トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 歯車鍛造装置及び歯車鍛造方法
【発明者】 【氏名】中島 將木

【氏名】新井 慎二

【氏名】鹿熊 清展

【要約】 【課題】装置の構造が簡単であると共に装置の耐久性に優れ、かつはすば歯車を精度よく製造することができる歯車鍛造装置及び歯車鍛造方法を提供すること。

【解決手段】歯車鍛造装置1は、歯車用素材70の軸方向上端面を加圧するパンチ2と、歯車用素材70の外周面につる巻き状歯面を成形するダイス4と、パンチ2と対向して歯車用素材70の軸方向下端面を受け止めるダイスリーブ6とを有している。ダイス4は、ダイケース5内に保持された状態で、ダイケース5及びダイスリーブ6に対して回転可能である。歯車鍛造装置1は、鍛造後のはすば歯車7をダイス4の歯型成形穴41から取り出す際には、押下ロッド31によって、ガスクッション51の付勢力に抗してダイス4を押し下げることにより、ダイス4を、ダイケース5、はすば歯車7及びダイスリーブ6に対して回転させて、はすば歯車7を取り出すよう構成してある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車用素材から、はすば歯車を鍛造する装置であって、
上記歯車用素材の軸方向上端面を加圧するパンチと、該パンチを保持するパンチホルダと、上記歯車用素材の外周面につる巻き状歯面を成形するダイスと、該ダイスを保持するダイケースと、上記パンチと対向して上記歯車用素材の軸方向下端面を受け止めるダイスリーブと、該ダイスリーブ及び上記ダイケースを固定するダイベースとを有しており、
上記ダイスは、上記ダイケース及び上記ダイスリーブに対して回転可能であると共に、上記つる巻き状歯面を成形するための歯型成形穴を有しており、
上記ダイスの外周面と、該外周面を保持する上記ダイケースの内周面との間には、いずれか一方に、つる巻き状溝を形成すると共に、他方に、該つる巻き状溝に係合する係合突起が形成してあり、
上記パンチは、上記ダイスの上記歯型成形穴及び上記ダイスリーブと共に上記はすば歯車を鍛造するための鍛造空間を形成するよう構成してあり、
上記パンチホルダには、上記ダイスを押し下げる押下ロッドが上下に移動可能に配設してあり、
上記ダイスリーブは、上記歯型成形穴の形状に沿った歯型外周面を備えると共に、該歯型外周面が上記歯型成形穴内に係合した状態で配置してあり、
上記歯型成形穴における歯面と、上記歯型外周面における歯面と、上記つる巻き状溝とは同一のリードに形成してあり、
鍛造後の上記はすば歯車を上記ダイスの上記歯型成形穴内から取り出す際には、上記押下ロッドによって上記ダイスを押し下げることにより、該ダイスを上記ダイケース、上記はすば歯車及び上記ダイスリーブに対して回転させて、上記はすば歯車を取り出すよう構成してあることを特徴とする歯車鍛造装置。
【請求項2】
請求項1において、上記ダイスは、上記ダイベースに配設した付勢手段によって上方へ付勢されており、
上記パンチは、上記付勢手段の付勢力に抗して上記ダイスを押し下げるよう構成してあり、
上記押下ロッドは、上記付勢手段の付勢力に抗して上記ダイスを押し下げるよう構成してあることを特徴とする歯車鍛造装置。
【請求項3】
請求項2において、上記付勢手段は、ガスの圧力を利用して反発力を発生させるガスクッションであることを特徴とする歯車鍛造装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記係合突起には、上記つる巻き状溝内を回転しながら当該係合突起と共に移動するローラが配設してあることを特徴とする歯車鍛造装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記歯車用素材は、軸穴を備えた筒形状を有しており、
上記パンチは、上記歯車用素材の上記軸穴に挿入配置するマンドレル部を有していることを特徴とする歯車鍛造装置。
【請求項6】
上記歯車用素材の軸方向上端面を加圧するパンチと、該パンチを保持するパンチホルダと、上記歯車用素材の外周面につる巻き状歯面を成形するダイスと、該ダイスを保持するダイケースと、上記パンチと対向して上記歯車用素材の軸方向下端面を受け止めるダイスリーブと、該ダイスリーブ及び上記ダイケースを固定するダイベースとを有する歯車鍛造装置を用いて、歯車用素材から、はすば歯車を鍛造する方法であって、
