トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法、およびその評価装置
【発明者】 【氏名】筒井 英之

【要約】 【課題】実際の鍛造形態に近く、冷間から熱間までの幅広い温度範囲において、再現性の高い鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法および作業者の手間をかけずかつ安価に鍛造用金型材の耐久性を評価することができる。

【解決手段】長尺な角柱状ワーク1を間欠直線運動で送り出す工程と、該ワーク1が直線運動停止時にワーク1上方に上下進退自在に配置され、鍛造用潤滑剤が塗布された鍛造用金型材製パンチ3を上記ワーク1に押し込み窪みを形成する工程および該窪みに押し込まれた上記金型材製パンチ3を引き抜く工程とを有し、上記送り出す工程と上記窪みを形成および引き抜き工程との2工程が繰り返し行なわれ、上記窪みを形成する工程における押し込み荷重および上記引き抜き工程における引き抜き荷重の少なくとも1つの荷重を測定することにより潤滑剤の潤滑性評価および鍛造用金型材の材料評価をする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法および鍛造用金型材の材料評価方法において、長尺な角柱状ワークを間欠直線運動で送り出す工程と、前記ワークが直線運動停止時に前記ワーク上方に上下進退自在に配置され、鍛造用潤滑剤が塗布された鍛造用金型材製パンチを前記ワークに押し込み窪みを形成する工程および該窪みに押し込まれた前記金型材製パンチを引き抜く工程とを有し、前記送り出す工程と前記窪みを形成および引き抜き工程との2工程が繰り返し行なわれ、前記窪みを形成する工程における押し込み荷重および前記引き抜き工程における引き抜き荷重の少なくとも1つの荷重を測定することにより前記潤滑剤の潤滑性評価および鍛造用金型材の材料評価をすることを特徴とする鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
【請求項2】
前記窪みを形成する工程前に、前記ワークを鍛造温度に加熱することを特徴とする請求項1記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
【請求項3】
前記ワークを加熱する手段は、高周波誘導加熱炉または赤外線加熱炉であることを特徴とする請求項2記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
【請求項4】
前記鍛造用潤滑剤は、前記パンチの押し込み引き抜き工程後において、任意に設定された吹き付け量、吹き付け時間および吹き付けのタイミングにて前記パンチに吹き付けられることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
【請求項5】
前記鍛造用潤滑剤として水を用いて鍛造用金型材の材料評価を行なうことを特徴する請求項1ないし請求項4のいずれか一項載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
【請求項6】
前記鍛造用金型材製パンチは、先端部に埋め込まれた熱電対を有することを特徴する請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
【請求項7】
前記鍛造用金型材製パンチは、先端部がテーパ形状であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
【請求項8】
前記鍛造用金型材製パンチは、テーパ角が 50°以上 80°以下であることを特徴とする請求項7記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
【請求項9】
前記長尺な角柱状ワークは、前記窪みを形成する工程における窪み形成部位に潤滑皮膜処理を施したものであることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
【請求項10】
前記窪みを形成する工程において、前記ワークの送り出す方向の直角方向に前記角柱状ワークを拘束する手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
【請求項11】
