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【発明の名称】 鍛造用ノックアウト装置および鍛造装置
【発明者】 【氏名】平野 邦雄

【要約】 【課題】鍛造用ノックアウト装置において、ダイスからアンビルに流れ込む潤滑剤をノックアウトピンのまわりから排出して長期連続運転を可能にする。

【解決手段】ノックアウト装置(1)において、ノックアウトピン(20)が軸部(21)(24)の長さ方向の中間部分に大径の鍔部(22)を有し、アンビル(10)が、前記ノックアウトピン(20)前記鍔部(22)に対応する上貫通孔(31)(41)が穿設された上アンビル(11)と、前記ノックアウトピン(20)の軸部(24)に対応する挿入用空間(52)とこの挿入用空間(52)の周りに潤滑剤を排出するための排出用空間(53)とを有する下貫通孔(51)が穿設された下アンビル(50)とからなり、前記ノックアウトピン(20)の上死点位置における鍔部(22)よりも高い位置に前記上貫通孔(31)に開口する潤滑剤排出用の上通路(32)が設けられ、上死点位置における前記鍔部(22)の下面を超えない位置に前記上貫通孔(41)に開口して上通路(32)に連通する潤滑剤排出用の下通路(43)が設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造用ダイスの下側に配設され、前記ダイスの成形用凹部の底部に設けられた孔部に連通する貫通孔が穿設されたアンビルと、このアンビルの貫通孔に挿入され、上下方向にスライドしてダイス内の成形品を突き出すノックアウトピンとを備えたノックアウト装置において、
前記ノックアウトピンが軸部の長さ方向の中間部分に大径の鍔部を有し、
前記アンビルが、前記ノックアウトピンの鍔部に対応する上貫通孔が穿設された上アンビルと、前記ノックアウトピンの軸部に対応する挿入用空間とこの挿入用空間の周りに潤滑剤を排出するための排出用空間とを有する下貫通孔が穿設された下アンビルとからなり、
前記ノックアウトピンの上死点位置における鍔部よりも高い位置に、前記上アンビルの上貫通孔に開口してアンビルの側面方向に延びる潤滑剤排出用の上通路が設けられ、
前記ノックアウトピンの上死点位置における鍔部の下面を超えない位置に、前記上アンビルの上貫通孔に開口してアンビルの側面方向に延び、前記上通路に連通する潤滑剤排出用の下通路が設けられていることを特徴とする鍛造用ノックアウト装置。
【請求項2】
前記上通路が、前記上アンビルの上面に設けられ、ダイスの下面によって上部が閉じられる溝である請求項1に記載の鍛造用ノックアウト装置。
【請求項3】
前記下通路が、前記上アンビルと下アンビルとの当接面に臨んで設けられている請求項1または2に記載の鍛造用ノックアウト装置。
【請求項4】
前記下通路が、前記上アンビルの下面に設けられ、下アンビルの上面によって下部が閉じられる溝である請求項3に記載の鍛造用ノックアウト装置。
【請求項5】
前記上通路と下通路とが縦通路を介して連通接続されている請求項1〜4のいずれかに記載の鍛造用ノックアウト装置。
【請求項6】
前記縦通路が、前記アンビルの側面に設けられ、アンビルを装填するダイセットによって側部が閉じられる溝である請求項5に記載の鍛造用ノックアウト装置。
【請求項7】
前記上アンビルにおいて、前記上通路と下通路との間に、一端側が前記上貫通孔に開口し、他端側が前記上通路、下通路、縦通路のいずれかに連通する潤滑剤排出用の中通路が設けられている請求項1〜6のいずれかに記載の鍛造用ノックアウト装置。
【請求項8】
前記上アンビルが、高さ方向の中間部において上側の第1アンビルと下側の第2アンビルとに分割され、かつ前記中通路が第1アンビルおよび第2アンビルのうちの少なくとも一方の当接面に設けられた溝である請求項7に記載の鍛造用ノックアウト装置。
【請求項9】
前記下アンビルの下貫通孔において、前記挿入用空間がノックアウトピンの軸部に対応する軸孔であり、前記排出用空間がこの軸孔の周面から外方凹状に設けられた1つ以上の溝部である請求項1〜8のいずれかに記載の鍛造用ノックアウト装置。
【請求項10】
