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【発明の名称】 自動車の車軸支持用軌道輪の外輪用リング素形材の製造方法およびその製品
【発明者】 【氏名】舘 幸生

【氏名】那須 竜二

【要約】 【課題】横型鍛造機により、冷間リングローリング加工用のブランクを鍛造した後、このブランクを冷間リングローリング加工して複列軌道輪の外輪用リングを製造する場合に、リング素形材の端面や表面部の鋼素材の不充足を解消して端面にバリや表面部に素材のマクレ込みが無いようにする。

【解決手段】外輪用リング素形材の環状突起部2と内面平坦部3との重量配分を最適化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横型鍛造機により、鋼素材から内面平坦部相当部位と環状突起部相当部位の重量配分を制御した形状のブランクを鍛造した後、このブランクを冷間リングローリング加工して複列軌道輪の外輪用リング素形材の内面平坦部と環状突起部の重量配分を制御した形状の外輪用リング素形材に製造することを特徴とする自動車の車軸支持用軌道輪の外輪用リング素形材の製造方法。
【請求項2】
冷間リングローリング加工製品の外輪用リング素形材の内面平坦部の重量をQ1、環状突起部の重量をQ2とし、ブランクの内面平坦部相当部の重量をq1、環状突起部相当部の重量をq2とするとき、外輪用リング素形材の内面平坦部の重量および環状突起部の重量は、ブランクの各相当剖位の重量に対して0.95Q1≦q1≦1.05Q1および0.95Q2≦q2≦1.05Q2となるように幅方向および径方向の形状を設定して冷間鍛造することを特徴とする請求項1に記載の自動車の車軸支持用軌道輪の外輪用リング素形材の製造方法。
【請求項3】
冷間リングローリング加工製品である外輪用リング素形材の全幅をWとし、ブランクの全幅をwとするとき、ブランクの全幅wは、0.93W≦w≦0.98Wを満足することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の自動車の車軸支持用軌道輪の外輪用リング素形材の製造方法。
【請求項4】
冷間リングローリング加工製品である外輪用リング素形材の内径のブランクの内径に対する拡管比を1.3〜1.7とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車の車軸支持用軌道輪の外輪用リング素形材の製造方法。
【請求項5】
上記の横型鍛造機による製造方法により製造の鋼材からなる冷間リングローリング加工製品であることを特徴とする自動車の車軸支持用軌道輪の外輪用リング素形材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は自動車の車軸支持用の複列軌道輪の外輪用リング素形材の製造方法およびその製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車の車軸を支持する部材として、内面の中央部に軸心方向に突出する環状突起部を有する複列軌道輪は、自動車の車軸を支持する部材として広く使用されている。この複列軌道輪における外輪用リング素形材は多様な方法により製造されている。その方法として、鍛造により粗成形を行い粗成形品であるブランクとし、次いでこの粗成形によるブランクを冷間リングローリング加工により冷間リングローリング製品とすることが一般的である。ところで、このため適用する鍛造機には、縦型鍛造機と横型鍛造機がある。
【0003】
このうち、縦型鍛造機により粗成形品であるブランクを製造することは可能であり、しかも、縦型鍛造であれば、冷間リングローリング加工工程なしの鍛造のみで外輪用リング素形材をニアネットシェイプ製造することが可能である。しかし、この縦型鍛造機は歩留りが低く、生産性が悪いという問題があった。そこで、縦型鍛造で粗成形を行った後、冷間リングローリング加工工程により複列軌道輪における外輪用リング素形材を、縦型鍛造以外の多様な方法により製造することもできるが、この場合は生産コストが高くなる問題があった。
【0004】
一方、横型鍛造機によるブランクを粗成形した後に、冷間リングローリング加工により外輪用リング素形材に成形する場合、従来の粗成形品であるブランクでは、冷間リングローリング加工時に素材の不充足による要求形状が達成できない問題や、バリあるいはマクレ込みなどの発生による品質異常が発生するなどの問題があった。
【0005】
従来の技術として、鍛造後に冷間リングローリング加工後の熱処理を工夫することにより、真円度の精度を高める手法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法は鍛造後に冷間リングローリング加工により軌道輪を製造する方法であるが、本発明における複列軌道輪の外輪用リング素形材の製造方法と技術的に異なる方法である。
【0006】
さらに、鍛造後に冷間リングローリング加工を実施することにより軌道輪を製造する方法が開発されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この方法も本発明における複列軌道輪の外輪用リング素形材の製造方法と技術的に相違する方法である。
【0007】
一方、本発明と同様に複列軌道輪の製造方法に関する発明が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、この方法における鍛造による素形材の形状は、本発明において重要な鍛造による素形材の形状と相違するものである。
