定の位置に、ステップS4において決定された砂止め成形部14,15を設けた砂型10を成形する。
以上のように、砂止め14a,15aを設ける位置を、湯流れシミュレーションの結果を用いて決定することで、鋳造欠陥が発生し易い部位についてはその近傍に、介在物Mを捕獲するための砂止め成形部14,15を設けることができる。この結果、砂止め14a,15a内において介在物Mを集めて、製品Pの表面等に鋳造欠陥が生じることを効果的に防止することができる。
【0036】
[比較例1]
ここで、図1〜図7に示す砂型10の鋳造欠陥の発生防止効果を検証するために、図12〜図14を用いて同じ形状の製品Pを成形するための比較例としての砂型の構成について説明すれば以下の通りである。
比較例の砂型100は、図12に示すように、本実施形態の砂型10と同じ形状の製品Pを成形するための鋳造型であって、製品成形部101と、注入部102と、を備えている。
【0037】
製品成形部101は、本実施形態の砂型10の製品成形部11に相当する部分であって、製品成形部11と同様に、製品部分Paと、押し湯101a〜101eと、を有している。
注入部102は、本実施形態の砂型10の注入部12に相当する部分であって、注入部12と同様に、湯口102aと、湯道102bと、を有している。
【0038】
ここで、比較例の砂型100では、図12に示すA部分において、図13(a)に示すように、製品部分Paの一部で溶湯の滞留が発生している。このように、製品部分Paにおいて滞留した溶湯には、介在物Mが大量に集まってくることから、鋳造欠陥が発生するおそれが高い。
同様に、図12に示すB部分においても、図13(b)に示すように、製品部分Paの一部において溶湯の滞留が発生して、この部分において介在物Mの存在に起因する鋳造欠陥が発生するおそれが高い。
【0039】
この結果、砂止めが設けられていない比較例の砂型100によって成形された製品Pでは、図14に示すように、介在物Mが特定の部位へ集中したことにより、鋳造欠陥が発生してしまう。
[砂型10の特徴]
(1)
本実施形態の砂型10は、溶融した金属を流し込んで凝固させ、任意の形状の製品Pを成形するための鋳型であって、図1に示すように、製品Pに相当するキャビティ空間Sを内部に形成する製品成形部11と、湯口12aおよび湯道12bを含む注入部12と、湯道12bを経由してキャビティ空間S内に流入した溶湯をキャビティ空間Sの外へ導く砂止め成形部14,15と、を備えている。
【0040】
これにより、湯口12aから湯道12bを経てキャビティ空間S内に流入した溶湯を、積極的に砂止め成形部14,15内へと誘導することができる。このため、例えば、溶湯中に元々含まれていたガスや酸化物、あるいはキャビティ空間S内において砂型10の内部の一部が欠けて砂等の介在物Mが発生した場合でも、溶湯がキャビティ空間S内に充填される前に、砂止め成形部14,15内へと介在物Mを含む溶湯を導くことができる。この結果、介在物Mの存在に起因する鋳造欠陥の発生し易い部位の近傍に、砂止め成形部14,15を設けることで、キャビティ空間Sの外である砂止め14a,15a内に介在物Mを送り込んで、鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0041】
(2)
本実施形態では、図1等に示すように、鋳造型として砂型10を用いている。
これにより、例えば、キャビティ空間S内に溶湯を流し込んだ際における溶湯の圧力や流れによって事後的に生じた砂型10の一部である砂等の介在物Mがキャビティ空間S内において発生した場合でも、これらの介在物Mを砂止め成形部14,15内へと誘導することができる。この結果、砂止め14a,15aに介在物Mを存在させることで、製品Pの表面等に介在物Mが存在する確立を低減することができるため、鋳造欠陥の発生を従来よりも大幅に低減することができる。
【0042】
(3)
本実施形態の砂型10では、図2、図3(a)および図3(b)に示すように、キャビティ空間Sと砂止め成形部14,15とをつなぐ連通部として、キャビティ空間Sおよび砂止め成形部14,15よりも断面積が小さい堰16a,16bを設けている。
これにより、一旦、キャビティ空間Sから砂止め成形部14,15内へと流入させた溶湯を、砂止め成形部14,15内において渦状に滞留させることで、キャビティ空間Sへ逆流することを防止することができる。この結果、砂止め成形部14,15における介在物Mの捕獲効果を向上させて、より確実に鋳造欠陥の発生を防止することができる。
【0043】
(4)
本実施形態の砂型10では、図1等に示すように、溶湯を注入する際の砂型10の姿勢における側方に、砂止め成形部14,15を設けている。
これにより、湯口12aから湯道12bを経由してキャビティ空間S内へと流入した溶湯を、キャビティ空間Sが溶湯によって充填される前に、積極的に砂止め成形部14,15内へと誘導することができる。この結果、介在物Mを含む溶湯を、効果的に砂止め成形部14,15内へと誘導して、製品Pの表面等へ介在物Mが存在して生じる鋳造欠陥の発生を防止することができる。
