トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 軌道輪部材の製造方法
【発明者】 【氏名】小林 一登

【氏名】小山 寛

【氏名】安田 裕

【要約】 【課題】外周面に取付部6を、内周面に複列の外輪軌道5、5を、それぞれ有する外輪2の如き軌道輪部材の製造方法を改良し、これら両外輪軌道5、5の転がり疲れ寿命を確保する。

【解決手段】(A)→(B)の第一の据え込み工程と、(B)→(C)の荒成形工程と、(C)→(D)の仕上成形工程と、(D)→(E)のバリ取り工程と、(E)→(F)に示した打ち抜き工程とを経て、素材16を最終段中間素材25に加工する。上記仕上成形工程では、第一パンチの押圧に伴って、第二ダイス内でこの第一パンチから退避する方向に変位する第二パンチを使用し、膨出部29を取付部6となるべき部分に向け軸方向に移動させつつ、押し潰す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部の内周面の軸方向2個所位置に背面組み合わせ型の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ設けた軌道輪部材を造る為、金属材製で円柱状の素材に、軸方向に押し潰す据え込み加工を施す事により、この素材を、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった第一中間素材とした後、この第一中間素材の軸方向両端面に1対のパンチを、この第一中間素材の周囲に荒成形用ダイスを配置した状態で押し付ける荒成形加工を施す事により、この第一中間素材を塑性変形させ、軸方向両端面に開口する1対の凹部と、外周面の軸方向中間部に径方向外方に突出する状態で形成された、上記外向フランジの外径よりも小さな外径及びこの外向フランジの厚さよりも大きな厚さを有する膨出部とを備えた第二中間素材とし、次いで、この膨出部を、軸方向に押し潰して外径を拡げつつ、上記外向フランジ部を設けるべき部分に向け軸方向に移動させる仕上成形加工を上記第二中間素材に施す事より、上記膨出部を、この膨出部よりも上記外向フランジに近く、余肉部を除去する事によりこの外向フランジを得られる形状に塑性変形させて、第三中間素材とする事を特徴とする軌道輪部材の製造方法。
【請求項2】
荒成形加工時に、第三中間素材の段階で外向フランジの内径側に位置する状態となる一方の凹部を形成する為の一方のパンチとして、先端部の外径が基端部の外径よりも小さくなったものを使用し、第二中間素材に形成される1対の凹部のうちの上記一方の凹部の内径を、奥部で小さく開口部寄りで大きくすると共に、この一方の凹部の内周面の軸方向中間部で複列の外輪軌道のうちの一方の外輪軌道を設けるべき部分に段差部を形成する、請求項1に記載した軌道輪部材の製造方法。
【請求項3】
仕上成形加工時に、第二中間素材の軸方向両端面に開口する1対の凹部に、荒成形加工で使用するパンチと同形状のパンチを内嵌する事により、これら両凹部の深さ及び内面形状を変化させずに、膨出部を、この膨出部よりも上記外向フランジに近い形状に塑性変形させる、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した軌道輪部材の製造方法。
【請求項4】
荒成形加工時に、一方のパンチに加えて、他方のパンチとしても、先端部の外径が基端部の外径よりも小さくなったものを使用し、第二中間素材に形成される1対の凹部の内径を、一方の凹部だけでなく他方の凹部も含め、それぞれの奥部で小さく開口部寄りで大きくすると共に、仕上成形加工時に、上記一方の凹部に荒成形加工で使用するパンチと同形状の一方のパンチを内嵌する事により、この一方の凹部の深さ及び内面形状を変化させない状態としつつ、上記他方の凹部に、この他方の凹部のうちで内径が大きくなった部分にのみ内嵌する他方のパンチを内嵌し、この他方のパンチと上記一方のパンチとの間で上記両凹部の奥端面同士の間に存在する隔壁部のうちの外径寄り部分を軸方向に押し潰しつつ、膨出部を外向フランジ部を設けるべき部分に向け軸方向に移動させ、上記隔壁部のうちの外径寄り部分の押し潰しに伴ってこの外径寄り部分から押し出される金属材料を、上記他方の凹部の奥部の径方向中央寄り部分に移動させる、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した軌道輪部材の製造方法。
【請求項5】
仕上成形加工を、第三中間素材の段階で外向フランジの内径側に位置する状態となる一方の凹部内に隙間なく内嵌する第一パンチと、この第一パンチの周囲にこの第一パンチと同期して移動する状態で設けられ、第二中間素材のうちで上記一方の凹部の開口周縁部に位置する軸方向一端面乃至この第二中間素材の外周面で上記第三中間素材の段階で上記外向フランジよりも軸方向の一方の側に突出する部分を覆う第一ダイスと、上記第二中間素材の外周面のうちで、少なくとも上記第三中間素材の段階で上記外向フランジよりも軸方向の他方の側に突出する部分を覆う第二ダイスと、この第二ダイスの内径側に軸方向の変位を可能に、且つ、上記第一パンチに向かう弾力を付与された状態で支持された、1対の凹部のうちの他方の凹部に内嵌する嵌合部及び上記第二中間素材のうちの軸方向他端面を抑え付ける抑え面部を備えた第二パンチとを備えた仕上加工装置を使用して行ない、上記第一パンチ及び上記第一ダイスを上記第二ダイスに向け、上記第二パンチを上記弾力に抗して変位させながら押圧しつつ、上記第二中間素材を上記第二ダイスに押し込み、膨出部を、この第二ダイスの軸方向端面と上記第一ダイスの軸方向端面との間に設けた、上記外向フランジ成形用のキャビティ部分で軸方向に押し潰す事で、上記膨出部を、この膨出部よりも上記外向フランジに近い形状に加工する、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した軌道輪部材の製造方法。
