トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 金属リング加工方法及びその装置
【発明者】 【氏名】渡部 良晴

【氏名】嶺岸 誠一

【要約】 【課題】薄板状の無端金属リングを第1のリング加工と第2のリング加工とにより効率よく加工する金属リング加工方法及びその装置を提供する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の無端金属リングを把持するリング投入払出手段によって、未加工の前記金属リングを第1のリング加工手段に投入し、第1のリング加工手段で加工された前記金属リングを第2のリング加工手段に移送し、第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを払い出す金属リング加工方法において、
前記リング投入払出手段が、第1のリング加工手段に対面する位置において、未加工の前記金属リングを把持する一方、第1のリング加工手段で加工された前記金属リングを把持して第1のリング加工手段から払い出す第1のステップと、
前記リング投入払出手段が、既に把持している未加工の前記金属リングを第1のリング加工手段に投入する一方、既に把持している第1のリング加工手段で加工された前記金属リングを待機位置に待機させる第2のステップと、
前記リング投入払出手段が第2のリング加工手段に対面する位置に移動する第3のステップと、
前記リング投入払出手段が、第2のリング加工手段に対面する位置において、第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを把持して第2のリング加工手段から払い出す第4のステップと、
前記リング投入払出手段が、既に把持している第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを払い出す一方、既に把持している第1のリング加工手段で加工された前記金属リングの待機を解除し第2のリング加工手段に投入する第5のステップと、
前記リング投入払出手段が第1のリング加工手段に対面する位置に移動する第6のステップとをこの順に繰り返し、
前記リング投入払出手段が第1のリング加工手段に対面している間に第2のリング加工手段により前記金属リングを加工し、前記リング投入払出手段が第2のリング加工手段に対面している間に第1のリング加工手段により前記金属リングを加工することを特徴とする金属リング加工方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属リング加工方法において、
第1のリング加工手段は、相対的に離間する方向に変位可能な第1の駆動ローラ及び第1の従動ローラに前記金属リングを掛け回し、第1の矯正ローラを第1の駆動ローラと第1の従動ローラとの相対的な変位方向と交差する方向に変位させて第1の矯正ローラで前記金属リングを延引することにより、前記金属リングの周長を補正するとともに該金属リングの外周面に幅方向の断面視で中央部が外方に向かって凸となる円弧形状を付与し、
第2のリング加工手段は、相対的に離間する方向に変位可能な第2の駆動ローラ及び第2の従動ローラに前記金属リングを掛け回し、第2の矯正ローラを第2の駆動ローラと第2の従動ローラとの相対的な変位方向と交差する方向に変位させて第2の矯正ローラで前記金属リングを延引することにより、前記金属リングの残留応力を補正することを特徴とする金属リング加工方法。
【請求項3】
未加工の薄板状の無端金属リングを載置する未加工リング載置部と、
前記金属リングを加工する第1のリング加工手段及び第2のリング加工手段と、
加工済みの前記金属リングを載置する加工済リング載置部と、
前記未加工リング載置部に載置された前記金属リングを第1のリング加工手段に投入し、第1のリング加工手段で加工された前記金属リングを第2のリング加工手段に移送し、第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを払い出して加工済リング載置部に載置するリング投入払出手段と、
前記リング投入払出手段を第1のリング加工手段及び第2のリング加工手段の間で移動させる移動手段とを備える金属リング加工装置であって、
前記リング投入払出手段は、先端に進退自在に設けられた爪部材で前記金属リングの内外側面を挟持することにより該金属リングを把持する一組の第1、第2のアーム部材を備え、
