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【発明の名称】 等速自在継手用外方部材の製造方法、およびその製造装置
【発明者】 【氏名】沼本 潤

【氏名】原田 邦明

【氏名】世良 昌

【要約】 【課題】等速自在継手用外方部材の鍛造成形時に生じるカップ部深さのばらつきを低減することで、低コストに鍛造品の歩留り向上を図る。

【解決手段】外方部材を、カップ部と、カップ部の一端から延びる軸部とを一体に備える等速自在継手用外方部材を、前方押出し加工(A)、据込み加工(B)、および後方押出し加工(C)からなる前鍛造、およびしごき加工(D)を施すことで製造する。このうち、後方押出し加工(C)において、中実大径部5に内型22を押込むことでカップ部7本体を押出し成形すると共に、押出されたカップ部7の開口側端部8aを押え型23で押えてカップ部7に開口側端面を成形するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク伝達のための転動体を含む内部部品を収容するカップ部と、該カップ部の一端から延びる軸部とを有する等速自在継手用外方部材の製造方法であって、
前記軸部と、前記軸部より大径の中実大径部とを一体に有する中間成形体に後方押出し加工を施すことで、前記カップ部を鍛造成形するに際し、
外型で拘束された前記中実大径部に内型を押込むことで前記カップ部を押出し成形すると共に、押出された前記カップ部の開口側端部を押え型で押えて前記カップ部に開口側端面を成形することを特徴とする等速自在継手用外方部材の製造方法。
【請求項2】
前記内型に対する前記押え型の軸方向位置を管理した状態で、前記開口側端面の成形を行う請求項1記載の等速自在継手用外方部材の製造方法。
【請求項3】
自由成形面が存在しないよう前記中間成形体を拘束した状態で、前記開口側端面の成形を行う請求項1記載の等速自在継手用外方部材の製造方法。
【請求項4】
前記カップ部の成形後、該カップ部に対してしごき加工を施す請求項1記載の等速自在継手用外方部材の製造方法。
【請求項5】
トルク伝達のための転動体を含む内部部品を収容するカップ部と、該カップ部の一端から延びる軸部とを一体に有する等速自在継手用外方部材の製造装置であって、
前記軸部と、前記軸部より大径の中実大径部とを一体に有する中間成形体に後方押出し加工を施すことで、前記カップ部を鍛造成形するためのものであって、
前記中実大径部の外側を拘束する外型と、
前記外型で拘束された前記中実大径部に押込むことで前記カップ部を押出し成形する内型と、
前記押出し成形により押出された前記カップ部の開口側端部を押えることで、前記カップ部に開口側端面を成形する押え型とを備えた等速自在継手用外方部材の製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、等速自在継手用外方部材、特に軸部を一体に有する等速自在継手用外方部材の製造方法とその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や各種産業機械の動力伝達系、例えば前輪駆動車や独立懸架方式の後輪駆動車の駆動軸には、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として、角度変位のみを許容する固定式等速自在継手と、角度変位および軸方向変位の両方を許容する摺動式等速自在継手が使用されている。
【0003】
上述の駆動軸には、トランスミッションからディファレンシャルに回転駆動力を伝達するプロペラシャフトや、ディファレンシャルから車輪に回転駆動力を伝達するドライブシャフトがある。また、固定式等速自在継手としては、バーフィールド型等速自在継手(BJ)がよく知られており、摺動式等速自在継手としては、ダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)が広く知られている。
【0004】
例えば、BJタイプの固定式等速自在継手は、軸方向に延びる複数のトラック溝が球面状内周面に形成された外方部材(外側継手部材ともいう)と、外方部材のトラック溝と対をなして軸方向に延びるトラック溝が球面状外周面に形成された内方部材(内側継手部材ともいう)と、外方部材のトラック溝と内輪部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外方部材の球面状内周面と内方部材の球面状外周面との間に介在してボールを保持するケージとを主要な構成要素として備えている。
【0005】
