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【発明の名称】 鍛造型装置
【発明者】 【氏名】星野 彰教

【氏名】鈴木 治二

【氏名】神尾 周作

【要約】 【課題】捻り歯部を有する鍛造品を良好に製造できる鍛造型装置を提供する。

【構成】鍛造型3装置は、可動型1および固定型2を備える鍛造型3と、可動型1をこれの回動中心の周りで回動させる回動装置6とを備える。回動装置6は、可動型1に突設された突状の係合部と、可動型1の外方に設けられ係合部が嵌合するガイド溝62をもつガイド部63と、可動型1に接続され可動型1を回動中心の周りで回動させる方向に可動型1に移動力を与える駆動源とをもつ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捻れ歯部をもつ鍛造品を成形する鍛造キャビティを区画すると共に上下方向に沿って型締めおよび型開放自在な可動型および相手型を備え、前記可動型を回動可能に保持する鍛造型保持装置と、
前記可動型をこれの回動中心の周りで回動させる回動装置とを具備する鍛造型装置において、
前記回動装置は、前記可動型に突設された突状の係合部と、前記可動型の外方に設けられ前記係合部が嵌合するガイド溝をもつガイド部と、前記可動型に接続され前記可動型を回動中心の周りで回動させる方向に前記可動型に移動力を与える駆動源とを具備しており、
前記ガイド溝は、上下方向に沿って延設され前記可動型が上死点から下死点に向かう移動時に前記係合部が下降する縦状溝と、前記縦状溝の底よりも上側の位置の分岐域から横方に向けて分岐され横方に向かうにつれて上昇傾斜すると共に前記可動型が下死点から上死点に向かう間に前記係合部を案内させる傾斜溝とを備えていることを特徴とする鍛造型装置。
【請求項2】
請求項1において、下降する前記係合部が前記縦状溝の分岐域から前記縦状溝の底に向けて移動している間、または、上昇する前記係合部が前記縦状溝の前記底付近から前記分岐域に向けて移動している間、前記駆動源に駆動開始指令を出力する制御部が設けられていることを特徴とする鍛造型装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記駆動源は流体圧シリンダ装置であることを特徴とする鍛造型装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記傾斜溝の上昇端部には、前記傾斜溝から上方に向けて且つ上下方向に沿って延設された第2縦状溝が形成されていることを特徴とする鍛造型装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項において、前記鍛造型保持装置は、前記可動型と前記相手型とで鍛造品を鍛造成形するとき、前記相手型が退避する退避方向に前記相手型を変位可能に支持する支持手段を備えていることを特徴とする鍛造型装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は捻り歯部をもつ鍛造品を鍛造成形する鍛造型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、捻り歯部をもつ鍛造品を鍛造成形する鍛造型装置が提供されている。特許文献1には、捻り歯部を有するギヤの鍛造装置が開示されている。このものによれば、回動可能なパンチ型の中心軸芯に対して螺旋状のリード溝をパンチ型の外周部に形成し、モータの駆動軸にローラを設け、ローラをパンチ型のリード溝に嵌合させる技術が開示されている。このものによれば、モータによりローラを回転させつつ、パンチ型を下降させると、パンチ型をこれの中心軸芯の回りで回動させることができる。このリード溝は、パンチ型の中心軸芯に対して螺旋状であり、上下方向に沿った溝は形成されていない。このものによれば、パンチを下降させるとき、リード溝によりパンチをこれの軸芯回りで回動させることにしている。パンチを上昇させるときにも、リード溝によりパンチをこれの軸芯回りで回動させることにしている。
【0003】
特許文献2には、捻り歯部を有するギヤの鍛造装置が開示されている。このものによれば、パンチの外周部にギヤを設け、このギヤと噛み合うラックをパンチの外周部に設け、ラックを前進後退させる油圧装置を設け、油圧装置の油圧力によりラックを前進させることによりパンチのギヤを回転させ、ひいてはパンチをこれの軸芯回りで回転させる技術が開示されている。このものによれば、素材を強圧して鍛造成形させるとき、油圧装置の油圧力によりラックを移動させことによりパンチを回転させる。更に、鍛造品をパンチから離型させるときにも、油圧装置のアキュムレータに蓄圧された油圧力により、ラックを後退させて、ラックとギヤとの噛合を介して、パンチを回動させる。このものによれば、パンチを回動させるガイド溝は設けられていない。
