トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 突出部付筒状部材の製造方法
【発明者】 【氏名】小林 一登

【氏名】安田 裕

【氏名】大塚 清司

【要約】 【課題】外周面に結合フランジ12を備えた外輪の材料となる第三中間素材63を低コストで造るべく、この第三中間素材63を、中心孔を持たない円柱状の素材38から造れる製造方法を実現する。

【構成】(A)に示した上記素材38の軸方向他端面中央部にパンチを押し付けて、軸方向他端部乃至中間部を円筒部59とすると共に、軸方向一端部外周面に外向フランジ状の素突出部41を形成して、(B)に示した第一中間素材39とする。この素突出部41を押し潰して(C)に示した第二中間素材60としてから、上記円筒部59の端部を塞ぐ底板部62を除去して、(D)に示した、上記第三中間素材63とする。安価な円柱状の素材38を利用する事で、上記課題を解決できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状若しくは略円柱状の素材の軸方向一端面を支えると共に、この素材の外周面の軸方向一端部乃至中間部の外周面を、外径が拡がるのを阻止する状態で抑えつつ、上記素材の軸方向他端面中央部にパンチを押し付けて、軸方向他端部乃至中間部を円筒部とすると共に、軸方向一端部外周面に外向フランジ状の突出部を形成して中間素材とする押し出し工程と、この中間素材の軸方向一端部に存在して上記円筒部の端部を塞ぐ底板部を除去する底板部除去工程とを備えた、突出部付筒状部材の製造方法。
【請求項2】
押し出し工程で造る突出部の、中間素材の軸方向に関する投影面積を、完成状態での突出部付筒状部材の外周面に存在する突出部の同方向の投影面積よりも小さくし、上記押し出し工程で造った突出部を、据え込み加工により上記軸方向に押し潰す事で、この突出部のこの軸方向に関する厚さを小さくすると共に、この突出部の上記方向に関する投影面積を増大させる、請求項1に記載した突出部付筒状部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明の対象となる突出部付筒状部材は、例えば、車輪支持用ハブユニットを構成する外輪、或いはこの外輪の内径側に駆動輪を支持する為のハブの如く、全体が筒状(一般的には円筒状)で、外周面に外向フランジ状の突出部を設けた金属製部材である。本発明は、この様な突出部付筒状部材を、低コストで精度良く加工できる製造方法の実現を図るものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を構成するホイール1、及び、制動用回転部材であって制動装置であるディスクブレーキを構成するロータ2は、例えば図6に示す様な構造により、懸架装置を構成するナックル3に回転自在に支持している。即ち、このナックル3に形成した円形の支持孔4部分に、車輪支持用ハブユニット5を構成する外輪6を、複数本のボルト7により固定している。一方、この車輪支持用ハブユニット5を構成するハブ8に上記ホイール1及びロータ2を、複数本のスタッド9とナット10とにより結合固定している。又、上記外輪6の内周面には複列の外輪軌道11a、11bを、外周面には結合フランジ12を、それぞれ形成している。この様な外輪6は、この結合フランジ12を上記ナックル3に、上記各ボルト7で結合する事により、このナックル3に対し固定している。
【0003】
又、上記ハブ8は、ハブ本体13と内輪14とから成る。このうち、ハブ本体13の外周面の一部で、上記外輪6の外端開口から突出した部分に、取付フランジ15を形成している。尚、軸方向に関して「外」とは、自動車への組み付け状態で車両の幅方向外側となる、図6の左側を言う。反対に、自動車への組み付け状態で車両の幅方向中央側となる、図6の右側を、軸方向に関して「内」と言う。上記ホイール1及びロータ2は、上記取付フランジ15の外側面に、上記各スタッド9とナット10とにより結合固定している。
【0004】
又、上記ハブ本体13の外周面の中間部に、上記複列の外輪軌道11a、11bのうちの外側の外輪軌道11aに対向する、内輪軌道16aを形成している。又、同じく内端部に形成した小径段部17に、上記内輪14を外嵌している。この内輪14の外周面には、上記複列の外輪軌道11a、11bのうちの内側の外輪軌道11bに対向する、内輪軌道16bを形成している。この様な内輪14は、上記ハブ本体13の内端部を径方向外方に塑性変形させて形成したかしめ部18により、このハブ本体13に対し固定している。そして、上記各外輪軌道11a、11bと上記各内輪軌道16a、16bとの間に転動体19、19を、それぞれ複数個ずつ転動自在に設けている。尚、図示の例では、上記各転動体19、19として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車用のハブユニットの場合には、円すいころを使用する場合もある。又、上記各転動体19、19を設置した円筒状の空間の両端開口部は、それぞれシールリング20a、20bにより密閉している。
