トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 鍛造方法、鍛造用金型および鍛造成形品
【発明者】 【氏名】佐藤 正広

【要約】 【課題】成形品の投影面積がより小さい方向からの鍛造成形が閉塞鍛造で可能となる鍛造方法、鍛造用金型および鍛造成形品を提供する。

【解決手段】本発明は、鍛造用素材から、成形方向に凸の部位および成形方向と反対方向に凸の部位の双方を部分的に有する形状の鍛造成形品を製造する鍛造方法において、成形孔とともにその上部に接続させて投入口が設けられた下金型202を用い、投入口は、成形方向に直角な方向の断面が成形孔入口より大きく、かつ成形孔入口に向けて斜面角度が5°〜60°の斜面211で成形孔入口に接続されるように形成され、鍛造用素材701は、成形方向に直角な投影面が成形孔入口よりも大きく、その投影面において成形孔入口に対する面積比が1.2〜4となるようにし、鍛造用素材を上金型201により成形孔内に流動させ、凸の部位は塑性流動によって充満させて閉塞鍛造を行うことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造用金属素材から、成形方向に凸の部位および成形方向と反対方向に凸の部位の双方を部分的に有する形状、すなわち当該鍛造成形品各部位での成形方向と平行な断面が、成形方向に凸の部位および成形方向とは反対方向に凸の部位の双方を部分的に有する形状の鍛造成形品を製造する鍛造方法において、
成形孔とともにその成形孔入口の上部に接続させて投入口が設けられた下金型を用い、
上記投入口は、成形方向に直角な方向の断面が成形孔入口より大きく、かつ成形孔入口に向けて斜面角度が5°〜60°の斜面で成形孔入口に接続されるように形成され、
上記鍛造用金属素材は円柱状で、成形方向に直角な投影面が成形孔入口よりも大きく、その投影面において成形孔入口に対する面積比が1.2〜4となるようにし、
上記鍛造用金属素材を投入口に投入して投入口の斜面に円柱状素材の曲面が接するように載せ、上金型により成形孔内に流動させ、上記凸の部位は塑性流動によって充満させて閉塞鍛造を行い、
上記凸の部位での成形方向と平行な断面において観察される鍛流線が連続的な流れ模様を示すようにする、
ことを特徴とする鍛造方法。
【請求項2】
上記鍛造用金属素材は成形方向に直角な投影面の全体が成形孔入口より大きい、請求項1に記載の鍛造方法。
【請求項3】
上記鍛造用金属素材は成形方向に直角な投影面の一部が成形孔入口より大きい、請求項1に記載の鍛造方法。
【請求項4】
鍛造用金属素材としてアルミニウム合金を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鍛造方法。
【請求項5】
鍛造金型へ噴霧用圧縮空気および潤滑剤を吹き付けるにあたり、金型に対しほぼ同一軌跡をとるように吹きつけることを特徴とする潤滑剤塗布工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鍛造方法。
【請求項6】
潤滑剤塗布工程において、噴霧用圧縮空気、潤滑剤、噴霧用圧縮空気の順に吹き付けることを特徴とする請求項5に記載の鍛造方法。
【請求項7】
潤滑剤塗布工程において、潤滑剤の吹き付けを、油性潤滑剤、水性潤滑剤の順序の吹きつけとすることを特徴とする請求項5または6に記載の鍛造方法。
【請求項8】
請求項1の鍛造方法に使用する鍛造用金型であって、
上金型が成形方向と反対方向に凹の部位を部分的に有する構成を備え、また下金型が成形方向に凹の部位を部分的に有する構成を備え、
下金型の成形孔入口の上部に成形孔入口より大きい断面を有する投入口が設けられ、その投入口は成形孔入口に向かった、斜面角度が5°〜60°の斜面で成形孔入口に接続され、その投入口には成形方向に直角な投影面が成形孔入口よりも大きく、その投影面において成形孔入口に対する面積比が1.2〜4となる鍛造用金属素材が投入される、
ことを特徴とする鍛造用金型。
【請求項9】
斜面が多段の斜面から構成されることを特徴とする請求項8に記載の鍛造用金型。
【請求項10】
斜面が成形孔入口に向かって連続的に斜面角度が小さくなる部分を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の鍛造用金型。
【請求項11】
