トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金

【発明の名称】 鋳型用組成物およびそれを用いた石膏鋳型
【発明者】 【氏名】矢野 雅士

【要約】 【課題】ゴム型製品面における石膏スラリーの流れ不良を解消して、エアー残りの発生を防止するとともに、石膏スラリー凝固後におけるゴム型からの石膏鋳型の離型性を向上して、脱型時における鋳型の欠けや割れ等の不良の発生を防止することで、微細形状の型取り性能およびゴム型からの脱型性能の双方に優れる鋳型用組成物、およびそれを用いた石膏鋳型を提供する。

【構成】発泡石膏および非発泡石膏を基材とし、微細鉱物性粉体を含み、界面活性剤で乳化されたジメチルシリコーンオイル水溶液と、水とが混合されてなる鋳型用組成物である。この鋳型用組成物を用いて成型された石膏鋳型である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡石膏および非発泡石膏を基材とし、微細鉱物性粉体を含み、界面活性剤で乳化されたジメチルシリコーンオイル水溶液と、水とが混合されてなることを特徴とする鋳型用組成物。
【請求項2】
前記微細鉱物性粉体がハイドロシリカ微粉、カオリンクレー微粉、炭酸カルシウム微粉および石英粉からなる群から選択される一種以上である請求項1記載の鋳型用組成物。
【請求項3】
前記水100重量部に対し、前記発泡石膏10〜90重量部、前記非発泡石膏10〜90重量部および前記乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液1.0〜10.0重量部が混合されてなる請求項1または2記載の鋳型用組成物。
【請求項4】
前記乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液が、水100重量部に対し、ジメチルシリコーンオイル10〜50重量部、微細鉱物性粉体1〜10重量部および界面活性剤1〜10重量部を含む1次コロイド水溶液1〜10重量部と、水100重量部とが混合されてなる請求項1〜3のうちいずれか一項記載の鋳型用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の鋳型用組成物を用いて成型されたことを特徴とする石膏鋳型。
【請求項6】
タイヤ加硫用モールドの鋳造に使用される請求項5記載の石膏鋳型。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は鋳型用組成物およびそれを用いた石膏鋳型(以下、単に「組成物」および「鋳型」とも称する)に関し、詳しくは、タイヤ用アルミニウム(AL)合金モールド鋳造において鋳造に使用される石膏鋳型を製造するための鋳型用組成物、およびそれを用いた石膏鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤを製造するに際しては、成形された生タイヤに内側から圧力をかけて、その外表面を加熱された金型の内壁に密着させ、熱と圧力により生ゴムを加硫する加硫用モールド(以下、「タイヤモールド」と称する)が用いられる。このようなタイヤモールドは、一般に、金型の中央にタイヤのトレッドパターンが転写された鋳型を配置して、その内部に溶湯を高温、高圧力にて流し込むことにより鋳造を行う、ダイカスト法により製造される。
【0003】
この方法では、具体的にはまず、製造しようとするタイヤのトレッドパターンを木型(ウッドレジン)にて製造する。次いで、得られたウッドレジンのトレッドパターン上に液状ゴムを流し込み、加熱して加硫、硬化させ、トレッドパターンの型取りを行う。しかる後、型取りした加硫ゴム型上に鋳型配合組成物を流し込み、硬化させて、上記トレッドパターンが転写された鋳型を得る。このようにして作製した鋳型にアルミニウム等の溶湯を流し込むことにより、最終目的物であるタイヤモールドが作製される。
【0004】
かかるタイヤモールドの製造工程において用いられる鋳型としては、その利便性等の観点から、一般に石膏製の崩壊型が用いられている。タイヤモールド鋳造用の石膏鋳型に係る改良技術としては、例えば、特許文献1に、石膏を基材とする無機物鋳型配合組成物において水溶性ポリマーおよび/または水溶性モノマーを配合することにより、強度の高い石膏鋳型を得る技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−948号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、石膏鋳型は一般に、石膏スラリーを、トレッドパターンを型取りしたゴム型に流し込むことにより製造されるが、この場合、型取り面(以下、「製品面」と称する)が濡れ性に劣ることから、製品面にエアー残りが発生しやすく、型取り性能に劣るという問題があった。特に、シリコーンゴム製のゴム型は表面張力が大きいことから、石膏スラリーの流れ込み不良が発生しやすい。これに対し、石膏スラリーをゴム型に流し込む前に、あらかじめゴム型の製品面に石膏スラリーの吹きつけ塗布を実施することも行われているが、エアー残りの問題を十分に解消できるものではなかった。
【0006】
また、石膏鋳型の脱型は、石膏スラリーをゴム型に流し込んだ後、石膏スラリーの水和反応による凝固を経て行われるが、ゴム型と石膏との密着性が高いために、脱型が困難となるという問題も生じていた。これに対しては、ゴム型と石膏鋳型との製品面界面にエアーを注入して脱型を行う手法が用いられているが、この場合、鋳型の脱型割れや欠けが発生しやすいという難点がある。これを防止するためには、ワックス系の離型剤を製品面に塗布することが考えられるが、これは上記エアー残り解消の問題と二律背反的な関係にあり、両立することが困難であった。