成形用凹部の底部に孔部を有する鍛造用ダイスと、請求項1〜9のいずれかに記載された鍛造用ノックアウト装置とを備え、前記ダイスの下側に、前記ダイスの孔部と前記ノックアウト装置のアンビルの貫通孔とが連通するように配設されていることを特徴とする鍛造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、鍛造成形品をダイスから排出させるための鍛造用ノックアウト装置、およびこのノックアウト装置を組み込んだ鍛造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鍛造においては、成形品とダイスとの焼付と防止するためにダイスの成形面に潤滑剤を塗布する。このため、鍛造を繰り返し行うと、ダイスの成形空間底部に潤滑剤と成形時の素材の削れカスが溜まってくる。特に、エンジンピストンのような部材のスカート部やピンボス部を前方押出で成形する場合は、深い先細りの凹状の成形空間を有するダイスを用いるので、凹部の底に潤滑剤と素材の削れカスが溜まり易くなる。
【0003】
一方、前記ダイスで鍛造成形品をダイスから排出するには、ダイスの下側に配置したノックアウト装置によって行われる。
【0004】
ノックアウト装置は、前記ダイスの孔部に連通する貫通孔が穿設されたアンビルと、このアンビルの貫通孔に挿入され、上下方向にスライドしてダイス内の成形品を突き出すノックアウトピンとを備えているものが一般的である(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平11−156475号公報
【特許文献2】特開平11−77218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したノックアウト装置においては、繰り返し成形を行うと、ダイスの孔部とノックアウトピンとの間のクリアランス通じてダイスの底部に溜まった潤滑剤や削れカスがアンビルの貫通孔内に入り込み、ノックアウトピンの昇降機構に付着する。昇降機構に付着した潤滑剤等はノックアウトピンのスムーズな動作を妨げる原因となる。高温のダイス内では粘度の低い潤滑剤も、温度の低い昇降機構に流れ込むと粘度が高まって半固形化するため、ますます昇降機構の動作を妨げることとなる。ついにはノックアウト装置の保守と掃除を行うために鍛造装置の連続運転を止めることが必要となり、生産性低下の原因となっている。運転を止めて分解掃除をすると、再びダイスを所定温度に昇温させるまでの段取り時間が必要となり、さらに生産性を低下させることになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、鍛造用ダイスからアンビルに流れ込む潤滑剤をノックアウトピンのまわりから排出し、長期連続運転を可能にする鍛造用ノックアウト装置の提供を目的とする。
【0007】
即ち、本発明の鍛造用ノックアウト装置は下記[1]〜[9]に記載の構成を有する。
【0008】
[1] 鍛造用ダイスの下側に配設され、前記ダイスの成形用凹部の底部に設けられた孔部に連通する貫通孔が穿設されたアンビルと、このアンビルの貫通孔に挿入され、上下方向にスライドしてダイス内の成形品を突き出すノックアウトピンとを備えたノックアウト装置において、
前記ノックアウトピンが軸部の長さ方向の中間部分に大径の鍔部を有し、
前記アンビルが、前記ノックアウトピンの鍔部に対応する上貫通孔が穿設された上アンビルと、前記ノックアウトピンの軸部に対応する挿入用空間とこの挿入用空間の周りに潤滑剤を排出するための排出用空間とを有する下貫通孔が穿設された下アンビルとからなり、
前記ノックアウトピンの上死点位置における前記ノックアウトピンの鍔部よりも高い位置に、前記上アンビルの上貫通孔に開口してアンビルの側面方向に延びる潤滑剤排出用の上通路が設けられ、
前記ノックアウトピンの上死点位置における前記ノックアウトピンの鍔部の下面を超えない位置に、前記上アンビルの上貫通孔に開口してアンビルの側面方向に延び、前記上通路に連通する潤滑剤排出用の下通路が設けられていることを特徴とする鍛造用ノックアウト装置。
【0009】
[2] 前記上通路が、前記上アンビルの上面に設けられ、ダイスの下面によって上部が閉じられる溝である前項1に記載の鍛造用ノックアウト装置。
【0010】
[3] 前記下通路が、前記上アンビルと下アンビルとの当接面に臨んで設けられている前項1または2に記載の鍛造用ノックアウト装置。
【0011】
[4] 前記下通路が、前記上アンビルの下面に設けられ、下アンビルの上面によって下部が閉じられる溝である前項3に記載の鍛造用ノックアウト装置。
【0012】
[5] 前記上通路と下通路とが縦通路を介して連通接続されている前項1〜4のいずれかに記載の鍛造用ノックアウト装置。
【0013】
[6] 前記縦通路が、前記アンビルの側面に設けられ、アンビルを装填するダイセットによって側部が閉じられる溝である前項5に記載の鍛造用ノックアウト装置。