【0004】
特許文献3には、金型の外周部にドリブンギヤを設け、ドリブンギヤの外周に、金型の上下により回転する駆動源を設けた傘歯部車用の熱間鍛造成形装置が開示されている。上型の型締め時には、上型を回動させつつ下型に当接させる。更に、上型の型開き時には、上型を回動させ下型から遠ざけ、上型の型面を鍛造品(傘歯部車)の曲がり歯部から離型させる。
【特許文献1】特開平4−33739号公報
【特許文献2】特開平8−252647号公報
【特許文献3】特開平10−180339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、捻り歯部を有する鍛造品を鍛造するにあたり、捻り歯部を更に良好に製造できることが要請されている。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、捻り歯部を有する鍛造品を良好に製造できる鍛造型装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)様相1に係る鍛造型装置は、捻れ歯部をもつ鍛造品を成形する鍛造キャビティを区画すると共に上下方向に沿って型締めおよび型開放自在な可動型および相手型を備え、可動型を回動可能に保持する鍛造型保持装置と、可動型をこれの回動中心の周りで回動させる回動装置とを具備する鍛造型装置において、回動装置は、可動型に突設された突状の係合部と、可動型の外方に設けられ係合部が嵌合するガイド溝をもつガイド部と、可動型に接続され可動型を回動中心の周りで回動させる方向に可動型に移動力を与える駆動源とを具備しており、
ガイド溝は、上下方向に沿って延設され可動型が上死点から下死点に向かう移動時に係合部が下降する縦状溝と、縦状溝の底よりも上側の位置の分岐域から横方に向けて分岐され横方に向かうにつれて上昇傾斜すると共に可動型が下死点から上死点に向かう間に係合部を案内させる傾斜溝とを備えていることを特徴とする。
【0008】
回動装置は、可動型に突設された突状の係合部と、可動型の外方に設けられ係合部が嵌合するガイド溝をもつガイド部と、可動型に接続され可動型を回動中心の周りで回動させる方向に可動型に移動力を与える駆動源とを備えている。ここで、ガイド溝は、上下方向に沿って延設された縦状溝と、縦状溝の底よりも上側の位置から横方に向けて分岐され横方に向かうにつれて上昇傾斜する傾斜溝とを備えている。
【0009】
可動型を相手型に向けて移動させて素材を鍛造するときには、可動型が上死点から下死点に向けて下降すると共に、可動部に突設されている係合部がガイド部の縦状溝に沿って上下方向に沿って下降する。このため、可動型を相手型に向けて移動させて素材を鍛造するときには、可動型がこれの回動中心の回りで回動しようとしても、上下方向に沿って延設された縦状溝に係合部が係合し、これにより係合部の回動が規制されているため、係合部を備える可動型の回動が抑えられる。この結果、素材の鍛造成形が良好に行われる。
【0010】
これに対して成形材料を鍛造成形したときには、可動型が相手型から遠ざけるように可動型がこれの下死点から上死点に向けて移動し、可動型が型開きされる。このような型開放時には、上下方向に沿って延設されている縦状溝に沿って、可動型の係合部は上昇する。つまり、係合部はこれの下死点から分岐域に向けて移動する。そして、上昇する係合部が分岐域に到達すると、係合部は縦状溝の分岐域から傾斜溝に進入する。その後、係合部は傾斜溝に沿って移動する。つまり可動型の型開きにつれて、係合部は、横方向に移動しつつ上昇する。このように可動型を型開きするときには、可動型はこれの回動中心の周りで回動される。このため鍛造品の捻り歯部の離型が確保される。ここで、駆動源としては流体圧シリンダ装置としても良い。流体圧シリンダ装置は、流体圧により移動するロッドと、ロッドを前進および後退可能に保持するシリンダとをもつ構成とすることができる。あるいは、ロッドレスシリンダ装置としても良い。流体圧シリンダ装置としては、空気圧式シリンダ装置、油圧式シリンダ装置が例示される。空気圧式シリンダ装置であれば、設備が簡便となり、空気排出後の特別な処理も必要とされないことが多い。なお、駆動源としてはモータ装置としても良く、要するに、可動型を回動させる移動力を与え得るものであれば良い。