【0007】
そこで本発明の目的は、ゴム型製品面における石膏スラリーの流れ不良を解消して、エアー残りの発生を防止するとともに、石膏スラリー凝固後における石膏鋳型のゴム型からの離型性を向上して、脱型時における鋳型の欠けや割れ等の不良の発生を防止することで、微細形状の型取り性能およびゴム型からの脱型性能の双方に優れる鋳型用組成物、およびそれを用いた石膏鋳型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討した結果、従来の石膏スラリーに対し、微細鉱物性粉体を含む乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液を混合することで、乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液のコロイド安定性を確保しつつ、乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液と石膏スラリーとの相溶性を向上して、流動性および離型性に優れた鋳型用組成物を実現することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の鋳型用組成物は、発泡石膏および非発泡石膏を基材とし、微細鉱物性粉体を含み、界面活性剤で乳化されたジメチルシリコーンオイル水溶液と、水とが混合されてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、前記微細鉱物性粉体としては、ハイドロシリカ微粉、カオリンクレー微粉、炭酸カルシウム微粉および石英粉からなる群から選択される一種以上を好適に用いることができる。また、本発明の組成物は、好適には、前記水100重量部に対し、前記発泡石膏10〜90重量部、前記非発泡石膏10〜90重量部および前記乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液1.0〜10.0重量部が混合されてなり、前記乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液は、好適には、水100重量部に対し、ジメチルシリコーンオイル10〜50重量部、微細鉱物性粉体1〜10重量部および界面活性剤1〜10重量部を含む1次コロイド水溶液1〜10重量部と、水100重量部とが混合されてなる。
【0011】
また、本発明の石膏鋳型は、上記本発明の鋳型用組成物を用いて成型されたことを特徴とするものである。本発明の鋳型は、タイヤ加硫用モールドの鋳造に好適に使用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことにより、ゴム型製品面における流れ不良を解消してエアー残りの発生を防止するとともに、凝固後における石膏鋳型のゴム型からの離型性を向上して、脱型時における鋳型の欠けや割れ等の不良の発生についても防止することができる鋳型用組成物、およびそれを用いた石膏鋳型を実現することが可能となった。
【0013】
即ち、本発明の組成物は表面張力が著しく小さいため、流動性が良好であり、このため微細な形状を持つゴム型に対する充填性は大きく向上することになる。特に、ゴム型と組成物との界面は表面エネルギーの存在のために気泡が残留しやすいが、本発明の組成物においては、表面張力の低下により、この気泡も消失させることができる。従って、本発明によれば、表面がスムーズで転写精度の高い石膏鋳型を得ることが可能である。また、シリコーン成分は離型剤として作用するため、本発明においては、脱型性も大きく改善されることになる。さらに、シリコーンコロイドの水素結合によって石膏鋳型の強度が向上するとともに鋳造時における化学反応もないため、この観点からも、より形状精度の良好な鋳物が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の鋳型用組成物は、発泡石膏および非発泡石膏を基材とし、微細鉱物性粉体を含み、界面活性剤で乳化されたジメチルシリコーンオイル水溶液と、水とが混合されてなる。
【0015】
石膏と水とからなる従来の石膏スラリー配合に対し、ジメチルシリコーンオイルを界面活性剤で乳化し、微細鉱物性粉体を混合させてなる乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液を混合したことで、乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液のコロイド安定性を確保しつつ石膏スラリーとの相溶性を向上して、結果として得られる鋳型用組成物において、良好な流動性を実現することが可能となった。また、シリコーン成分によりゴム型製品面の界面張力が減少するため、この点からも、組成物の製品面への流れ込み性は著しく向上する。さらに、前述したように、特にシリコーン製のゴム型は表面張力が大きく、流れ込み不良が発生しやすい難点があるが、本発明の組成物に係る微細鉱物性粉体およびジメチルシリコーンオイルコロイドはシリコーンゴムに斥力を発生させない(相性が良い)ので、本発明においては、シリコーンゴム型においても良好な流れ込み性を確実に確保することができる。さらにまた、本発明の組成物においては、シリコーン成分の離型性能により離型性についても確保できるため、凝固後の石膏鋳型の脱型性にも優れている。さらにまた、乳化ジメチルシリコーンオイルコロイド液は石膏スラリーの表面張力を下げるため、通常泡残りする石膏スラリーに対して消泡作用があり、これにより製品面に対して精度の高いなめらかな石膏鋳型を作製することができるメリットもある。
