トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 軌道輪部材の製造方法
【発明者】 【氏名】小林 一登

【氏名】小山 寛

【氏名】安田 裕

【要約】 【課題】外周面に取付部6を、内周面に複列の外輪軌道5、5を、それぞれ有する外輪2の如き軌道輪部材の製造方法を改良し、これら両軌道輪5、5の転がり疲れ寿命を確保する。

【解決手段】(A)→(B)の第一の据え込み工程と、(B)→(C)の前後方押し出し工程と、(C)→(D)の第二の据え込み工程と、(D)→(E)のバリ取り工程と、(E)→(F)に示した打ち抜き工程とを経て、素材16を最終段中間素材25に加工する。上記第二の据え込み工程では、加工の終段で固定ダイスから退避する可動ダイスを使用し、余分な金属材料を取付部6となるべき部分及びバリ38部分に向け、径方向外方に送る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部の内周面の軸方向2個所位置に背面組み合わせ型の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ設けた軌道輪部材を造る為、金属材製で円柱状の素材を軸方向に押し潰す据え込み加工により、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった前段階中間素材とした後、この前段階中間素材の周囲を、上記外向フランジ部を加工する為のフランジ成形用空間を備えたダイスにより囲んだ状態で、上記前段階中間素材を1対のパンチにより軸方向両側から押圧してこの前段階中間素材を塑性変形させ、軸方向両端部を、これら両パンチの外周面形状に見合う内周面形状を有する円筒部とし、外周面に上記フランジ成形用空間に見合う形状を有する上記外向フランジ部を形成して後段階中間素材とする軌道輪部材の製造方法に於いて、上記素材として、この後段階中間素材を造る為に必要とするよりも大きな容積を有するものを使用すると共に、上記ダイスとして、上記両パンチのうちの一方のパンチの周囲に固定された固定ダイスと、これら両パンチのうちの他方のパンチの周囲に、この固定ダイスに向かう方向の弾力を付与された状態で設けられた可動ダイスとから成るものを使用し、この可動ダイスの先端面と上記固定ダイスの先端面とを突き合わせた状態で、上記両パンチにより上記前段階中間素材を軸方向両側から押し潰して、この前段階中間素材を構成する金属材料を上記両ダイスと上記両パンチとにより囲まれるキャビティ内に充満させた後、この金属材料により上記可動ダイスを押圧する事により、この可動ダイスを上記弾力に抗して上記固定ダイスから退避させ、余剰の金属材料をこれら両ダイスの先端面同士の間に生じる隙間に逃がす事を特徴とする軌道輪部材の製造方法。
【請求項2】
前段階中間素材の軸方向両端面中央部を互いに近づく方向に押し潰し、軸方向一端面側に開口する第一円形凹部及び軸方向他端面側に開口する第二円形凹部とこれら両円形凹部の底面同士の間に存在する隔壁部とを備えた第二前段階中間素材とする前後方押し出し工程の後、この第二前段階中間素材を固定、可動両ダイスの内径側にセットした状態で、この第二前段階中間素材を1対のパンチの先端面同士の間で押圧し、上記第一円形凹部の深さ及び内面形状を変化させずに上記隔壁部を押し潰して、金属材料を径方向外方に移動させ、外周面に外向フランジを形成して後段階中間素材とする、請求項1に記載した軌道輪部材の製造方法。
【請求項3】
前段階中間素材を固定、可動両ダイスの内径側にセットした状態で、この前段階中間素材を1対のパンチの先端面同士の間で押圧し、この前段階中間素材の径方向中央部を押し潰して金属材料を径方向外方に移動させると共に、軸方向一端面側に開口する第一円形凹部及び軸方向他端面側に開口する第二円形凹部と、これら両円形凹部の底面同士の間に存在する隔壁部と、外向フランジとを形成して後段階中間素材とする、請求項1に記載した軌道輪部材の製造方法。
【請求項4】
第一円形凹部の内周面を、内径が小さい奥半部と内径が大きい開口側半部とを段差部で連続させた、段付円筒面状とする、請求項2〜3のうちの何れか1項に記載した軌道輪部材の製造方法。
【請求項5】
固定、可動両ダイスと1対のパンチとの間で前段階中間素材を塑性変形させて予備後段階中間素材を造った後、上記両ダイスの先端面同士の間の隙間に対応して、外向フランジの外周面に、この外周面から径方向外方に突出する状態で形成された、バリを打ち抜き除去して後段階中間素材とする、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した軌道輪部材の製造方法。
【請求項6】
固定、可動両ダイスと1対のパンチとの間で前段階中間素材を塑性変形させて後段階中間素材を造った後、隔壁部を打ち抜き除去する、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した軌道輪部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車輪及びブレーキディスク等の制動用回転部材を懸架装置に対して回転自在に支持する為に利用する、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する軌道輪部材の製造方法の改良に関する。本発明の製造方法の対象となる軌道輪は、内周面の軸方向2個所位置に背面組み合わせ型で複列の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ備えたものである。この様な軌道輪部材は、上記車輪支持用転がり軸受ユニットが内輪回転型の場合には、懸架装置に結合固定される外輪が、同じく外輪回転型の場合には、車輪を支持固定した状態でこの車輪と共に回転するハブが、それぞれ相当する。
