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【発明の名称】 金型鋳造法に使用する金型、当該金型を使用した制振部材の製造方法
【発明者】 【氏名】上田 正則

【氏名】諏訪 雅哉

【要約】 【課題】金型鋳造法を利用して制振部材を経済的かつ高品位に製造するのに使用する金型及びそれを使用した製造方法を提供する。

【構成】記録媒体に情報を記録再生するディスク装置の筐体に固定され、前記筐体の振動を低減する制振部材を金型鋳造法により製造するのに使用される金型であって、前記制振部材の外形を規定する断面凹形状の本体と、前記本体の凹部と反対の第1の辺に設けられ、湯道からの溶湯を前記本体内に導入する第1の湯口と、前記第1の辺に垂直な第2の辺と、前記第1の辺に平行で前記第2の辺に垂直な第3の辺との少なくとも一方にのみ設けられ、湯溜りに前記湯を前記本体から導入する第2の湯口とを有することを特徴とする金型を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に情報を記録再生するディスク装置の筐体に固定され、前記筐体の振動を低減する制振部材を金型鋳造法により製造するのに使用される金型であって、
前記制振部材の外形を規定する断面凹形状の本体と、
前記本体の凹部と反対の第1の辺に設けられ、湯道からの溶湯を前記本体内に導入する第1の湯口と、
前記第1の辺に垂直な第2の辺と、前記第1の辺に平行で前記第2の辺に垂直な第3の辺との少なくとも一方にのみ設けられ、湯溜りに前記湯を前記本体から導入する第2の湯口とを有することを特徴とする金型。
【請求項2】
前記第1の湯口は3つ以上の湯口を含み、両側の湯口よりも中央の湯口の方が幅が広いことを特徴とする請求項1記載の金型。
【請求項3】
記録媒体に情報を記録再生するディスク装置の筐体に固定され、前記筐体の振動を低減する制振部材を製造する方法であって、請求項1又は2記載の金型を使用した金型鋳造法を使用することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記金型鋳造法は溶湯として亜鉛合金を使用することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の方法により製造された制振部材を筐体に固定するステップと、
記録媒体及び記録媒体に情報を記録再生するヘッド部を前記筐体に搭載するステップとを有することを特徴とするディスク装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金型鋳造法により形成される部材を製造するために用いられる金型及び当該部材の製造方法に係る。また、本発明は制振部材の製造金型に係り、特に、金型鋳造法を使用した制振部材の製造方法に関する。本発明は、例えば、ハードディスク装置(Hard Disc Drive:HDD)に使用される制振部材の製造に好適である。以下、部材としてHDD用の制振部材について説明するが、他部材についても本発明は適用可能である。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネット等の普及に伴って画像、映像を含む大容量の情報を記録する磁気ディスク装置を安価に提供する需要が増大してきた。高記録密度のディスク装置ではヘッドの高い位置決め精度が必要となり、ディスクを収納する筐体を高精度に作成すると共にその振動や変形を低減する必要がある。また、動作時の騒音の低減や製造時の材料の有効利用などの環境性も重要である。
【0003】
筐体の形状を高精度に作成するために、磁気ディスク装置の筐体をアルミダイカストによって作成している。これは、ヘッドアクチュエータ等との線膨張係数を一致させるために行われている。また、筐体質量を大きくし、騒音及び振動を低減するために、従来から重り(制振部材)を筐体に取り付け、振動エネルギーを減衰させることが行われている(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0004】
アルミニウムは比重が小さい(比重2.7)ことから、比重の高い鉄材(比重7.9)、ステンレス鋼材(比重7,9)、黄銅材(比重8.3)などを制振部材の材料として用いられてきた。