【0016】
本発明の鋳型用組成物の配合比率としては、通常、水100重量部に対し、発泡石膏10〜90重量部、非発泡石膏10〜90重量部および乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液1.0〜10.0重量部が混合されてなるものとすることができ、好ましくは、水50〜60重量部と、発泡石膏50〜60重量部と、非発泡石膏40〜50重量部と、乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液1.0〜10.0重量部とからなるものとする。
【0017】
本発明の鋳型用組成物の基材となる発泡石膏および非発泡石膏は、従来慣用されているもののうちから適宜選択して用いることができ、特に制限されるものではない。
【0018】
また、本発明に係る乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液は、水100重量部に対し、ジメチルシリコーンオイル10〜50重量部、微細鉱物性粉体1.0〜10重量部および界面活性剤1〜10重量部を含む1次コロイド水溶液1〜10重量部と、水100重量部とが混合されてなるものとすることができる。より具体的には、まず、1次コロイド水溶液を、水、ジメチルシリコーンオイル、微細鉱物性粉体および界面活性剤を上記重量比率にて混合して、回転数1000〜5000rpm程度で10〜60分程度撹拌することにより作製する。その後、得られた1次コロイド水溶液と水とを上記重量比でブレンドして、乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液を得ることができる。
【0019】
乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液に用いる微細鉱物性粉体としては、例えば、ハイドロシリカ微粉、シリカ微粉、カオリンクレー微粉、炭酸カルシウム微粉、石英粉等を用いることができ、界面活性剤を用いなくても高せん断撹拌により容易に水に対してコロイドを形成できる点から、ハイドロシリカ微粉が特に好適である。また、界面活性剤としては、例えば、アミノ酸系アニオン界面活性剤(商品名:アミソフト)、グリシン系アニオン界面活性剤(商品名:アミライト)、非イオン系界面活性剤(アルキルポリグルコシド、脂肪酸アルカノールアミド)等を用いることができる。
【0020】
また、本発明の石膏鋳型は、上記本発明の鋳型用組成物を用いて成型されてなるものであり、表面が滑らかで高い転写精度を有するため、これを用いて鋳造を行うことで、より形状精度の良好なタイヤ加硫用モールドを得ることができるものである。本発明の石膏鋳型を製造するに際しては、常法に従い、型取りした加硫ゴム型上に本発明の組成物を流し込んで鋳型を得る手法を用いることができるが、流れ込み不良の発生をなくしてエアー残りをより確実に防止する観点からは、ゴム型の製品面に対する吹きつけ用として本発明の組成物を用いることが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(従来例)
発泡石膏35重量部、非発泡石膏20重量部および水100重量部とからなる混水率55%の石膏スラリーを用いて、従来例の石膏鋳型を製造した。
【0022】
(実施例)
水100重量部に対し、ジメチルシリコーンオイル5重量部、微細鉱物性粉体(ハイドロシリカ微粉)5重量部および界面活性剤(アルキルポリグルコシド)5重量部を、回転数1500rpmで10分間攪拌して1次コロイド水溶液を作製し、得られた1次コロイド水溶液10重量部と水100重量部とを混合することにより、10%濃度の乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液を調製した。この乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液を従来例の石膏スラリーに対し1.0重量%添加してなる鋳型用組成物を用いて、実施例の石膏鋳型を製造した。
【0023】
それぞれ、石膏鋳型100個を製造した際に、エアー残り、鋳型欠けおよび鋳型割れの各不具合が生じた鋳型の個数をカウントして、(不具合の発生率)=(不具合鋳型の個数/全鋳型個数(100個))×100(%)として、各不具合の発生率を算出した。ゴム型としては、チオコールゴム製のものとシリコーンゴム製のものを用いた。この結果を、鋳型脱型性の評価とともに、下記の表1中に示す。なお、鋳型脱型性の評価は、脱型のし易さにつき行い、従来例のチオコールゴム型の場合を基準(脱型やや難)とした。
【0024】
【表1】


【0025】
上記表1に示すように、従来例の石膏スラリーに対し所定の乳化ジメチルシリコーンオイル水溶液を混合した実施例の鋳型用組成物を用いることにより、エアー残りや、脱型時における鋳型の欠け、割れ等の不良を生ずることなく石膏鋳型を製造することが可能であり、脱型性にも優れることが確認できた。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎

【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子


【公開番号】 特開2008−759(P2008−759A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−169918(P2006−169918)