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【発明の名称】 ギヤの製造方法およびギヤの製造装置
【発明者】 【氏名】志賀 良

【要約】 【課題】ダイに対するワークの位相合わせを簡単な構成でかつ確実に行い得るギヤの製造方法およびギヤの製造装置の提供。

【構成】前方押出工程部による製造工程から打抜工程部による製造工程にワークWを移行する際、ワークWの凹部64を打抜金型41の凸部46に合わせることにより、ワークWのスプライン62aと第2のギヤ歯成形部43aとの位相を一致させ、この状態のもとでスプライン62aと第2のギヤ歯成形部43aとを摺接させてバリBを除去するようにした。よって、従前のような回転機構を用いることなく簡単な構成でかつ確実に位相合わせを行うことができ、装置のメンテナンスを簡素化したりスプライン62aの欠損や歪等の不具合の発生を確実に防止したりでき、ギヤの製造コストを低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークにギヤ歯を成形するギヤの製造方法であって、
前記ワークが載置される第1のダイ、およびこれに向けて移動する第1のポンチを有する第1の金型により、前記ギヤ歯を成形するとともに前記ワークの一方の端面に凹部を前記ギヤ歯に対して一定の位相で成形する第1の工程と、
前記第1の工程が終了した前記ワークが載置され前記凹部に係合する凸部と、前記凹部と前記凸部とが係合した状態のもとで前記ギヤ歯に噛み合う噛み合い部とを備える第2のダイ、およびこれに向けて移動する第2のポンチとを有する第2の金型により、前記第1の工程で前記ワークの他方の端面に連なって形成されるバリを除去する第2の工程とを有することを特徴とするギヤの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のギヤの製造方法において、前記第1のダイと前記第2のダイとを備える下側ブロックと、前記第1のポンチと前記第2のポンチとを備える上側ブロックとを有するトランスファプレスにより、前記第1の工程と前記第2の工程とを別々のワークについて同時に行うことを特徴とするギヤの製造方法。
【請求項3】
ワークにギヤ歯を成形するギヤの製造装置であって、
ギヤ歯成形部が設けられた金型本体と、当該金型本体の内側に配置される凹部形成筒とを備える第1のダイ、およびこれとの協働により前記ワークに前記ギヤ歯を成形するとともに前記ワークの一方の端面に凹部を前記ギヤ歯に対して一定の位相で成形する第1のポンチを有する第1の金型と、
前記ギヤ歯に噛み合う噛み合い部を有する打抜ダイと、当該打抜ダイの内側にこれに対して回転することなく軸方向に移動自在に配置され前記凹部に係合する凸部を有するガイドスリーブとを備える第2のダイ、およびこれとの協働により前記第1の金型で前記ワークの他方の端面に連なって形成されるバリを除去する第2のポンチを備えた第2の金型とを有し、
前記凸部と前記凹部との係合により前記ギヤ歯と前記噛み合い部とを同位相にした状態のもとで前記打抜ダイと前記第2のポンチとにより前記バリの除去を行うことを特徴とするギヤの製造装置。
【請求項4】
請求項3記載のギヤの製造装置において、前記打抜ダイの径方向内側および前記ガイドスリーブの径方向外側に、相互に接触する平面部をそれぞれ形成することを特徴とするギヤの製造装置。
【請求項5】
請求項3または4記載のギヤの製造装置において、前記ガイドスリーブの径方向内側に、軸方向に相対移動可能なノックアウトを設けることを特徴とするギヤの製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークにギヤ歯を成形するギヤの製造方法およびギヤの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車やトラック,バス等の車両に搭載される手動変速機(マニュアルトランスミッション)には、運転者による変速操作を円滑に行えるようにするための同期機構(シンクロメッシュ)が設けられている。このシンクロメッシュは、複数のギヤ等の部品を組み合わせることにより構成されており、その構成部品としてのギヤは、エンジンの高トルク化された回転力をプロペラシャフト等へ伝達するために高い耐摩耗性が要求され、冷間鍛造成形等の成形手段により成形されている。冷間鍛造成形によって成形されるギヤは、通常、複数の製造工程を経て製造され、例えば、ワークにギヤ歯を成形するギヤ歯成形加工(前段の製造工程)からギヤ歯のバリ取りを行うバリ取り加工(後段の製造工程)を経て製造されるようになっている。