【0002】
尚、本発明の製造方法を実施する場合に、上記外向フランジの軸方向位置は特に問わない。但し、軌道輪部材が、外輪、ハブ、何れであっても、本発明の製造方法の対象となる軌道輪部材は、当該軌道輪の軸方向に関する、上記外向フランジの位置が、この外向フランジ部のうちの少なくとも厚さ方向の一部が上記両外輪軌道の中心位置同士の間に存在する事が好ましい。尚、これら両外輪軌道の中心位置とは、これら両外輪軌道と転動体との接触面(転動体が玉である場合には接触楕円)の中心位置を言う。上記外向フランジの位置が、上記両外輪軌道の中心位置同士の間から軸方向に外れた位置に存在すると、外れた量が大きい程、本発明の効果を得にくくなる。但し、この場合でも、大きく外れない限り、従来の製造方法に比べて、耐久性を向上させる事は可能である。
【背景技術】
【0003】
自動車の車輪を構成するホイール、及び、制動用回転部材であるディスク或いはドラムを懸架装置を構成するナックルに回転自在に支持する為に、車輪支持用転がり軸受ユニットが広く使用されている。この様な車輪支持用転がり軸受ユニットとして一般的には、図7に示した内輪回転型のものが使用されているが、一部では、図8に示した様な外輪回転型のものも使用されている。
【0004】
先ず、図7に示した、内輪回転型で従動輪(FR車及びMR車の前輪、FF車の後輪)用の車輪支持用転がり軸受ユニット1は、外輪2の内径側にハブ3を、複数の転動体4、4を介して、回転自在に支持している。使用状態では、上記外輪2を上記ナックルに結合固定し、上記ハブ3に車輪及び制動用回転部材を支持固定する。この為に、上記外輪2の内周面の2個所位置に複列の外輪軌道5、5を、外周面の一部で、軸方向中央部よりも少し軸方向内寄り部分(軸方向に関して内とは、使用状態で車体の幅方向中央側となる側を言い、図1〜6、11の上側、図7〜9の右側。反対に、使用状態で車体の幅方向外側となる、図1〜6、11の下側、図7〜9の左側を、軸方向に関して外と言う。本明細書全体で同じ。)に、特許請求の範囲に記載した外向フランジである取付部6を、それぞれ形成している。一方、上記ハブ3の外周面には、上記外輪2よりも軸方向外方に突出した外端寄り部分に、車輪及び制動用回転部材を支持固定する為の支持フランジ7を、軸方向中間部乃至内端寄り部分に複列の内輪軌道8、8を、それぞれ形成している。そして、これら両列の内輪軌道8、8と上記両列の外輪軌道5、5との間に、両列毎に複数個ずつの転動体4、4を配置して、上記外輪2の内径側での上記ハブ3の回転を自在としている。
【0005】
又、図8に示した、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1aは、それぞれの外周面に内輪軌道8、8を形成した1対の内輪9、9の周囲にハブ10を、複数個の転動体4、4を介して回転自在に支持している。使用状態では上記両内輪9、9を、懸架装置に設けた車軸に外嵌固定し、上記ハブ10に車輪及び制動用回転部材を支持固定する。この為にこのハブ10の内周面の2個所位置に複列の外輪軌道5、5を、外周面の軸方向外寄り部分に、特許請求の範囲に記載した外向フランジである支持フランジ7aを、それぞれ形成している。そして、上記両列の内輪軌道8、8と上記両列の外輪軌道5、5との間に、両列毎に複数個ずつの転動体4、4を配置して、上記両内輪9、9の外径側での上記ハブ10の回転を自在としている。尚、図示の例では、転動体4、4として玉を示したが、重量の嵩む車両用の車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、転動体として円すいころを使用する場合もある。
【0006】
図7に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1を構成する外輪2の如き、内周面の軸方向2個所位置に複列の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ備えた軌道輪部材は、鍛造加工と切削加工及び研削加工とを組み合わせて造る。例えば、特許文献1には、図9に示す様な、駆動輪用で内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1bを構成する外輪2a、及び、内輪9aと組み合わされてハブ3aを構成するハブ本体11の加工方法に就いて記載されている。即ち、上記ハブ本体11は、図10の(A)に示す様な工程により、上記外輪2aは、図10の(B)に示す様な工程により、それぞれ素材に鍛造加工を施して完成品に近い形状を有する中間素材とする。そして、この中間素材に、必要な切削加工及び研削加工を施して、上記外輪2a或いは上記ハブ本体11とする。
【0007】