【0011】
(2)様相2に係る鍛造型装置によれば、上記様相において、下降する係合部が縦状溝の分岐域から縦状溝の底に向けて移動している間、または、上昇する係合部が縦状溝の底から分岐域に向けて移動している間、駆動部に駆動開始指令を出力する制御部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本様相によれば、制御部が駆動源に駆動指令信号を出力したとしても、駆動源が実際に駆動開始するまでに時間がかかる場合に適する。駆動源が流体圧シリンダ装置である場合には、制御部が流体圧シリンダ装置に駆動指令信号を出力したとしても、空気や作動油等の流体をシリンダ装置に送給する必要があるため、流体圧シリンダ装置が実際に駆動開始するまでに時間がかかる。しかし本様相によれば、下降する係合部が縦状溝の分岐域から底に向けて移動している間、または、上昇する係合部が縦状溝の底から分岐域に向けて移動している間において、制御部が駆動部に駆動開始指令を出力する。従って、係合部が分岐域に到達するまでの間に、流体圧シリンダ装置の準備を行うことができる。従って係合部が分岐域に到達した時点では、可動型の係合部を傾斜溝に沿って容易に案内させることが可能となる。
【0013】
(3)様相3に係る鍛造型装置によれば、上記様相において、傾斜溝には、傾斜溝から上方に向けて且つ上下方向に沿って延設された第2縦状溝が形成されていることを特徴とする。鍛造品の捻り歯部の離型が終了すれば、可動型をそれ以上回動させない方が好ましい場合がある。本様相によれば、成形品の捻り歯部の離型が終了すれば、係合部を第2縦状溝に沿って案内させる。このため可動型の回動は抑えられ、鍛造品の捻り歯部の損傷が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、捻れ歯部をもつ鍛造品を良好に製造できる鍛造型装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について図1〜図3を参照して説明する。図1に示すように、鍛造型装置は、型締めおよび型開放自在な可動型1(上型)および相手型として機能する固定型2(下型)を備える鍛造型3を有する鍛造型保持装置100と、可動型1をこれの回動中心の周りで回動させる回動装置6とを備えている。
【0016】
可動型1の型面10と固定型2の型面20とで、鍛造キャビティ30が形成されている。可動型1の型面10は、捻れ歯部を形成する捻れ型面10aをもつ。可動型1は、上下方向に貫通する第1挿入孔12をもつ可動型本体11と、第1挿入孔12に挿入されたノックアウトピン13とをもつ。固定型2は、上下方向に貫通する第2挿入孔22をもつ固定型本体21と、ノックアウトピン13に対向するように第2挿入孔22に挿入されたカウンターパンチ23とをもつ。可動型1はホルダ部40cを介して可動ボルスタ40に保持されており、可動ボルスタ40と共に昇降可能である。可動型1は、上下方向に沿った回動中心線P1の回りで回動可能となるように、上型ホルダ部43に保持されている。固定型2は固定ボルスタ45に下型ホルダ部46により保持されている。下型ホルダ部46は、固定型2の係止部2cに係合可能な離脱阻止部46cを備えている。なお、固定型2の係止部2cが離脱阻止部46cに係合すると、固定型2はそれ以上矢印Y2方向に上昇できない。
【0017】
上記した鍛造型保持装置100は、可動型1の型面10と固定型2の型面20とで鍛造品を鍛造成形するとき、固定型2が退避する退避方向(下方向,上型である可動型1が型締時に移動する方向と同一方向)に固定型2を変位可能に支持する支持手段150を備えている。支持手段150は、作動油等の作動流体151cと、作動流体151cを収容する収容室152cをもつ。
【0018】
図1に示すように、可動型1の回りには、可動型1の回動性を向上させるための第1潤滑摺動部材51および第2潤滑摺動部材52が配置されている。第1潤滑摺動部材51および第2潤滑摺動部材52は、可動型1と共に昇降し、可動型1の回動中心線P1の回りを1周するリング状をなしており、可動型1の母材よりも摩擦係数が低い潤滑剤を主要成分として含む。潤滑剤としては固体潤滑剤が好ましい。固体潤滑剤としては、フッ素樹脂、黒鉛、二硫化モリブデンが例示される。第1潤滑摺動部材51は、可動型1を保持する上型ホルダ部43と可動型1との間に保持されており、可動型1の外壁面のリング溝15の外周壁面部分151および上壁面部分152に対面している。第2潤滑摺動部材52は、可動型1の外周壁面17を外締めする外締め部42と可動型1との間に設けられており、可動型1の外周壁面17に対面している。
