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等速自在継手用外方部材の製造装置、およびその製造方法 - 特開2008−188633 | j-tokkyo
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【発明の名称】 等速自在継手用外方部材の製造装置、およびその製造方法
【発明者】 【氏名】原田 邦明

【要約】 【課題】鍛造成形時に、カップ部成形用のパンチとダイとの間で芯ずれあるいは傾きが生じるのを極力避けて、軸部とカップ部との間の同軸度および直角度に優れた等速自在継手用の外方部材を提供する。

【解決手段】カップ部7の押出し成形装置はダイ13を有する下型11と、パンチ14を有する上型12とからなる。このうち上型12は、内型としてのパンチ14と、パンチ14を保持し、パンチ14と一体的に下降することで、パンチ14をダイ13の内周に挿入するスライド部とを備える。スライド部は球面座22を備え、球面座22は、互いに相補形状をなす凹球面25と凸球面26を介してパンチ14と当接している。凹球面25が球面座22に形成され、凸球面26がパンチ14に形成される。これら凹球面25と凸球面26とは相対的に摺動可能なよう構成される。言い換えると、凹球面25と凸球面26とで、凸球面26を凹球面25に対して摺動可能とする摺動部27が構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク伝達のための転動体を含む内部部品を収容するカップ部と、該カップ部の一端から延びる軸部とを一体に有する等速自在継手用外方部材を鍛造成形により製造する装置であって、後方押出し加工により前記カップ部の内側を成形する内型と、前記カップ部の外側を成形する外型と、前記内型を保持し、前記内型を前記外型の内周に挿入するためのスライド部とを備えたものにおいて、
互いに当接しかつ相補形状をなす凸曲面と凹曲面の何れか一方を前記内型に、他方を前記スライド部に設け、前記凸曲面が前記凹曲面に対して摺動するよう構成したことを特徴とする等速自在継手用外方部材の製造装置。
【請求項2】
前記スライド部を、スライド部本体と、該スライド部本体の移動方向と直交する向きに移動可能な直交スライド部材とで構成し、該直交スライド部材と前記内型の何れか一方に前記凸曲面を、他方に前記凹曲面を設けた請求項1記載の等速自在継手用外方部材の製造装置。
【請求項3】
前記凸曲面が、前記内型の成形側端部を中心とする球面の一部で構成されている請求項1記載の等速自在継手用外方部材の製造装置。
【請求項4】
前記外型と前記内型の少なくとも何れか一方に設けられ、前記内型の前記外型への挿入を案内する案内部をさらに備えた請求項1記載の等速自在継手用外方部材の製造装置。
【請求項5】
請求項1記載の製造装置を用いて前記カップ部を押出し成形することで、前記カップ部と前記軸部との一体品を得る、等速自在継手用外方部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、等速自在継手用外方部材、特に軸部を一体に有する等速自在継手用外方部材の製造装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や各種産業機械の動力伝達系、例えば前輪駆動車や独立懸架方式の後輪駆動車の駆動軸には、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として、角度変位のみを許容する固定式等速自在継手と、角度変位および軸方向変位の両方を許容する摺動式等速自在継手が使用されている。
【0003】
前述の駆動軸には、トランスミッションからディファレンシャルに回転駆動力を伝達するプロペラシャフトや、ディファレンシャルから車輪に回転駆動力を伝達するドライブシャフトがある。また、固定式等速自在継手としては、バーフィールド型等速自在継手(BJ)がよく知られており、摺動式等速自在継手としては、ダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)が広く知られている。
【0004】
例えば、BJタイプの固定式等速自在継手は、軸方向に延びる複数のトラック溝が球面状内周面に形成された外方部材(外側継手部材ともいう)と、外方部材のトラック溝と対をなして軸方向に延びるトラック溝が球面状外周面に形成された内方部材(内側継手部材ともいう)と、外方部材のトラック溝と内方部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外方部材の球面状内周面と内方部材の球面状外周面との間に介在してボールを保持するケージとを主要な構成要素として備えている。
