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【発明の名称】 金属鋳物用鋳造型
【発明者】 【氏名】日下 裕生

【氏名】土屋 詔一

【要約】 【課題】金属鋳物用鋳造型において、中子の除去に要する時間をより短縮し、金属鋳物の生産性をより向上させることである。

【構成】アルミニウム合金溶湯等の金属溶湯を流し込む中空12が設けられた鋳型部14と、鋳型部14の中に配置され、塩化カリウム等の水溶性材料で形成された中子16とを備える金属鋳物用鋳造型10であって、中子16は、金属溶湯と接触する接触面22に、鋳型部14から金属鋳物を取り出したときに露出される面から設けられ、金属溶湯が凝固した後に水を流す溝24を有し、溝24は、水より表面張力が大きい金属溶湯の浸入を抑える所定の幅で形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯を流し込む中空が設けられた鋳型部と、
鋳型部の中に配置され、水溶性材料で形成された中子と、
を備える金属鋳物用鋳造型であって、
中子は、金属溶湯と接触する接触面に、鋳型部から金属鋳物を取り出したときに露出される面から設けられ、金属溶湯が凝固した後に水を流す溝を有し、
溝は、水より表面張力が大きい金属溶湯の浸入を抑える所定の幅で形成されることを特徴とする金属鋳物用鋳造型。
【請求項2】
請求項1に記載の金属鋳物用鋳造型で鋳造されることを特徴とする金属鋳物。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属鋳物用鋳造型に係り、特に、金属溶湯を流し込む中空が設けられた鋳型部と、鋳型部の中に配置され、水溶性材料で形成された中子とを備える金属鋳物用鋳造型に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば、自動車等に用いられる自動車用部品は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料を溶かした金属溶湯を、鋳造型に設けられたキャビティ内に流し込んで鋳造することにより製造される。特に、中空部等を有する自動車用部品を鋳造する場合には、鋳造型のキャビティ内に中子が配置される。そして、鋳造型に流し込まれた金属溶湯が凝固した後、金属鋳物が鋳造型から取り出され、更に、金属鋳物から中子が除去されて中空部等を有する自動車用部品が製造される。ここで、特許文献1には、水を溜めた水槽に鋳造物を沈降させて、中子を除去する方法が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭53−125935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水溶性材料で形成された中子を用いることにより、中子を水に溶解させて金属鋳物から除去することが行われている。図9は、従来の金属鋳物用鋳造型を示す図である。水溶性材料で形成された水溶性中子は、水と接触する一方の端部である巾木部から中子内部に向かって順次、一方向に溶解される。そして、他方の端部に中子の溶解が達して中子全体が溶解することにより、中子を金属鋳物から除去することができる。そのため、中子の除去に要する時間が長くなり、金属鋳物の生産性が低下する場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、中子の除去に要する時間をより短縮し、金属鋳物の生産性を更に向上させた金属鋳物用鋳造型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る金属鋳物用鋳造型は、金属溶湯を流し込む中空が設けられた鋳型部と、鋳型部の中に配置され、水溶性材料で形成された中子とを備える金属鋳物用鋳造型であって、中子は、金属溶湯と接触する接触面に、鋳型部から金属鋳物を取り出したときに露出される面から設けられ、金属溶湯が凝固した後に水を流す溝を有し、溝は、水より表面張力が大きい金属溶湯の浸入を抑える所定の幅で形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る金属鋳物は、金属溶湯を流し込む中空が設けられた鋳型部と、鋳型部の中に配置され、水溶性材料で形成された中子とを備える金属鋳物用鋳造型であって、中子は、金属溶湯と接触する接触面に、鋳型部から金属鋳物を取り出したときに露出される面から設けられ、金属溶湯が凝固した後に水を流す溝を有し、溝は、水より表面張力が大きい金属溶湯の浸入を抑える所定の幅で形成された金属鋳物用鋳造型で鋳造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記の金属鋳物用鋳造型によれば、中子の除去に要する時間をより短縮し、金属鋳物の生産性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。図1は、金属鋳物用鋳造型10の断面を示す図である。金属鋳物用鋳造型10は、金属溶湯を流し込む中空12が設けられた鋳型部14と、鋳型部14の中空12に配置され、水溶性材料で形成された中子16とを備えている。
