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【発明の名称】 成形用金型の冷却システム及び成形用金型の冷却方法
【発明者】 【氏名】古川 雄一

【要約】 【課題】冷却用気体と霧状の冷却用液体とを含んで成る冷却媒体を流通させる冷却通路を備えた成形用金型において、該成形用金型に設けられた冷却通路に供給される冷却媒体の蒸発に起因する背圧の増大を抑制して冷却促進を図るとともに、冷却通路を流通する冷却媒体による錆やスケールの発生の防止を図るための技術を提案する。

【構成】成形用金型の冷却通路への冷却媒体の供給経路に、空気を供給経路に取り込んで圧送する空圧源15と、圧送されてくる空気から酸素を分離除去して該空気の酸素濃度を低減する酸素分離手段17と、酸素濃度を低減した空気に冷却用液体を噴霧する霧化手段14とを備える。前記酸素分離手段17にて空気から分離された酸素は、強制排気手段22にて強制的に冷却通路20より排出された冷却媒体に還元する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用気体と霧状の冷却用液体とを含んで成る冷却媒体を流通させる冷却通路を備えた成形用金型の冷却方法であって、
前記冷却用気体を、酸素濃度を低減した空気とし、
該冷却用気体を前記冷却通路に流通させることを特徴とする、成形用金型の冷却方法。
【請求項2】
冷却媒体を流通させる冷却通路を備えた成形用金型の冷却方法であって、
前記冷却通路への前記冷却媒体の供給経路に、空圧源と、酸素分離手段と、霧化手段とを備え、
前記空圧源にて空気を供給経路に取り込んで圧送し、
前記酸素分離手段にて、圧送されてくる空気から酸素を分離して該空気の酸素濃度を低減し、
前記霧化手段にて、酸素濃度を低減した空気に冷却用液体を噴霧して、前記冷却通路に流入させることを特徴とする、成形用金型の冷却方法。
【請求項3】
前記酸素分離手段にて空気から分離された酸素を、前記冷却通路を通じたのち排出される冷却媒体に還元することを特徴とする、請求項2に記載の成形用金型の冷却方法。
【請求項4】
前記冷却通路内の強制排気手段を更に備え、
該強制排気手段にて、冷却通路内の冷却媒体を強制的に排出させることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の成形用金型の冷却方法。
【請求項5】
冷却媒体を流通させる冷却通路を備えた成形用金型の冷却システムであって、
前記冷却媒体の供給経路に、空気を取り込んで圧送する空圧源と、圧送されてくる空気から酸素を分離除去して該空気の酸素濃度を低減する酸素分離手段と、酸素濃度を低減した空気に冷却用液体を噴霧する霧化手段とを備えることを特徴とする、成形用金型の冷却システム。
【請求項6】
前記冷却通路から排出された冷却媒体に、酸素分離手段にて空気から分離された酸素を還元するための酸素還元経路を、冷却通路の排気経路に備えることを特徴とする、請求項5に記載の成形用金型の冷却システム。
【請求項7】
前記冷却通路内の冷却媒体を強制的に排出させる強制排気手段を、更に備えることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の成形用金型の冷却システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用金型を冷却するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形用金型に設けられた冷却通路に、冷却媒体として霧状の冷却用液体を圧縮空気とともに供給して金型を冷却する金型冷却技術が知られている(特許文献1、参照)。この金型冷却技術では、霧状の冷却用液体と空気とを含む冷却媒体が冷却通路へ送風されることとなり、この送風と冷却用液体の気化熱とにより、冷却媒体は周囲から熱を奪いながら冷却通路を通過し、金型が冷却される。
また、前記金型冷却技術において、冷却通路に供給する霧状の冷却用液体の流量を調整して、冷却の程度を調整する技術も知られている(特許文献2、参照)。
