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ビレット用潤滑処理装置とビレット潤滑処理方法 - 特開2008−126242 | j-tokkyo
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【発明の名称】 ビレット用潤滑処理装置とビレット潤滑処理方法
【発明者】 【氏名】宮脇 和久

【氏名】太田 昌貴

【要約】 【課題】ビレットの表面に潤滑剤の皮膜を形成するためのビレット用潤滑処理装置、およびビレット潤滑処理方法に関して、潤滑処理の作業効率の向上を図る。

【解決手段】回転体9に装着された複数本のアーム10を備えるディッピング装置5によって、先入れ先出し方式で、各アーム10の先端のビレットホルダ11に装着されたビレット2を潤滑剤3が収容された潤滑槽4内へ連続的に送り込んで、ビレット2の表面に潤滑膜を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビレットの表面に潤滑剤の皮膜を形成するための潤滑処理装置において、
潤滑剤が収容された潤滑槽と、該潤滑槽中の潤滑剤へのビレットの浸漬操作および潤滑剤からのビレットの引上操作を担うディッピング装置とを含み、
前記ディッピング装置は、水平姿勢に支持されて、アクチュエータの駆動力を受けて回転駆動される回転体と、該回転体の外周面から放射状に張り出し形成された複数本のアームとを含み、各アームには前記ビレットを着脱自在に保持するためのビレットホルダが設けられており、
前記回転体を中心に回転する前記ビレットホルダの回転軌跡上には、該ビレットホルダに対するビレットの積み降ろしを行うビレット着脱位置と、前記潤滑槽内の潤滑剤中にビレット全体が浸漬された状態となる浸漬位置と、前記潤滑槽からビレットを引上げて潤滑剤を乾燥・定着させる乾燥位置とが、該回転体の回転方向に沿って順に配置されており、
前記回転体を一方向に所定角度ずつ回転させることにより、前記ビレットホルダに搭載されているビレットを前記ビレット着脱位置、浸漬位置および乾燥位置に順送りに移動させて、先入れ先出し方式で複数個のビレットに対して連続的に潤滑処理を行うことを特徴とするビレット用潤滑処理装置。
【請求項2】
前記ビレットはフラットな上下端面を有する柱状に形成されており、
該ビレットは、アームの伸び方向と該ビレットの上端面の方向とが一致するような姿勢状態で、前記ビレットホルダに搭載されるようになっており、
前記ビレットホルダに搭載され潤滑剤に浸漬された状態のビレットが、回転体の回転に伴って潤滑剤の液面から出始めるときの、該液面とビレットの上端面とのなす角度が、90°以内に設定されていることを特徴とする請求項1記載のビレット用潤滑処理装置。
【請求項3】
前記潤滑剤内から引上げられ前記乾燥位置にあるビレットの下端面と水平方向とのなす角度が、−60°〜+60°の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項2記載のビレット用潤滑処理装置。
【請求項4】
前記ディッピング装置に対するビレットの供給、或いは前記ディッピング装置からのビレットの送出を行う搬送用のシュートと、前記シュートに対するビレットの積み降ろし作業を担うロボットハンドとを備え、
前記シュートは、上向きの開口を有するV字溝状の傾斜路であり、前記ビレットは該傾斜路に沿って自重で落下移動するようになっており、
前記シュートの搬送終端となる下端部には、前記ビレットの端面を受け止めて、ビレットの落下限界を規制するためのストッパーが配設されており、
前記ストッパーは、シュートの下端部から所定の間隙を置いて配設されており、該シュートの搬送終端において、前記ビレットはその下半部がシュートの下端部から突出するような片持ち状の傾斜姿勢で支持されるようになっており、
前記ロボットハンドは、一対の傾斜面を有する上広がりテーパー状の略V字形に形成されており、
前記ロボットハンドの傾斜面により、前記ビレットの前記シュートの下端部からの突出部位を持上げることにより、ロボットハンドでビレットを保持できるようになっている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のビレット用潤滑処理装置。
