トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 塑性加工の3次元実験シミュレーション方法及び装置
【発明者】 【氏名】牟禮 雄二

【要約】 【課題】3次元的に塑性変形する複雑形状部品の内部変形情報を得て、加工プロセス設計、金型設計または加工欠陥対策等を評価・検討する方法及び装置を提供する。

【解決手段】モデル型を使用し、かつ金属材料の変形特性と類似したモデル材料を使用して、標点を埋め込んだモデル材料をモデル型で塑性加工し、標点の動きを、視差を形成する2方向からの放射線により、放射線照射のタイミングを映像の1コマごとに切り換えて1つの映像として撮像後、視差を形成する2方向からの2次元の標点画像から加工開始から加工終了までの任意の塑性加工段階で標点の3次元座標を演算し、標点データとモデル型の形状データとを重ね合わせて表示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モデル型を使用し、かつ金属材料の変形特性と類似したモデル材料を使用して、所定形状のモデル材料の内部に標点を埋め込む工程と、前記モデル型に装填した前記モデル材料を連続的に塑性加工し、同時に前記塑性加工に伴う前記標点の動きを、視差を形成する2方向からの放射線により、放射線照射のタイミングを映像の1コマごとに切り換えて1つの映像として撮像する工程と、前記映像を記録する工程と、記録された映像を視差を形成する2方向ごとの静止画に分別する工程と、前記視差を形成する2方向ごとに分別された静止画を用いて加工開始から加工終了までの任意の塑性加工段階で標点の2次元座標を演算する工程と、前記視差を形成する2方向ごとに分別された標点の2次元座標を用いて加工開始から加工終了までの任意の塑性加工段階で標点の3次元座標を演算する工程と、加工開始から加工終了までの任意の塑性加工段階において前記3次元座標での標点データとモデル型の形状データとを重ね合わせて表示する工程と、前記標点データとモデル型の形状データとを重ね合わせて表示した結果に基づいて加工の良否を判定する工程とを有することを特徴とする塑性加工の3次元実験シミュレーション方法。
【請求項2】
放射線の波長が1pmから10nmであることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工の3次元実験シミュレーション方法。
【請求項3】
標点がモデル材料及びモデル型より密度が高い物質からなることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工の3次元実験シミュレーション方法。
【請求項4】
標点とモデル材料及び標点とモデル型の密度差が12グラム毎立方センチメートル以上であることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工の3次元実験シミュレーション方法。
【請求項5】
モデル材料及びモデル型が、実際の金型及び被加工材料の形状と実質的に同一または相似の形状を有してなることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工の3次元実験シミュレーション方法。
【請求項6】
複数の標点が埋め込まれたモデル材料と、前記モデル材料を塑性加工するためのモデル型と、前記モデル材料を塑性加工する加圧装置と、前記加圧装置が一体となったモデル型設置台と、前記モデル型設置台が移動するためのモデル型設置台用レールと、前記モデル型設置台を移動させるためのモデル型設置台位置制御装置と、塑性加工に伴う標点の動きを視差を形成して撮像するための2台の放射線発生器と、前記2台の放射線発生器の照射タイミングを映像の1コマごとに切り替える放射線照射制御装置と、前記放射線発生器を設置するための放射線発生器設置台と、前記放射線発生器設置台が移動するための放射線発生器設置台用レールと、前記放射線発生器設置台を移動させるための放射線発生器設置台位置制御装置と、標点の放射線透過像を光学像に変換するイメージインテンシファイアと、前記イメージインテンシファイアにより得られた光学像を所定の大きさの光学映像に変換する光学系と、前記光学系により変換された所定の大きさの光学映像をアナログ映像信号に変換する1台の放射線