トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 鍛造加工方法
【発明者】 【氏名】渡邉 浩司

【要約】 【課題】ヒケやダレ等の欠陥部が発生するのを防止できる鍛造加工方法を提供する。

【解決手段】本発明は、対向配置される2つの金型1,2のうち、一方の金型2に潤滑剤を供給する潤滑剤供給処理を行う潤滑工程と、一方の金型2にワークWをセットした状態で、両金型1,2を閉じることにより、ワークWを押圧変形させる押圧工程と、を含む鍛造加工方法を対象とする。潤滑工程において、水を他方の金型1に向けて噴射する水噴射処理を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置される2つの金型のうち、一方の金型に潤滑剤を供給する潤滑剤供給処理を行う潤滑工程と、
一方の金型にワークをセットした状態で、両金型を閉じることにより、ワークを押圧変形させる押圧工程と、を含む鍛造加工方法であって、
潤滑工程において、水を他方の金型に向けて噴射する水噴射処理を行うことを特徴とする鍛造加工方法。
【請求項2】
水噴射処理および潤滑剤供給処理の少なくとも一部を並行させる請求項1に記載の鍛造加工方法。
【請求項3】
水噴射処理を終了する以前に、潤滑剤供給処理を終了する請求項1または2に記載の鍛造加工方法。
【請求項4】
水噴射処理および潤滑剤供給処理を同時に開始する請求項1〜3のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【請求項5】
水噴射処理における水の噴射時間が0.1〜5.0秒、噴射量が0.1〜3.0gに設定される請求項1〜4のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【請求項6】
潤滑工程において水噴射処理を行う前に、エアーを他方の金型に吹き付ける請求項1〜5のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【請求項7】
潤滑工程において潤滑剤供給処理を行う前に、エアーを一方の金型に吹き付ける請求項1〜6のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【請求項8】
潤滑工程において水噴射処理を行った後に、エアーを他方の金型に吹き付ける請求項1〜7のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【請求項9】
潤滑工程において潤滑剤供給処理を行った後に、エアーを一方の金型に吹き付ける請求項1〜8のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【請求項10】
金型の温度が100℃以上、ワークの温度が300℃以上に設定される請求項1〜9のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載された鍛造加工方法によって成形されたことを特徴とする鍛造加工製品。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載された鍛造加工方法によって成形されたことを特徴とするスクロールコンプレッサ用のスクロール部品。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載された鍛造加工方法によって成形されたことを特徴とする内燃機関ピストン。
【請求項14】
対向配置される2つ金型うち一方の金型にワークをセットした状態で、両金型を閉じることにより、ワークに押圧変形させるようにした鍛造加工装置であって、
型開き状態で、潤滑剤を一方の金型に供給する潤滑剤供給手段と、
型開き状態で、水を他方の金型に向けて噴射する水噴射手段と、を備えたことを特徴とする鍛造加工装置。
【請求項15】
対向配置される2つの金型のうち一方の金型にワークをセットした状態で、両金型を閉じることにより、ワークを押圧変形されるようにした鍛造加工装置に設けられる水/潤滑剤供給装置であって、
型開き状態で、潤滑剤を一方の金型に供給する潤滑剤供給手段と、
型開き状態で、水を他方の金型に向けて噴射する水噴射手段と、を備えたことを特徴とする鍛造加工装置の水/潤滑剤供給装置。
【請求項16】
対向配置される2つの金型のうち一方の金型にワークをセットした状態で、両金型を閉じることにより、ワークを押圧変形されるようにした鍛造加工装置に設けられるスプレー装置であって、
型開き状態で、潤滑剤を一方の金型に向けて噴射可能な潤滑剤噴射ノズルと、
型開き状態で、水を他方の金型に向けて噴射可能な水噴射ノズルと、を備えたことを特徴とする鍛造加工装置のスプレー装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、固定金型にセットされたワークに、可動金型を進出させて押圧する鍛造加工方法およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エアコンディショナーのスクロールコンプレッサに採用されるスクロール部品は、軽量化や高強度化等を目的として型鍛造によって作製するのが主流となっている。スクロール部品は、フランジの一面に渦巻き形状のスクロール羽根が一体形成された複雑な形状を有しているため、型鍛造時にメタル(材料)の流動を制御するのが困難であり例えば、フランジの他面側に、ヒケやダレ(欠肉部)等の欠陥部が発生して、鍛造不良が生じることがある。
【0003】
そこで特許文献1は、型内面の欠陥部発生位置を粗面に仕上げることにより、鍛造時における材料の流動を制御して、上記の欠陥部の発生を防止するようにしている。
【0004】
また特許文献2は、パンチに付着した潤滑剤を拭き取る拭取手段や、噴射される潤滑剤からパンチを遮蔽する遮蔽手段や、潤滑剤の噴射角度や方向を制御する噴射状態制御手段等を設けて、潤滑剤がパンチに付着するのを防止することにより、押圧加工時におけるメタルの流動を制御して、上記の欠陥部の発生を防止している。
【特許文献1】特開平2000−218336号(特許請求の範囲、図4)
【特許文献2】特開平2004−114140号(請求項1−8、図2−7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す鍛造加工方法においては、型内面を粗面に形成するものであるため、磨耗によって粗面部が消失してしまい、ヒケ、ダレ等の欠陥部が発生するのを確実に防止することはできないという課題を抱えている。