【0005】
黄銅材は比重が大きいことから制振部材として用いるには有利である。しかし、材料単価が高く、また防錆処理も必要である。鉄材は、加工性が黄銅材より劣るものの、材料単価が廉価である。しかし、黄銅材と比較して圧膜の防錆処理が必要となり、この点でコストがかさむ。一方、ステンレス材は表面処理が必要ないが、材料単価が高く、また剪断力が大きく、厚板加工が困難であるなど加工性が劣るという欠点もある。
【0006】
一方、金属材料による制振部材の加工方法としては、プレス加工機によるスタンピング法、ロストワックス(精密鋳造)法、金型鋳造(ダイカストを含む)法などが考えられる。
【0007】
ここで、磁気ディスク装置の筐体内に所要の制振部材を配置する必要があるため、制振部材を実装可能な筐体内の空間は限られている。そのため、制振部材の重量を大きくするためには、制振部材の板厚を比較的厚めにする必要がある。しかし、スタンピング法は、制振部材の大きさ(厚み)による加工機サイズの大型化を招くとともに、ある程度のさん幅を取る必要があることから材料ロスが大きくコストアップを招く。また、同一部材に厚板部と薄板部とが設けられた三次元形状である場合、スタンピングによる部材の形成は非常に難しい。
【0008】
ロストワックス法は、制振部材を製作するたびに型を破壊する自己消失型で工程が複雑で加工時間がかかり、コストアップを招く。前記以外に、鍛造プレス、切削加工、焼結加工、射出成形等が考えられるが、大型加工設備が必要、加工時間がかかる、材料単価が高い、等の一長一短がある。
【0009】
図6に、高比重材料と工法及びコスト比を比較した表を示す。図6では、上記の材料・工法に加えて、金型鋳造法を示している。同図から理解されるように、結局、この中では金型鋳造法(図6には「亜鉛ダイカスト」と示している)が検討した工法中、材料単価と生産性のバランスが良く、コスト比が0.15で最も経済的であると考えられる。
【0010】
金型鋳造法は耐久性のある金型に溶湯を流し込み、鋳物を製造する方法であり、精密な金型に溶湯を充填して、高精度で鋳肌の優れた鋳物を大量生産する方法は特にダイカストと呼ばれる。金型鋳造法は、一般に充填工程と、(湯口)切断工程と、表面処理工程とを有する。充填工程では溶湯を金型内に湯口(ゲート)から充填し、冷却固化する。切断工程では鋳物(又はダイカスト)から湯口を切断する。表面処理工程は塗装やメッキによる防錆処理である。表面処理は,鋳物素地からの微小な塵埃(コンタミ)発生を防ぐ目的がある。
【0011】
従来技術としては、例えば、特許文献1及び2、非特許文献1がある。
【特許文献1】特開2005−313220号公報
【特許文献2】特開2002−124072号公報
【非特許文献1】小林三郎著、「ダイカスト金型の設計・製作」、日刊工業新聞社、1993年12月24日出版、図3.1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
金型鋳造法に向いている高比重金属は黄銅や亜鉛合金である。黄銅は亜鉛合金よりも比重が高いが、融点が高く金型の熱耐久性は一般に低く、量産性に乏しい。そこで、本発明者らは亜鉛合金を利用した金型鋳造法を検討した。
【0013】
この点、特許文献2は「Cu,Zn,ステンレス鋼は、ベース12を構成するアルミニウム合金よりも比重が大きいので、ダンパ42を構成する材料として望ましい。また、金属材料でダンパ42を構成する場合には、鋳造、鍛造等の公知のプロセスにより容易に製造することができる。鋳造、鍛造の場合にはダンパ42を一体として製造することができる。」と開示している(段落番号0019)。従って、特許文献2は、制振部材としてのダンパを亜鉛(Zn)の鋳造で製作する思想を開示している。
【0014】
しかし、実際に亜鉛合金(ZDC2)を使用して金型鋳造法で制振部材を試作すると、溶湯から発生したガス溜りや、注湯時のガス巻き込みによる素地欠陥(鋳肌荒れ)が生じ、その後の表面処理で塗装やメッキの密着不良や剥がれが発生する。表面処理は、亜鉛合金の防錆と共に、鋳物からの微小な塵埃発生を防ぐ目的がある。表面処理後に制振部材はディスク装置の筐体裏面に固定される。その後、筐体はクリーンルームに入れられてディスクやキャリッジなどが搭載される。このために、表面処理の品質不良(鋳肌の露出、密着不良による剥がれ等)はクリーンルームを汚染する可能性もあり、ひいてはディスク装置の製造品質に影響を与える。