斜面が成形孔入口に向かって連続的に斜面角度が小さくなることを特徴とする請求項8に記載の鍛造用金型。
【請求項12】
斜面の最大斜面角度が5°〜60°であることを特徴とする請求項11に記載の鍛造用金型。
【請求項13】
斜面の表面が鏡面研磨されていることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の鍛造用金型。
【請求項14】
斜面の表面が、窒化処理が施されていることを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の鍛造用金型。
【請求項15】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の鍛造方法により成形した成形品を予備成形品として用いる本成形工程により鍛造される鍛造成形品。
【請求項16】
本成形での材料歩留まりが85%以上となるような形状に請求項1乃至7のいずれか1項に記載の鍛造方法により成形した成形品を予備成形品として用いる本成形工程により鍛造される鍛造成形品。
【請求項17】
凸方向に対する凸の部位の縦断面において観察される鍛流線が連続的な流れ模様を示し、外郭形状の表面の型割り部跡にトリミング痕を有しないことを特徴とする請求項15または16に記載の鍛造成形品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属素材の鍛造方法、鍛造用金型および鍛造成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属の成形品を得るためには、金型重力鋳造法(GDC法)による鋳造品が主に用いられていた。金型重力鋳造とは、たとえば、アルミ合金地金を溶解し、複数の部品から構成される鋳造金型に注湯し、鋳造するものであり、鋳造欠陥の発生を抑制するため押湯と呼ばれる大幅な余肉を付加して鋳造している。このような鋳造品では耐衝撃特性を得るためには、肉厚を大きく設計する必要があり軽量化が困難であった。そこで、鍛造法により成形することが検討されてきた。
【0003】
鍛造により成形品を製造する場合は、金型成形部の投影面積よりも大きな鍛造素材を用いて、金型成形部から外側に素材をバリとしてはみ出した状態に鍛造した後にバリを除去して製品を得る、バリ出し鍛造が主流であった。GDC鋳造法で鋳造されたものを鍛造用素材として用いた場合は、さらに押湯部分を切断除去する必要もあり材料歩留りが良くなかった。
【0004】
一方、金属素材を用いて閉塞鍛造をした場合は、金型の成形孔内に素材を投入した状態から鍛造を開始している。すなわち、金型成形部の投影面積よりも小さい投影面積の素材を用いて、金型空間を閉塞状態にして鍛造するのが通常であった。
【0005】
鍛造する際の鍛造荷重はできるだけ小さい方が、鍛造装置が小型化でき金型寿命を延ばすことができるので好ましい。鍛造荷重は、成形品の成形方向の投影面積と単位面積あたりの荷重との積に比例する。単位面積あたりの荷重は成形品の材質および素材温度、金型温度などの鍛造条件により決まるため、むしろ鍛造荷重は成形方向の投影面積の大きさの影響を受ける。成形品の形状は、投影方向によって、投影面の面積が異なるので、投影面積がより小さい方向から成形することが好ましい。
【0006】
しかし、投影面積がより小さい方向から成形しようとした場合、金型成形部の投影面積よりも小さい投影面積の素材を用いる従来の方法では、金型の成形孔内に素材を投入した状態から鍛造を開始するので投入素材の体積が成形品の体積に対して不足した状態になってしまうので、鍛造した結果の成形品に欠肉が生じてしまうという問題があった。
【0007】
この問題を回避するために、投影面積がより小さい方向からの成形を断念して、単位投影面積あたりの体積の差があまり生じない方向から鍛造成形品に鍛造することで対応が取られてきた。この方法では、成形時の受圧面積が大きくなるために成形荷重(鍛造荷重)が大きくなり、大型の鍛造装置が必要となるだけでなく、バリ出し鍛造となるため閉塞状態での鍛造ができず材料歩留りも悪くなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、成形品の投影面積がより小さい方向からの鍛造成形が閉塞鍛造で可能となる鍛造方法、鍛造用金型および鍛造成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鍛造用金属素材の投入と成形プロセスについて鋭意研究をおこないその知見に基づいて本発明を完成するに至った。