前記リング投入払出手段が第1のリング加工手段に対面する位置において、第1のアーム部材を前記未加工リング載置部に指向させるとともに、第2のアーム部材を第1のリング加工手段に指向させ、続いて、第1のアーム部材により前記未加工リング載置部に載置された未加工の前記金属リングを把持するとともに、第2のアーム部材により第1のリング加工手段で加工された前記金属リングを把持して第1のリング加工手段から払い出す第1のステップと、
第1のアーム部材を第1のリング加工手段に指向させるとともに、第2のアーム部材を待機位置に待機させ、続いて、第1のアーム部材により把持された未加工の前記金属リングを第1のリング加工手段に投入する第2のステップと、
前記移動手段により前記リング投入払出手段を第2のリング加工手段に対面させる位置に移動させる第3のステップと、
前記リング投入払出手段が第2のリング加工手段に対面する位置において、第1のアーム部材を第2のリング加工手段に指向させ、続いて、第1のアーム部材により第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを把持して第2のリング加工手段から払い出す第4のステップと、
第1のアーム部材を前記加工済リング載置部に指向させるとともに、第2のアーム部材を第2のリング加工手段に指向させ、続いて、第1のアーム部材により把持された第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを前記加工済リング載置部に載置するとともに、第2のアーム部材により把持された第1のリング加工手段で加工された前記金属リングの待機を解除し第2のリング加工手段に投入する第5のステップと、
前記移動手段により前記リング投入払出手段を第1のリング加工手段に対面させる位置に移動させる第6のステップとをこの順に繰り返し、
前記リング投入払出手段が第1のリング加工手段に対面している間に第2のリング加工手段により前記金属リングを加工し、前記リング投入払出手段が第2のリング加工手段に対面している間に第1のリング加工手段により前記金属リングを加工することを特徴とする金属リング加工装置。
【請求項4】
請求項3記載の金属リング加工装置において、
前記移動手段は、第1のリング加工手段の上方から第2のリング加工手段の上方に延在する案内部材と、前記案内部材に沿って摺動自在に設けられた摺動部材とからなり、
前記リング投入払出手段は、前記摺動部材に吊設された吊設部材を備え、
第1のアーム部材及び第2のアーム部材は、互いに直交し、前記吊設部材に直交状態を保持したまま回動自在に軸支されることを特徴とする金属リング加工装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状の無端金属リングを加工する金属リング加工方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、無段変速機に採用される動力伝達用の無端金属ベルトには、環状に積層配列された複数のエレメントを一体に結束するために、複数の金属リングを積層してなる積層リングが用いられる。
【0003】
この種の積層リングは、次のようにして製造される。まず、マルエージング鋼等の超強力鋼の薄板の端部同士を溶接してリング状のドラムを形成した後、該ドラムを所定幅に裁断し、圧延することにより所定の周長の金属リングとする。所定の周長に圧延された金属リングは、溶体化処理を施した後、周長補正処理を施すことにより正確な周長に補正され、さらに時効処理及び窒化処理を施すことにより硬度が向上される。次に、少しずつ周長の異なる複数の金属リングを相互に積層することにより積層リングが形成される。従って、前記周長補正処理は、前記複数の金属リングを積層して前記無端金属ベルトを形成するために、極めて重要である。
【0004】
前記周長補正処理は、例えば下記特許文献1に記載された周長補正機によって行われる。この周長補正機は、相対的に離間する方向に変位可能な駆動ローラ及び従動ローラと、該駆動ローラ及び該従動ローラの相対的な変位方向と直交する方向に変位可能な矯正ローラとを備え、金属リングを周長補正機に投入したり周長補正機から払い出したりするためのリング投入払出手段が具備されている。駆動ローラ及び従動ローラに金属リングを掛け回し、駆動ローラ及び従動ローラを離間させて金属リングを緊張した状態にし、さらに金属リングを延引する方向に矯正ローラを変位させて金属リングを延伸することにより、金属リングの周長を補正する。