【0015】
これに対して、図7に示すように、非特許文献1の図3.1は、(蓋のない)箱状の金型に充填された溶湯からガス溜りを除去するために、湯が鋳口から導入される導入辺を除く金型の全周(従って、この場合は三辺)に湯溜り(オーバーフロー)に接続された湯溜り湯口を設けることを提案している。
【0016】
しかし、制振部材の製造に際して非特許文献1のように湯溜り湯口を金型の全周に設けると材料の無駄が多くなり、金型への湯の充填に時間がかかったり、鋳巣や湯廻り不良が発生したりする。また、両湯口を鋳物から切り離す切断工程において切断負荷が大きくなり、切断装置の大型化とコストアップをもたらす。以上から、湯溜り湯口はガス溜りができやすい箇所に限定的に設けられることが好ましい。ガス溜りがどこにできやすいかは金型内の溶湯の対流に依存する。
【0017】
本発明は、金型鋳造法を利用して制振部材を経済的かつ高品位に製造するのに使用する金型及びそれを使用した製造方法を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一側面としての金型は、記録媒体に情報を記録再生するディスク装置の筐体に固定され、前記筐体の振動を低減する制振部材を金型鋳造法により製造するのに使用される金型であって、前記制振部材の外形を規定する断面凹形状の本体と、前記本体の凹部と反対の第1の辺に設けられ、湯道からの溶湯を前記本体内に導入する第1の湯口と、前記第1の辺に垂直な第2の辺と、前記第1の辺に平行で前記第2の辺に垂直な第3の辺との少なくとも一方にのみ設けられ、湯溜りに前記湯を前記本体から導入する第2の湯口とを有することを特徴とする。本金型は、湯溜りにより本体からガス溜りを除去している。また、本金型は、第2の湯口を本体全周ではなく、ガス溜りが起き易い第2及び/又は第3の辺に限定することによってその後の切断加工を容易にすると共に充填性を高めている。
第2の湯口は第1の辺を半分にする第1の辺に垂直な軸に対してほぼ対称に設けられることが好ましい。
【0019】
前記第1及び第2の湯口の厚さは、例えば、2mm以下である。これにより、その後の切断工程が容易になる。前記第1の湯口は、例えば、3つの湯口を含み、両側の一対の湯口よりも中央の湯口の方が幅が広い。中央の湯口を幅広にすることによって凹部の中央に衝突する溶湯の圧力を弱めて凹部の変形や鋳巣や湯廻り不良の発生を防止すると共に、凹部中央付近と両端部に、ほぼ同じタイミングで溶湯が到達するようにすることで、冷却速度差による、反り等の変形を防いでいる。
【0020】
本発明の別の側面としての方法は、記録媒体に情報を記録再生するディスク装置の筐体に固定され、前記筐体の振動を低減する制振部材を製造する方法であって、上述の金型を使用した金型鋳造法を使用することを特徴とする。かかる製造方法も上述の金型と同様の作用を奏する。前記金型鋳造法は溶湯として、例えば、亜鉛合金を使用する。亜鉛合金(例えば、ZDC2)は融点が低く、金型の熱耐久性を維持することができるからである。前記方法は、前記溶湯の鋳物を表面処理するステップを更に有し、前記鋳肌を研磨するステップを有しなくてもよい。表面処理により防錆及び鋳物素地からの塵埃発生防止を図り、充填ステップにより研磨ステップを省略できるので経済性を維持することができる。また、表面処理の密着不良による剥がれを防止して、その後に導入されるクリーンルームの汚染を防止することができる。ひいては、ディスク装置の製造品質への影響を回避できる。
【0021】
本発明の別の側面としてのディスク装置の製造方法は、上述の制振部材の製造方法により製造された制振部材を筐体に固定するステップと、記録媒体及び記録媒体に情報を記録再生するヘッド部を前記筐体に搭載するステップとを有することを特徴とする。搭載ステップがクリーンルームで行われても制振部材の鋳物素地からの塵埃発生、表面処理の密着不良による剥がれがないので、クリーンルームを汚染することはない。ひいては、ディスク装置の製造品質への影響を回避できる。