鍛造用潤滑剤の潤滑性および鍛造用金型材の材料を評価する装置であって、長尺な角柱状ワークを間欠直線運動で送り出す手段と、前記ワークが直線運動停止時に前記ワーク上方に上下進退自在に配置され、鍛造用潤滑剤が塗布された鍛造用金型材製パンチを前記ワークに押し込み窪みを形成する手段と、該窪みより押し込まれた前記金型材製パンチを引き抜く手段と、前記ワークの送り出しおよび前記窪みの形成が繰り返し行なわれる手段とを備えることを特徴とする鍛造用潤滑剤および金型材の評価装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法およびその評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造加工に用いる潤滑剤は、ワークと金型との間の摩擦係数を下げ、ワークと金型とが直接接触することによる早期焼き付きを防止するために極めて重要な要素である。このため、この潤滑剤の選択は、種々の潤滑剤の中から成形条件やワーク材質に応じて最適なものを選択する必要がある。
実際の鍛造形態を想定した潤滑剤の潤滑性評価方法としては、リング圧縮試験法、前方押し出し法に対応した評価方法、あるいは後方押し出し法に対応した評価方法などがあり、他にも工夫された様々な提案がなされている。
【0003】
前方押し出し法に対応した評価方法としては、例えば潤滑剤を塗布したワークに一定押し込み量を与えたときの押し込み荷重を測定し、その塗布された潤滑剤の潤滑性を評価する方法が知られている(特許文献1参照)。また、後方押し出し法に対応した評価方法としては、例えば潤滑剤を塗布したワークに一定押し込み量を与えたときの押し込み荷重と引き抜き荷重を測定し、その塗布された潤滑剤の潤滑性を評価する方法が知られている(特許文献2参照)。
しかし、これらの方法は潤滑剤そのものの潤滑性評価には適しているが、実際の鍛造加工は連続してなされることが多く、そのような連続鍛造における潤滑剤の潤滑性評価が必要となる。また、鍛造加工に用いられる金型材を評価するためには金型の損傷が発生するまで繰り返して鍛造加工を行なう必要があり、一度の鍛造加工に時間と手間が掛かることやワークが使い捨てとなるため高価な評価方法になるという問題がある。
【0004】
チムケン試験と呼ばれる評価方法は、加熱した平板状ワークに回転するリング状金型材を摺接させ、金型材に潤滑剤を連続的に吹き付けて、摩擦係数を測定することにより潤滑剤の潤滑性を評価している(特許文献3参照)。この評価方法は、広い温度範囲での潤滑剤の純粋な摩擦特性を評価するには適しているが、実際の鍛造時における表面積拡大に伴う潤滑剤の追従性や局所的な衝撃力への耐性を考慮して評価できないという問題がある。
【0005】
一方、鍛造加工に用いられる金型は、金型材種によって大きく金型寿命が異なり、鍛造加工条件に応じた金型材を選定する必要がある。また、金型寿命は単純な金型材の耐摩耗性だけでなく、摩擦熱や鍛造エネルギーによる熱衝撃の発生や、局所的な衝撃荷重への耐性、潤滑剤との相性など要因が複雑に関連しているため、実際の鍛造形態に近い方法で評価する必要がある。
しかしながら、この実際の鍛造形態に近い方法で鍛造用金型材を材料評価する評価方法および評価装置がないという問題がある。
【特許文献1】特開2001−286967号公報
【特許文献2】特開2004−012296号公報
【特許文献3】特開2005−343948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に対処するためになされたもので、実際の鍛造形態に近く、冷間から熱間までの幅広い温度範囲において、再現性の高い鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法および作業者の手間をかけずかつ安価に鍛造用金型材の耐久性を評価することができる評価装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法および鍛造用金型材の材料評価方法は、長尺な角柱状ワークを間欠直線運動で送り出す工程と、上記ワークが直線運動停止時に上記ワーク上方に上下進退自在に配置され、上記潤滑剤が塗布された鍛造用金型材製パンチを上記ワークに押し込み窪みを形成する工程および該窪みに押し込まれた上記パンチを引き抜く工程とを有し、上記送り出す工程と上記窪みを形成および引き抜き工程との2工程が繰り返し行なわれ、上記窪みを形成する工程における押し込み荷重および上記引き抜き工程における引き抜き荷重の少なくとも1つの荷重を測定することにより上記潤滑剤の潤滑性評価および鍛造用金型材の材料評価をすることを特徴とする。