1)上記課題を解決するための第1の発明は、鍛造用金属素材から、成形方向に凸の部位および成形方向と反対方向に凸の部位の双方を部分的に有する形状、すなわち当該鍛造成形品各部位での成形方向と平行な断面が、成形方向に凸の部位および成形方向とは反対方向に凸の部位の双方を部分的に有する形状の鍛造成形品を製造する鍛造方法において、成形孔とともにその成形孔入口の上部に接続させて投入口が設けられた下金型を用い、上記投入口は、成形方向に直角な方向の断面が成形孔入口より大きく、かつ成形孔入口に向けて斜面角度が5°〜60°の斜面で成形孔入口に接続されるように形成され、上記鍛造用金属素材は円柱状で、成形方向に直角な投影面が成形孔入口よりも大きく、その投影面において成形孔入口に対する面積比が1.2〜4となるようにし、上記鍛造用金属素材を投入口に投入して投入口の斜面に円柱状素材の曲面が接するように載せ、上金型により成形孔内に流動させ、上記凸の部位は塑性流動によって充満させて閉塞鍛造を行い、上記凸の部位での成形方向と平行な断面において観察される鍛流線が連続的な流れ模様を示すようにする、ことを特徴とする鍛造方法である。
2)上記課題を解決するための第2の発明は、上記鍛造用金属素材は成形方向に直角な投影面の全体が成形孔入口より大きい、1)に記載の鍛造方法である。
3)上記課題を解決するための第3の発明は、上記鍛造用金属素材は成形方向に直角な投影面の一部が成形孔入口より大きい、1)に記載の鍛造方法である。
4)上記課題を解決するための第4の発明は、鍛造用金属素材としてアルミニウム合金を用いることを特徴とする1)乃至3)のいずれか1項に記載の鍛造方法である。
5)上記課題を解決するための第5の発明は、鍛造金型へ噴霧用圧縮空気および潤滑剤を吹き付けるにあたり、金型に対しほぼ同一軌跡をとるように吹きつけることを特徴とする潤滑剤塗布工程を含むことを特徴とする1)乃至4)のいずれか1項に記載の鍛造方法である。
6)上記課題を解決するための第6の発明は、潤滑剤塗布工程において、噴霧用圧縮空気、潤滑剤、噴霧用圧縮空気の順に吹き付けることを特徴とする5)に記載の鍛造方法である。
7)上記課題を解決するための第7の発明は、潤滑剤塗布工程において、潤滑剤の吹き付けを、油性潤滑剤、水性潤滑剤の順序の吹きつけとすることを特徴とする5)または6)に記載の鍛造方法である。
8)上記課題を解決するための第8の発明は、請求項1の鍛造方法に使用する鍛造用金型であって、上金型が成形方向と反対方向に凹の部位を部分的に有する構成を備え、また下金型が成形方向に凹の部位を部分的に有する構成を備え、下金型の成形孔入口の上部に成形孔入口より大きい断面を有する投入口が設けられ、その投入口は成形孔入口に向かった、斜面角度が5°〜60°の斜面で成形孔入口に接続され、その投入口には成形方向に直角な投影面が成形孔入口よりも大きく、その投影面において成形孔入口に対する面積比が1.2〜4となる鍛造用金属素材が投入される、ことを特徴とする鍛造用金型である。
9)上記課題を解決するための第9の発明は、斜面が多段の斜面から構成されることを特徴とする8)に記載の鍛造用金型である。
10)上記課題を解決するための第10の発明は、斜面が成形孔入口に向かって連続的に斜面角度が小さくなる部分を含むことを特徴とする8)又は9)に記載の鍛造用金型である。
11)上記課題を解決するための第11の発明は、斜面が成形孔入口に向かって連続的に斜面角度が小さくなることを特徴とする8)に記載の鍛造用金型である。
12)上記課題を解決するための第12の発明は、斜面の最大斜面角度が5°〜60°であることを特徴とする11)に記載の鍛造用金型である。
13)上記課題を解決するための第13の発明は、斜面の表面が鏡面研磨されていることを特徴とする8)乃至12)のいずれか1項に記載の鍛造用金型である。
14)上記課題を解決するための第14の発明は、斜面の表面が、窒化処理が施されていることを特徴とする8)乃至13)のいずれか1項に記載の鍛造用金型である。
15)上記課題を解決するための第15の発明は、1)乃至7)のいずれか1項に記載の鍛造方法により成形した成形品を予備成形品として用いる本成形工程により鍛造される鍛造成形品である。