【0005】
更に、図示の例は、駆動輪(FF車の前輪、FR車及びRR車の後輪、4WD車の全車輪)用の車輪支持用ハブユニット5である為、上記ハブ8の中心部に、スプライン孔21を形成している。そして、このスプライン孔21に、等速ジョイント用外輪22の外端面に固設したスプライン軸23を挿入している。これと共に、このスプライン軸23の先端部にナット24を螺合し、更に緊締する事により、上記ハブ本体13を、このナット24と上記等速ジョイント用外輪22との間に挟持している。
【0006】
上述した様な各車輪支持用ハブユニット5の場合、前記外輪6の外周面中間部に結合フランジ12を、内周面に複列の外輪軌道11a、11bを、それぞれ形成している。又、上記ハブ本体13の外周面に取付フランジ15を、外周面に内輪軌道16a及び小径段部17を、それぞれ形成している。上記外輪6及び上記ハブ本体13の各部を加工する為の方法としては、熱間鍛造或いは冷間鍛造等の塑性加工の他、切削加工等が考えられる。但し、加工能率を良好にし、材料の歩留を確保して、コスト低減を図る為には、塑性加工で行なう事が好ましい。又、塑性加工のうちで熱間鍛造は、被加工物を軟らかい状態で加工できる為、成形荷重を小さく抑えられる反面、熱膨張量差等を考慮して、受型と押型との嵌合部の公差を大きくする必要がある等、加工品の形状精度及び寸法精度を確保しにくい。又、熱間鍛造の場合には、表面に脱炭層が生じる為、熱処理により表面を硬化させる必要がある部分の場合には、熱間鍛造の後、上記脱炭層を除去する為の切削加工が必要になる。この切削加工による取り代は或る程度嵩む為、この切削加工により、加工能率が低下するだけでなく材料の歩留も悪化し、上記外輪6及びハブ本体13の加工コストが嵩む原因になる。
【0007】
これらの事を考慮して、特許文献1に記載されている様に、それぞれの外周面に上記結合フランジ12或いは上記取付フランジ15を備えた、上記外輪6或いは上記ハブ本体13を、冷間鍛造の1種である側方押し出し加工により造る事が考えられている。
先ず、図7は、上記特許文献1に記載された、上記外輪6の製造方法を工程順に示した、断面図及び端面図である。この従来の製造方法の第1例では、先ず、図7の(A)に示す様な円筒状の素材25に前方押し出し加工を施して、(B)に示す様な、内外両周面共に段付円筒状の第一中間素材26とする。次いで、この第一中間素材26の軸方向一端寄り部分(図7の上端寄り部分)に据え込み加工を施し、当該部分を軸方向に圧縮してこの部分の径方向の肉厚を部分的に増大させる事により、この部分の外周形状を非円形に加工して、(C)に示す様な第二中間素材27とする。
【0008】
次いで、第二の据え込み加工により、この第二中間素材27の一部外径寄り部分を軸方向に圧縮して、上記結合フランジ12の元となる素フランジ部28を備えた、第三中間素材29とする。次いで、段付け加工によりこのフランジ部28のうちで不要になる部分を薄肉化して、(E)に示す様な、第二素フランジ部30を備えた、第四中間素材31とする。その後、この薄肉化した部分を、プレスによる打ち抜き等で除去(トリミング)し、上記第二素フランジ30を完成後の結合フランジ12の形状に加工して、(F)に示す様な第五中間素材32とする。この第五中間素材32には、必要とする孔あけ加工、研削加工、熱処理加工等を施して、上記外輪6とする。
【0009】
次に、図8は、上記特許文献1に記載された、上記ハブ本体13の製造方法を工程順に示した、断面図である。この従来の製造方法の第2例では、先ず、図8の(A)に示す様な厚肉円筒状の素材33に前方押し出し加工を施して、(B)に示す様な、外周面を段付円筒状とした第一中間素材34とする。次いで、この第一中間素材34の軸方向一端寄り部分(図8の上端寄り部分)に据え込み加工を施し、当該部分を軸方向に圧縮してこの部分の径方向の肉厚を部分的に増大させ、(C)に示す様な第二中間素材35とする。
【0010】
次いで、後方押し出し加工により、この第二中間素材35の軸方向一端寄り部分の軸方向寸法を増大させると共に、軸方向中間部に段付加工を施して、(D)に示す様な第三中間素材36とする。次いで、この第三中間素材36の軸方向一端部に据え込み加工を施し、この部分の径方向外方に押し広げて、(E)に示す様な、外周面に取付フランジ15を有する第四中間素材37とする。この第四中間素材37には、必要とする孔あけ加工、研削加工、熱処理加工等を施して、前記ハブ本体13とする。