【0044】
(5)
本実施形態の砂型10では、図1および図7等に示すように、キャビティ空間Sにおける湯口12aから注入された溶湯の流れる進行方向に対する正面の位置に、砂止め成形部14,15の開口部分となる堰16a,16bの開口が向くように配置している。
これにより、キャビティ空間S内に流入した溶湯の流れを妨げることなく、介在物Mを含む溶湯を、自然の流れにのって積極的に砂止め成形部14,15内へと導くことができる。この結果、製品P側となるキャビティ空間S側へ介在物Mが残されることを防止して、鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0045】
(6)
本実施形態の砂型10の製造方法では、図8に示すように、成形する製品Pの形状に合わせて選定された鋳型について、湯流れシミュレーションを行い、そのシミュレーションの結果に基づいて砂止め14a,15aの位置を決定する。
これにより、キャビティ空間Sにおける介在物Mが集中して鋳造欠陥が発生し易い部位を特定し、その近傍に砂止め成形部14,15を設けることで、特定の部位に集中するように存在した介在物Mの大部分を、砂止め成形部14,15内へと誘導することができる。この結果、砂止め成形部14,15を効果的に配置して、より効果的に鋳造欠陥の発生を防止することができる。
【0046】
[実施形態2]
本発明の他の実施形態に係る砂型(鋳造型)20について、図9〜図10(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態の砂型20は、図9,図10(a)および図10(b)に示すように、製品部分Pa1,Pa2に相当するキャビティ空間の周辺ではなく、溶湯が凝固する際の収縮分を補うための溶湯を溜めるための押し湯21c部分の周辺に砂止め成形部24を設けている点で、上記実施形態1の砂型10とは異なっている。このため、本実施形態では、キャビティ空間として、押し湯21c内に形成される空間も含むものとする。
【0047】
砂型20は、実施形態1の砂型10と同様に、例えば、建設機械に搭載される鋳造品としての2つの製品P1,P2(図11(a)および図11(b)参照)を形成するために用いられる鋳物成形用の型であって、図9に示すように、製品部分Pa1,Pa2を含む製品成形部21と、注入部22と、砂止め成形部(異物除去空間部)24と、を備えている。
【0048】
(製品成形部21)
製品成形部21は、内部にキャビティ空間(キャビティ部)を形成する製品部分Pa1,Pa2と、溶湯が凝固する際における体積収縮分の溶湯を補給するために製品部分Pa2に近接する位置に設けられた押し湯21cと、を有している。
製品部分Pa1,Pa2は、図11(a)および図11(b)に示す製品P1,P2の形状に合わせて、内部にキャビティ空間を形成している。
【0049】
押し湯21cは、製品部分Pa2に対して隣接する位置に設けられており、型内に注入された溶湯が凝固する際の溶湯の収縮分を補うための溶湯を溜め込む。
(注入部22)
注入部22は、製品部分Pa1,Pa2や押し湯21cに対して溶湯を注入するために製品部分Pa1,Pa2の側方に設けられており、湯口22aと、湯道22bと、を有している。
【0050】
湯口22aは、湯道22bの先端部分に形成されており、型内に注入するための圧力が付与された溶湯が流し込まれる。
湯道22bは、湯口22aから流し込まれた溶湯を、製品部分Pa1,Pa2の方へとそれぞれ導く管状の部分であって、製品部分Pa1,Pa2のキャビティ空間に対して側方から連通している。
【0051】
(砂止め成形部24)
砂止め成形部24は、上述した砂型10と同様に、湯流れシミュレーションの結果に基づいて製品P1,P2における介在物M(図9参照)が集中しやすいと予想される部位の周辺に設けられている。そして、砂止め成形部24は、図10(a)および図10(b)に示すように、湯道22bと押し湯21cとが連通する部分に接続された堰(連通部)26を介して押し湯21cおよび湯道22bと連通している。このため、湯口22aから湯道22bを経由して押し湯21cの空間内に注入された溶湯は、注入時の砂型20の姿勢において押し湯21cの側方に形成された堰26を介して砂止め成形部24に流入しながら各製品部分Pa1,Pa2の内部のキャビティ空間に充填される。
【0052】
砂止め成形部24は、図10(a)および図10(b)に示すように、製品部分Pa1,Pa2に対して側方に設けられており、図9に示すように、介在物Mを含む溶湯を滞留させることで介在物Mを捕獲する。
