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【発明の名称】 鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子
【発明者】 【氏名】伊藤 道寛

【氏名】比嘉 正一

【氏名】岡部 経之

【氏名】山村 明

【要約】 【課題】アンダカット部の不動部の後加工を必要としない低コスト化および生産性の向上による高性能化を容易に図ることのできる鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子を提供する。

【構成】置き中子21は、少なくとも一部4aが折損あるいは折曲されるように形成する。鋳造方法および鋳造用鋳型11は、キャビティ14を形成するに先立って金型12の内部にアンダカット部成形用の金属製の置き中子21を配置し、その後鋳造品1を得た後に、鋳造品1を金型12から離型するに先立ってスライドコア13Aを離型した後に、置き中子21をスライドコア13Aが存在した空間31に向かって移動することにより、置き中子21の少なくとも一部4aを折損あるいは折曲して置き中子21を空間31を介して鋳造品1から取り出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が可動とされた開閉可能な1対の金型と、スライドコアとを組み合わせてキャビティを形成し、このキャビティに溶湯を充填して固化させて鋳造品を得る鋳造方法において、
前記キャビティを形成するに先立って前記金型の内部にアンダカット部成形用の金属製の置き中子を配置し、その後前記鋳造品を得た後に、前記鋳造品を前記金型から離型するに先立って前記スライドコアを離型した後に、前記置き中子を前記スライドコアが存在した空間に向かって移動することにより、前記置き中子の少なくとも一部を折損あるいは折曲して前記置き中子を前記空間を介して前記鋳造品から取り出すことを特徴とする鋳造方法。
【請求項2】
前記溶湯が、アルミニウム合金であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋳造方法。
【請求項3】
少なくとも一方が可動とされた開閉可能な1対の金型と、スライドコアとを組み合わせてキャビティを形成し、このキャビティに溶湯を充填して固化させて鋳造品を得る鋳造用鋳型において、
前記キャビティを形成するに先立って前記金型の内部に配置され、かつ、前記鋳造品を前記金型から離型するに先立って前記スライドコアを離型した後に、前記スライドコアが存在した空間に向かって移動されることにより少なくとも一部が折損あるいは折曲されて前記空間を介して前記鋳造品から取り出されるように形成されたアンダカット部成形用の金属製の置き中子を有していることを特徴とする鋳造用鋳型。
【請求項4】
金型によって形成される鋳造品の内部にアンダカット部を形成するための金属製の置き中子において、
少なくとも一部が折損あるいは折曲されるように形成されていることを特徴とする置き中子。
【請求項5】
前記折損あるいは折曲の基部に切欠きが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の置き中子。
【請求項6】
前記折損あるいは折曲される部分がアルミニウム合金により形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の置き中子。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子に係り、特に、内部にアンダカット部を有する鋳造品を金型を用いて得るのに好適な鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アンダカット部、特に、鋳造後にそのままの形状で鋳造品から抜くことのできないアンダカット部を備える鋳造品を、金型を用いて得るための技術として、砂などにより形成された崩壊性の置き中子を金型の内部に配置して鋳造を行った後に、置き中子を崩壊させて鋳造品から取り出したり、低温溶融金属の置き中子を金型の内部に配置して鋳造を行った後に、置き中子を溶融除去する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、金属製の置き中子を余肉として一体に鋳造し、鋳造後に切削加工などの後加工により除去する手法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
勿論、鋳造後にそのままの形状で鋳造品から抜くことのできるアンダカット部を備える鋳造品を得る場合には、金属製の置き中子が用いられている。
【0005】
【特許文献1】特開平09−314301号公報(「0003」)