【0006】
また特許文献2に示す鍛造加工方法においては、拭取手段、遮蔽手段、噴射状態制御手段を設けるものであるため、それらの手段を鍛造加工装置に組み込むのが困難であり、上記欠陥部の発生を簡単に防止することはできないという課題が残されている。
【0007】
この発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、成形品にヒケやダレ等の欠陥部が発生するのを簡単かつ確実に防止することができる鍛造加工方法およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
【0009】
[1] 対向配置される2つの金型のうち、一方の金型に潤滑剤を供給する潤滑剤供給処理を行う潤滑工程と、
一方の金型にワークをセットした状態で、両金型を閉じることにより、ワークを押圧変形させる押圧工程と、を含む鍛造加工方法であって、
潤滑工程において、水を他方の金型に向けて噴射する水噴射処理を行うことを特徴とする鍛造加工方法。
【0010】
[2] 水噴射処理および潤滑剤供給処理の少なくとも一部を並行させる前項1に記載の鍛造加工方法。
【0011】
[3] 水噴射処理を終了する以前に、潤滑剤供給処理を終了する前項1または2に記載の鍛造加工方法。
【0012】
[4] 水噴射処理および潤滑剤供給処理を同時に開始する前項1〜3のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【0013】
[5] 水噴射処理における水の噴射時間が0.1〜5.0秒、噴射量が0.1〜3.0gに設定される前項1〜4のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【0014】
[6] 潤滑工程において水噴射処理を行う前に、エアーを他方の金型に吹き付ける前項1〜5のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【0015】
[7] 潤滑工程において潤滑剤供給処理を行う前に、エアーを一方の金型に吹き付ける前項1〜6のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【0016】
[8] 潤滑工程において水噴射処理を行った後に、エアーを他方の金型に吹き付ける前項1〜7のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【0017】
[9] 潤滑工程において潤滑剤供給処理を行った後に、エアーを一方の金型に吹き付ける前項1〜8のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【0018】
[10] 金型の温度が100℃以上、ワークの温度が300℃以上に設定される前項1〜9のいずれか1項に記載の鍛造加工方法。
【0019】
[11] 前項1〜10のいずれか1項に記載された鍛造加工方法によって成形されたことを特徴とする鍛造加工製品。
【0020】
[12] 前項1〜10のいずれか1項に記載された鍛造加工方法によって成形されたことを特徴とするスクロールコンプレッサ用のスクロール部品。
【0021】
[13] 前項1〜10のいずれか1項に記載された鍛造加工方法によって成形されたことを特徴とする内燃機関ピストン。
【0022】
[14] 対向配置される2つの金型うち一方の金型にワークをセットした状態で、両金型を閉じることにより、ワークに押圧変形させるようにした鍛造加工装置であって、
型開き状態で、潤滑剤を一方の金型に供給する潤滑剤供給手段と、
型開き状態で、水を他方の金型に向けて噴射する水噴射手段と、を備えたことを特徴とする鍛造加工装置。
【0023】
[15] 対向配置される2つの金型のうち一方の金型にワークをセットした状態で、両金型を閉じることにより、ワークを押圧変形されるようにした鍛造加工装置に設けられる水/潤滑剤供給装置であって、
型開き状態で、潤滑剤を一方の金型に供給する潤滑剤供給手段と、
型開き状態で、水を他方の金型に向けて噴射する水噴射手段と、を備えたことを特徴とする鍛造加工装置の水/潤滑剤供給装置。
【0024】
[16] 対向配置される2つの金型のうち一方の金型にワークをセットした状態で、両金型を閉じることにより、ワークを押圧変形されるようにした鍛造加工装置に設けられるスプレー装置であって、
型開き状態で、潤滑剤を一方の金型に向けて噴射可能な潤滑剤噴射ノズルと、
型開き状態で、水を他方の金型に向けて噴射可能な水噴射ノズルと、を備えたことを特徴とする鍛造加工装置のスプレー装置。
【発明の効果】
【0025】
発明[1]のプレス加工方法によれば、水の噴射によって、他方の金型に潤滑剤が付着するのを防止できるため、押圧加工時に、他方の金型のメタル(材料)に対する制動力が十分に作用し、成形品にヒケやダレ等の欠陥部が形成されるのを防止することができる。
【0026】
発明[2]のプレス加工方法によれば、噴射した水により他方の金型に付着した潤滑剤を洗い落とす水洗効果を得ることができるとともに、噴射水のバリア効果により潤滑剤が他方の金型に付着するのを防止できるため、他方の金型に潤滑剤が付着するのを確実に防止することができる。
【0027】
発明[3]のプレス加工方法によれば、水洗効果を十分に得ることができ、他方の金型に潤滑剤が付着するのを、より確実に防止することができる。
【0028】
発明[4]のプレス加工方法によれば、水洗効果およびバリア効果を十分に得ることができ、他方の金型に潤滑剤が付着するのを、一層確実に防止することができる。
【0029】
発明[5]のプレス加工方法によれば、潤滑剤の付着防止効果を、より一層確実に得ることができる。
【0030】
発明[6][7]のプレス加工方法によれば、エアー洗浄によって、塵埃等の異物を、金型から除去することができる。
【0031】
発明[8]のプレス加工方法によれば、エアー洗浄によって、潤滑剤や、塵埃等の異物を、金型から確実に除去することができる。
【0032】
発明[9]のプレス加工方法によれば、潤滑剤を一方の金型に定着させることができる。
【0033】
発明[10]のプレス加工方法によれば、所定の熱間鍛造加工を効率良く行うことができる。
【0034】
発明[11]によれば、上記と同様に、同様の作用効果を有する鍛造加工製品を提供することができる。
【0035】