上記ダイスは、上記ダイケース及び上記ダイスリーブに対して回転可能であると共に、上記つる巻き状歯面を成形するための歯型成形穴を有しており、
上記ダイスの外周面と、該外周面を保持する上記ダイケースの内周面との間には、いずれか一方に、つる巻き状溝を形成すると共に、他方に、該つる巻き状溝に係合する係合突起が形成してあり、
上記パンチは、上記ダイスの上記歯型成形穴及び上記ダイスリーブと共に上記はすば歯車を鍛造するための鍛造空間を形成するよう構成してあり、
上記パンチホルダには、上記ダイスを押し下げる押下ロッドが上下に移動可能に配設してあり、
上記ダイスリーブは、上記歯型成形穴の形状に沿った歯型外周面を備えると共に、該歯型外周面が上記歯型成形穴内に係合した状態で配置してあり、
上記歯型成形穴における歯面と、上記歯型外周面における歯面と、上記つる巻き状溝とは同一のリードに形成してあり、
上記鍛造空間内に配置した歯車用素材の軸方向下端面を上記ダイスリーブによって受け止めた状態で、当該歯車用素材の軸方向上端面を上記パンチによって加圧することにより、上記歯車用素材を押し潰して上記鍛造空間内に上記歯車を鍛造する鍛造工程と、
上記鍛造後のはすば歯車を上記歯型成形穴内に保持した状態の上記ダイスを、上記押下ロッドによって押し下げることにより、当該ダイスを上記ダイケース、上記はすば歯車及び上記ダイスリーブに対して回転させて、上記はすば歯車を当該ダイスの上記歯型成形穴内から取り出す取出工程とを含むことを特徴とする歯車鍛造方法。
【請求項7】
請求項6において、上記ダイスは、上記ダイベースに配設した付勢手段によって上方へ付勢されており、
上記鍛造工程においては、上記パンチが上記付勢手段の付勢力に抗して上記ダイスを押し下げながら上記はすば歯車を鍛造し、
上記取出工程においては、上記パンチを上記ダイスから退避させると共に、上記押下ロッドによって上記付勢手段の付勢力に抗して上記ダイスをさらに押し下げることにより、上記はすば歯車を取り出すことを特徴とする歯車鍛造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車用素材から、はすば歯車を製造する歯車鍛造装置及び歯車鍛造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷間鍛造等の鍛造を行って、外周面につる巻状の歯面を有する歯車(はすば歯車)を製造する装置又は方法としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1においては、つる巻き状の歯面を形成したダイスの歯型成形穴内に歯車用素材を配置した状態において、パンチとダイスリーブとにより歯車用素材の軸方向における両端面を加圧して、ダイスの歯型成形面内に外周面につる巻状の歯面を有する歯車を成形している。
【0003】
また、特許文献1においては、ダイスは、ダイケースに対して回転可能に配設してあり、ダイスリーブは、ダイス及びダイスリーブホルダー(固定部)に対して回転可能に配設してある。
そして、歯車を成形した後には、ダイスリーブが、ダイスの成形面における歯筋に沿って自ら回転しながら前進することによって、成形後の歯車をダイスより取り出している。これにより、成形後の歯車に変形が生じることを防止し、寸法精度の優れた歯車を製造している。
【0004】
しかしながら、上記従来の歯車鍛造装置又は歯車鍛造方法においては、以下の問題がある。すなわち、特許文献1においては、ダイスを回転可能にするだけでなくダイスリーブも回転可能にする必要がある。そのため、装置の構造が複雑である。
また、ダイスとダイケースとの間に、つる巻き状の溝とこれに係合するピンとが形成されているだけでなく、ダイスリーブとダイスリーブホルダーとの間にも、つる巻き状の溝とこれに係合するピンとが形成されている。
【0005】
そのため、つる巻き状の溝とピンとの間のクリアランスにより、ダイスがダイケースに対してがたつくだけでなく、ダイスリーブがダイスリーブホルダーに対してがたついてしまうおそれがある。これにより、歯車の成形時において、ダイスの歯型成形穴におけるつる巻き状の歯面と、ダイスリーブの螺合摺動面におけるつる巻き状の歯面とが干渉(衝突)しやすくなってしまう。したがって、ダイス及びダイスリーブの耐久性を悪化させてしまうおそれがある。