【特許文献2】特開平06−087063号公報(「0008」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子においては、近年の低コスト化および生産性の向上による高性能化の要求に応えることができないという問題点があった。
【0007】
すなわち、従来の崩壊性の置き中子を用いる場合には、砂中子が一般に使用されるが、造型が困難であるとともに、崩壊し易く、取扱いが難しいばかりでなく、鋳造時における耐圧性と鋳造後における崩壊性との二律背反する条件を具備するのが困難であり、さらに、鋳造後の完全除去が困難であるという問題点があった。
【0008】
なお、自動車などの車両における内部にギアが組み込まれるアルミニウム合金製のトランスファーケースなどに代表される鋳造品では、砂などの異物の混入や、異物による内部欠陥の発生の危険性が大きく、このような異物の残存を嫌う鋳造品では、崩壊性の置き中子を用いることができないという問題点があった。
【0009】
また、従来の金属製の置き中子を用いる場合には、鋳造後に置き中子をそのままの形状で鋳造品から取り出す必要があるが、アンダカット部に、鋳造後の置き中子の移動方向である抜き方向に沿った部位(以下、不動部と記す。)が存在すると、置き中子を取り出すことができないという問題点があった。
【0010】
そこで、アンダカット部に不動部が存在する場合には、不動部を除く形状の金属製の置き中子により鋳造品を得た後に、切削加工などの後加工により不動部を形成しなければならず、生産に要する工程数が多く、しかも多大な労力を必要としているという問題点があった。
【0011】
なお、金属製の置き中子を余肉として一体に鋳造し、鋳造後の後工程で加工により除去する場合においても、鋳造後の後加工を必要とするので、生産に要する工程数が多く、しかも多大な労力を必要としているという問題点があった。
【0012】
そこで、アンダカット部の不動部の後加工を必要としない低コスト化および生産性の向上による高性能化を容易に図ることのできる鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子が求められている。
【0013】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、アンダカット部の不動部の後加工を必要としない低コスト化および生産性の向上による高性能化を容易に図ることのできる鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため特許請求の範囲の請求項1に記載の本発明に係る鋳造方法の特徴は、少なくとも一方が可動とされた開閉可能な1対の金型と、スライドコアとを組み合わせてキャビティを形成し、このキャビティに溶湯を充填して固化させて鋳造品を得る鋳造方法において、前記キャビティを形成するに先立って前記金型の内部にアンダカット部成形用の金属製の置き中子を配置し、その後前記鋳造品を得た後に、前記鋳造品を前記金型から離型するに先立って前記スライドコアを離型した後に、前記置き中子を前記スライドコアが存在した空間に向かって移動することにより、前記置き中子の少なくとも一部を折損あるいは折曲して前記置き中子を前記空間を介して前記鋳造品から取り出す点にある。そして、このような構成を採用したことにより、アンダカット部に、鋳造後の置き中子の移動方向である抜き方向に沿った部位である不動部が存在する場合であっても、この不動部を折損あるいは折曲して取り出すことができるので、不動部を後加工せずに鋳造により得ることができる。
【0015】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載の本発明に係る鋳造方法の特徴は、前記溶湯が、アルミニウム合金である点にある。そして、このような構成を採用したことにより、アルミニウム合金により形成された鋳造品を容易に鋳造することができる。
【0016】
また、特許請求の範囲の請求項3に記載の本発明に係る鋳造用鋳型の特徴は、少なくとも一方が可動とされた開閉可能な1対の金型と、スライドコアとを組み合わせてキャビティを形成し、このキャビティに溶湯を充填して固化させて鋳造品を得る鋳造用鋳型において、前記キャビティを形成するに先立って前記金型の内部に配置され、かつ、前記鋳造品を前記金型から離型するに先立って前記スライドコアを離型した後に、前記スライドコアが存在した空間に向かって移動されることにより少なくとも一部が折損あるいは折曲されて前記空間を介して前記鋳造品から取り出されるように形成されたアンダカット部成形用の金属製の置き中子を有している点にある。そして、このような構成を採用したことにより、請求項1に記載の本発明の鋳造方法、ひいては請求項2に記載の本発明の鋳造方法を容易に実施することができる。
