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【発明の名称】 ステアリング装置用締結部及びその製造方法
【発明者】 【氏名】井上 孝司

【氏名】渡辺 靖

【氏名】丸茂 康二

【氏名】岡田 淳一

【要約】 【課題】軽量で、車体に取り付けるために必要なスペースが小さいステアリング装置用締結部及びその製造方法を提供する。

【解決手段】非円形外周を有するパンチ5を円形孔28に挿入しながら、締付け部25の外周と円形外周26の外周をダイ6で拘束すると、駄肉27、27がダイ6の半円形内周62に押されて、円形孔28内に押し込まれる。駄肉27、27の体積は、円形孔28の体積からエクステンションシャフト2の非円形孔23の体積を差し引いた体積と、略同一に設定されている。その結果、円形孔28は変形し、押し込まれた駄肉27、27は、主としてパンチ5の傾斜平面52、52に当接し、図5(2A)、(2B)に示すように、所望形状の傾斜平面232、232と半円形孔231とから成る非円形孔23が、エクステンションシャフト2に形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸軸端の非円形軸部が内嵌して締結される非円形孔を有し、ステアリングホイールの回転トルクを回転軸に伝達するために軸部の一端に形成された締結部を備えたステアリング装置用締結部の製造方法であって、
所望の非円形孔の体積よりも大きな体積を有する孔を上記締結部に成形する工程と、
上記孔の体積と所望の非円形孔の体積との差分の体積を有する駄肉を上記締結部の外周に成形する工程と、
上記孔に所望の非円形孔と同一の非円形外周を有するパンチを挿入する工程と、
所望の締結部の外周形状と同一の内周形状を有するダイで上記締結部の外周を拘束し、上記駄肉を上記孔に押し込んで所望の非円形孔を成形する工程とを備えたこと
を特徴とするステアリング装置用締結部の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたステアリング装置用締結部の製造方法において、
上記孔が円形孔であること
を特徴とするステアリング装置用締結部の製造方法。
【請求項3】
請求項1から請求項2までのいずれかに記載されたステアリング装置用締結部の製造方法によって製造されたステアリング装置用締結部。
【請求項4】
請求項3に記載されたステアリング装置用締結部がエクステンションシャフトの締結部であること
を特徴とするステアリング装置用締結部。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はステアリング装置で回転トルクを伝達するために、回転軸軸端の非円形軸部を締結する非円形孔を有するステアリング装置用締結部、特に、ステアリングギヤのラックに噛み合うピニオン軸軸端の非円形軸部を締結する非円形孔を有するエクステンションシャフトの締結部、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなステアリング装置用締結部として、特許文献1に示すように、平行な2平面で形成された非円形軸部を締結する締結部を備えた自在継手がある。またステアリング装置用締結部の製造方法として、特許文献2に示す自在継手の製造方法がある。
【0003】
図6は、締結部をブローチ加工する従来のエクステンションシャフトの製造方法を示す工程図である。図6(1A)、(1B)、(1C)に示すように、締結部をブローチ加工する従来のエクステンションシャフト8は、締結部81の非円形孔83をブローチ加工するために、締結部81が軸部82とは別体で形成されている。
【0004】
締結部81の軸心に、締結部81の軸方向(図6(1B)の左右方向)に貫通した非円形孔83をブローチ加工する。その後、図6(2)に示すように、軸部82左端の小径軸部821を、締結部81の右端の円形孔811に嵌合し、締結部81と軸部82を溶接によって一体的に接合している。
【0005】
従って、溶接熱によってエクステンションシャフト8が熱変形して寸法精度が低下したり、加工工程が多くなるため、製造コストが上昇する問題があった。
【0006】
図7は、締結部を鍛造加工する従来のエクステンションシャフトの製造方法を示す工程図である。図7(1)、(2)に示すように、締結部を鍛造加工する従来のエクステンションシャフト9は、締結部91と軸部92が一体で鍛造加工され、締結部91の非円形孔93も、締結部91と同時に鍛造加工される。
【0007】
非円形孔93を締結部91と同時に鍛造加工すると、非円形孔93の鍛造加工時に、締結部91に偏心荷重が作用するため、締結部91が倒れる。この偏心荷重を効果的に支持して、締結部91の倒れを防止するために、すり割り94を有する締付け部95の反対側の外形に、締付け部95と対称形状の駄肉96を付けている。
【0008】
従って、エクステンションシャフト9の重量が増加し、エクステンションシャフト9を車体に取り付けるために必要なスペースが大きくなるという問題があった。