【0006】
また、特許文献2においては、軸線に対して斜めにねじれた複数の歯形を有する歯形成形部と円筒状空孔を有する軸部成形部とを同軸状に備えた成形型を用いてヘリカルギヤを製造する方法が開示されている。そして、歯形成形部及び軸部成形部のうちの少なくとも一方を回転自在に配置しておき、成形後のヘリカルギヤを成形型から取り出す際には、歯形成形部及び軸部成形部のうちの少なくとも一方を回転させて取り出している。また、特許文献2においては、成形時にはダイスが回転することを防止し、ヘリカルギヤの取出時にのみダイスを回転させるための工夫も行っている。
【0007】
しかしながら、特許文献2においては、押出し加工を行ってヘリカルギヤを成形しており、成形すると同時に歯面の精度が悪化してしまうおそれがある。すなわち、軸部成形部の円筒状空孔に配置した素材を、パンチによって歯形成形部の歯形に向けて押し出すことにより、ヘリカルギヤを成形している。そのため、軸方向に対してつる巻き状にねじれた歯面に対して、軸方向に素材を押し出すことになり、ヘリカルギヤの各歯面における一方の側面と他方の側面との精度が異なり、歯面の精度が悪化してしまうおそれがある。
【0008】
また、特許文献2においては、製品であるヘリカルギヤを突き上げる力を利用してダイスを回転させている。そのため、ヘリカルギヤの歯面に変形が生じるおそれがあり、精度よく歯車を成形するためには十分ではない。
さらに、特許文献2においては、シリンダによって歯形成形部の回転制御を行うよう構成した場合には、エゼクタにより歯形成形部内から成形後のヘリカルギヤを取り出す際に、エゼクタの上昇動作と、シリンダのストローク動作との同期をとる必要が生じ、ヘリカルギヤを取り出す際の制御が困難になってしまう。
【0009】
【特許文献1】特開2004−98159号公報
【特許文献2】特開2002−346680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、装置の構造が簡単であると共に装置の耐久性に優れ、かつはすば歯車を精度よく製造することができる歯車鍛造装置及び歯車鍛造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、歯車用素材から、はすば歯車を鍛造する装置であって、
上記歯車用素材の軸方向上端面を加圧するパンチと、該パンチを保持するパンチホルダと、上記歯車用素材の外周面につる巻き状歯面を成形するダイスと、該ダイスを保持するダイケースと、上記パンチと対向して上記歯車用素材の軸方向下端面を受け止めるダイスリーブと、該ダイスリーブ及び上記ダイケースを固定するダイベースとを有しており、
上記ダイスは、上記ダイケース及び上記ダイスリーブに対して回転可能であると共に、上記つる巻き状歯面を成形するための歯型成形穴を有しており、
上記ダイスの外周面と、該外周面を保持する上記ダイケースの内周面との間には、いずれか一方に、つる巻き状溝を形成すると共に、他方に、該つる巻き状溝に係合する係合突起が形成してあり、
上記パンチは、上記ダイスの上記歯型成形穴及び上記ダイスリーブと共に上記はすば歯車を鍛造するための鍛造空間を形成するよう構成してあり、
上記パンチホルダには、上記ダイスを押し下げる押下ロッドが上下に移動可能に配設してあり、
上記ダイスリーブは、上記歯型成形穴の形状に沿った歯型外周面を備えると共に、該歯型外周面が上記歯型成形穴内に係合した状態で配置してあり、
上記歯型成形穴における歯面と、上記歯型外周面における歯面と、上記つる巻き状溝とは同一のリードに形成してあり、
鍛造後の上記はすば歯車を上記ダイスの上記歯型成形穴内から取り出す際には、上記押下ロッドによって上記ダイスを押し下げることにより、該ダイスを上記ダイケース、上記はすば歯車及び上記ダイスリーブに対して回転させて、上記はすば歯車を取り出すよう構成してあることを特徴とする歯車鍛造装置にある(請求項1)。
【0012】
本発明の歯車鍛造装置は、上記パンチ、パンチホルダ、ダイス、ダイケース、ダイスリーブ及びダイベースを備えており、ダイスは、ダイケース内に保持された状態で、ダイケース及びダイスリーブに対して回転可能にしてあり、パンチホルダには、ダイスを押し下げる押下ロッドが上下に移動可能に配設してある。