【0017】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載の本発明に係る置き中子の特徴は、金型によって形成される鋳造品の内部にアンダカット部を形成するための金属製の置き中子において、少なくとも一部が折損あるいは折曲されるように形成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、アンダカット部に、鋳造後の置き中子の移動方向である抜き方向に沿った部位である不動部が存在する場合であっても、この不動部を折損あるいは折曲して取り出すことができる。
【0018】
また、特許請求の範囲の請求項5に記載の本発明に係る置き中子の特徴は、請求項4において、前記折損あるいは折曲の基部に切欠きが設けられている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、切欠きに応力を集中させることができるので、折損あるいは折曲を容易にできる。
【0019】
また、特許請求の範囲の請求項6に記載の本発明に係る置き中子の特徴は、請求項4または請求項5において、前記折損あるいは折曲される部分がアルミニウム合金により形成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、折損あるいは折曲を容易にできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子によれば、アンダカット部に、鋳造後の置き中子の移動方向である抜き方向に沿った部位である不動部が存在する場合であっても、この不動部を折損あるいは折曲して取り出すことができるので、不動部を後加工せずに鋳造により得ることができる。その結果、アンダカット部の不動部の後加工を必要としない低コスト化および生産性の向上による高性能化を容易に図ることができるなどの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0022】
なお、説明の便宜上、本発明に係る鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子を用いて形成される鋳造品の実施形態について先に説明し、本発明に係る鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子については後で説明する。
【0023】
図1および図2は本発明に係る鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子を用いて形成される鋳造品の実施形態を示すものであり、図1は要部を簡略化して示す模式的縦断面図、図2は図1のA−A線に沿った模式的断面図である。
【0024】
本実施形態の鋳造品は、自動車などの車両における内部にギアが組み込まれるアルミニウム合金製のトランスファーケース(四輪駆動車用の駆動力分配装置のケース)を例示している。また、本実施形態の鋳造品は、ダイカストにより形成されるものを例示している。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施形態の鋳造品としてのトランスファーケース(以下、単にケースと記す。)1は、大径有底穴2と、この大径有底穴2に直交するように配置された小径孔3(実際には、多段円筒孔)とを有している。そして、小径孔3の底部は、大径有底穴2の軸心方向のほぼ中間部分に連通されている。また、小径孔3は、大径有底穴2、すなわち、ケースの内部に向かって大径に形成されている。
【0026】
前記ケース1を鋳造する際に用いられる後述する鋳造用鋳型は、1対の金型の型開き方向が、図1に太矢印AおよびBで示される方向とされ、大径有底穴2は、図2に太両矢印Cで示されるスライド方向に沿って移動される後述するスライドコアにより形成されることになる。また、小径孔3は、その内部空間がアンダカット部4とされており、図1に太矢印Dで示される抜き方向に沿って移動される後述する置き中子により形成されることになる。したがって、アンダカット部4のうちの図1においてクロスハッチングにて示す部位が、鋳造後の置き中子の移動方向である抜き方向に沿った部位である不動部4aとされている。
【0027】
なお、ケース1の大径有底穴2は、エンジンの駆動力を伝達するドライブギアの取付口とされ、小径孔3は、プロペラシャフトに接続される出力用のドリブンギアの取付口とされるようになっている。
【0028】
つぎに、本実施形態のケースの鋳造(製造)に用いる鋳造用鋳型および置き中子について図3から図7により説明する。
【0029】
図3から図7は本発明に係る鋳造用鋳型および置き中子の実施形態の要部を簡略化して示すものであり、図3は金型が閉じてキャビティが形成された状態における模式的一部省略断面図、図4は図3のB−B線に沿った断面図、図5は置き中子の模式的拡大正面図、図6は図5のC−C線に沿った断面図、図7は図5の背面図である。