【0003】
前段の製造工程から後段の製造工程にワークを移行させるときには、前段の製造工程で成形されたギヤ歯が後段の製造工程で欠損したり歪んだりすること等を防止するために、前段の製造工程で成形されたギヤ歯の位相と後段の製造工程で使用するダイのギヤ歯成形部の位相とを一致させる必要がある。そこで、ダイに対して接近するポンチによってワークをダイ上で相対回転させてワークのダイに対する位相ズレを補正し、これにより、ギヤ歯とギヤ歯成形部とを同位相にするようにした装置が、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、ダイ(下型)に対して接近するポンチ(上型)を、筒状の外側ポンチ(外側上型)と外側ポンチに対して相対変位および相対回転する内側ポンチ(内側上型)とから構成している。そして、内側ポンチのワークへの当接により内側ポンチが外側ポンチに対して相対変位および相対回転し、このときの内側ポンチとワークとの摩擦力によりワークをダイ上で回転させ、ワークのダイに対する位相合わせを行うようにしている。
【特許文献1】特開平10−085889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された装置によれば、外側ポンチの内部に螺旋状の溝部を成形する必要がある等、内側ポンチを相対回転させるための回転機構が複雑であり、内側ポンチが外側ポンチに対して規定のトルクで回転するように定期的に注油等のメンテナンスを行う必要が生じる等、維持やコストが嵩むといった問題がある。さらには、内側ポンチの下面とワークの上面との摩擦力(摩擦係数μ1)によりワークを回転させるため、前段の製造工程でのワークの仕上がり具合や相互の当接面へのグリス等の付着などにより摩擦力(μ1)がばらつき、ワークの下面とダイの上面との摩擦力(摩擦係数μ2)が摩擦力(μ1)よりも上回るような場合(μ1<μ2)には、ワークを回転させることができなくなるといった問題も生じ得る。
【0006】
本発明の目的は、ダイに対するワークの位相合わせを簡単な構成でかつ確実に行い得るギヤの製造方法およびギヤの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のギヤの製造方法は、ワークにギヤ歯を成形するギヤの製造方法であって、前記ワークが載置される第1のダイ、およびこれに向けて移動する第1のポンチを有する第1の金型により、前記ギヤ歯を成形するとともに前記ワークの一方の端面に凹部を前記ギヤ歯に対して一定の位相で成形する第1の工程と、前記第1の工程が終了した前記ワークが載置され前記凹部に係合する凸部と、前記凹部と前記凸部とが係合した状態のもとで前記ギヤ歯に噛み合う噛み合い部とを備える第2のダイ、およびこれに向けて移動する第2のポンチとを有する第2の金型により、前記第1の工程で前記ワークの他方の端面に連なって形成されるバリを除去する第2の工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のギヤの製造方法は、前記第1のダイと前記第2のダイとを備える下側ブロックと、前記第1のポンチと前記第2のポンチとを備える上側ブロックとを有するトランスファプレスにより、前記第1の工程と前記第2の工程とを別々のワークについて同時に行うことを特徴とする。
【0009】
本発明のギヤの製造装置は、ワークにギヤ歯を成形するギヤの製造装置であって、ギヤ歯成形部が設けられた金型本体と、当該金型本体の内側に配置される凹部形成筒とを備える第1のダイ、およびこれとの協働により前記ワークに前記ギヤ歯を成形するとともに前記ワークの一方の端面に凹部を前記ギヤ歯に対して一定の位相で成形する第1のポンチを有する第1の金型と、前記ギヤ歯に噛み合う噛み合い部を有する打抜ダイと、当該打抜ダイの内側にこれに対して回転することなく軸方向に移動自在に配置され前記凹部に係合する凸部を有するガイドスリーブとを備える第2のダイ、およびこれとの協働により前記第1の金型で前記ワークの他方の端面に連なって形成されるバリを除去する第2のポンチを備えた第2の金型とを有し、前記凸部と前記凹部との係合により前記ギヤ歯と前記噛み合い部とを同位相にした状態のもとで前記打抜ダイと前記第2のポンチとにより前記バリの除去を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明のギヤの製造装置は、前記打抜ダイの径方向内側および前記ガイドスリーブの径方向外側に、相互に接触する平面部をそれぞれ形成することを特徴とする。