発明[12]によれば、上記と同様に、同様の作用効果を有するスクロール部品を提供することができる。
【0036】
発明[13]によれば、上記と同様に、同様の作用効果を有する内燃機関ピストンを提供することができる。
【0037】
発明[14]の鍛造加工装置によれば、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
発明[15]の鍛造加工装置の水/潤滑剤供給装置によれば、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
発明[16]の鍛造加工装置のスプレー装置によれば、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
この発明の実施形態である鍛造加工方法を説明する前に、この実施形態の加工方法で製作される鍛造加工製品(成形品)について説明する。この成形品は図5に示すように、エアコンディショナー用のスクロールコンプレッサ(圧縮機)に採用されるスクロール部品(7)を構成している。このスクロール部品(7)は、円形のフランジ(71)と、フランジ(71)の一面に一体形成された渦巻き形状のスクロール羽根(72)とを備える。
【0041】
図1はこの発明の実施形態である鍛造加工方法が適用される鍛造加工装置を示す概略断面図である。同図に示すようにこの鍛造加工装置は、上記スクロール部品(7)を鍛造加工製品として製作する装置であって、他方の金型(可動金型)としての上金型(1)と、一方の金型(固定金型)としての下金型(2)と、水/潤滑剤供給装置としてのスプレー装置(6)と、を備えている。
【0042】
上金型(1)は、上下方向に沿って配置されるパンチ(11)によって構成され、この上金型(1)がパンチホルダー(12)を介して上金型ベース(51)に固定されている。さらに上金型ベース(51)は、鍛造加工装置のハウジングフレーム(5)に昇降駆動自在に取り付けられており、この昇降駆動に伴って上金型(1)が昇降するよう構成されている。
【0043】
図1〜3に示すように下金型(2)は、ハウジングフレーム(5)の下金型ベース(52)に固定されている。この下金型(2)は、上金型(1)に対応して配置されるダイ(21)によって構成されている。下金型(2)は、その上面側には、上方に開放され、かつ上金型(11)が進入可能なダイ凹部としての成型凹部(22)が形成されている。この成型凹部(22)は、平面視がスクロール部品(7)のフランジ(71)に対応して円形に形成されている。
【0044】
下金型(2)における成型凹部(22)の下側には、軸心方向(上下方向)に沿って延び、かつ上端が成型凹部(22)内に開口する羽根成型孔(32)が設けられている。この羽根成型孔(32)は、スクロール部品(7)のスクロール羽根(72)を成形するための部分を構成しており、図4に示すように平面視において、スクロール羽根(72)に対応して渦巻き状に形成されている。
【0045】
さらに羽根成型孔(32)には図2〜4に示すように、その内周形状に対応して、平面視渦巻き形状の摺動金型(31)が適合状態に収容されて、羽根成型孔(32)に沿って上下方向に摺動移動自在に構成されている。
【0046】
下金型(2)の下方には、背圧板(33)が配置されており、摺動金型(31)が支持ピン(34)を介して背圧板(33)に支持されている。この背圧板(33)は、図示しない油圧/空圧または機械スプリング(バネ)等によって、上金型進入方向とは反対方向(上向き)に背圧を付与されるように構成されており、後述するように、上金型打ち込み時には、背圧板(33)および支持ピン(34)を介して摺動金型(31)に、背圧が付与されるようになっている。
【0047】
さらに背圧板(33)の下方には、上方に突出可能なノックアウトピン(図示省略)が設けられており、成形加工後に、ノックアウトピンが突出することによって、受圧板(3)、支持ピン(34)および摺動金型(31)を介して、成形加工品が突き上げられて、下金型(2)から排出されるよう構成されている。
【0048】
本実施形態の鍛造加工装置により鍛造加工を行う場合には図2に示すように、ワーク(W)を成型凹部(21)内にセットして、摺動金型(31)に背圧板(33)および支持ピン(34)を介して上向きの背圧を付与する。
【0049】
続いてこの状態で図3に示すように、上金型(1)を成型凹部(22)内に打ち込む(押圧工程)。これによりまずワーク(W)が塑性変形しながら圧縮され、その圧縮応力によって、ワーク材料が摺動金型(31)を背圧に抗して下方に押し下げ、羽根成型孔(32)内に進入して、スクロール羽根(72)の部分が成形される。
【0050】
こうして成型凹部(22)内で成形されるフランジ(71)に、羽根成型孔(32)内で成形されるスクロール羽根(72)が一体成形されて、スクロール部品(7)が作製される。
【0051】
成形加工後の部品(7)は上記したように、ノックアウトピン(図示省略)が突出することによって、下金型(2)から外部に排出される。
【0052】
本実施形態の鍛造加工装置による鍛造加工方法においては、熱間鍛造が採用されており、上金型(1)を下金型(2)に打ち込む押圧加工を行う前に、下金型(2)に離型剤、潤滑油等の潤滑剤を供給する潤滑工程が行われる。さらに本実施形態の鍛造加工方法では後に詳述するように、潤滑工程において、潤滑剤を下金型(2)に供給する潤滑剤供給処理の他に、上金型(1)に向けて水を噴射する水噴射処理や、必要に応じて両金型(1)(2)にエアーを吹き付けるエアー吹付処理を行う。
【0053】
すなわち本実施形態の鍛造加工装置には、潤滑工程において、金型(1)(2)に潤滑剤、水、エアーを供給するためのスプレー装置(6)が設けられている。
【0054】
スプレー装置(6)は、スプレーヘッド(61)を有している。スプレーヘッド(61)は、スプレーシャフト(62)を介してヘッド移動装置(63)に移動自在に支持されており、上金型(1)が下金型(2)に対し上方に離間(退避)して配置された型開き状態において、両金型(1)(2)間における軸心位置と、両金型(1)(2)間から外方へ退避した位置との間で移動自在に構成されている。
【0055】
スプレーヘッド(61)には、水を上金型(1)に向けて霧状に噴射する上向きノズル(611)と、潤滑剤を下金型(2)に向けて霧状に噴射する下向きノズル(612)とを有している。さらに上向きノズル(611)は必要に応じて、水に代えてエアーを噴射できるよう構成されるとともに、下向きノズル(612)は必要に応じて、潤滑剤に代えてエアーを噴射できるよう構成されている。
