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【発明の名称】 鋳造用金型及び鋳造方法
【発明者】 【氏名】吉田 豊満

【氏名】山口 道男

【氏名】山田 茂宏

【氏名】吉田 博之

【氏名】内田 信彦

【要約】 【課題】湯じわや巣などの発生を抑制するとともに、製造される鋳造物の成形サイクルを向上することができる、鋳造用金型及びこの金型を用いた鋳造方法を提供する。

【構成】キャビティ保持金型のキャビティと、コア保持金型のコアとで形成された空間内に溶湯を注入し、固化して鋳造する際に、前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する内壁と、前記溶湯とが直接接触する面積を、前記内壁の全体の面積に対して20〜30%の割合とし、前記コア保持金型の前記コアを構成する内壁と、前記溶湯とが直接接触する面積を、前記内壁の全体の面積に対して20〜30%の割合とした状態で鋳造を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にキャビティが形成されたキャビティ保持金型と、内部にコアが形成されたコア保持金型とを具え、
前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する内壁の、前記キャビティに対して直接接触する面積が、前記内壁の全体の面積に対して20〜30%の割合であり、
前記コア保持金型の前記コアを構成する内壁の、前記コアに対して直接接触する面積が、前記内壁の全体の面積に対して20〜30%の割合であることを特徴とする、鋳造用金型。
【請求項2】
前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する前記内壁と、前記キャビティとの間には、前記内壁の前記全体の面積に対して80〜70%の割合で空気層が存在し、この空気層の介在によって、前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する前記内壁の、前記キャビティに対して直接接触する前記面積が、前記内壁の前記全体の面積に対して20〜30%の割合に設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の鋳造用金型。
【請求項3】
前記コア保持金型の前記コアを構成する前記内壁と、前記コアとの間には、前記内壁の前記全体の面積に対して80〜70%の割合で空気層が存在し、この空気層の介在によって、前記コア保持金型の前記コアを構成する前記内壁の、前記コアに対して直接接触する前記面積が、前記内壁の前記全体の面積に対して20〜30%の割合に設定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鋳造用金型。
【請求項4】
前記キャビティ保持金型は、前記キャビティ内に温度調整用媒体流通路を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の鋳造用金型。
【請求項5】
前記温度調整用媒体流通路の占める割合が、前記キャビティ保持金型の断面積の8〜12%であることを特徴とする、請求項4に記載の鋳造用金型。
【請求項6】
前記コア保持金型は、前記コア内に温度調整用媒体流通路を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の鋳造用金型。
【請求項7】
前記温度調整用媒体流通路の占める割合が、前記コア保持金型の断面積の8〜12%であることを特徴とする、請求項6に記載の鋳造用金型。
【請求項8】
前記鋳造用金型はマグネシウム合金鋳造用金型として機能することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の鋳造用金型。
【請求項9】
前記鋳造用金型で鋳造するマグネシウム合金の厚さが0.35mm〜0.6mmであることを特徴とする、請求項8に記載の鋳造用金型。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一に記載の鋳造用金型を具えることを特徴とする、鋳造用金型装置。
【請求項11】
キャビティ保持金型のキャビティと、コア保持金型のコアとで形成された空間内に溶湯を注入し、固化して鋳造する方法であって、
前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する内壁と、前記溶湯とが直接接触する面積を、前記内壁の全体の面積に対して20〜30%の割合とする工程と、
前記コア保持金型の前記コアを構成する内壁と、前記溶湯とが直接接触する面積を、前記内壁の全体の面積に対して20〜30%の割合とする工程と、
を具えることを特徴とする、鋳造方法。
【請求項12】
前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する前記内壁と、前記溶湯とは、前記内壁の前記全体の面積に対して80〜70%の割合で空気層を介して接触し、この空気層の介在によって、前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する前記内壁と、前記溶湯とが直接接触する前記面積を、前記内壁の前記全体の面積に対して20〜30%の割合に設定することを特徴とする、請求項11に記載の鋳造方法。