【0005】
ところで、前記金属リングは、相互に積層されたときに積層状態の保持を容易にするために、外周面が幅方向の断面視で中央部が外方に向かって凸となる円弧形状であることが望ましい。
【0006】
金属リングを周長補正するとともに上記円弧形状を付与するものとして、例えば下記特許文献2に記載された周長補正機が知られている。この周長補正機は、矯正ローラの外周面が幅方向の断面視で中央部が外方に向かって凸となる円弧形状となっている。矯正ローラを変位させて金属リングを延伸することにより、金属リングの周長が補正されるとともに、金属リングに矯正ローラの外周面形状が転写されて上記円弧形状が付与される。
【0007】
しかし、上記周長補正機により周長が補正され円弧形状が付与された金属リングには、適正値よりも大きな残留応力が生じることがある。そこで、この残留応力を適正値に補正するために、まず、第1の周長補正機で金属リングを周長補正するとともに円弧形状を付与し、続いて、第2の周長補正機で該金属リングの残留応力を補正することが考えられる。
【0008】
しかしながら、円弧形状付与を含む周長補正を行う第1の周長補正機と残留応力補正を行う第2の周長補正機とを並設させる場合には、各周長補正機にリング投入払出手段が必要であるので、周長補正機が1台の場合と比較して大きな設置スペースが必要となるという問題がある。また、各周長補正機に具備されたリング投入払出手段は、金属リングを各周長補正機に投入してから各該金属リングを該周長補正機から払い出すまでの間、円弧形状を含む周長補正又は残留応力補正が完了するのを待つことになるので、効率よく加工することができないという問題がある。
【特許文献1】特開平11−290971号公報
【特許文献2】国際公開WO2002/038302号のパンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、薄板状の無端金属リングを第1のリング加工と第2のリング加工とにより効率よく加工する金属リング加工方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の金属リング加工方法は、薄板状の無端金属リングを把持するリング投入払出手段によって、未加工の前記金属リングを第1のリング加工手段に投入し、第1のリング加工手段で加工された前記金属リングを第2のリング加工手段に移送し、第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを払い出す方法であり、次の特徴を有する。本発明の金属リング加工方法は、前記リング投入払出手段が、第1のリング加工手段に対面する位置において、未加工の前記金属リングを把持する一方、第1のリング加工手段で加工された前記金属リングを把持して第1のリング加工手段から払い出す第1のステップと、前記リング投入払出手段が、既に把持している未加工の前記金属リングを第1のリング加工手段に投入する一方、既に把持している第1のリング加工手段で加工された前記金属リングを待機位置に待機させる第2のステップと、前記リング投入払出手段が第2のリング加工手段に対面する位置に移動する第3のステップと、前記リング投入払出手段が、第2のリング加工手段に対面する位置において、第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを把持して第2のリング加工手段から払い出す第4のステップと、前記リング投入払出手段が、既に把持している第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを払い出す一方、既に把持している第1のリング加工手段で加工された前記金属リングの待機を解除し第2のリング加工手段に投入する第5のステップと、前記リング投入払出手段が第1のリング加工手段に対面する位置に移動する第6のステップとを備える。このステップを順に繰り返し、前記リング投入払出手段が第1のリング加工手段に対面している間に第2のリング加工手段により前記金属リングを加工し、前記リング投入払出手段が第2のリング加工手段に対面している間に第1のリング加工手段により前記金属リングを加工することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1ステップと第5のステップとのそれぞれにおいて、一つのステップの中で、一の前記金属リング及び他の前記金属リングの把持、投入、又は払い出しのいずれかを並行して行うので、効率が良い。