【請求項5】
潤滑剤が収容された潤滑槽内にビレットを連続的に送り込む工程と、
潤滑槽内においてビレットをこれが送り込まれてきた順に浸漬させて、潤滑剤の塗布処理を行う工程と、
潤滑剤の塗布処理されたビレットを先入されたものから順に潤滑槽外に先出しする工程と、
塗布処理されたビレットを、潤滑槽外へ取り出された順に乾燥させて、その表面に潤滑剤を定着させる乾燥工程とを含み、
これら各工程が、水平姿勢に支持されて、アクチュエータの駆動力を受けて回転駆動される回転体と、該回転体の外周面から放射状に張り出し形成された複数本のアームと、各アームに設けられて、前記ビレットを着脱自在に保持するためのビレットホルダとを備えるディッピング装置によって行われるようになっており、
前記回転体を一方向に回転させることにより、先入れ先出し方式で複数個のビレットに対して連続的に潤滑処理を行うことを特徴とするビレット潤滑処理方法。
【請求項6】
前記ビレットはフラットな上下端面を有する柱状に形成されており、該ビレットは、アームの伸び方向と該ビレットの上端面の端面の方向とが一致するような姿勢状態で、前記ビレットホルダに搭載され、
前記ビレットホルダに搭載され潤滑剤に浸漬された状態のビレットが、回転体の回転に伴って潤滑剤の液面から出始めるときの、該液面とビレットの上端面とのなす角度が、90°以内に設定されていることを特徴とする請求項5記載のビレット潤滑処理方法。
【請求項7】
前記潤滑剤内から引上げられ前記乾燥位置にあるビレットの下端面と水平方向とのなす角度が、−60°〜+60°の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項6記載のビレット潤滑処理方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ビレットの表面に潤滑剤の皮膜を形成するためのビレット用潤滑処理装置、およびビレット潤滑処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のビレット用潤滑処理装置の従来例としては、例えば特許文献1や特許文献2などを挙げることができる。特許文献1に記載の処理装置では、コンベア式のディッピング装置を用いて、ビレットに対して潤滑処理を行っている。より詳しくは、ビレットはシュートを介して潤滑槽内のコンベア上に落下されたのち、該コンベアに載って潤滑槽内を搬送され、所定時間だけ潤滑剤内に浸漬されたのち、潤滑槽から取り上げられて乾燥・定着工程に送られるようになっている。
【0003】
特許文献2に記載の処理装置においては、一対のリボルバを備えるディッピング装置を採用している。各リボルバは、水平な回転軸と、この回転軸に固着支持されるC字形の旋回アームとからなり、旋回アームの先端にはビレットを保持するためのビレットホルダが固着されている。つまり、ディッピング装置は二本の旋回アームを備えている。そして、これら二本の旋回アームが、待機と保持・浸漬とを交互に行うことで、一本ずつビレットに対して潤滑処理を行うようになっている。
【特許文献1】特開昭62−292233号公報
【特許文献2】特開2001−335839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の潤滑処理装置では、シュート上やコンベア上におけるビレットの姿勢制御が非常に困難であるため、コンベア上におけるビレットの姿勢状態によっては、表面の潤滑剤の塗布状態が不均一となって、潤滑膜の膜厚が不均一となるおそれがある。コンベアが潤滑槽内に浸かっているため、装置が短寿命である点や、保守が困難である点にも不利がある。
【0005】
特許文献2に記載の潤滑処理装置では、リボルバを構成する旋回アームが、待機と保持・浸漬とを交互に行う仕様であるため、一度に一本ずつしか潤滑剤の塗布作業を進めることができず、潤滑処理を効率的に進めることができない。加えて、一対の回転軸を備え、これらを独立的に回転させる構成であるため、駆動部分の構成が複雑で装置が大掛かりになることが避けられず、潤滑処理装置の全体コストが増加する不利もある。
【0006】