【請求項6】
膨出部を、第一、第二両ダイスの軸方向端面同士の間部分に設けた、外向フランジ成形用のキャビティ部分で軸方向に押圧する事で、上記膨出部をこの外向フランジに近い形状として第三中間素材を造った後、上記両ダイスの軸方向端面同士の間の隙間に対応して、上記外向フランジに近い形状部分の外周面に、この外周面から径方向外方に突出する状態で形成されたバリを打ち抜き除去して、第四中間素材とする、請求項5に記載した軌道輪部材の製造方法。
【請求項7】
第三中間素材を造った後、隔壁部を打ち抜き除去する、請求項1〜6のうちの何れか1項に記載した軌道輪部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車輪及びブレーキディスク等の制動用回転部材を懸架装置に対して回転自在に支持する為に利用する、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する軌道輪部材の製造方法の改良に関する。本発明の製造方法の対象となる軌道輪は、内周面の軸方向2個所位置に背面組み合わせ型で複列の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ備えたものである。この様な軌道輪部材は、上記車輪支持用転がり軸受ユニットが内輪回転型の場合には、懸架装置に結合固定される外輪が、同じく外輪回転型の場合には、車輪を支持固定した状態でこの車輪と共に回転するハブが、それぞれ相当する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を構成するホイール、及び、制動用回転部材であるディスク或いはドラムを懸架装置を構成するナックルに回転自在に支持する為に、車輪支持用転がり軸受ユニットが広く使用されている。この様な車輪支持用転がり軸受ユニットとして一般的には、図6に示した内輪回転型のものが使用されているが、一部では、図7に示した様な外輪回転型のものも使用されている。
【0003】
先ず、図6に示した、内輪回転型で従動輪(FR車及びMR車の前輪、FF車の後輪)用の車輪支持用転がり軸受ユニット1は、外輪2の内径側にハブ3を、複数の転動体4、4を介して、回転自在に支持している。使用状態では、上記外輪2を上記ナックルに結合固定し、上記ハブ3に車輪及び制動用回転部材を支持固定する。この為に、上記外輪2の内周面の2個所位置に複列の外輪軌道5、5を、外周面の一部で、軸方向中央部よりも少し軸方向内寄り部分(軸方向に関して内とは、使用状態で車体の幅方向中央側となる側を言い、図1〜5、10の上側、図6〜8の右側。反対に、使用状態で車体の幅方向外側となる、図1〜5、10の下側、図6〜8の左側を、軸方向に関して外と言う。本明細書全体で同じ。)に、特許請求の範囲に記載した外向フランジである取付部6を、それぞれ形成している。一方、上記ハブ3の外周面には、上記外輪2よりも軸方向外方に突出した外端寄り部分に、車輪及び制動用回転部材を支持固定する為の支持フランジ7を、軸方向中間部乃至内端寄り部分に複列の内輪軌道8、8を、それぞれ形成している。そして、これら両列の内輪軌道8、8と上記両列の外輪軌道5、5との間に、両列毎に複数個ずつの転動体4、4を配置して、上記外輪2の内径側での上記ハブ3の回転を自在としている。
【0004】
又、図7に示した、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1aは、それぞれの外周面に内輪軌道8、8を形成した1対の内輪9、9の周囲にハブ10を、複数個の転動体4、4を介して回転自在に支持している。使用状態では上記両内輪9、9を、懸架装置に設けた車軸に外嵌固定し、上記ハブ10に車輪及び制動用回転部材を支持固定する。この為にこのハブ10の内周面の2個所位置に複列の外輪軌道5、5を、外周面の軸方向外寄り部分に、特許請求の範囲に記載した外向フランジである支持フランジ7aを、それぞれ形成している。そして、上記両列の内輪軌道8、8と上記両列の外輪軌道5、5との間に、両列毎に複数個ずつの転動体4、4を配置して、上記両内輪9、9の外径側での上記ハブ10の回転を自在としている。尚、図示の例では、転動体4、4として玉を示したが、重量の嵩む車両用の車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、転動体として円すいころを使用する場合もある。
【0005】
図6に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1を構成する外輪2の如き、内周面の軸方向2個所位置に複列の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ備えた軌道輪部材は、鍛造加工と切削加工及び研削加工とを組み合わせて造る。例えば、特許文献1には、図8に示す様な、駆動輪用で内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1bを構成する外輪2a、及び、内輪9aと組み合わされてハブ3aを構成するハブ本体11の加工方法に就いて記載されている。即ち、上記ハブ本体11は、図9の(A)に示す様な工程により、上記外輪2aは、図9の(B)に示す様な工程により、それぞれ素材に鍛造加工を施して完成品に近い形状を有する中間素材とする。そして、この中間素材に、必要な切削加工及び研削加工を施して、上記外輪2a或いは上記ハブ本体11とする。