用TVカメラと、前記アナログ映像信号を記録するためのビデオキャプチャーと、前記モデル型設置台及び前記放射線発生器設置台の位置を制御するプログラムと、前記撮像された視差を形成する2方向からの放射線による映像を1コマごとに方向ごとの時系列画像として切り分け静止画像として保存するプログラムと、前記視差を形成する方向ごとの時系列画像を用いて任意の塑性加工段階における標点の2次元座標を演算処理するプログラムと、前記任意の塑性加工段階における標点の2次元座標から3次元座標を演算処理するプログラムと、前記プログラム等が収納された演算処理装置と、前記演算処理結果とモデル型の形状データを重ね合わせて表示する表示装置とからなることを特徴とする塑性加工の3次元実験シミュレーション装置。
【請求項7】
モデル型設置台は、放射線用TVカメラを真上から見て、放射線用TVカメラの撮像面に対して垂直方向に移動することを特徴とする請求項6に記載の塑性加工の3次元実験シミュレーション装置。
【請求項8】
2台の放射線発生器設置台は、放射線用TVカメラを真上から見て、放射線発生器の視差形成を維持しながら放射線用TVカメラの撮像面と平行に横方向へ独立して同方向あるいは逆方向に移動することを特徴とする請求項6に記載の塑性加工の3次元実験シミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造加工や押出し加工等の塑性加工において、3次元的に変形する複雑形状部品の内部変形情報を得て、加工プロセス設計、金型設計又は加工欠陥対策等を評価・検討することを目的とする塑性加工の3次元実験シミュレーション方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元的に変形する複雑形状部品の塑性加工による加工プロセス設計及び金型設計の評価・検討は次のように行っていた。
【0003】
(1)実試作結果からの評価・検討
設計された複雑形状部品に対して、被加工材料及び加工設備を選定し、加工プロセスとそれに応じた金型設計を行う。次に、加工プロセス設計と金型設計の妥当性を判定するために、金型を実際に製作して、実試作し、その結果からそれらの良否を判断していた。しかし、この方法では、結果の良否の判断を熟練技術者の過去の経験や勘に頼ることが多く、どこを改良すべきか客観的に判断するための数値的なデータが得られなかった。また、試作の繰り返しが数回に及び、多大な時間とコストを要していた。しかも、熟練技術者による試行錯誤の末、ようやく最適化された結果を得ても、そのプロセスを体系化できないため、3次元的に変形する複雑形状部品の場合、得られた経験則を他部品へ適用できないでいた。
【0004】
(2)計算機シミュレーションによる評価・検討
有限要素法を用いた数値計算力学による計算機シミュレーション技術を用いて、被加工材料の変形過程を解析して評価・検討する方法がある。この方法では、解析を行う際に、複雑な各種境界条件や入力条件等が必要となる。特に、金型に及ぼす影響を考慮して各種条件を解析に導入すると計算工程は複雑で非効率的なものとなる。全く新規の加工に関してはそのような条件は仮定でしかない。さらに、時々刻々と変化している被加工材料と金型との接触条件、摩擦条件などを一定値として仮定しているため、実現象と大きく異なる結果が得られる場合もあり、信頼性に欠けており、目安程度にしか利用されていない。また、3次元的に変形する複雑形状部品の場合、解析時間に数日から1週間程度を要し、得られた結果の妥当性を検証する術もない。さらに、条件設定のミスを完全に排除することは難しく、条件の再設定や実現象に即した解析プログラムの修正を余儀なくされていた。
【0005】
(3)モデル材料を用いた実験的シミュレーションによる評価・検討