【0008】
【特許文献1】特開平11−140543号公報
【特許文献2】特開2002−079347号公報
【特許文献3】特開平10−085890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願の発明が解決しようとする課題は、自動車の車軸支持用の複列軌道輪の外輪用リング素形材の製造において、外輪用リング素形材の端面や表面部における鋼素材の不充足を解消し、さらに端面に発生するバリのないあるいは表面部における素形材のマクレ込みのない複列軌道輪の外輪用リング素形材を生産コストを安価に製造し提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明の手段では、高生産性である横型鍛造機により、鋼素材から冷間リングローリング加工用のブランクを鍛造した後、このブランクを冷間リングローリング加工して良好な品質を満足する複列軌道輪の外輪用リング素形材の内面平坦部と環状突起部との重量配分を最適化した外輪用リング素形材に製造する。ブランクにおける内面平坦部相当部位と環状突起部相当部位の重量配分すなわち体積配分を最適化することで、冷間リングローリング加工時の成形不良を回避し、良好な品質を満足し、かつ高生産性の横型鍛造機で製造できることで、外輪用リング素形材を安価に供給することを可能とする。
【0011】
請求項2の発明の手段では、請求項1の発明の手段において、冷間リングローリング加工製品の外輪用リング素形材の内面平坦部の重量をQ1、環状突起部の重量をQ2で示し、ブランクの内面平坦部相当部位の重量をq1、環状突起部相当部位の重量をq2で示すとき、重量配分が充分でなかった場合は、冷間リングローリング加工時に、未充填(不充足)部分や、バリの発生や、円形度不良などの成形不良が生じる。そこで、冷間リングローリング加工製品である外輪用リング素形材のそれぞれの重量は、ブランクの相当部位のそれぞれの重量に対して、理想的には0.95Q1≦q1≦1.05Q1および0.95Q2≦q2≦1.05Q2となるように、幅方向および径方向の形状を設定する。
【0012】
請求項3の発明の手段では、さらに冷間リングローリング加工製品である外輪用リング素形材の全幅をWで示し、ブランクの全幅をwで示すとき、ブランクの全幅wは、0.93W≦w≦0.98Wとする。この理由はw<0.93Wの場合、冷間リングローリング加工時に、端面に不充足が生じるからである。一方、w>0.98Wの場合には、バリの発生が大きくなり、品質要求を満たさなくなり、さらにダイスの焼付きの原因となるからである。なお、本発明において、内面平坦部の重量Q1とは、図3にQ1として示すように、環状突起部の頂点の平坦部に至るまでの斜面部を含む平坦部分の重量であり、環状突起部の重量Q2とは、図3にQ2として示すように、環状突起部の頂点の平坦部分の重量であり、外輪用リング素形材の全幅Wとは図3に矢印で示すリングの端部間の範囲をいう。
【0013】
請求項4の発明の手段では、さらに冷間リングローリング加工製品である外輪用リング素形材の内径のブランクの内径に対する拡径比すなわち拡管比を1.3〜1.7とする。この拡管比を1.3〜1.7とする理由は、拡管比<1.3の場合は、冷間リングローリング加工時に環状突起部および外周面が不充足となる。拡管比>1.7の場合は、冷間リングローリング加工により製品にクラックの発生や金型への焼き付きや真円度不良などが発生する。また、焼き付きにより金型の寿命が短命となる。
【0014】
請求項5の発明の手段では、上記の請求項1〜5のいずれかの手段の横型鍛造機による製造方法により製造の鋼材からなる冷間リングローリング加工製品である自動車の車軸支持用軌道輪の外輪用リング素形材である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記の各発明の手段とすることで、自動車の車軸支持用の複列軌道輪の外輪用リング素形材を未充填の部分を生じることなく、さらにバリの発生やクラックによるマクレ込みや円形度の不良などの成形不良のない安定した品質の製品を安価に製造することができ、さらに鍛造金型への焼き付きをなくして金型寿命を延ばすことができるなど、本発明は優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面および表を参照して、本願発明の実施の形態について説明する。この外輪用リング素形材の鋼材はJISに規定のSUJ2とする。この鋼材からなる棒鋼材を切断してなる棒鋼片を多段の横型鍛造機により順次に多段に鍛造して冷間リングローリング加工用の素形のブランクとし、このブランクを冷間ローリング加工して外輪用リング素形材とした。この得られた外輪用リング素形材は複列軌道輪の外輪用リング素形材であり、その内面平坦部の重量をQ1、環状突起部の重量をQ2とし、これらのブランクの各相当部位の重量をq1、q2とし、さらに、幅方向および径方向の形状を設定し、冷間リングローリング加工製品のリング幅をWとし、ブランク幅をwとする。さらに冷間リングローリング素材内径とブランク内径比を拡管比として、上記の外輪用リング素形材の各請求項の手段に規定する条件を満たすものを本発明例1〜3とし、これらの条件を満足しないものを比較例A〜Hとして表1に示した。なお、条件の欄の網掛けで示す部分は本発明の範囲を満足しないことを示す。
【0017】
【表1】