【0014】
[7] 前記上アンビルにおいて、前記上通路と下通路との間に、一端側が前記上貫通孔に開口し、他端側が前記上通路、下通路、縦通路のいずれかに連通する潤滑剤排出用の中通路が設けられている前項1〜6のいずれかに記載の鍛造用ノックアウト装置。
【0015】
[8] 前記上アンビルが、高さ方向の中間部において上側の第1アンビルと下側の第2アンビルとに分割され、かつ前記中通路が第1アンビルおよび第2アンビルのうちの少なくとも一方の当接面に設けられた溝である前項7に記載の鍛造用ノックアウト装置。
【0016】
[9] 前記下アンビルの下貫通孔において、前記挿入用空間がノックアウトピンの軸部に対応する軸孔であり、前記排出用空間がこの軸孔の周面から外方凹状に設けられた1つ以上の溝部である前項1〜8のいずれかに記載の鍛造用ノックアウト装置。
【0017】
また、本発明の鍛造装置は下記[10]に記載の構成を有する。
【0018】
[10] 成形用凹部の底部に孔部を有する鍛造用ダイスと、前項1〜9のいずれかに記載された鍛造用ノックアウト装置とを備え、前記ダイスの下側に、前記ダイスの孔部と前記ノックアウト装置のアンビルの貫通孔とが連通するように配設されていることを特徴とする鍛造装置。
【発明の効果】
【0019】
上記[1]に記載の鍛造用ノックアウト装置によれば、ノックアウトピンの下降時にダイスの孔部から上アンビルの上貫通孔の流入して溜まった潤滑剤は、ノックアウトピンの上昇時に上ノックピンの鍔部によって上通路に排出され、さらに下通路に送り出される。そして、下通路から上貫通孔に送り出された潤滑剤はノックアウトピンの下降時に上ノックピンの鍔部によって下アンビルの下貫通孔内に送り出され、装置外に排出される。このため、ノックアウトピンの周りに溜まる潤滑剤は一定量を超えることなく順次送り出され、過剰に溜まった潤滑剤がノックアウトピンの昇降動作を妨げることがない。ひいては、ノックアウト装置を長時間連続運転することができる。
【0020】
上記[2]〜[4]に記載の各鍛造用ノックアウト装置によれば、アンビルの露出部分に排出用通路が形成されるので、アンビルの製作およびメンテナンスが容易である。
【0021】
上記[5]に記載の鍛造用ノックアウト装置によれば、ノックアウトピンの昇降動作に関係しない部分で潤滑剤の貯留量を増やすことができる。
【0022】
上記[6]に記載の鍛造用ノックアウト装置によれば、アンビルの露出部分に排出用通路が形成されるので、アンビルの製作およびメンテナンスが容易である。
【0023】
上記[7]に記載の鍛造用ノックアウト装置によれば、ノックアウトピンの昇降動作に関係しない部分で潤滑剤の貯留量を増やすことができる。
【0024】
上記[8]に記載の鍛造用ノックアウト装置によれば、アンビルの露出部分に中通路が形成されるので、アンビルの製作およびメンテナンスが容易である。
【0025】
上記[9]に記載の鍛造用ノックアウト装置によれば、下アンビルの下貫通孔において、軸孔によって下ノックアウトピンのガイド機能を確保しつつ、溝部によって潤滑剤の排出用空間を確保することができる。
【0026】
上記[10]に記載の鍛造装置によれば、ダイスの孔部からノックアウト装置の上アンビルの上貫通孔に流入した潤滑剤が、ノックアウトピンの昇降動作によって順次排出用通路に送り出されてノックアウト装置外に排出される。このため、ノックアウトピンの周りに溜まる潤滑剤は一定量を超えることがなく、過剰に溜まった潤滑剤がノックアウトピンの昇降動作を妨げることがない。また、潤滑剤は鍛造工程のノックアウトピンの昇降動作で排出されるので、潤滑剤排出のための追加動作や時間を必要としない。従って、鍛造装置の長時間連続運転が可能であり生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1および図2に、本発明にかかる鍛造用ノックアウト装置およびこのノックアウト装置を組み込んだ鍛造装置の一実施形態を示す。図1はノックアウト装置(1)の分解斜視図である。図2は図1のノックアウト装置(1)を組み込んだ鍛造装置(2)であり、図1のA−A線から見た断面図である。
【0028】
ノックアウト装置(1)は、略円柱形のアンビル(10)とノックアウトピン(20)とにより構成されている。
【0029】