【0005】
また、DOJタイプの摺動式等速自在継手は、軸方向に延びる複数のトラック溝が円筒状内周面に形成された外方部材と、外方部材のトラック溝と対をなして軸方向に延びるトラック溝が球面状外周面に形成された内方部材と、外方部材のトラック溝と内方部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外方部材の円筒状内周面と内方部材の球面状外周面との間に介在してボールを保持するケージとを主要な構成要素として備えている。
【0006】
これらの等速自在継手における外方部材は、従来、以下の手順で製作されている。まず、素材としてのビレットを熱間鍛造、温間鍛造または冷間鍛造で外方部材の完成品形状あるいは当該完成品に近い形状に成形し、その後、当該成形品にしごき加工(サイジング加工)を施す。また、必要に応じて、この成形品の外周面、内周面および端面を旋削し、熱処理を行うことで、さらには、内周面とトラック溝を研削や焼入れ鋼切削などで仕上げ加工することで完成品を得る。
【0007】
このうち、前鍛造では、棒状素材(ビレット)に対して前方押出し加工が施されて軸部と中実本体部とを一体に有する成形体が形成され、次いで、この成形体に据込み加工を施すことで、中実本体部が押し広げられて据込み部が形成され、この据込み部にさらに後方押出し加工を施すことでカップ部が形成される(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
また、同特許文献(特許文献1)には、図8に示すように、カップ部の外側を成形する上部形成ダイ46上に第1リングおよび第2リング48、50を固定すると共に、上型52の上部シュー54にホルダ56をねじ止め固定することで、パンチスリーブ58を有する成形パンチ60を上部シュー54に取り付けた構造の後方押出し成形装置が開示されている。ここで、成形パンチ60の外周に設けられたパンチスリーブ58は、第1リング48の内周面を摺動して成形パンチ60を案内するように構成されており、これにより軸部とカップ部との同軸度を確保するようにしている。
【特許文献1】特開平11−179477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、パンチスリーブ58をガイドリングとしての第1リング48内にスムーズに挿入するためには、パンチスリーブ58と第1リング48との間に、所定寸法の半径方向隙間を設ける必要がある。しかしながら、このガイド部分の隙間があまりに大きいと、当該隙間内で成形パンチ60がダイ46に対して自由に動いてしまい、成形パンチ60とダイ46との芯ずれを招く恐れがある。これではカップ部内周と軸部外周との間で所要の同軸度を満足することは難しい。また当該隙間の大きさによっては、その隙間内で成形パンチ60がダイ46に対して傾く場合がある。この場合、成形パンチ60が既に加工された軸部に対して傾いた状態で成形されるため、かかる成形により得られたカップ部内周の中心軸と軸部の中心軸とでずれが生じる恐れがある。これでは、カップ部と軸部との間で高い直角度を得ることは難しい。
【0010】
従って、上述の不具合を低減もしくは解消する目的で、ガイド部分の隙間を狭くすることが考えられるが、その場合には以下の新たな不具合が生じる恐れがある。すなわち、成形パンチ60は、通常、プレス機からの加圧力を受ける圧力座と呼ばれる部材と平面を介して当接している。そのため、圧力座(あるいはこれを備えたスライド部分)が傾くことで成形パンチ60もその傾きに倣い、ガイドリングとの間で焼き付きやかじり等が発生する可能性がある。これでは、所定寸法以下にガイド部分の隙間を設定することは困難である。ここで、プレススライド部は、複数の金型、例えば据込み用パンチやカップ部成形用パンチ、あるいはしごき加工用パンチなどを備えるのが通常である。また、その一方で、各成形加工ごとに必要となる荷重が異なるため、プレススライド部に偏荷重が作用することとなり、プレススライド部がベッド部に対して傾き易い。
【0011】
以上の事情に鑑み、本発明では、鍛造成形時に、カップ部成形用のパンチとダイとの間で芯ずれあるいは傾きが生じるのを極力避けて、軸部とカップ部との間の同軸度および直角度に優れた等速自在継手用外方部材を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、トルク伝達のための転動体を含む内部部品を収容するカップ部と、カップ部の一端から延びる軸部とを一体に有する等速自在継手用外方部材を鍛造成形により製造する装置であって、後方押出し加工によりカップ部の内側を成形する内型と、カップ部の外側を成形する外型と、内型を保持し、内型を外型の内周に挿入するためのスライド部とを備えたものにおいて、互いに当接しかつ相補形状をなす凸曲面と凹曲面の何れか一方を内型に、他方をスライド部に設け、凸曲面が凹曲面に対して摺動するよう構成したことを特徴とする等速自在継手用外方部材の製造装置を提供する。