【0012】
また、前記リング投入払出手段による一方の前記リング加工手段への一の前記金属リングの投入払い出しと、他方の前記リング加工手段による他の前記金属リングの加工とを並行して行うので、効率が良い。
【0013】
したがって、全体として、薄板状の無端金属リングを第1のリング加工と第2のリング加工とにより効率よく加工することができる。
【0014】
また、本発明においては、第1のリング加工手段は、相対的に離間する方向に変位可能な第1の駆動ローラ及び第1の従動ローラに前記金属リングを掛け回し、第1の矯正ローラを第1の駆動ローラと第1の従動ローラとの相対的な変位方向と交差する方向に変位させて第1の矯正ローラで前記金属リングを延引することにより、前記金属リングの周長を補正するとともに該金属リングの外周面に幅方向の断面視で中央部が外方に向かって凸となる円弧形状を付与し、第2のリング加工手段は、相対的に離間する方向に変位可能な第2の駆動ローラ及び第2の従動ローラに前記金属リングを掛け回し、第2の矯正ローラを第2の駆動ローラと第2の従動ローラとの相対的な変位方向と交差する方向に変位させて第2の矯正ローラで前記金属リングを延引することにより、前記金属リングの残留応力を補正することが望ましい。
【0015】
本発明によれば、第1のリング加工手段によって、前記金属リングの周長が補正されるとともに、該金属リングの外周面に上記円弧形状が付与される。このとき、第1の矯正ローラによる延引により前記金属リングに適正値よりも大きな残留応力が生じることがある。続いて、第2のリング加工手段によって該金属リングの残留応力を補正することにより、前記金属リングの残留応力が適正値に補正される。したがって、所望の周長、所望の外周面形状、及び所望の大きさの残留応力を備えた金属リングを得ることができる。
【0016】
さらに、本発明の金属リング加工装置は、未加工の薄板状の無端金属リングを載置する未加工リング載置部と、前記金属リングを加工する第1のリング加工手段及び第2のリング加工手段と、加工済みの前記金属リングを載置する加工済リング載置部と、前記未加工リング載置部に載置された前記金属リングを第1のリング加工手段に投入し、第1のリング加工手段で加工された前記金属リングを第2のリング加工手段に移送し、第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを払い出して加工済リング載置部に載置するリング投入払出手段と、前記リング投入払出手段を第1のリング加工手段及び第2のリング加工手段の間で移動させる移動手段とを備える金属リング加工装置であり、次の特徴を有する。本発明の金属リング加工装置は、前記リング投入払出手段は、先端に進退自在に設けられた爪部材で前記金属リングの内外側面を挟持することにより該金属リングを把持する一組の第1、第2のアーム部材を備え、前記リング投入払出手段が第1のリング加工手段に対面する位置において、第1のアーム部材を前記未加工リング載置部に指向させるとともに、第2のアーム部材を第1のリング加工手段に指向させ、続いて、第1のアーム部材により前記未加工リング載置部に載置された未加工の前記金属リングを把持するとともに、第2のアーム部材により第1のリング加工手段で加工された前記金属リングを把持して第1のリング加工手段から払い出す第1のステップと、第1のアーム部材を第1のリング加工手段に指向させるとともに、第2のアーム部材を待機位置に待機させ、続いて、第1のアーム部材により把持された未加工の前記金属リングを第1のリング加工手段に投入する第2のステップと、前記移動手段により前記リング投入払出手段を第2のリング加工手段に対面させる位置に移動させる第3のステップと、前記リング投入払出手段が第2のリング加工手段に対面する位置において、第1のアーム部材を第2のリング加工手段に指向させ、続いて、第1のアーム部材により第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを把持して第2のリング加工手段から払い出す第4のステップと、第1のアーム部材を前記加工済リング載置部に指向させるとともに、第2のアーム部材を第2のリング加工手段に指向させ、続いて、第1のアーム部材により把持された第2のリング加工手段で加工された前記金属リングを前記加工済リング載置部