前記ノックアウトピン(20)は、小径の軸部(21)の下端に大径の鍔部(22)を有する上ノックアウトピン(23)と、この上ノックアウトピン(23)の軸部(21)と同径の下ノックアウトピン(24)とからなる。上下のノックアウトピン(23)(24)は上下方向に直列に配置され、下ノックアウトピン(24)の上端面で上ノックアウトピン(23)の鍔部(22)を突き上げるものとなされている。また、前記上ノックアウトピン(23)の軸部(21)はつる巻きばね(25)を緩挿している。
【0030】
前記アンビル(10)は、上アンビル(11)と下アンビル(50)とからなり、さらに上アンビル(11)は高さ方向の中間部で上側の第1アンビル(30)と下側の第2アンビル(40)とに分割されている。
【0031】
前記第1アンビル(30)は、中央部に、上下方向に貫通する2つの円形の上貫通孔(31)(31)が穿設されている。前記上貫通孔(31)の直径は前記上ノックアウトピン(23)の鍔部(22)を挿入しうる大きさに形成されている。また、上面には前記上貫通孔(31)の上端部から側面に通じ、潤滑剤を排出するための横溝(32)が形成され、下面にも前記上貫通孔(31)の下端部から側面に通じ、潤滑剤を排出するための横溝(33)が形成されている。さらに、側面には、上下の横溝(32)(33)を連通する縦溝(34)が形成されている。(35)はダイス(60)との位置合わせを行うための位置決めピン(66)を嵌合させるための有底の孔であり、(36)は第2アンビル(40)との位置合わせを行うための位置決めピン(66)を嵌合させるための有底の孔である。
【0032】
前記第2アンビル(40)は、中央部に、前記第1アンビル(30)の上貫通孔(31)と同径で、、上下方向に貫通する2つの円形の上貫通孔(41)(41)が穿設されている。また、上面には前記上貫通孔(41)の上端部から側面に通じ、潤滑剤を排出するための横溝(42)が形成され、下面にも前記上貫通孔(41)の下端部から側面に通じ、潤滑剤を排出するための横溝(43)が形成されている。さらに、側面には、上下の横溝(42)(43)を連通する縦溝(44)が形成されている。(45)は第1アンビル(30)との位置合わせを行うための位置決めピン(66)を嵌合させるための有底の孔であり、(46)は下アンビル(50)との位置合わせを行うための位置決めピン(66)を嵌合させるための有底の孔である。
【0033】
前記下アンビル(50)は、中央部に、上下方向に貫通する2つの十字形の下貫通孔(51)(51)が穿設されている。前記貫通孔(51)は、前記下ノックアウトピン(24)が挿入される円形の軸孔(52)と、この軸孔(52)の周面に外方凹状に設けられ、潤滑剤の排出孔となる4つの溝部(53)とにより構成されている。前記軸孔(52)が下ノックアウトピン(24)の直径に昇降に必要なクリアランスを加えた直径に設定されているため、下ノックアウトピン(24)のガイド機能を損なうことなく、溝部(53)によって潤滑剤の排出用空間が確保されている。また、前記下貫通孔(51)の最大直径は前記上ノックアウトピン(23)の鍔部(22)の直径よりもやや小さく設定され、貫通孔(51)は鍔部(22)で閉塞されるものとなされている。(55)は前記第2アンビル(40)との位置合わせを行うための位置決めピン(66)を嵌合させるための有底の孔である。
【0034】
、前記アンビル(10)は、上アンビル(11)の第1アンビル(30)および第2アンビル(40)、下アンビル(50)を、それぞれの貫通孔(31)(41)(51)が連通し、かつ第1アンビル(30)の縦溝(34)と第2アンビル(40)の縦溝(44)が連通するように組付けられる。この組み付け状態において、前記第1アンビル(30)の下面の横溝(33)と第2アンビル(40)の上面の横溝(42)とが合わさり、これらの当接面にトンネル状の通路が形成される。この通路は、本発明における中通路に対応するものである。また、第2アンビル(40)の下面の横溝(43)は下アンビル(50)の上面によって閉じられてトンネル状の通路となる。この通路は、本発明における下通路に対応するものである。
【0035】
図2において、(60)は鍛造品を成形するためのダイスであり、上面に成形用凹部(61)が設けられている。この成形用凹部(61)の底部には、前記アンビル(10)の上貫通孔(31)(41)(51)に連通し、上ノックアウトピン(23)の軸部(21)が挿入される孔部(62)が穿設されている。前記孔部(62)は、成形用凹部(61)の底面から少し下がった位置から下方部分で僅かに径が大きくなり、さらに下端部では前記第1アンビル(30)の上貫通孔(31)と同径に拡径されてばね収容凹部(63)が形成されている。鍛造は、前記ダイス(60)の成形用凹部(61)内に素材を装填し、図示されない上型を下降させることにより行われる。