【0010】
鋳型部14には、金属材料を溶かした金属溶湯を流し込むキャビティ等の中空12が設けられる。金属材料には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金等を用いることができる。アルミニウム合金やマグネシウム合金等は比重が小さいため、自動車用部品等を軽量化することができるからである。勿論、金属材料は、上記金属材料に限定されることはない。
【0011】
金属溶湯は、予め合金成分を調製した金属の鋳塊をルツボ等に入れ、電気炉等で溶解して準備される。例えば、アルミニウム合金溶湯の場合には、予め合金成分を調製したアルミニウム合金の鋳塊を、ルツボ等に入れ電気炉等でアルミニウム合金の融点以上に加熱して準備する。
【0012】
鋳型部14は、上型18と下型20とを含んで構成される。そして、上型18と下型20とを組むことにより、金属材料を溶かした金属溶湯を流し込む中空12が設けられる。上型18と下型20とは、例えば、砂型や金型等により製造されることが好ましい。勿論、他の条件次第では、上型18と下型20とは、砂型や金型等に限定されることはない。そして、鋳型部14には図示されない湯口が形成され、金属溶湯が、湯口から鋳型部14に設けられた中空12に注湯される。
【0013】
中子16は、鋳型部14の中に配置され、水溶性材料で形成される。中子16が鋳型部14の中空12に配置されるのは、金属鋳物に中空部を形成するためである。中子16は、例えば、巾木等を有しており、巾木を上型18または下型20で支持することにより、中子16を鋳型部14の中空12に配置することができる。勿論、鋳型部14の中空12に中子16を配置するための配置方法は、巾木を用いた上記配置方法に限定されることはない。
【0014】
中子16が水溶性材料で形成されるのは、金属溶湯が凝固した後、中子16を水で溶解して金属鋳物から除去するためである。水溶性材料には、例えば、水溶性の塩類と人工砂との混合物等を用いることができる。
【0015】
アルミニウム合金鋳物を鋳造する場合には、水溶性の塩には、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)や塩化カリウム(KCl)等を用いることが好ましい。人工砂には、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)等のセラミックスを用いることが好ましい。勿論、他の条件次第では、水溶性の塩や人工砂は、上記材料に限定されることはない。そして、水溶性の塩と人工砂との混合物を所定の温度に加熱して、溶融塩(ソルト)と人工砂との溶融混合物とし、溶融混合物を所定の形状の型等に流し込むことにより中子16を造型することができる。
【0016】
中子16は、金属溶湯と接触する接触面22に、鋳型部14から金属鋳物を取り出したときに露出される面から設けられ、金属溶湯が凝固した後に水を流す溝24を有している。中子16に溝24を設けるのは、金属溶湯が凝固した後、溝24に水を流して中子16を溶解させるためである。水を流す溝24が金属溶湯と接触する接触面22に設けられるのは、金属鋳物と接する面から中子16を溶解させることにより、中子16を全て溶解させずに塊として金属鋳物から取り出せるからである。それにより、中子16を全て溶解させる必要がないため、金属鋳物から中子16を除去する時間がより短縮される。また、溝24が、鋳型部14から金属鋳物を取り出したときに露出される面から設けられるのは、鋳型部14から金属鋳物を取り出したときに露出される面から溝24に水を流すためである。
【0017】
溝24は、水より表面張力が大きい金属溶湯の浸入を抑える所定の幅で形成される。溝24に金属溶湯が浸入すると、溝24に水を通して中子16を溶解させることができないからである。溝24の幅は、金属溶湯の表面張力に基づいて定めることが好ましい。金属溶湯の表面張力は、一般的に、水の表面張力よりも大きいため、金属溶湯と水との表面張力の差から金属溶湯の浸入を抑えて水を流すことができる溝24の幅を定めることができるからである。また、溝24の幅を定める場合には、更に、鋳造圧力、鋳造型温度、金属溶湯温度等を考慮してもよい。
【0018】
表1は、水とアルミニウム溶湯とについて、表面張力の比較を示す表である。
【表1】


【0019】
表1に示すように、アルミニウム溶湯の表面張力は900mN/mであり、水の表面張力は73mN/mである。このように、金属溶湯であるアルミニウム溶湯の表面張力は、水の表面張力よりも大きくなる。金属溶湯にアルミニウム溶湯を用いる場合には、溝24の幅は、例えば、0.3mmとすることが好ましい。溝24の幅を0.3mmで形成することにより、アルミニウム溶湯の浸入を抑えて水を流すことができる。勿論、他の条件次第では、アルミニウム溶湯を用いる場合における溝24の幅は、上記サイズに限定されることはない。