【0011】
上述の様な、特許文献1に記載された製造方法によれば、上記外輪6或いは上記ハブ本体13の如き、円筒部の外周面に外向フランジ状の突出部を備えた、突出部付筒状部材を、低コストで精度良く造れるが、より一層の低コスト化を図る面からは改良の余地がある。即ち、図7に示した上記外輪6の製造方法にしても、図8に示した上記ハブ本体13の製造方法にしても、素材25、33として円筒状のものを使用している。中心孔を有する円筒状の素材は、中心孔を持たない円柱状の素材に比べて高価である為、その分、上記外輪6或いは上記ハブ本体13の加工コストが嵩む事が避けられない。
【0012】
【特許文献1】特開2006−142983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、例えば外周面に結合フランジ或いは取付フランジを備えた外輪或いは駆動輪用のハブ本体等の突出部付筒状部材を低コストで造るべく、この突出部付筒状部材を中心孔を持たない円柱状の素材から造れる製造方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の突出部付筒状部材の製造方法は、押し出し工程と、底板部除去工程とを備える。
このうちの押し出し工程では、円柱状若しくは略円柱状の素材の軸方向一端面を支えると共に、この素材の外周面の軸方向一端部乃至中間部の外周面を、外径が拡がるのを阻止する状態で抑える。又、この状態のまま、上記素材の軸方向他端面中央部にパンチを押し付ける。そして、軸方向他端部乃至中間部を円筒部とすると共に、軸方向一端部外周面に、例えば外周縁の形状が非円形である、外向フランジ状の突出部を形成して、外周面にこの突出部を設けた、有底円筒状の中間素材とする。
又、上記底板部除去工程では、この中間素材の軸方向一端部に存在して上記円筒部の端部を塞ぐ、底板部を除去する。この底板部除去工程は、切削により行なう事もできるが、プレスによる打ち抜き加工により行なえば、この底板部除去工程を能率良く(短時間で)行なえる為、突出部付筒状部材の製造コストを抑える面からは好ましい。
【0015】
上述の様な本発明の突出部付筒状部材の製造方法を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、上記押し出し工程で造る上記突出部(素突出部)の、上記中間素材の軸方向に関する投影面積を、完成状態での突出部付筒状部材の外周面に存在する突出部の、同方向の投影面積よりも小さくする。そして、上記押し出し工程で造った突出部(素突出部)を、据え込み加工により上記軸方向に押し潰す事で、この突出部のこの軸方向に関する厚さを小さくすると共に、この突出部の上記方向に関する投影面積を増大させる。
【発明の効果】
【0016】
上述の様に構成する本発明の突出部付筒状部材の製造方法によれば、例えば外周面に結合フランジ或いは取付フランジを備えた、外輪或いは駆動輪用のハブ本体等の突出部付筒状部材を、低コストで造れる。
即ち、素材として、中心孔を持たない円柱状若しくは略円柱状のものを使用するので、素材の調達コストを抑えられる。そして、この様な安価な素材を使用しても、押し出し工程と底板部除去工程とを実施する事で、中心孔を有する筒状部材を得られる。この押し出し工程により、上記円柱状若しくは略円柱状の素材を、外周面にこの突出部を設けた有底円筒状の中間素材とする為に要する加工荷重は、特に大きくなる事はない。即ち、円柱状若しくは略円柱状の素材を有底円筒状に加工する為に要する荷重、或いは、円筒状の素材の外周面に突出部を形成する為に要する荷重と同等の荷重で済む。加工量(素材からの塑性変形量)は多くなるので、上記素材に対するパンチの相対変位量(ストローク)は多くなる。但し、この相対変位量の絶対値は限られているので、荷重が大きくならない限り、上記押し出し加工に使用するプレス加工機として、より大型のものを使用する必要はなく、上記相対変位量の増大が製造コストの増大に結び付く程度は低い(円柱状若しくは略円柱状の素材を使用する事によるコスト低減効果の方が支配的である)。この為、上記突出部付筒状部材の低コスト化を図れる。
【0017】
又、請求項2に記載した様に、押し出し工程で造る突出部の投影面積を小さくすれば、この押し出し工程の際に、この突出部を形成する為の1対の金型(割型)同士が離れる事を防止する為に要する力を低く抑えられ、この面からのコスト低減を図れる。即ち、上記押し出し工程に使用する金型は、上記突出部を形成した中間素材の取り出しを可能にする必要上、この突出部でこの中間素材の軸方向に分割される、所謂割型を使用する必要がある。上記突出部を形成する為の空洞部分は、1対の金型同士の突き合わせ部に、上記素材を収納する為の円筒状空間から径方向に突出する状態で設けられる。
