トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 塑性加工用潤滑方法および塑性加工方法ならびに加工材
【発明者】 【氏名】宇都宮 裕

【氏名】高平 信幸

【氏名】田中 敏宏

【氏名】左海 哲夫

【氏名】宮本 丈二

【要約】 【課題】従来の化成処理を用いた冷間塑性加工用潤滑方法における工程の多さや廃液処理に関するコストや労力の問題を解決すると共に、広い範囲で適用できる塑性加工用潤滑方法を提供する。また、その塑性加工用潤滑方法を用いた塑性加工方法を提供し、さらに、その塑性加工方法を用いた加工材を提供する。

【解決手段】被加工材の表面に、被加工材と同一の素材より成る多孔質層を形成した後に、得られた多孔質層に潤滑剤を担持させることを特徴とする塑性加工用潤滑方法。前記塑性加工が、冷間塑性加工であって、前記多孔質層が、被加工材の表面を酸化処理した後、還元処理して形成されていることを特徴とする塑性加工用潤滑方法。前記塑性加工用潤滑方法を用いる塑性加工方法。さらに、その塑性加工方法により製造される加工材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材の表面に、被加工材と同一の素材より成る多孔質層を形成した後に、得られた多孔質層に潤滑剤を担持させることを特徴とする塑性加工用潤滑方法。
【請求項2】
前記被加工材が鉄鋼材料であることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工用潤滑方法。
【請求項3】
前記塑性加工が、冷間塑性加工であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塑性加工用潤滑方法。
【請求項4】
前記多孔質層が、被加工材の表面を酸化処理した後、還元処理して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の塑性加工用潤滑方法。
【請求項5】
熱間塑性加工と冷間塑性加工とが連続的に行われる塑性加工における塑性加工用潤滑方法において、前記熱間塑性加工と前記冷間塑性加工との間で、前記還元処理を行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の塑性加工用潤滑方法。
【請求項6】
前記多孔質層における平均孔径が、10nm〜10μmであることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の塑性加工用潤滑方法。
【請求項7】
前記多孔質層の厚さが、50nm〜50μmであることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の塑性加工用潤滑方法。
【請求項8】
前記潤滑剤の40℃における動粘度が、2〜200cStであることを特徴とする請求項3ないし請求項7のいずれかに記載の塑性加工用潤滑方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の塑性加工用潤滑方法を用いることを特徴とする塑性加工方法。
【請求項10】
請求項9に記載の塑性加工方法により製造されたことを特徴とする加工材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、塑性加工用潤滑方法に関する。さらに、それを用いた塑性加工方法および加工材に関する。
【背景技術】
【0002】
塑性加工における潤滑処理は、加工荷重の低減、良好な表面性状、加工欠陥の抑制などの点で重要である。特に、冷間塑性加工においては、加工荷重が大きくなるため、より硬質で高価な加工工具を必要とするが、加工荷重が大きいために加工工具の寿命が短いこと、さらに、被加工材の変形能が低いことより、被加工材表面に良好な潤滑性を付与することが特に重要であり、潤滑剤あるいは潤滑方法に対する要求は大きい。
【0003】
このような要求を満足させる方法として、従来、燐酸塩皮膜法が自動車部品を始め多くの鉄鋼材料の冷間鍛造や冷間引き抜き等の冷間塑性加工に用いられていた。
【0004】
燐酸塩皮膜法では、始めに被加工材を燐酸塩溶液に浸漬することによって、被加工材の表面に、下地金属と強固に密着した多孔質構造の燐酸塩皮膜を形成させ、次いで、燐酸塩皮膜上に、良好な潤滑性を有する金属石鹸皮膜を形成させている。
【0005】
しかしながら、この燐酸塩皮膜法では、アルカリ脱脂、水洗、酸洗、水洗、中和、水洗、燐酸塩皮膜処理、水洗、中和、水洗、金属石鹸処理と、多くの工程を要するため、生産性を高めることができない。また、使用する薬剤が高価であり、さらに廃液処理に多くのコストと労力を必要とするという問題がある。