【0011】
本発明のギヤの製造装置は、前記ガイドスリーブの径方向内側に、軸方向に相対移動可能なノックアウトを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のギヤの製造方法によれば、第1の工程から第2の工程にワークを移行する際、ワークの一方の端面に形成された凹部を第2のダイの凸部に合わせることにより、ワークのギヤ歯と第2のダイの噛み合い部との位相を一致させることができ、この状態のもとで、第2の工程においてギヤ歯と噛み合い部とを摺接させてバリを除去することができる。したがって、複雑な構成の回転機構を用いることなく簡単な構成でかつ確実に位相合わせを行うことができる。
【0013】
本発明のギヤの製造方法によれば、トランスファプレスにより第1の工程と第2の工程とを別々のワークについて同時に行うので、ギヤの製造を自動化してワーク(半製品)からギヤ(完成品)への量産を効率よく行うことができる。
【0014】
本発明のギヤの製造装置によれば、ガイドスリーブの凸部とワークの凹部との係合によりワークのギヤ歯と打抜ダイの噛み合い部とを同位相にした状態のもとで打抜ダイと第2のポンチとによりバリの除去を行うので、第1の金型で成形されたギヤ歯が欠損したり歪んだりすることを防止することができる。
【0015】
本発明のギヤの製造装置によれば、打抜ダイの径方向内側およびガイドスリーブの径方向外側に、相互に接触する平面部をそれぞれ形成するので、これらの各平面部の接触によってガイドスリーブと打抜ダイとを相対回転不能にすることができる。
【0016】
本発明のギヤの製造装置によれば、ガイドスリーブの径方向内側に、軸方向に相対移動可能なノックアウトを設けるので、このノックアウトのガイドスリーブに対する相対移動により打抜ダイからワークを排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るギヤの製造方法を実施するトランスファプレスを示す断面図を、図2は図1のトランスファプレスを構成するトランスファフィードを上面から見た平面図をそれぞれ表している。
【0018】
図1に示すように、ギヤの製造装置としてのトランスファプレス10は、半製品としてのワークを冷間鍛造成形することにより完成品としてのギヤを製造する装置であり、このトランスファプレス10は、床面等の不動部分(図示せず)に固定される複数のブロック材よりなる下側ブロック11と、図中矢印に示すように、下側ブロック11に対して上下方向に相対移動する上側ブロック12とを有している。上側ブロック12は、下側ブロック11に対して図示しないスライド機構等を介して、例えば、油圧駆動によって上下動するようになっており、水平方向には移動不能となっている。
【0019】
トランスファプレス10は、図中破線で区切られるように、下側ブロック11側と上側ブロック12側とでそれぞれ対となるように、アイドル工程部20,前方押出工程部30および打抜工程部40とを有している。トランスファプレス10の下側ブロック11と上側ブロック12との間には、図中二点鎖線に示すように、トランスファフィード50が設けられている。このトランスファフィード50は、複数の製造工程を終えて後述のクラッチギヤ60(図3及び図4参照)となる略リング状のワークWを、図中円弧矢印に示すようにアイドル工程部20から打抜工程部40へ向けて前進させるものである。
【0020】
トランスファフィード50は、図2中矢印に示すように、図中上下方向から相互に接近および離間するとともに、図中左右方向に同期して往復動する一対のアームホルダ51を有している。各アームホルダ51は、図中左右方向に棒状に延びて形成され、アイドル工程部20ないし打抜工程部40を横断するようにして配置されている。各アームホルダ51には、アイドル工程部20ないし打抜工程部40のそれぞれに対応して、所定間隔で一対の挟持アーム52a,52b,52cが固定されている。
【0021】
トランスファフィード50は、図示しないコントローラによって各アームホルダ51を駆動することにより、前段の製造工程(例えば前方押出工程部30)を終えたワークWを各挟持アーム52bによって径方向から挟持して持ち上げるとともに、持ち上げたワークWを後段の製造工程(例えば打抜工程部40)に搬送する。その後、後段の製造工程でワークWを離した後に前段の製造工程に戻る復帰動作を行うようになっている。トランスファフィード50は、このような一連の動作を繰り返して行うことにより、別々のワークW(アイドル工程部20や前方押出工程部30にあるそれぞれのワークW)を同時に、かつ、連続してアイドル工程部20から打抜工程部40へ向けて搬送するとともに、打抜工程部40での成形を終えて完成したクラッチギヤ60を、トランスファプレス10から図示しないストッカー等に排出するようになっている。