【0013】
このように、本発明は、内型とスライド部とを、相補形状にある凸曲面と凹曲面とを介して当接させ、これにより凸曲面が凹曲面に対して摺動可能に構成した点を特徴とするものである。かかる構成によれば、例えば偏荷重等の影響によりスライド部が所定の姿勢から傾いた場合であっても、相補形状にある凸曲面と凹曲面との間で、傾きに応じて滑りが生じ、内型がスライド部に対して傾動する。そのため、スライド部に保持される内型を、スライド部の傾きによらず所定の姿勢に維持した状態で、素材(中間成形体)に押込むことができる。よって、成形品におけるカップ部と軸部との間の直角度を確保して高品質の等速自在継手用外方部材を製造することが可能となる。
【0014】
スライド部は、例えばスライド部本体と、スライド部本体の移動方向と直交する向きに移動可能な直交スライド部材とで構成し、直交スライド部材と内型の何れか一方に凸曲面を、他方に凹曲面を設けた構成とすることもできる。かかる構成によれば、スライド部本体に対する傾動、および水平移動(直交方向への移動)の組合せに係る動作を内型(例えばパンチ)に与えることができる。従い、押込みが進行するにつれて、例えばスライド部の傾きやその水平方向位置が変化した場合であっても、内型のスライド部に対する位置、姿勢を維持した状態で素材への押込みを続行することができる。従って、カップ部を高精度に押出し成形することができる。また、成形精度が向上することで、成形後、軸部の芯ずれや傾きを矯正するための切削加工を施さずに済み、あるいは切削加工代を大幅に低減することができる。
【0015】
相補形状をなす凸曲面および凹曲面は、共に摺接性やその摺動許容量を考慮すれば、部分球面形状をなすことが好ましい。また、凸曲面は、内型の成形側端部を中心とする球面の一部で構成されるものが好ましい。この場合、凸曲面は内型の側に設けられ、かつその曲率半径が内型の軸方向寸法に略等しくなる。もちろん、相補形状をなす凹曲面も同様の曲率半径を有する。
【0016】
ここで、図6(a)に示すように、内型100に設けられた凸曲面101の曲率半径φRが、内型100の軸方向寸法Lより小さい場合、角度θ傾いた状態のスライド部から受ける荷重Bの作用線は、傾きがない状態のスライド部から受ける荷重Aの作用線と、内型100の成形側端部102よりもスライド部に近い箇所で交差する。これでは、スライド部から素材へと伝達される荷重のロスが大きくなり、成形には多大な荷重が必要となる。また、荷重の増大は内型等の金型に不要な変形をもたらし、金型精度の低下、ひいては成形精度の低下を招く恐れがある。
【0017】
また、図6(b)に示すように、凸曲面101の曲率半径φRが、内型100の軸方向寸法Lより大きい場合、角度θ傾いた状態のスライド部から受ける荷重Bの作用線が、傾きがない状態におけるスライド部からの荷重Aの作用線と、凸曲面101から見て成形側端部102よりも遠い箇所で交差する。そのため、曲率半径が小さい場合と比べて、伝達すべき荷重のロスは減少する。しかし、あまりに曲率半径が大きいと、徐々に平面間でスライド部と内型とが当接している状態に近づくため、構成本来の作用(内型の傾動)を得ることが難しくなる。
【0018】
これに対して、図7に示すように、凸曲面101の曲率半径φRを、内型100の軸方向寸法Lに等しくすれば、角度θ傾いた状態のスライド部から受ける荷重Bの作用線が、傾きがない状態におけるスライド部からの荷重Aの作用線と内型100の成形側端部102で交差する。そのため、非常に効率よくプレス部から(スライド部から)の荷重を素材へと伝達することができ、実質的に小さい負荷で上述の鍛造成形が可能となる。
【0019】