【0008】
上記窪みを形成する工程前に、上記ワークを鍛造温度に加熱することを特徴とする。また、上記ワークを加熱する手段は、高周波誘導加熱炉または赤外線加熱炉であることを特徴とする。
【0009】
上記鍛造用潤滑剤は、上記パンチの押し込み引き抜き工程後において、任意に設定された吹き付け量、吹き付け時間および吹き付けのタイミングにて上記パンチに吹き付けられることを特徴とする。
また、上記鍛造用潤滑剤として水を用いて鍛造用金型材の材料評価を行なうことを特徴する。
【0010】
上記鍛造用金型材製パンチは、先端部に埋め込まれた熱電対を有することを特徴する。
また、上記鍛造用金型材製パンチは、先端部がテーパ形状であることを特徴とする。特に、上記テーパ形状のテーパ角が 50°以上 80°以下であることを特徴とする。
【0011】
上記長尺な角柱状ワークは、上記窪みを形成する工程における窪み形成部位に潤滑皮膜処理を施したものであることを特徴とする。
また、上記窪みを形成する工程において、ワークの送り出す方向の直角方向に角柱状ワークを拘束する手段を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の鍛造用潤滑剤および金型材の評価装置は、鍛造用潤滑剤の潤滑性および鍛造用金型材の材料を評価する装置であって、長尺な角柱状ワークを間欠直線運動で送り出す手段と、上記ワークが直線運動停止時にワーク上方に上下進退自在に配置され、鍛造用潤滑剤が塗布された鍛造用金型材製パンチを上記ワークに押し込み窪みを形成する手段と、該窪みより押し込まれた上記金型材製パンチを引き抜く手段と、供試ワークの送り出しおよび窪みの形成が繰り返し行なわれる手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法および鍛造用金型材の材料評価方法は、長尺な角柱状ワークを間欠直線運動で送り出しながら、鍛造用潤滑剤が塗布された鍛造用金型材製パンチを用いて供試ワークに押し込み窪みを形成するときの押し込み荷重等を測定することにより鍛造用潤滑剤の潤滑性を評価するので、実際の鍛造形態に近い評価形態でありながら、冷間から熱間まで幅広い温度範囲において、鍛造用潤滑剤の潤滑性を評価できる。また、同時に作業者の手間をかけず、かつ安価に鍛造用金型材の耐久性を評価することが可能となる。
【0014】
本発明の鍛造用潤滑剤および鍛造用金型材の評価装置は、長尺な角柱状ワークを間欠直線運動で送り出す手段と、上記ワークが直線運動停止時にワーク上方に上下進退自在に配置され、鍛造用潤滑剤が塗布された鍛造用金型材製パンチを上記ワークに押し込み窪みを形成する手段と、該窪みより押し込まれた上記金型材製パンチを引き抜く手段と、供試ワークの送り出しおよび窪みの形成が繰り返し行なわれる手段とを備えるので、実際の鍛造形態に近い評価形態で、冷間から熱間まで幅広い温度範囲において、鍛造用潤滑剤の潤滑性を評価できる。また、同時に作業者の手間をかけず、かつ安価に鍛造用金型材の耐久性を評価することができる。
【0015】
上記ワークを加熱する手段は、高周波誘導加熱炉または赤外線加熱炉であるので、ワークに非接触でかつワークを均一に急速に加熱でき、他の加熱装置に比べ安価でコンパクトな装置とすることができる。
【0016】
上記鍛造用潤滑剤は、上記パンチの押し込み引き抜き工程後において、任意に設定された吹き付け量、吹き付け時間および吹き付けのタイミングにて上記パンチに吹き付けられるので、潤滑剤の供給量および供給頻度の最適化条件を検討することができる。また、上記鍛造用潤滑剤として水を用いて鍛造用金型材の材料評価を行なうことにより、通常の潤滑剤を用いる場合に比べて潤滑条件を過酷に設定できるため、極めて短期間で鍛造用金型の評価が可能となる。
【0017】