16)上記課題を解決するための第16の発明は、本成形での材料歩留まりが85%以上となるような形状に1)乃至7)のいずれか1項に記載の鍛造方法により成形した成形品を予備成形品として用いる本成形工程により鍛造される鍛造成形品である。
17)上記課題を解決するための第17の発明は、凸方向に対する凸の部位の縦断面において観察される鍛流線が連続的な流れ模様を示し、外郭形状の表面の型割り部跡にトリミング痕を有しないことを特徴とする15)または16)に記載の鍛造成形品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、成形孔入口の上部にそれに対応して成形孔入口より大きい断面を有する投入口が設けられ、投入口は成形孔入口に向かった斜面で成形孔入口に接続されている下金型を用いて、成形方向と直角な投影面が成形孔入口よりも大きい鍛造用素材を該斜面上に投入して、上金型により該鍛造用素材を成形孔内に流動させて閉塞鍛造することを特徴とするので、製品の投影面積がより小さくなる方向から閉塞鍛造により成形することが容易にできる。その結果、大きな凸部を有する鍛造品を、従来に比べ成形荷重をより小さく抑え小型の鍛造機にて材料歩留まりを向上させて製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の成形品の一例を説明する。図1に本発明の成形品の一例である成形方向に凸の部位(符号Cの部位。)または成形方向と反対方向に凸の部位(符号Bの部位。)を有する形状を有した成形品の外観図を示す。この図の場合は成形方向を符号Dに示す。この場合、符号Dの方向がより小さい投影面積となる方向である。このような形状を有した物としては、船外機ブラケットが挙げられる。船外機ブラケットは、船外機を船体に固定するのに用いられる固定金具であって、走行中に船外機が受ける波や浮遊物からの衝撃荷重に耐えて船外機を船体に保持する必要から、耐衝撃性、高強度が特性として求められる。
【0012】
本発明に用いる鍛造装置の構成の一例を図5をもとに説明する。鍛造装置は、鍛造機501と、上ボルスター502に取りつけられた上金型503と、下ボルスター506に取り付けられた下金型505とを含むものである。また、必要に応じて、スプレー前後移送装置508スプレー回転装置509を備えシャフト510を介して、スプレー前後装置に取りつけられた潤滑剤スプレーノズル504を有している潤滑剤塗布装置を配設することができる。潤滑剤塗布装置は噴霧用圧縮空気、潤滑剤の吹き付けの順番を制御することができる。また、潤滑剤塗布装置は、噴霧用圧縮空気、潤滑剤を吹き付けるにあたり、金型に対しほぼ同一軌跡をとるように吹きつける機構を有しているのが好ましい。潤滑剤塗布装置は、油性潤滑剤、水性潤滑剤の2種類の塗布の順番を制御することができることが好ましい。
【0013】
本発明に用いる金型の一例を図2に示す。金型は、上金型201と、下金型202と、ノックアウトピン207とを含むものである。下金型に上金型が下降した下死点状態では、下金型、上金型に囲まれた空間は、成形品の形状を有していて、成形品の投影面積がより小さい方向から上金型が下降するようになっている。
【0014】
ここで、下金型は、成形孔入口(213)の上部にそれに対応して成形孔入口より大きい断面を有する投入口(214)が設けられ、投入口は成形孔入口に向かった斜面(211)で成形孔入口に接続されているものである。斜面が多段の斜面から構成されたものとすることもできる。また、図6(a)に示すように斜面が成形孔入口に向かって連続的に斜面角度が小さくなる部分(601)を含むものとすることもできる。斜面で接続されることにより、斜面上を成形孔入口よりも大きい投影面積を有する鍛造用素材が絞り込まれながら成形孔からなる成形部に流動し、各部位へ流動する素材がバランスされながら欠肉を生じることなく成形品が成形される。さらに、素材表面と金型表面の摩擦抵抗を小さく抑えることにより、斜面形状を転写しながらも焼き付きやむしれ、成形方向と反対方向へのメタルフローを最小限に抑え、バリを発生させることなく、成形部へ素材を挿入することができる。太い素材を絞り込みながら成形部へとバリを発生させずに押し込むことができる。
【0015】