また、何れの場合においても、外型と内型の少なくとも何れか一方に、内型の素材への押込みを案内する案内部を設けることができる。例えば、スライド部が直交スライド部材を有する場合、案内部に導入された内型は、案内部の働きにより外型に対して双方の型の中心軸が一致する位置に移動する(芯合わせがなされる)。そしてこの際、内型と摺接する直交スライド部材も内型に倣って同じ方向に移動することとなる。従い、案内部における半径方向隙間を小さく設定することができ、カップ部と軸部との間の同軸度および直角度を向上させることが可能となる。もちろん、互いに摺動可能な凸曲面と凹曲面の働きにより、案内部で焼付きやかじりが発生する恐れもないため、金型の精度維持および寿命向上を図ることも可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、鍛造成形時に、カップ部成形用のパンチとダイとの間で芯ずれあるいは傾きが生じるのを極力避けて、軸部とカップ部との間の同軸度および直角度に優れた等速自在継手用の外方部材を低コストに提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づき説明する。なお、以下の説明における『上下』方向は、単に各図における構成要素間の位置関係を容易に理解するために規定したものに過ぎず、製造装置の設置方向や使用態様等を特定するものではない。
【0022】
図4および図5は、本発明に係る製造装置を用いて製造された外方部材を備えた等速自在継手の一形態を示すもので、ここではいわゆるダブルオフセット型の摺動式等速自在継手(DOJ)を例示している。この等速自在継手は、軸方向に延びる複数(6つ)のトラック溝32が円筒状内周面33に円周方向等間隔に形成された外方部材としての外輪31と、外輪31のトラック溝32と対をなして軸方向に延びる複数(6つ)のトラック溝35が球面状外周面36に円周方向等間隔に形成された内方部材としての内輪34と、外輪31のトラック溝32と内輪34のトラック溝35との間に介在してトルクを伝達する複数(6個)のボール37と、外輪31の円筒状内周面33と内輪34の球面状外周面36との間に介在してボール37を保持するケージ38とを備えている。複数のボール37は、ケージ38に形成されたポケット39に収容されて円周方向等間隔に配置されている。
【0023】
このうち、外輪31は、カップ部41と、カップ部41の一端から延びる軸部40とを一体に備えるもので、以下に述べる前鍛造により鍛造成形される。
【0024】
前鍛造では、前方押出し加工(A)、据込み加工(B)、および後方押出し加工(C)が実施され、完成品としての外輪31に近い形状の鍛造成形品が得られる。また、この実施形態では、続いてしごき加工(D)が行われ、完成品形状をなす外輪31が得られる。
【0025】
(A)前方押出し加工
まず、図1(a)に示す形状の素材(ビレットともいう)1を用意し、この素材1に対して前方押出し加工を施すことで、図1(b)に示すように、中実本体部2と、中実本体部2の一端から延びた軸部3とを一体に有する初期成形体4が鍛造成形される。
【0026】
(B)据込み加工
次に、前方押出し加工(A)で得られた初期成形体4に対して据込み加工を施し、中実本体部2を外径側に圧し拡げることで、図1(c)に示すように、軸部3と、軸部3より大径の中実大径部5とを一体に有する中間成形体6が鍛造成形される。
【0027】
(C)後方押出し加工
そして、据込み加工(B)で得られた中間成形体6に対して後方押出し加工を施すことで、軸部3とカップ部7とを一体に有する前鍛造完了品8(図1(d)を参照)を成形する。図2はかかる押出し加工に用いる装置、およびこの装置内に配置された素材(中間成形体6)の断面図を示している。
【0028】
この後方押出し成形装置は、大別して下型11と上型12とからなる。このうち、下型11には、中間成形体6の外側を保持・拘束し、軸部3およびカップ部7の外側を成形する外型としてのダイ13が設けられる。また、上型12には、ダイ13に向けて接近させ、中実大径部5に押込むことで、カップ部7の内側を成形する内型としてのパンチ14が設けられる。
【0029】
下型11について詳述すると、固定型としての下型11は、ダイ13の他、パンチ14の中実大径部5への押込みを案内するためのガイドリング15を備える。このガイドリング15は、ダイ13を内側に保持するダイリング16上に載置され、ダイリング16のさらに外側に配設される下部ダイホルダー17にダイ押え部18をボルト19で固定することで、下部ダイホルダー17とダイ押え部18との間に挟持固定される。ここで、ガイドリング15の内周面15aとこの面に対向し案内されるパンチ14の外周面14aとの間の半径方向隙間の大きさは、スライド部の傾きの程度や、被加工品(中間成形体6)ごとの寸法のばらつき等を考慮して設定される。
【0030】
上型12は、内型としてのパンチ14の他、このパンチ14を保持し、パンチ14と一体的に下降することで、パンチ14をダイ13の内周に挿入するためのスライド部とを備える。ここでスライド部は、パンチ14を取り付けるための上部ダイホルダー20と、上部ダイホルダー20の内周に設けられ、プレス荷重を受けるための圧力座21と、同じく上部ダイホルダー20の内周に設けられ、圧力座21とパンチ14との間に介在する球面座22とを主に有する。ここでは、パンチ押え部23をボルト24で上部ダイホルダー20に固定することにより、パンチ14が球面座22とパンチ押え部23との間に挟持固定される。