【0006】
ところで、車輪支持用転がり軸受ユニット用の軌道輪部材を造る為の素材は、鉄鋼メーカーで押し出し成形された、断面円形の長尺材を所定長さに切断する事で造られた、円柱状のものを使用する。この様にして得られる円柱状の素材の組成(清浄度)は均一でない事が、特許文献2に記載される等により、従来から知られている。即ち、上記素材の中央部40%の範囲(中心から半径の40%までの中央寄り円柱状部分)は、非金属介在物が存在し易い事が、上記特許文献2に記載される等により、従来から知られている。又、上記素材の外径寄り20%の範囲(中心から半径の80%よりも外周面側に存在する円筒状部分)に関しても、酸化物や非金属介在物が存在し易い等により、清浄度が低い事が知られている。そして、中心寄り、外周面寄り、何れの部分に存在する金属材料にしても、清浄度が低い金属材料が、軌道輪部材の周面に設けた軌道面のうちで、特に転動体の転動面が転がり接触する部分に露出すると、この部分の転がり疲れ寿命の確保が難しくなる。
【0007】
これらの事を考慮し、且つ、素材中の酸化物や非金属介在物の分布のばらつきや、製造作業時に発生する(押圧力等の)各種ばらつきを考慮した場合、上記素材の中央部50%の範囲、及び、上記素材の外径寄り30%の範囲に存在する金属材料が、軌道面のうちで、少なくとも転動面が転がり接触する部分に露出しない様にする事が好ましい。言い換えれば、上記軌道面のうちの少なくとも転動面が転がり接触する部分には、上記素材のうちで、中心からの半径が50〜70%の範囲である、中間円筒状部分に存在する金属材料を露出させる事が好ましい。
【0008】
ところが、本発明の製造方法の対象となる様な、内周面の軸方向2個所位置に複列で背面組み合わせ型の外輪軌道を、外周面に外向フランジ部を、それぞれ備えた軌道輪部材を鍛造加工により造る場合、上記中間円筒状部分を上記両軌道面に露出させる事が難しい。例えば、前述の図9の(B)に示した様な、前記特許文献1に記載された様な方法で、前記図6に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1の外輪2を造ると、素材中の各部の金属材料、即ち、中心から半径の50%までの中央寄り円柱状部分の金属材料12と、中心からの半径が50〜70%の範囲である、中間円筒状部分に存在する金属材料13と、外径寄り30%の範囲の外径寄り円筒状部分に存在する金属材料14とは、図10に示す様に、上記外輪2中に分布する。この外輪2は、鍛造加工により図10に実線で示した中間素材15を造った後、切削加工及び研削加工により、この図10に鎖線で示す状態にまで上記中間素材15を削り取り、上記外輪2として完成する。
【0009】
この様な中間素材15と外輪2とを示した図10中、斜格子で示した、上記中間円筒状部分に存在する金属材料13が、1対の外輪軌道5、5部分に露出すれば、これら両外輪軌道5、5の転がり疲れ寿命を確保し、上記外輪2を含む、上記車輪支持用転がり軸受ユニット1の耐久性確保を図り易くなる。ところが、上記図10から明らかな通り、従来の製造方法により上記外輪2を造ると、上記中央寄り円柱状部分の金属材料12が、上記両外輪軌道5、5のうちの軸方向内側の外輪軌道5の一部(特に、外向フランジ部である取付部6の内径側に位置する部分の)表面に露出する。この為、従来から知られている軌道輪部材の製造方法では、上記車輪支持用転がり軸受ユニット1の耐久性確保を図る為の設計の自由度が限られる。
【0010】
特許文献2には、円柱状の素材に前後方押し出し加工を施す際の押し出し方法を工夫する事で、中間素材のうちで外輪軌道となるベき部分に、中央寄り円柱状部分の金属材料12{次述する図11(B)(C)の斜格子部分}が存在しない様にする、軌道輪部材の製造方法に就いて記載されている。この様な従来の製造方法の場合には、図11の(A)に示す様な円柱状の素材16の軸方向両端面中央部を互いに近づく方向に押し潰し、図11の(B)(C)に示す様な、軸方向両端面に開口する第一、第二両円形凹部17、18と、これら両円形凹部17、18の底面同士の間に存在する隔壁部19とを備えた中間素材20とする。更に、この中間素材20に、所定の切削(旋削)加工及び研削加工を施して、図11の(B)(C)に鎖線で示した様な断面形状を備えた外輪2bとする。
【0011】
上記隔壁部19の形成位置を工夫しない場合には、図11の(B)に示す様に、上記中央寄り円柱状部分の金属材料12が外輪軌道5、5となるべき部分に存在する。これに対して、図11の(C)に示す様に、上記隔壁部19の形成位置を、上記外輪軌道5、5となるべき部分の間位置にすると、上記中央寄り円柱状部分の金属材料12が外輪軌道5、5となるべき部分に存在しなくなる。但し、上記図11の(C)に示す様に、上記隔壁部19の形成位置を工夫しただけでは、製造コストの低減と耐久性向上とを高次元で両立させる事はできない。
【0012】
即ち、上記隔壁部19は、その後打ち抜き除去して、スクラップとして廃棄・回収するものである。従って、この打ち抜き除去作業を容易に行なう面からも、材料の歩留り向上を図る面からも、上記隔壁部19の軸方向寸法(厚さ)は小さい程良い。ところが、図11の(C)に示した状態から更に上記隔壁部19を押し潰すと、上記中央寄り円柱状部分の金属材料12が上記両外輪軌道5、5となるべき部分に移動し、これら両外輪軌道5、5の転がり疲れ寿命の確保が難しくなる。言い換えれば、上記図11の(A)→(C)に示した製造方法では、上記隔壁部19の軸方向寸法を相当に大きくする必要が生じ、工業製品として製造コストを抑制する面からは好ましくない。
【0013】
【特許文献1】特開2005−83513号公報