【0022】
トランスファプレス10によって製造されるギヤは、図3および図4に示すように構成されており、以下、このギヤの詳細構造について図面を用いて説明する。図3は図1の装置によって製造されるギヤ(完成品)を示す断面図を、図4は図3のギヤを斜め下方から見た斜視図をそれぞれ表している。
【0023】
トランスファプレス10によって製造されるギヤは、自動車等の車両に搭載されるマニュアルトランスミッションのシンクロメッシュ(図示せず)を構成するクラッチギヤであり、このクラッチギヤ60は、エンジンの回転に応じて回転するシャフト(図示せず)が貫通して固定される内周壁部61を有している。
【0024】
クラッチギヤ60の図中上方には、その外周側にギヤ歯としての複数のスプライン62a,62a・・・を有するスプライン形成本体62が設けられている。このスプライン形成本体62に形成されるスプライン62aには、図中下方に向かって徐々に幅狭となる一対の傾斜面62bが形成されており、これらの各傾斜面62bは、クラッチギヤ60の軸方向に対向配置される図示しないクラッチハブのスプラインとの噛み合いを案内するようになっている。
【0025】
スプライン形成本体62の図中下方には、外周側が下方に向かって徐々に傾斜する傾斜壁63aを有する略円錐台形状の本体部63が一体的に設けられている。この本体部63における一方の端面(図中下方側の端面)の傾斜壁63a側には、周方向に沿って120°間隔で3つの凹部64が形成されており、これらの各凹部64は、図中下方に向かって徐々に拡開するように略台形形状に形成されている。各凹部64は、本体部63の内側(内周壁部61側)から供給される潤滑オイル(図示せず)を、本体部63の外周側に配置されるシンクロナイザリング(図示せず)側に十分に行き渡らせるための油溝(油溜)としての機能を果たすものである。
【0026】
次に、トランスファプレス10を構成するアイドル工程部20ないし打抜工程部40について、図面を用いて詳細に説明する。図5は前方押出工程部の金型を拡大して示す断面図を、図6は打抜工程部の打抜金型を示す平面図を、図7は図6のA−A線に沿う断面図をそれぞれ表している。
【0027】
アイドル工程部20は、図1に示すように、トランスファプレス10のワークWの導入側(図中左方)を構成しており、アイドル工程部20に対応する下側ブロック11にはワーク載置台21が設けられている。このワーク載置台21には、図中上方に突出する円筒状突出部21aが設けられており、この円筒状突出部21aには、図示しない工作機械等によって他の製造工程で成形されたワークWが装着されるようになっている。ワーク載置台21へのワークWの載置作業は、トランスファフィード50の動作と同期して動作される部品供給装置等(図示せず)によって行われるようになっている。
【0028】
このように、ワークWがワーク載置台21に載置されることでワークWはトランスファプレス10に対して高精度で位置決めされ、図2に示す各挟持アーム52aによるワークWの搬送準備が整うことになる。なお、アイドル工程部20に対応する上側ブロック12には、後述の前方押出工程部30や打抜工程部40が有するポンチ(上型)を備えていない。
【0029】
前方押出工程部30は、本発明における第1の工程を実施するものであり、図1に示すように、トランスファプレス10の中央部分(図中中央)を構成している。この前方押出工程部30に対応する下側ブロック11には、第1のダイとしての環状の金型(下型)31が設けられている。下側ブロック11における金型31の図中下方には、下側ブロック11に対して上下方向に相対移動する第1のノックアウトカウンタ32が設けられている。この第1のノックアウトカウンタ32は、その下方側に設けられるとともに、例えば、油圧駆動される駆動ピン33によって上昇動作されるようになっている。第1のノックアウトカウンタ32の図中上端側は、駆動ピン33の上昇動作により金型31内に入り込むようになっており、これにより、金型31内に塑性流動変形して入り込んだワークWを金型31の外部に押出して排出するようにしている。
【0030】