【0031】
球面座22とパンチ14とは、互いに相補形状をなす凹球面25と凸球面26を介して当接している。この実施形態では、凹球面25が球面座22に形成され、凸球面26がパンチ14に形成される。これら凹球面25と凸球面26とは相対的に摺動可能なよう構成される。言い換えると、凹球面25と凸球面26とで、凸球面26を凹球面25に対して摺動可能とする摺動部27が構成される。この実施形態では、凸球面26は、パンチ14の成形側端部を中心とする球面の一部で構成される。そのため、凸球面26はパンチ14の側に設けられると共に、その曲率半径SφAは、パンチ14の軸方向寸法に等しい。
【0032】
また、球面座22と、球面座22を内側に収容する上部ダイホルダー20との間には、半径方向の隙間28が設けられており、球面座22が上部ダイホルダー20に対して水平方向にスライド可能なように構成されている。言い換えると、球面座22が、上部ダイホルダー20のスライド方向に直交する向きに移動可能な直交スライド部材として機能する。なお、パンチ押え部23と、パンチ押え部23に挿入されるパンチ14との間には、ガイドリング15の内周面15aとパンチ14の外周面14aとの間の半径方向隙間と同程度の隙間が設けられており、ガイドリング15によるパンチ14の水平移動を妨げないようになっている。
【0033】
以上の構成をなす成形装置を用いたカップ部7の押出し成形を、図3に基づき説明する。ここで、図3左側は押出し成形前、右側は押出し成形完了時における断面図をそれぞれ示している。まず、図3左側に示す位置までパンチ14を備えた上型12を下降させ、下型11に設けたガイドリング15内にパンチ14を挿入する。この際、ガイドリング15の働きにより、パンチ14の中心軸がダイ13のそれと合致する位置にまでパンチ14が案内(水平移動)され、これによりパンチ14とダイ13との間で芯合わせが行われる。また、凹球面25を介してパンチ14と当接している球面座22が、ガイドリング15によりパンチ14が案内された分だけ水平方向に移動する。
【0034】
そして、ガイドリング15の案内下でさらにパンチ14を下降させ、ダイ13に拘束される中実大径部5にかかるパンチ14を押込む。この際、プレス機からの偏荷重等により、上部ダイホルダー20等からなるスライド部が所定の姿勢から傾く場合、その傾斜角に応じて、摺動部27を構成する凸球面26が凹球面25に対して摺動する。これにより、凸球面26を有するパンチ14が、その成形側端部を基点として凹球面25を有する球面座22、および球面座22を備えたスライド部に対して回転傾動する。よって、ダイ13に対する同軸度、および直角度が維持された状態でパンチ14の中実大径部5に対する押込みが実施され、カップ部7が押出し成形される。図3右側は、カップ部7の押出し成形が完了する位置までパンチ14を下降し終えた状態を示している。
【0035】
(D)しごき加工
上述のようにして図1(d)に示す前鍛造完了品8を成形した後、例えば図示は省略するが、しごき用パンチ、およびしごき用ダイスを用いて前鍛造完了品8、特にカップ部7にしごき加工を施す。これにより、カップ部7が所定の形状寸法に仕上げられる。また、この際、しごき用パンチの外周に、成形すべきトラック溝32および円筒状内周面33(図4を参照)に対応する形状の成形部を設けておくことで、カップ部7のしごき成形と共に、トラック溝32および円筒状内周面33がカップ部7の内側に成形される。
【0036】
以上の前鍛造およびしごき加工を施すことにより完成品としての外輪31が得られる。なお、ここでは、しごき加工完了品をもって完成品としての外輪31とした場合を例示したが、必要に応じて、仕上げ研削や熱処理を施しても構わない。
【0037】
このように、スライド部を構成する球面座22との間に摺動部27を設け、球面座22に対して傾動可能としたパンチ14を用いてカップ部7の成形を行うことで、スライド部(上部ダイホルダー20や球面座22など)が正規の姿勢から傾いた場合であっても、互いに当接しかつ相補形状にある凸球面26と凹球面25との間で、その傾きに応じて滑りが生じる。そのため、スライド部に保持されるパンチ14を、スライド部の傾きに倣わせることなく、中間成形体6に押込むことができる。従い、前鍛造完了品8におけるカップ部7と軸部3との間の直角度を維持して高品質の等速自在継手用外方部材(外輪31)を製造することができる。