【0036】
図2に示すように、前記アンビル(10)は、ダイス(60)の下側にアンビル(10)の貫通孔(31)(41)(51)と孔部(62)とが連通するように組み付けられるとともに、リング状のダイセット(64)内に装填される。この組付け状態において、第1アンビル(30)の上面の横溝(32)の上部はダイス(60)の底面によって閉じられ、トンネル状の通路が形成される。この通路は、本発明における上通路に対応する。また縦溝(34)(44)の側部はダイセット(64)の内周面によって閉じられてトンネル状の通路が形成される。この縦方向の通路は本発明における縦通路に対応する。
【0037】
前記ノックアウト装置(1)において、2本のノックアウトピン(20)(20)は図外のプレス装置のクランク機構によって同時に上下方向にスライド駆動される。しかしここでは、説明の便宜上、図2において、右側のノックアウトピンでクランク機構の上死点位置にある状態を示すとともに、左側のノックアウトピンで下死点位置にある状態を示し、以下にノックアウト装置(1)の動作を説明する。
【0038】
クランク機構のプレス力により上ノックアウトピン(23)が下ノックアウトピン(24)に突き上げられると、つる巻きばね(25)がダイス(60)のばね収容凹部(63)の上面に当接して押し縮められ、上死点位置まで上昇する。そして、上ノックアウトピン(23)の上部がダイス(61)の孔部(62)から突出し、成形品(W)を突き出す。一方、クランクを下げると、ノックアウトピン(20)の自重に加えてつる巻ばね(25)の復元力で付勢されて降下し、下死点位置において上ノックアウトピン(23)は鍔部(22)の下面が下アンビル(50)の上面に当接して下貫通孔(51)の上部を閉じる。下ノックアウトピン(24)は上ノックアウトピン(23)から離れて、さらに下方まで下降する。鍛造中、ノックアウトピン(20)はこの下死点位置にある。
【0039】
上述したノックアウト装置(1)を組み込んだ鍛造装置(2)において、ダイス(60)の成形用凹部(61)に塗布される潤滑剤の流れについて、図3A〜図3Eを参照しつつ説明する。なお、これらの図において、説明の便宜上、上アンビル(11)の第1アンビル(30)の横溝(32)によって形成される通路を上通路(70)、第1アンビル(30)の横溝(33)と第2アンビル(40)の横溝(42)とによって形成される通路を中通路(71)、第2アンビル(40)の横溝(43)によって形成される通路を下通路(72)、第1アンビル(30)および第2アンビル(40)の縦溝(34)(44)によって形成される通路を縦通路(73)として、新たに符号を付して説明する。また、つる巻きばね(25)、ダイセット(64)、位置決めピン(66)、各貫通孔(31)(41)(51)および各通路(70)(71)(72)(73)における各部の境界線の図示も省略している。
【0040】
(1)図3A
鍛造と成形品(W)の突き出しを行うと、ノックアウトピン(20)を下降させた時にダイス(60)の孔部(62)と上ノックアウトピン(23)の軸部(21)との間の僅かなクリアランスから潤滑剤(削れカスを含む)(L)が上貫通孔(31)(41)内に流入する。そして、ノックアウトピン(20)の昇降を繰り返して行うと、上貫通孔(31)(41)内に溜まる潤滑剤(L)の量が増えてくる。
【0041】
(2)図3B
上貫通孔(31)(41)内に潤滑剤が溜まった状態でノックアウトピン(20)が上昇すると、鍔部(22)の上面で潤滑剤(L)が押し上げられて、上通路(70)および中通路(71)に排出される。このとき、ダイス(60)の孔部(62)と上ノックアウトピン(23)の軸部(21)との間のクリアランスに比べて上通路(70)および中通路(71)の直径は十分に大きいため、潤滑剤(L)はダイス(60)内に逆流することなく、上通路(70)および中通路(71)に排出される。そして、さらに昇降を繰り返して上通路(70)および中通路(71)が潤滑剤(L)で満たされると、潤滑剤(L)は縦通路(73)に排出され、縦通路(73)から下通路(72)に流入する。
【0042】
(3)図3C