斜面の中心軸(もしくは成形方向)から斜面に対する斜面角度(図2(C)、符号220)が5°〜60°であることが好ましい。斜面角度が60°を超えると斜面を素材が滑ることができず、成形方向とは異なる方向への素材の流動が起こり、耳状のバリが発生する。これによって、場合によっては、上金型を下金型に挿入することができなくなり鍛造できなくなるおそれがある。耳状のバリとは、成形方向とは異なる方向へ流動した素材により形成されるバリのことである。また、斜面が5°未満であると必要とされる投入口を得るために斜面の長さを大きくする必要があり、下金型が大きくなりすぎるので、金型費用がかさみ、大型の鍛造機が必要となる。そのような下金型に合わせて上金型の長さも長くすることになり、成形荷重による振られが発生し上金型が破損するおそれが生じ鍛造運転が不安定になる。
【0016】
また金型の斜面は、斜面が成形孔入口に向かって連続的に斜面角度が小さくなるものとすることができる。図6(b)は、連続的に斜面角度が小さくなる斜面(602)を有した下金型の例である。連続的に斜面角度が小さくなる斜面は、成形孔内への鍛造用素材の流動がスムーズになるので好ましい。成形孔入口に向かって連続的に斜面角度が小さくなるものであるので、斜面が上端を最大斜度として徐々に緩やかな斜面へと移行するため成形孔入口よりもより大きな断面積を有する鍛造素材をより短いストロークにて成形が可能となるので好ましい。特に、斜面の最大斜面角度(603)が5°〜60°であることが好ましい。斜面角度が60°を超えると斜面を素材が滑ることができず、成形方向とは異なる方向への素材の流動が起こり、耳状のバリが発生する。これによって、場合によっては、上金型を下金型に挿入することができなくなり鍛造できなくなるおそれがある。耳状のバリとは、成形方向とは異なる方向へ流動した素材により形成されるバリのことである。また、斜面が5°未満であると必要とされる投入口を得るために斜面の長さを大きくする必要があり、下金型が大きくなりすぎるので、金型費用がかさみ、大型の鍛造機が必要となる。そのような下金型に合わせて上金型の長さも長くすることになり、成形荷重による振られが発生し上金型が破損するおそれが生じ鍛造運転が不安定になる。
【0017】
斜面の表面が鏡面研磨されていることが好ましい。鍛造用素材表面と金型表面の摩擦抵抗が小さくなり成形方向と反対方向への塑性流動が起こりにくくなるからである。鏡面研磨されている状態とは表面面粗度が表面の凹凸最大幅が5μm以下(より好ましくは2μm以下。)の状態である。
【0018】
斜面の表面が、窒化処理が施されていることが好ましい。鍛造用素材表面と金型表面との耐焼付性および耐摩耗性が改善され、鍛造用素材の金型表面への焼き付きや摩耗が起こりにくくなるからである。窒化処理が施されている状態とは表面が窒化鉄の皮膜を有している状態である。
【0019】
なお、上述した特徴を有する斜面を成形品の長手方向の片側に設けること、または上述した特徴を有する斜面から選ばれる2種以上の斜面を組み合わせて異なる個所に斜面を設けることができる。この場合、成形品の各部位の体積と素材の体積とのバランスを考慮することが好ましい。
【0020】
成形する形状に合わせて、複数個の可動ラムを下金型および/または上金型に配設することができる。また成形する形状に合わせて複数個のカウンターパンチを配設することができる。複数個の各可動ラムの動き出すタイミングを調整することによって、より好ましい素材の塑性流動を得ることができる。
【0021】
つぎに、図5の装置を用いた本発明の製造方法の一実施形態を説明する。
本発明の製造方法は、
潤滑剤を金型へ塗布する工程と、
素材に潤滑剤を塗布する工程と、
素材を所定の温度に予備加熱する工程と、
素材を投入する工程と、
素材を鍛造成形する工程と、
ノックアウト機構により成形品を排出する工程と、
熱処理工程と、
を含む製造方法である。
【0022】
本発明の製造方法に用いる成形品の材料はアルミニウム合金である。耐食性、高温強度、高弾性が好ましい特性を有する材料としてはA6061、A2014、A2218、A6082、A4032、A7075を挙げることができる。A6061、A6082は耐食性、被アルマイト性が優れた特性を有し中程度の強度を有するため、各種特性をバランス良く満足するので好ましい。A2014、A2218は高強度、高弾性の特性を有するので、曲げや引っ張りの高い負荷が求められる成形品においては強度が向上するので好ましい。A4032は耐摩耗性が優れ、高弾性である特性を有するので、耐摩耗性の必要な成形品においては耐摩耗性を向上させるので好ましい。A7075は実用のアルミ合金では最高強度持つため、鉄並の強度必要な成形品において高い強度を得ることができるので好ましい。