【0013】
そして、歯車用素材からはすば歯車を鍛造するに当たっては、鍛造空間内に配置した歯車用素材の軸方向下端面をダイスリーブによって受け止めた状態で、当該歯車用素材の軸方向上端面をパンチによって加圧し、歯車用素材を押し潰して鍛造空間内にはすば歯車を鍛造する。このとき、パンチをダイスに向けて下降させて、ダイスの歯型成形穴、パンチ及びダイスリーブによって鍛造空間を形成する。そして、歯車用素材の外周面をダイスの歯型成形穴に押し当てて、はすば歯車の閉塞鍛造を行うことができる。これにより、鍛造後のはすば歯車の各つる巻き状歯面における一方の側面と他方の側面との精度が異なってしまうことを防止することができ、つる巻き状歯面の精度を安定させることができる。
【0014】
次いで、パンチホルダに対して押下ロッドを下降させ、押下ロッドによってダイスを押し下げる。このとき、鍛造後のはすば歯車を歯型成形穴内に保持した状態のダイスは、係合突起がつる巻き状溝に沿って相対移動することにより、鍛造後のはすば歯車と同一のリード(1回転したときに軸方向へ進む距離を示す。)で、ダイケースに対して強制的に回転しながら下降することができる。これにより、押下ロッドがダイスを押し下げる力が鍛造後のはすば歯車に直接加わることを防止することができる。そのため、鍛造後のはすば歯車の各つる巻き状歯面における一対の側面の精度が悪化してしまうことを防止して、歯形成形穴内からはすば歯車を取り出すことができる。
【0015】
また、本発明においては、はすば歯車の鍛造を行う際及び鍛造後のはすば歯車を取り出す際のいずれにおいても、ダイスリーブは、回転させる必要がなく、歯車鍛造装置において固定しておくことができる。そのため、ダイスリーブを回転させるためのつる巻き状溝を形成する必要がなく、はすば歯車の鍛造時に、ダイスリーブががたついてしまうことを防止することができる。これにより、はすば歯車の鍛造時において、ダイスの歯型成形穴におけるつる巻き状の歯面と、ダイスリーブの歯型外周面におけるつる巻き状の歯面との間に、干渉(衝突)が生じることを抑制することができる。したがって、ダイス及びダイスリーブの耐久性を向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明においては、鍛造後のはすば歯車を介してダイスを回転させるのではなく、押下ロッドによりダイスを直接押し下げて、歯形成形穴内からはすば歯車を取り出すことができる。これにより、はすば歯車に変形が生じることを防止することができ、精度に優れたはすば歯車を製造することができる。また、本発明においては、ダイスを回転させるために、特別な制御を行う必要がなく、歯車鍛造装置の構造を簡単にすることができる。
それ故、本発明の歯車鍛造装置によれば、装置の構造が簡単であると共に装置の耐久性に優れ、かつはすば歯車を精度よく製造することができる。
【0017】
第2の発明は、上記歯車用素材の軸方向上端面を加圧するパンチと、該パンチを保持するパンチホルダと、上記歯車用素材の外周面につる巻き状歯面を成形するダイスと、該ダイスを保持するダイケースと、上記パンチと対向して上記歯車用素材の軸方向下端面を受け止めるダイスリーブと、該ダイスリーブ及び上記ダイケースを固定するダイベースとを有する歯車鍛造装置を用いて、歯車用素材から、はすば歯車を鍛造する方法であって、
上記ダイスは、上記ダイケース及び上記ダイスリーブに対して回転可能であると共に、上記つる巻き状歯面を成形するための歯型成形穴を有しており、
上記ダイスの外周面と、該外周面を保持する上記ダイケースの内周面との間には、いずれか一方に、つる巻き状溝を形成すると共に、他方に、該つる巻き状溝に係合する係合突起が形成してあり、
上記パンチは、上記ダイスの上記歯型成形穴及び上記ダイスリーブと共に上記はすば歯車を鍛造するための鍛造空間を形成するよう構成してあり、
上記パンチホルダには、上記ダイスを押し下げる押下ロッドが上下に移動可能に配設してあり、
上記ダイスリーブは、上記歯型成形穴の形状に沿った歯型外周面を備えると共に、該歯型外周面が上記歯型成形穴内に係合した状態で配置してあり、
上記歯型成形穴における歯面と、上記歯型外周面における歯面と、上記つる巻き状溝とは同一のリードに形成してあり、