に載置するとともに、第2のアーム部材により把持された第1のリング加工手段で加工された前記金属リングの待機を解除し第2のリング加工手段に投入する第5のステップと、前記移動手段により前記リング投入払出手段を第1のリング加工手段に対面させる位置に移動させる第6のステップとをこの順に繰り返し、前記リング投入払出手段が第1のリング加工手段に対面している間に第2のリング加工手段により前記金属リングを加工し、前記リング投入払出手段が第2のリング加工手段に対面している間に第1のリング加工手段により前記金属リングを加工することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、前記リング投入払出手段により、両リング加工手段への前記金属リングの投入及び両リング加工手段からの前記金属リングの払い出しを行うので、装置全体の設置スペースを小さくすることができる。
【0018】
また、前記リング投入払出手段が2つの前記アーム部材を備えており、第1のアーム部材が一の前記金属リングを把持すると同時に、第2のアーム部材が他の前記金属リングを把持することができるので、効率が良い。
【0019】
また、第1ステップと第5のステップとのそれぞれにおいて、一つのステップの中で、第1のアーム部材及び第2のアーム部材により、一の前記金属リング及び他の前記金属リングの把持、投入、又は払い出しのいずれかを並行して行うので、効率が良い。
【0020】
さらに、前記リング投入払出手段による一方の前記リング加工手段への一の前記金属リングの投入払い出しと、他方の前記リング加工手段による他の前記金属リングの加工とを並行して行うので、効率が良い。
【0021】
したがって、全体として、薄板状の無端金属リングを第1のリング加工と第2のリング加工とにより効率よく加工することができる。
【0022】
また、本発明においては、前記移動手段は、第1のリング加工手段の上方から第2のリング加工手段の上方に延在する案内部材と、前記案内部材に沿って摺動自在に設けられた摺動部材とからなり、前記リング投入払出手段は、前記摺動部材に吊設された吊設部材を備え、第1のアーム部材及び第2のアーム部材は、互いに直交し、前記吊設部材に直交状態を保持したまま回動自在に軸支されることが望ましい。
【0023】
両前記リング載置部が水平面に存在し且つ両前記リング加工手段が垂直面に存在する場合に、第1のアーム部材及び第2のアーム部材が直交状態を保持したまま回動するようになっているので、第1のアーム部材及び第2のアーム部材を90°回動させることにより、前記未加工リング載置部から第1のリング加工手段への前記金属リングの投入払い出し及び第2のリング加工手段から前記加工済リング載置部への前記金属リングの投入払い出しを効率よく行うことができる。また、第1のアーム部材及び第2のアーム部材が互いに直交しているので、第2のアーム部材を第1のリング加工手段又は第2のリング加工手段に指向させることにより第1のアーム部材を両前記リング載置部の上方となる前記待機位置に待機させることができるので、第1のアーム部材が把持している前記金属リングを待機させるための余分な動きを必要とせず効率が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。図1は本発明の実施形態の金属リング加工装置を示す正面図であり、図2はリング投入払出機を示す断面側面図であり、図3は金属リング加工装置の作動を説明する説明図である。
【0025】
図1示の金属リング加工装置1は、第1の周長補正機2によりマルエージング鋼等の超強力鋼からなる薄板状の無端金属リングWの周長補正及び円弧形状付与を行うものであり、第2の周長補正機3により金属リングWの残留応力補正を行うものである。金属リング加工装置1は、第1の周長補正機2及び第2の周長補正機3と、未加工の金属リングWを載置する未加工リング載置部4と、加工済みの金属リングWを載置する加工済リング載置部5と、金属リングWを周長補正機2,3に投入する又は金属リングWを周長補正機2,3から払い出すリング投入払出機6と、リング投入払出機6を第1の周長補正機2及び第2の周長補正機3の間で移動させる移動手段7とで構成される。
【0026】
第1の周長補正機2は、相対的に離間する方向に変位可能であって金属リングWが掛け回される第1の駆動ローラ21及び第1の従動ローラ22と、ローラ21,22の中間位置であってローラ21,22に掛け回された金属リングWの内方に位置する第1の矯正ローラ23とで構成され、垂直面に設けられている。