【0022】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、金型鋳造法を利用して制振部材を経済的かつ高品位に製造するのに使用する金型及びそれを使用した製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、制振部材(重り)を金型鋳造法(ダイカストを含む)を利用して製造する方法について説明する。まず、図1及び図2を参照して金型鋳造法に使用する金型10について説明する。ここで、図1は、金型10の可動型11の概略平面図であるが、押出ピン(イジェクタピン)は省略している。図2は、金型10の固定型12の概略平面図である。金型10は、例えば、図示しないホットチャンバ鋳造機に取り付けられる。もっとも本発明は鋳造機の種類を限定するものではなく、コールドチャンバ鋳造機など他の鋳造機を使用してもよい。
【0025】
金型10は可動型11と固定型12とを有し、可動型11は固定型12に対して移動する。可動型11は、図1に示すように、本体20と、注湯部30と、湯溜り43、45とを有する。図2(a)は、可動型11の本体20の平面図である。図2(b)は、金型10を注湯部30から見た側面図である。図2(c)は、固定型12の本体20に対応する部分の平面図である。図2(d)は、金型10を辺23から見た側面図である。
【0026】
本実施例は、亜鉛合金(ZDC2)を溶湯に使用する。亜鉛合金は融点が低く、金型10の熱耐久性を維持する上で好ましい。但し、本発明は、金型10が所定の熱耐久性を確保することができれば黄銅を溶湯に使用することを妨げるものではない。黄銅はZDC2よりも比重が高いためにZDC2よりも制振性能が高いからである。なお、黄銅の代わりに亜鉛合金を使用したとしても筐体重量を考慮すれば黄銅製の重りを搭載した筐体重量の95%であり(図6)、その比重差は制振性能に影響を与えない。
ZDC2の組成は表1の通りである。
(表1)
Si Cu Mg Zn Fe Mn Ni Sn Co Ti Pb Cd Be Al
- <0.25 0.02- 残部 <0.10 - - <0.003 - - <0.005 <0.004 - 3.5-
0.06 4.0
可動型11は、固定型12と協働してキャビティMを形成し、キャビティMが製品部である制振部材の外形を規定する。本体20は、形成される制振部材の外形に対応した形状を有しており、断面凹又はU形状を有する。断面凹形状は、例示的に、3.5インチHDD用の重りのためのもので、長さ94mm(図1図示長手方向)、幅21mm(図1図示短手方向)、厚さ10mm(図1に向かって前後方向)の直方体薄板から円の一部(R41mm)を除去した形状を有する。断面凹形状は、図1に示すように、3つの辺22乃至24と、凹部(R部)25とを有する。本体20中、凹部の中央21は凹部25と辺22で挟まれた最も幅が狭い箇所で、本実施例では2mm程度である。辺22は、後述する湯口36a及び36bが設けられた湯の注湯辺である。辺23は辺22に直交する一対の辺である。辺24は辺22に平行で辺23に垂直な辺である。
【0027】
また、本体20には図示しないディスク装置の筐体に固定するための一対のネジ孔26が形成される。ネジ孔26の数は一つでもよい。ネジ孔26には後述するネジ180が挿入される。
【0028】
注湯部30は、鋳口(鋳込み口又はビスケット)32、湯道34、湯口(ゲート)36a及び36bを有する。鋳口32は湯道34に接続され、図1には図示しない溶湯溜部から供給される溶湯を湯道34に導入する。湯道34は、鋳口32からキャビティまでの湯の通路であり、湯口36a及び36bに接続される。
【0029】
一対の湯口36aは図1に示す中央線Cに関して左右対称に形成される。また、湯口36bも図1に示す中央線Cに関して左右対称に形成される。しかし、本発明は、これらの湯口が左右対称に形成されない場合も含むものである。湯口36a及び36bは、金型本体20の辺22に固定型12と可動型11の境界(パーティングライン)に設けられ、その厚さは2mm以下(本実施例では1mm)である。湯口の厚さを小さくすることにより、その後の切断工程が容易になる。
【0030】