上記鍛造空間内に配置した歯車用素材の軸方向下端面を上記ダイスリーブによって受け止めた状態で、当該歯車用素材の軸方向上端面を上記パンチによって加圧することにより、上記歯車用素材を押し潰して上記鍛造空間内に上記歯車を鍛造する鍛造工程と、
上記鍛造後のはすば歯車を上記歯型成形穴内に保持した状態の上記ダイスを、上記押下ロッドによって押し下げることにより、当該ダイスを上記ダイケース、上記はすば歯車及び上記ダイスリーブに対して回転させて、上記はすば歯車を当該ダイスの上記歯型成形穴内から取り出す取出工程とを含むことを特徴とする歯車鍛造方法にある(請求項6)。
【0018】
本発明の歯車鍛造方法においては、上述した歯車鍛造装置を用いて、歯車用素材から、はすば歯車を製造する。
具体的には、上記鍛造工程においては、鍛造空間内に配置した歯車用素材の軸方向下端面をダイスリーブによって受け止めた状態で、当該歯車用素材の軸方向上端面をパンチによって加圧することにより、歯車用素材を押し潰して鍛造空間内にはすば歯車を鍛造する。このとき、パンチをダイスに向けて下降させて、ダイスの歯型成形穴、パンチ及びダイスリーブによって鍛造空間を形成する。
【0019】
次いで、上記取出工程においては、はすば歯車の鍛造が行われた後に、パンチホルダに対して押下ロッドを下降させ、押下ロッドによってダイスを押し下げる。このとき、鍛造後のはすば歯車を歯型成形穴内に保持した状態のダイスは、係合突起がつる巻き状溝に沿って相対移動することにより、鍛造後のはすば歯車と同一のリードで、ダイケースに対して強制的に回転しながら下降することができる。そして、ダイスの下降により、歯形成形穴内からはすば歯車を取り出すことができる。
【0020】
それ故、本発明の歯車鍛造方法によれば、上述した歯車鍛造装置の発明と同様に、装置の構造が簡単であると共に装置の耐久性に優れ、かつはすば歯車を精度よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上述した第1、第2の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1の発明においては、上記ダイスは、上記ダイベースに配設した付勢手段によって上方へ付勢されており、上記パンチは、上記付勢手段の付勢力に抗して上記ダイスを押し下げるよう構成し、上記押下ロッドは、上記付勢手段の付勢力に抗して上記ダイスを押し下げるよう構成することが好ましい(請求項2)。
また、第2の発明においては、上記ダイスは、上記ダイベースに配設した付勢手段によって上方へ付勢されており、上記鍛造工程においては、上記パンチが上記付勢手段の付勢力に抗して上記ダイスを押し下げながら上記はすば歯車を鍛造し、上記取出工程においては、上記パンチを上記ダイスから退避させると共に、上記押下ロッドによって上記付勢手段の付勢力に抗して上記ダイスをさらに押し下げることにより、上記はすば歯車を取り出すことが好ましい(請求項7)。
【0022】
これらの場合には、付勢手段を用いることにより、ダイスが昇降可能な構造を容易に形成することができる。
また、パンチは、付勢手段の付勢力に抗してダイスを押し下げながらはすば歯車を鍛造することができる。これにより、ダイスの歯型成形穴、パンチ及びダイスリーブによって、安定して鍛造空間を形成することができ、はすば歯車の鍛造を安定して行うことができる。また、押下ロッドは、付勢手段の付勢力に抗してダイスをさらに押し下げることができる。これにより、鍛造後のはすば歯車をダイスの歯型成形穴内から取り出すことが容易であると共に、このはすば歯車の取出後には、付勢手段の付勢力によって容易にダイスを元の位置に復帰させることができる。
【0023】
また、上記付勢手段は、ガスの圧力を利用して反発力を発生させるガスクッションであることが好ましい(請求項3)。この場合には、ダイスが安定して昇降可能な構造を一層容易に形成することができる。
なお、付勢手段は、圧縮バネ、油圧シリンダー等によっても構成することが可能である。
【0024】
また、上記係合突起には、上記つる巻き状溝内を回転しながら当該係合突起と共に移動するローラが配設してあることが好ましい(請求項4)。この場合には、係合突起とつる巻き状溝との磨耗量を低減させることができ、これらの耐久性を向上させることができる。
【0025】