ところで、車輪支持用転がり軸受ユニット用の軌道輪部材を造る為の素材は、鉄鋼メーカーで押し出し成形された、断面円形の長尺材を所定長さに切断する事で造られた、円柱状のものを使用する。この様にして得られる円柱状の素材の組成(清浄度)は均一でない事が、特許文献2に記載される等により、従来から知られている。即ち、上記素材の中央部40%の範囲(中心から半径の40%までの中央寄り円柱状部分)は、非金属介在物が存在し易い事が、上記特許文献2に記載される等により、従来から知られている。又、上記素材の外径寄り20%の範囲(中心から半径の80%よりも外周面側に存在する円筒状部分)に関しても、酸化物や非金属介在物が存在し易い等により、清浄度が低い事が知られている。そして、中心寄り、外周面寄り、何れの部分に存在する金属材料にしても、清浄度が低い金属材料が、軌道輪部材の周面に設けた軌道面のうちで、特に転動体の転動面が転がり接触する部分に露出すると、この部分の転がり疲れ寿命の確保が難しくなる。
【0008】
これらの事を考慮し、且つ、素材中の酸化物や非金属介在物の分布のばらつきや、製造作業時に発生する(押圧力等の)各種ばらつきを考慮した場合、上記素材の中央部50%の範囲、及び、上記素材の外径寄り30%の範囲に存在する金属材料が、軌道面のうちで、少なくとも転動面が転がり接触する部分に露出しない様にする事が好ましい。言い換えれば、上記軌道面のうちの少なくとも転動面が転がり接触する部分には、上記素材のうちで、中心からの半径が50〜70%の範囲である、中間円筒状部分に存在する金属材料を露出させる事が好ましい。
【0009】
ところが、本発明の製造方法の対象となる様な、内周面の軸方向2個所位置に複列で背面組み合わせ型の外輪軌道を備え、外周面に設けられた外向フランジ部の軸方向位置が、少なくともこの外向フランジ部の厚さ方向の一部が上記両外輪軌道の中心位置同士の間に存在する様な軌道輪部材を鍛造加工により造る場合、上記中間円筒状部分を上記両軌道面に露出させる事が難しい。例えば、前述の図10の(B)に示した様な、前記特許文献1に記載された様な方法で、前記図7に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1の外輪2を造ると、素材中の各部の金属材料、即ち、中心から半径の50%までの中央寄り円柱状部分の金属材料12と、中心からの半径が50〜70%の範囲である、中間円筒状部分に存在する金属材料13と、外径寄り30%の範囲の外径寄り円筒状部分に存在する金属材料14とは、図11に示す様に、上記外輪2中に分布する。この外輪2は、鍛造加工により図11に実線で示した中間素材15を造った後、切削加工及び研削加工により、この図11に鎖線で示す状態にまで上記中間素材15を削り取り、上記外輪2として完成する。
【0010】
この様な中間素材15と外輪2とを示した図11中、斜格子で示した、上記中間円筒状部分に存在する金属材料13が、1対の外輪軌道5、5部分に露出すれば、これら両外輪軌道5、5の転がり疲れ寿命を確保し、上記外輪2を含む、上記車輪支持用転がり軸受ユニット1の耐久性確保を図り易くなる。ところが、上記図11から明らかな通り、従来の製造方法により上記外輪2を造ると、上記中央寄り円柱状部分の金属材料12が、上記両外輪軌道5、5のうちの軸方向内側の外輪軌道5の一部(特に、外向フランジ部である取付部6の内径側に位置する部分の)表面に露出する。この為、従来から知られている軌道輪部材の製造方法では、上記車輪支持用転がり軸受ユニット1の耐久性確保を図る為の設計の自由度が限られる。
【0011】
特許文献2には、円柱状の素材に前後方押し出し加工を施す際の押し出し方法を工夫する事で、中間素材のうちで外輪軌道となるベき部分に、中央寄り円柱状部分の金属材料12{次述する図12(B)(C)の斜格子部分}が存在しない様にする、軌道輪部材の製造方法に就いて記載されている。この様な従来の製造方法の場合には、図12の(A)に示す様な円柱状の素材16の軸方向両端面中央部を互いに近づく方向に押し潰し、図12の(B)(C)に示す様な、軸方向両端面に開口する第一、第二両円形凹部17、18と、これら両円形凹部17、18の底面同士の間に存在する隔壁部19とを備えた中間素材20とする。更に、この中間素材20に、所定の切削(旋削)加工及び研削加工を施して、図12の(B)(C)に鎖線で示した様な断面形状を備えた外輪2bとする。
【0012】
上記隔壁部19の形成位置を工夫しない場合には、図12の(B)に示す様に、上記中央寄り円柱状部分の金属材料12が外輪軌道5、5となるべき部分に存在する。これに対して、図12の(C)に示す様に、上記隔壁部19の形成位置を、上記外輪軌道5、5となるべき部分の間位置にすると、上記中央寄り円柱状部分の金属材料12が外輪軌道5、5となるべき部分に存在しなくなる。但し、上記図12の(C)に示す様に、上記隔壁部19の形成位置を工夫しただけでは、製造コストの低減と耐久性向上とを高次元で両立させる事はできない。
【0013】
即ち、上記隔壁部19は、その後打ち抜き除去して、スクラップとして廃棄・回収するものである。従って、この打ち抜き除去作業を容易に行なう面からも、材料の歩留り向上を図る面からも、上記隔壁部19の軸方向寸法(厚さ)は小さい程良い。ところが、図12の(C)に示した状態から更に上記隔壁部19を押し潰すと、上記中央寄り円柱状部分の金属材料12が上記両外輪軌道5、5となるべき部分に移動し、これら両外輪軌道5、5の転がり疲れ寿命の確保が難しくなる。言い換えれば、上記図12の(A)→(C)に示した製造方法では、上記隔壁部19の軸方向寸法を相当に大きくする必要が生じ、工業製品として製造コストを抑制する面からは好ましくない。
【0014】
【特許文献1】特開2005−83513号公報