金属材料と類似の変形特性を示す油粘土等のモデル材料と樹脂製のモデル型を用いた模擬実験によって、材料変形の可視化を行い、評価・検討する方法がある(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。特許文献1は、平面ひずみ及び軸対称部品を対象としており、3次元的な変形を伴う複雑形状部品の材料内部の変形現象の可視化はできない。また、加工開始から加工終了までを所定の加工量に分け逐次加工するため、逐次加工段階ごとの可視化しかできず、連続的な加工現象の可視化はできない。また、非特許文献1は、定常変形を対象としており、塑性加工時に定常変形となったところで加工を止め、加工品を取り出し、薄層状にカットすることで、内部変形を同定しているため、鍛造のような非定常変形において全工程を網羅するには多くの逐次加工段階で加工を止め、それぞれで薄層状にカットする過程を経る必要があるため、多大な時間とコストを要するという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】特許第3345662号
【非特許文献1】吉田、伊藤著 「Visioplasticityによるひずみ(速度)および応力の解析」日本塑性加工学会誌 第33巻 第379号(1992−1)P34−39
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3次元的に塑性変形する複雑形状部品の加工において、加工プロセスあるいは金型設計が適切ではない場合、金属材料が金型に充満しない欠肉や、材料流動の不安定に起因する加工品表面の巻き込み等欠陥が発生する。これら欠陥の原因を解明するため時々刻々と変化する成形品内部変形の様子を実時間で可視化する必要があるが、従来技術では難しいという問題点がある。
【0008】
本発明は、以上の従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、3次元的に塑性変形する複雑形状部品の内部変形の様子を連続的に可視化する方法及び装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の塑性加工の3次元実験シミュレーション方法は、モデル型を使用し、かつ金属材料の変形特性と類似したモデル材料を使用して、所定形状のモデル材料の内部に標点を埋め込む工程と、前記モデル型に装填した前記モデル材料を連続的に塑性加工し、同時に前記塑性加工に伴う前記標点の動きを、視差を形成する2方向からの放射線により、放射線照射のタイミングを映像の1コマごとに切り換えて1つの映像として撮像する工程と、前記映像を記録する工程と、記録された映像を視差を形成する2方向ごとの静止画に分別する工程と、前記視差を形成する2方向ごとに分別された静止画を用いて加工開始から加工終了までの任意の塑性加工段階で標点の2次元座標を演算する工程と、前記視差を形成する2方向ごとに分別された標点の2次元座標を用いて加工開始から加工終了までの任意の塑性加工段階で標点の3次元座標を演算する工程と、加工開始から加工終了までの任意の塑性加工段階において、前記3次元座標での標点データとモデル型の形状データとを重ね合わせて表示する工程と、前記標点データとモデル型の形状データとを重ね合わせて表示した結果に基づいて加工の良否を判定する工程からなることとすることにより前記課題を解決したものである。
【0010】
本発明の塑性加工の3次元実験シミュレーション方法は、放射線の波長が1pmから10nmであることとした。これにより、モデル材料内部の非破壊検査が可能となる。
【0011】
本発明の塑性加工の3次元実験シミュレーション方法は、標点がモデル材料及びモデル型より密度が高い物質とし、標点とモデル材料及び標点とモデル型との密度差が12グラム毎立方センチメートル以上であることとした。これにより、コントラストの良い標点の放射線透過映像を得ることができる。
【0012】
本発明の塑性加工の3次元実験シミュレーション方法は、モデル材料及びモデル型が実際の金型及び被加工材料の形状と実質的に同一または相似の形状を有してなることとした。これにより、モデル型とモデル材料のシミュレーション実験にて得られる標点の動きは、実際の金型と被加工材料として金属材料を用いた加工における材料内部の変形と類似となる。
【0013】