【0003】
上記金型冷却技術において、成形用金型の冷却通路を通過して排出される気体には、多量の蒸気が含まれる。この蒸気がそのまま金型近傍に放出されることで、工場内湿度が上昇して作業環境が悪化し、さらに、鋳造の場合には溶湯品質が低下するという不具合が生じる。
【0004】
また、成形用金型の冷却通路に供給される霧状の冷却用液体は、冷却通路に流入すれば急激に蒸発して体積膨張し、冷却通路の背圧が一気に増大する。この背圧により、冷却用液体の沸点が高くなって冷却媒体の一部が液化したり、また、冷却媒体の流れに乱れが生じたりして、冷却が均等に進行しないという不具合が生じる。
【0005】
さらに、霧状の冷却用液体と空気とを含む冷却媒体が供給される冷却通路内は高温であるので、空気と冷却通路内壁の鉄とが水分が存在する状態で反応して、金型を劣化させる錆や、冷却効率を低下させるスケール等が生じるという不具合がある。そこで、成形用金型の冷却通路内壁の防錆を図って、該冷却通路を循環する冷却用液体の溶存酸素を除去する技術が知られている(特許文献3、参照)。しかし、冷却通路に霧状の冷却用液体を圧縮空気とともに供給する場合には、冷却用液体中の溶存酸素よりも空気中の酸素と冷却通路内壁の鉄とが反応して錆が生じるため、冷却用液体中の溶存酸素を除くだけでは、防錆を図ることは困難である。
【特許文献1】特開昭63−299848号公報
【特許文献2】特開平11−170257号公報
【特許文献3】特開平10−109092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に鑑み、本発明では、冷却用気体と霧状の冷却用液体とを含んで成る冷却媒体を流通させる冷却通路を備えた成形用金型において、該成形用金型に設けられた冷却通路に供給される冷却媒体の蒸発に起因する背圧の増大を抑制して冷却促進を図るとともに、冷却通路を流通する冷却媒体による錆やスケールの発生の防止を図るための技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、冷却用気体と霧状の冷却用液体とを含んで成る冷却媒体を流通させる冷却通路を備えた成形用金型の冷却方法であって、前記冷却用気体を、酸素濃度を低減した空気とし、該冷却用気体を前記冷却通路に流通させるものである。
【0009】
請求項2においては、冷却媒体を流通させる冷却通路を備えた成形用金型の冷却方法であって、前記冷却通路への前記冷却媒体の供給経路に、空圧源と、酸素分離手段と、霧化手段とを備え、前記空圧源にて空気を供給経路に取り込んで圧送し、前記酸素分離手段にて、圧送されてくる空気から酸素を分離して該空気の酸素濃度を低減し、前記霧化手段にて、酸素濃度を低減した空気に冷却用液体を噴霧して、前記冷却通路に流入させるものである。
【0010】
請求項3においては、前記酸素分離手段にて空気から分離された酸素を、前記冷却通路を通じたのち排出される冷却媒体に還元するものである。
【0011】
請求項4においては、前記冷却通路内の強制排気手段を更に備え、該強制排気手段にて、冷却通路内の冷却媒体を強制的に排出させるものである。
【0012】
請求項5においては、冷却媒体を流通させる冷却通路を備えた成形用金型の冷却システムであって、前記冷却媒体の供給経路に、空気を取り込んで圧送する空圧源と、圧送されてくる空気から酸素を分離除去して該空気の酸素濃度を低減する酸素分離手段と、酸素濃度を低減した空気に冷却用液体を噴霧する霧化手段とを備えるものである。
【0013】
請求項6においては、前記冷却通路から排出された冷却媒体に、酸素分離手段にて空気から分離された酸素を還元するための酸素還元経路を、冷却通路の排気経路に備えるものである。
【0014】
請求項7においては、前記冷却通路内の冷却媒体を強制的に排出させる強制排気手段を、更に備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
本発明によれば、冷却用気体と霧状の冷却用液体とを含んで成る冷却媒体を流通させる冷却通路を備えた成形用金型において、前記冷却用気体中の酸素が除去された冷却媒体が冷却通路に供給されるので、該冷却通路内壁の錆やスケールの発生を抑止することができる。