【0018】
この様な割型を使用し、上記素材の外周面に上記突出部を形成する場合に、この素材の一部が塑性変形に伴って流動し、上記空洞部分に入り込む。この空洞部分に入り込んだ金属材料は、この空洞部分に充満して上記突出部となるが、この金属材料が、この空洞部分の内面を押す。このうち、この突出部の軸方向両側面がこの空洞部分の内面を押す力は、上記割型同士を離隔させる方向に加わる。又、この力の大きさは、上記突出部の、軸方向に関する投影面積に比例する。上記押し出し加工の際には、ばね力、流体圧等により、上記割型同士が離れる事を防止するが、上記離隔させる方向に加わる力が大きくなると、上記ばね力、流体圧等を大きくする必要が生じ、上記押し出し加工の為の加工装置が大型化する。これに対して、上記請求項2に記載した様な構成を採用すれば、上記押し出し加工に伴って形成される、上記突出部の投影面積を狭くして、その分、上記離隔させる方向に加わる力を小さく抑えられ、上記加工装置の大型化を抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の場合には、先ず、図1の(A)に示した素材38に押し出し加工を施す事により、(B)に示す様な第一中間素材39とする。この素材38は、中心孔を持たない略円柱状で、軸方向一端部(図1〜3の上端部)に、外径が残部の外径よりも少し大きな大径部40を設けている。この様な大径部40は、上記押し出し加工により上記素材38の外周面に素突出部41を加工する際に、加工量を少なく抑え、この押し出し加工を比較的小型の加工装置により行なえる様にする為に設けている。又、上記大径部40を備えた上記素材38の加工は、円柱状の前素材(図示せず)に前方押し出し加工{前述の図8の(A)→(B)の加工}を施す事により行なう。この前方押し出し加工に就いても、加工荷重は低い為、小型の加工装置により行なえる。尚、押し出し加工に使用する加工装置の容量に余裕があれば、上記大径部40を持たない、単なる(軸方向全長に亙り外径が変化しない)円柱状の素材を、一挙に上記第一中間素材39に加工しても良い。
【0020】
本例の場合には、上記大径部40を備えた、略円柱状の素材38に、図2に示す様な加工装置により押し出し加工を施し、上記第一中間素材39とする。この加工装置を示す図2中、右半部は加工開始直前の状態を、左半部は加工終了直後の状態を、それぞれ示している。先ず、上記加工装置に就いて説明する。
プレス加工機のテーブル(図示省略)の上面に固定する基台42の上面に、下側保持筒43を固定している。又、この下側保持筒43の下端部内側に抑え板44を固定し、この抑え板44の中心孔45の内側に、パンチ46の下端部を支持固定している。又、上記下側保持筒43の上部内側に厚肉円筒状の下型47を、上記下側保持筒43の軸方向の変位(昇降)を可能に保持している。そして、この下型47の下面と上記抑え板44の上面との間に、圧縮コイルばね、ゴムの如きエラストマー等の弾性部材48を挟持して、上記下型47に、上方に向かう弾力を付与している。上記パンチ46の上部はこの下型47の中心孔49に、軸方向の変位を可能な状態で挿入している。尚、本例の場合には、上記パンチ46の外周面とこの中心孔49の内周面との間にガイドスリーブ50を設けて、これらパンチ46の外周面と中心孔49の内周面とを同心に保持している。又、上記下型47の上面で上記中心孔49の周囲部分に、上記大径部40を前記素突出部41に加工する為の、下側凹部51を形成している。この下側凹部51の平面形状は、図1の(B)に示した、上記素突出部41の外周縁形状(異形花びら状)に一致している。尚、上記下型47に上方に向く弾力を付与する為には、上記弾性部材48による他、ガス圧或いは油圧を利用しても良い。
【0021】
一方、上記基台42の上方に設けた、プレス加工機のラム(図示省略)の下面に取り付け固定する取付板52の下面に、上記下型47と共に、押し出し加工の為の割型を構成する、上型53を支持固定している。この為に本例の場合には、上記取付板52の下面に上側保持筒54を固定し、この上側保持筒54の内径側に、上記上型53とスペーサ55とを保持している。上記上型53の下面中央部には、上記下側凹部51と合わさって上記素突出部41に加工する為の空洞(キャビティ)を構成する為の上側凹部56を形成している。この上側凹部56の下端開口縁の形状及び大きさは、上記下側凹部51の上端開口縁の形状及び大きさと同じであり、上記下型47の上面と上記上型53の下面とを突き合わせた状態で、上記両凹部56、51が上記キャビティを画成する。これら両凹部56、51同士の間で、上記異形花びら状の形状の位相を合致させる事は勿論である。