本発明の塑性加工の3次元実験シミュレーション装置は、複数の標点が埋め込まれたモデル材料と、前記モデル材料を塑性加工するためのモデル型と、前記モデル材料を塑性加工する加圧装置と、前記加圧装置が一体となったモデル型設置台と、前記モデル型設置台が移動するためのモデル型設置台用レールと、前記モデル型設置台を移動させるためのモデル型設置台位置制御装置と、塑性加工に伴う標点の動きを視差を形成して撮像するための2台の放射線発生器と、前記2台の放射線発生器の照射タイミングを映像の1コマごとに切り替える放射線照射制御装置と、前記放射線発生器を設置するための放射線発生器設置台と、前記放射線発生器設置台が移動するための放射線発生器設置台用レールと、前記放射線発生器設置台を移動させるための放射線発生器設置台位置制御装置と、標点の放射線透過像を光学像に変換するイメージインテンシファイアと、前記イメージインテンシファイアにより得られた光学像を所定の大きさの光学映像に変換する光学系と、前記光学系により変換された所定の大きさの光学映像をアナログ映像信号に変換する1台の放射線用TVカメラと、前記アナログ映像信号を記録するためのビデオキャプチャーと、前記モデル型設置台及び前記放射線発生器設置台の位置を制御するプログラムと、前記撮像された視差を形成する2方向からの放射線による映像を1コマごとに方向ごとの時系列画像として切り分け静止画像として保存するプログラムと、前記視差を形成する方向ごとの時系列画像を用いて任意の塑性加工段階における標点の2次元座標を演算処理するプログラムと、前記任意の塑性加工段階における標点の2次元座標から3次元座標を演算処理するプログラムと、前記プログラム等が収納された演算処理装置と、前記演算処理結果とモデル型の形状データを重ね合わせて表示する表示装置とからなることとすることにより前記課題を解決したものである。なお、前記加圧装置とは、油圧あるいは電動プレス機である。
【0014】
本発明の塑性加工の3次元実験シミュレーション装置は、モデル型設置台が放射線用TVカメラを真上から見て、放射線用TVカメラの撮像面に対して垂直方向に移動することとした。これにより、放射線により撮像された標点映像を放射線用TVカメラの視野に収めたり、視認性を向上させるために拡大縮小することができる。
【0015】
本発明の塑性加工の3次元実験シミュレーション装置は、2台の放射線発生器を設置した放射線発生器設置台が、放射線用TVカメラを真上から見て、放射線発生器の視差形成を維持しながら放射線用TVカメラの撮像面と平行に横方向へ独立して同方向あるいは逆方向に移動することとした。これにより、視差を形成する2方向からの放射線により撮像された標点の透過映像を放射線用TVカメラの視野に収まるように2個の放射線発生器の間隔を変更することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると次のような優れた効果がある。
(1)3次元的に塑性変形する複雑形状部品の加工において、加工プロセスあるいは金型設計が適切ではない場合、金属材料が金型に充満しない欠肉や、材料流動の不安定に起因する加工品表面の巻き込み等の欠陥が発生する。これらの原因を解明するため、時々刻々と変化する成形品の内部変形を連続的に可視化することができる。
(2)標点を埋め込んだ1つのモデル材料を用いたシミュレーション実験による材料内部変形の可視化において、単一焦点の放射線発生器で視差を形成する方法も考えられるが、その方法ではある瞬間の3次元情報しか得られないのに対し、本発明では時間軸を加えた実時間で3次元的に塑性変形する現象の可視化が可能となる。
(3)数値計算モデルが不要で、過去の経験や勘といった熟練度を必要とせずに、加工プロセス設計及び金型設計における主要検討項目を、任意に、また広範囲に変えたシミュレーションができる。
(4)被加工材料と金型間の接触条件、摩擦条件、境界条件、材料の変形特性などが実験結果に包含されているため、実現象に即したシミュレーション結果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による塑性加工の3次元実験シミュレーション方法の一実施形態について説明する。本発明による塑性加工の3次元実験シミュレーション方法による加工プロセス設計は、図1の(1)〜(9)に示される過程により行われる。
(1)加工前の素材形状を決定し、モデル材料を用いて素材を製作する。素材の内部には、予めモデル材料よりも密度が高い標点を埋め込んでおく。
(2)モデル型を設計・製作する。
(3)塑性加工に伴う標点の動きを視差を形成する放射線により撮像する。
(4)任意時間に得られた視差画像中の標点の2次元座標を用いて、標点の3次元座標を演算する。
(5)表示装置上に標点とモデル型の重ね合わせ画像を表示する。