また、冷却用気体と霧状の冷却用液体とを含んで成る冷却媒体を流通させる冷却通路を備えた成形用金型において、冷却通路内の冷却媒体を強制的に排出させるので、冷却用流体の蒸発による背圧の増大を抑制して、冷却用液体の蒸発作用の低下を抑制し、該冷却通路を通過する冷却媒体を整流するとともに冷却促進を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係る冷却システムを備えた成形用金型の構成を示す図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施例に係る冷却システムを備えた成形用金型19には、冷却媒体を導通させて該成形用金型19を冷却するための冷却通路20が設けられる。
前記冷却通路20に導通される冷却媒体には、冷却用気体と、霧状の冷却用液体(以下、『霧化水』と記載する)とが含まれる。
前記冷却用気体は、酸素濃度を低減した空気、つまり、空気から酸素を分離除去した気体であり、また、前記霧化水は、少なくとも冷却通路20に導入される時点で霧状の純水である。
【0019】
前記冷却媒体の成形用金型19への供給経路は、液体側供給経路11と気体側供給経路18とで構成される。
【0020】
前記液体側供給経路11には、冷却用液体としての純水を貯溜する水タンク10と、水タンク10内の冷却用液体を吸引し、霧(ミスト)状にして噴出する霧化手段14とが、備えられる。
前記霧化手段14は、例えば、噴霧ノズル14bと、水タンク10内の冷却用液体を吸引して噴霧ノズル14bへ圧送するポンプ14aとで構成される。但し、霧化手段14の構成は上記に限定されるものではなく、水タンク10の冷却用液体を吸引して噴霧する機能を備えるものであれば構わない。
【0021】
また、前記霧化手段14には、噴霧ノズル14bからの霧化水の噴出量を調整する制御手段25が備えられる。
前記制御手段25にて、霧化水の噴出量を調整することで、冷却媒体に含まれる霧化水の量が調整される。冷却媒体に含まれる霧化水の量を適宜コントロールすることで、成形用金型19の温度コントロールを自在に可変とすることができる。
【0022】
なお、前記液体側供給経路11には、霧化手段14に流入する前の冷却用液体に、防錆剤や洗浄剤などの薬剤を混入させる薬剤供給手段13を備えることができる。前記薬剤供給手段13は、例えば、液状の薬剤を所定量ずつ冷却用液体に供給する機能を備える滴下装置などが採用される。この薬剤供給手段13の使用方法については、後述する。
【0023】
前記気体側供給経路18には、周囲から取り込んだ空気に圧を掛けて送出する空圧源15と、該空圧源15から圧送される空気に含まれる塵等の異物を除去するためのフィルタ16と、該空圧源15から圧送される空気に含まれる酸素を分離して除去することにて該空気の酸素濃度を低減する酸素分離手段17とが備えられる。
前記空圧源15として、例えばエアコンプレッサ等の、取り込んだ空気を圧縮して高圧にした状態で送り出す機能を備える装置を採用することができる。
また、前記酸素分離手段17として、空気中にある酸素とそれ以外の物質を分離させる酸素分離膜を採用することができる。酸素分離膜としては、多孔質支持膜に酸素(酸素イオン)しか透過しない薄膜を形成したものなど、既存の酸素分離膜を採用することができる。
【0024】
前記気体側供給経路18を通じて供給される冷却用気体に、前記液体側供給経路11を通じて供給される霧化水が噴出され、冷却用気体と霧化水とが混合される。このように、冷却用気体と霧化水(霧状の冷却用液体)とで成る冷却媒体が、冷却通路20に流入される。
【0025】
上記冷却媒体を構成する冷却用気体は、酸素を分離除去することにて酸素濃度を低減した空気であり、酸素が殆ど存在しない。従って、冷却通路20に冷却媒体が供給されても、該冷却通路20の内壁の鉄が酸化したり、同じく内壁にスケールが生成したりせず、錆やスケールの発生を抑止することができる。