【特許文献2】特開2006−250317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、内周面の軸方向2個所位置に複列の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ備えた軌道輪部材を、円柱状の素材を塑性変形させる事により造る場合に、上記両外輪軌道のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料を露出させられ、しかも、低コストで実施できる軌道輪部材の製造方法を実現すべく発明したものである。
【0016】
尚、本発明の製造方法は、上記外向フランジ部のうちの少なくとも厚さ方向の一部が、上記両外輪軌道の中心位置同士の間(後述する図3の鎖線α、β同士の間)に存在する軌道輪部材を対象として実施する事が好ましい。上記外向フランジの軸方向位置がこの条件を満たさない場合には、上記両外輪軌道の表面部分に、上記清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料以外の金属材料が露出し易くなる。従って、例えば上記外向フランジが、上記間部分から大きく外れた部分に存在する場合には、例えば特願2006−309916に開示された様な、本発明とは異なる他の製造方法により造る事が好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の軌道輪部材の製造方法は、円筒部の内周面の軸方向2個所位置に背面組み合わせ型の外輪軌道を、外周面に外向フランジを、それぞれ設けた軌道輪部材を造る。
この為、先ず、金属材製で円柱状の素材を軸方向に押し潰す据え込み加工により、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった前段階中間素材とする。
その後、この前段階中間素材の周囲を、上記外向フランジ部を加工する為のフランジ成形用空間を備えたダイスにより囲んだ状態で、上記前段階中間素材を1対のパンチにより軸方向両側から押圧してこの前段階中間素材を塑性変形させる。そして、軸方向両端部を、これら両パンチの外周面形状に見合う内周面形状を有する円筒部とし、外周面に上記フランジ成形用空間に見合う形状を有する上記外向フランジ部を形成して、後段階中間素材とする。
【0018】
特に、本発明の軌道輪部材の製造方法に於いては、上記素材として、この後段階中間素材を造る為に必要とするよりも大きな容積を有するものを使用する。又、上記ダイスとして、上記両パンチのうちの一方のパンチの周囲に固定された固定ダイスと、これら両パンチのうちの他方のパンチの周囲に、この固定ダイスに向かう方向の弾力を付与された状態で設けられた可動ダイスとから成るものを使用する。
そして、この可動ダイスの先端面と上記固定ダイスの先端面とを突き合わせた状態で、上記両パンチにより上記前段階中間素材を軸方向両側から押し潰して、この前段階中間素材を構成する金属材料を、上記両ダイスと上記両パンチとにより囲まれるキャビティ内に充満させる。その後、この金属材料により上記可動ダイスを押圧する事により、この可動ダイスを上記弾力に抗して上記固定ダイスから退避させ、余分な金属材料をこれら両ダイスの先端面同士の間に生じる隙間に逃がして、当該部分にバリを形成する。このバリは、後から、打ち抜き、削り取り等により除去する。
【0019】
上述の様な本発明の軌道輪部材の製造方法を実施する場合に、より具体的には、例えば請求項2に記載した様に、前後方押し出し工程により、上記前段階中間素材の軸方向両端面中央部を互いに近づく方向に押し潰す。そして、軸方向一端面側に開口する第一円形凹部及び軸方向他端面側に開口する第二円形凹部と、これら両円形凹部の底面同士の間に存在する隔壁部とを備えた、第二前段階中間素材とする。
又、上記前後方押し出し工程の後、この第二前段階中間素材を固定、可動両ダイスの内径側にセットした状態で、この第二前段階中間素材を1対のパンチの先端面同士の間で押圧する。そして、上記第一円形凹部の深さ及び内面形状を変化させずに上記隔壁部を押し潰して、金属材料を径方向外方に移動させ、外周面に外向フランジを形成して(バリを有する予備後段階中間素材を介して)後段階中間素材とする。
【0020】
或いは、請求項3に記載した様に、上記前段階中間素材を固定、可動両ダイスの内径側にセットした状態で、この前段階中間素材を1対のパンチの先端面同士の間で押圧する。上記請求項2に記載した様な前後方押し出し工程は省略する。そして、この前段階中間素材の径方向中央部を押し潰して金属材料を径方向外方に移動させると共に、軸方向一端面側に開口する第一円形凹部及び軸方向他端面側に開口する第二円形凹部と、これら両円形凹部の底面同士の間に存在する隔壁部と、外向フランジとを形成して、(バリを有する予備後段階中間素材を介して)前記後段階中間素材とする。
尚、上述の様な請求項2〜3に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項4に記載した様に、上記第一円形凹部の内周面を、内径が小さい奥半部と内径が大きい開口側半部とを段差部で連続させた、段付円筒面状とする。
【0021】
又、本発明の軌道輪部材の製造方法を実施する場合に、より具体的には、請求項5に記載した様に、固定、可動両ダイスと1対のパンチとの間で前段階中間素材を塑性変形させて予備後段階中間素材を造った後、上記両ダイスの先端面同士の間の隙間に対応して、外向フランジの外周面に、この外周面から径方向外方に突出する状態で形成された、バリを打ち抜き除去して、上記後段階中間素材とする。