【特許文献2】特開2006−250317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、内周面の軸方向2個所位置に複列の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ備えた軌道輪部材を、円柱状の素材を塑性変形させる事により造る場合に、上記両外輪軌道のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料を露出させられ、しかも、低コストで実施できる軌道輪部材の製造方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の軌道輪部材の製造方法は、円筒部の内周面の軸方向2個所位置に背面組み合わせ型の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ設けた軌道輪部材を造る。
この為に、先ず、金属材製で円柱状の素材に、軸方向に押し潰す据え込み加工を施す事により、この素材を、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった第一中間素材とする。
その後、上記第一中間素材に荒成形加工を施す。この荒成形加工では、この第一中間素材の軸方向両端面に1対のパンチを、この第一中間素材の周囲に荒成形用ダイスを配置した状態で押し付ける。そして、この第一中間素材を塑性変形させ、軸方向両端面に開口する1対の凹部と、外周面の軸方向中間部に径方向外方に突出する状態で形成された、上記外向フランジの外径よりも小さな外径及びこの外向フランジの厚さよりも大きな厚さを有する膨出部とを備えた、第二中間素材とする。
次いで、この第二中間素材に仕上成形加工を施す。この仕上成形加工では、上記膨出部を、軸方向に押し潰して外径を拡げつつ、上記外向フランジ部を設けるべき部分に向け軸方向に移動させる。そして、上記膨出部を、この膨出部よりも上記外向フランジに近く、余肉部を除去する事によりこの外向フランジを得られる形状に塑性変形させて、第三中間素材とする。
【0016】
上述の様な本発明の軌道輪部材の製造方法を実施する場合に、好ましくは、請求項2に記載した様に、上記荒成形加工時に、上記第三中間素材の段階で外向フランジの内径側に位置する状態となる一方の凹部を形成する為の一方のパンチとして、先端部の外径が基端部の外径よりも小さくなったものを使用する。そして、第二中間素材に形成される1対の凹部のうちの上記一方の凹部の内径を、奥部で小さく開口部寄りで大きくすると共に、この一方の凹部の内周面の軸方向中間部で複列の外輪軌道のうちの一方の外輪軌道を設けるべき部分に段差部を形成する。
【0017】
或いは、請求項3に記載した様に、上記仕上成形加工時に、前記第二中間素材の軸方向両端面に開口する前記1対の凹部に、荒成形加工で使用するパンチと同形状のパンチを内嵌する。そして、これら両凹部の深さ及び内面形状を変化させずに、上記膨出部を、この膨出部よりも上記外向フランジに近い形状(余肉部を除去する事によりこの外向フランジを得られる形状)に塑性変形させる。
【0018】
或いは、請求項4に記載した様に、上記荒成形加工時に、上記一方のパンチに加えて、他方のパンチとしても、先端部の外径が基端部の外径よりも小さくなったものを使用する。そして、前記第二中間素材に形成される前記1対の凹部の内径を、一方の凹部だけでなく他方の凹部も含め、それぞれの奥部で小さく開口部寄りで大きくすると共に、仕上成形加工時に、上記一方の凹部に荒成形加工で使用するパンチと同形状の一方のパンチを内嵌する。これにより、この一方の凹部の深さ及び内面形状を変化させない状態としつつ、上記他方の凹部に、この他方の凹部のうちで内径が大きくなった部分にのみ内嵌する他方のパンチを内嵌する。そして、この他方のパンチと上記一方のパンチとの間で上記両凹部の奥端面同士の間に存在する隔壁部のうちの外径寄り部分を軸方向に押し潰しつつ、膨出部を外向フランジ部を設けるべき部分に向け軸方向に移動させる。又、上記隔壁部のうちの外径寄り部分の押し潰しに伴ってこの外径寄り部分から押し出される金属材料を、上記他方の凹部の奥部の径方向中央寄り部分に移動させる。
【0019】
又、本発明の軌道輪部材の製造方法を実施する場合に、より具体的には、請求項5に記載した様に、上記仕上成形加工を、第一パンチと、第一ダイスと、第二ダイスと、第二パンチとを備えた仕上加工装置を使用して行なう。
このうちの第一パンチは、前記第三中間素材の段階で前記外向フランジの内径側に位置する状態となる一方の凹部内に隙間なく内嵌するものとする。尚、本明細書及び特許請求の範囲で言う隙間なくとは、ワーク(各段階での中間素材)の表面を、当該表面部分の塑性変形を抑えられる様にバックアップできる状態を言う。塑性変形に結び付かない様な微小隙間が存在する状態も、隙間なくに相当する。
又、上記第一ダイスは、上記第一パンチの周囲にこの第一パンチと同期して移動する状態で設けられたものとする。即ち、上記第一ダイスは、この第一パンチと一体に造られるか、或いは別体に造られたものを結合固定している。この様な上記第一ダイスは、前記第二中間素材のうちで上記一方の凹部の開口周縁部に位置する軸方向一端面乃至この第二中間素材の外周面で上記第三中間素材の段階で上記外向フランジよりも軸方向の一方の側に突出する部分を覆う。
又、上記第二ダイスは、上記第二中間素材の外周面のうちで、少なくとも上記第三中間素材の段階で上記外向フランジよりも軸方向の他方の側に突出する部分を覆うものとする。
更に、上記第二パンチは、上記第二ダイスの内径側に軸方向の変位を可能に、且つ、上記第一パンチに向かう弾力を付与された状態で支持され、前記1対の凹部のうちの他方の凹部に内嵌する嵌合部、及び、上記第二中間素材のうちの軸方向他端面を抑え付ける抑え面部とを備えたものとする。
