トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金

【発明の名称】 鋳型製造用フラン樹脂組成物
【発明者】 【氏名】船田 等

【要約】 【課題】保存安定性を損なうことなく、作業環境を改善できる鋳型製造用のフラン樹脂組成物を提供する。

【構成】一般式(1)〜(4)で表される特定の化合物の1種又は2種以上を含有する鋳型製造用フラン樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)〜(4)で表される化合物の1種又は2種以上を含有する鋳型製造用フラン樹脂組成物。
【化1】



〔式中、R1、R2は、それぞれ、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、Xは水素原子、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を示す。〕
【請求項2】
前記化合物を1〜10重量%含有する請求項1記載の鋳型製造用フラン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の鋳型製造用フラン樹脂組成物を含有する鋳型製造用粘結剤組成物。
【請求項4】
更に下記一般式(5)で表される化合物、及び、水酸基に対してオルト位又はパラ位の電荷密度を高める置換基を有するフェノール誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化促進剤を含有する請求項3記載の鋳型製造用粘結剤組成物。
【化2】



〔式中、X1及びX2は、それぞれ水素原子、CH3又はC25の何れかを表す。〕
【請求項5】
請求項3又は4記載の鋳型製造用粘結剤組成物を用いる鋳型の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型等を製造する際、耐火性粒状材料に添加するために使用するフラン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自硬性鋳型は、珪砂等の耐火性粒状材料に、フルフリルアルコール等の酸硬化性樹脂からなる結合剤とリン酸やベンゼンスルホン酸等の硬化剤を添加混練した後、この混練砂を型に充填し、結合剤を硬化させて製造される。しかし、フルフリルアルコールを主体とする結合剤は、硬化速度、鋳型強度が低くなるという傾向があり、これを改善するために、尿素を共縮合した尿素・ホルマリン変性フラン樹脂が一般的に用いられている(非特許文献1)。
【0003】
更に、酸硬化性樹脂を含む粘結剤組成物の硬化特性を改善するために、種々の方策が提案されている。例えば、特許文献1には、尿素、グリオキサール、ホルムアルデヒドを特定の比率で反応させた組成物とフルフリルアルコールとを併用した鋳物砂用粘結剤が開示されている。また、特許文献2には、酸硬化性化合物とフェノール誘導体と水とを特定比率で含有する鋳物砂用粘結剤組成物が開示されている。また、特許文献3には、酸硬化性樹脂からなる結合剤を主体とする鋳型製造用粘結剤組成物に、特定の硬化促進剤を含有させることが開示されている。また、特許文献4には、フルフリルアルコールを主成分として重縮合して得られる鋳型製造用粘結剤組成物に、特定の硬化促進剤を含有させることが開示されている。
【特許文献1】特公昭51−26122号
【特許文献2】特開昭54−46126号
【特許文献3】特開平6−297072号
【特許文献4】特開平8−57577号
【非特許文献1】「鋳型造型法」、社団法人日本鋳造技術協会、平成8年11月18日、134頁〜135頁、第4版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、自硬性鋳型用の粘結剤として用いられるフラン樹脂は、通常、フルフリルアルコールに、尿素やホルムアルデヒドを共縮合して得られるが、鋳型製造時の作業環境改善の点から、フラン樹脂中のホルムアルデヒド濃度を低減することが望ましい。この目的には、フラン樹脂製造工程中に未反応ホルムアルデヒドを低減することが考えられるが、工程が複雑になり、工業的に適当とは言い難い。また、尿素やレゾルシンなどの、ホルムアルデヒド捕捉剤を配合することも考えられるが、これらの化合物は溶解性や安定性が悪いため、粘結剤に濁りや沈殿が生ずる。
【0005】
本発明の課題は、フルフリルアルコールを主成分として得られるフラン樹脂組成物において、保存安定性を損なうことなく、作業環境を改善できる鋳型製造用のフラン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一般式(1)〜(4)で表される化合物の1種又は2種以上を含有する鋳型製造用フラン樹脂組成物に関する。
【0007】
【化3】