(6)加工の良否を判定する。良の判定の場合には、設計が終了する。否の判定の場合には、次の(7)〜(9)のいづれかまたは複数を行って、良の判定が出るまでこれを繰り返す。
(7)(6)の結果を参考に素材形状を変更して、(1)に戻る。
(8)(6)の結果を参考にモデル型の形状を変更して、(2)に戻る。
(9)(6)の結果を参考に加工条件を変更して、(3)に戻る。
【0018】
以上の方法によって、モデル材料の変形特性あるいはモデル材料とモデル型間の摩擦分布が時々刻々と変化する加工においても、それらの影響を受けた標点の3次元的な位置を演算するためのデータが得られるため、実現象に即した可視化を行うことができ、高い信頼性が期待できる。以上のことにより、本発明による塑性加工の3次元実験シミュレーション方法によれば、工具形状・潤滑条件・素材形状など加工プロセスにおける主要検討項目を、任意に、また、広範囲に変えたシミュレーションを容易に実施できる。
【0019】
次に、本発明による塑性加工の3次元実験シミュレーション装置を図2、図3に示して説明する。本発明による塑性加工の3次元実験シミュレーション装置40は、
(a)視差を形成する位置に配置された放射線発生器11a、11bと、放射線発生器11a、11bを設置するための放射線発生器設置台12a、12bと、放射線発生器設置台12a、12bを放射線用TVカメラを真上から見て、放射線用TVカメラの撮像面と平行に横方向へ移動させるための放射線発生器設置台用レール13と、2台の放射線発生器11a、11bの照射タイミングを映像の1コマごとに切り替えるための放射線照射制御装置14と、放射線発生器設置台用レール13における放射線発生器設置台12a、12bの位置を制御する放射線発生器位置制御装置15とを備える放射線機構部10と、
(b)モデル材料で作製した素材21と、素材21を塑性加工するための樹脂製のモデル型22と、プレス機能を果たす加圧装置23と、放射線の撮像対象となる金属製の標点24と、モデル型22を設置するモデル型設置台25と、モデル型設置台位置制御装置28と、モデル型設置台25を放射線の照射方向に移動させるためのモデル型設置台用レール26と、素材21を加圧するパンチ29とを備える加圧機構部20と、
(c)標点24の放射線映像を光学像に変換するイメージインテンシファイア31と、イメージインテンシファイア31により得られた光学像を所定の大きさの光学映像に変換する光学系32と、光学系32により変換された所定の大きさの光学映像をアナログ映像信号に変換する放射線用TVカメラ33と、映像を記録するためのビデオキャプチャー34と、各種処理プログラム35が収納された演算処理装置36と、演算処理結果とモデル型22の形状データを重ね合わせて表示する表示装置37とを備えるデータ処理機構部30とからなる。(放射線の被曝を防御する防御壁は図示せず)
【0020】
本発明による塑性加工の3次元実験シミュレーション装置40を使用して、金型設計の段階で、金属材料の変形特性(応力−ひずみ曲線の傾き、すなわちN値)を再現(N値を同一とする)できる市販のプラスチシン(油粘土)、カラークレイ(油粘土)、Filia(ワックス)をモデル材料として用いることにより、素材形状の検討や成形性の検討を容易に、安価に、短期間で行うことができる。
【0021】
ここで、放射線発生器11a、11bの放射線で透過撮影された複数の標点24の映像のコマ構成を図4に示して説明する。放射線発生器11a、11bの照射タイミングを映像の1コマごとに切り替える放射線照射制御装置14により放射線透過撮影された標点24の放射線用TVカメラ33における映像は、映像の1コマごとに放射線発生器11aで放射線を照射し、撮像した標点24の映像50a、放射線発生器11bで放射線を照射し、撮像した標点24の映像50bが時系列に、交互に51a、51b、52a、52b・・・のように納められている。ここで、NTSC信号による映像の1コマは1/30秒間隔であるので、加工における標点の移動時間を特定することができ、標点24の移動速度の演算が可能となる。
【0022】
本発明による塑性加工の3次元実験シミュレーション方法におけるデータ処理は図5(1)〜(5)に示される過程により行われる。