上記鍛造用金型材製パンチは、先端部に埋め込まれた熱電対を有するので、パンチが最も高い応力で摺動する部位の摺動発熱や冷却による温度変化の観測が可能となり、またこの熱電対で温度条件を設定することにより、より一層精密な金型材評価が可能となる。また、上記パンチは、先端部がテーパ形状であるので、一般に多く用いられる先端エッジ部がR形状のパンチに比べ、摺動時にテーパ面に高い応力が発生し、かつワークの塑性流動に伴う相対的な摺動距離が長くなり(表面積拡大比が大きくなる)、摩耗などの損傷を起し易いため、より過酷な条件設定が可能となり短期間で金型材の評価を行なう手段として有効である。また、上記パンチのテーパ角が 50°以上 80°以下であるので上記のような負荷が最も高い条件での金型材評価が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の評価方法に用いる評価装置の一例を図1に示す。図1(a)は評価装置の概要図であり、図1(b)はパンチ押し込み部位のワーク平面図である。
評価装置は、ベース11上に長尺な角柱状ワーク1の進行方向に順に配置されたワーク送り出し装置10a、加熱装置9、評価装置本体、ワーク送り出し装置10bとから構成されている。
ワーク送り出し装置10a、10bはワーク1を案内する部品であり、図示を省略したモータによりラックアンドピニオン機構でワークを間欠直線運動で送り出すことができる。送り機構の例としては、ラックアンドピニオン機構以外に油圧シリンダ、エアシリンダ、ボールネジなどのネジを利用した直動機構が挙げられる。
【0019】
加熱装置9は、間欠直線運動するワーク1を加熱するための装置である。加熱手段としては、赤外線加熱、電熱加熱、抵抗加熱、ワーク1の種類によっては誘導加熱等の任意の手段を採用できる。本発明においては、ワーク1に非接触でかつワーク1を均一に急速に加熱できる赤外線加熱炉を用いることが好ましい。赤外線加熱炉は、反射板やレンズを用いて集光し加熱効率を高めることができる赤外線ランプを用いた加熱装置であることが好ましく、高周波誘導加熱装置に比べ安価でコンパクトな装置とすることができる。
【0020】
評価装置本体は、ベース11上に配置されている架台8と、この架台8に設けられているダイ2と、ダイ2上方に配置され、ワーク1を鍛造加工するためのパンチ3とから構成されている。パンチ3をワーク1内に押し込む荷重と引き抜く荷重を測定することで鍛造用潤滑剤の潤滑性および金型材の耐久性が評価できる。
【0021】
ダイ2は、ワーク1が送り出される方向の直角方向に角柱状ワークを拘束する手段を有する。図1(b)に示すように、ダイ2は、ワーク1がパンチ3に押し込まれることにより横広がりすることを防止する目的で、同パンチ押し込み部の同ワーク両側面に対し、適度のすきまと同ワーク送り出し方向に広がるように角度θをもって設置される。ダイ2により、パンチ3からの押し込み力がワーク1側面へ逃げることなく所定の押し込み量を安定的に与えることができる。ワーク1とダイ2とのすきまはワーク送り装置の送り精度とワーク1の寸法精度から最適なものを選定することができる。また、ダイ2の広がり角度θは、ワーク送り装置の押し出し力とワーク1とダイ2の接触面積などの因子を考慮して最適なものを選べばよく、角度 0.5〜5°が好ましい。
【0022】
ダイ2が設置される架台8にはヒータなどの加熱手段4と引張圧縮両用型ロードセル5が設けられている。ダイ2の下部近傍には熱電対などの温度センサー6が設けられてダイ2の温度を制御する。図示を省略した非接触型の放射温度計を用いてダイ2の温度を外部から監視することが好ましい。加熱手段4はダイ2を加熱する。
【0023】
パンチ3は鍛造用金型材で形成され、図1の図面上、ワーク上方に上下進退自在に配置される。パンチ3はクランク式プレスなどで稼動させることができる。また、パンチ3の温度を制御するための加熱手段4および温度センサー6が設けられている。なお、パンチ3の形態は、実際に鍛造される型に応じて設定できる。例えばパンチ3の断面形状としては、真円、楕円などの円形、四角形、三角形などの多角形に設定できる。
【0024】
また、パンチ3の先端部には摺動発熱や冷却による温度変化の観測および温度条件設定のための熱電対が埋め込まれていることが好ましい。熱電対は、摺動部表面から 0.5 mm 以上 3 mm 以下に設置するのが好ましい。0.5 mm 未満では摩耗などにより熱電対が露出する危険性があり、3 mm をこえると表面温度を精密に測定できない可能性がある。また、熱電対と熱電対用の穴を熱伝導率の高い材料(電熱材)で固定するとより温度の追従性が高くなる。
【0025】
図2はパンチの先端部形状を示す図である。図2(a)は本発明において用いられるパンチの一例を示す図である。図2(b)は一般に多く用いられるR形状の先端エッジ部を有するパンチを示す図である。