上記(2)の上通路(70)、中通路(71)、縦通路(73)、下通路(72)が潤滑油(L)で満たされた状態でノックアウトピン(20)が下降すると、鍔部(22)よりも上に空間ができるのでダイス(60)から潤滑剤(L1)が流入してくる。一方、下通路(72)内の潤滑剤(L2)は鍔部(22)の下降によるエアの流動によって下アンビル(50)の下貫通孔(51)の溝部(52)に排出されるが、ダイス(60)からの流入量に比べると僅かな量である。ノックアウトピン(20)が下降すると鍔部(22)の上に空間ができるのでダイス(60)から潤滑剤(L)が流入し易くなり、かつダイス(60)の熱により潤滑剤(L)の粘度が低く流入し易くなっている一方、下通路(72)付近では潤滑剤(L)の温度低下により粘度が高くなって排出されにくくなるためである。
【0043】
(4)図3D
さらに昇降を繰り返していると、さらに各通路(70)(71)(72)(73)内および上貫通孔(31)(41)内に潤滑剤(L)が溜まっていき、粘度の高くなった潤滑剤(L)が下貫通孔(51)の溝部(52)を塞ぐように下ノックアウトピン(24)の周りにも溜まってくる。この状態でノックアウトピン(20)が下降し、下死点近くに下がると鍔部(22)が潤滑剤(L)を押して、溝部(52)から絞り出すように排出される。
【0044】
(5)図3E
上記(4)のノックアウトピン(20)の下降の途中から下ノックアウトピン(24)は鍔部(22)から離れてさらに下がって軸孔(51)部分に空間が形成されるので、さらに潤滑剤(L)の排出が促進される。図3Eは下死点位置における状態を示している。以後は、ノックアウトピン(20)の上昇時に、上通路(70)、中通路(71)に排出された潤滑剤(L)が縦通路(73)から下通路(72)に順次送り出され、上記(4)(5)を繰り返して潤滑剤(L)が下貫通孔(51)から排出される。下貫通孔(51)から排出された潤滑剤(L)は、下アンビル(50)の下方に配置したトレイ等で受けて廃棄される。
【0045】
以上のように、上記ノックアウト装置(1)では潤滑剤が順次排出用通路および装置外に排出されていき、ノックアウトピン周りに滞留する潤滑剤量が一定量を超えない。このため、過剰に滞留した潤滑剤がノックアウト機構の動作を妨げることがなく、長時間連続して鍛造を行うことができ、生産性を向上させることができる。特に、潤滑剤を多量に使わざるを得ない鍛造や粘度の高い潤滑剤を使わざるを得ない鍛造において効果を発揮する。前者は、ダイス温度が高温、例えば300℃以上で水溶性潤滑剤をはじいてしまう場合、油性潤滑剤と水溶性を併用する場合、成形品の形状が複雑で成形が困難である場合、成形品の形状が複雑かつ縦方向に長い場合、ダイスと成形品に焼付が生じて形状が出ない場合等である。後者は、成形品の形状が複雑で成形が困難である場合、成形品の形状が複雑かつ縦方向に長い場合、素材の伸びが悪い難加工材を使用している場合等である。
【0046】
また、潤滑剤は鍛造工程のノックアウトピンの昇降動作で排出されるので、潤滑剤排出のための追加動作や時間を必要としない。
【0047】
本発明のノックアウト装置において、潤滑剤排出用の各通路の断面積は限定されない。しかし、ノックアウトピンの上昇時にダイス側に潤滑剤を逆流させないように、ダイスの孔部とノックアウトピンとのクリアランスよりも大きくすることが必要となる。溝の直径をダイスの孔部とノックアウトピンの直径差の10倍以上となるように設定することが好ましい、直径差が10倍になると断面積が100倍となり、潤滑剤の逆流を確実に防止して、潤滑剤を排出用通路に導くことができる。例えば、前記クリアランスを0.5mm、通路直径を5mm以上に設定すれば良い。また、ダイスの孔部とノックアウトピンとのクリアランスが小さくなるほど潤滑剤は逆流しにくくなるが、クリアランスを「0」とする設計はノックアウトピンを配設しづらくなるので現実的ではない。従って、前記クリアランスは0.03mm以上に設定することが好ましい。
【0048】
また、前記上アンビルの上貫通孔と上ノックアウトピンの鍔部とのクリアランスも小さくなるほどピストン作用が大きくなり、潤滑剤を排出用の通路あるいは下アンビルの下貫通孔から排出させる力が強くなるが、クリアランスを「0」とする設計は現実的ではなく、0.03mm以上に設定することが好ましい。なお、アンビルにおけるクリアランスは多少大きくても相応のピストン作用が得られ、潤滑剤を排出することができる。
【0049】
本発明の鍛造用ノックアウト装置は上記実施形態に限定されない。このため、ダイスの孔部よりも大きいクリアランスが許容される。
【0050】