【0020】
溝24の断面形状は、例えば、図1に示すように四角形とすることができる。勿論、溝24の断面形状は、四角形に限定されることはなく、三角形等の他の多角形状や円弧状であってもよい。また、溝24は、金属溶湯と接触する接触面22に、略直線状に設けられることが好ましい。溝24を略直線状に設けることにより、鋳型部14から金属鋳物を取り出したときに露出される一方の面から他方の面まで、より速く水を流すことができるからである。勿論、他の条件次第では、溝24は、金属溶湯と接触する接触面22に、曲線状に設けられてもよい。
【0021】
金属溶湯と接触する接触面22に設けられる溝24は、複数個設けられることが好ましい。溝24を金属溶湯と接触する接触面22に複数個設けることにより、中子16をより速く溶解させることができるからである。例えば、図1には、金属溶湯と接触する各々接触面22に3個の溝24が設けられた中子16が示されている。金属溶湯と接触する各々接触面22に設けられる溝24の数は、3個に限定されることはなく、2個でもよく、4個でもよい。勿論、他の条件次第では、金属溶湯と接触する各々接触面22に設けられる溝24の数は1個でもよい。また、図1には、中子16の上側と下側の接触面22に溝24が設けられた金属鋳物用鋳造型10を示したが、更に、金属溶湯と接触する側面25に溝を設けてもよい。
【0022】
中子16には、水溶性の塗型材を塗布してもよい。鋳造圧が、例えば、20MPaと高いダイカスト鋳造等の鋳造法において、中子16に設けられた溝24に金属溶湯が浸入するのを、更に抑えることができるからである。
【0023】
水溶性の塗型材には、例えば、バーミキュライト塗型材を用いることができる。バーミキュライト塗型材は、酸化ケイ素(SiO2)、酸化鉄(Fe23)、酸化アルミニウム(Al23)等の耐火物微粒子を水に懸濁させた塗型材である。中子16に塗型材を塗布または浸漬した後、水分を蒸発させることで中子16に塗型被覆層を形成することができる。勿論、塗型材は、上記バーミキュライト塗型材に限定されることはなく、他の水溶性塗型材を用いてもよい。なお、塗型塗布層の厚みは、例えば、50μmから100μmとすることができる。
【0024】
図2は、塗型被覆層26を形成した中子16の断面を示す図である。図2に示すように、塗型被覆層26は、中子16の金属溶湯と接触する接触面22に設けられる。また、塗型材は、中子16に設けられた溝24にも充填される。これにより、中子16に設けられた溝24へ金属溶湯の浸入を抑制することができる。勿論、他の条件次第では、塗型材は、中子16に設けられた溝24にのみ充填されるようにしてもよい。
【0025】
塗型塗布層26は、断熱性や通気性等を向上させるために、その内部に微細な空隙を有している。そのため、塗型塗布層26の空隙から水を浸透させることにより、塗型塗布層26と中子16との溶解を進行させて、中子16全体を溶解させることなく金属鋳物から容易に除去することができる。例えば、上述したように、鋳造圧20MPaでダイカスト鋳造された金属鋳物の場合には、塗型材で被覆された中子16を2分間から3分間で除去することができる。
【0026】
中子16に設けられた溝24に水を流して中子16を溶解させるには、鋳型部14から金属鋳物を取り出したときに露出される面に高圧水を吹付けることが好ましい。鋳型部14から金属鋳物を取り出したときに露出される面に高圧で水を吹付けることにより、中子16に設けられた溝24に水がより多く流れるからである。
【0027】
また、中子16に設けられた溝24に水を流すには、水を溜めた水槽の中に金属鋳物を浸漬させてもよいし、更に、水槽の中の水を攪拌してもよい。勿論、他の条件次第では、中子16に設けられた溝24に水を流す方法は、上記方法に限定されることはない。また、中子16に設けられた溝24に流す液体は、水に限定されることはなく、水に他の成分を含んだ水溶液等を用いてもよい。
【0028】
次に、上記における金属鋳物用鋳造型10の作用について説明する。図3は、金属鋳物用鋳造型10の作用を示す図であり、図3(A)は、金属溶湯が凝固して、鋳型部14から取り出された金属鋳物28を示す図であり、図3(B)は、中子16に設けられた溝24に水を流して中子16を溶解させる様子を示す図である。
【0029】
まず、図3(A)に示すように、鋳型部14に設けられた中空12に流し込まれた金属溶湯が凝固することにより、溝24が設けられた中子16の周囲に金属鋳物28が鋳造される。そして、例えば、水を溜めた水槽の中に中子16が付着した金属鋳物28を浸漬させることにより、図3(B)に示すように、鋳型部14から金属鋳物28を取り出したときに露出される面から水が溝24に浸入する。
【0030】
浸入した水は、中子16に設けられた溝24を流れて、中子16の先端29まで到達する。中子16は水溶性材料で形成させているので、溝24を流れる水は、溝24の幅方向及び溝24の深さ方向に中子16を溶解する。そして、溝24は金属溶湯と接触する接触面22に設けられているので、中子16の溶解は、金属鋳物28と接触する界面から進行する。これにより、中子16全体を溶解させることなく、中子16を金属鋳物28から塊として除去することができる。