【0030】
本実施形態の鋳造用鋳型11は、ダイカストにより前記ケース1を得るためのものであり、従来公知の横締め型のダイカスト装置に設置されるようになっている。
【0031】
図3および図4に示すように、本実施形態のケース1の鋳造に用いられる鋳造用鋳型11(以下、単に鋳型11と記す。)は、金型12およびスライドコア13を有している。
【0032】
本実施形態の金型12は、図4に示すように、前後方向あるいは左右方向に1対とされており、図4の下方に示す一方は、図示しないダイカスト装置の固定板に取着される固定型12Aとされており、図4の上方に示す他方は、ダイカスト装置の可動板に取着される可動型12Bとされている。そして、可動型12Bは、固定型12Aに対して接離するように開閉可能に配置されている。また、本実施形態の1対の金型12は、入れ子式とされており、固定型12Aの可動型12Bと対向する面には、図3および図4において斜線領域にて示すキャビティ14の一部を構成するための固定ダイス12aが嵌め込まれており、可動型12Bの固定型12Aと対向する面には、キャビティ14の他の一部を構成するための可動ダイス12bが嵌め込まれている。
【0033】
なお、固定ダイス12aおよび可動ダイス12bを用いずに金型12にキャビティ14を直接形成する構成であってもよい。また、1対の金型12としては、少なくとも一方が可動とされた開閉可能なものであればよい。
【0034】
本実施形態のスライドコア13は、キャビティ14のさらに他の一部、すなわち、ケース1の大径有底穴2を構成するための天側スライドコア13Aと、キャビティ14のまたさらに他の一部、すなわちケース1の小径孔3の開口端を構成するための側方スライドコア13Bとを有している。
【0035】
図3に示すように、天側スライドコア13Aは、可動型12Bの図3の上端に取着された往復動油圧シリンダなどの第1アクチュエータ15の駆動力により両太矢印Cにて示すように、図3の上下方向に沿って移動可能とされている。
【0036】
前記側方スライドコア13Bは、可動型12Bの図3の左端に取着された往復動油圧シリンダなどの第2アクチュエータ16の駆動力により両太矢印Dにて示すように、図3および図4の左右方向に沿って移動可能とされている。
【0037】
前記側方スライドコア13Bの中心には、押出しコアピン17の基部17aがブッシュ18を介して軸方向に沿って移動可能に配設されており、押出しコアピン17のピン部17bは、図3および図4の右方、すなわち、金型12のキャビティ14のほぼ中央部に向かって突出されている。この押出しコアピン17の基部17aには、第2アクチュエータ16の出力軸16aに接続された往復動油圧シリンダなどの第3アクチュエータ19の出力軸19aが接続されており、押出しコアピン17は、第3アクチュエータ19の駆動力により、両太矢印Eにて示すように、側方スライドコア13Bの移動方向に沿った図3および図4の左右方向に沿って移動可能に形成されている。
【0038】
したがって、押出しコアピン17は、第2アクチュエータ16の駆動力により側方スライドコア13Bと一体になって図3の左右方向に移動可能とされているとともに、第3アクチュエータ19の駆動力により側方スライドコア13Bとは独立して図3および図4の左右方向に移動可能に形成されている。
【0039】
なお、本実施形態における第1および第2アクチュエータ15、16は、それぞれ可動型12Bに取着されている。
【0040】
前記押出しコアピン17のピン部17bには、小径孔3、すなわちアンダカット部4を成形するためのアンダカット部成形用の金属製の置き中子21が装着されるようになっている。この置き中子21は、図5から図7に示すように、ケース1の小径孔3の内部空間と同一形状に形成されているとともに、図6に示すように、押出しコアピン17のピン部17bの軸方向に沿ってピン部17bの根本側に配置されるほぼ円錐の頂部を底面と平行に切り取った形状をなす基体部21aと、ピン部17bの先端側に配置される先端部21bとの2つに分割されて組み立て可能になっている。そして、基体部21aと先端部21bとは、インロー27により嵌合されて径方向の位置決めが行われている。また、先端部21bの基体部21aと反対の表面には、折損あるいは折曲の基部となる応力を集中させることのできる切欠き22が設けられている。
【0041】
本実施形態の切欠き22は、先端部21bを中心を通過するように径方向に沿って2分するように折損あるいは折曲するために、先端部21bの表面に、外周縁から1mm程度の範囲を残して中心を通過する断面ほぼ半円状の溝状に形成された第1ノッチ23と、不動部4aの先端側の部位を内側に折損あるいは折曲するために、不動部4aの中間部分に配置されている断面ほぼ欠円状の溝状に形成された第2ノッチ24とを有している。