また、DOJタイプの摺動式等速自在継手は、軸方向に延びる複数のトラック溝が円筒状内周面に形成された外方部材と、外方部材のトラック溝と対をなして軸方向に延びるトラック溝が球面状外周面に形成された内方部材と、外方部材のトラック溝と内方部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外方部材の円筒状内周面と内方部材の球面状外周面との間に介在してボールを保持するケージとを主要な構成要素として備えている。
【0006】
これら固定式等速自在継手あるいは摺動式等速自在継手における外方部材は、従来、以下の手順で製作されている。まず、素材としてのビレットを前鍛造(熱間鍛造、温間鍛造もしくは冷間鍛造)で外方部材の完成品形状あるいは当該完成品に近い形状に成形し、その後、当該成形品にしごき加工(サイジング加工)を施す。また、必要に応じて、この成形品の外周面、内周面および端面を旋削し、熱処理を行うことで、さらには、内周面とトラック溝を研削や焼入れ鋼切削などで仕上げ加工することで完成品を得る。
【0007】
このうち、前鍛造では、棒状素材(ビレット)に対して前方押出し加工が施されて軸部と中実本体部とを一体に有する成形体が形成され、次いで、この成形体に据込み加工を施すことで、中実本体部が押出されて据込み部が形成され、この据込み部にさらに後方押出し加工を施すことでカップ部が形成される(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平11−179477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようにして鍛造成形を行うことで外方部材を製作する際、重要となるのは歩留りの良否である。すなわち、上述の鍛造品は、適当な長さに裁断した素材(ビレット)を複数の鍛造工程を経て成形することで得られるものであるから、その後の切削工程における切削量を極力減らして当該製品の歩留りを向上させることが重要となる。しかしながら、この種の成形手段では、カップ部の成形時、カップ部の開口側端部が自由成形されることとなるため、例えば素材の当初重量にばらつきがあると、そのばらつきがそのままカップ部の深さ寸法のばらつきとなって現れやすい。特に、しごき加工でもってカップ部の内周を仕上げ加工する場合、カップ部が軸方向に圧し延ばされるため、素材の当初重量のばらつきがカップ部深さのばらつきとして一層顕著に現れる傾向にある。これでは、後工程において、カップ部の開口側端面の切削取代を非常に多くとる必要が生じ、鍛造成形本来の目的(二アネットシェイプ)を没却する結果を招きかねない。
【0009】
以上の事情に鑑み、本発明では、等速自在継手用外方部材の鍛造成形時に生じるカップ部深さのばらつきを低減することで、低コストに鍛造品の歩留り向上を図ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、トルク伝達のための転動体を含む内部部品を収容するカップ部と、カップ部の一端から延びる軸部とを有する等速自在継手用外方部材の製造方法であって、軸部と、軸部より大径の中実大径部とを一体に有する中間成形体に後方押出し加工を施すことで、カップ部を鍛造成形するに際し、外型で拘束された中実大径部に内型を押込むことでカップ部を押出し成形すると共に、押出されたカップ部の開口側端部を押え型で押えてカップ部に開口側端面を成形することを特徴とする等速自在継手用外方部材の製造方法を提供する。
【0011】
また、前記課題を解決するため、本発明は、トルク伝達のための転動体を含む内部部品を収容するカップ部と、カップ部の一端から延びる軸部とを一体に有する等速自在継手用外方部材の製造装置であって、軸部と、軸部より大径の中実大径部とを一体に有する中間成形体に後方押出し加工を施すことで、カップ部を鍛造成形するためのものであって、中実大径部の外側を拘束する外型と、外型で拘束された中実大径部に押込むことでカップ部を押出し成形する内型と、押出し成形により押出されたカップ部の開口側端部を押えることで、カップ部に開口側端面を成形する押え型とを備えた等速自在継手用外方部材の製造装置を提供する。
【0012】
このように、カップ部本体を押出し成形するための内型や外型の他に、カップ部の開口側端部を押える押え型を用いて開口側端面の成形を行うことで、中間成形体に作用する負荷およびこの中間成形体から金型(内型や外型など)が受ける反力が高まり、外型、内型を含むプレス装置(成形装置)全体に変形が生じる。このように、荷重増加によるプレス装置全体の変形により、素材の余剰分を逃がすためのスペースを大きく得ることができ、カップ部の側壁部よりも、素材重量のばらつき分が開口側端部の切削取代に与える影響が小さいカップ部の肩部や軸部に、素材の余剰分の一部を残すことが可能となる。これは、かかる領域に残した余剰分が、後工程におけるしごき加工において側壁部の伸張に寄与する割合は小さいためであり、結果的に素材重量のばらつきがカップ部の深さ寸法のばらつきとして現れるのを極力小さく抑えることが可能となる。以上より、開口側端面の切削取代を大きく取らずに済むため、あるいは切削加工が不要となるため、生産性の向上ひいては生産コストの低減化を図ることができる。