更に、請求項6に記載した様に、固定、可動両ダイスと1対のパンチとの間で前段階中間素材を塑性変形させて後段階中間素材を造った後、隔壁部を打ち抜き除去する。
【発明の効果】
【0022】
上述の様に構成する本発明の軌道輪部材の製造方法によれば、内周面のうちの軸方向に離隔した2個所位置に形成した両外輪軌道のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料を露出させられる。この為、上記両外輪軌道の転がり疲れ寿命を確保し、これら両外輪軌道を備えた軌道輪部材を含む、車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性確保の為の設計の自由度向上を図れる。又、隔壁部の軸方向寸法(厚さ)を小さくしても、上記両外輪軌道のうちで転動体荷重が作用する部分に清浄度の高い金属材料を露出させられる為、上記隔壁部を除去する作業の容易化と材料の歩留り向上とにより、製造コストの上昇を抑えられる。
【0023】
又、必要に応じて、請求項2〜4に記載した構成を採用する事により、外向フランジの軸方向位置や各外輪軌道の設置位置に応じて、上記中間円筒状部分の金属材料をこれら各外輪軌道の表面部分に、効果的に露出させられる。
又、請求項5に記載した様に、固定、可動両ダイスの先端面同士の間の隙間に対応して形成されたバリを打ち抜き除去すれば、加工コストを低く抑えつつ、上記外向フランジを含む、各部の寸法及び形状を、所望通り精度良く造れる。
更に、請求項6に記載した発明の軌道輪部材の製造方法によれば、余分な金属材料を除去して、軽量な車輪支持用転がり軸受ユニットを得られる。尚、外輪軌道を形成した円筒状部分等の他の部分を薄肉化する代わりに、隔壁部により強度保持を図る構造を採用する事も可能であり、この場合には、この隔壁部を除去する工程は不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[実施の形態の第1例]
図1〜4は、請求項1、2、4〜6に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の製造方法は、図1の(A)に示した、中炭素鋼、軸受鋼、浸炭鋼の如き鉄系合金等の、塑性加工後に焼き入れ硬化可能な、金属製で円柱状の素材16に、順次、塑性加工或いは打ち抜き加工を施す。そして、(B)に示した前段階中間素材21、(C)に示した第二前段階中間素材22、(D)に示した予備後段階中間素材23、(E)に示した後段階中間素材24を経て、(F)に示した最終段中間素材25を得る。更に、この最終段中間素材25に、必要とする切削加工及び研削加工を施して、前述の図7に示した様な、内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1を構成する外輪2とする。上記素材16の容積は、上記後段中間素材24の容積よりも(後述するバリ38の容積分だけ)大きくしている。以下、上記素材16を上記最終段中間素材25に加工する工程に就いて、順番に説明する。尚、以下の加工は、基本的には総て熱間若しくは温間で行なうが、小型のハブを形成する場合等、可能であれば、冷間で行なっても良い。
【0025】
先ず、第一の据え込み工程で、図1の(A)→(B)に示す様に、上記素材16を軸方向に押し潰しつつ外径を拡げ、この素材16を、径方向中間部が膨らんだビヤ樽型の、上記前段階中間素材21とする。
次の前後方押し出し工程で、図1の(B)→(C)に示す様に、上記前段階中間素材21を前記第二前段階中間素材22に塑性加工する。この様な前後方押し出し工程では、鍛造加工の分野で広く知られている方法により、上記前段階中間素材21の径方向中央寄り部分を軸方向に圧縮して、この径方向中央寄り部分の金属材料を、径方向外方に移動させつつ、軸方向両側(前後両方向)に移動させる。
【0026】
次に行なう、上記前段階中間素材21の径方向中央寄り部分を軸方向に圧縮する加工は、上記前段階中間素材21を、上記第二前段階中間素材22の外周面形状に対応した(凹凸が逆になった)ダイス内にセットした状態で、互いに同心に配置した押圧パンチとカウンターパンチとの間で、上記前段階中間素材21の軸方向両端面中央部を押圧する事により行なう。一般的には、図1で下側に配置する上記カウンターパンチを固定した状態のまま、図1で上側に配置する上記押圧パンチを、このカウンターパンチに押し付ける。そして、上記前段階中間素材21を構成する金属材料を移動させて、上記ダイスの内周面と上記押圧パンチ及び上記カウンターパンチの外面(外周面及び先端面)とにより囲まれたキャビティ内に充満させ、上記第二前段階中間素材22とする。
【0027】
この第二前段階中間素材22は、軸方向一端面(図1〜4の上端面)側に開口する第一円形凹部26及び軸方向他端面(図1〜4の下端面)側に開口する第二円形凹部27と、これら両円形凹部26、27の底面同士の間に存在する隔壁部28とを備える。本例の場合には、上記第一円形凹部26の形状を、内径が小さい奥半部と内径が大きい開口側半部とを段差部で連続させた、段付形状とする。この為に、上記押圧パンチとして、先半部の外径が小さく、基半部の外径が大きい、段付のものを使用する。この様な前後方押し出し工程で、上記前段階中間素材21を上記第二前段階中間素材22に塑性加工する事に伴い、中央寄り円柱状部分の金属材料12と、中間円筒状部分の金属材料13と、外径寄り円筒状部分の金属材料14との分布状況が、図1の(B)→(C)に示す様に変化する。