【0042】
なお、両ノッチ23、24の中央部およびに第2ノッチ23の背面に、さらに切欠溝22aを設ける構成とすることが折損あるいは折曲をより容易に行うことができるという意味で好ましい。
【0043】
前記基体部21aの中心には、押出しコアピン17のピン部17bが着脱自在に嵌め込まれる貫通孔25が設けられており、先端部21bの中心部には、押出しコアピン17のピン部17bの先端部が嵌め込まれる有底の取付穴26が設けられている。
【0044】
前記置き中子21の素材としては、鉄鋼、非鉄金属など各種の金属あるいは合金を用いることができるが、後述するように、鋳造後に置き中子21を取り出す際に、少なくとも一部を折損あるいは折曲させることができ、しかも、ケース1の鋳造時に同時に形成することができるという意味で、少なくとも先端部21bをケース1と同一の素材であるアルミニウム合金により形成することが望ましい。また、置き中子21をケース1と同一の素材であるアルミニウム合金により形成した場合には、鋳造後に折損あるいは折曲させた置き中子21を溶湯の素材として再利用することができる。
【0045】
なお、置き中子21を押出しコアピン17のピン部17bに装着した状態においては、置き中子21の図6の左方に示す端面を押出しコアピン17の基部17aの端面に当接させることにより、置き中子21の図3および図4の左方に示す方向の位置決めが行われるようになっている。
【0046】
さらに、置き中子21を押出しコアピン17のピン部17bに装着した状態においては、押出しコアピン17のピン部17bの先端面が、置き中子21の図6の右方に示す先端部21bの取付穴26の底面に接していることが、天側スライドコア13Aとの干渉を確実に防止することができるという意味で好ましい。勿論、置き中子21を押出しコアピン17のピン部17bに装着した状態において、取付穴26の深さを、置き中子21の先端部21bの図6の右方に示す表面が天側スライドコア13Aの移動経路上に突出しないように設定することが天側スライドコア13Aとの干渉を確実に防止するうえで肝要である。
【0047】
また、置き中子21は、設計コンセプトなどの必要に応じて分割すればよく、一体であってもよい。
【0048】
図3に示すように、可動型12Bには、キャビティ14に対してアルミニウム合金からなる溶湯を注入するための平面ほぼ円形の湯口28が形成されており、この湯口28には、ダイカスト装置のプランジャが配置されている。また、湯口28には、一端がキャビティ14に接続されたランナ29の他端が接続されている。なお、図3に示すランナ29の形状およびランナ29のキャビティ14との接続位置、この接続位置に配置される図示しないゲートなどは、鋳造品の形状、型割り、設計コンセプトなどの必要に応じて設定すればよい。
【0049】
つぎに、前述した構成からなる本実施の形態の作用について鋳造方法とともに説明する。
【0050】
本実施形態のケース1を鋳造する場合、鋳型11の可動型12Bを固定型12Aから離間させて1対の金型12を開いた開状態とする。また、第1アクチュエータ15により天側スライドコア13Aを後退させ、第2アクチュエータ16により側方スライドコおよび押出しコアピン17を後退させる。この時、押出しコアピン17は、第3アクチュエータ19により後退状態に保持する。
【0051】
ついで、第2アクチュエータ16により側方スライドコア13Bおよび押出しコアピン17を所定の位置に前進させてから押出しコアピン17のピン部17bに置き中子21を装着する。すなわち、1対の金型12を組み合わせてキャビティ14を形成するに先立って金型12の内部にアンダカット部成形用の金属製の置き中子21を配置する。この押出しコアピン17に置き中子21を装着した状態を図8に示す。
【0052】
ついで、第1アクチュエータ15により天側スライドコア13Aを所定の位置に前進させて位置決めをした後、可動型12Bを固定型12Aに当接させて1対の金型12が閉じた閉状態(型締め状態)とする。これにより、図3および図4に示すように、キャビティ14が形成されることになる。
【0053】
ついで、キャビティ14の形成後、湯口28からランナ29を介してキャビティ14に溶湯を充填する。そして、溶湯を冷却して固化することにより鋳造品としてのケース1を得る。
【0054】
この時、金型12に、置き中子21を鋳造するためのキャビティを設け、ケース1の鋳造と同時に置き中子21を鋳造するようにしてもよい。
【0055】
ついで、溶湯が固化したらケース1を金型12から離型するに先立って、第1アクチュエータ15により天側スライドコア13Aを後退させて離型する。
【0056】