【0056】
ここで本実施形態においては、上向きノズル(611)によって、水噴射ノズルおよび水噴射手段が構成されるとともに、下向きノズル(612)によって、潤滑剤噴射ノズルおよび潤滑剤供給手段が構成されている。
【0057】
なお言うまでもなく、本発明においては、上向きに水を噴射するノズルと、上向きにエアーを噴射するノズルとを別々に設けても良く、同様に、下向きに潤滑剤を噴射するノズルと、下向きにエアーを噴射するノズルとを別々に設けても良い。
【0058】
本実施形態の鍛造加工装置においては、上金型(1)を下金型(2)に打ち込む押圧工程を行う前に、潤滑工程が行われる。この潤滑工程においては図1に示すように、スプレー装置(6)のスプレーヘッド(61)が移動して両金型(1)(2)間に配置される。
【0059】
続いて図6に示すようにスプレーヘッド(61)の上下両ノズル(611)(612)から上金型(1)および下金型(2)にエアーが噴射される(前エアー吹付処理)。これにより金型(1)(2)に付着する塵埃等の異物が吹き飛ばされて除去される。さらにエアーの吹付により冷却されて、金型(1)(2)が適当な温度状態に調整される。
【0060】
なお言うまでもなく図6は本実施形態の鍛造加工方法における潤滑工程のタイミングチャートであり、横軸を経過時間として、各金型(1)(2)対し、エアー、水、潤滑剤を供給するタイミングを示している。
【0061】
前エアー吹付処理が終了した後、上向きノズル(611)から水が上金型(1)に向けて霧状に噴射(スプレー)されると同時に、下向きノズル(612)から潤滑剤が下金型(2)に向けて霧状に噴射(スプレー)される。下金型(2)に向けて噴射された潤滑剤は分散されて下金型(2)全域に均一に供給されるものの、一部の潤滑剤は上金型(1)に向けて上方に飛散する。このとき本実施形態においては、スプレーヘッド(61)から水が上金型(1)に霧状に噴射されため、その霧状の水によるバリア効果によって、潤滑剤が上方へ飛散して上金型(1)に付着するのが防止される。たとえ潤滑剤が上金型(1)に付着したとしても、その付着した潤滑剤は、上金型(1)に向けて噴射された水によって洗い落とされるため、潤滑剤が上金型(1)に付着残存するのを確実に防止することができる。
【0062】
その上さらに上金型(1)に、エアー吹付時に除去できなかった塵埃等の異物が付着していたとしても、その異物は上金型(1)に向けて噴射された水により、確実に洗い落とすことができる。
【0063】
このように本実施形態においては、下金型(1)には、十分な潤滑剤を供給しつつ、上金型(1)には、潤滑剤はもちろん、他の異物が付着するのを確実に防止できて、上金型(1)を清浄状態に保持することができる。
【0064】
水および潤滑剤の供給が終了した後、上下両ノズル(611)(612)から両金型(1)(2)にエアーが噴射される(後エアー吹付処理)。このエアー吹付により、下金型(2)において、油性潤滑剤の場合には、潤滑剤を広範囲に満遍なく拡散させることができて、良好な潤滑性能を得ることができるとともに、水溶性潤滑剤の場合には、潤滑剤の乾燥を促進させることができるため、潤滑皮膜を確実に形成できて、良好な潤滑性能を得ることができる。なお水溶性潤滑剤において、潤滑剤の乾燥が不十分であると、潤滑皮膜が形成されず、潤滑性能が低下するおそれがある。さらにエアー吹付により、両金型(1)(2)における潤滑カスや異物の除去等のエアー洗浄効果も得ることができる。
【0065】
後エアー吹付処理が終了した後は、スプレー装置(6)におけるスプレーヘッド(61)が両金型(1)(2)間から外方に退避される。
【0066】
その後、下金型(2)内にワークがセットされて、上記したように上金型(1)が下金型(2)に打ち込まれて鍛造加工される。このとき本実施形態では、上金型(1)において潤滑剤が確実に除去されているため、成形品にヒケやダレ等の欠陥部が形成されるのを防止することができる。
【0067】
すなわち上金型(1)に潤滑剤が付着した状態で、上金型(1)がワーク(W)に押圧すると、上金型(1)の潤滑剤付着部において、メタル(材料)に対し十分な制動力が作用せず、ワーク下方部のメタルが下金型(2)の羽根成型孔(32)に進入するのに追従して、ワーク上面部(成形品上面部)のメタルが下方に引き込まれて上金型(1)から離間して、成形品上面(フランジ他面)にヒケやダレ等の凹部(欠陥部)が形成されてしまう。
【0068】
これに対し本実施形態では、既述したように上金型(1)から潤滑剤が確実に除去されているため、上金型(1)のメタルに対する制動力が十分に作用する。このためワーク上面部のメタルが下方に引き込まれることなく、メタルが上金型(1)から離間するのを確実に防止でき、成形品上面(フランジ他面)にヒケやダレ等の欠陥部が形成されるのを確実に防止することができる。従って製品品質を向上させることができるとともに、不良品の発生を防止できて生産効率も向上させることができる。
【0069】
しかも上金型(1)は、水噴射処理における水洗効果によって、潤滑剤以外の異物も除去されているため、異物が付着した上金型(1)が、金型形状としてワークWに転写されるのも防止することができる。このため転写による表面傷の発生も防止できて、製品品質を一層向上させることができる。
【0070】
その一方で、下金型(2)に対しては十分な潤滑剤が偏りなく均一に供給できるため、下金型(2)内におけるメタルの流動がスムーズに行われて、下金型(2)の成型凹部(22)および羽根成型孔(32)の形状に沿ってメタルがスムーズに流動する。従ってワークWを下金型(2)の形状に倣って高精度に成形でき、より高い品質を得ることができる。
【0071】
また本実施形態においては、金型(1)(2)に水や潤滑剤を供給する前に、エアーを噴射して、金型(1)(2)に付着する塵埃等を除去しているため、異物混入による不具合をより確実に防止でき、製品品質をさらに向上させることができる。
【0072】
さらにエアーの吹付によって、金型(1)(2)を適度な温度に調整できるため、温度管理を適切に行うことができる。従って熱間鍛造を効率良く行うことができて、生産性を一層向上させることができる。
【0073】
また本実施形態においては、金型(1)(2)に水や潤滑剤を供給した後においても、エアーを噴射して、残存する水成分や潤滑カス等を除去できるとともに、供給した潤滑剤を定着させることができるため、この点においても、精度良く鍛造加工できて、一段と製品品質を向上させることができる。