【0006】
一方、燐酸塩皮膜法のような化成処理によらずに潤滑性を高めるために、潤滑油剤の開発も進められてきたが、その潤滑性能には限界があり、適用できる範囲が限られているのが現状である(非特許文献1)。
【非特許文献1】小松崎茂樹:塑性と加工、34−393(1993)、1122
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の化成処理を用いた冷間塑性加工用潤滑方法における工程の多さや廃液処理に関するコストや労力の問題を解決すると共に、化成処理によらない方法における適用範囲の制限問題を解決する冷間塑性加工用潤滑方法を提供することを課題とする。また、その冷間塑性加工用潤滑方法を用いた冷間塑性加工方法、および、その冷間塑性加工方法により加工された加工材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、被加工材である金属材料の表面を単に酸化・還元することにより、被加工材の表面に多孔質層を設け、さらにその多孔質層に潤滑剤を担持させることにより、冷間塑性加工時に、低摩擦状態を維持できることを見出した。さらに、本発明者は、検討の結果、被加工材の表面に、被加工材と同一の素材より成る多孔質層を形成した後に、得られた多孔質層に潤滑剤を担持させた場合、冷間塑性加工に限らず、熱間塑性加工においても、低摩擦状態を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、各請求項の発明について説明する。
【0009】
請求項1に記載の発明は、
被加工材の表面に、被加工材と同一の素材より成る多孔質層を形成した後に、得られた
多孔質層に潤滑剤を担持させることを特徴とする塑性加工用潤滑方法である。
【0010】
本発明においては、潤滑剤が多孔質層内に担持されるため、塑性加工中であっても、被加工材と加工工具との間の摩擦を低く維持することができ、良好な潤滑性を維持することができる。
【0011】
このように潤滑性が良好であるため、化成処理によらない従来の方法のように、適用範囲の制限を受けることがなく、広い適用範囲にわたって、加工荷重の低減による加工工具の寿命の延長や加工品の表面性状の改善を図ることができる。
【0012】
また、本発明においては、多孔質層が同一の素材より形成されているため、被加工材の均質性をより保つことができる。なお、本発明に言う「被加工材と同一の素材より成る多孔質層」とは、形成された多孔質層が、基本的な構成材料において被加工材と同一の材料から成ることを示し、例えば、熱処理過程における表面の脱炭や窒化等、組成の変化があった場合も本発明に含まれる。
【0013】
本発明における多孔質層としては、塑性加工中、潤滑剤を担持することができればよく、その厚さや多孔度等は特に限定されないが、塑性加工の条件や潤滑剤の種類等との関係から、適宜好ましい範囲が選択される。
【0014】
本発明における潤滑剤は、特に限定されないが、求められる塑性加工の条件により適宜選択される。例えば、工具面圧が低い場合には、比較的粘性の低い潤滑剤も使用できるが、逆に工具面圧が高い場合には、粘性の高い潤滑剤を使用することが好ましい。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記の塑性加工用潤滑方法であって、
前記被加工材が鉄鋼材料であることを特徴とする特徴とする塑性加工用潤滑方法である。
【0016】
本発明は、前記被加工材が鉄鋼材料である場合、特に大きな効果を示す。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記の塑性加工用潤滑方法であって、
前記塑性加工が、冷間塑性加工であることを特徴とする塑性加工用潤滑方法である。
【0018】
本発明は、前記の塑性加工用潤滑方法が、塑性加工の内でも、特に冷間塑性加工の場合、特に大きい効果を示す。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記の塑性加工用潤滑方法であって、
前記多孔質層が、被加工材の表面を酸化処理した後、還元処理して形成されていることを特徴とする塑性加工用潤滑方法である。
【0020】
本発明においては、被加工材表面の多孔質層を、被加工材の表面を単に酸化・還元処理するのみで形成することができるため、従来の化成処理の場合のように多くの工程を必要とせず、生産性やコスト面で優れており、廃液処理に関するコストや労力の問題もない。
【0021】
本発明における酸化処理は、所定の温度の下、酸化性雰囲気中に、被加工材を保持することにより行われることが効率的で好ましい。酸化性雰囲気としては、コストの面より、大気雰囲気が好ましく用いられる。