本実施例の湯口は3つの湯口を含み、両側の一対の湯口36aよりも中央の湯口36bの方が幅が広い。例えば、各湯口36aは厚さ1mm×長さ10mmの矩形断面を有し、湯口36bは厚さ1mm×長さ32mmの矩形断面を有する。中央の湯口36bを幅広にすることによって凹部の中央21に衝突する溶湯の圧力を弱め、凹部の中央21の変形を防止することができる。
【0031】
また、この結果、中央の湯口36bから出る湯の速度の方が両側の湯口36aから出る湯の速度よりも遅くなる。湯口36aとそれが対向するキャビティの対面との間の距離の方が湯口36bとそれが対向するキャビティの対面との間の距離よりも長い。このため、同じ速度で全ての湯口36a及び36bから湯が注湯されれば湯口36bから導入された湯がキャビティ対面に衝突した後でキャビティ面に沿って広がってキャビティ内に空気を巻き込んで閉じ込めてしまう場合がある。さらに、凹部中央21付近と辺23,辺24付近への溶湯到達時間に差に伴い、冷却速度に差が生じ、反り等の変形が生じる。本実施例のように湯の充填速度を湯口36aと36bとの間で変更することによって、鋳巣や湯廻り不良、反り等の変形の発生を防止することができる。
【0032】
湯溜り43及び45は、先走りの汚れた湯やガス溜りをキャビティから除去する機能を有する。湯口42はキャビティMと湯溜り43とを接続し、湯口44はキャビティMと湯溜り45とを接続する。湯口42及び44は、金型本体20の辺23に固定型と可動型の境界(パーティングライン)に設けられた最小断面積部分である。湯口36a及び36bと同様に、湯口42及び44の厚さは2mm以下(本実施例では1mm)である。湯口の厚さを小さくすることにより、その後の切断工程が容易になる。例えば、湯口42及び44は厚さ1mm×長さ6mmの矩形断面を有する。別の実施例では、湯口42及び44の寸法が異なってもよい。
【0033】
本実施例は、湯溜り43及び45によりキャビティからガス溜りを除去して素地欠陥がない鋳肌を確保している。また、本実施例は、湯口42及び44を、湯口36a及び36bが設けられた辺22を除いた本体20全周(即ち、辺23乃至24及び凹部25)ではなく、辺23及び24に限定している。換言すれば、本実施例では凹部25には湯溜り/湯口を設けていない。なお、湯口42は辺23及び24の少なくとも一方に設ければよい。
【0034】
辺23及び/又は辺24に湯口を限定しているのは、本発明者らは、湯の対流が辺23及び24付近で発生し易く、ガス溜りがその付近で発生し易いことを発見したからである。
【0035】
本実施例は、湯口42及び44を本体20の全周には設けていない。このため、その後の切断加工の切断負荷を減らし、切断装置の小型化と経済性を維持する。また、本実施例は湯口42及び44を凹部25には設けていない。凹部25の中央21を含む一定範囲に湯口を設ければ、湯口36bからの湯の殆どがかかる湯口から逃げてしまい、充填に寄与しないからである。
【0036】
再生材(リターン材)は、新規材料(バージン材)に対して、不純物、スマット(かす)が含まれ、表面処理不良が発生しやすくなるので、できるだけ使用しない方が望ましい。本実施例では、湯溜り43及び45の湯(その後の切断工程で切断された湯)を再利用するが、別の実施例では再利用しないで廃棄する。湯を廃棄する実施例では、本実施例のように、湯溜りを必要最小限な範囲に限定することで湯の有効利用を高めて経済性を維持することができる。
【0037】
湯口36a及び36bが辺22の中央を通り、辺22に垂直な軸Cに関して左右対称に配置されているので、湯口42及び/又は44も軸Cに関して左右対称に配置されることが好ましい。
【0038】
図1は、湯口42が湯溜り43よりも幅が狭く描いているが、同じ幅であってもよい。これは湯口44と湯溜り45にも当てはまる。湯溜り43及び45には、更に図7に示すようにガス抜き溝が接続されていてもよい。
【実施例1】
【0039】
本実施例の金型鋳造法では、充填工程、切断工程、バリ除去工程、表面処理工程を行った。
【0040】