【0023】
図7(a)に示したように、前述した金型を配置した鍛造装置の下金型の斜面(211)上に鍛造用素材(701)を投入する。図7は図1におけるA面位置での断面図である。成形孔入口の上部にそれに対応して成形孔入口より大きい断面を有する投入口が設けられ、投入口は成形孔入口に向かった斜面で成形孔入口に接続されている状態を示している。
【0024】
ここで、素材は、成形品の成形方向と直角な投影面よりも大きな投影面を有するものである。また、素材の形状としては、円柱状、楕円柱状、角柱状、球状を挙げることができる。円柱状の素材を押出、圧延、据え込みなどの2次加工を加えて楕円、平板、円盤にしたものを用いることができるが、円柱状の素材がコスト的には有利な素材であり好ましい。
【0025】
円柱状の素材は例えば、アルミニウム合金の連続鋳造棒を所定の長さに切断したものを用いることができる。素材は例えば、必要に応じて素材潤滑としてボンデ処理、黒鉛系水性潤滑剤への浸漬による潤滑剤の塗布処理を施しておく。新生面が生じるような強加工である場合は潤滑切れ防止の点からボンデ処理が好ましい。
【0026】
金型への投入時に、素材は所定の温度、例えば370℃〜530℃に予備加熱しておく。
【0027】
素材の投入前に、潤滑剤を金型へ塗布する。使用する潤滑剤としては水性黒鉛潤滑剤、油性黒鉛潤滑剤を挙げることができる。鍛造用金型表面が素材からの抜熱および予加熱により高温であるので、高温での濡れ性が良好である油性黒鉛潤滑剤がより好ましい。金型への潤滑剤塗布量は1g〜10gとするのが好ましい。
【0028】
潤滑剤塗布工程において、噴霧用圧縮空気のみ、潤滑剤、噴霧用圧縮空気のみの順に吹き付けることが好ましい。金型表面のほこり等の付着物除去に続いて潤滑剤吹き付けが可能で、潤滑剤の不均一な溜りおよび不足を均一化でき、乾燥させることが可能となるからである。
【0029】
潤滑剤塗布工程において、潤滑剤の吹き付けを、油性潤滑剤、水性潤滑剤の順序の吹きつけとすることが好ましい。高温の金型表面に水性潤滑剤を直接吹き付けると溶媒である水のはじかれにより不均一な塗布状態となるが、油性潤滑剤により金型表面に油膜を形成することにより、水のはじかれを緩和し、水性潤滑剤成分を油膜表面に付着でき、均一な潤滑皮膜の形成が可能となるからである。
【0030】
次に図7をもとに鍛造工程を説明する。
図7(a)は素材の投入状態で、鍛造用素材が該斜面上に投入されている。
図7(b)は上金型により該鍛造用素材が成形孔内に流動されている状態で、斜面により楕円状に絞りこまれ、成形方向と反対方向への耳状の成形が起こっていない状態となっている。
図7(c)は、上金型がさらに下降し成形が完了する少し前の状態で、細径部には素材が充満している。
図7(d)は(b)の状態における成形品の長手方向の断面の図であり、素材が成形孔内に流動される同時に成形方向と反対方向に凸の部位に素材が塑性流動している。
図7(e)は(c)の状態における成形品の長手方向の断面の図であり、成形方向の凸の部位に素材が塑性流動している。
【0031】
さらに、上金型が下降することにより成形が完了する。
【0032】
素材を下金型成形孔入口に設けた斜面上に置く。上金型が下降し、素材に接触する。上金型が下降を続け、素材は斜面上を滑りながら成形孔に絞り込まれながら、進入していく。上金型に設けられた凸部成形部へも塑性流動が起こりながら、さらに上金型は下降を続ける。さらに素材が成形孔に収納された後に上金型に設けられた凸部成形部および成形方向の凸部への塑性流動が起こり、これらの部位への充満が進んだ時点で成形が完了する。成形が完了後、上金型は上昇し、ノックアウトピンにより製品が下金型から持ち上げられ、排出される。その結果、成形品の投影面積がより小さい方向から上金型を下降させることにより該鍛造用素材が成形孔内に流動して、閉塞鍛造で成形品を製造することができる。好ましくは、投影面積が最小となる方向から閉塞鍛造で成形品を製造することができる。
【0033】