【0019】
回動装置6は、可動型1をこれの回動中心線P1の周りで回動させる機能を有する。図3に示すように、回動装置6は、突状の係合部としてのガイドピン61と、可動型1の外方に設けられガイドピン61が嵌合するガイド溝62をもつガイド部63と、駆動源としての流体圧式シリンダ装置7とを備えている。流体圧式シリンダ装置7は具体的には空気圧式とされている。図3において、ガイドピン61の雄螺子部61cを可動型1の外壁面のうち外周壁面17の螺子孔17cにねじ込むことにより、ガイドピン61は可動型1の外周壁面17に交換可能に突設されており、可動型1の軸直角方向に沿って外向きに指向している。
【0020】
図2は、ガイド部63のガイド溝62を平面的に展開した展開図を示す。図2に示すように、ガイド溝62はフォロアーとして機能する断面円形状のガイドピン61を案内するカム溝の1種である。ガイド溝62は、上下方向(鉛直方向)に沿って延設された上面開口64wをもつ第1縦状溝64と、第1縦状溝64の底64xよりも上側の位置の分岐域65から横方に向けて斜め上向に分岐された傾斜溝66とを備えている。図2に示すように、第1縦状溝64は、分岐域65よりも上側に形成された上溝部641と、分岐域65から鉛直方向下方に向かう下溝部642とを備えている。上溝部641は溝形成面641aをもつ。上溝部641の長さL1よりも下溝部642の長さL2は短く設定されている。下溝部642は溝形成面642aをもつ。可動型1がこれの上死点から下死点に向かうときには、ガイドピン61は第1縦状溝64の上溝部641および下溝部642に沿って矢印Y1方向に下降する。傾斜溝66は、横方に向かうにつれて仮想水平線H1に対して角度θ1で上昇傾斜する。可動型1がこれの下死点から上死点に向かう間に、傾斜溝66はガイドピン61を傾斜溝66に沿って案内させて移動させる。
【0021】
更に図2に示すように、傾斜溝66の上部66u(上昇端部)には、上面開口67wおよび溝形成面67aをもつ第2縦状溝67が形成されている。第2縦状溝67は、傾斜溝66の上部66u(上昇端部)から上方に向けて且つ上下方向(鉛直方向)に沿って延設されている。第2縦状溝67の長さL3は、第1縦状溝64の上溝部641の長さL1よりも短く設定されている。
【0022】
図3は、ノックアウトピン13をもつ可動型1の型面10を下方から視認した状態を示す。図3に示すように、流体圧式シリンダ装置7とガイド部63とは、可動型1の回動中心線P1を挟むように、互いに対角位置に配置されている。この場合、回動中心線P1を中心としてのバランス性が向上する。流体圧式シリンダ装置7は、流体圧により移動するロッド70(作動子)と、ロッド70を前進および後退可能に保持するシリンダ71と、シリンダ71を矢印C1,C2方向に揺動可能となるようにシリンダ71の後端部71rを揺動保持するピン状の枢支部72とをもつ。ロッド70の先端部は、連結具75を介して可動型1の外周壁面17に連結されている。連結具75の雄螺子部75eは可動型1の外周壁面17の雌螺子孔17eにねじ込まれて着脱可能に結合されている。ただし、係合構造はこれに限定されるものではなく、溶接などでも良い。
【0023】
本実施形態によれば、流体圧式シリンダ装置7は可動型1に接続されており、流体圧式シリンダ装置7が駆動してロッド70が前進後退すると、可動型1をこれの回動中心線P1の周りで周方向(R1,R2方向)に回動させる。即ち、流体圧式シリンダ装置7は可動型1に回動駆動力を与える。ロッド70は、ロッド本体700と、ロッド本体700をもつピストン710とを備えている。ピストン710はシリンダ71のシリンダ室73に移動可能に配置されており、シリンダ室73を第1室731および第2室732に仕切る。流体圧回路77(空気圧回路)から第1室731に流体(空気)が送給されると、第1室731の流体圧(空気圧)によりピストンのロッド70は、矢印R1方向に向けて前進し、可動型1が回動中心線P1の回りで矢印R1方向に回動する。なお最大回動角度はθ3として示される。ここで、矢印R1方向は、鍛造品8の捻り歯部と可動型1の型面10とを離型させる方向に相当する。
【0024】