充填工程では、金型10をホットチャンバ鋳造機に取り付けた後で可動型11を固定型12に型締めしてキャビティMを形成した。その後、注湯部30から溶湯をキャビティ内に充填した。溶湯金属が冷却固化した後、可動型11を固定型12から移動(離型)した。次に、可動型11内を移動する押出ピン(イジェクタピン、図示せず)によって鋳物を可動型11から分離した。なお、図1は、この状態の鋳物として把握されてもよい。
【0041】
切断工程では、手折り、機械加工(フライス)、トリミングプレスが考えられる。本実施例の湯口はいずれも切断自体は手折りできるレベルである。しかし、手折りは効率が悪く、切断位置がばらつく、切断箇所の表面が凸凹になり、外観品質、表面処理の品質に影響を与える等の問題がある。このため、本実施例ではトリミングプレス機(20トンクラス)を使用して複数箇所を同時切断した。凹部25の面に湯口を設けると、トリミングプレスで正確なR形状で精度良く切断することは困難であるため、湯口42及び44の配置は加工性を向上させる。
【0042】
バリ除去工程は、比較的廉価なショットブラスト工法で行った。
【0043】
表面処理工程では、塗装、メッキなどの防錆処理が行われる。表面処理は,鋳物からの微小な塵埃発生を防ぐ目的もある。本実施例では、比較的廉価な電解ニッケルメッキ(電気ニッケルメッキ)を採用した。素地欠陥があるとメッキ密着不良、外観品質に影響する。鋳巣があると、メッキ作業中に巣からガスが発生したり、メッキ処理液残留による膨れが発生したりしてメッキ品質が低下する。研磨などの機械加工を行うとチル層(急冷された表層の組織が緻密な層)が除去され、内部の素地欠陥が表面に現れる可能性があるため、コスト削減の目的も兼ねてこれを行わなかった。本実施例では金型に湯口42及び44を設けており、研磨工程を省略しても安定した表面処理が可能な鋳肌を得ることができ、表面処理の加工品質も高かった。
【0044】
本実施例によって得られた制振部材(重り)170を図3に示す。なお、重り170は、図3の形状の一部に突起を有する立体形状を有してもよい。
【0045】
以下、図4及び図5を参照して、重り170の取り付けについて説明する。ここで、図4はHDD100の背面図であり、図5は、HDD100の内部構造の概略平面図である。重り170は、図4に示すように、筐体102の底面にネジ180により固定される。その後、筐体102は図示しないクリーンルームに入れられて図5に示す構成要素が搭載される(HDD100の組み立て)。
【0046】
重り170は、プリント基板160を避けて搭載される必要がある。プリント基板160は、HDDを内蔵する相手方装置との物理的インターフェース、リードライトFPCとの物理的インターフェース、ノイズの低減等から設置場所が予め決まっているので、重り170の場所は、図4に示す筐体102外形の範囲内で、HDD装置を構成する要素部品と干渉せず、プリント基板160と干渉しない部分に限定される。かかる限定された領域に重り170を実装する必要があること、所定の重量を確保する必要があることから、重り170の形状は高精度に加工される必要がある。
【0047】
クリーンルームにおける組み立てにおいては、図5に示す様々な構成要素が搭載される。HDD100は、図5に示すように、筐体102内に、記録媒体としての複数の磁気ディスク104と、スピンドルモータ106と、ヘッドスタックアッセンブリ(Head Stack Assembly:HSA)110を収納する。
【0048】
筐体102は、例えば、アルミダイカストベースから構成され、直方体形状を有し、内部空間を密閉する図示しないカバーが結合される。本実施形態の磁気ディスク104は高い面記録密度、例えば、100Gb/in以上を有する。磁気ディスク104は、その中央に設けられた孔を介してスピンドルモータ106のスピンドルに装着される。
【0049】
スピンドルモータ106は、例えば、15000rpmなどの高速で磁気ディスク104を回転し、例えば、図示しないブラシレスDCモータとそのロータ部分であるスピンドルを有する。HSA110は、磁気ヘッド部120と、サスペンション130と、キャリッジ140と、ベースプレート150とを有する。
【0050】