堰26は、図10(a)および図10(b)に示すように、溶湯の湯流れ方向に対して交差する平面による断面の面積が、製品部分Pa1,Pa2内部のキャビティ空間や砂止め成形部24の断面積に対して小さくなるように形成されている。これにより、上述した砂型10の砂止め成形部14,15と同様に、砂止め成形部24の内部において溶湯の滞留を発生させることができるため、溶湯内に存在する介在物Mを砂止め成形部24内の壁面に付着させて捕獲することができる。また、堰26は、図10(b)に示すように、押し湯21cとの連通部分から緩やかな曲線状部分を形成しながら砂止め成形部24とつながっている。これにより、砂止め成形部24が製品部分Pa2に対して必要以上に近接することを回避して、製品部分Pa2に砂止め成形部24の熱等の影響を受けてしまうことを防止することができる。さらに、曲線部分を設けることで、砂止め成形部24の配置の自由度を向上させることができる。
【0053】
本実施形態の砂型20では、以上のように、製品部分Pa1,Pa2の側方ではなく、湯道22bから押し湯21cへとつながる部位に、砂止め成形部24を設けている。
この場合でも、押し湯21cの周辺は溶湯の流れが速いため、ガスや酸化物等の異物を含む溶湯を効率よく砂止め成形部24内へと導くことができる。このため、上述した砂型10と同様に、砂型20においても、図9に示すように、介在物Mを砂止め成形部24内に集中させることで、製品部分Pa1,Pa2への介在物Mの混入による鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0054】
なお、本実施形態の砂型20についても、上述した砂型10と同様に、図8に示すシミュレーションの結果に基づいて、鋳造欠陥が発生するおそれが高い部位の近傍に砂止め成形部24の配置を決定すればよい。
[比較例2]
ここで、図9〜図10(b)に示す砂型20における鋳造欠陥の発生防止効果を検証するために、図15を用いて比較例としての砂型の構成について説明すれば以下の通りである。
【0055】
比較例の砂型120は、図15に示すように、本実施形態の砂型20と同じ形状の製品P1,P2を成形するための鋳造型であって、製品成形部121と、注入部122と、を備えている。
製品成形部121は、本実施形態の砂型20の製品成形部21に相当する部分であって、製品成形部21と同様に、製品部分Pa1,Pa2と、押し湯121cと、を有している。
【0056】
注入部122は、本実施形態の砂型20の注入部22に相当する部分であって、注入部22と同様に、湯口122aと、湯道122bと、を有している。
ここで、比較例の砂型120では、図15に示すC部分において、製品部分Pa2の一部で溶湯の滞留が発生して、介在物Mが大量に集まってくることから、製品部分Pa2において鋳造欠陥が発生するおそれが高い。
【0057】
この結果、砂止めが設けられていない比較例の砂型120によって成形された製品Pa2では、図15に示すように、介在物Mが特定の部位へ集中したことにより、鋳造欠陥が発生してしまうおそれが高いことがわかる。
[砂型20の特徴]
(1)
本実施形態の砂型20は、溶融した金属を流し込んで凝固させ、任意の形状の製品P1,P2を成形するための鋳型であって、図9に示すように、製品P1,P2に相当するキャビティ空間を内部に形成する製品成形部21と、湯口22aおよび湯道22bを含む注入部22と、湯道22bを経由して押し湯21cのキャビティ空間内に流入した溶湯をキャビティ空間の外へ導く砂止め成形部24と、を備えている。
【0058】
これにより、湯口22aから湯道22bを経て押し湯21cのキャビティ空間内に流入した溶湯を、積極的に砂止め成形部24内へと誘導することができる。このため、例えば、溶湯中に元々含まれていたガスや酸化物、あるいはキャビティ空間内において砂型20の内部の一部が欠けて砂等の介在物Mが発生した場合でも、溶湯がキャビティ空間内に充填される前に、砂止め成形部24内へと介在物Mを含む溶湯を導くことができる。この結果、介在物Mの存在に起因する鋳造欠陥の発生し易い部位の近傍に、砂止め成形部24を設けることで、キャビティ空間Sの外である砂止め成形部24内に介在物Mを送り込んで、鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0059】
(2)
本実施形態では、図9等に示すように、鋳造型として砂型20を用いている。
これにより、例えば、キャビティ空間内に溶湯を流し込んだ際における溶湯の圧力や流れによって事後的に生じた砂型20の一部である砂等の介在物Mが押し湯21c内のキャビティ空間内において発生した場合でも、これらの介在物Mを砂止め成形部24内へと誘導することができる。この結果、砂止めに介在物Mを存在させることで、製品P1,P2の表面等に介在物Mが存在する確立を低減することができるため、鋳造欠陥の発生を従来よりも大幅に低減することができる。
【0060】
(3)
本実施形態の砂型20では、図10(a)および図10(b)に示すように、押し湯21c内のキャビティ空間と砂止め成形部24とをつなぐ連通部として、キャビティ空間および砂止め成形部24よりも断面積が小さい堰26を設けている。