また、仮に酸化されたとしても、酸素濃度が低い環境下で酸化反応が起こるため、緻密な酸化皮膜(例えば、Fe)が形性されやすく、防錆効果の向上が期待できる。
【0026】
前記成形用金型19の冷却通路20を流通したあとの冷却媒体は、排気系路21を通じて外部へ排出される。前記排気系路21には、冷却通路20内の冷却媒体を強制的に排出させるための強制排気手段22が備えられる。
前記強制排気手段22として、例えば、ダイヤフラムポンプ等の排気ポンプや真空ポンプ、送風機等を採用することができる。
【0027】
上記のように強制排気手段22を備えて冷却通路20の冷却媒体を強制的に排出させることで、冷却媒体が冷却通路20に流入したときの背圧の増大を抑制し、冷却通路20での冷却用液体の蒸発作用の低下を抑制して、冷却能力の維持を図ることができる。さらに、冷却通路20に、排気系路21へ向かう冷却媒体の強制的な流れを形成して、該冷却媒体を整流して、冷却促進を図ることができる。
【0028】
また、冷却通路20から排出される冷却媒体には多量の水蒸気が含まれるが、該水蒸気は強制排気手段22を通過するうちに液化し、該強制排気手段22のドレン23を通じて外部へ排出される。つまり、冷却通路20からそのまま水蒸気が外部へ放出されないため、工場内湿度の上昇による作業環境の悪化や、溶湯品質の低下を防止することができる。
【0029】
そして、前記強制排気手段22から放出される気体は、排気管24を通じてノズルから成形用金型19に向けて噴出され、該成形用金型19の乾燥に用いられる。前記排気管24には、前記気体側供給経路18に備えられた酸素分離手段17にて空気から分離された酸素を、冷却通路20から排出された冷却媒体に還元するための酸素還元経路17aが接続される。
これにより、強制排気手段22から排気管24に流入する気体(冷却媒体)は酸素が欠乏しているが、該排気管24から外部へ噴出される気体は、酸素が添加されて酸欠状態が解消されるので、工場内が酸欠状態となることを防止できる。
【0030】
続いて、前記薬剤供給手段13の使用方法について説明する。
前記薬剤供給手段13は、成形用金型19のメンテナンス作業の一環として、該成形用金型19の冷却通路20の内壁の防錆処理及び洗浄処理のために利用する。
薬剤供給手段13にて、所定量の防錆剤若しくは洗浄剤又はこれら両方の薬剤が、霧化手段14に吸引される冷却用液体に投入される。
前記洗浄剤として、例えばキレート剤を採用することができる。また、前記防錆剤として、例えば脂肪酸を採用することができる。なお、薬剤が混入した冷却用液体は、成形用金型19を構成する亜鉛や銅等を溶出させないために、pH6.0〜9.5とすることが望ましい。
【0031】
薬剤が混入した冷却用液体は霧化手段14の噴霧ノズル14bより霧化水として、空圧源15からフィルタ16及び酸素分離手段17を通じて圧送されてくる冷却用気体に対して噴出され、該気体の流れに乗って成形用金型19の冷却通路20内に供給される。これにより、成形用金型19の冷却通路20には、防錆剤若しくは洗浄剤又はこれら両方の薬剤が供給され、該冷却通路20の内壁の防錆処理若しくは洗浄処理又はこれら両方の処理が行われることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例に係る冷却システムを備えた成形用金型の構成を示す図。
【符号の説明】
【0033】
10 水タンク
13 薬剤供給手段
14 霧化手段
15 空圧源
17 酸素分離手段
17a 酸素還元経路
19 成形用金型
20 冷却通路
22 強制排気手段
23 ドレン
24 排気管
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年7月26日(2006.7.26)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎


【公開番号】 特開2008−30063(P2008−30063A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−204009(P2006−204009)