磁気ヘッド部120は、略直方体に形成されるAl−TiC(アルチック)製のスライダと、スライダの空気流出端に接合されて、読み出し及び書き込み用のヘッドを内蔵するAl(アルミナ)製のヘッド素子内蔵膜とを備える。ヘッドは、図示しない導電コイルパターンで生起される磁界を利用して磁気ディスク104に2値情報を書き込む誘導書き込みヘッド素子(以下、「インダクティブヘッド素子」という。)と、磁気ディスク104から作用する磁界に応じて変化する抵抗に基づき2値情報を読み取る磁気抵抗効果(以下、「MR」という。)ヘッド素子とを有するMRインダクティブ複合ヘッドである。
【0051】
サスペンション130は、磁気ヘッド部120を支持すると共に磁気ヘッド部120に対して磁気ディスク104に抗して弾性力を加える機能を有し、例えばステンレス製のサスペンションである。また、サスペンション130は磁気ヘッド部120にリード線などを介して接続される(図示しない)配線部も支持する。かかるリード線を介して、ヘッドと配線部との間でセンス電流、書き込み情報及び読み出し情報が供給及び出力される。
【0052】
キャリッジ140は、アクチュエータ、断面がほぼE字形状であるためにEブロック、若しくは、アクチュエータ(AC)ブロックとも呼ばれる。キャリッジ140は、磁気ヘッド部120を図5に示す矢印方向に回動する。
【0053】
プリント基板160は、図4に示すように、筐体102の底面にネジ180で固定され、制御系が搭載される。制御系は、例えば、制御部、インターフェース、ハードディスクコントローラ(以下、「HDC」という。)、ライト変調部、リード復調部、センス電流制御部、ヘッドICとを有し、コントロールボードなどとしてHDD100内に具現化される。
【0054】
重り170は、筐体102の振動及び騒音を低減する。騒音及び振動は、(1)ディスク104を駆動するモータ106の回転が筐体102に伝わり、HDD100全体が共振すること、(2)磁気ヘッド部120を駆動するキャリッジ140のシーク動作の反力により、筐体102が微小振動し、HDD100全体が共振すること、に起因する。HDD100全体の共振は残留振動となり、ヘッドの位置決め性能を低下させる。筐体102の振動エネルギーを減衰させること及び共振周波数をずらすことを目的として筐体102の重量を重くすることは有効である。
【0055】
HDD100の動作において、制御部は、スピンドルモータ106を駆動してディスク104を回転させる。ディスク104の回転に伴う空気流をスライダとディスク104との間に巻き込み微小な空気膜を形成し、スライダにはディスク面から浮上する浮力が作用する。一方、サスペンション130はスライダの浮力と対向する方向に弾性押付力をスライダに加えている。かかる浮力と弾性力との釣り合いにより、磁気ヘッド部120とディスク104との間が一定に離間する。上述したように、筐体102の振動や騒音は重り170によって低減される。このため、高精度なヘッド122の位置決めを行うことができる。
【0056】
書き込み時には、制御部は、インターフェースを介して図示しないPCなどの上位装置から得たデータを受信し、インダクティブヘッドを選択し、HDCを介してライト変調部に送信する。これに応答して、ライト変調部はデータを変調した後に当該変調されたデータをヘッドICに送信する。ヘッドICは、かかる変調されたデータを増幅した後でインダクティブヘッドに書き込み電流として供給する。これにより、インダクティブヘッドは目的のトラックにデータを書き込む。
【0057】
読み出し時には、制御部はMRヘッドを選択し、所定のセンス電流を、HDCを介してセンス電流制御部に送信する。これに応答して、センス電流制御部はセンス電流を、ヘッドICを介してMRヘッドに供給する。これにより、MRヘッドは、ディスク104の所望のトラックから所望の情報を読み出す。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施態様を説明してきたが、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではなく、様々な変形及び変更が可能である。例えば、本実施形態はHDDについて説明したが、本発明はその他の種類の磁気ディスク装置(光磁気ディスク装置など)にも適用可能である。
(付記1) 記録媒体に情報を記録再生するディスク装置の筐体に固定され、前記筐体の振動を低減する制振部材を金型鋳造法により製造するのに使用される金型であって、