【0027】
第1の周長補正機2は、第1の駆動ローラ21及び第1の従動ローラ22に金属リングWを掛け回し、第1の駆動ローラ21及び第1の従動ローラ22を相対的に離間する方向に変位させて第1の駆動ローラ21と第1の従動ローラ22との間隔を保持するとともに、第1の矯正ローラ23を第1の駆動ローラ21及び第1の従動ローラ22の変位方向と交差し且つ第1の駆動ローラ21及び第1の従動ローラ22に掛け回された金属リングWを延引する方向に変位させる。これにより、金属リングWの周長を補正するとともに、金属リングWの外周面に幅方向の断面視で中央部が外方に向かって凸となる円弧形状を付与する。
【0028】
第2の周長補正機3は、第1の周長補正機2と同様の構成を備え、第2の駆動ローラ31及び第2の従動ローラ32と、第1の矯正ローラ23の代わりとして第2の矯正ローラ33とで構成され、第1の周長補正機2に並設されている。
【0029】
第2の周長補正機3は、第2の駆動ローラ31及び第2の従動ローラ32に金属リングWを掛け回し、第2の駆動ローラ31及び第2の従動ローラ32を相対的に離間する方向に変位させて第2の駆動ローラ31と第2の従動ローラ32との間隔を保持するとともに、第2の矯正ローラ33を第2の駆動ローラ31及び第2の従動ローラ32の変位方向と交差し且つ第2の駆動ローラ31及び第2の従動ローラ32に掛け回された金属リングWを延引する方向に変位させる。これにより、第2の周長補正機3は、第1の周長補正機2により金属リングWに生じた適正値よりも大きな残留応力を、適正値に補正する。
【0030】
未加工リング載置部4は、金属リングWを略水平方向に搬送する第1コンベア2aの終端部に設けられ、加工済リング載置部5は、第1コンベヤ2aの延長上に延設された第2コンベヤ5aの始端部に設けられている。未加工リング載置部4には未加工の金属リングWが一方の端面を対向させて載置され、加工済リング載置部5には円弧形状が付与され周長が補正された加工済みの金属リングWが一方の端面を対向させて載置される。
【0031】
図1及び図2示のリング投入払出機6は、移動手段7に吊設された吊設部材61と、金属リングWを把持する一組の第1のアーム部材62及び第2のアーム部材63とで構成される。吊設部材61は、上端部に設けられたモータMと、このモータMによって回転駆動される第1のプーリ64と、下端部に設けられた第2のプーリ65と、第1のプーリ64及び第2のプーリ65に掛装されたベルト66とを備える。アーム部材62,63は、互いに直交し、第2のプーリ65の回転軸に直交状態を保持したまま回動自在に軸支されている。さらに、アーム部材62,63は、先端にシリンダ67の伸縮により進退自在に設けられ、図示しないアクチュエータにより開閉自在とされた二対二組の爪部材68を備える。アーム部材62,63は、爪部材68で金属リングWの内外側面を挟持することにより該金属リングWを把持する。
【0032】
以上の構成により、リング投入払出機6は、第1のプーリ64の回動に連動するベルト66を介して第2のプーリ65を回動させることにより、アーム部材62,63を直交状態を保持させたまま回動させる。例えば、第1のアーム部材62が下方を指向し第2のアーム部材63が水平方向を指向しているとき、直交状態を保持したまま90°回動することにより、第1のアーム部材62は水平方向を指向し第2のアーム部材63は上方を指向することとなる。そして、リング投入払出機6は、アーム部材62,63の回動と、爪部材68の進退と、爪部材68による金属リングWの把持又は把持の解除とを行うことにより、金属リングWを周長補正機2,3に投入したり周長補正機2,3から払い出したりする。
【0033】
移動手段7は、両周長補正機2,3のローラ21〜23,31〜33よりも上方で両リング載置部4,5の上方に延在し、加工済リング載置部5側の端部に設けられたモータ71の駆動により回転するボールネジ72と、回転するボールネジ72に沿って摺動自在に設けられた摺動部材73とで構成される。摺動部材73には、吊設部材61が吊設されている。
【0034】