潤滑剤排出用の上通路は、上死点位置におけるノックアウトピンの鍔部よりも高い位置にあればノックアウトピンの上昇時に上貫通孔内の潤滑剤を円滑に流入させることができる。従って、上通路は、上記実施形態のように上アンビルの上面に溝を設ける他に、ノックアウトピンを挿入する上貫通孔の周面から上アンビルの側面に貫通する孔であっても良い。また、上アンビルには溝または孔を設けることなく、ダイスの下面に溝を設けて上アンビルの上面で閉じるようにしても良い。さらには、上アンビルとダイスの両方に溝を設けて、これらが合わさって1本の通路が形成されても良い。
【0051】
ただし、露出部分の加工となり加工およびメンテナンスが容易である点で、上アンビルに貫通する孔を穿設するよりも、上アンビルまたはダイスに溝を設けて組付けによって溝を閉じる方法を推奨できる。また、通路の断面積を大きくして潤滑剤の貯留量を増大できる点では上アンビルとダイスの両方に溝を設けることを推奨できる。粘度の高い潤滑剤ほどつまり易いため、このような潤滑剤を用いる鍛造では、装置内である程度の量を貯留できる方が都合が良い。排出用通路内に貯留された潤滑剤はノックアウトピンの昇降動作に関係がなく昇降動作を妨げないからである。後述する下通路、縦通路および中通路においても同様である。また、一方の加工で済む点ではいずれか一方に溝を設けることを推奨できる。
【0052】
一方、下通路は、前記ノックアウトピンの上死点位置における前記上ノックアウトピンの鍔部の下面を超えない位置にあればノックアウトピンの下降時に下通路から上貫通孔に流入した潤滑剤を下アンビルの下貫通孔に排出することができる。従って、下通路は、上記実施形態のように上アンビルの下面に溝を設ける他に、ノックアウトピンを挿入する上貫通孔の周面から上アンビルの側面に貫通する孔であっても良い。しかしながら、潤滑剤を下通路から下アンビルに効率良く排出させるには、最も低い位置となる上アンビルと下アンビルの接合面に臨む位置に下通路を設けることが好ましいし、孔を穿設するよりも露出面に溝を設ける方が加工およびメンテナンスが容易である。また、上アンビルには孔を設けることなく、下アンビルの上面に溝を設けて上アンビルの下面で閉じるようにしても良い。さらには、上アンビルと下アンビルの両方に溝を設けて、これらが合わさって1本の通路が形成されても良い。
【0053】
なお、前記上通路と下通路とが縦通路を介さず直接連通接続されていても良い。例えば前記上通路または下通路、あるいは両方の通路をアンビル内を貫く傾斜孔にすれば縦通路を介さずに連通させることができる。ただし、縦通路を設けることによってノックアウトピンの昇降動作に関係しない部分に溜める潤滑剤量を増やすことができ、かつ上通路および下通路の両方をアンビルの露出面に設けることが可能となる。
【0054】
縦通路も同様に、上通路と下通路を連通させる孔、ダイセットに設けた溝、上アンビルおよびダイセットに設けた溝の合体のいずれであっても良い。加工とメンテナンスの容易性により、露出部分に設けた溝を推奨できる点も同様である。
【0055】
中通路は任意に設けることができ、中通路を有さない上アンビルも本発明に含まれる。中通路を設けることにより、排出用通路内の潤滑剤の貯留量を増大させることができる。上記実施形態のように上アンビルを上下方向で分割する場合は、露出面での加工となる第1アンビルと第2アンビルの当接面に溝を設ければ加工およびメンテナンスが容易である。また、上アンビルの分割により重量も分割されるのでハンドリング性も良くなる。上アンビルを分割しない場合は貫通孔を設ければ良い。また、前記縦通路を有さない場合は、中通路の他端側を上通路または下通路に直接連通させれば良い。
【0056】
また、上記各排出用通路は潤滑剤の送り出し方向に沿って断面積を拡大させることが好ましい。即ち、上通路および中通路では上貫通孔側から縦通路側に向かって断面積が拡大し、下通路では縦通路側から上貫通孔側に向かって断面積が拡大していることが好ましく、縦通路では下方に向かって断面積が拡大していることが好ましい。このような構造により、潤滑剤の逆流を防止することができる。また、上通路および中通路ではアンビルの側面側が低くなるように傾斜させることも好ましく、下通路は上貫通孔側が低くなるように傾斜させることも好ましい。上通路および中通路であれば、貫通孔でなくとも上記実施形態のような横溝の溝底を傾斜させれば通路を傾斜させることができる。
【0057】
また、上アンビルにおいて、一つの上貫通孔に対する排出用通路の数は限定されない。上記実施形態においては、一つの貫通孔から各1本の上通路、中通路、下通路および縦通路を設けた例を示したが、2本以上の通路を設けることもできる。但し、通路数を増やすと相対的にアンビル強度が低下するので、必要な強度を確保できる範囲で任意に設定すれば良い。貫通孔数(ノックアウトピン数)も成形品の形状に応じて任意数を設けることができる。また上貫通孔の断面形状も限定されず、円形、角形等の任意形状を採用することができる。