【0009】
【特許文献1】実開昭55−38024号公報
【特許文献2】特公平6−58124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、軽量で、車体に取り付けるために必要なスペースが小さいステアリング装置用締結部及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、回転軸軸端の非円形軸部が内嵌して締結される非円形孔を有し、ステアリングホイールの回転トルクを回転軸に伝達するために軸部の一端に形成された締結部を備えたステアリング装置用締結部の製造方法であって、所望の非円形孔の体積よりも大きな体積を有する孔を上記締結部に成形する工程と、上記孔の体積と所望の非円形孔の体積との差分の体積を有する駄肉を上記締結部の外周に成形する工程と、上記孔に所望の非円形孔と同一の非円形外周を有するパンチを挿入する工程と、所望の締結部の外周形状と同一の内周形状を有するダイで上記締結部の外周を拘束し、上記駄肉を上記孔に押し込んで所望の非円形孔を成形する工程とを備えたことを特徴とするステアリング装置用締結部の製造方法である。
【0012】
第2番目の発明は、第1番目の発明のステアリング装置用締結部の製造方法において、上記孔が円形孔であることを特徴とするステアリング装置用締結部の製造方法である。
【0013】
第3番目の発明は、第1番目から第2番目までのいずれかの発明のステアリング装置用締結部の製造方法によって製造されたステアリング装置用締結部である。
【0014】
第4番目の発明は、第3番目の発明のステアリング装置用締結部がエクステンションシャフトの締結部であることを特徴とするステアリング装置用締結部である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のステアリング装置用締結部の製造方法は、所望の非円形孔の体積よりも大きな体積を有する孔を締結部に成形する工程と、上記孔の体積と所望の非円形孔の体積との差分の体積を有する駄肉を上記締結部の外周に成形する工程と、上記孔に所望の非円形孔と同一の非円形外周を有するパンチを挿入する工程と、所望の締結部の外周形状と同一の内周形状を有するダイで上記締結部の外周を拘束し、上記駄肉を上記孔に押し込んで所望の非円形孔を成形する工程を備えている。
【0016】
従って、締結部に対称形状の駄肉を付ける必要が無いため、ステアリング装置用締結部が軽量化され、ステアリング装置用締結部を車体に取り付けるために必要なスペースが小さくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明のステアリング装置用締結部を備えたステアリング装置を車両に取り付けた状態を示す全体斜視図である。図2は図1のエクステンションシャフトを示す拡大正面図である。図3は本発明の製造方法で製造されるエクステンションシャフトの例を示す部品図である。図4はエクステンションシャフトの製造方法を示す工程図である。図5は図4の工程の後工程の製造方法を示す工程図と、成形が完了したエクステンションシャフトを示す部品図である。
【0018】
図1、図2に示すように、ステアリング装置101は、ステアリングシャフト102を回動自在に軸支している。ステアリングシャフト102には、その上端(車体後方側)にステアリングホイール103が装着され、ステアリングシャフト102の下端(車体前方側)には、ユニバーサルジョイント104を介して中間シャフト105が連結されている。
【0019】
中間シャフト105には、その下端にユニバーサルジョイント106が連結され、ユニバーサルジョイント106には、エクステンションシャフト109が連結されている。エクステンションシャフト109の下端(ロアー側)には、ピニオン軸110の上端の非円形軸部110A(図2参照)が締結され、ピニオン軸110の下端の図示しないピニオンが、ステアリングギヤ107の図示しないラックに噛合っている。
【0020】
運転者がステアリングホイール103を回転操作すると、ステアリングシャフト102、ユニバーサルジョイント104、中間シャフト105、ユニバーサルジョイント106、エクステンションシャフト109、ピニオン軸110を介して、その回転力がステアリングギヤ107に伝達され、ラックアンドピニオン機構を介して、タイロッド108を移動し、車輪の操舵角を変えることができる。
【0021】
図3に、本発明の製造方法で製造されるエクステンションシャフトの例を示す。図3(1A)、(1B)に示すように、本発明の製造方法で製造されるエクステンションシャフト2は、締結部21と軸部22が一体で鍛造加工され、締結部21に非円形孔23が鍛造加工される。
【0022】
図3(1A)、(1B)の非円形孔23は、軸部22の中心軸線221を中心とする半円形孔231と、半円形孔231の両端から例えば45度の傾斜で延びる傾斜平面232、232で構成されている。非円形孔23には、非円形孔23と同一形状をしたピニオン軸110上端の非円形軸部110A(図2参照)が内嵌されて、締結される。なお、ここでは、傾斜平面232、232の傾斜角が45度の例を示したが、これに限られず60度などの任意の角度とすることも可能である。