シリンダ室73の第2室732に流体(空気)が送給されると、第2室732の流体圧(空気圧)によりピストン710のロッド70は、矢印R2方向に後退する。よって可動型1が回動中心線P1の回りで矢印R2方向に回動する。この場合、流体圧式シリンダ装置7のシリンダ71は、枢支部72を中心として矢印C1,C2方向に揺動するため、可動型1の回動に対処できる。ここで、シリンダ71の後端部71r(シリンダ71のうちロッド70と反対側)が枢支部72に揺動可能に支持されているため、シリンダ71の前端部71f(シリンダ71のうちロッド70側)が枢支部72に揺動可能に支持されている方式に比較して、可動型1の回動に対する追従性を確保しつつ、シリンダ71の矢印C1,C2方向への揺動角度を小さくできる。
【0025】
本実施形態によれば、図3において、点B1は傾斜溝66の長さ方向の始点(第1縦状溝64)を示す。点B2は傾斜溝66の長さ方向の中間点を示す。点B3は傾斜溝66の長さ方向の終点(第2縦状溝67)を示す。ガイドピン61が傾斜溝66の始点である点B1に存在するときには、連結具75が点E1に位置している。ガイドピン61が傾斜溝66の中間点である点B2に存在するときには、連結具75が点E2に位置する。ガイドピン61が傾斜溝66の終点点B3に存在するときには、連結具が点E3に位置する。
【0026】
図1に示すように、流体圧式シリンダ装置7は可動ボルスタ40のホルダ部41に保持されており、可動型1と共に矢印Y2,Y2方向に上昇、下降する。ガイド部63は固定ボルスタ45の下型ホルダ部46に保持されているため、可動型1が昇降しても、ガイド部63は昇降しない。
【0027】
さて鍛造するときには、金属材料で形成されているほぼ円柱形状の素材Wを、可動型1の型面10と固定型2の型面20との間に配置する。具体的には、素材を固定型2の型面20の上に配置する。素材Wとしては、塑性変形可能な金属であれば良く、炭素鋼、合金鋼が例示され、またはアルミ合金、チタン合金等の非鉄材料でも良い。素材Wは常温であるため、冷間鍛造である。
【0028】
そして素材Wが可動型1と固定型2との間に配置された状態で、可動ボルスタ40がこれの上始点から下死点に向けて矢印Y1方向に下降する。従って、可動型1がこれの上死点から下死点に向けて矢印Y1方向に下降する。すると、可動型1の型面10と固定型2の型面20とで素材が塑性変形される。この場合、上下方向に強圧された素材の肉材料は、鍛造キャビティ30において横方向に流動し、鍛造キャビティ30内に充満され、鍛造品8が鍛造成形される。
【0029】
ところで本実施例によれば、閉塞鍛造が採用され、鍛造型3の鍛造キャビティの容積と素材の容積とは互いに対応するように設定されている。つまり、鍛造型3の鍛造キャビティ30の容積をV1とし、素材の容積をV2とすると、目標値としては、V1=V2、または、V1≒V2に設定されている。このため、鍛造成形時において材料を鍛造キャビティ30内に充満させるとき、可動型1の型面10および固定型2の型面20に、これらを損傷させるほどの過大な負荷が作用するおそれがある。そこで鍛造成形の終了付近では、固定型20は支持手段150の収容室152cの作動流体151cを圧縮させる方向に、つまり固定型20の退避方向(図1の矢印KA方向)に、固定型20が所定量退避する。これにより閉塞鍛造が行われる。閉塞鍛造時において、固定型20の退避方向(下方向,矢印KA方向)に退避するため、可動型1の型面10および固定型2の型面20が過剰負荷から保護される。従って固定型20は完全な固定ではなく、過剰負荷に対処すべく、下方にある程度退避できるものであり、疑似固定型とも言える。
【0030】
そして鍛造成形が終了した後、可動ボルスタ40が矢印Y2方向に上昇することにより、可動型1がこれの下死点から上昇して型開きが行われる。この場合、可動型1がこれの下死点から上昇するにつれて、固定型2も上昇せんとする。ここで、固定型2の係止部2c(図1参照)が下型ホルダ部46の離脱阻止部46c(図1参照)に係止するまで、可動型1と共に固定型2は上昇する。しかし固定型2の係止部2cが下型ホルダ部46の離脱阻止部46cに係止すれば、固定型2のそれ以上の上昇は阻止される。このような閉塞鍛造では、収容室152c内の作動流体圧(油圧)に反抗しつつ固定型2を退避方向(矢印KA方向)に退避させるため、可動型1がこれの下死点から上昇を開始するタイミングと、可動型1が固定型2から型開放されるタイミングとは、時間的にずれている。ここで、可動型1がこれの下死点から上昇を開始したとしても、固定型2の係止部2cが下型ホルダ部46の離脱阻止部46cに係止するまでの間においては、可動型および固定型2の一体性が向上しており、可動型1は回動しない方が好ましい。この間において、仮に可動型1が回動すると、鍛造品の捻り歯部の歯部形精度が悪化したり、型面10,20を損傷させ、型面10,20の寿命が低下するおそれがある。固定型2の係止部2cが下型ホルダ部46の離脱阻止部46cに係止すれば、可動型1の上昇に伴い、可動型1は固定型2から離型することができるため、当該係止したタイミング以降において、可動型1を回動させることが好ましい。