【0031】
図4は、鋳造直後の中子16が付着した金属鋳物28を水槽等に溜めた水の中に浸漬させた状態を示す図である。鋳造直後の金属鋳物28は、十分に冷却されていないため高温である。そのため、中子16の溝24または塗型被覆層26の空隙に浸入した水は、金属鋳物28の熱により加熱されて急速に沸騰し、急激な体積膨張を生じる。その結果、中子16に設けられた溝24の中に、気泡が生成する。そして、気泡が溝24や塗型被覆層26の空隙に生成することにより、中子16と金属鋳物28との界面に剥離が生じて、更に水が浸入しやすくなる。それにより、中子16の溶解が更に進行し、より短時間で中子16を除去することができる。
【0032】
また、中子16に設けられた溝24を流れる水の温度は上昇して高温になるため、中子16の溶解速度が大きくなり、中子16の溶解が更に進行する。中子16を形成する水溶性材料は塩化カリウム等の塩類を含むため、水温の上昇に伴って塩類の溶解速度が大きくなるからである。そして、水槽内へ金属鋳物28を同時に複数個浸漬させる場合や、水槽内へ金属鋳物28を連続して浸漬させる場合には、水槽内の水温は更に上昇し、中子16の溶解速度はより大きくなる。また、水槽中の水温を上昇させる加熱エネルギは、鋳造直後の十分に冷却されていない金属鋳物28が有している熱であるので、新たな加熱装置を設置するためのコストや、加熱装置で加熱するときのエネルギ費等のコスト等を抑えることができる。勿論、他の条件次第では、加熱装置を用いて水を加熱してもよい。
【0033】
以上、上記構成によれば、水溶性材料で形成された中子に溝を設けて、溝に水を流して中子を溶解させることにより、中子全体を溶解させることなく金属鋳物から除去することができるので、中子を除去するために要する時間を更に短縮し、金属鋳物の生産性をより向上させることができる。
【0034】
上記構成によれば、金属溶湯と接触する中子の接触面に、水溶性の塗型材を被覆することにより、ダイカスト鋳造等の高圧で鋳造する場合でも、塗型被覆層の空隙を通して水を流すことにより塗型被覆層と中子との溶解を進行させることで、中子全体を溶解させることなく金属鋳物から除去することができる。それにより、中子を除去するために要する時間を更に短縮し、金属鋳物の生産性をより向上させることができる。
【0035】
上記構成によれば、鋳造直後の十分に冷却されていない中子が付着した金属鋳物を水槽等に溜めた水の中に浸漬させて、中子に設けられた溝の中で気泡を生成させることにより、中子と金属鋳物との界面に剥離を生じさせて更に水を浸入しやすくすることができる。それにより、中子の溶解を更に進行させて、より短時間で金属鋳物から中子を除去することができる。
【0036】
上記構成によれば、鋳造直後の十分に冷却されていない複数個の中子が付着した金属鋳物を水槽等に溜めた水の中に浸漬させる等により、水槽等に溜めた水の水温を上昇させることで、水溶性材料で形成された中子の溶解速度を大きくすることができる。それにより、中子の溶解を更に進行させて、より短時間で金属鋳物から中子を除去することができる。
【実施例1】
【0037】
上記金属鋳物用鋳造型を用いてアルミニウム合金鋳物を鋳造した。まず、金属鋳物用鋳造型に使用した中子の造型について説明する。図5は、金属鋳物用鋳造型に使用した中子30を示す図であり、図5(A)は、造型した中子30の斜視図であり、図5(B)は、造型した中子30の断面図である。
【0038】
中子30用材料には、水溶性の塩として塩化カリウム(融点770℃)を使用し、人工砂としてムライト系セラミックス砂であるセラビーズ#1700(伊藤忠セラテック株式会社製)を使用した。そして、40質量%の塩化カリウムと、60質量%のセラビーズとを混合し、850℃で加熱して溶融混合物とし、溶融混合物を型に流し込んで中子30を造型した。
【0039】
中子30の形状は、図5(A)に示すように、縦10mm、横15mm、高さ90mmの略直方体である。中子30には、金属溶湯と接触する接触面に、金属鋳物を取り出したときに露出される一方の面から他方の面まで直線状に溝31を設けた。そして、溝31を、図5(B)に示すように、中子30の上面に3箇所、下面に3箇所設けた。溝31の形状は、溝31の幅を0.3mmとし、溝31の深さを0.5mmとし、いずれの溝31も略同じ形状となるように形成した。また、比較のため、溝31を設けない中子30についても造型した。
【0040】
次に、重力鋳造法によりアルミニウム合金鋳物を鋳造した。図6は、アルミニウム合金鋳物32の重力鋳造法を示す図である。上型33と下型34とで形成された中空のキャビティ内に造型した中子30を巾木で支持して2個配置し、アルミニウム合金溶湯36を湯口から注湯して鋳造した。アルミニウム合金には、Al−Si−Cu系アルミニウム合金であるADC12を使用した。また、アルミニウム合金溶湯36の注湯温度は660℃とした。
【0041】