本発明の目的は、ビレットに対して連続的に潤滑処理を施すことができ、したがって潤滑処理を作業効率良く進めることができるビレット用潤滑処理装置と、その潤滑処理方法を得ることにある。本発明の目的は、ビレットの表面に均一な膜厚の潤滑膜を形成することができるビレット用潤滑処理装置と、その潤滑処理方法を得ることにある。本発明の目的は、従来のビレット用潤滑処理装置に比べて構造が簡素で安価に製造することができ、しかもコンパクトなビレット用潤滑処理装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明は、ビレットの表面に潤滑剤の皮膜を形成するための潤滑処理装置を対象とする。この潤滑処理装置は、潤滑剤が収容された潤滑槽と、該潤滑槽中の潤滑剤へのビレットの浸漬操作および潤滑剤からのビレットの引上操作を担うディッピング装置とを含む。前記ディッピング装置は、水平姿勢に支持されて、アクチュエータの駆動力を受けて回転駆動される回転体と、該回転体の外周面から放射状に張り出し形成された複数本のアームとを含み、各アームには前記ビレットを着脱自在に保持するためのビレットホルダが設けられている。前記回転体を中心に回転する前記ビレットホルダの回転軌跡上には、該ビレットホルダに対するビレットの積み降ろしを行うビレット着脱位置と、前記潤滑槽内の潤滑剤中にビレット全体が浸漬された状態となる浸漬位置と、前記潤滑槽からビレットを引上げて潤滑剤を乾燥・定着させる乾燥位置とが、該回転体の回転方向に沿って順に配置されている。そして、前記回転体を一方向に所定角度ずつ回転させることにより、前記ビレットホルダに搭載されているビレットを前記ビレット着脱位置、浸漬位置および乾燥位置に順送りに移動させて、先入れ先出し方式で複数個のビレットに対して連続的に潤滑処理を行うことができるようになっていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の本発明に係るビレット用潤滑処理装置においては、前記ビレットはフラットな上下端面を有する柱状に形成されており、該ビレットは、アームの伸び方向と該ビレットの上端面の端面の方向とが一致するような姿勢状態で、前記ビレットホルダに搭載されるようになっている。そして、前記潤滑槽内の潤滑剤の液面高さと、前記ビレットの上端面とで規定される、引上げ開始角度θ1、つまり前記ビレットホルダに搭載され潤滑剤に浸漬された状態のビレットが、回転体の回転に伴って潤滑剤の液面から出始めるときの、該液面とビレットの上端面とのなす角度が、90°以内に設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の本発明に係るビレット用潤滑処理装置においては、水平方向と前記乾燥位置における前記ビレットの下端面とで規定される、当該乾燥位置における停止角度θ2が、60°以内に設定されている、つまり前記潤滑剤内から引上げられ前記乾燥位置にあるビレットの下端面と水平方向とのなす角度が、−60°〜+60°の範囲内に設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の本発明に係るビレット用潤滑処理装置においては、前記ディッピング装置に対するビレットの供給、或いは前記ディッピング装置からのビレットの送出を行う搬送用のシュートと、前記シュートに対するビレットの積み降ろし作業を担うロボットハンドとを備えている。前記シュートは、上向きの開口を有するV字溝状の傾斜路であり、前記ビレットは該傾斜路に沿って自重で落下移動するようになっている。前記シュートの搬送終端となる下端部には、前記ビレットの端面を受け止めて、ビレットの落下限界を規制するためのストッパーが配設されている。前記ストッパーは、シュートの下端部から所定の間隙を置いて配設されており、該シュートの搬送終端において、前記ビレットはその下半部がシュートの下端部から突出するような片持ち状の傾斜姿勢で支持されるようになっている。前記ロボットハンドは、一対の傾斜面を有する上広がりテーパー状のV字形に形成されている。
そして、前記ロボットハンドの傾斜面により、前記ビレットの前記シュートの下端部からの突出部位を持上げることにより、ロボットハンドでビレットを保持できるようになっている。
【0011】