【0074】
なお本発明において、水、潤滑剤、エアーの供給タイミングは、上記実施形態の供給タイミング(図6参照)に限られるものではない。例えば図7に示すように水噴射処理と、潤滑剤供給処理とを同時に開始した後、先に潤滑剤供給処理を終了するようにしても良いし、図8に示すように先に水噴射処理を開始し、続いて水噴射処理および潤滑剤供給処理を並行に行った後、先に潤滑剤供給処理を終了するようにしても良い。
【0075】
また本発明においては、図9に示すように先に潤滑剤供給処理を開始し、続いて水噴射処理および潤滑剤供給処理を並行に行った後、先に潤滑剤供給処理を終了するようにしても良いし、図10に示すように先に潤滑剤供給処理を開始し、その潤滑剤供給処理が終了した後、水噴射処理を行うようにしても良い。
【0076】
さらに本発明においては、図11に示すように先に水噴射処理を開始して、続いて水噴射処理および潤滑剤供給処理を並行して行った後、先に水噴射処理を終了するようにしても良し、図12に示すように、先に水噴射処理を開始して、その水噴射処理が完了した後、潤滑剤供給処理を行うようにしても良い。
【0077】
ここで本実施形態の水噴射処理においては既述したように、上金型(1)に向けて霧状に噴射された水によって、上金型(1)に付着した潤滑剤を洗い落とす水洗効果と、霧状に噴射された水によって、潤滑剤が上金型(1)側に飛散するのを防止するバリア効果とが得られる。
【0078】
このうち水洗効果は、例えば図6,7,8,9,11に示すように、水噴射処理を潤滑剤供給処理と並行して(同時に)行う場合や、図7,8,9,10に示すように潤滑剤供給処理が終了した後に水噴射処理を行う場合に得ることができる。換言すると本発明において水洗効果は、潤滑剤供給処理の開始時点において、水噴射処理が行われている場合、つまり潤滑剤供給処理を開始した以降に、水噴射処理を終了する場合に得ることができる。
【0079】
一方、バリア効果は、主として水噴射処理と潤滑剤供給処理とを並行して(同時に)行う場合に得ることができる。例えば図6,7,8,9,11に示す場合は、両処理の少なくとも一部が並行して行われているため、その両処理が並行している部分において、バリア効果を得ることができる。
【0080】
従って図6,7,8に示すように潤滑剤供給処理を行っている間に終始、水噴射処理を行う場合には、水洗効果およびバリア効果を共に十分に得ることができ、潤滑剤の上金型(1)への付着をより一層確実に防止することができる。もっとも図8に示すように、潤滑剤供給処理を開始する前に、水噴射処理を開始すると、水の噴射量(供給量)が多くなり、型冷えにより、型温度の制御が困難になる可能性がある。このため発明においては図6,7に示すように水噴射処理と潤滑剤供給処理とを同時に開始するのが好ましい。さらに図7に示すように潤滑剤供給処理が終了した以降も、水噴射処理を継続する場合には、潤滑剤供給処理後においても水洗効果を得ることができるため、より一層洗浄効果を向上させることができる。
【0081】
従って本発明においては、水噴射処理を終了する以前に、潤滑剤供給処理を終了する構成を採用するのがこのましい。ここで本発明において、水噴射処理を終了する以前に、潤滑剤供給処理を終了するという場合、両処理を同時に終了する場合も含まれる。
【0082】
なお図12に示すように、水噴射処理を終了した後、潤滑剤供給処理を開始するような場合には、上記の水洗効果やバリア効果を十分に得ることは困難であるものの、水噴射処理時に噴射された水が水蒸気として多少残留するため、その残留水蒸気によるバリア効果を多少得ることができる。従ってこの場合(図12参照)においても、効果の程度は低いものの、潤滑剤が上金型(1)に飛散して付着するのを防止できる効果は得ることができる。
【0083】
ここで本発明において、水噴射処理における水の噴射時間は0.1〜5.0秒(sec)、より好ましくは0.3〜2.3秒に設定するのが良い。さらに水の噴射量(供給量)は0.1〜3.0g、より好ましくは0.2〜1.0gに設定するのが良い。すなわち水の噴射時間や噴射量を上記の特定範囲に設定する場合には、潤滑剤の上金型(1)への付着を防止するバリア効果や、潤滑剤や異物を洗い落とす水洗効果を確実に得ることができる。換言すれば、水の噴射時間や噴射量が少な過ぎる場合には、バリア効果や水洗効果を十分に得ることが困難になるおそれがある。逆に水の噴射時間や噴射量が多過ぎる場合には、水の供給過多により上金型(1)が過度に冷却されて、金型の温度管理が困難になり、成形加工をスムーズに行うことができなくなるおそれがある。
【0084】
また潤滑剤供給処理における潤滑剤の供給時間は0.1〜5.0秒(sec)、より好ましくは0.3〜2.3秒に設定するのが良い。さらに潤滑剤の供給量は0.1〜20.0g、より好ましくは0.3〜10.0gに設定するのが良い。すなわち潤滑剤の供給時間や供給量を上記の特定範囲に設定する場合には、適量の潤滑剤を下金型(1)の全域に偏りなく均一に塗布することができて、成形加工をスムーズに行うことができる。換言すれば、潤滑剤の供給時間や供給量が少な過ぎる場合には、潤滑剤不足によって、成形加工をスムーズに行うことができなくなるおそれがある。逆に潤滑剤の供給時間や供給量が多過ぎる場合には、余剰潤滑剤による悪影響例えば、余剰潤滑剤が成形品に転写される等の不具合が生じて、製品品質の低下を来すおそれがある。
【0085】
また本実施形態において、潤滑剤としては例えば、水溶性や油性の潤滑剤やこれらを混合したもの等を好適に用いることができる。
【0086】
上記実施形態においては、水噴射処理前のエアー吹付処理と、潤滑剤供給処理前のエアー吹付処理と、水噴射処理後のエアー吹付処理と、潤滑剤供給処理後のエアー吹付処理との合計4つのエアー吹付処理を行うようにしているが、本発明において、エアー吹付処理は必ずしも行う必要はなく、エアー吹付処理を行う場合であっても、4つのエアー吹付処理のうち少なくともいずれか1つ以上のエアー吹付処理を行うようにすれば良い。
【0087】
ここで本実施形態において、水噴射処理および潤滑剤供給処理の前に行われる前エアー吹付処理におけるエアーの吹付時間は4.0秒(sec)以下、より好ましくは0.3〜1.0秒に設定するのが良い。すなわちエアーの吹付時間を上記の特定範囲に設定する場合には、金型(1)(2)に付着した塵埃等の異物を吹き飛ばすエアー洗浄効果を十分に得ることができるとともに、エアー吹付による型冷却によって金型の温度管理を精度良く行うことができる。換言すれば、エアーの吹付時間が短過ぎる場合には、吹き飛ばしによるエアー洗浄効果を十分に得られないおそれがある。またエアーの吹付時間が過度に長くなると、吹付時間が長い分、生産効率の低下を来すおそれがある。