【0022】
還元処理は、所定の温度の下、還元性雰囲気中に、被加工材を保持することにより行われる。還元性雰囲気としては、還元能が高く、処理時間が短いため、水素雰囲気が好ましく用いられる。また、水素とアルゴンの混合ガスや、一酸化炭素ガスを使用することもできる。
【0023】
このように、本発明における酸化・還元処理は、所定の温度下において、所定の雰囲気中に、被加工材を保持した状態だけでも行うことができるため、工程の簡略化を図ることができる。
【0024】
また、一般的に、被加工材である金属材料は、熱間加工を経て製造されているが、この熱間加工は酸化性雰囲気中で行われるため、被加工材の表面は、既に酸化処理が施された状態となっており、本発明のために追加的な酸化処理を行う必要がない。
【0025】
本発明における潤滑剤は、上述したように、特に限定されないが、一般的には、多孔質層への浸透が容易な市販のマシン油あるいはグリース等の液体潤滑剤が好ましく使用できる。また、前記液体潤滑剤に替えて、液体の状態で多孔質層に浸透し、その後、反応もしくは乾燥により固体として多孔質層内に留まることのできる固体潤滑剤を使用することもできる。このような固体潤滑剤の例としては、金属石鹸やテフロン(登録商標)などが挙げられる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、前記の塑性加工用潤滑方法であって、
熱間塑性加工と冷間塑性加工とが連続的に行われる塑性加工における塑性加工用潤滑方法において、前記熱間塑性加工と前記冷間塑性加工との間で、前記還元処理を行うことを特徴とする塑性加工用潤滑方法である。
【0027】
前記したように、一般的に、被加工材である金属材料は、熱間塑性加工を経て製造され、熱間塑性加工は酸化性雰囲気中で行われるため、被加工材の表面は、既に酸化処理が施された状態となっている。このため、線材加工等における塑性加工のように、熱間塑性加工から冷間塑性加工までの全行程が連続的に行われる場合には、熱間塑性加工と冷間塑性加工との間に還元性雰囲気の炉を設けるだけで、酸化処理、還元処理を連続的に行うことが可能となる。これにより、被加工材の表面に多孔質層を連続的に形成でき、引き続いて冷間塑性加工に進むことができるため、効率よく生産でき、生産性やコスト面において大きな効果をもたらすことができる。したがって、冷間引抜き加工に対して好ましく使用できる。
【0028】
請求項6に記載の発明は、前記の塑性加工用潤滑方法であって、
前記多孔質層における平均孔径が、10nm〜10μmであることを特徴とする塑性加工用潤滑方法である。
【0029】
多孔質層における平均孔径が、10nm以上である場合には、潤滑剤が多孔質層に浸透し易く、また10μm以下である場合には、加工製品の表面性状がより好ましい。
【0030】
多孔質層における平均孔径は、還元処理の温度、時間、もしくは還元性ガスの分圧を、調整することによって制御することができる。
【0031】
請求項7に記載の発明は、前記の塑性加工用潤滑方法であって、
前記多孔質層の厚さが、50nm〜50μmであることを特徴とする塑性加工用潤滑方法である。
【0032】
多孔質層の厚さが、50nm以上である場合には、潤滑能を発揮するのに十分な量の潤滑剤を担持させることができ、また50μm以下である場合には、加工製品の寸法精度への影響が少ない。
【0033】
多孔質層の厚さは、酸化処理の温度、時間、もしくは酸素ガスの分圧を、調整することによって制御することができる。
【0034】
請求項8に記載の発明は、前記の塑性加工用潤滑方法であって、
前記潤滑剤の40℃における動粘度が、2〜200cStであることを特徴とする塑性加工用潤滑方法である。
【0035】
潤滑剤の40℃における動粘度が、2cSt以上である場合には、潤滑剤は、容易にしみ出すことがなく、加工前および加工中を通して、多孔質層に担持することができ、また、200cSt以下である場合には、潤滑剤は、多孔質層中の気孔に、十分に浸透することができるため、2〜200cStであることが好ましい。
【0036】
請求項9に記載の発明は、
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の塑性加工用潤滑方法を用いることを特徴とする塑性加工方法である。
【0037】
本発明においては、有効な潤滑効果を得ることができるため、加工荷重の低減や加工品の表面性状の改善、加工欠陥の抑制を図ることができる。また、線材加工等における連続的な塑性加工のような場合には、熱間塑性加工と冷間塑性加工の間に還元性雰囲気の炉を設けるだけで、本発明を適用でき、熱間塑性加工から好適な冷間塑性加工へと連続処理することが可能となり、効率的に生産性の向上を図ることができる。