【0008】
〔式中、R1、R2は、それぞれ、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、Xは水素原子、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を示す。〕
【0009】
また、本発明は、上記本発明の鋳型製造用フラン樹脂組成物を含有する鋳型製造用粘結剤組成物、及び、該鋳型製造用粘結剤組成物を用いる鋳型の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、沈殿の生成等の保存安定性を損なうことなく、作業環境を改善できる、鋳型製造用フラン樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る鋳型製造用フラン樹脂組成物は、フルフリルアルコールを主成分として重縮合して得られるものである。例えば、「第4版鋳型造型法」(平成8年11月18日、社団法人日本鋳造技術協会発行)の135頁等に記載されている通り、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類とを主成分として、重縮合して得られるものである。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、グリオキザール、フルフラール等の従来公知のアルデヒド化合物を使用することができる。特に、本発明においては、ホルムアルデヒドを使用するのが好ましい。フルフリルアルコール、尿素、及びアルデヒド類を重縮合させると、各成分の配合割合にもよるが、フルフリルアルコールの縮合物、フルフリルアルコールとアルキロール尿素との重縮合物、尿素とアルデヒド類の縮合物、各縮合物が更に重縮合した重縮合物、各成分の未反応物、水等の混合物が得られる。
【0012】
本発明は、一般式(1)〜(4)で表される化合物をフラン樹脂組成物に含有させることに特徴があり、これらの化合物を含有することにより、フラン樹脂組成物の保存安定性が向上し、また、作業環境(フラン樹脂組成物中のホルムアルデヒドの低減)を改善できる。本発明の効果が発現する理由は定かではないが、本発明の一般式(1)〜(4)で表される化合物が活性メチレン基を有する構造である等によって、フラン樹脂組成物中のホルムアルデヒドの低減に寄与するために本発明の効果が発現するものと考えられる。一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例としては、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジベンジル、グルコール酸エチル、メトキシ酢酸メチルエステル、メトキシ酢酸エチルエステル、アセチルアセトン等が例示される。好ましくはアセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、アセチルアセトンである。
【0013】
本発明のフラン樹脂組成物中の一般式(1)〜(4)で表される化合物の含有量は、1〜10重量%、更に2〜6重量%が好ましい。
【0014】
本発明のフラン樹脂組成物により、これを含有する鋳型製造用粘結剤を提供できる。更に本発明のフラン樹脂組成物と硬化剤とを併用することで、鋳型製造用粘結剤を構成することができる。本発明に係るフラン樹脂組成物を用いて鋳型を製造する場合、この樹脂組成物を硬化させるための硬化剤としては、従来公知の燐酸系化合物やスルホン酸系化合物等の硬化剤を使用することができる。また、粘結剤における硬化剤の比率は、フラン樹脂組成物100重量部に対して10〜60重量部が好ましく、15〜40重量部が好ましい。
【0015】
燐酸系化合物としては、燐酸、縮合燐酸、メチル燐酸やエチル燐酸等の燐酸エステル、燐酸カリウムや燐酸水素カリウム等の燐酸塩等が用いられる。また、スルホン酸系化合物としては、メタンスルホン酸やエタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の芳香族スルホン酸、硫酸等の無機酸等が用いられる。
【0016】
上記の通り、本発明のフラン樹脂組成物は、硬化剤と併用して粘結剤組成物として用いることができるが、下記一般式(5)で表される化合物、〔以下、硬化促進剤(5)という〕及び、水酸基に対してオルト位又はパラ位の電荷密度を高める置換基を有するフェノール誘導体〔以下、硬化促進剤(6)という〕からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化促進剤を更に使用することで、鋳型強度、硬化速度などの硬化特性を損なうことのない鋳型製造用粘結剤組成物が得られる。
【0017】
【化4】