この様な仕上加工装置を使用して上記仕上成形加工を行なう際に、上記第一パンチ及び上記第一ダイスを上記第二ダイスに向け、上記第二パンチを上記弾力に抗して変位させながら押圧しつつ、上記第二中間素材を上記第二ダイスに押し込む。そして、前記膨出部をこの第二ダイスの軸方向端面と上記第一ダイスの軸方向端面との間に設けた、上記外向フランジ成形用のキャビティ部分で軸方向に押し潰す事で、上記膨出部を、この膨出部よりも上記外向フランジに近い形状に加工する。
【0020】
又、本発明の軌道輪部材の製造方法を実施する場合に、より具体的には、請求項6に記載した様に、膨出部を、第一、第二両ダイスの軸方向端面同士の間部分に設けた、外向フランジ成形用のキャビティ部分で軸方向に押圧する事で、上記膨出部をこの外向フランジに近い形状として第三中間素材を造った後、上記両ダイスの軸方向端面同士の間の隙間に対応して、上記外向フランジに近い形状部分の外周面に、この外周面から径方向外方に突出する状態で形成されたバリを打ち抜き除去して、第四中間素材とする。
更に、請求項7に記載した様に、第三中間素材を造った後(第三中間素材を造った後直ちに、或いは上記第四中間素材を造った後)、隔壁部を打ち抜き除去する。
【発明の効果】
【0021】
上述の様に構成する本発明の軌道輪部材の製造方法によれば、内周面のうちの軸方向に離隔した2個所位置に形成した両外輪軌道のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料を露出させられる。この為、上記両外輪軌道の転がり疲れ寿命を確保し、これら両外輪軌道を備えた軌道輪部材を含む、車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性確保の為の設計の自由度向上を図れる。又、隔壁部の軸方向寸法(厚さ)を小さくしても、上記両外輪軌道のうちで転動体荷重が作用する部分に清浄度の高い金属材料を露出させられる為、上記隔壁部を除去する作業の容易化と材料の歩留り向上とにより、製造コストの上昇を抑えられる。
【0022】
又、必要に応じて、請求項2〜5に記載した構成を採用する事により、外向フランジの軸方向位置や各外輪軌道の設置位置に応じて、上記中間円筒状部分の金属材料をこれら各外輪軌道の表面部分に、効果的に露出させられる。
又、請求項6に記載した様に、固定、可動両ダイスの先端面同士の間の隙間に対応して形成されたバリを打ち抜き除去すれば、加工コストを低く抑えつつ、上記外向フランジを含む、各部の寸法及び形状を、所望通り精度良く造れる。
更に、請求項7に記載した発明の軌道輪部材の製造方法によれば、余分な金属材料を除去して、軽量な車輪支持用転がり軸受ユニットを得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、請求項1〜3、5〜7に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の製造方法は、図1の(A)に示した、中炭素鋼、軸受鋼、浸炭鋼の如き鉄系合金等の、塑性加工後に焼き入れ硬化可能な、金属製で円柱状の素材16に、順次、塑性加工或いは打ち抜き加工を施す。そして、(B)に示した第一中間素材21、(C)に示した第二中間素材22、(D)に示した第三中間素材23、(E)に示した第四中間素材24を経て、(F)に示した最終段中間素材25を得る。更に、この最終段中間素材25に、必要とする切削加工及び研削加工を施して、前述の図6に示した様な、内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1を構成する外輪2とする。上記素材16の容積は、上記第四中間素材24の容積よりも少しだけ(後述するバリ26の容積分だけ)大きくしている。以下、上記素材16を上記最終段中間素材25に加工する工程に就いて、順番に説明する。尚、以下の加工は、基本的には総て熱間若しくは温間で行なうが、小型のハブを形成する場合等、可能であれば、冷間で行なっても良い。
【0024】
先ず、第一据え込み工程で、図1の(A)→(B)に示す様に、上記素材16を軸方向に押し潰しつつ外径を拡げ、この素材16を、径方向中間部が膨らんだビヤ樽型の、上記第一中間素材21とする。上記第一据え込み工程を経て、中心から半径の50%までの中央寄り円柱状部分の金属材料12と、中心からの半径が50〜70%の範囲である、中間円筒状部分の金属材料13と、外径寄り30%の範囲の外径寄り円筒状部分の金属材料14との分布は、図1の(A)→(B)の様に変化する。
【0025】
次の荒成形加工工程で、図1の(B)→(C)に示す様に、上記第一中間素材21を上記第二中間素材22に塑性加工する。この様な荒成形加工工程では、鍛造加工の分野で広く知られている方法により、上記第一中間素材21の軸方向両端面に1対のパンチを、この第一中間素材21の周囲に荒成形用ダイスを配置した状態で押し付ける。この様にして行なう荒成形加工工程により、上記第一中間素材21を塑性変形させ、上記図1の(C)に示す様な、軸方向両端面に開口する1対の凹部である、第一、第二両円形凹部27、28を形成する。
【0026】