鍛造条件は、製品形状に応じて最適化することができる。例えば、プレス速度は10〜40spmとし、素材温度は370℃〜530℃とし、潤滑剤量は1g〜50gとし、ダイハイトは700mm〜2000mmとし、成形荷重は150t〜800tとし、金型温度は予め100℃〜400℃に加熱する。ダイハイトとは、上金型が下死点まで下降した状態での上ボルスターと下ボルスターの隙間の間隔のことである。
【0034】
本発明の製造方法では、成形方向と直角な投影面において、投影面の全体が成形孔入口より大きい鍛造用素材を用いて、成形方向に凸の部位または成形方向と反対方向に凸の部位を有する成形品の製造ができる。図3に、成形方向と直角な投影面における素材の投影面(301)と成形孔入口(302)の大きさの関係を示す。その結果、単位投影面積あたりの体積が素材の単位投影面積あたりの体積よりも大きい成形品を容易に得ることができる。成形品の投影面積がより小さい方向からの鍛造成形が容易に行なえる。
【0035】
本発明の製造方法では、成形方向と直角な投影面において、投影面の一部が成形孔入口より大きい鍛造用素材を用いて、その他の部位では投影面が鍛造用素材より大きい成形品の製造ができる。図4に、成形方向と直角な投影面における素材の投影面(401)と成形孔入口(402)の大きさの関係を示す。その結果、製品の一部分において単位投影面積あたりの体積が素材の単位面積あたりの体積よりも大きい成形品を容易に得ることができる。成形品の投影面積がより小さい方向からの鍛造成形が容易に行なえる。
【0036】
成形孔入口の上部にそれに対応して成形孔入口より大きい断面を有する投入口が設けられた部位での成形方向と直角な投影面において、成形孔入口と鍛造用素材の面積比が1.2〜4であることが好ましい。1.2よりも小さい面積比では形状に対応し必要とされる素材のメタルバランスを得ることができない。また、4よりも大きな面積比では斜面が大きくなりすぎ、実用的な金型サイズを超えて、鍛造が困難である。
【0037】
鍛造製品は熱処理を実施する。熱処理は、素材強度を向上させることを目的とし、条件は460〜560℃、1〜5時間保持し、直後に水槽(水温10〜70℃)に浸漬させ、150〜250℃にて1〜10時間保持とすることで所望の素材強度とすることができる。
【0038】
熱処理工程が終了した鍛造成形品は、必要に応じて、さらに鍛造による本成形加工、サイジング加工、転造加工、切削加工から選ばれるいずれか1種または2種以上を組み合わせた加工を実施して最終製品の形状を得ることができる。ここで、成形品を予備成形品として用いる本成形工程により鍛造する場合、本成形での材料歩留まりが85%以上となるような形状に成形した成形品を予備成形品として用いるのが好ましい。本発明の成形品を予備成形品とすると、歩留りが好ましい値の85%以上であるので、材料費の高いアルミ合金材料を用いることができる。従来の方法では、バリ出し鍛造であるために85%以上の予備成形品を得ることが困難であった。従来の閉塞鍛造では85%以上の予備成形品を得ることが困難であった。
【0039】
また、本発明の製造方法によれば、上金型下金型を閉塞状態として成形しているため製品外部へのバリがなく、トリミング工程を省略することができる。そのため、本発明の製造方法によればトリミング痕がない成形品を製造することができる。また本発明の製造方法によれば材料歩留まりも向上して製造することができる。結果、製造された成形品は、製品外周部にトリミング痕を有しないことを特徴とする成形品となり、製品外周部にトリミング痕がないため、製品強度、外観の点で好ましいものとなる。
【0040】
本発明の製造方法によって製造した成形品は、上金型と下金型が閉塞状態となり、金型分割部へのメタルフローが生じていないので金型分割部へのバリの発生を抑えることができるのでバリ切削工程が不要になり効率的な工程となり高品質の大量生産に適した製造方法である。トリミング工程が省略されているので、その結果、金型分割部がトリミング痕による段差が無い形状となっているので、表面が滑らかな接続となり、仕上がり品の外観の品質が向上する。外観を滑らかにするためのバフ研磨工程などの仕上げ工程を設ける必要がないからである。また、従来の鍛造方法では、金型構成が単純で安価であるという理由から鍛造はバリだし鍛造となるので、鍛造後にトリミング工程が必要なため、原材料歩留まりが良くなかったが、本発明ではトリミング工程が省略されているので、原材料歩留まりが向上する。