【0058】
一方、下アンビルにおける下貫通孔には、下ノックアウトピンを挿入する空間に加えて潤滑剤を装置外に排出させるための空間が必要となる。下ノックアウトピンの昇降時のガイド機能を損なうことなく、排出用空間を十分に確保するためには、上記実施形態のように、下ノックアウトピンに対応する軸孔に外方に凹む溝部を1つ以上設けたもの、即ちピン直径相当の挿入用空間の周方向における一部分に排出用空間を設けることが好ましい。このとき、溝部の数と開口幅は任意に設定することができる。ただし、本発明は下貫通孔の形状を上記のものに限定するものではなく、挿入用空間の全周に排出用空間が形成されたものであっても良い。例えば、断面円形の下ノックアウトピンに対して、十分なクリアランスを加えることで排出用空間を確保した断面円形の下貫通孔も本発明に含まれる。
【0059】
また、ノックアウトピンは上下に分割されているものの他、1本の軸部の中間部分に鍔部が形成されていても良い。ノックアウトピンを上下分割すれば下死点位置で下ノックアウトピンを分離できるので、下貫通孔内の空間が拡大されて潤滑剤を送り出しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明にかかる鍛造用ノックアウト装置によれば、ダイスから侵入してくる潤滑剤は順次装置外に送り出され排出される。このため、潤滑剤がノックアウトピンの昇降機構に付着して昇降動作を妨げることを防止でき、鍛造装置を長時間連続的に運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明にかかる鍛造用ノックアウト装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1のノックアウト装置を組み込んだ鍛造装置である。
【図3A】ノックアウト装置において、運転初期の状態を示す断面図である。
【図3B】ノックアウト装置の上貫通孔内に潤滑剤が溜まった状態において、ノックアウトピンの上昇途中の状態を示す断面図である。
【図3C】ノックアウト装置の上貫通孔内に潤滑剤が溜まった状態において、ノックアウトピンの下降途中の状態を示す断面図である。
【図3D】ノックアウト装置の排出用通路内に潤滑剤が溜まった状態において、ノックアウトピンが下死点近くまで下降している状態を示す断面図である。
【図3E】ノックアウト装置の排出用通路内に潤滑剤が溜まった状態において、ノックアウトピンが下死点まで下降した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1…ノックアウト装置(鍛造用ノックアウト装置)
2…鍛造装置
10…アンビル
11…上アンビル
20…ノックアウトピン
21…軸部
22…鍔部
23…上ノックアウトピン
24…下ノックアウトピン
30…第1アンビル(上アンビル)
31…貫通孔(上貫通孔)
32…横溝(溝、上通路)
33…横溝(溝、中通路)
34…縦溝(縦通路)
40…第2アンビル(上アンビル)
41…貫通孔(上貫通孔)
42…横溝(溝、中通路)
43…横溝(溝、下通路)
44…縦溝(縦通路)
50…下アンビル
51…下貫通孔
52…軸孔(挿入用空間)
53…溝部(排出用空間)
60…ダイス
61…成形用凹部
62…孔部
64…ダイセット
70…上通路
71…中通路
72…下通路
73…縦通路
W…成形品
L…潤滑剤
【出願人】 【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
【出願日】 平成18年12月22日(2006.12.22)
【代理人】 【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義

【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市

【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁


【公開番号】 特開2008−155237(P2008−155237A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2006−345642(P2006−345642)