ついで、第3アクチュエータ19により押出しコアピン17を前進させる。これにより、押出しコアピン17は、ピン部17bに装着されている置き中子21とともに、図9に示すように、天側スライドコア13Aが存在した空間(取出空間)31に向かって移動を開始する。
【0057】
この時、図9に示すように、押出しコアピン17の前進動作により、置き中子21の先端部21bには、図9の符号a、b、cおよびdに示す部分に応力が発生することになる。そして、押出しコアピン17がさらに前進すると、図9の符号bにて示す部位が押出しコアピン17の前進を阻止するように働くので、応力が第2ノッチ24に集中して第2ノッチ24より先端側の部位が内側に折損あるいは折曲されることになる。また、第1ノッチ23の背面にはクラックが生じる。この置き中子21の先端部21bが第2ノッチ24で折曲した状態を図10に示す。
【0058】
ついで、押出しコアピン17がさらにまた前進すると、応力が切欠き22に集中するので、先端部21bは、第2ノッチ24より先端側の部位がさらに内側に折損あるいは折曲されるとともに、第1ノッチ23で折損あるいは折曲することになる。
【0059】
ついで、押出しコアピン17がまたさらに前進して前進端に到達すると、置き中子21の先端部21bは、天側スライドコア13Aが存在した空間31に存在することになるので、この空間31を介してケース1から取り出す。その後、空間31を介して押出しコアピン17のピン部17bに残存する置き中子21の基体部21aをケース1から取り出す。この置き中子21の先端部21bが第1ノッチ23で折損されて空間31に存在する状態を図11に示す。
【0060】
すなわち、アンダカット部4に、鋳造後の置き中子21の移動方向である抜き方向に沿った部位である不動部4aが存在する場合であっても、この不動部4aを折損あるいは折曲させることで、天側スライドコア13Aが存在した空間31の内部に置き中子21を存在させることができる。
【0061】
ついで、第3アクチュエータ19により押出しコアピン17を後退させ、さらに、第2アクチュエータ16により側方スライドコア13Bを後退させた後に、可動型12Bを固定型12Aから離間させて金型12を開状態としてケース1を金型12から離型する。
【0062】
このように、本実施形態の鋳造方法によれば、少なくとも一方が可動とされた開閉可能な1対の金型12と、スライドコア13とを組み合わせてキャビティ14を形成するに先立って金型12の内部にアンダカット部成形用の金属製の置き中子21を配置し、その後鋳造品としてのケース1を得た後に、ケース1を金型12から離型するに先立ってスライドコア13、詳しくは天側スライドコア13Aを離型した後に、置き中子21を天側スライドコア13Aが存在した空間に向かって移動することにより、置き中子21の少なくとも一部を折損あるいは折曲して置き中子21を空間31を介してケース1から取り出すように形成されているので、従来不可能であった不動部4aを後加工せずに鋳造により得ることができる。
【0063】
すなわち、本実施形態の鋳造方法によれば、不動部4aが存在するアンダカット部4を有する鋳造品としてのケース1を金属製の置き中子21を用いて後加工をせずに容易かつ確実に得ることができる。
【0064】
また、本実施形態の鋳造方法によれば、溶湯がアルミニウム合金であるからアルミニウム合金により形成された鋳造品としてのケース1を容易に鋳造することができる。
【0065】
したがって、本実施形態の鋳造方法によれば、鋳造後の不動部4aの後加工を必要としない低コスト化および生産性の向上による高性能化を容易に図ることができる。
【0066】
なお、本実施形態の鋳造方法によれば、従来の砂中子などの崩壊性の置き中子を用いる場合に生じる砂などの異物の混入や、異物による内部欠陥が発生することがないので、高い品質を保持することができる。
【0067】
また、本実施形態の鋳型11によれば、少なくとも一方が可動とされた開閉可能な1対の金型12と、スライドコア13とを組み合わせてキャビティ14を形成するに先立って金型12の内部に配置され、かつ、鋳造品としてのケース1を金型12から離型するに先立ってスライドコア13、詳しくは天側スライドコア13Aを離型した後に、天側スライドコア13Aが存在した空間31に向かって移動されることにより少なくとも一部が折損あるいは折曲されて空間31を介してケース1から取り出されるように形成されたアンダカット部成形用の金属製の置き中子21を有しているので、本実施形態の鋳造方法を容易かつ確実に実施することができる。
【0068】
また、本実施形態の置き中子21によれば、少なくとも一部が折損あるいは折曲されるように形成されているので、本実施形態の鋳造方法を容易かつ確実に実施することができるとともに、本実施形態の鋳造方法に用いる鋳型11を容易に得ることができる。