【請求項13】
前記コア保持金型の前記コアを構成する前記内壁と、前記溶湯とは、前記内壁の前記全体の面積に対して80〜70%の割合で空気層を介して接触し、この空気層の介在によって、前記コア保持金型の前記コアを構成する前記内壁と、前記溶湯とが直接接触する前記面積を、前記内壁の前記全体の面積に対して20〜30%の割合に設定することを特徴とする、請求項11又は12に記載の鋳造方法。
【請求項14】
前記キャビティ保持金型の、前記キャビティ内に温度調整用媒体流通路を設け、前記溶湯の温度を制御する工程を具えることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一に記載の鋳造方法。
【請求項15】
前記温度調整用媒体流通路の占める割合を、前記キャビティ保持金型の断面積の8〜12%とすることを特徴とする、請求項14に記載の鋳造方法。
【請求項16】
前記コア保持金型の、前記コア内に温度調整用媒体流通路を設け、前記溶湯の温度を制御する工程を具えることを特徴とする、請求項11〜15のいずれか一に記載の鋳造方法。
【請求項17】
前記温度調整用媒体流通路の占める割合を、前記コア保持金型の断面積の8〜12%とすることを特徴とする、請求項16に記載の鋳造方法。
【請求項18】
前記溶湯はマグネシウム合金であって、マグネシウム合金を鋳造することを特徴とする、請求項11〜17のいずれか一に記載の鋳造方法。
【請求項19】
前記マグネシウム合金の厚さが0.35mm〜0.6mmであることを特徴とする、請求項18に記載の鋳造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯を冷却固化して鋳造物を得るための鋳造用金型及びこの鋳造用金型を用いた鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の移動体通信技術の目覚ましい発展と相まって、モバイルPC(パーソナルコンピ
ュータ)やノートPCなどの携帯端末が普及している。このような携帯端末は、可搬性を
考慮して軽薄短小化が絶えず求められており、その筐体の材料には、リサイクル性や強度
面をさらに加味し例えばマグネシウム合金などのダイカスト材料が利用されている。
【0003】
ところで、上記した材料の溶融金属は、流動性が高くしかも冷却による固化速度が速い
ため、例えばノートPC用の比較的サイズの大きい薄肉の筐体などを鋳造する場合には、
金型のキャビティ内への材料の注入について配慮する必要がある。すなわち、薄肉で面積
の広いキャビティ内において、高温(500℃以上)の溶融金属(溶湯)が金型内(300℃以下)に注入されると、前記溶湯から前記金型への放熱が発生するため、溶湯自体の温度が低下し、鋳造された製品に湯じわや巣などの欠陥が形成されてしまう要因となる。特に厚さが0.6mm以下の薄肉の筐体を成形(鋳造)する際には金型の温度をより厳密に管理しなければならない。
【0004】
一方、金型成形法では金型焼付けを抑制して離型性を確保するために水溶性離型剤を金型表面にスプレーして使用している。しかしながら、この際、前記離型剤に含まれる溶剤の蒸発潜熱により金型が急冷されるため、金型表面が設定温度に戻るまで成形を行うことが出来ず、成形サイクルが低下すると言った問題もあった。また、水溶性離型剤の代わりに粉体離型剤、油性離型剤や離型剤レス金型を使用することも可能であるが、十分な離型効果を得ることができない。また、これらの離型剤は高価であるという問題もある。
【0005】
かかる観点より、溶湯が流れる金型表面に、金型材料よりも熱伝導率の小さい材料(断熱ブロック層)を設けて、溶湯の冷却固化速度を遅延させる鋳造方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、これらの方法でも溶湯から金型への放熱を抑制するのは不十分であり、その結果、上記冷却固化速度を十分に遅延させることができず、上述した鋳造製品の湯じわや巣などの欠陥発生を十分に抑制することができないでいた。また、薄肉の筐体を成形する際には上記欠陥発生が顕著に影響し、高品質の薄肉筐体を得ることができないでいた。
【0006】
さらに、上記技術を用いた場合でも、離型剤スプレーなどを用いた場合は、金型温度が所定の温度にまで回復するためには長時間を要し、未だ成形サイクルを向上することができないという問題があった。
【特許文献1】特開平11−77240号公報
【特許文献2】特開2001−79645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、湯じわや巣などの発生を抑制するとともに、製造される鋳造物の成形サイクルを向上することができる、鋳造用金型及びこの金型を用いた鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明の一態様は、
内部にキャビティが形成されたキャビティ保持金型と、内部にコアが形成されたコア保持金型とを具え、
前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する内壁の、前記キャビティに対して直接接触する面積が、前記内壁の全体の面積に対して20〜30%の割合であり、
前記コア保持金型の前記コアを構成する内壁の、前記コアに対して直接接触する面積が、前記内壁の全体の面積に対して20〜30%の割合であることを特徴とする、鋳造用金型に関する。