【0041】
本発明の製造方法によって製造した成形品は、凸方向に対する凸の部位の縦断面において観察される鍛流線が連続的な流れ模様を示し、外郭形状の表面の型割り部跡にトリミング痕を有しない成形品となる。その結果、成形品が歩留り良く製造された機械特性の優れた成形品となり好ましい。
【実施例】
【0042】
図5に示した装置、図2に示した金型を用いて図1に示した成形品を作製した。ここで下金型として、投入口から成形孔入口に向かった斜面の斜面角度が0度、5度、30度、60度、90度であるものを用意して用いた。
【0043】
A6061材のアルミニウム合金からなる連続鋳造棒を直径65mm長さ250mmに丸のこぎりで切断した。切断した素材に黒鉛系の潤滑剤を塗布して500℃に予加熱した。予加熱した素材を下金型の投入口から成形孔入口に向かった斜面上に投入した。上金型を下降させ成形した。成形が完了後、製品を下金型のノックアウト機構により金型の外へ排出した。
【0044】
鍛造条件は、プレス速度は25spm、ダイハイト985mm、成形荷重500t、金型温度300℃、油性潤滑剤塗布量5g、水性潤滑剤塗布量25gとした。各金型で鍛造した結果を表1に示す。
【0045】
【表1】


【0046】
ここで、○は鍛造成形が可能であったことを示し、△は鍛造成形は可能であったものの耳状のバリが発生したことを示し、×は耳状のバリにより上金型が下降することができず鍛造成形できなかったことを示す。
【0047】
また成形品には型割り部にトリミング工程が必要となるほどの大きさのバリが発生することが無かった。後工程で必要なトリミング工程を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の成形品の一例の外観見取り図である。
【図2】本発明に用いる金型の一例の図である。(a)は上金型、(b)は下金型、(c)は図1のAに対応した位置での下金型の断面図である。
【図3】本発明に用いる金型と素材の関係の一例を説明する図である。
【図4】本発明に用いる金型と素材の関係の別の例を説明する図である。
【図5】本発明に用いる鍛造設備の概略図である。
【図6】本発明に用いる金型の他の例の図である。(a)は斜面の一部に斜面角度が連続的に変化する部分を含む場合、(b)は斜面角度が連続的に変化する場合の例の図である。
【図7】本発明の工程フロー図の一例である。(a)は素材の投入状態の図、(b)は上金型により該鍛造用素材が成形孔内に流動されている状態の図、(c)は成形が完了する少し前の状態の図、(d)は(b)の状態における成形品の長手方向の断面の図、(e)は(c)の状態における成形品の長手方向の断面の図である。
【符号の説明】
【0049】
A:図7に対応する断面位置
B:成形方向と反対方向に凸の部位
C:成形方向に凸の部位
201,503:上金型
202,505:下金型
207:ノックアウトピン
213,302,402:成形孔入口
214:投入口
211:斜面
220:斜面角度
301:素材の投影面
401:素材の投影面
501:鍛造機
502:上ボルスター
503:スプレー前後移送装置
504:潤滑剤スプレーノズ
506:下ボルスター
509:スプレー回転装置
510:シャフト510
601:連続的に斜面角度が小さくなる部分
602:連続的に斜面角度が小さくなる斜面
603:最大斜面角度
701:鍛造用素材
【出願人】 【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
【出願日】 平成20年4月21日(2008.4.21)
【代理人】 【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三

【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一

【識別番号】100061642
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武通


【公開番号】 特開2008−207252(P2008−207252A)
【公開日】 平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願番号】 特願2008−110031(P2008−110031)