また、上記歯車用素材は、軸穴を備えた筒形状を有しており、上記パンチは、上記歯車用素材の上記軸穴に挿入配置するマンドレル部を有していることができる(請求項5)。この場合には、軸穴を備えたはすば歯車を精度よく製造することができる。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明の歯車鍛造装置及び歯車鍛造方法にかかる実施例につき、図面と共に説明する。
本例の歯車鍛造装置1は、図1、図2、図4に示すごとく、歯車用素材70から、外周面701につる巻状歯面71を備えたはすば歯車7(以下、はすば歯車7という。)を製造する装置である。歯車鍛造装置1は、歯車用素材70の軸方向上端面を加圧するパンチ2と、このパンチ2を保持するパンチホルダ3と、歯車用素材70の外周面701につる巻き状歯面71を成形するダイス4と、このダイス4を保持するダイケース5と、パンチ2と対向して歯車用素材70の軸方向下端面を受け止めるダイスリーブ6と、このダイスリーブ6及びダイケース5を固定するダイベース11とを有している。
【0027】
上記ダイス4は、ダイケース5内に保持された状態で、ダイケース5及びダイスリーブ6に対して回転可能であると共に、付勢手段としてのガスクッション51によって上方へ付勢されており、かつ、歯車用素材70につる巻き状歯面71を成形するための歯型成形穴41を有している。
また、ダイス4の外周面と、この外周面を保持するダイケース5の内周面との間には、いずれか一方に、つる巻き状溝54を形成すると共に、他方に、つる巻き状溝54に係合する係合突起43が形成してある。
【0028】
上記パンチ2は、パンチホルダ3内に保持してあると共に、ダイス4及びダイスリーブ6と共にはすば歯車7を鍛造するための鍛造空間10を形成するよう構成してある。上記パンチホルダ3には、ダイス4をガスクッション51の付勢力に抗して押し下げる押下ロッド31が上下に移動可能に配設してある。
また、上記ダイスリーブ6は、歯型成形穴41の形状に沿った歯型外周面61を備えており、この歯型外周面61は、歯型成形穴41内に係合している。
【0029】
また、ダイス4の歯型成形穴41における歯面のリード(1回転したときに軸方向へ進む距離を示す。)と、ダイスリーブ6の歯型外周面61における歯面のリードと、つる巻き状溝54のリードとは、同一に設定してある。
そして、図3に示すごとく、歯車鍛造装置1は、鍛造後のはすば歯車7をダイス4の歯型成形穴41から取り出す際には、押下ロッド31によって、ガスクッション51の付勢力に抗してダイス4を押し下げることにより、ダイス4を、ダイケース5、はすば歯車7及びダイスリーブ6に対して回転させて、はすば歯車7を取り出すよう構成してある。
【0030】
以下に、本例の歯車鍛造装置1及び歯車鍛造方法につき、図1〜図8と共に詳説する。
本例の歯車用素材70は、図4に示すごとく、軸穴72を備えた筒形状を有しており、本例の歯車鍛造装置1において製造するはすば歯車7は、軸穴72を備えたものである。また、本例の軸穴72には、スプライン状の歯筋が形成されている。そして、図1に示すごとく、上記パンチ2は、歯車用素材70の軸穴72に挿入配置するマンドレル部21を有しており、マンドレル部21には、軸穴72にスプライン状の歯筋を形成するためのスプライン成形歯211が形成してある。
なお、歯車鍛造装置1によって製造するはすば歯車7は、パンチ2及びダイスリーブ6の形状を変更して、図5に示すごとく、軸穴72を有していないものや、図6に示すごとく、軸穴72にスプライン状の歯筋を有しないものとすることもできる。
【0031】
図1、図2に示すごとく、上記ダイス4の歯型成形穴41の上方開口部には、パンチ2の下端部を嵌入させるための嵌入凹部42が形成してある。そして、パンチ2の下端部が嵌入凹部42内に嵌入されることによって、上記鍛造空間10を安定して形成することができる。
【0032】
上記ガスクッション51は、ダイベース11に配設してあり、ガスクッション51の可動部511には、ダイス4を回転可能にするためのスラストベアリング53を配設したダイス保持部52が配設してある。ダイス4は、スラストベアリング53を介してダイス保持部52に回転可能に配設してあると共に、ガスクッション51によって上下に揺動可能である。なお、ガスクッション51は、ガスの流動によってストロークするピストン構造を有しており、ガスの圧力を利用して所定の反発力を発生させるものである。
