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【発明の名称】 鋳造用ケレン、シリンダブロック及びその鋳造方法
【発明者】 【氏名】斉藤 淳一

【要約】 【課題】鋳型構成部材である中子、又は、シリンダライナー等の鋳物に鋳ぐるまれる鋳物構成部材を支持するとともに、その位置及び姿勢を保持するため鋳造用ケレン、及び該鋳造用ケレンを用いた鋳造方法であって、ケレンの取付作業が簡易であり、ケレンが配置される空間の寸法誤差を吸収することができ、汎用性を備えるものを提案する。

【構成】鋳造用ケレン12を、略平行に複数の襞が形成された金属製の箔で構成する。そして、この鋳造用ケレン12を、シリンダライナー10と冷却水ジャケット中子11との間に介装して一体的に組み付けたのち、これらをシリンダブロック主鋳型内に配置して、該鋳型に溶湯を注湯してシリンダブロックを鋳造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型に組み込まれる中子又は鋳物構成部材の位置及び姿勢を保持するために使用される鋳造用ケレンであって、
複数の襞が略平行に形成された金属製の箔で成ることを特徴とする
鋳造用ケレン。
【請求項2】
前記鋳造用ケレンは、
前記鋳型に組み込まれる中子又は鋳物構成部材の略全周にわたって配置できる大きさを有することを特徴とする、
請求項1に記載の鋳造用ケレン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鋳造用ケレンを、シリンダライナーと冷却水ジャケット中子との間に介装して一体的に組み付けたのち、これらをシリンダブロック鋳型内に配置し、該鋳型に溶湯を注湯してシリンダブロックを得ることを特徴とする
シリンダブロックの鋳造方法。
【請求項4】
前記鋳造用ケレンは、前記シリンダライナーと前記冷却水ジャケット中子との両者間の略全周にわたって配置されていることを特徴とする、
請求項3に記載のシリンダブロックの鋳造方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の鋳造用ケレンを、シリンダボアと冷却水ジャケットとの間に鋳ぐるんだことを特徴とする
シリンダブロック。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造に使用される鋳型において、鋳型に組み込まれる中子や、鋳型に組み込まれるシリンダライナー等の鋳物構成部材の位置や姿勢を保持するための鋳造用ケレン、及び鋳造用ケレンを使用する鋳造方法及び鋳物に関する。
【背景技術】
【0002】
中空部を有する鋳物を鋳造する際に、該中空部を形成する中子が鋳型に組み込まれる。そして、注湯に伴う中子の移動や変形或いは破損を防止するために中子を支持する手段として、鋳造用ケレンが使用される。一般に、ケレンには、鋳造時に消失する素材で形成されるものと、鋳物に鋳ぐるまれるものとがある。
【0003】
例えば、複数のシリンダボアを狭いピッチで連設したサイアミーズ形シリンダブロックを鋳造するにあたって、シリンダボアの周囲に連続する冷却水ジャケットを形成するために、該シリンダボアを形作るシリンダボア中子の周囲に、冷却水ジャケット中子がケレンを介して配置される。
【0004】
シリンダブロックの鋳造工程は、例えば、以下の通りである。
図9に示すように、先ず、冷却水ジャケット中子11の内側に、一般的な形状の鋳造用ケレン31・31・・・を介して、シリンダボアを形作るためのシリンダ中子15・15・・・が所定位置に位置決めされて支持される。なお、シリンダライナーをシリンダブロックに鋳ぐるむ場合には、前記シリンダ中子15に代えてシリンダライナーが用いられる。
続いて、図10に示すように、ケレン31・31・・・を介して一体的に組まれたシリンダ中子15・15・・・及び冷却水ジャケット中子11が、シリンダブロック主鋳型13に組み込まれる。
そして、シリンダブロック主鋳型13に溶湯を注湯し、該溶湯が凝固したのち、鋳物を離型すると、例えば、図8に示すように、シリンダボア22・22・・・が形成され、該シリンダボア22・22・・・の周囲に冷却水ジャケット21が形成されたシリンダブロック20が得られる。
【0005】
なお、上記シリンダブロックの鋳造に際して使用される『一般的な形状の鋳造用ケレン』は、例えば、トンボ型、鼓型、コ字型、或いは箱型のものであり、図9に示すように、シリンダ中子15と冷却水ジャケット中子11との間に、一個ずつ取り付けなければならず、ケレンの取付作業は手間のかかる作業となっていた。
【0006】