短時間で評価を行なうためには、ワークに対しより過酷な条件でパンチの押し込みを実施する形状として、図2(a)に示すように先端部がテーパ形状であることがより好ましい。テーパ形状の先端エッジ部にRを設ける場合でも 0.5 mm 以下に留め、R形状を設けないことが最も好ましい。
テーパ形状の先端部を有するパンチ3aでは摺動時にテーパ面に高い応力が発生し、R形状の先端エッジ部を有するパンチ3bに比べ、かつワークの塑性流動に伴う相対的な摺動距離が長くなり、表面積拡大比が大きくなるため、摩耗などの損傷を起し易い過酷な条件設定が可能となる。
また、先端部がテーパ形状のパンチ3aは、上記のような負荷が最も高い条件で金型材評価が行なえるように、テーパ角α(図2(a)参照)が 50°以上 80°以下であることが好ましい。なお、このテーパ角α 50°以上 80°以下のときに負荷が最も高くなることは、応力解析により得られた結果である。
【0026】
また、図1において、潤滑剤をパンチ3に吹き付けるエアスプレーガン7がパンチ3近傍に設けられている。エアスプレーガン7はワーク1にパンチ3が押し込まれている時間以外の時間に、潤滑剤を同パンチに吹き付ける手段を有している。該手段には吹き付け量、吹き付け時間および吹き付けのタイミングを任意に設定する機能を備えることが好ましい。この機能を備えることにより潤滑剤の供給量および供給頻度の最適化を検討することができる。
【0027】
上記評価装置を用いる熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価および金型材の評価は以下のようになされる。
(1)長尺な角柱状ワーク1を間欠直線運動で送り出す。角柱状ワーク1としては、鋼材メーカが提供する標準角鋼を用いることができる。10 mm×10 mm×16 mm×1000 mm の角柱状ワーク1を例示でき、この場合、パンチ3は直径 10 mm が例示できる。標準角鋼を用いることができるため、供試試料の準備にあたり、切断のみの加工となり加工費が安価となる。また、角柱状ワーク1に潤滑皮膜処理を施すことにより、同潤滑皮膜処理の潤滑性を評価するとともにワーク1に潤滑皮膜処理を施した場合の金型材の耐久性を同時に評価することができる。
【0028】
(2)角柱状ワーク1の直線運動停止時に鍛造用金型材製のパンチ3がワーク1の直線運動に垂直な方向から押し込まれ窪みが形成される。金型材製パンチ3はワーク1に押し込まれている時間以外の時間に、潤滑剤が先端表面にエアスプレーガン7を用いて吹き付けられる。このため、安定的な潤滑剤の供給が可能であり、潤滑剤の潤滑性とともに潤滑剤を安定供給した場合の金型材の耐久性を評価することができる。
エアスプレーガン7へ吹き付ける潤滑剤の吹き付け量、吹き付け時間、吹き付けのタイミングを任意に条件設定できる機能を備えることにより、これらの条件設定ごとにパンチ3の押し込み荷重および上記引き抜き工程における引き抜き荷重の少なくとも1つの荷重を測定することで潤滑剤の吹き付け条件の最適化を検討することができる。
また、潤滑剤に水のみを用いると潤滑条件が過酷になるため、通常の潤滑剤を用いる場合に比べて極めて短期間で鍛造用金型の評価が可能となる。
【0029】
(3)上記窪みより押し込まれた上記金型材製パンチ3を引き抜く。この引き抜く手順を有するため、金型材の耐久性を評価する際、金型の摩耗などの損傷状態とパンチ押し込み荷重や引き抜き荷重との関連性が把握できる。
ここで、先端部に熱電対が埋め込まれたパンチ3を用いることにより、摺動発熱や冷却による金型材の温度変化および設定温度条件下でのパンチ押し込み荷重や引き抜き荷重との相関性等について、潤滑剤の種類や吹き付け条件と関連付けて把握することもでき、一層精密な金型材および潤滑剤の評価が可能となる。
また、先端部がテーパ形状であるパンチ3aを用いることにより、上述したように摩耗などの損傷を起し易い過酷な条件設定が可能となり、短期間で潤滑剤および金型材の評価を行なうことができる。
【0030】
(4)上記送り出しと上記窪み形成および引き抜きとの2つの手順が繰り返し行なわれ、窪み形成時の押し込み荷重および引き抜き時の引き抜き荷重の両方、またはいずれか一方の荷重が測定される。パンチ3を図1に示す上下矢印の下方向に移動させることで、パンチ3をワーク1内に押し込むことで押し込み荷重が測定され、引き抜くことで引き抜き荷重が測定できる。荷重はロードセル5により測定できる。押し込み荷重が大きい場合潤滑性に劣り、押し込み荷重が小さい場合潤滑性に優れることになる。また、所定ショット数の鍛造加工を行なった後のパンチ3の損傷状態を調査することにより、金型材の評価ができる。すなわち、損傷することなく多くのショットが行える金型材ほど優れているといえる。このように、連続的に鍛造加工時の押し込み荷重、引き抜き荷重を測定することにより熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性を評価することができ、金型材の評価ができる。