【0009】
また、本発明の一態様は、
キャビティ保持金型のキャビティと、コア保持金型のコアとで形成された空間内に溶湯を注入し、固化して鋳造する方法であって、
前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する内壁と、前記溶湯とが直接接触する面積を、前記内壁の全体の面積に対して20〜30%の割合とする工程と、
前記コア保持金型の前記コアを構成する内壁と、前記溶湯とが直接接触する面積を、前記内壁の全体の面積に対して20〜30%の割合とする工程と、
を具えることを特徴とする、鋳造方法に関する。
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を実施した。その結果、溶湯を注入して固化、鋳造させるためのキャビティを有するキャビティ保持金型及びコアを有するコア保持金型において、前記キャビティ保持金型における前記キャビティを構成する内壁の、前記キャビティに直接接触した部分の面積を、前記内壁の全体面積の20〜30%とし、前記コア保持金型における前記コアを構成する内壁の、前記コアに直接接触した部分の面積を、前記内壁の全体面積の20〜30%とすることにより、前記溶湯の、前記キャビティ構成内壁及び前記コア構成内壁と直接接触する割合を上記20〜30%の範囲に設定することができる。
【0011】
したがって、前記溶湯の、前記キャビティ保持金型の前記キャビティ及び前記コア保持金型の前記コアと直接接触する割合を十分に低減することができるので、前記溶湯の、前記キャビティ保持金型及び前記コア保持金型との断熱性を高めることができ、前記溶湯から前記キャビティ保持金型などへの放熱が抑制される。したがって、得られた鋳造品の、湯じわや巣などの発生を抑制することができる。
【0012】
また、離型剤を用いた場合に、溶剤の蒸発潜熱により金型が急冷された場合においても、金型表面が設定温度に戻るのを待つことなく鋳造(成形)を行うことが出来るので、成形サイクルを向上させることができる。
【0013】
なお、本発明の他の態様においては、前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する前記内壁と、前記キャビティとの間には、前記内壁の前記全体の面積に対して80〜70%の割合で空気層が存在し、この空気層の介在によって、前記キャビティ保持金型の前記キャビティを構成する前記内壁の、前記キャビティに対して直接接触する前記面積が、前記内壁の前記全体の面積に対して20〜30%の割合に設定することができる。
【0014】
また、本発明のその他の態様においては、前記コア保持金型の前記コアを構成する前記内壁と、前記コアとの間には、前記内壁の前記全体の面積に対して80〜70%の割合で空気層が存在し、この空気層の介在によって、前記コア保持金型の前記コアを構成する前記内壁の、前記コアに対して直接接触する前記面積が、前記内壁の前記全体の面積に対して20〜30%の割合に設定することができる。
【0015】
すなわち、上記態様においては、空気層を介在させることによって、前記溶湯の、前記キャビティ構成内壁及び前記コア構成内壁と直接接触する割合を上記20〜30%の範囲に設定している。したがって、上述した空気層が、前記溶湯の、前記キャビティ保持金型及び前記コア保持金型との断熱性を十分に高めるようにしているので、前記溶湯から前記キャビティ保持金型などへの放熱が十分に抑制される。したがって、得られた鋳造品の、湯じわや巣などの発生を抑制することができる。
【0016】
また、離型剤を用いた場合に、溶剤の蒸発潜熱により金型が急冷された場合においても、金型表面が設定温度に戻るのを待つことなく鋳造(成形)を行うことが出来るので、成形サイクルをより向上させることができる。
【0017】
さらに、本発明の他の態様においては、前記キャビティ保持金型及び/又は前記コア保持金型は、それらのキャビティ内及び/又はコア内に温度調整用媒体流通路を有するようにすることができる。この場合、前記キャビティ及び前記コアで形成される空間内に溶湯が注入された場合において、前記溶湯の温度を、前記温度調整用媒体流通路内に所定の熱媒を流すことによってある程度高く保持しておくことができる。したがって、上述した断熱の効果と相伴って、前記溶湯の温度を十分高いままに保持しておくことができ、その結果、得られた鋳造品の、湯じわや巣などの発生を十分に抑制することができるようになる。
【0018】
また、離型剤を用いた場合に、溶剤の蒸発潜熱により金型が急冷された場合においても、溶湯自体の温度を高く保持しておくことができるので、金型表面が設定温度に戻るのを待つことなく、成形サイクルを向上させることができる。
【0019】
また、上記作用効果を奏するためには、前記温度調整用媒体流通路の占める割合を、前記キャビティ保持金型及び/又は前記コア保持金型の断面積の8〜12%とすることが好ましい。なお、この場合の占有割合は、前記温度調整用媒体流通路の長さ方向に垂直に切った断面積の割合が前記キャビティ保持金型及び/又は前記コア保持金型の断面積の8〜12%とすることを意味し、前記温度調整用媒体流通路を複数設けている場合は、その合計断面積が8〜12%となることを意味する。
【0020】