そこで、特許文献1では、ケレンの取付作業を簡易とするとともに、該ケレンによる位置決めを容易とする技術が公開されている。特許文献1では、軸状の中子を支持して位置決めする鋳造用ケレンであって、一端が中子の外周面に当接するとともに、他端が鋳型に当接し、中子の径方向に放射状に伸びる少なくとも3つのアームと、中子と同芯状に形成されるとともに3つのアームの中間具を相互に連結する環状のブリッジとから構成されるものが開示されている。
しかし、上記特許文献1に記載の技術では、ケレンの取付作業は簡易となるものの、ケレンにより支持される中子の形状の自由度が低く、中子の種類に応じてケレンを成形する必要があるという課題が残る。
【0007】
また、特許文献2では、サイアミーズ形シリンダブロックを鋳造するにあたって、シリンダボア同士の隔壁の内部に、冷却水ジャケット中子を支持する金属板状のケレンを鋳込む技術が開示されている。このケレンの端部は冷却水ジャケットまで延在するように配置され、シリンダブロックがエンジンに組み込まれた状態においては、該ケレンにてシリンダボア間の冷却が行われる。
上記特許文献2に記載の技術では、冷却水ジャケット中子の形状に関する自由度は有るものの、シリンダボアの位置精度を高めるためにケレンの取付位置精度が要求され、また、シリンダボア同士の隔壁以外の部分には、冷却水ジャケット中子とシリンダボア中子との間に、例えば、トンボ型、鼓型、コ字型、或いは箱型の一般的形状のケレンを配設する必要があり、ケレンの取付作業は煩雑となっている。
【0008】
さらに、一般的な形状の鋳造用ケレンは殆ど弾性変形しないものである。一方、中子はワークの鋳造後に除去する必要があるので、粘結剤を配合した砂や熱により分解する樹脂などを用いて製造される。従って、冷却水ジャケット中子と、シリンダライナー又はシリンダボア中子とを一体的に組み付ける際に、それぞれに寸法誤差が生じた場合に、この寸法のばらつきをケレンが十分に吸収することができず、ケレンと比較して強度の低い中子に変形や割れが生ずることがある。
【特許文献1】特開平4−288945号公報
【特許文献2】特開2001−59450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記背景技術に鑑み、本発明では、鋳造に使用される鋳型において、鋳型に組み込まれる中子や、鋳型に組み込まれるシリンダライナー等の鋳物構成部材の位置や姿勢を保持するための鋳造用ケレン及び該鋳造用ケレンを用いた鋳造方法及び鋳物であって、ケレンの取付作業が簡易であり、ケレンが配置される空間の寸法誤差を吸収することができ、汎用性を備えるものを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、鋳型に組み込まれる中子又は鋳物構成部材の位置及び姿勢を保持するために使用される鋳造用ケレンであって、複数の襞が略平行に形成された金属製の箔で成るものである。
【0012】
請求項2においては、前記鋳造用ケレンは、前記鋳型に組み込まれる中子又は鋳物構成部材の略全周にわたって配置できる大きさを有するものである。
【0013】
請求項3においては、請求項1又は請求項2に記載の鋳造用ケレンを、シリンダライナーと冷却水ジャケット中子との間に介装して一体的に組み付けたのち、これらをシリンダブロック鋳型内に配置し、該鋳型に溶湯を注湯してシリンダブロックを得る、シリンダブロックの鋳造方法である。
【0014】
請求項4においては、前記鋳造用ケレンは、前記シリンダライナーと前記冷却水ジャケット中子との両者間の略全周にわたって配置されているものである。
【0015】
請求項5においては、請求項1又は請求項2に記載の鋳造用ケレンを、シリンダライナーと冷却水ジャケットとの間に鋳ぐるんだことを特徴とする、シリンダブロックである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
本発明によれば、鋳型構成部材である中子、又は、シリンダライナー等の鋳物に鋳ぐるまれる鋳物構成部材を支持するとともに、その位置及び姿勢を保持するために、箔で成る面状体のケレンを巻き付ける作業でケレンを取り付けることができるので、ケレンの取付作業が簡易となる。また、ケレンが面外方向(厚み方向)に伸縮することによって、ケレンが配置される空間の寸法誤差を吸収することができる。さらに、ケレンは、面内方向(長さ方向)及び面外方向(厚み方向)に伸縮して、配置される空間の形状に応じて変形することができるので、該ケレンは汎用性を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るケレンの構造を示す図、図2はケレンの形態のバリエーションを説明する図、図3は別形態のケレンの構造を示す図である。図4は別形態のケレンの構造を示す図である。