これにより、一旦、押し湯21c内のキャビティ空間から砂止め成形部24内へと流入させた溶湯を、砂止め成形部24内において渦状に滞留させることで、押し湯21c内のキャビティ空間へ逆流することを防止することができる。この結果、砂止め成形部24における介在物Mの捕獲効果を向上させて、より確実に鋳造欠陥の発生を防止することができる。
【0061】
(4)
本実施形態の砂型20では、図9等に示すように、溶湯を注入する際の砂型20の姿勢における側方に、砂止め成形部24を設けている。
これにより、湯口22aから湯道22bを経由してキャビティ空間内へと流入した溶湯を、製品部分Pa1,Pa2や押し湯21c内のキャビティ空間が溶湯によって充填される前に、積極的に砂止め成形部24内へと誘導することができる。この結果、介在物Mを含む溶湯を、効果的に砂止め成形部24内へと誘導して、製品P1,P2の表面等へ介在物Mが存在して生じる鋳造欠陥の発生を防止することができる。
【0062】
(5)
本実施形態の砂型20では、図10(a)および図10(b)に示すように、湯口22aから注入された溶湯の流れる進行方向に対する正面の位置に、砂止め成形部24の開口部分となる堰26の開口が向くように配置している。
これにより、押し湯21c内のキャビティ空間内に流入した溶湯の流れを妨げることなく、介在物Mを含む溶湯を、自然の流れによって積極的に砂止め成形部24内へと導くことができる。この結果、製品P1,P2側となるキャビティ空間側へ介在物Mが流入することを防止して、鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0063】
(6)
本実施形態の砂型20では、図10(a)および図10(b)に示すように、押し湯21c内のキャビティ空間と砂止め成形部24とをつなぐ堰26が、曲線状の部分を含むように構成されている。
これにより、砂止め成形部24と製品部分Pa2とが必要以上に近接配置されることにより、砂止め成形部24からの熱等によって製品部分Pa2が悪影響を受けることを回避することができる。
【0064】
(7)
本実施形態の砂型20の製造方法では、図8に示すように、成形する製品P1,P2の形状に合わせて選定された鋳型について、湯流れシミュレーションを行い、そのシミュレーションの結果に基づいて砂止め成形部24の位置を決定する。
これにより、キャビティ空間における介在物Mが集中して鋳造欠陥が発生し易い部位を特定し、その近傍に砂止め成形部24を設けることで、図9に示すように、特定の部位に集中するように存在した介在物Mの大部分を、砂止め成形部24内へと誘導することができる。この結果、砂止め成形部24を最適な位置に配置して、より効果的に鋳造欠陥の発生を防止することができる。
【0065】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態1では、図1等に示すように、製品部分Paに相当するキャビティ空間Sの周辺に、複数の砂止め成形部14,15を設けた例を挙げて説明した。そして、上記実施形態2では、図9等に示すように、押し湯21cの周辺に砂止め成形部24を設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0066】
例えば、欠陥発生部位となるおそれがある部位が他にも存在する場合には、製品部分に相当するキャビティ空間の周辺と押し湯の周辺とに、それぞれ砂止めを形成してもよい。
(B)
上記実施形態1,2では、図3および図9に示すように、砂止め成形部14,15と製品部分Pa内部のキャビティ空間Sとを結ぶ連結部、砂止め成形部24と押し湯21c内のキャビティ空間とを結ぶ連結部として、砂止め成形部14,15,24よりも断面積が小さい堰16a,16b,26等を形成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
例えば、堰を設けずに、砂止め成形部とキャビティとを連結するようにしてもよい。
ただし、断面積が小さい堰を介して両空間を連結することで、砂止め内に流入した溶湯に滞留を起こさせて砂止め空間内に異物をとどまらせることができるという面で、断面積が小さい堰を介して連結することがより好ましい。
(C)
上記実施形態1,2では、図3および図9に示すように、製品Pを成形するキャビティ空間Sや押し湯11a〜11e部分に注入された溶湯の流れる進行方向、そして湯道22bから押し湯21c内のキャビティ空間に注入される溶湯の進行方向、に対向する位置に、開口が向くように砂止め成形部14,15,24を設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
例えば、開口の向きが溶湯の流れる方向に交差するように砂止め成形部を配置するようにしてもよい。
ただし、溶湯が流れる進行方向に開口部が向くように砂止め成形部を設けることにより、ガスや酸化物等の異物を含む溶湯を効率よく砂止め内へと誘導することができるという面では、上記実施形態のように、砂止め成形部を配置することがより好ましい。