【0033】
また、図7、図8に示すごとく、本例においては、ダイス4の外周面を保持するダイケース5の内周面に、つる巻き状溝54が形成してあり、ダイス4の外周面に、つる巻き状溝54に係合する係合突起(係合ピン)43が配設してある。また、本例のつる巻き状溝54と係合突起43とは、ダイケース5に対してダイス4を安定して摺動させるために、ダイケース5の内周面とダイス4の外周面との複数箇所において形成してある。
【0034】
また、係合突起43には、つる巻き状溝54内を、回転しながら係合突起43と共に移動するローラ431が配設してある。このローラ431の配設により、係合突起43とつる巻き状溝54との磨耗量を低減させることができ、これらの耐久性を向上させることができる。
なお、ダイス4の外周面に上記つる巻き状溝54を形成し、ダイケース5の内周面に上記係合突起43を形成することもできる。
【0035】
また、本例においては、図1、図2に示すごとく、上記ダイス保持部52がダイケース5に対して回転してしまうことを防止するため、ダイス保持部52には、上下方向に沿った直線溝521が形成してあり、ダイケース5には、直線溝521に係合する係合部55が形成してある。なお、ダイケース5に直線溝521を形成し、ダイス保持部52に係合部55を形成することもできる。
【0036】
また、上記ダイスリーブ6は、ダイケース5に対して固定してあり、ダイス4の回転に伴って回転しないよう構成してある。また、ダイス4は、その歯型成形穴41を、ダイスリーブ6の歯型外周面61に沿って摺動させることによって回転しながら上昇又は下降するよう構成してある。
また、図示は省略するが、本例の押下ロッド31は、油圧シリンダーによって加圧されて下降し、ダイス4を押し下げるよう構成してある。
【0037】
また、図1に示すごとく、本例のダイベース11は、ダイケース5、ダイスリーブ6、ガスクッション51を固定する圧力板であり、ダイケース5は、結合部材13を介してダイベース11に固定してあり、ダイスリーブ6は、ダイスリーブホルダ12によってダイベース11に固定してある。また、ダイケース5の上端面には、ガスクッション51によって上方へ付勢されたダイス4の上昇端を形成するストッパー56が配設してある。
なお、ダイケース5及び結合部材13は、位置決めピン及びボルトを介してダイベース11に固定してあり、ダイスリーブホルダ12は、位置決めピンを介してダイベース11に固定してあり、ダイスリーブ6は、回り止めピンを介してダイスリーブホルダ12に対して回り止めがなされている。
【0038】
次に、上記歯車鍛造装置1を用いてはすば歯車7を鍛造する方法につき説明する。
はすば歯車7を鍛造するに当たっては、まず、図1に示すごとく、配置工程として、ガスクッション51によって上昇した位置にあるダイス4の歯型成形穴41内に、歯車用素材70を配置する。
次いで、図2に示すごとく、鍛造工程として、パンチ2をダイス4に向けて下降させる。このとき、ダイス4の嵌入凹部42内にパンチ2の下端部が嵌入されて、ダイス4の歯型成形穴41、パンチ2及びダイスリーブ6によって鍛造空間10が形成される。そして、パンチ2がガスクッション51の付勢力に抗してダイス4を押し下げながら、歯車用素材70の軸方向下端面をダイスリーブ6によって受け止めた状態で、当該歯車用素材70の軸方向上端面をパンチ2によって加圧することにより、歯車用素材70が押し潰されて鍛造空間10内にはすば歯車7が鍛造される。
【0039】
そして、歯車用素材70の外周面をダイス4の歯型成形穴41に押し当てて、はすば歯車7の閉塞鍛造を行うことができる。これにより、鍛造後のはすば歯車7の各つる巻き状歯面71における一方の側面711と他方の側面712との精度が異なってしまうことを防止することができ、つる巻き状歯面71の精度を安定させることができる(図4参照)。
【0040】
次いで、図3に示すごとく、取出工程として、パンチ2をダイス4から退避させると共に、パンチホルダ3に対して押下ロッド31を下降させる。そして、押下ロッド31によってガスクッション51の付勢力に抗してダイス4をさらに押し下げる。