【0038】
請求項10に記載の発明は、
請求項9に記載の塑性加工方法により製造されたことを特徴とする加工材である。
【0039】
本発明は、請求項9に記載の発明を加工材の面から捉えたものである。
本発明における加工材は、適切な潤滑効果の下で製造されているため、表面性状が改善され、また加工欠陥が抑制されている。また加工材は,二次加工時に,あるいは摺動部品として使用すれば、高い潤滑性を有する加工材を提供することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、従来の化成処理の場合のように多くの工程を必要とせず、生産性やコスト面で優れており、廃液処理に関するコストや労力の問題が少ない塑性加工用潤滑方法を提供できる。また、適用範囲の制限を受けることがなく、広い適用範囲にわたって、加工荷重の低減による加工工具の寿命の延長や加工品の表面性状の改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための最良の形態につき、以下の実施例に基づき、説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
最初に、無潤滑の場合を参考例として、以下に述べる。
(参考例1)
(試験片の準備)
15%炭素鋼S15CK丸棒から、切削により、外径20mm、内径10mm、高さ5mmのリングを切り出し、リングの両端面を、#1500のエメリー紙で研磨した後、さらに脱脂して、リング状試験片を作製した。
【0043】
(多孔質層の形成)
作製したリング状試験片を、大気雰囲気の700℃の炉中で30分間保持して、酸化膜を形成させ、続いて、雰囲気を純水素に置換し(所要時間5分間)、さらに15分間保持した。この処理により、リング状試験片の表面下に、厚さ約10μmの多孔質層が形成された。
【0044】
(圧縮試験)
リング状試験片の潤滑性については、リング状試験片を軸方向に圧縮したときの内径の変化から潤滑性能を知ることができる。即ち、内径減少率が小さい(圧縮後の内径が大きい)ほど、均一変形に近く潤滑性が良いことを意味している。
【0045】
このため、リング状試験片を軸方向に圧縮し、圧縮後のリング状試験片の内径を測定し、その内径減少率(%)を求めた。また、軸方向の高さから圧縮率(%)を求めた。
【0046】
さらに、内径の変化を、「日本塑性加工学会冷間鍛造分科会温間鍛造研究班:塑性と加工、18−202(1997)、946」に示されたエネルギー法による校正曲線と比較することにより、摩擦係数を求めた。
【0047】
具体的には、多孔質層が形成されたリング状試験片を、材料試験機を用いて、速度0.5mm/minで、軸方向に約50%圧縮した。その際、潤滑剤を使用しなかった。得られた内径減少率、圧縮率、摩擦係数を、表1に示す。
【0048】
(参考例2)
参考例1における多孔質層の形成工程に換えて、700℃の純水素雰囲気のみに同時間保持した(即ち、表面が多孔質層となっていない)以外は、参考例1と同様にして、内径減少率、圧縮率、摩擦係数を求めた。結果を表1に示す。
【0049】
次に、潤滑剤を使用した場合の実施例および比較例を、以下に述べる。
(実施例1)
潤滑剤としてマシン油(出光興産(株)製、商品名:出光ダフニーメカニックオイル32、40℃における動粘度32cSt)を使用し、圧縮前にダイス鋼製の上下加工工具に薄く前記潤滑剤を塗布する以外は、参考例1と同様にして、内径減少率、圧縮率、摩擦係数を求めた。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例1)
実施例1における多孔質層の形成工程に換えて、700℃の純水素雰囲気のみに同時間保持した(即ち、表面が多孔質層となっていない)以外は、実施例1と同様にして、内径減少率、圧縮率、摩擦係数を求めた。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例2)
潤滑剤としてグリース(コスモ石油ルブリカンツ(株)製、商品名:コスモオートグリ−ス00、40℃における動粘度118cSt)を使用した以外は、実施例1と同様にして、内径減少率、圧縮率、摩擦係数を求めた。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例2)
実施例2における多孔質層の形成工程に換えて、700℃の純水素雰囲気のみに同時間保持した(即ち、表面が多孔質層となっていない)以外は、実施例2と同様にして、内径減少率、圧縮率、摩擦係数を求めた。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】