さらに、本発明の鋳造用金型及び鋳造方法は、あらゆる材料組成の鋳造に対して用いることができるが、特に薄肉化した、例えば厚さ0.35mm〜0.6mm程度のマグネシウム合金の鋳造に対して好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、説明したように、本発明によれば、鋳造品の湯じわや巣などの発生を抑制するとともに、製造される鋳造品の成形サイクルを向上することができる、鋳造用金型及びこの金型を用いた鋳造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明のその他の特徴及び利点について、発明を実施するための最良の形態に基づいて説明する。
【0023】
(鋳造用金型)
図1は、本発明の鋳造用金型の一例を示す断面構成図である。図1に示す鋳造用金型10は、キャビティ保持金型11とコア保持金型12とを具えている。キャビティ保持金型11はその内部にキャビティ11Aを有し、コア保持金型12はその内部にコア12Aを有している。キャビティ11A及びコア12Aは連結して所定の空間を形成しており、以下の鋳造方法で詳述するように、図示しない湯口から溶湯(溶融金属)を注入できるように構成されている。
【0024】
また、キャビティ11A及びコア12Aには、その内壁面に空気層11B及び12Bが形成されており、その割合は前記内壁面の全表面積に対して70〜80%となるように設定されている。なお、空気層11B及び12Bは、キャビティ11A及びコア12Aが連結して形成されている空間内に、上述した溶湯が注入された際にも維持されている必要がある。なお、図1に示す鋳造用金型10は、成形品を離型させるためのエジェクタノックピン15を具えている。
【0025】
キャビティ11A及びコア12A内に、上述した空気層11B及び12Bが形成されている結果、これらキャビティ11Aなどによって形成される空間内に溶湯が注入された際にも、前記溶湯がキャビティ11A及びコア12Aに直接接触する割合は、20〜30%となる。
【0026】
したがって、前記溶湯の、キャビティ保持金型11のキャビティ11A及びコア保持金型12のコア12Aと直接接触する割合を十分に低減することができるので、前記溶湯の、キャビティ保持金型11及びコア保持金型12との断熱性を高めることができ、前記溶湯からキャビティ保持金型11などへの放熱が抑制される。したがって、得られた鋳造品の、湯じわや巣などの発生を抑制することができる。
【0027】
また、離型剤を用いた場合に、溶剤の蒸発潜熱によりキャビティ保持金型11などが急冷された場合においても、金型表面が設定温度に戻るのを待つことなく鋳造(成形)を行うことが出来るので、成形サイクルを向上させることができる。
【0028】
なお、前記溶湯がキャビティ11A及びコア12Aに直接接触する割合が20%未満であると、接触面積の狭小化に伴う鋳造品の強度不足を生じる。また、直接の接触割合が30%を超えると、上述したような断熱性に関する作用効果を得ることができなくなる。
【0029】
なお、上記例においては、前記溶湯とキャビティ保持金型11のキャビティ11A及びコア保持金型12のコア12Aと直接接触する割合を低減するために、その内壁面上に空気層11B及び12Bを設けているが、上記非接触を実現するためには、空気層形成以外の手段を用いることができる。例えば、より熱伝導の低い気体の層を形成することもできるし、その他熱伝導性の低い液体や固体などから構成することもできる。
【0030】
しかしながら、空気層の熱伝導率は約0.02W/M・kであり、断熱ブロックとして使用されているセラミック部材などの熱伝導率(約3W/M・k)に比較して十分に小さい。したがって、このような安価かつ簡易に形成することができる空気層を用いれば、本発明の目的を効果的かつ効率的に達成することができる。
【0031】
なお、本例における鋳造用金型10では、以下の鋳造方法で説明するように、コア保持金型が可動金型として機能し、キャビティ保持金型が固定金型として機能する。
【0032】
図2は、本発明の鋳造用金型の他の例を示す断面構成図である。なお、図1に示す構成要素と同一あるいは類似の構成要素に関しては、同じ参照符号を用いて表している。本例における鋳造用金型20は、基本的には図1に示す鋳造用金型10と同様の構成を有しているが、キャビティ保持金型11のキャビティ11A内及びコア保持金型12のコア12A内に温度調整用媒体流通路25及び26を有している点で相違する。
【0033】
温度調整用媒体流通路25及び26には、例えば290℃〜300℃に加熱した熱媒を流すようにすることができる。この熱媒としては、シリコーンオイルなどを使用することができる。
【0034】
本例においては、キャビティ11A及びコア11Bで形成される空間内に溶湯が注入された場合において、前記溶湯の温度を、温度調整用媒体流通路25及び26内に所定の熱媒を流すことによってある程度高く保持しておくことができる。したがって、上述した空気層11B及び12Bの断熱の効果と相伴って、前記溶湯の温度を十分高いままに保持しておくことができ、その結果、得られた鋳造品の、湯じわや巣などの発生を十分に抑制することができるようになる。
【0035】
また、離型剤を用いた場合に、溶剤の蒸発潜熱により金型が急冷された場合においても、溶湯自体の温度を高く保持しておくことができるので、金型表面が設定温度に戻るのを待つことなく、成形サイクルを向上させることができる。
【0036】