【0069】
また、本実施形態の置き中子21によれば、折損あるいは折曲の基部に切欠き22が設けられているので、折損あるいは折曲を容易に行うことができる。
【0070】
また、本実施形態の置き中子21によれば、折損あるいは折曲される部分がアルミニウム合金により形成されているので、鉄鋼などに比較して折損あるいは折曲を容易に行うことができる。
【0071】
したがって、本実施形態の鋳造方法および鋳造用鋳型11ならびに置き中子21によれば、鋳造後の後加工を必要としない低コスト化および生産性の向上による高性能化を容易に図ることができる。
【0072】
なお、本発明の鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子は、ダイカストに限らず、各種の金型鋳造法に用いることができる。
【0073】
また、本発明の鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子に用いる溶湯としては、アルミニウム合金に限らず、鉄、銅、銅合金などの各種の金属を用いることができる。
【0074】
さらに、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る本発明に係る鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子を用いて形成される鋳造品の実施形態の要部を簡略化して示す模式的縦断面図
【図2】図1のA−A線に沿った模式的断面図
【図3】本発明に係る鋳造用鋳型の実施形態の金型が閉じてキャビティが形成された状態における要部を簡略化して示す模式的一部省略断面図
【図4】図3のB−B線に沿った断面図
【図5】本発明に係る置き中子の実施形態の要部を簡略化して示す模式的拡大正面図
【図6】図5のC−C線に沿った断面図
【図7】図5の背面図
【図8】本発明に係る鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子を用いた鋳造品の鋳造の実施形態における押出しコアピンに置き中子を装着した状態の要部を簡略化して示す説明図
【図9】本発明に係る鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子を用いた鋳造品の鋳造の実施形態における押出しコアピンによる置き中子の移動開始状態の要部を簡略化して示す説明図
【図10】本発明に係る鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子を用いた鋳造品の鋳造の実施形態における押出しコアピンによる置き中子の先端部が第2ノッチで折曲された状態の要部を簡略化して示す説明図
【図11】本発明に係る鋳造方法および鋳造用鋳型ならびに置き中子を用いた鋳造品の鋳造の実施形態における置き中子の先端部が第2ノッチで折曲されて空間に存在する状態の要部を簡略化して示す説明図
【符号の説明】
【0076】
1 (トランスファ)ケース
2 大径有底穴
3 小径孔
4 アンダカット部
4a 不動部
11 (鋳造用)鋳型
12 金型
12A 固定型
12B 可動型
12a 固定ダイス
12b 可動ダイス
13 スライドコア
13A 天側スライドコア
13B 側方スライドコア
14 キャビティ
17 押出しコアピン
17a 基部
17b ピン部
21 置き中子
21a 基体部
21b 先端部
22 切欠き
22a 第1ノッチ
22b 第2ノッチ
31 空間
【出願人】 【識別番号】594122302
【氏名又は名称】柳河精機株式会社
【出願日】 平成18年7月25日(2006.7.25)
【代理人】 【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔

【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英

【識別番号】100095326
【弁理士】
【氏名又は名称】畑中 芳実

【識別番号】100115314
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 奈緒子

【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】玉利 房枝

【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之

【識別番号】100123858
【弁理士】
【氏名又は名称】磯田 志郎


【公開番号】 特開2008−23582(P2008−23582A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−201829(P2006−201829)