【0028】
上述の様にして造った、上記第二前段階中間素材22は、次の第二の据え込み工程で、前記予備後段階中間素材23とする。この第二の据え込み工程は、図2に示した据え込み装置を使用して行なう。この据え込み装置は、特許請求の範囲に記載した他方のパンチに相当する押圧パンチ29と、同じく一方のパンチに相当するカウンターパンチ30と、同じく可動ダイスに相当する上側ダイス31と、同じく固定ダイスに相当する下側ダイス32と、押し出しパンチ33とを備える。
【0029】
これら各構成部材29〜33のうち、上側ダイス31はプレス加工機のラムの下面に、このラムに対する昇降可能に支持されており、大きな弾力を有するばね34、34により、下方に向いた大きな弾力を付与されている。上記ラムに対する上記上側ダイス31の下降量は、これらラムと上側ダイス31との間に設けたストッパ機構により規制している。又、上昇量は、例えば、上記ラムの下面と上記上側ダイス31の上面とが突き当たる事で制限される。従って上記上側ダイス31は、通常状態では上記ラムと共に昇降するが、上向きの大きな力が加わった場合には、上記各ばね34、34の弾力に抗し、上記ラムに対して上昇する。又、上記押圧パンチ29は、上記上側ダイス31の内径側に配置した状態で、上記ラムに対し固定している。従ってこの上側ダイス31は上記押圧パンチ29の周囲に、この押圧パンチ29に対する所定量の軸方向変位(昇降)を可能に支持されている。そして、上記ラムの下降時に上記上側ダイス31の下端面は、上記押圧パンチ29の下端面と上記カウンターパンチ30の上端面との間で上記第二前段階中間素材22の隔壁部28を強く挟持する以前に、上記下側ダイス32上端面に突き当たる。この状態から上記ラムが更に下降すると、上記上側ダイス31はそのままの位置に止まり、上記押圧パンチ29のみが上記上側ダイス31と共に下降する。この際、上記各ばね34、34が弾性変形する。
【0030】
一方、上記カウンターパンチ30と上記下側ダイス32とは、上記プレス加工機の支持台の上面に、互いに同心に固定されており、互いの間に、前記予備後段階中間素材23の軸方向外半部の外面形状に見合う(凹凸が逆である)内面形状を有する、下側キャビティ35を設けている。上記カウンターパンチ30と上記下側ダイス32とは、前記第二の据え込み工程の進行に伴って変位する事はない。更に、上記押し出しパンチ33は、円筒状であり、その上端面により、上記下側キャビティ35の下端部を仕切っている。この様な上記押し出しパンチ33は、上記プレス加工機の支持台に対し、昇降可能に支持されている。そして、この押し出しパンチ33が下降し切った状態で、上記下側キャビティ35の内面形状が、上記予備後段階中間素材23(前記後段階中間素材24)の軸方向外半部の外面形状に見合う形状になる。尚、本例の場合には、上記押圧パンチ29の先端部及び上記カウンターパンチ30の先端部は、何れも、先端面寄りの小径部と基端寄りの大径部とを段部で連続させた、段付形状としている。
【0031】
上述の様な構成を有する、前記据え込み装置を使用し、前記第二前段階中間素材22に前記第二の据え込み工程を施して、上記予備後段階中間素材23とする場合には、先ず、この第二前段階中間素材22の軸方向外端寄り部分を上記下側ダイス32内に挿入する。そして、上記カウンターパンチ30の上端部を、上記第二前段階中間素材22の軸方向外端面に形成した、前記第二円形凹部27内に嵌合させる。その後、上記ラムを下降させて、図2の(A)に示す様に、前記押圧パンチ29を、上記第二前段階中間素材22の軸方向内端面に形成した、前記第一円形凹部26内に嵌合させると共に、上記下側ダイス32の上端面と前記上側ダイス31の片面とを突き合わせる。この状態で、これら両ダイス32、31の突き合わせ面同士の間に、フランジ成形用空間36が形成される。
【0032】
この状態から上記ラムを、図2の(B)(C)の矢印a、aで示す様に、更に下降させると、図2の(A)→(B)に示す様に、上記上側ダイス31はそのままの位置に止まって、上記押圧パンチ29のみが下方に移動する。この移動に伴ってこの押圧パンチ29が、上記第二前段階中間素材22の径方向中央部分を軸方向に押圧して、この部分を押し潰し、前記隔壁部28を、厚さ寸法の小さい隔壁部19とする。この様に径方向中央部分を押し潰す事で押し出された金属材料は、上記下側キャビティ35内に入り込んで当該部分を円筒形に形成すると共に、一部は、上記フランジ成形用空間36に向け、径方向外方に送られて、このフランジ成形用空間36内に、取付部6となるべき、外向フランジ状の突出部を形成する。
【0033】
上記押圧パンチ29が、図2(C)に示す様に、十分に下降し、上記フランジ成形用空間36内に十分量の金属材料が押し込まれると、このフランジ成形用空間36内の圧力上昇に伴って、上記上側ダイス31を上方に押圧する力が大きくなる。そして、この力が、前記各ばね34、34の弾力よりも大きくなると、上記上側ダイス31がこれら各ばね34、34の弾力に抗して、図2(C)に矢印b、bで示す様に上昇し、この上側ダイス31の上端面が上記下側ダイス32から離隔して、これら両端面同士の間に隙間37が生じる。すると、上記フランジ成形用空間36内に入り込んでいた金属材料の一部がこの隙間37内に入り込み、上記取付部6となるべき突出部の外周縁にバリ38を形成する。この結果、図1の(D)に示す様な予備後段階中間素材23を得られる。この予備後段階中間素材23に形成した、第一、第二両円形凹部17、18の内周面は、内径が小さい奥半部と内径が大きい開口側半部とを段差部で連続させた段付円筒面状である。