請求項5記載の本発明に係るビレット潤滑処理方法は、潤滑剤が収容された潤滑槽内にビレットを連続的に送り込む工程と、潤滑槽内においてビレットをこれが送り込まれてきた順に浸漬させて、潤滑剤の塗布処理を行う工程と、潤滑剤の塗布処理されたビレットを先入されたものから順に潤滑槽外に先出しする工程と、塗布処理されたビレットを、潤滑槽外へ取り出されたものから順に乾燥させて、その表面に潤滑剤を定着させる乾燥工程とを含む。そして、これら各工程が、水平姿勢に支持されて、アクチュエータの駆動力を受けて回転駆動される回転体と、該回転体の外周面から放射状に張り出し形成された複数本のアームと、各アームに設けられて、前記ビレットを着脱自在に保持するためのビレットホルダとを備えるディッピング装置によって行われるようになっており、前記回転体を一方向に回転させることにより、先入れ先出し方式で複数個のビレットに対して連続的に潤滑処理を行うことができるようになっていることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の本発明に係るビレット潤滑処理方法は、前記ビレットはフラットな上下端面を有する柱状に形成されており、該ビレットは、アームの伸び方向と該ビレットの上端面の端面の方向とが一致するような姿勢状態で、前記ビレットホルダに搭載されるようになっており、前記潤滑槽内の潤滑剤の液面高さと、前記ビレットの上端面とで規定される、潤滑槽からの引上げ開始角度θ1、つまり前記ビレットホルダに搭載され潤滑剤に浸漬された状態のビレットが、回転体の回転に伴って潤滑剤の液面から出始めるときの、該液面とビレットの上端面とのなす角度が、90°以内に設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の本発明に係るビレット潤滑処理方法は、水平方向と前記乾燥工程における前記ビレットの下端面とで規定される停止角度θ2が、60°以内に設定されている、つまり前記潤滑剤内から引上げられ前記乾燥位置にあるビレットの下端面と水平方向とのなす角度が、−60°〜+60°の範囲内に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の本発明に係るビレット用潤滑処理装置においては、先入れ先出し方式でディッピング装置によりビレットを潤滑剤が収容された潤滑槽内へ連続的に送り込んで、ビレットを潤滑剤内に浸漬させたのち、潤滑槽からビレットを引上げて乾燥させることにより、ビレットの表面に潤滑剤の塗膜(以下、潤滑膜と記す)を形成することができるようにした。したがって、この装置によれば、複数本のビレットに対する浸漬処理と乾燥処理とを同時並行的に行うことが可能となって、潤滑処理を作業効率良く進めることができる。
【0015】
また、本発明に係る処理装置に拠れば、その駆動機構として、回転体を一方向に所定角度ずつ回転させるものであればよく、従来の特許文献1のようなコンベア式や、特許文献2のような二本の旋回アームを交互に旋回させる方式に比べて、駆動機構の構造が簡単で部品点数が少なくて済み、さらにコンパクトな全体構造にすることができ、安価に製造することができる。換言すれば、この処理装置は、モータなどの一つのアクチュエータで可動させることができ、安価に製造できる点でも優れている。
【0016】
また、複数本のアームで構成されるアーム群の個数を増やすことで、潤滑処理時間の変更や、これに伴う回転体の循環時間の変更に容易に対応できる点でも優れている。つまり、一つのビレットに対する潤滑処理に時間が掛かる場合には、回転体に装着されるアーム群の個数を一列から二列に増やすだけで、処理能力を倍増させることができる。このように、本発明に係るビレット用潤滑処理装置は、アクチュエータの個数を増やすことなく、アーム群の列数を増やすだけで、ビレットの潤滑処理に要する時間の変化に対応することができ、装置全体の処理能力の変更調整が容易である点でも実用利便上優れている。
【0017】
ビレットをフラットな上下端面を有する柱状とした場合には、該ビレットを潤滑槽内の潤滑剤から取り出す際に、表面張力により上端面に潤滑剤が残存し、側面に垂れて一部分の潤滑膜の膜厚が厚くなることがある。重力により潤滑剤が下方に引っ張られることで、膜厚の薄い部分ができることもある。このように、液垂れなどにより液斑が発生することにより、潤滑膜の膜厚が不均一となると、潤滑処理の品質(コーティング処理の品質)が低下する。