次に、図3を参照しながら金属リング加工装置1の作動について説明する。まず、図3(a)示のように、金属リング加工装置1は、リング投入払出機6が第1の周長補正機2に対面する位置において、第1のアーム部材62を未加工リング載置部4に指向させるとともに、第2のアーム部材63を第1の周長補正機2に指向させる。このとき、未加工リング載置部4には未加工の金属リングWaが載置されている。続いて、金属リング加工装置1は、第1のアーム部材62により未加工リング載置部4に載置された未加工の金属リングWaを把持するとともに、第2のアーム部材63により第1の周長補正機2で周長が補正されるとともに及び円弧形状が付与された金属リングWbを把持して第1の周長補正機2から払い出す。以上を第1のステップという。
【0035】
次に、図3(b)示のように、金属リング加工装置1は、アーム部材62,63を90°回動させることにより、第1のアーム部材62を第1の周長補正機2に指向させるとともに、第2のアーム部材63を未加工リング載置部4の上方である待機位置に待機させる。このとき、第2のアーム部材63に把持された第1の周長補正機2で周長が補正されるとともに及び円弧形状が付与された金属リングWbは、上記待機位置に待機させられる。続いて、金属リング加工装置1は、第1のアーム部材62により把持された未加工の金属リングWaを第1の周長補正機2に投入する。以上を第2のステップという。
【0036】
次に、金属リング加工装置1は、移動手段7によりリング投入払出機6を第2の周長補正機3に対面させる位置に移動させる。これにより、第1のアーム部材62は金属リングWを把持していない状態で第2の周長補正機3に指向し、第2のアーム部材63は第1の周長補正機2で周長が補正されるとともに及び円弧形状が付与された金属リングWbを把持した状態で加工済リング載置部5の上方である待機位置で待機させられる。以上を第3のステップという。
【0037】
一方、第2の周長補正機3には、第1のステップが開始する前に第1の周長補正機2で周長が補正されるとともに及び円弧形状が付与された金属リングWcが投入されていて、上記第1のステップ及び第2のステップでリング投入払出機6が第1の周長補正機2に対面している間に、金属リング加工装置1は、第2の周長補正機3によりこの金属リングWcの残留応力を補正する。
【0038】
次に、図3(c)示のように、金属リング加工装置1は、リング投入払出機6が第2の周長補正機3に対面する位置において、第1のアーム部材62が第2の周長補正機3に指向している。続いて、金属リング加工装置1は、第1のアーム部材62により第2の周長補正機3で残留応力が補正された金属リングWcを把持して第2の周長補正機3から払い出す。以上を第4のステップという。
【0039】
次に、図3(d)のように、金属リング加工装置1は、アーム部材62,63を90°回動させることにより、第1のアーム部材62を加工済リング載置部5に指向させるとともに、第2のアーム部材63を第2の周長補正機3に指向させる。続いて、金属リング加工装置1は、第1のアーム部材62により把持された第2の周長補正機3で残留応力が補正された金属リングWcを加工済リング載置部6に載置するとともに、第2のアーム部材63により把持された第1の周長補正機2で周長が補正されるとともに及び円弧形状が付与された金属リングWbの待機を解除し第2の周長補正機3に投入する。以上を第5のステップという。
【0040】
次に、金属リング加工装置1は、移動手段7によりリング投入払出機6を第1の周長補正機2に対面させる位置に移動させる。これにより、第1のアーム部材62は金属リングWを把持していない状態で未加工リング載置部5に指向し、第2のアーム部材63は金属リングWを把持していない状態で第1の周長補正機2に指向する。以上を第6のステップという。
【0041】
一方、上記第4のステップ及び第5のステップでリング投入払出機6が第2の周長補正機3に対面している間に、金属リング加工装置1は、第1の周長補正機2により第2のステップで投入された未加工の金属リングWaを周長補正するとともに円弧形状を付与する。
【0042】
金属リング加工装置1は、上記の第1〜第6のステップをこの順に繰り返すとともに、上記のように、リング投入払出機6が第1の周長補正機2に対面している間に第2の周長補正機3により金属リングWを周長補正するとともに円弧形状を付与し、リング投入払出機6が第2の周長補正機3に対面している間に第1の周長補正機2により金属リングWの残留応力を補正する。この結果、金属リング加工装置1は、所望の周長、所望の外周面形状、及び所望の大きさの残留応力を備えた金属リングWを得ることができる。
【0043】