【0088】
さらに水噴射処理および潤滑剤供給処理の後に行われる後エアー吹付処理におけるエアーの吹付時間は4.0秒(sec)以下、より好ましくは0.5〜1.2秒に設定するのが良い。すなわちエアー吹付時間を上記の特定範囲に設定する場合には、下金型(2)において、油性潤滑剤の場合には、潤滑剤を広範囲に偏りなく均一に分散させることができるとともに、水溶性潤滑剤の場合には、潤滑剤の乾燥を促進させることができるため、潤滑皮膜を確実に形成できて、良好な潤滑性能を確実に得ることができる。さらに両金型(1)(2)における潤滑カスや異物の除去等のエアー洗浄効果も確実に得ることができる。換言すれば、エアー吹付時間が短過ぎる場合には、潤滑剤の分散や乾燥を十分にできないばかりか、エアー洗浄効果も十分に得られないおそれがある。またエアーの吹付時間が過度に長くなると、その分、生産効率の低下を来すおそれがある。
【0089】
また本実施形態において、アルミニウムまたはその合金製の素材(ワークW)を用いる場合、素材温度は、300〜450℃、好ましくは350〜450℃で行う。温度が低過ぎると所望の形状が得られないか、限界割れが発生する。温度が高すぎると膨れ、挫屈等が生じる可能性がある。
【0090】
さらに金型(1)(2)の温度は、100℃以上、好ましくは150〜350℃で行うのが良い。温度が低過ぎると所望の形状が得られないおそれがある。
【0091】
なお本実施形態において製造されるスクロール部品(7)は、既述したようにエアコンディショナーにおけるスクロールコンプレッサ(圧縮機)に採用される。このスクロールコンプレッサは、共にスクロール部品(7)によって構成される固定スクロールおよび可動スクロールが対向状態に嵌合されるものであり、可動スクロールが固定スクロールに対し偏心回転されるように構成されている。これらのスクロールは、軽量化のためアルミニウム合金で製造されることが多く、その製法としては、鋳造加工、鍛造加工等が用いられるが、強度と信頼性の面や、形状の複雑さ等を考慮した場合、本実施形態のように鍛造加工により製造するのが有利である。
【0092】
本実施形態において、鍛造用素材(ワークW)の材質は、従来より周知の各種の金属を使用できるが例えば、アルミニウム、鉄、銅、真鍮、マグネシウムや、それらの合金等を好適に用いることができる。特に軽量化を目的とする場合には、アルミニウムや、その合金を用いるのが良く例えば、合金記号が2000、3000、4000、5000、6000、7000系の合金等を好適に用いることができる。
【0093】
本発明に用いる素材用の丸棒の製法は、連続鋳造、押出、圧延等いずれであっても良い。アルミニウムやアルミニウム合金の場合、連続鋳造された丸棒材が安価で入手が容易であるため好ましい。アルミニウム合金においては、気体加圧式ホットトップ鋳造法で連続鋳造された丸棒材(例えば、昭和電工株式会社製の「SHOTIC材(登録商標)」)が、優れた内部健全性を持ち、結晶粒が微細であり、かつ、塑性加工による結晶粒の異方性がないため、摩擦抵抗部の抵抗効果を安定的に得ることができるので好ましい。
【0094】
丸棒材は、所定の長さに切断したものを用い、必要に応じて焼きなまし処理を行った後、使用する。
【0095】
またアルミニウム合金が連続鋳造された丸棒材においては予め、480〜520℃の温度で0.5〜4時間の均質化熱処理および/またはその表面にピーリング加工処理を行うようにしても良い。
【0096】
本実施形態の熱間鍛造においては、被加工材(ワークW)にも潤滑剤を塗布して、金型への材料の焼き付きカジリを防止するのが良い。
【0097】
さらに好ましくは、素材(被加工材)を潤滑剤の液中に浸漬して潤滑皮膜を被加工材に予め塗布するのが良い。特に鍛造加工製品がスクロール部品(7)のような形状の場合、羽根(72)が高いため、深く羽根形状に彫りこんだ金型に材料(メタル)を流動させる必要がある。このためスプレー方式では彫りこまれた金型の羽根形状の内壁また潤滑剤が完全に行き渡らないことがある。すると、成型と離型が不完全となり、鍛造加工が困難になるおそれがあるが、上記したように被加工材に予備浸漬による素材潤滑手法を併用することで、潤滑・離型効果を高め、生産性が高く、加工精度も優れた鍛造加工を実現することができる。
【0098】
被加工材の表面に潤滑皮膜を形成する方法としては、溶剤に黒鉛潤滑を混合した液を調合し、それを被加工材に塗布する方法を採用することができる。また生産性の高い工程を考えた場合には、速乾性の溶剤に希釈した潤滑剤を塗布もしくは吹き付ける方法を採用することができる。しかし最も経済的な方法としては、溶媒を水として、黒鉛粉末を混合・分散させた潤滑液を調合し、被加工材を加熱し浸漬した後、乾燥する方法を採用するのが良い。この場合の被加工材の加熱温度は、溶剤である水が十分短時間で蒸発・乾燥する温度が必要で、水の沸点以上でないと、潤滑液が浸漬後も表面に乾かず残るため速乾性は得られない。従って、100℃以上は必須であり、130℃以上に調整するのが、生産性の点で望ましい。また、上限温度は、被加工材が溶解等の材質劣化を起こさない温度以下に設定すればよく、500℃以下、望ましくは450℃以下に設定する。被加工材の加熱には通常、加熱炉が用いられるが、熱間の据込み加工後の被加工材の余熱をそのまま利用し、据込み加工直後に潤滑液中に浸漬することも可能である。この方法では、据込み成形後に潤滑剤の皮膜を形成し、そのまま取り出して乾燥させることができる。
【0099】
またこの被加工材の余熱を利用する方法を採用すれば、切断、加熱、据込み、潤滑、鍛造を連続して実施することも可能であり、効率的に生産することができる。
【0100】
また、据込み加工と鍛造加工を1台のプレス機で同時に行うことも可能であり、その場合には、切断、加熱、潤滑、据込み、鍛造の工程で連続生産が可能となる。
【0101】
なお本実施形態においては、ヒケやダレの発生を防止するために、被加工材(ワーク)の上面側、つまり上金型(1)に対応する側には、素材潤滑をするのは好ましくない。
【0102】