その点、請求項2記載の本発明のように、潤滑槽内の潤滑剤の液面高さと、ビレットの上端面とで規定される、引上げ開始角度θ1を90°以内に設定していると、当該角度θ1が90°以上である場合に比べて、上端面に掬い取られる潤滑剤の液量を抑えることができるので、上端面に残存した潤滑剤が側面に垂れることに起因する液斑の発生を抑制して、ビレットの表面に均一な膜厚の潤滑膜を形成することができる。
【0018】
加えて、請求項3記載の本発明のように、水平方向と前記乾燥位置における前記ビレットの下端面の端面方向とで規定される、当該乾燥位置における停止角度θ2が、60°以内に設定されていると、潤滑膜の膜厚が均一化された状態で乾燥させることができる。つまり、乾燥位置におけるビレットの水平方向に対する傾斜姿勢が上方または下方に60°より大きくなると、下方に指向する側面に潤滑剤が溜まりやすく、当該部位の潤滑膜の膜厚が歪に大きくなりやすい。これに対して、請求項3記載の本発明のように、乾燥位置における停止角度θ2が60°以内に設定されていると、潤滑剤が一箇所に溜まることを防ぐことができるので、ビレットの表面に均一な膜厚の潤滑膜を形成することができる。
【0019】
請求項4記載の本発明のように、シュートの搬送終端となる下端部から所定の間隙を置いた位置に、ビレットの落下限界を規制するためのストッパーを配設し、該ストッパーでビレットがその下半部がシュートの下端部から突出するような片持ち状の傾斜姿勢で支持されるようにするとともに、当該シュートからの突出部位をロボットハンドの傾斜面で持上げることで、該ロボットハンドでビレットを保持できるようにしていると、アクチュエータ等の構造を必要とすることなく、ビレットをロボットハンドで保持(チャック)することができるので、その点において、処理装置の全体コストの削減に貢献することができる。ロボットハンドを上広がりテーパー状の傾斜面で構成することにより、円柱状のビレットの径寸法に左右されることなく、ロボットハンドでビレットを保持(チャック)できる点でも優れている。
【0020】
請求項5記載のビレット循環処理方法によれば、基本的に請求項1記載の本発明と同様の作用効果を得ることができる。
すなわち、先入れ先出し方式でディッピング装置によりビレットを潤滑剤が収容された潤滑槽内へ連続的に送り込んで、ビレットを潤滑剤内に浸漬させたのち、潤滑槽からビレットを引上げて乾燥させることにより、ビレットの表面に潤滑膜を形成するようにしたので、複数本のビレットに対する浸漬処理と乾燥処理とを同時並行的に行え、潤滑処理の作業効率の格段の向上を図ることができる。
【0021】
請求項6記載のビレット循環処理方法によれば、基本的に請求項2記載の本発明と同様の作用効果を得ることができる。
すなわち、潤滑槽内の潤滑剤の液面高さと、ビレットの上端面とで規定される、引上げ開始角度θ1を90°以内に設定していると、当該角度θ1が90°以上である場合に比べて、上端面に掬い取られる潤滑剤量を抑えることができるので、上端面に残存した潤滑剤が側面に垂れることに起因する液斑の発生を抑制して、ビレットの表面に均一な膜厚の潤滑膜を形成することができる。
【0022】
請求項7記載のビレット循環処理方法によれば、基本的に請求項3記載の本発明と同様の作用効果を得ることができる。
すなわち、水平方向と前記乾燥位置における前記ビレットの下端面とで規定される、当該乾燥位置における停止角度が60°以内に設定されていると、潤滑剤が一箇所に溜まることを防ぐことができるので、ビレットの表面に均一な膜厚の潤滑膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係るビレット用潤滑処理装置およびビレット潤滑処理方法について、図面を参照して説明する。図1はビレット用潤滑処理装置(以下、適宜に単に「処理装置」と記す)の正面図、図2は処理装置の平面図、図3は潤滑槽からのビレットの引上げ開始角度θ1を示す図、図4は乾燥位置における停止角度θ2を示す図、図5はロボットハンドによるビレットホルダからのビレットの積み降ろし作業を説明するための図、図6および図7はロボットハンドによるシュートからのビレットの取り出し作業を説明するための図である。なお、以下において、図2における上方向(モータ8が配設されている方向)を後方向とし、これとは逆の下方向(シュート7が配設されている方向)を前方向と規定する。また、かかる前後方向と水平方向に直交する方向を、左右方向と規定する。