【0069】
(D)
上記実施形態1では、製品部分Paにおける欠陥が集中しそうな位置である2箇所に、砂止め成形部14,15(砂止め14a,15a)を設けた例を挙げて説明した。一方、上記実施形態2では、製品部分Pa1,Pa2の近傍ではなく、湯道22bから押し湯21c内へつながる部分の近傍から砂止め成形部24に連通する堰26を1箇所設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
例えば、砂止め成形部(砂止め)を設ける数としては、シミュレーションの結果等を踏まえた上で、最適な位置に1箇所設けるだけでもよいし、3箇所以上設けてもよい。
(E)
上記実施形態1,2では、図8のフローチャートに示すように、設計した型についてシミュレーションを行い、その結果に基づいて鋳造欠陥の発生し易い場所へ砂止め成形部14,15,24を設ける例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0071】
例えば、シミュレーションを行うことなく、過去に成形された鋳造物に発生した鋳造欠陥のデータ等に基づいて鋳造欠陥が発生し易い場所を予測し、そこに砂止め成形部を設けた砂型を成形してもよい。
(F)
上記実施形態1,2では、本発明を適用した鋳造型として、砂型を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0072】
例えば、砂型以外にも、ロストワックス等の他の鋳造型に対して本発明を適用することが可能である。
さらには、金型であっても、キャビティ側の面に塗装面等を有する場合には、砂型等と同様に、溶湯がキャビティ内に充填される際に溶湯の圧力や流れによって金型内において異物が発生するおそれがあるため、金型に本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の鋳造型は、キャビティ空間の内外で生じた異物を除去して、異物混入による鋳造欠陥の発生を効果的に防止することができるという効果を奏することから、砂型やロストワックス、金型等の鋳造用の型に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る砂型の構成を示す斜視図。
【図2】図1の砂型を用いて製品の周囲に形成された砂止め部分を示す拡大図。
【図3】図2の砂止め部分における介在物の分布状態を示す拡大図。
【図4】図2の砂止め部分を設けたことによる溶湯のXY平面における速度ベクトルを示すシミュレーション図。
【図5】図2の砂止め部分を設けたことによる溶湯のXZ平面における速度ベクトルを示すシミュレーション図。
【図6】図2の砂止め部分を設けたことによる溶湯のYZ平面における速度ベクトルを示すシミュレーション図。
【図7】本発明の一実施形態に係る砂型の構成の概略を示した模式図。
【図8】図1に示す砂型を製造する際の流れを示すフローチャート。
【図9】本発明の他の実施形態に係る砂型における介在物の分布状態を示す斜視図。
【図10】(a),(b)は、図9の砂型に取り付けられた砂止めを示す図。
【図11】(a),(b)は、図9の砂型によって形成された製品を示す斜視図。
【図12】図1の砂型との比較例となる砂型の構成を示す斜視図。
【図13】(a)は、図12の比較例の砂型を用いて形成された製品に発生した不具合の状況を示すA部分の拡大図。(b)は、同じく不具合の状況を示すB部分の拡大図。
【図14】本発明の砂型における介在物の分布状態を示す図3の拡大図との比較例としての砂型における介在物の分布状態を示す比較図。
【図15】本発明の砂型における介在物の分布状態を示す図8との比較例としての砂型における介在物の分布状態を示す比較図。
【符号の説明】
【0075】
10 砂型(鋳造型)
11 製品成形部
11a〜11e 押し湯
12 注入部
12a 湯口
12b 湯道
14 砂止め成形部(異物除去空間部)
14a 砂止め
15 砂止め成形部(異物除去空間部)
15a 砂止め
16a,16b 堰(連通部)
20 砂型(鋳造型)
21 製品成形部
21c 押し湯
22 注入部
22a 湯口
22b 湯道
24 砂止め成形部(異物除去空間部)
M 介在物(異物)
P,P1,P2 製品
Pa、Pa1,Pa2 製品部分
S キャビティ空間(キャビティ部)
【出願人】 【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
【出願日】 平成18年8月29日(2006.8.29)
【代理人】 【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人


【公開番号】 特開2008−55429(P2008−55429A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−231845(P2006−231845)