このとき、鍛造後のはすば歯車7を歯型成形穴41内に保持した状態のダイス4は、係合突起43がつる巻き状溝54に沿って相対移動することにより、鍛造後のはすば歯車7と同一のリードで、ダイケース5に対して強制的に回転しながら下降することができる。
【0041】
これにより、押下ロッド31がダイス4を押し下げる力が鍛造後のはすば歯車7に直接加わることを防止することができる。そのため、鍛造後のはすば歯車7の各つる巻き状歯面71における一対の側面711、712の精度が悪化してしまうことを防止して、歯形成形穴41内からはすば歯車7を取り出すことができる。
そして、歯型成形穴41内からはすば歯車7を取り出した後には、ガスクッション51の付勢力によって容易にダイス4を元の上昇した位置に復帰させることができる。
【0042】
また、本例においては、はすば歯車7の鍛造を行う際及び鍛造後のはすば歯車7を取り出す際のいずれにおいても、ダイスリーブ6は、回転させる必要がなく、歯車鍛造装置1において固定しておくことができる。そのため、ダイスリーブ6を回転させるためのつる巻き状溝を形成する必要がなく、はすば歯車7の鍛造時に、ダイスリーブ6ががたついてしまうことを防止することができる。これにより、はすば歯車7の鍛造時において、ダイス4の歯型成形穴41におけるつる巻き状の歯面と、ダイスリーブ6の歯型外周面61におけるつる巻き状の歯面との間に、こじれ又は干渉(衝突)が生じることを抑制することができる。したがって、ダイス4及びダイスリーブ6の耐久性を向上させることができる。
【0043】
さらに、本例においては、鍛造後のはすば歯車7を介してダイス4を回転させるのではなく、押下ロッド31によりダイス4を直接押し下げて、歯形成形穴41内からはすば歯車7を取り出すことができる。これにより、はすば歯車7に変形が生じることを防止することができ、精度に優れたはすば歯車7を製造することができる。また、本例においては、ダイス4を回転させるために、特別な制御を行う必要がなく、歯車鍛造装置1の構造を簡単にすることができる。
それ故、本例の歯車鍛造装置1及び歯車鍛造方法によれば、装置の構造が簡単であると共に装置の耐久性に優れ、かつ外周面701につる巻状歯面71を備えたはすば歯車7を精度よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例における、歯車用素材を配置した状態の歯車鍛造装置を示す断面説明図。
【図2】実施例における、歯車を鍛造する状態の歯車鍛造装置を示す断面説明図。
【図3】実施例における、歯車を取り出す状態の歯車鍛造装置を示す断面説明図。
【図4】実施例における、歯車鍛造装置によって鍛造する歯車を示す斜視図。
【図5】実施例における、歯車鍛造装置によって鍛造することができる他の歯車を示す斜視図。
【図6】実施例における、歯車鍛造装置によって鍛造することができる他の歯車を示す斜視図。
【図7】実施例における、ダイケースの内周面に形成したつる巻き状溝と、ダイスの外周面に配設した係合突起との係合状態を示す上方断面説明図。
【図8】実施例における、ダイケースの内周面に形成したつる巻き状溝と、ダイスの外周面に配設した係合突起との係合状態を示す側方断面説明図。
【符号の説明】
【0045】
1 歯車鍛造装置
10 鍛造空間
11 ダイベース
12 ダイスリーブホルダ
2 パンチ
3 パンチホルダ
31 押下ロッド
4 ダイス
41 歯型成形穴
5 ダイケース
51 ガスクッション
6 ダイスリーブ
61 歯型外周面
7 歯車
70 歯車用素材
71 つる巻状歯面
【出願人】 【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
【出願日】 平成18年9月19日(2006.9.19)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰

【識別番号】100110700
【弁理士】
【氏名又は名称】岩倉 民芳

【識別番号】100130155
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥起


【公開番号】 特開2008−73701(P2008−73701A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−252703(P2006−252703)