【0013】
また、カップ部の深さ寸法をより正確に制御するのであれば、内型に対する押え型の軸方向位置を管理した状態でカップ部の開口側端面の成形を行うのがよい。このように金型間の位置関係を管理した状態で成形を行うことで、カップ部深さのばらつきを小さくしつつも、その大きさを所望の範囲内に制御することができる。
【0014】
また、押え型による開口側端部の押えは、自由成形面が存在しないよう中間成形体を拘束した状態で行うのがよい。自由成形面が存在しないよう中間成形体を拘束した状態で押える(圧縮する)ことで、中間成形体に作用する負荷およびこの中間成形体から金型(内型や外型など)が受ける反力が高まり、外型、内型を含むプレス装置(成形装置)全体に変形が生じる。このように、荷重増加によるプレス装置全体の変形により、素材の余剰分を逃がすためのスペースをより大きく得ることができ、切削取代の更なる低減化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、等速自在継手用外方部材の鍛造成形時に生じるカップ部深さのばらつきを低減することで、低コストに鍛造品の歩留り向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づき説明する。なお、以下の説明における『上下』方向は、単に各図における構成要素間の位置関係を容易に理解するために規定したものに過ぎず、製造装置の設置方向や使用態様等を特定するものではない。
【0017】
図4および図5は、本発明に係る製造方法あるいは製造装置で製造された外方部材を備えた等速自在継手の一形態を示すもので、ここではいわゆるダブルオフセット型の摺動式等速自在継手(DOJ)を例示している。この等速自在継手は、軸方向に延びる複数(ここでは6つ)のトラック溝32が円筒状内周面33に円周方向等間隔に形成された外方部材としての外輪31と、外輪31のトラック溝32と対をなして軸方向に延びる複数(ここでは6つ)のトラック溝35が球面状外周面36に円周方向等間隔に形成された内方部材としての内輪34と、外輪31のトラック溝32と内輪34のトラック溝35との間に介在してトルクを伝達する複数(ここでは6個)のボール37と、外輪31の円筒状内周面33と内輪34の球面状外周面36との間に介在してボール37を保持するケージ38とを備えている。複数のボール37は、ケージ38に形成されたポケット39に収容されて円周方向等間隔に配置されている。なお、この実施形態では、ボール37の個数、および双方のトラック溝32、35の本数を共に6としたが、もちろんこれに限るものではない。例えば8個(8本)など、等速自在継手の種類、あるいは用途等に応じて任意に設定可能である。
【0018】
このうち、外輪31は、カップ部40と、カップ部40の一端から延びる軸部41とを一体に備えるもので、以下に述べる前鍛造により鍛造成形される。
【0019】
前鍛造では、前方押出し加工(A)、据込み加工(B)、および後方押出し加工(C)が実施され、完成品としての外輪31に近い形状の鍛造成形品が得られる。また、この実施形態では、続いてしごき加工(D)が行われ、完成品形状をなす外輪31が得られる。
【0020】
(A)前方押出し加工
まず、図1(a)に示す形状の素材(ビレットともいう)1を用意し、この素材1に対して例えば図1(b)に示す形状の成形金型14を用いて前方押出し加工を施すことで、中実本体部2と、中実本体部2の一端から延びた軸部3とを一体に有する初期成形体4が鍛造成形される。
【0021】
(B)据込み加工
次に、前方押出し加工(A)で得られた初期成形体4に対して例えば図1(c)に示す形状の成形金型16を用いて据込み加工を施し、中実本体部2を外径側に圧し拡げることで、軸部3と、軸部3より大径の中実大径部5とを一体に有する中間成形体6が鍛造成形される。なお、この加工に用いられる成形金型16には、前方押出し加工(A)にて成形された軸部3をより完成品に近い形状に再成形するための形状をなすものが使用される。
【0022】
(C)後方押出し加工
このようにして得られた中間成形体6に対して後方押出し加工を施すことで、軸部3とカップ部7とを一体に有する鍛造成形体(前鍛造完了品10)を成形する。図2はかかる押出し加工に用いる金型を備えた成形装置、およびこの装置内に配置された素材(中間成形体6)の断面図を示している。図2中左側が成形前、右側が成形完了時における断面図をそれぞれ示している。
【0023】