(1)照射タイミングを映像の1コマごとに切り換える放射線照射制御装置14によって2方向からの放射線により、モデル材料に埋め込まれた複数の標点24の視差映像が1つの映像として得られ、その映像をビデオキャプチャーにより記録し、演算処理装置36に保存する。
(2)視差を形成する2方向からの放射線による視差映像を1コマごとに方向別に切り分け、時系列の静止画として保存する。
(3)時系列の静止画中の全ての標点24の2次元座標を演算する。なお、この処理は画像処理ソフトウエアの重心座標探索機能を代用してもよい。
(4)視差を形成する時系列の静止画像における標点24の2次元座標から3次元座標を演算する。
(5)表示装置上に標点24の3次元データとモデル型の3次元形状データを重ね合わせて時系列で表示する。
なお、(5)から後の処理は、図1(6)となる。
【0023】
本発明による塑性加工の3次元実験シミュレーション方法における標点24の3次元座標の演算処理手順を図6にて説明する。この演算では標点24の撮像27a、27bのほか、既知である放射線発生器11a、11b及び放射線用TVカメラ33の撮像面38の位置情報を用いる。
【0024】
図6において、f1は放射線発生器11aの焦点座標、f2は放射線発生器11bの焦点座標、aは求める標点24の座標、a1は放射線発生器11aから照射された放射線により撮像された標点24の放射線用TVカメラ33の撮像面38における透過画像の座標、a2は放射線発生器11bから照射された放射線により撮像された標点24の放射線用TVカメラ33の撮像面38における透過画像の座標、Oは原点(0、0、0)を示している。
【0025】
ここで、焦点座標f1、f2は、焦点間距離をL、放射線発生器11aと放射線用TVカメラ33の撮像面38間の距離をFとすると、f1(−L/2、0、F)とf2(L/2、0、F)として表される。また、a1(X1、Y1、0)、a2(X2、Y2、0)とし、求める座標aをa(X、Y、Z)とする。
【0026】
以上の座標において、f1及びa1を通る直線は、次の式で表される。
【数1】


また、f2及びa2を通る直線は、次の式で表される。
【数2】


(1)、(2)に基本座標を代入すると、次の関係が成り立つ。
【数3】


【数4】


(3)、(4)の関係からX座標について整理すると、次の関係が成り立つ。
【数5】


以上の関係から求める座標aは、次のようになる。
【数6】


【数7】


【数8】


【実施例】
【0027】
本発明による塑性加工の3次元実験シミュレーション方法の実施例として、ヘリカルギヤの鍛造加工現象を可視化した結果について説明する。加工対象は、図7に示したヘリカルギヤ60で、円柱部61と3次元的に変形するギヤ部61aを有する。
【0028】
シミュレーション実験は、モデル材料として金属材料の変形特性(応力−ひずみ曲線の傾き、すなわちN値)を再現(N値を同一とする)できる市販のFilia(ワックス)を用いた。なお、その他のモデル材料であるプラスチシン(油粘土)やカラークレイ(油粘土)を用いてもよい。図8に加工前のFilia(ワックス)製素材を示す。素材の製作は、次の(1)〜(6)の手順で行った。
(1)溶融したFilia(ワックス)をよく混練し、素材の形状に応じて作製された金属製の円筒型枠の中空部へFilia(ワックス)を流し込む。
(2)円筒型枠に振動を与え、Filia(ワックス)内の気泡を除去する。
(3)Filia(ワックス)を−20℃の環境下で1時間程度保持し、Filia(ワックス)が収縮したところで円柱状になったFilia(ワックス)を円筒型枠から取り出す。
(4)円柱状Filia(ワックス)を中心軸を通る面で半分割し、2つの半円柱素材71、71aとする。
(5)半分割した半円柱素材71の分割面に4mmの等間隔に直径1mmの超硬合金製の球形の標点24を複数配置する。なお、標点24の配置は、溶融時にFilia(ワックス)と標点を同時に混練し、モデル材料内部に任意に埋め込んでもよい。
(6)半円柱素材71、71aの分割面を合わせてヘリカルギヤの加工前素材70とする。
【0029】
シミュレーション実験に使用したモデル型を図9に示す。モデル型の製作は、2液のエポキシ樹脂を型枠へ注型し、硬化させた後、型枠から取り出し、所定寸法に削り出した。樹脂製のヘリカルギヤ成形用モデル型84を樹脂製のケース83に挿入し、樹脂製の受圧板85をヘリカルギヤ成形用モデル型84の下方に置いた。