【0022】
次に、上述の様な構成を有する加工装置により、前記図1の(A)に示した素材38に押し出し加工を施して、図1の(B)に示す様な第一中間素材39に加工する工程に就いて説明する。先ず、上記素材38を、図2の右半部に示す様に、上記下型47と上記上型53との間にセットする。このセット作業は、上記素材38を上記下型47の内側に、プレス加工機のラムと共に上記上型53を上昇させた状態で、上記素材38の軸方向他端部乃至中間部を、上記下型47の中心孔49に内嵌する。この状態で、この素材38の軸方向一端部に設けられた前記大径部40は、上記下側凹部51の内径寄り部分に係止される。又、上記素材38の軸方向他端面(図1〜3の下端面)は、(予め規制された寸法関係に基づき)前記パンチ46の先端面(上端面)に当接若しくは近接対向する。この状態で、上記素材38のセット作業(加工作業の準備)が完了する。
【0023】
そこで、それ迄上昇していた上記ラムを下降させ、先ず、図2の右半部に示す様に、上記下型47の上面外径寄り部分と、上記上型53の下面外径寄り部分とを突き合わせる。次いで、上記ラムを更に下降させ、この上型53により上記素材38を、上記パンチ46の先端面に向け、強く押圧する。この結果、この素材38の中心部に、軸方向他端側が開口部となる円形凹部58が形成され、この円形凹部58の周囲に円筒部59を構成する。そして、この円形凹部58を形成する事に伴って押し除けられた金属材料の一部が、上記両凹部56、51により画成されるキャビティ内に入り込み、前記素突出部41を構成すると同時に、残部が上記円筒部59の軸方向長さを増大させる為に供される。この様に、上記下型47と上記上型53と上記パンチ46との間で上記素材38を強く押圧する、押し出し工程により、この素材38を、図1の(B)及び図2の左半部に示した第一中間素材39とする。
【0024】
上記素材38を上記第一中間素材39とする為に要する加工荷重は、略円柱状の素材を有底円筒状に加工する為に要する加工荷重、或いは、円筒状の素材の外周面に突出部を形成する為に要する荷重と同等の加工荷重で済み、特に大きくなる事はない。即ち、上記素材38の軸方向他端面中央部からこの素材38内に上記パンチ46を押し込んで上記円形凹部58を形成するのに伴って、この円形凹部58部分から押し除けられた金属材料が上記キャビティ内に、円滑に押し込まれる。又、このキャビティ内に押し込まれ切れない金属材料は、上記円筒部59の軸方向寸法を長くする為に供される。尚、本例の場合には、上記第一中間素材39の加工を完了した時点で、上記円筒部59の先端面と前記ガイドスリーブ50の上端面とが当接しない。上記素材38の容積が規定からずれた(規定以上である)場合には、これら円筒部59の先端面とガイドスリーブ50の上端面との間の隙間の軸方向寸法を異ならせる(上記容積が規定通りであった場合よりも短くする)事で、上記容積のずれを吸収する。そこで、上記円筒部59の先端部は、必要に応じて、最後に行なう切削加工により除去して、適正寸法を有する製品を得る。この切削加工は、旋盤により容易且つ短時間で行なえる為、あまりコストを増大させる事はない。
【0025】
上述の様に、上記素材38を上記第一中間素材39に加工する過程では、加工量、即ち、この素材38からこの第一中間素材39に至る過程での金属材料の塑性変形量は多くなる。但し、加工荷重は、例えば略円柱状の素材38を(素突出部41を持たない単なる)有底円筒状に加工する為に要する加工荷重と同等で済む。加工量が多くなる分、上記素材38に対するパンチ46の相対変位量(前記ラムの下降量)は多くなるが、この相対変位量の絶対値は限られている。従って、上記加工荷重が大きくならない限り、上記押し出し加工に使用するプレス加工機として、より大型のものを使用する必要はなく、上記相対変位量の増大が製造コストの増大に結び付く程度は低い。即ち、材料として上記略円柱状の素材38を使用する事によるコスト低減効果の方が支配的で、全体として、十分にコスト低減を図れる。
【0026】
本例の場合には、上記押し出し加工により造る、上記第一中間素材39の素突出部41の、この第一中間素材39の軸方向に関する投影面積を、完成状態での外輪6の外周面に存在する結合フランジ12{図1の(C)(D)及び図6参照}の同方向の投影面積よりも小さくしている。これに合わせて、上記素突出部41の軸方向に関する厚さT41を、上記結合フランジ12に必要とされる同方向の厚さT12よりも大きく(T41>T12)している。この様に、上記素突出部41の投影面積を小さく抑える事で、上記押し出し工程の際に、この素突出部41を形成する為の、前記下型47と前記上型53とが離れる事を防止する為に要する力を低く抑えられ、この面からのコスト低減を図れる。