なお、上記作用効果を奏するためには、温度調整用媒体流通路25及び26の占める割合を、キャビティ保持金型11及び/又はコア保持金型12の断面積の8〜12%とすることが好ましい。この場合、温度調整用媒体流通路25及び26は複数設けられているので、その合計の占有面積を8〜12%とする。さらに、この場合の占有面積とは、温度調整用媒体流通路25及び26の長さ方向に垂直な面に沿って切った場合の断面積の合計を意味するものである。
【0037】
また、温度調整用媒体流通路25及び26は、キャビティ保持金型11のキャビティ11A内及びコア保持金型12のコア12A内を貫通するようにして形成することが好ましいが、必ずしも貫通させる必要はない。
【0038】
(鋳造方法)
次に、上述した鋳造用金型を用いた鋳造方法について説明する。図3は、上述した鋳造用金型を具えた鋳造用金型装置の一例を示す構成図である。図3に示す鋳造用金型装置30は、いわゆるコールドチャンバ方式を採用した鋳造装置であって、その略中央部において、上述した鋳造用金型10(20)を有している。また、鋳造用金型10(20)の固定型であるコア保持金型12の下側端部には、スリーブ37が取り付けれ、その内部を可動できるように、プランジャ38が設けられている。
【0039】
スリーブ37には、溶湯42を内部に注入するための注湯口44が設けられている。また、このスリーブ37の底部に、溶湯42の流動性を確保するためにバーナなどの加熱装置を設けてもよい。また、プランジャ38は、射出機(図示せず)と連結されている。さらに、プランジャ38の先端部には、射出機の射出力を通じて例えば200〜700kg/cm3程度の鋳込圧力で溶湯42を鋳造用金型10(20)内に注入するためのプランジャチップ38aが設けられている。
【0040】
また、鋳造用金型10(20)のキャビティ保持金型12の下部にはスリーブ37から延在するようにして湯口40が形成され、注入口43を介して溶湯42が鋳造用金型10(20)内に注入されるようになっている。
【0041】
可動型であるコア保持金型12は、矢印X1−X2方向に開閉自在に構成されており、鋳造の際にはキャビティ保持金型11と密着させる。
【0042】
図3に示す鋳造用金型装置30を用いた鋳造は、上述した装置構成から明らかなように、スリーブ37内に注湯口44から溶湯42を注入し、プランジャチップ38aを介してプランジャ38で溶湯42を湯口40に向けて加圧し、注入口43を介して鋳造用金型10(20)内に鋳込む。この際、キャビティ保持金型11とコア保持金型12とは密着し、溶湯42はそれらのキャビティ11A及びコア12Aが連結して形成されている空間内に鋳込まれることになる。
【0043】
そして、鋳造用金型10(20)内の、キャビティ11A及びコア12Aには、その内壁面に空気層11B及び12Bが形成されており、その割合は前記内壁面の全表面積に対して70〜80%となるように設定されている。したがって、溶湯42がキャビティ11A及びコア12Aに直接接触する割合は、20〜30%となる。
【0044】
この結果、溶湯42の、キャビティ保持金型11のキャビティ11A及びコア保持金型12のコア12Aと直接接触する割合を十分に低減することができるので、溶湯42の、キャビティ保持金型11及びコア保持金型12との断熱性を高めることができ、溶湯42からキャビティ保持金型11などへの放熱が抑制される。したがって、得られた鋳造品の、湯じわや巣などの発生を抑制することができる。
【0045】
また、離型剤を用いた場合に、溶剤の蒸発潜熱によりキャビティ保持金型11などが急冷された場合においても、金型表面が設定温度に戻るのを待つことなく鋳造(成形)を行うことが出来るので、成形サイクルを向上させることができる。
【0046】
なお、キャビティ保持金型11のキャビティ11A内及びコア保持金型12のコア12A内に温度調整用媒体流通路25及び26を設けた鋳造用金型20の場合においては、温度調整用媒体流通路25及び26内に熱媒を流すことにより、溶湯42自体の温度をある程度高く保持することができるので、上述した作用効果をさらに増大させることができる。
【0047】
本例に示す鋳造方法においては、溶湯42として好ましくはマグネシウム合金を用いることができるが、その他の金属、例えばアルミニウム合金などを用いることもできる。但し、本例の鋳造方法は、特に薄肉化した、例えば厚さ0.35mm〜0.6mm程度の、湯じわや巣などの影響を受けやすいマグネシウム合金の鋳造に対して好ましく用いることができる。
【0048】
さらに、本例では、上述した鋳造用金型をコールドチャンバ方式の鋳造用金型装置に装着し、鋳造工程に供した場合に説明したが、ホットチャンバ方式の鋳造用金型装置に対して装着し、鋳造過程に供することもできる。
【実施例】
【0049】
以下、図1に示す鋳造用金型を図3に示すようなコールドチャンバ方式の鋳造用金型装置に装着し、鋳造過程に供した場合について説明する。
【0050】
なお、鋳込みに使用する溶湯はマグネシウム合金(AZ91D)とし、鋳造用金型のキャビティ及びコアの内壁面に対して所定の割合で空気層を形成し、前記溶湯が前記キャビティ及び前記コアと直接接触する割合を調整した。また、サイクルタイムを40秒、射出速度を5m/s、溶湯の温度を700℃とした。さらに、金型温度は約280〜290℃に設定した。
【0051】
表1に、前記溶湯の、前記キャビティ及び前記コアと直接接触する割合に依存し、金型の温度回復時間、得られる鋳造品の湯じわ及び巣の発生について調べた。なお、前記接触面積の割合に応じて、実施例1〜3及び比較例1,2とした。
【表1】