図5はケレンを介してシリンダライナーを冷却水ジャケット中子に保持させた様子を示す図、図6は図5におけるY−Y矢視端面断面図、図7は冷却水ジャケット中子をシリンダブロック主鋳型に据え付けた様子を示す図、図8はシリンダブロックの断面図である。
図9は従来のケレンを介してシリンダライナーを冷却水ジャケット中子に保持させた様子を示す図、図10は従来の冷却水ジャケット中子をシリンダブロック主鋳型に据え付けた様子を示す図である。
【0019】
本発明の実施例に係る鋳造用ケレン12は、シリンダブロックを鋳造する鋳型において、シリンダライナー10を冷却水ジャケット中子11の中に挿入された状態に支持するとともに、該シリンダライナー10の位置及び姿勢を保持するためのものである。
但し、本発明に係る鋳造用ケレン12の用途は、上記に限定されるものではなく、広く鋳型において、鋳型に組み込まれる鋳型構成部材である中子、及び、鋳型に組み込まれて鋳物に鋳ぐるまれるシリンダライナー等の鋳物構成部材の位置や姿勢を保持するために使用することができる。
以下、鋳型に組み込まれる鋳型構成部材である中子、及び、鋳型に組み込まれて鋳物に鋳ぐるまれるシリンダライナー等の鋳物構成部材を、『中子等』と記載する。
【0020】
先ず、本発明の実施例に係る鋳造用ケレン12について説明する。
図1に示すように、ケレン12は、複数の襞が略平行に形成された金属製の箔で成る。つまり、ケレン12は、金属製の箔が波面状(蛇腹状)に成形された面状体(シート状体)である。前記ケレン12の襞は、略平行な山と谷とが交互に繰り返されるように、ケレン12を構成する金属製の箔を折り畳むことにて形成される。
【0021】
前記ケレン12は弾性変形が可能である。詳細には、一方の面内方向W(図1)と、面外方向D(図1)とに伸縮が可能であり、さらに、一側の面を前記一方の面内方向Wに伸長させ他側の面を前記一方の面内方向Wに短縮させることによって、前記一方の面内方向Wを接線方向として曲げが可能である。
なお、前記『面内方向』とは、ケレン12の構成面に略平行な方向であり、前記『一方の面内方向W』とは、面内方向のうちケレン12の襞を形成する山又は谷と略直交する一方の長さ方向とする。また、前記『面外方向』とは、ケレン12の厚み方向であって、前記面内方向と略直交する方向とする。
【0022】
図2(a)に示すように、前記ケレン12の断面は、曲折部(襞を形成する山や谷)が丸みを帯びた波線形状である。このケレン12の形状により、鋳型や中子等とケレン12とは曲面で接することとなり、鋳型や中子等の損傷を防止するとともに、ケレン12の成形を簡易とすることができる。本実施例の場合、シリンダライナー10又は冷却水ジャケット中子11とケレン12とは曲面で接し、シリンダライナー10又は冷却水ジャケット中子11の損傷を防止することができる。
【0023】
但し、ケレン12の形状は上記に限定されるものではなく、例えば、図2(b)に示すように、曲折部が角張った断面ギザギザ線状(連続山形線状)のものとしたり、図2(c)に示すように、曲折部が更に丸みを帯びたうねり波線形状のものとしたりすることができる。
つまり、ケレン12は複数の襞が略平行に形成された形状のものであれば、一方の面内方向W(図1)と面外方向D(図1)とに伸縮することができ、前記一方の面内方向Wを接線方向として曲げることができるので、ケレン12に形成される襞の詳細な形状は問わない。
また、前記ケレン12は、図1に示すように山と山(又は谷と谷)とのピッチPw(図2(a))を略一定として連続的に襞を形成したものに限定されず、例えば、図3に示すように、断続的に襞を形成したものとすることもできる。
更に、前記ケレン12は、図1に示すように四周に端を有する面状体に限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、無端の環状体とすることもできる。
【0024】
また、前記ケレン12に形成される山と谷とのピッチPd(図2(a))、及び、山と山(又は谷と谷)とのピッチPw(図2(a))は、当該ケレン12が配置される中子や空間の形状に応じて、適当に変化させることが望ましい。
但し、これらのピッチPd・Pwが小さすぎると溶湯が回らない箇所が生じる虞があるので、溶湯の流れを阻害しない程度のピッチの大きさを設定することが望ましい。
【0025】
前記ケレン12を構成する金属製の箔は、材料に応じてその厚みを0.1〜0.3mmとすることが好適である。
箔の厚みが薄すぎると、ケレン12にて中子等の重量を支持することができず、所定位置に中子等を保持することが困難となる。本実施例においては、ケレン12にてシリンダライナー10の重量を支持することができず、冷却水ジャケット中子11の略中央にシリンダライナー10を保持することが困難となる。