この様にして行なう、上記荒成形加工の際、上記第一中間素材21の外周面を抑え付ける、上記荒成形用ダイスの内周面の一部は、この第一中間素材21の軸方向中間部外周面の一部から径方向に離隔させた状態とする。そして、上記1対のパンチを上記第一中間素材21の軸方向両端面に押し付ける事で、これら軸方向両端面に第一、第二両円形凹部27、28を形成し、上記第二中間素材22とする。本例の場合には、上記両パンチのうちの一方(図1の上方に配置する)パンチとして、先端部の外径が基端部の外径よりも小さくなったものを使用する。そして、上記第一中間素材21に形成される上記両円形凹部27、28のうち、図1の上側に形成する第一円形凹部27の内径を、奥部で小さく開口部寄りで大きくすると共に、この第一円形凹部27の内周面の軸方向中間部で複列の外輪軌道のうちの軸方向内側の外輪軌道を設けるべき部分に、段差部35を形成する。
【0027】
又、上記第一、第二両円形凹部27、28を形成する事により、上記第一中間素材21の径方向中央部から金属材料を押し出す。そして、この径方向中央部からの金属材料の押し出しに伴って、上記第一中間素材21の軸方向両端寄りで外径寄り部分に存在する金属材料を、上記両パンチの外周面と上記荒成形用ダイスの内周面との間に存在する円筒状のキャビティに向け、軸方向両側に押し出す。これと同時に、上記第一中間素材21の軸方向中間部の金属材料を、軸方向中間部外周面の一部で上記荒成形用ダイスの内周面により抑え付けられていない部分に移動させ、この荒成形用ダイスの内周面との距離に応じた分だけ、径方向外方に押し出す。そして、軸方向中間部外周面に膨出部29を形成し、上記第二中間素材22とする。この膨出部29は、この第二中間素材22の外周面の軸方向中間部に径方向外方に突出する状態で形成されたもので、完成状態で外輪2の外周面に造るべき、外向フランジである取付部6(図3の鎖線及び図6参照)の外径よりも小さな外径及びこの取付部6の厚さよりも大きな厚さを有する。以上の様な荒成形加工工程を経て、前記各部分の金属材料12、13、14の分布は、図1の(B)→(C)の様に変化する。
【0028】
上述の様な第二中間素材22は、次いで行なう仕上成形加工により、図1の(D)に示す様な第三中間素材23とする。本例の場合、この仕上成形加工を、図2に示す様な仕上加工装置30を使用して行なう。この仕上加工装置30は、第一パンチ31と、第一ダイス32と、第二ダイス33と、第二パンチ34とを備える。
このうちの第一パンチ31は、上記第三中間素材23の段階で上記取付部6(となるべき部分)の内径側に位置する状態となる、一方の凹部である、前記段付形状の第一円形凹部27内に隙間なく内嵌するものである。この為に上記第一パンチ31は、先端側の小径部と基端側の大径部とを傾斜段部により連続させた、段付円柱状である。
【0029】
又、上記第一ダイス32は、上記第一パンチ31の周囲にこの第一パンチ31と同期して移動する状態で設けられている。この為に本例の場合には、上記第一ダイス32を、上記第一パンチ31と一体に造っている。この様な第一ダイス32は、上記第二中間素材22のうちで上記第一円形凹部27の開口周縁部に位置する軸方向一端面、乃至、この第二中間素材22の外周面で上記第三中間素材23の段階で上記取付部6よりも軸方向内側に突出する部分を覆う。言い換えれば、上記第一パンチ31の基端部外周面と上記第一ダイス32の内周面との間に、上記第二中間素材22の軸方向内端部で、上記第三中間素材23の段階で上記取付部6よりも軸方向内側に突出する部分を嵌合させる、環状凹部36を、全周に亙り形成している。この環状凹部36の内面形状は、造るべき上記第三中間素材23の軸方向内端部で上記取付部6よりも軸方向内側に突出する部分の外面形状に見合う(凹凸が逆で大きさが同じである)形状を有する。
【0030】
又、上記第二ダイス33は、上記第二中間素材22の外周面のうちで、上記第三中間素材23の段階で上記取付部6よりも軸方向外側に突出する部分、及び、この取付部6の周囲部分を覆う。この為に上記第二ダイス33に設けた成形孔37の内周面形状を、上記第三中間素材23のうちで、上記取付部6乃至軸方向外端縁に至る部分の外周面に見合う形状としている。具体的には、上記成形孔37の上端開口部に、上記取付部6に見合う形状を有する成形用段部38を形成し、この成形用段部38よりも下側部分を、下方に向かう程内径が小さくなる方向に傾斜した部分円すい状凹面としている。又、この部分円すい状凹面の上端部と上記成形用段部38との連続部は、断面形状がほぼ四分の一円弧状である、凸曲面部43としている。
【0031】
更に、前記第二パンチ34は、カウンターパンチとしての機能を持つ。即ち、この第二パンチ34は、図1の(C)→(D)及び図2の(A)→(B)→(C)に示した仕上成形加工時に、前記第二円形凹部28の形状が崩れるのを防止しつつ、上記第二中間素材22が、上記第一パンチ31の加工に伴って、上記第二ダイス33内に押し込まれるのを許容する。この様な役目を果たす為に上記第二パンチ34は、上記第二ダイス33の内径側下寄り部分に、軸方向の変位を可能に、且つ、ばね39、39等の弾性材により、或いは図示しない流体圧シリンダにより、上記第一パンチ31に向かう大きな弾力(但し、プレス加工機のラムが上記第一パンチ31を下方に押圧する力よりも十分に小さな)を付与された状態で支持されている。又、上記第二パンチ34は、嵌合部40と鍔部41とを備える。そして、上記第二円形凹部28に隙間なく内嵌自在な形状及び大きさを有する。又、上記鍔部41は、上記嵌合部40の下端部から径方向外方に突出する状態で設けられたもので、この鍔部41の上面を、上記第二中間素材22のうちの軸方向外端面を抑え付ける抑え面部42としている。
【0032】