金型31は、図5に示すように、下側ブロック11(図1参照)に装着される環状の金型本体34を有し、この金型本体34の図中上方には、ワークWにスプライン62a(図3および図4参照)を成形するための第1のギヤ歯成形部(ギヤ歯成形部)34aが形成されている。金型本体34の径方向内側には、ワークWの外周側に傾斜壁63aを成形するための絞り筒35が装着され、この絞り筒35のさらに径方向内側には、ワークWの底部側に複数の凹部64を成形するための凹部形成筒36が装着されている。
【0031】
凹部形成筒36の図中上方には、周方向に沿って120°間隔で3つの突出部36a(図では2つのみ示す)が形成されており、これらの各突出部36aは凹部64を成形するために略台形形状に形成されている。凹部形成筒36は、突出部36aの周方向位置と第1のギヤ歯成形部34aの周方向に対する凹凸形状の位置とが一定の位相関係となるように、金型本体34に対して回転不能に固定されている。
【0032】
前方押出工程部30に対応する上側ブロック12には、図1に示すように、金型31の中心軸と一致するようにして、第1のポンチとしての押出ポンチ37が設けられている。この押出ポンチ37は、上側ブロック12の下降に伴ってワークWの中心を貫通するとともに、ワークWを傾斜させないように支持する支持部37aと、この支持部37aがワークWを貫通した後にワークWの上面に当接し、ワークW全体を金型31内に押出す押圧部37bとを有している。ここで、金型31と押出ポンチ37とによって本発明における第1の金型を構成している。
【0033】
下側ブロック11に装着される金型31は、図5に示すように金型本体34,絞り筒35および凹部形成筒36によって構成され、これにより、押出ポンチ37を下降させてワークWを金型31内に前方押出成形することにより、ワークWを塑性流動変形させ、この一回の前方押出成形(押出ポンチ37の1ストローク動作)でワークWにスプライン62a,傾斜壁63aおよび凹部64を一度に成形することができる。
【0034】
打抜工程部40は、本発明における第2の工程を実施するものであり、図1に示すように、トランスファプレス10におけるワークWの排出側、つまり、完成品としてのクラッチギヤ60(図3及び図4参照)の排出側(図中右方)を構成している。この打抜工程部40に対応する下側ブロック11には、第2のダイとしての筒状の打抜金型41が設けられている。
【0035】
図6および図7に示すように、打抜金型41は、下側ブロック11(図1参照)に装着される筒状の本体筒部42と、この本体筒部42の図中上方側に一体的に設けられ、内周側にワークWのスプライン62aと略同一形状の第2のギヤ歯成形部43aが形成された打抜ダイ43とを有している。ここで、第2のギヤ歯成形部43aは本発明における噛み合い部を構成しており、この第2のギヤ歯成形部43aがワークWのスプライン62aに噛み合って軸方向に摺接することによって、ワークWの他方の端面(図3中上方側の端面)に連なって形成されるバリを除去するようになっている。ここで、打抜ダイ43と本体筒部42とによって本発明における打抜ダイを構成しており、打抜ダイ43と本体筒部42とは一体成形するようにしても良いものである。
【0036】
本体筒部42の径方向内側には、段付き筒状のガイドスリーブ44が図中上下方向に相対移動可能に設けられている。このガイドスリーブ44は、外周が本体筒部42の内壁42aに摺接するガイド本体44aと、このガイド本体44aの図中上方側に突出して一体的に設けられ、ワークWを底部側から支持する支持筒44bとを有している。
【0037】
本体筒部42の径方向内側でかつガイドスリーブ44の図中下方には、コイルスプリング45が装着されており、このコイルスプリング45は、ガイドスリーブ44を図中上方に向かって常時付勢するようになっている。したがって、ガイドスリーブ44はワークWの図中上下方向への移動に対して追従するようになっている。
【0038】
支持筒44bは、本体筒部42のガイド壁42bに摺接するようになっており、ガイド壁42bの内周および支持筒44bの外周には、相互に面接触する平面部42c,44cがそれぞれ形成されている。ここで、打抜ダイ43は本体筒部42と一体に設けられており、換言するならば、打抜ダイ43の径方向内側およびガイドスリーブ44の径方向外側に、相互に接触する平面部42c,44cがそれぞれ形成されていることと同義である。各平面部42c,44cは、周方向に沿うようにして120°間隔で3つ設けられており、これらの各平面部42c,44cが面接触することにより本体筒部42および打抜ダイ43に対するガイドスリーブ44の図中上下方向への相対移動を許容する一方、相対回転を規制するようになっている。ここで、打抜ダイ43とガイドスリーブ44とによって本発明における第2のダイを構成している。