【0023】
すり割り24を有する略矩形の締付け部25が、締結部21の半円形孔231側に形成されている。図3(1B)で、締結部21の右側半分には、軸部22と同心で、軸部22の直径よりも大径の円形外周26が形成されている。また、締結部21の外形の傾斜平面232、232側には、円形外周26と同一直径の半円形外周261が形成されている。
【0024】
図3(2A)、(2B)に示すエクステンションシャフト3は、図3(1A)、(1B)に示すエクステンションシャフト2の非円形孔23の形状を変形した例である。すなわち、図3(2A)、(2B)に示すように、エクステンションシャフト3の非円形孔33は、軸部32の中心軸線321を中心とする半円形孔331と、半円形孔331の両端から例えば30度の傾斜で延びる傾斜平面332、332と、傾斜平面332、332の両端を滑らかに接続する円弧孔333で構成されている。なお、ここでは、傾斜平面332、332の傾斜角が30度の例を示したが、これに限られず60度などの任意の角度とすることも可能である。
【0025】
すり割り34を有する略矩形の締付け部35が、締結部31の半円形孔331側に形成されている。図3(2B)で、締結部31の右側半分には、軸部32と同心で、軸部32の直径よりも大径の円形外周36が形成されている。また、締結部31の外形には傾斜平面332、332側に、円形外周36と同一直径の半円形外周361が形成されている。
【0026】
図3(3A)、(3B)に示すエクステンションシャフト4は、図3(1A)、(1B)に示すエクステンションシャフト2の非円形孔23の形状を変形した例である。すなわち、図3(3A)、(3B)に示すように、非円形孔43は、軸部42の中心軸線421を中心とする下円弧孔431、上円弧孔433と、下円弧孔431、上円弧孔433の両端から互いに平行に延びる平行平面432、432で構成されている。
【0027】
すり割り44を有する略矩形の締付け部45が、締結部41の下円弧孔431側に形成されている。図3(3B)で、締結部41の右側半分には、軸部42と同心で、軸部42の直径よりも大径の円形外周46が形成されている。また、締結部41の上円弧孔433側と平行平面432、432の上半分側の外形には、円形外周46と同一直径の半円形外周461が形成されている。
【0028】
図4及び図5に、図3(1A)、(1B)に示したエクステンションシャフト2の製造方法を示す。図4(1A)、(1B)の第1工程に示すように、まず、丸棒状の素材から、軸部22と円形外周26を鍛造で成形する。
【0029】
次に、図4(2A)、(2B)の第2工程に示すように、円形外周26の軸方向の長さを短縮しながら、図4(2B)で見て、円形外周26の左側略半分に、略矩形の締付け部25を鍛造で成形する。
【0030】
同時に、軸部22の中心軸線221を挟んで、締付け部25の反対側で、図4(2B)で見て、円形外周26の左側の略80%の長さ部分に、円形外周26よりも半径方向外側に突出した駄肉27、27を鍛造で成形する。駄肉27、27は、図4(2A)で見て、軸部22の中心軸線221から、左上方45度方向及び右上方45度方向に、円弧状に突出して成形される。
【0031】
次に、図4(3A)、(3B)の第3工程に示すように、円形外周26の軸方向の長さと略同一長さだけ、軸部22の中心軸線221と同心の円形孔28を鍛造で成形する。円形孔28の直径は、図3(1A)、(1B)で説明した、エクステンションシャフト2の半円形孔231と略同一に形成されている。円形孔28は、円柱状のパンチで鍛造加工してもよいし、ドリル等により切削加工してもよい。
【0032】
次に、図5(1A)、(1B)の第4工程に示すように、非円形外周を有するパンチ5を円形孔28に挿入して、締付け部25の外周と円形外周26の外周をダイ6で拘束しながらエクステンションシャフト2をダイ6内に挿入していく、いわゆる、しごき加工をする。パンチ5の外周形状は、図3(1A)、(1B)に示したエクステンションシャフト2の非円形孔23と同一形状に形成されている。すなわち、パンチ5には、エクステンションシャフト2の半円形孔231と同一形状の半円形外周51、及び、エクステンションシャフト2の傾斜平面232、232と同一形状の傾斜平面52、52が形成されている。
【0033】
また、ダイ6の内周形状は、図3(1A)、(1B)に示したエクステンションシャフト2の締結部21の外形と同一形状に形成されている。すなわち、ダイ6には、エクステンションシャフト2の締付け部25と同一形状の矩形部61、及び、エクステンションシャフト2の半円形外周261と同一形状の半円形内周62が形成されている。
【0034】