【0034】
この様にして行なう、図1の(C)→(D)に示した第二の据え込み工程に伴って、中央寄り円柱状部分の金属材料12と、中間円筒状部分の金属材料13と、外径寄り円筒状部分の金属材料14との分布状況が、図1の(C)→(D)に示す様に変化する。上記第二の据え込み工程では、前記両外輪軌道5、5のうちの軸方向内側の外輪軌道5を形成すべき部分に隣接する、前記第一円形凹部26の内面形状は変化させない。前記第二円形凹部27に関しては、深さを大きくする。そして、上記第二の据え込み工程の結果、これら両円形凹部26、27同士の間に存在する隔壁部28から押し出された金属材料のうちの多くの部分が、上記取付部6となるべき突出部及び上記バリ38となる。これら突出部及びバリ38は、1対の外輪軌道5、5の中心位置同士の間の径方向外方部分に存在するので、上記隔壁部28から押し出された金属材料(特に、中央寄り円柱状部分の金属材料12)のうちの多くの部分が、上記両外輪軌道5、5となるべき部分に送られずに、これら両外輪軌道5、5となるべき部分の間を通って、径方向外方に送られる。この為、上記図1の(D)及び図4の(A)から明らかな通り、上記予備後段階中間素材23(前記後段階中間素材24)の段階では、後から外輪軌道5、5を形成すべき部分には、清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料13が存在する。
【0035】
上述の様に本例の場合には、上記予備後段階中間素材23の加工完了の状態で、上記両ダイス31、32の先端面同士が互いに当接せず、これら両先端面同士の間に隙間37が介在する状態となる。そして、この隙間37には、金属材料の余剰分が入り込んで、上記バリ38を形成する。この様にして造られた、上記取付部6の外周面からバリ38を突出させた、上記予備後段階中間素材23は、上記押圧パンチ29及び上記上側ダイス31を上昇させてから、前記押し出しパンチ33を上昇させる事で、前記据え込み装置から取り出す。そして、図1の(D)→(E)に示す様に、上記バリ38を打ち抜き除去して、前記後段階中間素材24とする。
【0036】
そして、最後に、図1の(E)→(F)に示す様に、上記両円形凹部17、18同士の間に存在する前記隔壁部19を、プレス加工等により打ち抜き除去し、前記最終段中間素材25とする。この最終段中間素材25は、完成後の外輪2{図4の(A)の鎖線参照}よりも厚肉である。そこで、この最終段中間素材25に、所定の切削(旋削)加工及び研削加工を施して、上記外輪2として完成する。完成後の状態で上記取付部6は、図3に示す様に、上記両外輪軌道5、5の中心を通り、上記外輪2の中心軸に直交する仮想平面α、β同士の間に存在する。図4の(A)に、上記後段階中間素材24の段階での、上記各金属材料12〜14の分布状態と、完成後の外輪2{図4の(A)の鎖線参照}の断面形状とを示している。この様な図4の(A)から明らかな通り、本例の外輪2の製造方法によれば、この外輪2の内周面のうちの軸方向に離隔した2個所位置に形成した両外輪軌道5、5のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料13を露出させられる。この為、上記両外輪軌道5、5の転がり疲れ寿命を確保し、これら両外輪軌道5、5を備えた外輪2を含む車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性確保の為の設計の自由度向上を図れる。
【0037】
これに対して図4の(B)は、1対のダイスを突き合わせた状態のまま(可動ダイスを使用せず)に、図4の(A)と同形状の後段階中間素材24aを塑性加工した場合の、各金属材料12〜14の分布状況を示している。この場合には、フランジ成形用空間36に入り込んだ金属材料が隙間37(図2参照)に向け、径方向外方に大きく移動する事がないので、中央寄り円柱状部分の金属材料12が軸方向に拡がり易く、清浄ではないこの金属材料12が、軸方向内側の外輪軌道5の一部(周囲に取付部6が存在しない部分)に露出する。この為、十分な耐久性を有する外輪2を得る事が難しくなる。
【0038】
[実施の形態の第2例]
図5は、請求項1、3〜6に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、上述した実施の形態の第1例で行なっていた前後方押し出し工程を省略している。即ち、図5の(B)に示した前段階中間素材21に、前述の図2に示した様な第二の据え込み加工を直接施して、図5の(C)に示した予備後段階中間素材23aを得、更に、バリ38を除去して、図5の(D)及び図6に示した後段階中間素材24aを得る。この様な本例は、造るべき外輪が小型であったり、或いは、プレス加工を施す為のプレス加工機の容量が大きい等、一挙動で大きな塑性加工を行なえる場合に適用できる。本例の場合、上記後段階中間素材24a内部での、中央寄り円柱状部分の金属材料12と、中間円筒状部分の金属材料13と、外径寄り円筒状部分の金属材料14との分布状況は、図6に示す様になる。この図6から明らかな通り、本例の場合も、外輪2の内周面のうちの軸方向に離隔した2個所位置に形成した両外輪軌道5、5のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料13を露出させられる。