【0039】
支持筒44bの図中上方には、図6に示すように、3つの平面部44cの周方向位置に対応するようにして3つの凸部46が設けられている。各凸部46の第2のギヤ歯成形部43aに対する位相は、ワークWの各凹部64のスプライン62aに対する位相と同位相となるように構成されている。つまり、打抜金型41における凸部46の第2のギヤ歯成形部43aに対する位相は、金型31における突出部36aの第1のギヤ歯成形部34aに対する位相と同位相となるように構成されている。ここで、金型31における第1のギヤ歯成形部34aの位相と、打抜金型41における第2のギヤ歯成形部43aの位相とが一致するように、各々の金型は下側ブロック11(図1参照)に装着されている。
【0040】
打抜金型41は位相合わせ装置を構成し、打抜金型41に設けられる各凸部46は、トランスファフィード50によって搬送されてくるワークWの各凹部64に入り込むようになっており、これにより、打抜工程部40の成形前に、例えば、トランスファプレス10の振動等によってワークWの位相がずれることを抑制するようにしている。
【0041】
図1および図7に示すように、ガイドスリーブ44の径方向内側には、図中上下方向に相対移動する本発明のノックアウトとしての第2のノックアウトカウンタ47が設けられている。この第2のノックアウトカウンタ47は、例えば、油圧駆動によって上下動される駆動ピン48によって上下動されるようになっている。そして、第2のノックアウトカウンタ47の図中上方側が、ガイドスリーブ44内に入り込んでガイドスリーブ44を上方へ移動させるようになっており、したがって、打抜ダイ43内に入り込んだワークWを打抜ダイ43の外部に押し出して排出するようになっている。
【0042】
打抜工程部40に対応する上側ブロック12には、図1に示すように、打抜金型41の中心軸と一致するようにして、第2のポンチとしての打抜ポンチ49が設けられている。この打抜ポンチ49は、上側ブロック12の下降に伴ってワークWを打抜ダイ43内へ押し込むとともに、その下端側が打抜ダイ43内に入り込むポンチ本体49aと、このポンチ本体49aの外周に図中上下方向に相対移動可能に設けられ、打抜ダイ43の上面との間でワークWの図中上方側に連なって形成されるバリを挟み込むスライド筒49bとから構成されている。このスライド筒49bは、上側ブロック12に対してスライド自在に設けられた一対のスライドピン49cによって支持されており、スライド筒49bは、各スライドピン49cに設けられる各コイルスプリング49dによって図中下方側に向けて常時付勢され、図1に示す基準位置に復帰できるようになっている。ここで、打抜ダイ43,ガイドスリーブ44および打抜ポンチ49によって本発明における第2の金型を構成している。
【0043】
次に、以上のように構成された本発明におけるトランスファプレス10の動作について図面に基づき詳細に説明する。図8(a),(b),(c)は図1のトランスファプレスによって成形されるクラッチギヤの成形工程を説明する成形工程図を、図9(a),(b),(c)は前方押出工程部における動作説明図を、図10(a),(b),(c)は打抜工程部における動作説明図をそれぞれ表している。
【0044】
まず、他の製造工程で切削加工等を施すことにより成形された図8(a)に示す環状のワークWを、トランスファフィード50(図2参照)によってアイドル工程部20より前方押出工程部30の金型31上に配置(供給)する。その後、図9(a)に示すように、ワークWに対して上側ブロック12を下降させて押出ポンチ37の支持部37aをワークWの中心に貫通させる。これに続き、上側ブロック12を継続して下降させることにより、支持部37aによってワークWが支持された状態のもので、押圧部37bの下面がワークWの上面に当接してワークWが図中下方へ押圧される。すると、図9(b)に示すように、ワークWが金型31内に塑性流動変形して入り込み、ワークWは金型31の径方向内側に設けられた第1のギヤ歯成形部34a,絞り筒35および凹部形成筒36の形状に倣って前方押出成形され、図8(b)に示すように、凹部64,スプライン62aおよびバリBを有するワークWに粗加工される。次いで、図9(c)に示すように、上側ブロック12を上昇させるとともに、第1のノックアウトカウンタ32を上昇駆動させて、ワークWを金型31内から排出させる。これにより、前方押出工程部30によるワークWの成形工程(第1の工程)が終了する。