【0018】
表1の結果、No.1〜No.3の本発明例1〜本発明例3は実施結果の欄に見られるように、実施数の全25個が全て合格であり、不良数は0すなわち不良率は0であった。なお、表1において、Q1=100.5g、Q2=98.2g、W=34.4mmである。
【0019】
これらに対し、No.4の比較例Aはブランクのq1の重量が超えていたので、図1の(b)に示すように製品1の端面にバリ6が大きく出て不良率は12%であった。No.5の比較例Bはブランクのq1の重量が不足であったので、図1の(a)に示すように製品の端面に欠肉4があり不良率は60%であった。No.6の比較例Cは環状突起部相当部位のq2の重量が大き過ぎ、このため製品の外形が小となり図1の(c)に示すように外形に欠肉4生じ、不良率が28%であった。No.7の比較例Dは逆にq2の重量が小さすぎ、製品の環状突起部2が不充足となり図1の(c)に示すように欠肉5が生じ、さらに外周不充足となり図1の(c)に示すように欠肉4が生じ不良率は72%と高かった。No.8の比較例Eはq2のブランク幅wが適性条件の上限値の0.98Wよりも大き過ぎ、図1の(b)に示すように製品の端面にバリ6が生じ、不良率が20%であった。No.9の比較例Fはq2のブランク幅wが適性条件の下限値の0.93Wよりも小さ過ぎ、図1の(a)に示すように製品の端面が不充足となって欠肉4が生じ、不良率は52%であった。No.10の比較例Gは拡管比が下限値の1.3よりも小さ過ぎ、製品の環状突起部2が不充足となり、図1の(c)に示すように環状突起部2に欠肉5が生じ、さらに外周不充足となり図1の(c)に示すように欠肉4が生じ、不良率は76%と高かった。No.11の比較例Hは拡管比が上限値の1.7よりも大き過ぎ、製品にクラックが発生し、図1の(d)に示すようにマクレ込み7が生じ、不良率は24%であった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】製品の外輪用リング素形材の部分断面図を示し、(a)は不充足部の欠肉、(b)はバリ、(c)は外周部の不充足部の欠肉と環状突起部の不充足部の欠肉、(d)はクラックのマクレ込みをそれぞれ示す。
【図2】製品の外輪用リング素形材の環状突起部と平坦部を示す部分断面図である。
【図3】製品の外輪用リング素形材の環状突起部重量の部位と平坦部重量の部位並びに全幅を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 製品の外輪用リング素形材
2 環状突起部
3 内面平坦部
4 欠肉
5 欠肉
6 バリ
7 マクレ込み
1 平坦部重量
2 環状突起部重量
W 全幅
【出願人】 【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
【出願日】 平成19年1月11日(2007.1.11)
【代理人】 【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至

【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理


【公開番号】 特開2008−168315(P2008−168315A)
【公開日】 平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願番号】 特願2007−3140(P2007−3140)