また、箔の厚みが厚すぎると、該ケレン12の強度が過度に高くなり、鋳型や中子等により形成されるケレン12が配置される空間の寸法のバラツキ吸収するようなケレン12の弾性変形(伸縮や曲げ)が困難となる。本実施例においては、冷却水ジャケット中子11及びシリンダライナー10の寸法のバラツキを吸収するようなケレン12の弾性変形が困難となる。
【0026】
また、前記ケレン12を構成する金属材料は、鋳造の際に該ケレン12を鋳ぐるむ材料(以下、『鋳造する材料』と記載する)と同種類の材料であることが、鋳物のリサイクルを簡易とするために好適である。
但し、ケレン12を構成する材料は、上記に限定されるものではなく、鋳型にて鋳造する材料の融点以上の融点を有し、鋳造時に溶けず、且つ、鋳造する材料の強度以上の強度を有する材料であればよい。これらの条件を満たす材料であれば、ケレン12は鋳造時に中子等の位置及び姿勢を保持することができるからである。
【0027】
例えば、アルミダイカスト法でアルミニウム合金の鋳物を鋳造する場合、ケレン12は純アルミニウム或いはアルミニウム合金で成るアルミニウム箔を成形したものを採用することが好適である。但し、この場合、鉄系材料の箔を成形して成るケレン12を採用しても構わない。
また、例えば、マグネシウムダイカスト法でマグネシウム合金の鋳物を鋳造する場合は、マグネシウム箔は発火するおそれがあるため、ケレン12はアルミニウム箔を成形したものを採用する。なお、マグネシウムダイカスト法で使用されるマグネシウム材は合金元素としてアルミニウムが添加されているので、鋳造品にケレンに起因するアルミニウムが混入してもリサイクル方法の変更などは不要となる。
【0028】
続いて、上記構成のケレン12を用いた鋳造方法の一例として、ケレン12を用いたシリンダブロック20の鋳造方法について説明する。但し、ケレン12を用いた鋳造方法の適用範囲は下記に限定されるものではなく、中子等を使用する鋳造方法に広く採用することができ、この場合、鋳型に据え付けられる中子等を支持して位置決めするためにケレン12が用いられる。
【0029】
先ず、図5及び図6に示すように、シリンダライナー10と冷却水ジャケット中子11との両者間の略全周にわたって配置できる大きさを有するケレン12を、シリンダライナー10の外周全周にわたってケレン12を巻き付ける。逆に、ケレン12を円筒状にして該円筒にシリンダライナー10を挿入しても構わない。
なお、本実施例ではシリンダライナー10をシリンダブロックに鋳ぐるむが、シリンダライナーをシリンダブロックに鋳ぐるまない場合には、前記シリンダライナー10に代えて、シリンダボアを形作るシリンダボア中子を使用する。
【0030】
上述のケレン12の取付作業では、1つのシリンダライナー10に対して、1つのケレン12を巻き付ければ足りるので、従来のように一般的な形状の鋳物用ケレンを1つ1つ取り付ける作業と比較して、作業が簡易である。但し、ケレン12は、シリンダライナー10の外周に部分的に配置しても、また、1つのシリンダライナー10の外周に複数のケレン12を配置しても、ケレンとしての機能を発揮することができれば構わない。
【0031】
シリンダライナー10に巻き付けられるケレン12は、該ケレン12に襞を形成する谷又は山と、シリンダライナー10の軸方向とが略平行となるように配置される。つまり、ケレン12の伸縮する一方の面内方向W(図1)がシリンダライナー10の軸方向と略直交するように配置される。これにより、ケレン12は、シリンダライナー10の外周形状に沿って変形し、該シリンダライナー10に外周に沿って巻回されることとなる。
【0032】
前記ケレン12は複数の襞を備えており、引っ張ったり押し縮めたりして襞の山と山(又は谷と谷)とのピッチPwを変化させることにて、該ケレン12を一方の面内方向W(図1)に伸縮(弾性変形)させることができる。これに加え、前記ケレン12は、一側の面を前記一方の面内方向W(図1)に伸長させ他側の面を前記一方の面内方向Wに短縮させることによって、前記一方の面内方向Wを接線方向として曲げることができる。これにより、ケレン12は、シリンダライナー10の外周のように円形状のみならず、波形状、クランク状など、あらゆる形状に追従することができる。
従って、中子の形状に応じて個別にケレン12を設計する必要が無く、また、同形状のケレンを多様な形状の中子を保持するために使用することができ、ケレン12に汎用性を備えることができる。
【0033】
次に、外周にケレン12が巻回されたシリンダライナー10を、冷却水ジャケット中子11の所定位置に挿入する。