【0027】
この点に就いて、図3を参照しつつ説明する。上記押し出し工程に使用する金型は、上記素突出部41を形成した上記第一中間素材39の取り出しを可能にする必要上、前述した様な、下型47と上型53とを組み合わせた、割型構造とする必要がある。尚、型を径方向に分割する構造は、型の合わせ目に生じるバリの始末を考えた場合に、採用できない。上記第一中間素材39の加工時に、前記下側、上側両凹部51、56により画成されたキャビティ内に入り込んだ金属材料は、このキャビティ部分に充満して上記素突出部41となるが、この金属材料が、このキャビティ部分の内面を押す。このうち、この素突出部41の軸方向両側面がこのキャビティ部分の内面を押す力は、上記下型47と上記上型53とを離隔させる方向に加わる。又、このキャビティ部分で発生してこれら両型47、53同士を離隔させようとする力の大きさは、上記素突出部41の、軸方向に関する投影面積に比例する。上記押し出し加工の際には、前述した様に、弾性部材48等により、上記両型47、53同士が離れる事を防止するが、上記離隔させる方向に加わる力が大きくなると、上記弾性部材48等が発生する力を大きくする必要が生じ、上記押し出し加工の為の加工装置が大型化する。
【0028】
これに対して本例の場合には、上記素突出部41の厚さT41を大きくする分、その投影面積を狭くしている為、上記キャビティ部分で発生して上記両型47、53同士を離隔させる方向に加わる力を小さく抑えられて、上記加工装置の大型化を抑えられる。尚、上記下型47と上記上型53とを離隔させる方向の力は、上記上型53の下面中央部と前記パンチ46の先端面との間でも加わるが、この部分に加わる力を小さくすべく、この部分の投影面積を狭くする為、上記パンチ46の外径を小さくすると、円筒部59の内径を広げる為の後加工が面倒になる。本例は、次述する様に後加工が容易な、上記素突出部41の投影面積を小さくする事で、上記加工装置の大型化を抑える為、外輪6の製造コスト低減の面から(上記パンチ46の外径を小さくするよりも)効果が大きい。
【0029】
上述の様な押し出し加工により造った、前記第一中間素材39には、上記素突出部41の厚さを縮めると共に、軸方向の投影面積を拡げる据え込み加工を施して、図1の(C)に示す様な第二中間素材60とする。この据え込み加工により、上記素突出部41の径方向中間部乃至外径寄り部分を軸方向に押し潰して、所望の厚さ寸法及び外周縁形状を有する、突出部である結合フランジ12とする。この様な結合フランジ12を得る為の、上記据え込み加工を行なうには、上記素突出部41を、この結合フランジ12の外周縁形状に合致する内周面形状を有する、受型の受凹部の中心部にセットする。そして、上記素突出部41の径方向中間部乃至外径寄り部分を、先端面に円形凹部を形成した押型により、上記受凹部の底面に向け強く押し付けて、上記素突出部41を軸方向に押し潰す。この結果、この素突出部41の径方向中間部乃至外径寄り部分が、厚さ寸法を(前記T12迄)減少させつつ、その外周縁が上記受凹部の内周面に突き当たる迄、径方向外方に拡がり、上記結合フランジ12となる。
【0030】
この様にして加工した、上記第二中間素材60の軸方向一端部には、上記押型により押されずに残った、突出部61が形成される。この突出部61は、上記第二中間素材60に更に加工を施す事により得た外輪6の軸方向内端部をナックル3の支持孔4(図6参照)に内嵌する場合の位置決め部となる。従って、上記突出部61の外径D61は、規定通りの値に仕上げる。この外径D61は、上記押型の先端面の円形凹部の内径を規制する事により、容易に規制できる。尚、この外径D61を、完成後の状態よりも少しだけ大きくしておき、後から仕上加工を施しても良い。この様な仕上加工に就いても、旋盤により容易且つ短時間で行なえる為、あまりコストを増大させる事はない。
【0031】
上述の様にして、上記第二中間素材60を得たならば、この第二中間素材60の軸方向他端部に存在して前記円筒部59の端部を塞いでいる、底板部62を除去して、図1の(D)に示す様な第三中間素材63とする。この様な底板部除去工程は、切削により行なう事もできるが、プレスによる打ち抜き加工により行なえば、この底板部除去工程を能率良く(短時間で)行なえる為、突出部付筒状部材である外輪6の製造コストを抑える面からは好ましい。この様にして得た、上記第三中間素材63には、焼き入れ、研削、切削等の、必要とする仕上加工を施して、上記外輪6とする。そして、この外輪6を、図6に示す様に、ハブ8、転動体19、19等の他の部材と組み合わせて、車輪支持様ハブユニット5とする。