本実施形態においては、上記したように鍛造用材料を素材(ワークW)として、熱間鍛造を行う。鍛造用素材は、スクロール部品(7)の外径より小さく鋳造し、スクロール部品(7)の重量に合わせた長さに切断し、その後据え込み加工を行い必要径に広げる。このときの鍛造用素材(ワークW)の径は、スクロール部品(7)のフランジ外径に合わせて決定される。
【0103】
鍛造加工によって得られたスクロール部品(7)は、強度および耐摩耗性を付与するため、溶体化処理及び時効処理することが好ましい。溶体化処理及び時効処理とは、所定の温度に加熱処理した後、焼入れをし再度、所定の温度にて、所定時間保持する処理のことである。たとえば溶体化処理の温度は、490〜500℃が好ましく、水中焼入れ後、160〜210℃(好ましくは、170〜190℃)で1〜8時間(好ましくは、3〜6時間)の適当な条件を選ぶことにより時効硬化させることができ、十分な硬度の鍛造加工製品が得られる。
【0104】
更に、熱処理後の鍛造加工製品は、必要に応じて、羽根の高さ、形状等を精密切削加工することによりスクロール製品としてコンプレッサ等へ組み込むことができる。
【0105】
なお上記実施形態では、熱間鍛造を採用しているが、それだけに限られず、本発明においては、温間鍛造を採用することもできる。
【0106】
また上記実施形態においては、スクロール部品(7)を製造する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、他の鍛造加工製品、例えば内燃機関のピストン(エンジンピストン)等を製作する場合にも適用することができる。
【実施例】
【0107】
<実施例1>
上記実施形態の鍛造加工装置(図1〜3参照)に準拠して、ダイセット(上金型1および下金型2)と、スプレー装置(6)とを備えたスクロール部品成形用の鍛造加工装置を準備した。
【0108】
この装置を用いて、潤滑工程と、押圧工程とを順次行う熱間鍛造加工を行った。まず潤滑工程においては、上金型(1)の温度を190℃、下金型(2)の温度を200℃に設定した状態で、図13に示すように、スプレー装置(6)によって、上金型(1)に0.4gの水を0.5秒間霧状に噴射すると同時に、下金型(2)に1.0gの潤滑剤を0.5秒間霧状に噴射して供給した。なお潤滑剤としては、黒鉛系油性潤滑剤を用いた。
【0109】
その後、下金型(2)に被加工材(ワーク)をセットした。このワークとしては、合金記号AHS−7のアルミニウム合金製のものを用いた。さらにこのワークの素材温度は、400℃に設定した。
【0110】
こうしてワークをセットした状態で押圧工程を行った。すなわち上金型(1)を下金型(2)に打ち込んで、鍛造加工を行って、スクロール部品(7)を作製した。
【0111】
その後、作製したスクロール部品(7)の外表面特に、フランジ他面側(上面側)を目視により観察して、ヒケやダレ等の欠陥部の発生状況を観察した。そして欠陥部が全く形成されていない場合は「○」、微小の欠陥部は認められるものの、実使用する上で問題のない場合は「△」、実使用する上で不良と思われる欠陥部が認められる場合は「×」として判定した。
【0112】
さらに上金型(1)の洗浄具合、すなわち上金型(1)に塵埃等の異物、潤滑剤が付着しているか否かを目視により観察して、十分に洗浄されている場合は「○」、支障のない程度に洗浄されている場合は「△」、洗浄が不十分の場合は「×」と判定した。
【0113】
スクロール部品における欠陥部(成形品表面の状態)の判定結果および上金型における洗浄具合の判定結果を表1に示す。
【0114】
【表1】


【0115】
<実施例2>
図14に示すように潤滑工程において、上金型(1)にエアーを0.5秒間吹き付けると同時に、下金型(2)に1.0gの潤滑剤を0.5秒間霧状に噴射して供給した。続けて上金型(1)のみに0.4gの水を0.5秒間霧状に噴霧して供給した。
【0116】
その他は、上記実施例1と同様にして、スクロール部品(7)を作製し、上記と同様に、欠陥部の発生状況(成形品表面の状態)、および上金型(1)の洗浄具合を観察した。その観察結果を表1に併せて示す。
【0117】
<比較例1>
図17に示すように潤滑工程において、上金型(1)に0.5秒間エアーを吹き付けると同時に、下金型(2)に1.0gの潤滑剤を0.5秒間霧状に噴射して供給した。
【0118】
その他は、上記と同様にして、スクロール部品(7)を作製し、上記と同様に、欠陥部の発生状況(成形品表面の状態)、および上金型(1)の洗浄具合を観察した。その観察結果を表1に併せて示す。
【0119】
<評価1>
上記の各判定結果に基づき、良好なものから順に「◎」「○」「△」「×」の4段階で評価した。その評価結果を表1に併せて示す。
【0120】
表1から明らかなように、本発明に関連した実施例1,2は、本発明の要旨を逸脱する比較例1よりも優れた評価が得られた。
【0121】
さらに実施例の中でも特に、水噴射処理および潤滑剤供給処理を並行して行う実施例1は、潤滑剤供給処理を行った後、水噴射処理を行う実施例2よりも、優れた評価が得られた。
【0122】
<実施例3>
上記実施形態の鍛造加工装置(図1参照)に準拠して、ダイセット(上金型1および下金型2)と、スプレー装置(6)とを備えたエンジンピストン成形用の鍛造加工装置を準備した。
【0123】
この装置を用いて、潤滑工程と、押圧工程とを順次行う熱間鍛造加工を行った。まず潤滑工程においては、上金型(1)の温度を150℃、下金型(2)の温度を270℃に設定した状態で、図15に示すように、スプレー装置(6)によって、上金型(1)にエアー0.5秒間吹き付ける(前エアー吹付処理)と同時に、下金型(2)にエアー0.5秒間を吹き付けた(前エアー吹付処理)。さらに上金型(1)に対しては、前エアー吹付処理に続けて、0.5gの水を3.3秒間霧状に噴射して供給する水噴射処理と、エアーを1.0秒間吹き付ける後エアー吹付処理とを順次行った。また下金型(2)に対しては、前エアー吹付処理に続けて、5.5gの潤滑剤を1.5秒間霧状に噴射して供給する潤滑剤供給処理と、エアーを1.8秒間吹き付ける後エアー吹付処理とを連続して行った。なお潤滑剤としては、水溶性潤滑剤を用いた。
【0124】
その後、下金型(2)に、被加工材(ワーク)をセットした。このワークは、合金記号AHS−Gのアルミニウム合金製のもので、ワークの素材温度を420℃に設定した。
【0125】
こうしてワークをセットした状態で押圧工程を行った。すなわち上金型(1)を下金型(2)に打ち込んで鍛造加工を行い、有底筒状のエンジンピストンを作製した。
【0126】