従って、非円形外周を有するパンチ5を円形孔28に挿入して、締付け部25の外周と円形外周26の外周をダイ6で拘束しながら軸方向に挿入する(つまり、しごき加工する)と、駄肉27、27がダイ6の半円形内周62に押されて、円形孔28内に押し込まれる。駄肉27、27の体積は、円形孔28の体積からエクステンションシャフト2の非円形孔23の体積(パンチ5の非円形外周部の体積)を差し引いた体積と、略同一に設定されている。
【0035】
その結果、円形孔28は変形し、押し込まれた駄肉27、27は、主としてパンチ5の傾斜平面52、52に当接し、図5(2A)、(2B)に示すように、所望形状の傾斜平面232、232と半円形孔231とから成る非円形孔23が、エクステンションシャフト2に形成される。
【0036】
また、駄肉27、27がダイ6の半円形内周62に押されて、円形孔28内に押し込まれる、つまり、しごき加工の結果、図5(2A)、(2B)に示すように、締結部21の外形の傾斜平面232、232側には、円形外周26と同一直径の半円形外周261が形成され、エクステンションシャフト2の締結部21の成形が完了する。
【0037】
従って、本発明の実施例のステアリング装置用締結部及びその製造方法によれば、締付け部25の反対側の外形に、締付け部25と対称形状の駄肉を付ける必要が無いため、ステアリング装置用締結部が軽量化され、ステアリング装置用締結部を車体に取り付けるために必要なスペースが小さくて済む。また、溶接による熱変形が無いため、寸法精度が安定する。
【0038】
上記した実施例においては、円形孔28が形成されているが、円形孔28に限定されるものではなく、駄肉27、27の体積とエクステンションシャフト2の非円形孔23の体積を合計した体積相当の孔であればよい。
【0039】
また、上記した実施例においては、エクステンションシャフトとピニオン軸との締結部に適用した例について説明したが、ステアリング装置で回転トルクを伝達するために、回転軸の非円形軸部を締結する任意のステアリング装置用締結部に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のステアリング装置用締結部を備えたステアリング装置を車両に取り付けた状態を示す全体斜視図である。
【図2】図1のエクステンションシャフトを示す拡大正面図である。
【図3】本発明の製造方法で製造されるエクステンションシャフトの例を示す部品図である。
【図4】エクステンションシャフトの製造方法を示す工程図である。
【図5】図4の工程の後工程の製造方法を示す工程図と、成形が完了したエクステンションシャフトを示す部品図である。
【図6】締結部をブローチ加工する従来のエクステンションシャフトの製造方法を示す工程図である。
【図7】締結部を鍛造加工する従来のエクステンションシャフトの製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0041】
101 ステアリング装置
102 ステアリングシャフト
103 ステアリングホイール
104 ユニバーサルジョイント
105 中間シャフト
106 ユニバーサルジョイント
107 ステアリングギヤ
108 タイロッド
109 エクステンションシャフト
110 ピニオン軸
110A 非円形軸部
2 エクステンションシャフト
21 締結部
22 軸部
221 中心軸線
23 非円形孔
231 半円形孔
232 傾斜平面
24 すり割り
25 締付け部
26 円形外周
261 半円形外周
27 駄肉
28 円形孔
3 エクステンションシャフト
31 締結部
32 軸部
321 中心軸線
33 非円形孔
331 半円形孔
332 傾斜平面
333 円弧孔
34 すり割り
35 締付け部
36 円形外周
361 半円形外周
4 エクステンションシャフト
41 締結部
42 軸部
421 中心軸線
43 非円形孔
431 下円弧孔
432 平行平面
433 上円弧孔
44 すり割り
45 締付け部
46 円形外周
461 半円形外周
5 パンチ
51 半円形外周
52 傾斜平面
6 ダイ
61 矩形部
62 半円形内周
8 エクステンションシャフト
81 締結部
811 円形孔
82 軸部
821 小径軸部
83 非円形孔
9 エクステンションシャフト
91 締結部
92 軸部
93 非円形孔
94 すり割り
95 締付け部
96 駄肉
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【識別番号】506391705
【氏名又は名称】群馬精工株式会社
【出願日】 平成18年11月22日(2006.11.22)
【代理人】 【識別番号】100108730
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 正景

【識別番号】100092299
【弁理士】
【氏名又は名称】貞重 和生


【公開番号】 特開2008−126296(P2008−126296A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−316134(P2006−316134)