この為、上記両外輪軌道5、5の転がり疲れ寿命を確保し、これら両外輪軌道5、5を備えた外輪2を含む車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性確保の為の設計の自由度向上を図れる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上述の説明は、本発明の軌道輪部材の製造方法により、前述の図7、9に示した様な、内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1、1bを構成する外輪2、2aを造る場合を中心に説明した。但し、前述の図8に示した様な、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1aを構成するハブ10であっても、支持フランジ7aの軸方向位置が適切であれば(図8よりも右方に存在すれば)、本発明の製造方法により造る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の軌道輪部材の製造方法の実施の形態の第1例を工程順に示す、素材乃至最終段中間素材の断面図。
【図2】第二前段階中間素材の軸方向両端部に第一、第二両円形凹部を、外周面に外向フランジを、ぞれぞれ形成する為の第二の据え込み加工の実施状況を工程順に示す断面図。
【図3】本発明の製造方法を適用する事が好ましい外輪に関して、取付部の軸方向位置の範囲を示す断面図。
【図4】後段階中間素材の段階での、中央寄り円柱状部分の金属材料と、中間円筒状部分の金属材料と、外径寄り円筒状部分の金属材料との分布状況に関して、(A)は実施の形態の第1例の製造方法により造られた場合を、(B)は可動ダイスを使用しなかった場合を、それぞれ示す断面図。
【図5】本発明の軌道輪部材の製造方法の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図。
【図6】実施の形態の第2例に関して、後段階中間素材の段階での、中央寄り円柱状部分の金属材料と、中間円筒状部分の金属材料と、外径寄り円筒状部分の金属材料との分布状況を示す断面図。
【図7】本発明の製造方法の対象となる軌道輪部材である外輪を備えた、内輪回転型で従動輪用の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す断面図。
【図8】本発明の製造方法の対象となる軌道輪部材であるハブを備えた、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す断面図。
【図9】本発明の製造方法の対象となる外輪を備えた、内輪回転型で駆動輪用の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す断面図。
【図10】従来から知られている軌道輪部材の製造方法の2例を、それぞれ工程順に示す断面図。
【図11】従来の製造方法により後段階中間素材を造った状態での、中央寄り円柱状部分の金属材料と、中間円筒状部分の金属材料と、外径寄り円筒状部分の金属材料との分布状況を示す断面図。
【図12】従来の製造方法の別例を説明する、素材の断面形状(A)と、隔壁部の形成位置を工夫しない場合の中間素材の断面形状(B)と、工夫した場合の中間素材の断面形状(C)とを示す図。
【符号の説明】
【0041】
1、1a、1b 車輪支持用転がり軸受ユニット
2、2a、2b 外輪
3、3a ハブ
4 転動体
5 外輪軌道
6 取付部
7、7a 支持フランジ
8 内輪軌道
9、9a 内輪
10 ハブ
11 ハブ本体
12 中央寄り円柱部分の金属材料
13 中間円筒状部分の金属材料
14 外径寄り円筒状部分の金属材料
15 中間素材
16 素材
17 第一円形凹部
18 第二円形凹部
19 隔壁部
20 中間素材
21 前段階中間素材
22 第二前段階中間素材
23、23a 予備後段階中間素材
24、24a 後段階中間素材
25 最終段中間素材
26 第一円形凹部
27 第二円形凹部
28 隔壁部
29 押圧パンチ
30 カウンターパンチ
31 上側ダイス
32 下側ダイス
33 押し出しパンチ
34 ばね
35 下側キャビティ
36 成形用空間
37 隙間
38 バリ
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成19年1月22日(2007.1.22)
【代理人】 【識別番号】100087457
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男

【識別番号】100141508
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 隆史

【識別番号】100148677
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 正樹

【識別番号】100056833
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 欽造


【公開番号】 特開2008−173677(P2008−173677A)
【公開日】 平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願番号】 特願2007−11103(P2007−11103)