なお、冷却水ジャケット中子11の内周に沿わせてケレン12を配置したうえで、シリンダライナー10を該冷却水ジャケット中子11に挿入しても構わない。
【0034】
このとき、シリンダライナー10と冷却水ジャケット中子11とに介装されたケレン12は、面方向の圧を受けて襞の山と谷とのピッチPdが変化し、厚み方向である面外方向D(図1)に弾性変形(伸縮)する。これにより、ケレン12にて、シリンダライナー10の外周面と冷却水ジャケット中子11の内周面とを押圧する力が、シリンダライナー10とケレン12と冷却水ジャケット中子11との間に間隙を作らない程度の略一定の力となるように自動的に調整される。このようにして、シリンダライナー10及び冷却水ジャケット中子11を損傷せずに、冷却水ジャケット中子11に挿入された状態にシリンダライナー10を支持し、その位置及び姿勢を保持させることができる。さらに、ケレン12が配置される空間の寸法誤差を、該ケレン12が弾性変形することにて吸収することができる。
【0035】
なお、シリンダライナー10と冷却水ジャケット中子11との離間距離に応じて、適する厚み(襞の山と谷とのピッチPdの大きさ)を有するケレン12を採用することが望ましい。つまり、ケレン12の厚みを適宜設定することによって、中子等と該中子等が据え付けられる部材との離間距離の変化に対応することができる。
【0036】
上述のようにケレン12を介装してシリンダライナー10・10・・・と冷却水ジャケット中子11とが一体的に組み付けられると、シリンダライナー10と冷却水ジャケット中子11との両者間の略全周にわたって配置されるケレン12にて、シリンダライナー10と冷却水ジャケット中子11とが適正な位置、つまり、シリンダライナー10を冷却水ジャケット中子11の中央部に保持させることができる。
なお、ケレン12は、シリンダライナー10の略全周にわたって配置できる大きさを有するが、該シリンダライナー10の外周面全体を覆う大きさを有する必要はなく、シリンダライナー10の軸方向のケレン12の大きさ及び配置は、シリンダライナー10と冷却水ジャケット中子11との軸方向長さや位置関係等に応じて適宜調整される。
【0037】
続いて、図7に示すように、ケレン12を介装して一体的に組み付けられたシリンダライナー10・10・・・と冷却水ジャケット中子11とを、シリンダブロック主鋳型13内に配置する。
【0038】
前記シリンダブロック主鋳型13には、中子を配置する中子受け部が形成され、当該中子受け部に冷却水ジャケット中子11が配設されることによって、冷却水ジャケット中子11がシリンダブロック主鋳型13の所定位置に据え付けられる。このとき、冷却水ジャケット中子11の位置及び姿勢を保持するために、通常は巾木が使用されるが、巾木とともにケレンを使用したり、巾木に代えてケレンを使用したりすることもできる。
【0039】
そして、シリンダブロック主鋳型13に溶湯を注湯し、該溶湯が凝固したのち、鋳物を離型する。
以上のようにして、例えば、図6に示すように、シリンダライナー10・10・・・の内周にシリンダボア22・22・・・が形成され、該シリンダボア22・22・・・の周囲に冷却水ジャケット21が形成されたシリンダブロック20が鋳造される。このシリンダブロック20には、シリンダボア22(シリンダライナー10)と冷却水ジャケット21との間に、ケレン12が鋳ぐるまれていることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例に係るケレンの構造を示す図。
【図2】ケレンの形態のバリエーションを説明する図。
【図3】別形態のケレンの構造を示す図。
【図4】別形態のケレンの構造を示す図。
【図5】ケレンを介してシリンダライナーを冷却水ジャケット中子に保持させた様子を示す図。
【図6】図5におけるY−Y矢視端面断面図。
【図7】冷却水ジャケット中子をシリンダブロック主鋳型に据え付けた様子を示す図。
【図8】シリンダブロックの断面図。
【図9】従来のケレンを介してシリンダライナーを冷却水ジャケット中子に保持させた様子を示す図。
【図10】従来の冷却水ジャケット中子をシリンダブロック主鋳型に据え付けた様子を示す図。
【符号の説明】
【0041】
10 シリンダライナー
11 冷却水ジャケット中子
12 鋳造用ケレン
13 シリンダブロック主鋳型
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎


【公開番号】 特開2008−772(P2008−772A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171183(P2006−171183)