この装置は、中間成形体6の軸部3および中実大径部5の外側を保持・拘束する外型21と、中実大径部5の反軸部3側に配置され、外型21に対して軸方向に相対移動することで、中実大径部5を軸部3側に向けて押込む内型22、および内型22の外周に設けられ、内型22の押込みにより成形されるカップ部7の開口側端部を押える押え型23とを主に備える。この実施形態では、押え型23は、外型21および内型22とは別体に形成され、これら外型21と内型22に対して軸方向に相対移動可能に構成されている。また、内型22は段差を有しており、かかる段差面22aと内型22の先端22bとの軸方向距離が所定の値に設定されることで、段差面22aと当接可能な押え型23の押え面23aから先端22bまでの軸方向距離が管理される。なお、押え型23の押え面23aはフラットかつ水平(軸部3の中心軸に直交する向き)に形成されている。
【0024】
まず図2左側に示す状態から内型22を下降させ、中間成形体6の中実大径部5に内型22を押込む。これにより、自由空間となる内型22と外型21との間の半径方向隙間に沿って塑性流動が生じ、カップ部7の本体、ここでは筒状の側壁部8と、側壁部8の底をなす肩部9とが成形される。
【0025】
このようにして、中実大径部5に内型22を押込むことでカップ部7本体を押出し成形すると共に、押出されたカップ部7本体の開口側端部8aを押え型23で押えてカップ部7に開口側端面を成形する。ここで、押え型23は、内型22の外周に嵌合配設されており、内型22の下降に伴い内型22と軸方向に当接した後は、内型22と一体的に下降するようになっている。従い、上述の如く、押え型23の押え面23aから内型22の先端22bまでの軸方向距離が管理された状態で押え型23を下降させることで、軸部3から離れる向きに延びる側壁部8と押え型23とが当接する。そして、さらに内型22を下降させることで、カップ部7の深さ寸法が上述の軸方向寸法となる位置まで、押え型23によるカップ部7の開口側端部の押込みがなされる。この状態では、内型22はカップ部7本体の押出し成形が完了する位置まで下降し終えた状態にある(図2右側に示す状態)。
【0026】
(D)しごき加工
上述のようにして前鍛造完了品10を成形した後、例えば図3に示すしごき用パンチ24としごき用ダイス25とを用いて前鍛造完了品10、特にカップ部7にしごき加工を施す。ここで、図3中左側がしごき加工前、右側がしごき加工完了時における断面図をそれぞれ示している。
【0027】
詳細には、図3に示すように、後方押出し加工(C)で得られた前鍛造完了品10の内周ににしごき用パンチ24を嵌合させた状態で、これら前鍛造完了品10としごき用パンチ24とをしごき用ダイス25の内周に圧入することで主にカップ部7の側壁部8をしごき成形し、側壁部8を所定の寸法に仕上げる。図3右側は、しごき成形後の鍛造成形体(しごき加工完了品11)を示しており、その側壁部12は軸方向に圧し延ばされている。なお、しごき用パンチ24の外周に、成形すべきトラック溝32および円筒状内周面33(図4を参照)に対応する形状の成形部を設けておくことで、側壁部8のしごき成形と共に、トラック溝32および円筒状内周面33を側壁部8の内側に成形することも可能である。
【0028】
以上の前鍛造およびしごき加工を施すことにより完成品としての外輪31が得られる。なお、ここでは、しごき加工完了品11をもって完成品としての外輪31とした場合を例示したが、必要に応じて、仕上げ研削や熱処理、あるいはこれらの組み合わせに係る処理を施しても構わない。
【0029】
このように、外型21および内型22でカップ部7本体を押出し成形すると共に、押出された側壁部8の開口側端部8aを押え型23で押えることで、中間成形体6に作用する負荷およびこの中間成形体6から金型(外型21や内型22など)が受ける反力が高まり、外型21、内型22に変形が生じる。よって、この変形によりカップ部7の底をなす肩部9に素材の余剰分の一部を残すことができる。肩部9に残った余剰分であれば、上述のしごき加工(D)において側壁部8の圧し延ばしに与える影響は小さいため、結果的に開口側端面の切削取代を大きく取らずに済む。従い、生産性の向上を低コストに実現することができる。
【0030】
また、この実施形態では、内型22に対する押え型23の軸方向位置を管理した状態でカップ部7の開口側端面の成形を行うようにした。このように内型22と押え型23との位置関係を管理した状態で成形を行うことで、カップ部7深さのばらつきを小さくしつつも、その大きさを所望の範囲内に制御することが可能となる。
【0031】