【0054】
表1に示すように、多孔質層を設けて潤滑剤を担持させた実施例1、および実施例2は、多孔質層を設けずに潤滑剤を塗布しただけの比較例1、および比較例2に比べ、内径減少率が小さく、摩擦係数も小さいことが分かる。即ち、実施例1および実施例2の方が、潤滑性が良好であることが分かる。また、潤滑剤を使用しない場合(参考例1、2)、多孔質層を形成すると、摩擦係数が却って悪化していることが分かる。
【0055】
また、グリースを潤滑剤として用いた実施例2においては、実施例1に比べ、多孔質層の効果が顕著に現れ、摩擦係数が0.21という低い値が達成されている。このことは、粘性が高い潤滑剤を用いた場合には、多孔質層による潤滑剤担持効果が顕著に現れ、潤滑効果を促進したと考えられる。
【0056】
次に、多孔質層を形成する条件を変えた場合の実施例および参考例を、以下に述べる。
(実施例3)
実施例2における多孔質層の形成工程に換えて,作製したリング状試験片を、大気雰囲気の1000℃の炉中で2分間保持して、酸化膜を形成させ、続いて、雰囲気を純水素に置換し(所要時間5分間)、さらに13分間保持した以外は、実施例2と同様にして、内径減少率、圧縮率、摩擦係数を求めた。結果を表2に示す。
【0057】
(参考例3)
潤滑剤を使用しなかった以外は、実施例3と同様にして、内径減少率、圧縮率、摩擦係数を求めた。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】


【0059】
表2に示すように、(1000℃×2分:大気)+(1000℃×13分:水素)の条件で多孔質層を形成した実施例3における摩擦係数は0.25であり、(700℃×30分:大気)+(700℃×15分:水素)の条件で多孔質層を形成した実施例2における摩擦係数0.21に近い値が得られている(潤滑剤は、ともにグリース)。これは、多孔質層を形成する際の処理温度の高い方が、短い時間で、所望する摩擦係数に対応する多孔質層が得られることを示している。
【0060】
また、参考例3より、多孔質層は形成するが潤滑剤を使用しない場合には、高い温度で酸化処理をした場合でも、摩擦係数が潤滑剤を使用した場合より高くなっていることが分かる。一方、参考例2と比較した場合、摩擦係数は参考例3の方が小さくなっており、酸化処理温度が摩擦係数に影響していることが窺える。
【出願人】 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
【出願日】 平成18年12月21日(2006.12.21)
【代理人】 【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司

【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美


【公開番号】 特開2008−155224(P2008−155224A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2006−344232(P2006−344232)