【0038】
また、この実施形態では、凹球面25を有する球面座22と上部ダイホルダー20との間に半径方向の隙間28を設け、球面座22を、上部ダイホルダー20のスライド方向に対して直交する向き(ここでは水平方向)に移動可能とした。このように、パンチ14を球面座22に対して傾動可能とし、かつ球面座22を上部ダイホルダー20に対して水平移動可能とすることで、パンチ14の傾動と水平移動との組合せに係る動作をパンチ14に与えることができる。これにより、上部ダイホルダー20(を有するスライド部本体)の傾きの大きさやその変動量に応じて、パンチ14を適正な位置および姿勢で中実大径部5に押込むことができる。そのため、軸部3との間で同軸度や直角度に優れた高精度なカップ部7を成形することが可能となる。また、成形精度が向上することで、例えば成形後、軸部3の芯ずれや傾きを矯正するため切削加工を施さずに済み、あるいは切削加工代を大幅に低減することができる。
【0039】
また、この実施形態では、凸球面26を、パンチ14の成形側端部を中心とする半径SφAの球面の一部で構成した。このように、凸球面26をパンチ14の側に設け、かつその曲率半径SφAをパンチ14の軸方向寸法に等しくすることで、圧力座21ひいては球面座22から受ける荷重の作用線と、傾きがない状態における球面座22からの荷重の作用線とが、パンチ14の成形側端部で常に交差する。そのため、非常に効率よく圧力座21から(球面座22から)の荷重を素材への押込み力として使用することができ、多大な負荷を要することなくカップ部7を成形することができる。また、荷重伝達時のロスが少ないことから、パンチ14に不要な変形力を与えることもなく、あるいはガイドリング15との摺動摩耗も小さくて済む。そのため、成形精度に優れたカップ部7の押出し加工を安定して継続実施することが可能となる。
【0040】
また、この実施形態では、下型11に、パンチ14の中間成形体6への押込みを案内するガイドリング15(案内部)を設けるようにしたので、ガイドリング15の内側に導入したパンチ14を球面座22と共に、ダイ13との間で同軸となる位置まで水平移動させる(案内する)ことができる。そしてこの位置で、傾きに応じてパンチ14が傾動した状態で中間成形体6への押込みがなされる。このように、球面座22を水平方向に移動可能に構成し、かつガイドリング15を設けるようにすれば、ガイドリング15とパンチ14との間の半径方向隙間を小さく設定することができ、カップ部7と軸部3との間の同軸度および直角度をさらに向上させることが可能となる。特に、この実施形態のように、パンチ14が傾動可能でかつ水平移動可能に構成されている場合、ガイドリング15との間で焼付きやかじりが発生する恐れも非常に少ないため、これら成形金型の精度維持および寿命向上を図ることも可能となる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態に係る等速自在継手用外方部材(外輪31)の製造装置およびその使用方法(製造方法)を説明したが、もちろん、これに限定されることなく、上記以外の構成および方法を採ることも可能である。
【0042】
例えば上記実施形態では、摺動部27を、一対の凹球面25と凸球面26とで構成した場合を説明したが、必ずしもこの形態に限るものではない。互いに相補形状をなすと共に一方の面が他方の面に対して摺動し、これによりパンチ14が球面座22に対して傾動可能である限りにおいて、任意形状の凹曲面と凸曲面とを採用することができる。なお、相補形状をなすことを条件としているのは、パンチ14が球面座22からの荷重をこれら凹曲面と凸曲面を介して受けることから、その当接(摺動)面積をある程度確保する必要があることによる。もちろん、上述の条件を満たす限りにおいて、凸曲面の形状と凹曲面の形状とが完全に一致することは求めない。
【0043】
また、上記実施形態では、凸球面26をパンチ14の側に、凹球面25を球面座22の側にそれぞれ設けた場合を説明したが、特にこの態様に限る必要はない。例えば凹球面25をパンチ14の側に、凸球面26を球面座22の側に設けることによっても摺動部27を構成することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、スライド部をなす上型12のうち、球面座22を除く部分(図示した構成要素でいえば上部ダイホルダー20と圧力座21とパンチ押え部23、およびボルト24)でスライド部本体を構成した場合を例示したが、かかる構成は任意である。パンチ14を保持しかつ一体的に上下動可能である限りにおいて、あるいはパンチ14との間に摺動部27を形成する部材(ここでは球面座22)が、パンチ14と一体的に水平移動可能である限りにおいて、種々の構成を採ることができる。