【0045】
次に、前方押出工程部30での成形工程を終えて粗加工されたワークWを、トランスファフィード50によって金型31上から打抜工程部40の打抜金型41上に配置(供給)する。このとき、打抜金型41上に配置されたワークWの底部側には略台形形状の凹部64が形成されているので(図4参照)、この凹部64の形状に倣ってガイドスリーブ44の凸部46が凹部64内に入り込み、図10(a)に示すように、ワークWは打抜金型41に対して位置決めされる。ここで、トランスファフィード50のガタや振動等によってワークWの搬送中に位相ずれが生じたとしても、凹部64の開口側における周方向寸法が凸部46の周方向寸法よりも大きな寸法に設定されているので、凸部46が凹部64に倣うことで、ワークWが打抜金型41の位相に一致するように回転される。このように、ワークWを打抜金型41に載置することで、ワークWのスプライン62aの位相と打抜ダイ43における第2のギヤ歯成形部43aとの位相が一致される。
【0046】
図10(a)に示すように、打抜金型41上に位置決めされたワークWに対して上側ブロック12を下降させることにより、打抜ポンチ49のポンチ本体49aの下面をワークWの上面に当接させ、さらに継続して上側ブロック12を下降させる。すると、図10(b)に示すように、ワークWのスプライン62aと打抜ダイ43における第2のギヤ歯成形部43aとが摺接しつつ、ワークWが打抜ダイ43内に入り込む。このとき、ガイドスリーブ44は、ワークWによって図中下方へ押圧され、これによりコイルスプリング45を押し縮めて本体筒部42に対して下降する。
【0047】
一方、ポンチ本体49aの下降に伴ってスライド筒49bも下降し、スライド筒49bの下面がワークWのスプライン62aに連なって形成(残留)されたバリBを打抜ダイ43の上面との間で挟み込む。この状態で、上側ブロック12を下降させることによりスライド筒49bに対してポンチ本体49aが図中下方へ相対移動し、ワークWのスプライン62aからバリBが分離される。このとき、ワークWのスプライン62aと打抜ダイ43における第2のギヤ歯成形部43aとは、相互に摺接するようになっており、スプライン62aに残留したバリを除去するとともに、スプライン62aを平滑化して仕上げるようになっている。
【0048】
バリBを除去した後、図10(c)に示すように上側ブロック12を上昇させるとともに、駆動ピン48を上昇駆動させることにより第2のノックアウトカウンタ47を上昇させる。すると、第2のノックアウトカウンタ47の上昇に伴って第2のノックアウトカウンタ47の先端(図中上方)がワークWに当接され、打抜ダイ43から仕上げられたワークW、つまり、図8(c)に示す完成品としてのクラッチギヤ60が押し上げられて排出され、第2の工程が終了する。次いで、トランスファフィード50によって打抜金型41上から、図示しないストッカーにクラッチギヤ60が搬送されて、これにより、トランスファプレス10によるクラッチギヤ60の一連の成形工程が終了する。
【0049】
以上詳述したように、上記実施の形態に係るギヤの製造方法によれば、前方押出工程部30による製造工程から打抜工程部40による製造工程にワークWを移行する際、ワークWの凹部64を打抜金型41の凸部46に合わせることにより、ワークWのスプライン62aと第2のギヤ歯成形部43aとの位相を一致させることができ、この状態のもとで、スプライン62aと第2のギヤ歯成形部43aとを摺接させてバリBを除去することができる。したがって、従前のような回転機構を用いることなく簡単な構成でかつ確実に位相合わせを行うことができるので、装置のメンテナンスを簡素化したりスプライン62aの欠損や歪等の不具合の発生を確実に防止したりでき、ギヤの製造コストを低減することができる。
【0050】
また、上記実施の形態に係るギヤの製造方法によれば、トランスファプレス10により前方押出工程部30による製造工程と打抜工程部40による製造工程とを別々のワークWについて次々と同時に行うので、ギヤの製造を自動化して半製品としてのワークWから完成品としてのクラッチギヤ60への量産を効率よく行うことができる。
【0051】