また、この実施形態では、中間成形体6を、外型21と内型22、および押え型23とで拘束した状態で開口側端部8aを押えるようにした。自由成形面が存在しないよう中間成形体6を拘束した状態で圧縮することで、中間成形体6に作用する負荷およびこの中間成形体6から外型21や内型22などが受ける反力が高まり、カップ部7を拘束する外型21や内型22を含む成形装置全体に変形が生じる。このように、荷重増加によるプレス装置(成形装置)全体の変形により、素材の余剰分を逃がすためのスペースをより大きくとることができる。そのため、完成品としてのカップ部7深さのばらつきを一層小さくすることができる。
【0032】
また、この実施形態のように、内型22と別体に形成した押え型23を、所定位置から内型22と一体的に下降させるようにすれば、素材1の余剰分が多いほど早めに押え型23による開口側端部8aの押えを開始し、内型22を、カップ部7本体の押出し成形が完了する位置まで下降させるのと同時に、押え型23による開口側端部8aの押え作業を完了することができ、効率的である。また、かかる構成とすれば、一の駆動機構(プレス機構)で済むため、多段プレス機構にこれら上述の前鍛造工程(A)〜(C)を組み込み易くなり、生産性の向上が図られる。また、押え型23を内型22とは別体にすることで、成形後のワーク(前鍛造完了品10)を内型22から容易に脱型することができる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態に係る等速自在継手用外方部材(外輪31)の構成および製造工程を説明したが、もちろん、これに限定されることなく、上記以外の構成および工程を採ることも可能である。
【0034】
例えば上記実施形態では、押え型23を内型22と一体的に下降させ、内型22によるカップ部7の押出し成形が完了するのと同時に、押え型23による開口側端部8aの押え(開口側端面の成形)が完了するようにした場合を説明したが、押え型23による押えのタイミングを上述の段階に限る必要はない。例えば押えを開始するタイミングについて言えば、内型22と押え型23とをそれぞれ別の駆動手段でもって独立して駆動(下降)させるようにし、内型22の押込みによるカップ部7の成形が開始した直後、あるいは途中から別の駆動手段で押え型23を下降させ、開口側端面を成形することもできる。
【0035】
また、上記実施形態では、押え型23を、内型22とは別体かつ相対移動可能に設けた場合を説明したが、内型22と一体に設けることも可能である。もちろん、一体と別体とを問わず、押え型23によるしごき加工後の切削取代の低減効果を同様に得ることができる。
【0036】
図6はその一例を示すもので、同図に係る成形装置は、押し型23を内型22と一体に形成している点で、図2に示す成形装置とその構造を異にする。また、この図示例のように、押え型23を内型22と一体に形成するのであれば、例えば継手作動角の増大を図る目的で、押え型23の押え面23aの内側にテーパ状の第2押え面23bを設けることも可能である。
【0037】
また、上記実施形態では、いわゆるダブルオフセット型の摺動式等速自在継手(DOJ)の外方部材に本発明を適用した場合を説明したが、本発明は、上記構成に限らず、他の構成をなす等速自在継手用の外方部材にも適用可能である。例えば、摺動式等速自在継手であれば、ボールに代えてローラを介在させたいわゆるトリポード型等速自在継手、あるいはバーフィールド型等速自在継手に代表される固定式等速自在継手用の外方部材にも本発明を適用することも可能である。
【実施例】
【0038】
従来の方法(カップ部の開口側端部を自由成形面としてカップ部を押出し成形する方法)により製作された等速自在継手用外方部材の鍛造成形品と、本発明に係る方法(カップ部の開口側端部を押え型で押えつつ、カップ部を押出し成形する方法)により製作された鍛造成形品とで、素材重量のばらつきがカップ部の深さ寸法に及ぼす影響の度合いを比較、検証した。
【0039】
詳細には、従来方法と本発明に係る方法とで、重量の異なる素材に対して前鍛造およびしごき加工を行い、鍛造完了時の成形品(前鍛造完了品)のカップ部深さ寸法、およびしごき加工完了時の成形品(しごき加工完了品)のカップ部深さ寸法ををそれぞれ測定した。かかる作業を、投入時重量の異なる複数の素材に対して実施し、各成形品のカップ部深さと素材重量との関係を求めた。ここで本発明に係る方法、およびこの方法に用いた装置は、上記実施形態に記載の構成と同様である。また、従来方法、本発明に係る方法共に、しごき加工は、上記実施形態に記載の装置および方法で行った。
【0040】