前記制振部材の外形を規定する断面凹形状の本体と、
前記本体の凹部と反対の第1の辺に設けられ、湯道からの溶湯を前記本体内に導入する第1の湯口と、
前記第1の辺に垂直な第2の辺と、前記第1の辺に平行で前記第2の辺に垂直な第3の辺との少なくとも一方にのみ設けられ、湯溜りに前記湯を前記本体から導入する第2の湯口とを有することを特徴とする金型。(1)
(付記2) 前記第1の湯口は3つ以上の湯口を含み、両側の湯口よりも中央の湯口の方が幅が広いことを特徴とする付記1記載の金型。(2)
(付記3) 記録媒体に情報を記録再生するディスク装置の筐体に固定され、前記筐体の振動を低減する制振部材を製造する方法であって、付記1又は2記載の金型を使用した金型鋳造法を使用することを特徴とする方法。(3)
(付記4) 前記金型鋳造法は溶湯として亜鉛合金を使用することを特徴とする請求項3記載の方法。(4)
(付記5) 付記3又は4記載の方法により製造された制振部材を筐体に固定するステップと、
記録媒体及び記録媒体に情報を記録再生するヘッド部を前記筐体に搭載するステップとを有することを特徴とするディスク装置の製造方法。(5)
(付記6) 金型鋳造による部材の製造に用いられ、前記部材の外形に対応する凹部が形成された金型において、
前記凹部に溶湯を導入する複数の第1の湯口と、
前記凹部を挟んで前記第1の湯口と対向する第1の位置、あるいは前記第1の湯口の延長方向と交わる方向に位置する第2の位置に形成された湯溜りと、
前記湯溜りに溶湯を導入する第2の湯口と、を備えたことを特徴とする金型。
(付記7) 金型鋳造により形成される部材において、
前記部材の外形に対応して形成された凹部と、前記凹部に溶湯を導入する複数の第1の湯口と、前記凹部を挟んで前記第1の湯口と対向する第1の位置あるいは前記第1の湯口の延長方向と交わる方向に位置する第2の位置に形成された湯溜りと、前記湯溜りに溶湯を導入する第2の湯口とを備えた金型を用いて形成されたことを特徴とする、金型鋳造により形成される部材。
(付記8) 円盤状記憶媒体を回転させて情報の記録あるいは読み出しを行う記憶装置において、
前記記憶媒体を駆動する駆動部と、
前記記憶媒体への情報の書込み、あるいは前記記憶媒体からの情報の読み出しを行うヘッド部と、
前記記憶媒体、前記駆動部及び前記ヘッド部が収納される筐体と、
前記筐体に収納される制振部材とを有し、
前記制振部材は、前記部材の外形に対応して形成された凹部と、前記凹部に溶湯を導入する複数の第1の湯口と、前記凹部を挟んで前記第1の湯口と対向する第1の位置、あるいは前記第1の湯口の延長方向と交わる方向である第2の位置に形成された湯溜りと、前記湯溜りに溶湯を導入する第2の湯口とを備えた金型を用いた金属鋳造によって形成されたことを特徴とする、記憶装置。
(付記9) 前記記憶装置において、前記制振部材は亜鉛合金により形成されていることを特徴とする、付記8に記載の記憶装置。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一側面としての金型の固定型の概略平面図である。
【図2】図1に示す金型の可動型の概略平面図である。
【図3】本発明の制振部材(重り)の斜視図である。
【図4】本発明の一実施例としてのハードディスク装置の概略背面図である。
【図5】本発明の一実施例としてのハードディスク装置の内部構造を示す平面図である。
【図6】高比重材料と工法及びコスト比を比較した表である。
【図7】従来の湯溜り湯口の配置を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 金型
11 可動型
12 固定型
22−24 辺
25 凹部
36a、36b 湯口
42、44 湯口
43、45 湯溜り
100 磁気ディスク装置(HDD)
102 筐体
170 制振部材(重り)
【出願人】 【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔


【公開番号】 特開2008−807(P2008−807A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−175443(P2006−175443)