上述の様な、第一パンチ31と、第一ダイス32と、第二ダイス33と、第二パンチ34とを備えた仕上加工装置30を使用して、上記図1の(C)→(D)及び図2の(A)→(B)→(C)に示した仕上成形加工を行なうには、先ず、プレス加工機のラムと共に上記第一パンチ31及び上記第一ダイス32を上昇させた状態で、上記第二ダイス33に、上記第二中間素材22をセットする。この際、上記第二パンチ34は、上記各ばね39、39の弾力により上昇しているので、上記第二中間素材22の軸方向外端面に開口した上記第二円形凹部28に、上記第二パンチ34の嵌合部40を、隙間なく嵌合させる。その後、上記プレス加工機のラムと共に上記第一パンチ31及び上記第一ダイス32を下降させ、図2の(A)に示す様に、上記第一パンチ31を上記第二中間素材22の軸方向内端面に開口した、前記第一円形凹部27に隙間なく内嵌すると共に、この第二中間素材22の軸方向内端部を、前記環状凹部36に内嵌する。
【0033】
この状態から、上記ラムと共に上記第一パンチ31及び上記第一ダイス32を更に下降させると、図2の(A)→(B)に示す様に、上記第二中間素材22が上記第二ダイス33の成形孔37内に、上記第二パンチ34を押し下げつつ、押し込まれる。この様に、上記第二中間素材22が上記成形孔37内に押し込まれる結果、上記第二中間素材22の外周面に存在する前記膨出部29が、前記成形用段部38の内周縁部に存在する凸曲面部43により扱かれて、この第二中間素材22の軸方向内方に移動する。実際には、上記仕上成形加工の進行に伴って、上記第二中間素材22が下方に押し下げられるのに対して、上記膨出部29がそのままの位置に止まる。この状態では、上記成形用段部38の上面と上記第一ダイス32の下面とは、未だ十分に離隔しているので、上記膨出部29は、上記第二中間素材22の軸方向内方に移動するだけであり、その形状が大きく変化する事はない。
【0034】
この状態から、上記第一パンチ31及び上記第一ダイス32を更に下降させると、図2の(B)→(C)に示す様に、上記膨出部29が、上記成形用段部38の上面と上記第一ダイス32の下面との間で押し潰されて、前記取付部6に近い形状に加工される。即ち、上記膨出部29が軸方向に押し潰されて、この取付部6とほぼ同じ形状で、軸方向寸法がこの取付部6よりも少し大きな、素取付部44となる。又、この素取付部44の外周面には、金属材料の余剰分が、バリ26となって突出する。この結果、図1の(D)及び図2の(C)に示した第三中間素材23を得られる。尚、上記素取付部44に切削加工を施す事により得られる上記取付部6に欠肉が生じるのを防止すべく、上記バリ26が確実に生じる様に、上記膨出部29の容積が上記素取付部44の容積よりも少し大きくなる様に、使用する素材16{図1の(A)参照}の容積を規制する。以上の様な仕上成形加工工程を経て、前記各部分の金属材料12、13、14の分布は、図1の(C)→(D)の様に変化する。
【0035】
この様にして造られた、上記素取付部44の外周面からバリ26を突出させた、上記第三中間素材23は、上記第一パンチ31及び上記第一ダイス32を上昇させてから、前記第二パンチ34を上昇させる事で、前記仕上加工装置30から取り出す。そして、図1の(D)→(E)に示す様に、上記バリ26を打ち抜き除去して、前記第四中間素材24とする。
そして、最後に、図1の(E)→(F)に示す様に、上記両円形凹部27、28同士の間に存在する隔壁部19を、プレス加工等により打ち抜き除去し、前記最終段中間素材25とする。この最終段中間素材25は、完成後の外輪2{図3の(A)の鎖線参照}よりも厚肉である。
【0036】
そこで、この最終段中間素材25に、所定の切削(旋削)加工及び研削加工を施して、上記外輪2として完成する。図3に、上記第四中間素材24の段階での、上記各金属材料12〜14の分布状態と、完成後の外輪2(図3の鎖線参照)の断面形状とを示している。この様な図3から明らかな通り、本例の外輪2の製造方法によれば、この外輪2の内周面のうちの軸方向に離隔した2個所位置に形成した両外輪軌道5、5のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料13を露出させられる。この為、上記両外輪軌道5、5の転がり疲れ寿命を確保し、これら両外輪軌道5、5を備えた外輪2を含む車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性確保の為の設計の自由度向上を図れる。
【0037】
[実施の形態の第2例]
図4〜5は、請求項1、2、4〜7に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。上述した実施の形態の第1例の場合、図1の(C)に示した第二中間素材22を図1の(D)に示した第三中間素材23に加工する過程で、軸方向寸法を実質的に変化させない。これに対して本例の場合には、図4の(C)に示した第二中間素材22aを図4の(D)に示した第三中間素材23aに加工する過程で、軸方向寸法を縮める。
【0038】
即ち、本例の場合には、上記第二中間素材22a得る為の荒成形加工時に、第一円形凹部27を形成する為の一方のパンチに加えて、第二円形凹部28aを形成する為の他方のパンチとしても、先端部の外径が基端部の外径よりも小さくなったものを使用する。そして、上記第二中間素材22aに形成される第一、第二両円形凹部27、28aの内径を、第一円形凹部27だけでなく第二円形凹部28aも含め、それぞれの奥部で小さく開口部寄りで大きくしている。
【0039】
図4の(C)に示した第二中間素材22aを図4の(D)に示した第三中間素材23aに加工する、仕上成形加工時には、上記第一円形凹部27に、荒成形加工で使用するパンチと同形状の第一パンチを内嵌する。これにより、この第一円形凹部27の深さ及び内面形状を変化させない状態としつつ、上記第二円形凹部28aに、この第二円形凹部28aのうちで内径が大きくなった、下半部分にのみ内嵌する第二パンチを内嵌する。そして、この第二パンチと上記第一パンチとの間で、上記第一、第二両円形凹部27、28aの奥端面同士の間に存在する隔壁部19aのうちの外径寄り部分を軸方向に押し潰しつつ、上記実施の形態の第1例と同様に、膨出部29を、外向フランジ部である取付部6を設けるべき部分に向け、軸方向内方に移動させる。又、上記隔壁部19aのうちの外径寄り部分の押し潰しに伴ってこの外径寄り部分から押し出される金属材料を、上記第二円形凹部28aの奥部の径方向中央寄り部分に移動させる。