【0031】
この点本実施形態によれば、上記の様な閉塞鍛造の事情に対応できるように設定されている。即ち、図2に示すように、ガイド部63に形成されている第1縦状溝64は、上下方向(鉛直方向)に沿って指向している。従って、捻り歯部が成形される途中において、ガイド部63の第1縦状溝64に沿って可動型1のガイドピン61が矢印Y1方向に移動する。従って可動型1が回動中心線P1の回りで回転しようとしても、可動型1の回転は、ガイドピン61と第1縦状溝64との係合により抑えられる。このため成形途中の材料に無理な負荷がかかることが抑えられる。故に、鍛造品8の捻り歯部における歯部形精度の悪化、型寿命の低下が抑えられる。
【0032】
更に説明を加える。即ち、鍛造品8は、捻り歯部(ヘリカルギヤ部)を備えている。捻り歯部は、鍛造品8の中心線の回りを螺旋状に形成されている。上記した鍛造成形の際に、図2から理解できるように、可動型1が固定型2に向けて矢印Y1方向に下降すると、可動型1に突設されているガイドピン61が第1縦状溝64内を第1縦状溝64に沿って矢印Y1方向に下降し、第1縦状溝64の分岐域65を超えて第1縦状溝64の底64x付近に至る。ここで、下降する可動型1がこれの下死点に到達しているとき、ガイドピン61が第1縦状溝64の底64xと分岐域65との間、つまり、第1縦状溝64の下溝部642に位置している。
【0033】
そして可動型1がこれの下死点に到達したら、可動ボルスタ40が矢印Y2方向に向けて上昇する。このため可動型1がこれの下死点から上死点に向けて矢印Y2方向に上昇する。この場合前述したように、固定型2の係止部2cが下型ホルダ部46の離脱阻止部46cに係止するまで、固定型2は可動型1の上昇に追従して若干上昇する。この場合、第1縦状溝64の下溝部642は、上下方向(鉛直方向)に延設されているため、ガイドピン61の横移動は下溝部62により拘束されている。故に可動型1の回動は阻止されている。この結果、固定型2の係止部2cが下型ホルダ部46の離脱阻止部46cに係止するまで、可動型1の回動は阻止される。
【0034】
更に可動型1が矢印Y2方向に上昇すると、固定型2の係止部2cが下型ホルダ部46の離脱阻止部46cに係止するため、固定型2はそれ以上上昇できず、固定型2に対する可動型1の離型は開始され、固定型2から可動型1は離れ始める。このとき鍛造品8の捻り歯部から可動型1の型面10を離型させるため、可動型1をこれの回動中心線P1の回り(鍛造品8の中心線の回り)で回動させることが好ましい。
【0035】
この点について本実施形態によれば、可動型1がこれの下死点から上死点に向けて移動するとき、ガイドピン61は第1縦状溝64の下溝部642内を矢印Y2方向に上昇する。そしてガイドピン61が第1縦状溝64の分岐域65に上昇すると、下溝部642内のガイドピン61が分岐域65から傾斜溝66に沿って矢印M1方向(図2参照)に傾斜溝66内を移動する。従って、ガイドピン61は傾斜溝66に沿って横方向(矢印M1方向)に可動型1の回動中心線P1の回りで回動しつつ上昇する。この結果、可動型1が回動中心線P1の回りで回動する。この回動により、捻り歯部を持つ鍛造品8から可動型1の型面10が良好に離型される。このように可動型1が回動するため、捻り歯部の形状が良好に維持される。このとき本実施形態によれば、固体潤滑性をもつ第1潤滑摺動部材51および第2潤滑摺動部材52が配置されているため、可動型1の回動性が良好に確保される。
【0036】
なお鍛造品に形成された捻り歯部(ヘリカルギヤ部)から可動型1の型面10が離型すれば、可動型1をそれ以上回動させない方が好ましい。このため、可動型1に突設されているガイドピン61を第2縦状溝67に沿って鉛直方向の上方に案内させる。このため可動型1の回動は阻止される。第2縦状溝67は、鍛造品の捻り歯部の離型が終了する周方向位相に設定されている。なお鍛造品8の離型が終了したら、制御部9は待機指令を流体圧式シリンダ装置7に出力し、流体圧式シリンダ装置7の第2室732に流体を送給し、ロッド70を原位置の状態に復帰させ、次回の鍛造に備える。