【0030】
加工前素材70をヘリカルギヤ成形用モデル型84に装填して、最大荷重が9.8kNの加圧装置のラム81に設置したパンチ82により加工した。加工は加工開始から加工終了まで連続的に加圧速度1mm/sの条件で実施した。なお、潤滑剤としてワセリンをヘリカルギヤ成形用モデル型84に薄く一様に塗布した。また、変形中は、軟X線を線源とする放射線発生器11a、11bにて90kV、80μAで放射線を照射し、標点24の透過映像を撮像したデータより標点24の3次元座標を演算した。
【0031】
シミュレーション実験で得た放射線透過画像例を図10に示す。なお、図の標点24に相当する白点は、視認性を容易にするために画像処理したものである。図10からヘリカルギヤ部61aの成形の進行に伴って標点24が広がることが確認できる。
【0032】
シミュレーション実験で得た放射線透過画像を基に標点24の3次元座標を演算し、表示装置に表示した結果を図11に示す。図11から材料内部の3次元的な様子が明確に確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
上述の発明は、鍛造加工、押出し加工等の塑性加工において、3次元的に変形する複雑形状部品の加工プロセス設計または金型設計または加工欠陥対策等の基礎データを得て、評価・検討するために利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】塑性加工の3次元実験シミュレーション方法の機能説明図
【図2】塑性加工の3次元実験シミュレーション装置の上面図
【図3】塑性加工の3次元実験シミュレーション装置の加圧機構部の側面図
【図4】放射線により透過撮影された標点の映像構成図
【図5】塑性加工の3次元実験シミュレーション方法におけるデータ処理フロー図
【図6】標点の3次元座標演算のための説明図
【図7】実施例で用いたヘリカルギヤ
【図8】実施例で用いた加工前のワックス製素材
【図9】実施例で用いたモデル型
【図10】実施例で撮像した標点の放射線透過画像
【図11】実施例で演算した標点の3次元データの表示装置への表示結果
【符号の説明】
【0035】
10 放射線機構部
11a 放射線発生器(L)
11b 放射線発生器(R)
12a 放射線発生器設置台(L)
12b 放射線発生器設置台(R)
13 放射線発生器設置台用レール
14 放射線照射制御装置
15 放射線発生器位置制御装置
20 加圧機構部
21 素材
22 モデル型
23 加圧装置
24 標点
25 モデル型設置台
26 モデル型設置台用レール
27a 標点の撮像(L)
27b 標点の撮像(R)
28 モデル型設置台位置制御装置
29 パンチ
30 データ処理機構部
31 イメージインテンシファイア
32 光学系
33 放射線用TVカメラ
34 ビデオキャプチャー
35 各種プログラム
36 演算処理装置
37 表示装置
38 放射線用TVカメラの撮像面
40 塑性加工の3次元実験シミュレーション装置
50a 放射線発生器10aによる標点の視差映像の1コマ目
50b 放射線発生器10bによる標点の視差映像の1コマ目
51a 放射線発生器10aによる標点の視差映像の2コマ目
51b 放射線発生器10bによる標点の視差映像の2コマ目
52a 放射線発生器10aによる標点の視差映像の3コマ目
52b 放射線発生器10bによる標点の視差映像の3コマ目
60 ヘリカルギヤ
61 ヘリカルギヤの円柱部
61a ヘリカルギヤのギヤ部
70 加工前素材
71 標点を配置した半円柱素材
71a 半円柱素材
80 シミュレーション実験で使用したモデル型
81 プレスのラム
82 パンチ
83 ケース
84 ヘリカルギヤ成形用モデル型
85 受圧板
【出願人】 【識別番号】591155242
【氏名又は名称】鹿児島県
【出願日】 平成19年3月9日(2007.3.9)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−221246(P2008−221246A)
【公開日】 平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願番号】 特願2007−59621(P2007−59621)