【0045】
同様に、下型11についても、外型としてのダイ13を備える限りにおいて任意の構成が可能である。例えば、パンチ14の成形側端部が押込みを開始するまでにかかるパンチ14を案内可能な構成を有するのであれば、特にガイドリング15としての形状を保つ必要はない。案内面(内周面15a)をダイ13と一体に設けた構成や、ダイリング16と一体に設けた構成、あるいはダイ押え部18と一体に設けた構成などが採用可能である。
【0046】
なお、以上の説明では、前鍛造として、前方押出し加工(A)、据込み加工(B)、および後方押出し加工(C)を順に実施する場合を例示したが、本発明に係る製造方法は、この工程に限るものではない。軸部3と中実大径部5とを一体に有する中間成形体6に対して後方押出し加工を施す限りにおいて、中間成形体6の成形方法は任意である。
【0047】
また、以上の説明では、いわゆるダブルオフセット型の摺動式等速自在継手(DOJ)の外方部材に本発明を適用した場合を説明したが、本発明は、上記構成に限らず、他の構成をなす等速自在継手用の外方部材にも適用可能である。例えば、摺動式等速自在継手であれば、ボールに代えてローラを介在させたいわゆるトリポード型等速自在継手、あるいはバーフィールド型等速自在継手に代表される固定式等速自在継手用の外方部材にも本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る等速自在継手用外方部材の前鍛造工程に係る素材の形態変化を概念的に示す側面図であって、(a)は前鍛造前の素材の側面図、(b)は前方押出し加工によって得られた初期成形体の側面図、(c)は据込み加工によって得られた中間成形体の側面図、(d)は後方押出し加工によって得られた前鍛造完了品の一部断面図である。
【図2】後方押出し加工に係る成形装置の断面図である。
【図3】後方押出し加工を概念的に示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る等速自在継手を示す断面図であって、図5のB−O−B線に沿う断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る等速自在継手を示す断面図であって、図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】(a)は、内型に設けた凸曲面の曲率半径を内型の軸方向寸法より小さくした場合の荷重の作用方向の変化を説明する図、(b)は、内型に設けた凸曲面の曲率半径を内型の軸方向寸法より大きくした場合の荷重の作用方向の変化を説明する図である。
【図7】内型に設けた凸曲面の曲率半径を内型の軸方向寸法と一致させた場合の荷重の作用方向の変化を説明する図である。
【図8】従来の後方押出し加工に係る成形装置の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 素材
3 軸部
5 中実大径部
6 中間成形体
7 カップ部
8 前鍛造完了品
11 下型
12 上型
13 ダイ
14 パンチ
15 ガイドリング
22 球面座
25 凹球面
26 凸球面
27 摺動部
28 半径方向隙間
31 等速自在継手用外方部材
34 内輪部材
37 ボール
40 軸部
41 カップ部
100 内型
101 凸曲面
102 成形側端部
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
【出願日】 平成19年2月5日(2007.2.5)
【代理人】 【識別番号】100064584
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 省吾

【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳

【識別番号】100101616
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 吉之

【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦

【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛


【公開番号】 特開2008−188633(P2008−188633A)
【公開日】 平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願番号】 特願2007−25708(P2007−25708)