【0037】
ところで、図2において、下溝部642内のガイドピン61が分岐域65から矢印MA方向に傾斜溝66に円滑に移行させるにあたり、ガイドピン61が第1縦状溝64の下溝部642に位置しているとき、ガイドピン61を傾斜溝66の方向に向けて矢印F1方向(図2参照)に予め付勢させておくことが好ましい。ここで、ガイドピン61が矢印F1方向に付勢されてないと、可動型1と共にガイドピン61が矢印Y2方向に上昇するとき、ガイドピン61が傾斜溝66に進入できず、第1縦状溝64の下溝部642から分岐域65を経て、間違って上溝部641に進入してしまうおそれがある。このため本実施形態によれば、ガイドピン61を回動方向に付勢させる付勢手段として、流体圧式シリンダ装置7が用いられている。そして流体圧式シリンダ装置7は、可動型1のガイドピン61を矢印F1方向(傾斜溝66の延設方向と平行な方向)に向けて付勢している。従って、ガイドピン61が、下死点から上昇して第1縦状溝64の下溝部642から分岐域65に到達する時点においては、流体圧式シリンダ装置7によりガイドピン61は矢印F1方向にアシストされる。この結果、ガイドピン61は、第1縦状溝64の下溝部642から分岐域65を経て上溝部641の側に誤って移動することが阻止される。即ち、ガイドピン61は、第1縦状溝64の下溝部642から分岐域65を経て傾斜溝66内に良好に進入することができる。これにより捻り歯部の離型が良好に行われる。
【0038】
流体圧シリンダ装置7は応答速度においてタイムラグをもつ。このため制御部9が流体圧式シリンダ装置7に駆動指令を出力する時刻から、流体圧回路77から流体圧式シリンダ装置7の第1室731に流体(空気)が実際に送給され、ピストン710が実際に移動開始する時刻までの間に、ある程度の時間が必要とされる。即ち、流体圧式シリンダ装置7では初期動作の遅れがある程度存在する。殊に、流体圧式シリンダ装置7が空気圧式シリンダ装置である場合には、空気は、作動油などの液体よりも圧縮性を有するため、なおさら、初期動作の遅れが存在し易い。
【0039】
この点本実施形態によれば、ガイドピン61が第1縦状溝64において分岐域65を超えて底64x付近に向かう下溝部642を移動している間、あるいは、ガイドピン61が第1縦状溝64の底64x付近の下溝部642から分岐域65に移動している間に、流体圧式シリンダ装置7の駆動を開始する指令を制御部9が流体圧回路77に予め出力する。即ち、流体圧回路77から流体圧式シリンダ装置7の第1室731に流体(空気)を送給する駆動開始指令が流体圧回路77に出力される。この結果、ガイドピン61が第1縦状溝64の底64x付近から分岐域65に上昇するまでの間に、流体圧式シリンダ装置7の第1室731の流体圧は上昇する。そしてガイドピン61が第1縦状溝64の底64x付近から分岐域65に到達した時点においては、可動型1を矢印F1方向に付勢させる操作が既に行われている。従って、ガイドピン61がこれの下死点から矢印Y2方向に上昇して分岐域65に到達した時点においては、ガイドピン61は、分岐域65から第1縦状溝64の上側に誤って移動することが阻止される。即ち、ガイドピン61を第1縦状溝64の分岐域65から傾斜溝66内に良好に進入させることができる。これにより流体圧式シリンダ装置7の初期動作の遅れが存在する場合であっても、流体圧式シリンダ装置7を良好に作動でき、鍛造品8の捻り歯部の離型が良好に行われる。なお流体圧式シリンダ装置7に初期動作遅れがない場合には、流体圧式シリンダ装置7により可動型1に矢印F1方向へ付勢力が働くが、ガイドピン61が下溝部642に係合しているため、可動型1は回動しない。
【0040】
本実施形態によれば、可動型1のガイドピン61が傾斜溝66に沿って矢印Y2方向に上昇するときにおいても、流体圧回路77から流体圧式シリンダ装置7の第1室731に流体(空気)が送給され、ピストン710が矢印F1方向に付勢されている。このためガイドピン61と傾斜溝66の溝形成面66aとの間の摩擦抵抗が大きいときであっても、ガイドピン61は流体圧式シリンダ装置7により矢印F1方向に付勢されているため、ガイドピン61は傾斜溝66に沿って良好に移動できる。この意味においても捻り歯部の離型が良好に行われる。
【0041】
(実施形態2)
図4は実施形態2を示す。図4はガイド部63のガイド溝62を平面的に展開した展開図を示す。図4に示すように、ガイド溝62は、上下方向(鉛直方向)に沿って延設された第1縦状溝64と、第1縦状溝64の底64xよりも上側の位置の分岐域65から横方に向けて斜め上向きに分岐された傾斜溝66とを備えている。第2縦状溝67を形成せずとも、捻り歯部の精度に影響が少ないように捻り歯部の形状が設定されているため、第2縦状溝67は廃止されている。