金属リング加工装置1によれば、リング投入払出機6によって、両周長補正機2,3への金属リングWの投入及び両周長補正機2,3からの金属リングWの払い出しを行うので、金属リング加工装置1全体の設置スペースを小さくすることができる。
【0044】
また、リング投入払出機6が2つのアーム部材62,63を備えており、第1のアーム部材62が一の金属リングWを把持すると同時に、第2のアーム部材63が他の金属リングWを把持することができるので、効率が良い。
【0045】
また、第1のステップと第5のステップのそれぞれにおいて、アーム部材62,63により、一つのステップの中で、一の金属リングW及び他の金属リングWの把持、投入、又は払い出しのいずれかを並行して行うので、効率が良い。
【0046】
さらに、リング投入払出機6による一方の周長補正機2(又は3)への一の金属リングWの投入払い出しと、他方の周長補正機3(又は2)による他の金属リングWの加工とを並行して行うので、効率が良い。
【0047】
また、両リング載置部4,5が水平面に存在し且つ両周長補正機2,3が垂直面に存在し、アーム部材62,63が直交状態を保持したまま回動するように構成されているので、アーム部材62,63を90°回動させることにより、未加工リング載置部4から第1の周長補正機2への金属リングWの投入払い出し及び第2の周長補正機3から加工済リング載置部5への金属リングWの投入払い出しを効率よく行うことができる。
【0048】
また、アーム部材62,63が互いに直交しているので、第2のアーム部材63を周長補正機2又は3に指向させることにより第1のアーム部材2を上記待機位置に待機させることができるので、第1のアーム部材2が把持している金属リングWbを待機させるための余分な動きを必要とせず効率が良い。
【0049】
したがって、全体として、薄板状の無端金属リングを第1の周長補正機2と第2の周長補正機3とにより効率よく加工することができる。
【0050】
また、上述したように金属リング加工装置1ではいずれか一方の周長補正機2,3のみが金属リングWの加工を行うので、2台の周長補正機が同時に金属リングWの加工を行う場合と比較して、金属リング加工装置1が設置される工場等の床面への負荷を低減させることができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、第1のリング加工及び第2のリング加工は、周長補正機2,3としたが、他の加工を行うものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態の金属リング加工装置を示す正面図。
【図2】リング投入払出機を示す断面側面図。
【図3】金属リング加工装置の作動を説明する説明図。
【符号の説明】
【0053】
1…金属リング加工装置、 2…第1のリング加工手段、 21…第1の駆動ローラ、 22…第1の従動ローラ、 23…第1の矯正ローラ、 3…第2のリング加工手段、 31…第2の駆動ローラ、 32…第2の従動ローラ、 33…第2の矯正ローラ、 4…未加工リング載置部、 5…加工済リング載置部、 6…リング投入払出手段、 61…吊設部材、 62…第1のアーム部材、 63…第2のアーム部材、 68…爪部材、 7…移動手段、 72…案内部材、 73…摺動部材、 W,Wa,Wb,Wc…金属リング。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成19年3月20日(2007.3.20)
【代理人】 【識別番号】100077805
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 辰彦

【識別番号】100081477
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 進

【識別番号】100099690
【弁理士】
【氏名又は名称】鷺 健志

【識別番号】100109232
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 賢一

【識別番号】100125210
【弁理士】
【氏名又は名称】加賀谷 剛


【公開番号】 特開2008−229668(P2008−229668A)
【公開日】 平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願番号】 特願2007−73274(P2007−73274)