【0032】
尚、上記素突出部41を上記結合フランジ12とする据え込み加工と、上記底板部を除去する底板部除去工程とは、図1に示した順番で行なう事が、据え込み加工の際に円筒部59の形状が歪むのを防止する面からは好ましい。但し、この据え込み加工に伴う円筒部59の形状の歪みは極く僅かであり、後から行なう仕上加工により修正できるので、上記据え込み加工と上記底板部除去工程とを逆の順番で行なっても良い。又、加工工程の途中で、外周面或いは内周面から突出した余肉部を除去するトリミングを、適宜行なう事もできる。
【0033】
[実施の形態の第2例]
図4も、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、上述した実施の形態の第1例に対して、素突出部41の加工を2段階で行なう様にしている。即ち、図1の(A)と(B)との間に、図4の(B)に示した予備押し出し加工工程を新たに加えている。図4の(A)は図1の(A)と、図4の(C)〜(E)は図1の(B)〜(D)と、それぞれ同じである。本例の場合、上記予備押し出し加工工程で、図4の(B)に示した様な、外周面に予備素突出部64を有する、予備中間素材65を得る。この様な予備中間素材65を得る為の、上記予備押し出し加工の、基本的な実施状況は、前述の図2の通りである。本例の場合には、上記予備素突出部64の投影面積を、素突出部41の投影面積よりも小さくしている為、上記予備中間素材65の加工をより容易に行なえる。この様な予備中間素材65には、円筒部の軸方向寸法を長くする為の後方押し出し加工と、上記予備素突出部64を押し潰して厚さ寸法を減少させると共に投影面積を増大させる据え込み加工とを施す事により、図4の(C)に示す様な第一中間素材39とする。上記図4の(B)に示した予備押し出し加工工程を加えた点以外は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0034】
[実施の形態の第3例]
図5も、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、図5の(A)に示した素材38に押し出し加工を施して図5の(B)に示した第一中間素材39aを得る際に、素突出部41及び円筒部59を形成すると同時に、この第一中間素材39aの軸方向一端部に素突出部66を形成する様にしている。この素突出部66は、外輪6の軸方向内端部をナックル3の支持孔4(図6参照)に内嵌する場合の位置決め部となる突出部61a{図5の(D)参照}となるものである。
【0035】
上記予備突出部66を形成する為には、上記押し出し加工に使用する上型53(図2〜3参照)の下面中央部に円形凹部を設けておく。この押し出し加工時に、パンチ46(図2〜3参照)の先端面により押された上記素材38の一部が上記円形凹部内に入り込んで、上記素突出部66を形成する。この様に、上記第一中間素材39aの段階で既に素突出部66を形成しておく為、この第一中間素材39aに更に加工を施す事により得られる、第二、第三両中間素材60a、63aの軸方向一端部に存在する突出部61aの軸方向寸法L61を大きくできる。上記押し出し加工と同時に上記予備突出部66を形成する点以外は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0036】
[本発明を実施する場合の留意事項]
本発明を実施する場合に使用する円柱状若しくは略円柱状の素材の容積は、完成後の突出部付筒状部材の容積よりも大きくなければならない。但し、この素材の容積をこの突出部付筒状部材の容積よりも大きくする程度は、できるだけ小さく(好ましくは、スクラップとなる底板部の容積分だけに)する事が、材料の歩留を向上させると共に、後加工を容易に(取り代を少なく抑えて加工時間を短く)する面からは好ましい。
【0037】
又、上記素材の表面の性状は、そのまま完成後の突出部付筒状部材の表面の性状として表れるので、この素材の表面には、酸化被膜や錆、傷等の欠陥があってはならない。一方、冷間での塑性加工(冷間鍛造)を容易にする為に、塑性加工前の素材は焼鈍する必要があり、この焼鈍により、表面に酸化被膜が形成される事が避けられない。これらの事を考慮すれば、上記素材を得る為の長尺材(バー材)を焼鈍してから、この長尺材の外周面に生じた酸化被膜を、磨き加工、バレル加工、ショット・ピーニング等により除去し、次いで、この長尺材を所定寸法に切断する事が、表面に酸化被膜を持たない良質の素材を得る面からは好ましい。但し、長尺材の外周面の酸化被膜を除去する事が、加工コスト等の面から難しければ、外周面を酸化被膜で覆われた長尺材を切断して得た定尺材の外周面に磨き加工を施して、上記素材を得る事もできる。