アルミニウム合金溶湯36が凝固した後、アルミニウム合金鋳物32を上型33と下型34とから取り出した。図7は、中子30が付着したアルミニウム合金鋳物32の形状を示す図であり、図7(A)は、中子30が付着したアルミニウム合金鋳物32を上から見た図であり、図7(B)は、中子30が付着したアルミニウム合金鋳物32を横から見た図である。
【0042】
次に、アルミニウム合金鋳物32に付着した中子30の除去方法について説明する。図8は、アルミニウム合金鋳物32に付着した中子30の除去方法を示す図であり、図8(A)は、鋳型部から取り出した中子30が付着したアルミニウム合金鋳物32を示す図であり、図8(B)は、中子30に設けられた巾木38を除去したアルミニウム合金鋳物32を示す図であり、図8(C)は、中子30の露出面に向けて水道水を流して中子30を除去する様子を示す図である。
【0043】
図8(A)に示すように、アルミニウム合金鋳物32に付着した中子30には、鋳型部のキャビティ内に中子30を支持するための巾木38が設けられている。そのため、図8(B)に示すように、中子30が付着したアルミニウム合金鋳物32を放冷させた後、中子30に設けられた巾木38をハンマ等で折って除去した。なお、中子30に設けられた溝31には、アルミニウム合金溶湯36の浸入は認められなかった。
【0044】
そして、中子30を水で溶解させて除去するために、図8(C)に示すように、水道ホースの先端を中子30の露出面に押し当て水道水を流した。水道水の流量は、開放流量で14L/minとした。そして、中子30に設けられた溝31に水を流して中子30を溶解させることにより、中子30全体を溶解させることなく塊としてアルミニウム合金鋳物32から取り出した。その結果、水道水を流してから中子30をアルミニウム合金鋳物32から取り出すまでに要した時間は、2分間から3分間であった。
【0045】
溝を設けない中子を配置した金属鋳物用鋳造型を用いて、上記重力鋳造法と同様の条件でアルミニウム合金鋳物の鋳造を行った。そして、アルミニウム合金鋳物に付着した中子を、水道水を流すことにより中子全体を溶解させて除去した。この結果、水道水を流してから中子の溶解除去が完了するまで要した時間は、5分間から7分間であった。したがって、溝を設けた中子を配置した金属鋳物用鋳造型を用いることにより、中子全体を溶解させることなくアルミニウム合金鋳物から除去できるので、中子の除去に要する時間をより短縮し、アルミニウム合金鋳物の生産性を、更に向上させることができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態において、金属鋳物用鋳造型の断面を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態において、塗型被覆層を形成した中子の断面を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、金属鋳物用鋳造型の作用を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、鋳造直後の中子が付着した金属鋳物を水槽等に溜めた水の中に浸漬させた状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態において、金属鋳物用鋳造型に使用した中子を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態において、アルミニウム合金鋳物の重力鋳造法を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態において、中子が付着したアルミニウム合金鋳物の形状を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態において、アルミニウム合金鋳物に付着した中子の除去方法を示す図である。
【図9】従来の金属鋳物用鋳造型を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 金属鋳物用鋳造型、12 中空、14 鋳型部、16,30 中子、18,33 上型、20,34 下型、22 接触面、24,31 溝、26 塗型被覆層、28 金属鋳物、32 アルミニウム合金鋳物、36 アルミニウム合金溶湯、38 巾木。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年8月10日(2006.8.10)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二

【識別番号】100096976
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 純


【公開番号】 特開2008−36702(P2008−36702A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−217685(P2006−217685)