さらに、上記実施の形態に係るギヤの製造装置によれば、ガイドスリーブ44の凸部46とワークWの凹部64との係合によりワークWのスプライン62aと打抜ダイ43の第2のギヤ歯成形部43aとを同位相にした状態のもとで打抜ダイ43と打抜ポンチ49とによりバリBの除去を行うので、金型31で成形されたスプライン62aが欠損したり歪んだりすることを防止することができる。
【0052】
また、上記実施の形態に係るギヤの製造装置によれば、打抜ダイ43(本体筒部42)の径方向内側およびガイドスリーブ44の径方向外側に、相互に接触する平面部42c,44cをそれぞれ形成するので、これらの各平面部42c,44cの接触によってガイドスリーブ44と打抜ダイ43とを相対回転不能にすることができる。
【0053】
さらに、上記実施の形態に係るギヤの製造装置によれば、ガイドスリーブ44の径方向内側に、軸方向に相対移動可能な第2のノックアウトカウンタ47を設けたので、この第2のノックアウトカウンタ47のガイドスリーブ44に対する相対移動により打抜ダイ43からワークW、つまり完成品としてのクラッチギヤ60を排出することができる。
【0054】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態においては、本発明のギヤの製造方法によって製造されるギヤを、シンクロメッシュを構成するクラッチギヤとしたものを示したが、本発明はこれに限らず、複数の製造工程を経て鍛造成形される他のギヤ、例えば、エンジンのカムシャフトに設けられタイミングベルトが装着されるプーリ等にも適用することができる。
【0055】
また、上記実施の形態においては、大量生産を可能とするトランスファプレスによってクラッチギヤを鍛造成形するものを示したが、本発明はこれに限らず、操作者によって(手動によって)複数の製造工程間でワークを搬送して鍛造成形するギヤ等にも適用することができる。
【0056】
さらに、上記実施の形態においては、冷間鍛造成形によってギヤを製造するものを示したが、本発明はこれに限らず、温間鍛造成形等、他の鍛造成形によって成形されるギヤにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るギヤの製造方法を実施するトランスファプレスを示す断面図である。
【図2】図1のトランスファプレスを構成するトランスファフィードを上面から見た平面図である。
【図3】図1の装置によって製造されるギヤ(完成品)を示す断面図である。
【図4】図3のギヤを斜め下方から見た斜視図である。
【図5】前方押出工程部の金型を拡大して示す断面図である。
【図6】打抜工程部の打抜金型を示す平面図である。
【図7】図6のA−A線に沿う断面図である。
【図8】(a),(b),(c)は、図1のトランスファプレスによって成形されるクラッチギヤの成形工程を説明する成形工程図である。
【図9】(a),(b),(c)は、前方押出工程部における動作説明図である。
【図10】(a),(b),(c)は、打抜工程部における動作説明図である。
【符号の説明】
【0058】
10 トランスファプレス(ギヤの製造装置)
31 金型(第1のダイ,第1の金型)
34 金型本体(第1のダイ)
34a 第1のギヤ歯成形部(ギヤ歯成形部)
36 凹部形成筒(第1のダイ)
37 押出ポンチ(第1のポンチ,第1の金型)
41 打抜金型(第2のダイ,第2の金型)
42c,44c 平面部
43 打抜ダイ(第2のダイ)
43a 第2のギヤ歯成形部(噛み合い部,第2のダイ)
44 ガイドスリーブ(第2のダイ)
46 凸部(第2のダイ)
47 第2のノックアウトカウンタ(ノックアウト)
49 打抜ポンチ(第2のポンチ,第2の金型)
50 トランスファフィード
60 クラッチギヤ(ギヤ)
62a スプライン(ギヤ歯)
64 凹部
B バリ
W ワーク
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成18年9月15日(2006.9.15)
【代理人】 【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和

【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高

【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子


【公開番号】 特開2008−68296(P2008−68296A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−250173(P2006−250173)