この場合には、一般的な、スルーフィードのセンタレス研削盤による磨き加工で、上記酸化被膜の除去が可能になる。更に、上記長尺材を切断する方法は、精度確保の面からは旋盤による突っ切りが好ましい。但し、切断後に上記酸化膜の除去作業を行なう際に、切断面の性状も(例えば、バレル加工の為のメディア、或はショット・ピーニングの為のショットを切断面に当てる事で)整えられるのであれば、鋸引きにより切断しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製造方法及び製造装置は、外周面の一部に径方向外方に突出した突出部を形成した筒状部材であれば、図示の様な車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪に限らず、例えば、図6、8に示した様な駆動輪用のハブ本体でも実施できる。更には、車輪支持用転がり軸受ユニット用の軌道輪部材以外でも実施できる。車輪支持用転がり軸受ユニット用の軌道輪に関して実施する場合でも、この車輪支持用転がり軸受ユニットの構造を特に限定しない事は勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を加工工程順に示す、断面図及び端面図。
【図2】前方押し出し加工の実施状況の1例を、加工開始直前の状態と加工終了直後の状態とで示す断面図。
【図3】前方押し出し加工時に突出部の投影面積を小さく抑える事が好ましい理由を説明する為の、前方押し出し加工終了直後の状態を示す断面図。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を加工工程順に示す、断面図及び端面図。
【図5】本発明の実施の形態の第3例を加工工程順に示す、断面図及び端面図。
【図6】何れも本発明の製造方法の対象となる突出部付筒状部材である、外輪及びハブ本体を備えた、車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を、ナックルに組み付けた状態で示す断面図。
【図7】従来から知られている外輪の製造方法を加工工程順に示す、断面図及び端面図。
【図8】従来から知られているハブ本体の製造方法を工程順に示す断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 ホイール
2 ロータ
3 ナックル
4 支持孔
5 車輪支持用ハブユニット
6 外輪
7 ボルト
8 ハブ
9 スタッド
10 ナット
11a、11b 外輪軌道
12 結合フランジ
13 ハブ本体
14 内輪
15 取付フランジ
16a、16b 内輪軌道
17 小径段部
18 かしめ部
19 転動体
20a、20b シールリング
21 スプライン孔
22 等速ジョイント用外輪
23 スプライン軸
24 ナット
25 素材
26 第一中間素材
27 第二中間素材
28 素フランジ部
29 第三中間素材
30 第二素フランジ部
31 第四中間素材
32 第五中間素材
33 素材
34 第一中間素材
35 第二中間素材
36 第三中間素材
37 第四中間素材
38 素材
39、39a 第一中間素材
40 大径部
41 素突出部
42 基台
43 下側保持筒
44 抑え板
45 中心孔
46 パンチ
47 下型
48 弾性部材
49 中心孔
50 ガイドスリーブ
51 下側凹部
52 取付板
53 上型
54 上側保持筒
55 スペーサ
56 上側凹部
58 円形凹部
59 円筒部
60、60a 第二中間素材
61、61a 突出部
62 底板部
63、63a 第三中間素材
64 予備素突出部
65 予備中間素材
66 素突出部
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成18年8月8日(2006.8.8)
【代理人】 【識別番号】100087457
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男

【識別番号】100141508
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 隆史

【識別番号】100056833
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 欽造


【公開番号】 特開2008−36679(P2008−36679A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−215173(P2006−215173)