【0031】
パンチを用いての鍛造加工は、金型材製パンチ3を長尺な角柱状ワーク1に押し込む直前に、ワーク1が加熱装置9にて所定の鍛造温度に加熱される。そのため、実際に即した熱間鍛造用の潤滑剤および金型材も評価可能である。
本評価方法における鍛造温度は現場の工場等での鍛造加工を模擬して設定できる。例えば、実際の連続熱間鍛造工程においては初期のパンチ温度は常温であっても、連続して熱間鍛造を繰り返すとパンチ温度は摩擦熱と鍛造エネルギーにより発熱し温度が数 100℃となる。このような実際の鍛造条件を本発明の評価方法ではパンチ温度を制御することにより再現することができる。
【実施例】
【0032】
実施例1
日立金属社製:金型材YXR7に標準熱処理を施した金型材と、金型材YXR7の標準熱処理後、ガス軟窒化処理を施した金型材とを用いて、表1に示す先端部がテーパ形状を有する標準熱処理金型材製パンチ試験片と、ガス軟窒化処理金型材製パンチ試験片とをそれぞれ作製した。これらの金型材製パンチ試験片を用いて、以下に示す鍛造試験を行ないパンチ試験片に摩耗が生じるショット数を測定し、摩耗観測ショット数として表1に併記する。
【0033】
比較例1
日立金属社製:金型材YXR7に標準熱処理を施した金型材と、金型材YXR7の標準熱処理後、ガス軟窒化処理を施した金型材とを用いて、表1に示す先端エッジ部がR形状を有する標準熱処理金型材製パンチ試験片と、ガス軟窒化処理金型材製パンチ試験片とをそれぞれ作製した。これらの金型材製パンチ試験片を用いて、以下に示す鍛造試験を行ないパンチ試験片に摩耗が生じるショット数を測定し、摩耗観測ショット数として表1に併記する。
【0034】
<鍛造試験>
図1に示す評価装置のパンチ3に金型材製パンチ試験片を取り付け、材質S50Cのワーク1を加熱装置9および温度センサー6にて 800℃に加熱・制御した後、角柱状ワーク1を間欠直線運動させ、金型材製パンチ試験片を連続的にワーク1に押し込み鍛造加工を行ない、パンチ試験片に摩耗が生じるショット数を測定する。本試験では、短期間で試験結果を得るために無潤滑条件で行なった。ただし、パンチ試験片温度の振幅を一定に調整するために冷却水をエアスプレーガン7にて吹き付けた。
【0035】
【表1】


表1に示すように標準熱処理金型材の摩耗の観測においても、また耐摩耗性の高いガス軟窒化処理金型材の摩耗の観測においてもテーパ形状パンチは、R形状パンチに比べて少ないショット数で金型材の評価が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法および鍛造用金型材の材料評価方法は、実際の鍛造形態に近い評価形態でありながら、冷間から熱間まで幅広い温度範囲において、鍛造用潤滑剤の潤滑性を評価でき、また作業者の手間をかけず、かつ安価に金型材の耐久性評価に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】評価装置の概要図である。
【図2】パンチの先端部形状を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ワーク
2 ダイ
3 パンチ
4 加熱手段
5 引張圧縮両用型ロードセル
6 温度センサー
7 エアスプレーガン
8 架台
9 加熱装置
10 ワーク送り出し装置
11 ベース
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
【出願日】 平成19年11月5日(2007.11.5)
【代理人】 【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操


【公開番号】 特開2008−137076(P2008−137076A)
【公開日】 平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願番号】 特願2007−286995(P2007−286995)