その後、作製したエンジンピストンの表面特に、上金型(1)による成形面を目視により観察して、ヒケやダレ等の欠陥部の発生状況を観察した。そして欠陥部が全く形成されていない場合「○」は、微小の欠陥部は認められるものの、実使用する上で問題のない場合は「△」、実使用する上で不良と思われる欠陥部が認められる場合は「×」として判定した。
【0127】
さらに上金型(1)の洗浄具合、すなわち上金型(1)に塵埃等の異物、潤滑剤が付着しているか否かを目視により観察して、十分に洗浄されている場合は「○」、支障のない程度に洗浄されている場合は「△」、洗浄が不十分の場合は「×」と判定した。
【0128】
エンジンピストンにおける欠陥部(成形品表面の状態)の判定結果および上金型における洗浄具合の判定結果を表2に示す。
【0129】
【表2】


【0130】
<実施例4>
図16に示すように潤滑工程において、上金型(1)に対しては、エアーを3.8秒間吹き付ける前エアー吹付処理と、0.5gの水を1.0秒間霧状に噴射して供給する水噴射処理と、エアーを1.0秒間吹き付ける後エアー吹付処理とを連続して行った。また下金型(2)に対しては、エアーを0.5秒間吹き付ける前エアー吹付処理と、5.5gの潤滑剤を1.5秒間霧状に噴射して供給する潤滑剤供給処理と、エアーを1.8秒間吹き付ける後エアー吹付処理とを連続して行った。なお上金型(1)に対する前エアー吹付処理と、下金型(2)に対する前エアー吹付処理とは同時に開始した。
【0131】
その他は、上記実施例3と同様にして、エンジンピストンを作製し、上記と同様に、欠陥部の発生状況(成形品表面の状態)、および上金型(1)の洗浄具合を観察した。その結果を表2に併せて示す。
【0132】
<比較例2>
図18に示すように潤滑工程において、上金型(1)に対しては、エアーを4.8秒間吹き付けるエアー吹付処理のみを行った。また下金型(2)に対しては、エアーを0.5秒間吹き付ける前エアー吹付処理と、5.5gの潤滑剤を1.5秒間霧状に噴射して供給する潤滑剤供給処理と、エアーを1.8秒間吹き付ける後エアー吹付処理とを連続して行った。なお、上金型(1)に対するエアー吹付処理と、下金型(2)に対する前エアー吹付処理とは同時に開始した。
【0133】
その他は、上記実施例と同様にして、エンジンピストンを作製し、上記と同様に、欠陥部の発生状況(成形品表面の状態)、および上金型(1)の洗浄具合を観察した。その結果を表2に併せて示す。
【0134】
<評価2>
上記の各判定結果に基づき、良好なものから順に「◎」「○」「△」「×」の4段階で評価した。その評価結果を表2に併せて示す。
【0135】
表2から明らかなように、本発明に関連した実施例3,4は、本発明の要旨を逸脱する比較例2よりも優れた評価が得られた。
【0136】
さらに実施例3,4の中でも特に、水噴射処理および潤滑剤供給処理を並行して行う実施例3は、潤滑剤供給処理を行った後、水噴射処理を行う実施例4よりも、優れた評価が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0137】
この発明の鍛造加工方法は、金属製品の成形加工に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】この発明の実施形態である鍛造加工方法が適用される鍛造加工装置を示す正面図である。
【図2】実施形態の鍛造加工装置における金型を成形開始直後の状態で示す断面図である。
【図3】実施形態の金型を成形途中の状態で示す断面図である。
【図4】実施形態の金型における摺動金型周辺部を示す水平断面図である。
【図5】実施形態の鍛造加工装置により製作されたスクロール部品を示す斜視図である。
【図6】実施形態における鍛造加工方法の潤滑工程において水、潤滑剤およびエアーを供給するタイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】この発明の第1変形例としての鍛造加工方法の潤滑工程において水、潤滑剤およびエアーを供給するタイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】第2変形例の潤滑工程におけるタイミングチャートである。
【図9】第3変形例の潤滑工程におけるタイミングチャートである。
【図10】第4変形例の潤滑工程におけるタイミングチャートである。
【図11】第5変形例の潤滑工程におけるタイミングチャートである。
【図12】第6変形例の潤滑工程におけるタイミングチャートである。
【図13】この発明に関連した実施例1としての鍛造加工方法の潤滑工程において水、潤滑剤およびエアーを供給するタイミングを示すタイミングチャートである。
【図14】この発明に関連した実施例2の潤滑工程におけるタイミングチャートである。
【図15】この発明に関連した実施例3の潤滑工程におけるタイミングチャートである。
【図16】この発明に関連した実施例4の潤滑工程におけるタイミングチャートである。
【図17】この発明の要旨を逸脱する比較例1としての鍛造加工方法の潤滑工程において水、潤滑剤およびエアーを供給するタイミングを示すタイミングチャートである。
【図18】この発明の要旨を逸脱する比較例2の潤滑工程におけるタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0139】
1…上金型(他方の金型)
2…下金型(一方の金型)
6…スプレー装置(水/潤滑剤供給装置)
611…上向きノズル(水噴射ノズル)
612…下向きノズル(潤滑剤噴射ノズル)
7…スクロール部品
W…ワーク
【出願人】 【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
【出願日】 平成18年11月28日(2006.11.28)
【代理人】 【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義

【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市

【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁


【公開番号】 特開2008−132513(P2008−132513A)
【公開日】 平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願番号】 特願2006−319818(P2006−319818)