【0042】
(その他)
上記した実施形態1によれば、係合部としてガイドピン61が使用されているが、これに限らず、回転可能なガイドローラを用いても良い。実施形態1によれば、傾斜溝66の長さ方向の中間域にガイドピン61が存在するとき、流体圧シリンダ装置のロッド70の中心線PA(図3参照)が可動型1の外周壁面17に対してほぼ接線方向に配向されているが、これに限らず、傾斜溝66の長さ方向の始点域または終点域にガイドピン61が存在するとき、流体圧シリンダ装置7のロッド70の中心線PAが可動型1の外周壁面17に対してほぼ接線方向に配向されていても良い。上記した実施形態1によれば、第1潤滑摺動部材51および第2潤滑摺動部材52が設けられているが、これに限らず、可動型1の回動性が良好に確保されていれば、上記した潤滑摺動部材51,52を廃止しても良い。
【0043】
上記した実施形態1によれば、素材は常温であるため、冷間鍛造であるが、これに限らず、素材を温間状態とし、温間鍛造としても良い。素材を熱間状態とし、熱間鍛造としても良い。支持手段150は、固定型2が退避する退避方向に固定型2を変位可能に支持する作動流体151cを収容する収容室152cを備えているが、これに限らず、バネ定数が高い皿バネ等の付勢バネで構成しても良い。場合によっては、固定型2を退避する退避方向に支持する支持手段を設けず、固定型2を実質的に完全固定しても良い。閉塞鍛造に適用されているが、これに限られるものではなく、要するに鍛造成形であれば良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。
【0044】
上記した記載から次の技術的思想も把握される。
・捻れ歯部をもつ鍛造品を成形する鍛造キャビティを区画すると共に上下方向に沿って型締めおよび型開放自在な可動型および相手型を備え、前記可動型を回動可能に保持する鍛造型保持装置と、前記可動型をこれの回動中心の周りで回動させる回動装置とを具備する鍛造型装置において、前記回動装置は、前記可動型に突設された突状の係合部と、前記可動型の外方に設けられ前記係合部が嵌合するガイド溝をもつガイド部と、前記可動型に接続され前記可動型を回動中心の周りで回動させる方向に前記可動型に移動力を与える駆動源とを具備しており、前記ガイド溝は、上下方向に沿って延設され前記可動型が上死点から下死点に向かう移動時に前記係合部が下降する縦状溝と、前記縦状溝から横方に向けて分岐され横方に向かうにつれて上昇傾斜すると共に前記可動型が下死点から上死点に向かう間に前記係合部を案内させる傾斜溝とを備えていることを特徴とする鍛造型装置。捻り歯部を有する鍛造品を良好に鍛造成形できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は捻り歯部を有する鍛造品を鍛造成形する鍛造型装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態1に係り、鍛造型装置の縦断面図である。
【図2】鍛造型装置のガイド溝を展開した展開図である。
【図3】鍛造型装置の可動型の型面を下方から視認した状態を示す底面図である。
【図4】実施形態2に係り、鍛造型装置のガイド溝を展開した展開図である。
【符号の説明】
【0047】
1は可動型、10は型面、2は固定型(相手型)、20は型面、3は鍛造型、30は鍛造キャビティ、6は回動装置、61はガイドピン(係合部)、62はガイド溝、64は第1縦状溝、63はガイド部、65は分岐域、66は傾斜溝、66uは上部(上昇端部)67は第2縦状溝、7は流体圧式シリンダ装置(駆動源)、70はロッド、71はシリンダ、72は枢支部、73はシリンダ室、75は連結具、77は流体圧回路、9は制御部を示す。
【出願人】 【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
【出願日】 平成18年8月29日(2006.8.29)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏


【公開番号】 特開2008−55435(P2008−55435A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−232155(P2006−232155)