図7に前鍛造完了品のカップ部深さ[mm]と素材重量[g]との関係を示す。ここで、各直線の勾配は、素材重量に対するカップ部深さの増加割合を示す。言い換えると、かかる勾配値が大きいほど、素材重量のばらつきがカップ部深さに大きく反映されることを意味する。なお、直線A1は、前鍛造完了品のカップ部に素材の余剰分が全て含まれるとした場合の理論式を示している。また、直線A2は従来方法で製作した成形品における、カップ部深さと素材重量との関係(近似直線)を、直線A3は本発明に係る方法で制作した成形品における、カップ部深さと素材重量との関係(近似直線)をそれぞれ示している。従い、直線A1の勾配に対する直線A2あるいは直線A3の勾配の比(ここでは百分率)をもって、素材の余剰分がカップ部深さに及ぼす影響の度合いを計ることができる。
【0041】
上述の考えに則り、素材の余剰分がカップ部深さに及ぼす影響について比較したところ、従来の鍛造では88%であったのに対し、本発明に係る鍛造では4%と、開口側端部8aの型押しにより、余剰分の多くがカップ部7の側壁部8以外の箇所(例えば肩部9)に逃げたことがわかった。
【0042】
次に、しごき加工完了品のカップ部深さ[mm]と素材重量[g]との関係を図8に示す。ここで、直線B1は、しごき加工完了品のカップ部に素材の余剰分が全て含まれるとした場合を理論式を示している。また、直線B2は、従来方法で前鍛造を施し、かつしごき加工を施したものにおける、カップ部深さと素材重量との関係(近似直線)を、直線B3は、本発明に係る方法で前鍛造を施し、かつしごき加工を施したものにおける、カップ部深さと素材重量との関係(近似直線)をそれぞれ示している。
【0043】
この場合、直線B1の勾配に対する直線B2の勾配の比は101%であったのに対し、直線B1の勾配に対する直線B2の勾配の比は45%であった。このことから、開口側端部8aの型押しにより、余剰分の多くがカップ部7の側壁部8以外の箇所(例えば肩部9)に逃げ、またしごき加工を施した後でも、かかる逃げ分が側壁部8に含まれる割合は半分以下であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る等速自在継手用外方部材の前鍛造工程を概念的に示す断面図であって、(a)は前鍛造前の素材の断面図、(b)は前方押出し加工における金型および素材の断面図、(c)は据込み加工における金型および素材の断面図である。
【図2】後方押出し加工に用いる装置および素材の断面図である。
【図3】しごき加工に用いる装置および素材の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る等速自在継手を示す断面図であって、図5のB−O−B線に沿う断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る等速自在継手を示す断面図であって、図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】他の構成に係る後方押出し加工装置および素材の断面図である。
【図7】従来の方法で製作された前鍛造完了品のカップ部深さと素材重量との関係、および本発明に係る方法で製作された前鍛造完了品のカップ部深さと素材重量との関係を示す図である。
【図8】従来の前鍛造を経て製作されたしごき加工完了品のカップ部深さと素材重量との関係、および本発明に係る前鍛造を経て製作されたしごき加工完了品のカップ部深さと素材重量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 素材
3 軸部
5 中実大径部
6 中間成形体
7 カップ部
8 側壁部
8a 開口側端部
9 肩部
10 前鍛造完了品
11 しごき加工完了品
12 側壁部
21 外型
22 内型
23 押え型
24 しごき用パンチ
25 しごき用ダイス
31 等速自在継手用外方部材
40 カップ部
41 軸部
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
【出願日】 平成19年2月14日(2007.2.14)
【代理人】 【識別番号】100064584
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 省吾

【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳

【識別番号】100101616
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 吉之

【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦

【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛


【公開番号】 特開2008−194734(P2008−194734A)
【公開日】 平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願番号】 特願2007−33854(P2007−33854)