〔式中、X1及びX2は、それぞれ水素原子、CH3又はC25の何れかを表す。〕
【0018】
硬化促進剤(5)としては、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン、2,5−ビスメトキシメチルフラン、2,5−ビスエトキシメチルフラン、2−ヒドロキシメチル−5−メトキシメチルフラン、2−ヒドロキシメチル−5−エトキシメチルフラン、2−メトキシメチル−5−エトキシメチルフランが挙げられる。中でも、2,5−ビスヒドロキシメチルフランを使用するのが好ましい。2,5−ビスヒドロキシメチルフランは、2,5−ビスメトキシメチルフラン又は2,5−ビスエトキシメチルフランに比べて、反応性が高く、フルフリルアルコールを主成分として重縮合されてなるフラン樹脂の硬化反応を促進させるからである。2,5−ビスヒドロキシメチルフランの反応性が高い理由は、水酸基が硬化反応に寄与するからである。硬化促進剤(5)は、樹脂100重量部に対して0.5〜15重量部、更に1〜10重量部、特に2〜5重量部含有されることが、鋳型の初期強度の向上効果と硬化促進剤(5)の粘結剤組成物への溶解性の点から、好ましい。
【0019】
また、硬化促進剤(6)は、フェノールの水酸基に対して、オルト位又はパラ位の電荷密度を高める置換基を有する化合物であり、例えばレゾルシノール、クレゾール、ヒドロキノン、フロログルシノール、メチレンビスフェノール等が挙げられる。なかでも、レゾルシノール、フロログルシノールが好ましい。硬化促進剤(6)は、樹脂100重量部に対して0.2〜10重量部、更に0.5〜5重量部、特に1〜3重量部含有されることが、鋳型の初期強度の向上効果と硬化促進剤(6)の粘結剤組成物への溶解性の点から、好ましい。
【0020】
上記した粘結剤組成物と、硬化剤とを耐火性粒状材料に混練して混練砂(鋳型製造用砂組成物)を得る。耐火性粒状材料としては、石英質を主成分とする珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂等の新砂又は再生砂等の従来公知のものを用いることができる。再生砂としては、通常の機械的磨耗式、或いは焙焼式で得られるものを使用するが、磨耗式で再生されたものの方が収率も高く、経済的に優れ、一般的であり好ましい。
【0021】
また、混練砂(鋳型製造用砂組成物)を得る際に、粘結剤組成物及び硬化剤の他に、得られる鋳型強度をより向上させる目的で、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては、例えばγ−(2−アミノ)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、シランカップリング剤は、予め粘結剤組成物中に含有させておいて使用してもよい。
【0022】
このようにして得られた鋳型製造用砂組成物を用いて、一般的に自硬性鋳型製造法で鋳型を製造することができる。即ち、鋳型製造用砂組成物を所定の型に充填し、配合混練されている鋳型製造用粘結剤組成物を、硬化剤の作用によって硬化させ、鋳型を得ることができる。なお、混練、鋳型の製造、硬化温度等は、特に加熱や冷却の必要はなく、雰囲気温度で行って差し支えない。
【実施例】
【0023】
25℃、50%RHの条件下で、フリーマントル珪砂の新砂100重量部に対し、硬化剤組成物(硫酸/m−キシレン−4−スルホン酸/水=4/26/70)を0.4重量部加え、次いで表1に示した組成のフラン樹脂組成物0.8重量部を添加混合して得られた混練砂をテストピース枠に充填し、直径50mm、高さ50mmの円柱形のテストピースを作成した。JIS Z 2604−1976に記載された方法で、30分および24時間後のテストピースの圧縮強度(MPa)を測定したところ、表1に示すとおりであった。また、鋳物材料FC−25(S/M=3.5)によりステップコーンを造型、鋳込みをしたときの、造型時の臭気(刺激)についての評価結果、並びに、フラン樹脂組成物を35℃で1ヶ月保存(密閉系)した後の外観を目視で観察した結果(安定性)も表1に併せて示す。
【0024】
【表1】


【0025】
表中、硬化剤組成物の重量部は、フリーマントル珪砂(新砂)100重量部に対する比率である。また、フラン樹脂は、フルフリルアルコール50.3重量%、フルフリルアルコール/ホルムアルデヒド重縮合物12.5重量%、尿素/ホルムアルデヒド重縮合物10.2重量%を含有する。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】 【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡

【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦

【識別番号】100091845
【弁理士】
【氏名又は名称】持田 信二

【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌


【公開番号】 特開2008−23529(P2008−23529A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195296(P2006−195296)