【0040】
この様な本例の製造方法によれば、上記仕上加工時に、中央寄り円柱部分の金属材料12を径方向内方に移動させる事で、この金属材料が、完成後の外輪2の内周面のうちで1対の外輪軌道5、5となるべき部分に移動する事を防止できる。図5は、本例を実施する場合に、第四中間素材24の段階での、各部の金属材料12〜14の分布を示している。その他の部分の構成に就いては、前述した実施の形態の第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上述の説明は、本発明の軌道輪部材の製造方法により、前述の図6、8に示した様な、内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1、1bを構成する外輪2、2aを造る場合を中心に説明した。但し、前述の図7に示した様な、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1aを構成するハブ10も、本発明の製造方法により造る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の軌道輪部材の製造方法の実施の形態の第1例を工程順に示す、素材乃至最終段中間素材の断面図。
【図2】第二中間素材を第三中間素材に加工する仕上成形加工の実施状況を工程順に示す断面図。
【図3】第四中間素材の段階での、中央寄り円柱状部分の金属材料と、中間円筒状部分の金属材料と、外径寄り円筒状部分の金属材料との分布状況を示す断面図。
【図4】本発明の軌道輪部材の製造方法の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図。
【図5】実施の形態の第2例に関して、第四中間素材の段階での、中央寄り円柱状部分の金属材料と、中間円筒状部分の金属材料と、外径寄り円筒状部分の金属材料との分布状況を示す断面図。
【図6】本発明の製造方法の対象となる軌道輪部材である外輪を備えた、内輪回転型で従動輪用の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す断面図。
【図7】本発明の製造方法の対象となる軌道輪部材であるハブを備えた、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す断面図。
【図8】本発明の製造方法の対象となる外輪を備えた、内輪回転型で駆動輪用の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す断面図。
【図9】従来から知られている軌道輪部材の製造方法の2例を、それぞれ工程順に示す断面図。
【図10】従来の製造方法により第四中間素材を造った状態での、中央寄り円柱状部分の金属材料と、中間円筒状部分の金属材料と、外径寄り円筒状部分の金属材料との分布状況を示す断面図。
【図11】従来の製造方法の別例を説明する、素材の断面形状(A)と、隔壁部の形成位置を工夫しない場合の中間素材の断面形状(B)と、工夫した場合の中間素材の断面形状(C)とを示す図。
【符号の説明】
【0043】
1、1a、1b 車輪支持用転がり軸受ユニット
2、2a、2b 外輪
3、3a ハブ
4 転動体
5 外輪軌道
6 取付部
7、7a 支持フランジ
8 内輪軌道
9、9a 内輪
10 ハブ
11 ハブ本体
12 中央寄り円柱部分の金属材料
13 中間円筒状部分の金属材料
14 外径寄り円筒状部分の金属材料
15 中間素材
16 素材
17 第一円形凹部
18 第二円形凹部
19、19a 隔壁部
20 中間素材
21 第一中間素材
22、22a 第二中間素材
23、23a 第三中間素材
24 第四中間素材
25 最終段中間素材
26 バリ
27 第一円形凹部
28、28a 第二円形凹部
29 膨出部
30 仕上加工装置
31 第一パンチ
32 第一ダイス
33 第二ダイス
34 第二パンチ
35 段差部
36 環状凹部
37 成形孔
38 成形用段部
39 ばね
40 嵌合部
41 鍔部
42 抑え面部
43 凸曲面部
44 素取付部
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成19年2月2日(2007.2.2)
【代理人】 【識別番号】100087457
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男

【識別番号】100141508
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 隆史

【識別番号】100148677
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 正樹

【識別番号】100056833
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 欽造


【公開番号】 特開2008−188612(P2008−188612A)
【公開日】 平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願番号】 特願2007−23898(P2007−23898)