【0052】
表1から明らかなように、前記溶湯が前記キャビティ及び前記コアと直接接触する割合が30%以下(20%以上)では、離型剤を用いた場合の金型の温度回復時間も20秒以下と短時間であるとともに、湯じわや巣の発生なども見られないことが分かる。一方、前記溶湯が前記キャビティ及び前記コアと直接接触する割合が30%を超える(50%及び100%以上)では、離型剤を用いた場合の金型の温度回復時間も40秒以上と長時間であるとともに、湯じわや巣なども生じることが分かる。また、表1における実施例でも成形サイクルの途中で、湯じわや巣が生じる場合もあったが、全体としての歩留まりは約90%であった。
【0053】
また、図4には、代表的な実施例及び比較例における金型温度の回復履歴をグラフ化して示した。
【0054】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えばノートPCや携帯型のオーディオ機器、携帯電話などの、特に厚さが6mm以下の薄肉化した筐体の製造(鋳造)に対して好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の鋳造用金型の一例を示す断面構成図である。
【図2】本発明の鋳造用金型の他の例を示す断面構成図である。
【図3】本発明の鋳造用金型を具えた鋳造用金型装置の一例を示す構成図である。
【図4】本発明の鋳造用金型に対して離型剤を用いた場合の、金型温度回復の履歴を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
10、20 鋳造用金型
11 キャビティ保持金型
11A キャビティ
11B キャビティ内壁面上に形成された空気層
12 コア保持金型
12A コア
12B コア内壁面上に形成された空気層
25、26 温度調整用媒体流通路
【出願人】 【識別番号】390022415
【氏名又は名称】京セラケミカル株式会社
【出願日】 平成18年8月25日(2006.8.25)
【代理人】 【識別番号】100077849
【弁理士】
【氏名又は名称】須山 佐一

【識別番号】100113871
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 行雄

【識別番号】100124073
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聡

【識別番号】100134223
【弁理士】
【氏名又は名称】須山 英明


【公開番号】 特開2008−49379(P2008−49379A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−229776(P2006−229776)