【0024】
処理装置1による潤滑処理の対象物となるビレット2は、フラットな上下端面2a・2bを有する円柱状を呈している。処理装置1は、黒鉛などを含む水性或いは油性の溶液からなる潤滑剤3にビレット2を浸漬したのち、該ビレット2の表面に付着の潤滑剤を乾燥させることにより、ビレット2の表面に潤滑剤のコーティング皮膜(以下、潤滑膜と記す)を形成することを目的とする。
【0025】
図1および図2に示すように、処理装置1は、潤滑剤3が収容された潤滑槽4と、この潤滑槽4中の潤滑剤3へのビレット2の浸漬操作、および潤滑剤3からのビレット2の引上操作を担うディッピング装置5と、潤滑処理後のビレット2を搬送するためのシュート7とを備える。
【0026】
図1および図2に示すように、潤滑槽4は、上方開口を有する有底の四角箱型を呈しており、その内部に潤滑剤3が収容されている。ディッピング装置5は、潤滑槽4の後壁4aに装着固定されたモータ8(アクチュエータ)と、潤滑槽4の前後壁4b・4aの間に水平姿勢で架設されて、モータ8の駆動力を受けて回転する回転体9と、回転体9の外周面から等角度位置(60°間隔)に放射状に張り出し形成された複数本(本実施形態では6本)のアーム10とからなる。各アーム10の先端部にはビレット2を着脱自在に保持するためのビレットホルダ11が装着されている。
【0027】
ビレットホルダ11は、永久磁石であるマグネット12を主要構成要素とするものであり、該マグネット12が発揮する磁気吸着力により、図1乃至図5に示すように、ビレット2の下端面2bを脱落不能に保持する。より詳しくは、図1乃至図5に示すように、ビレットホルダ11に搭載された状態において、ビレット2は、アーム10の伸び方向と上端面2aの方向とが一致するような姿勢状態でビレットホルダ11に搭載される。
【0028】
図5に仮想線で示すごとく、アクチュエータによって作動するロボットハンド15で挟持保持(チャック)したビレット2を、ビレットホルダ11の対向位置に運ぶだけで、ビレットホルダ11にビレット2の下端面2bを磁気吸着力により保持させて、これを脱落不能に搭載させることができる(図5の矢印S1参照)。逆にロボットハンド15でビレットホルダ11に保持されているビレット2をチャックしたうえで、マグネット12の磁気吸着力に抗してビレット2を動かすだけで、該ビレット2をビレットホルダ11から取り外すことができる(図5の矢印S2参照)。
【0029】
図1および図2に示すごとく、回転体9にはアームユニット16が組み付けられている。このアームユニット16は、回転体9に外嵌装着される六角柱状のホルダ17と、該ホルダ17を構成する六つの面の夫々から張り出し形成されたアーム10とで構成されている。なお、この回転体9には複数個のアームユニット16を組み付けることができる。つまり、回転体9には、図示例のように一個のアームユニット16だけでなく、二個以上のアームユニット16を組み付けることもできる。回転体9に二つのアームユニット16を組み付けた場合には、ディッピング装置5は12本のアーム10を具備するものとなる。
【0030】
モータ8は、所謂ステッピングモータであり、不図示の駆動回路からの制御信号を受けて、1ステップで60°ずつ、時計まわり(図1の矢印参照)に、所定速度で回転体9を回転させる。
図1に、ディッピング装置5の常態姿態を示す。同図からわかるように、ディッピング装置5は、下方に位置する二本のアーム10・10が斜め傾斜姿勢で潤滑槽4内に位置し、二本のアーム10・10が水平姿勢にあり、残りの二本のアーム10・10が斜め傾斜姿勢で上方に向くような姿勢を常態姿態とする。そして、駆動回路からの制御信号を受けた際に、モータが60°ずつ回転体9を回転させることにより、各アーム10は時計回りに回転体9まわりに回転するものの、全体としては常に同様の常態姿態を採るように構成されている。
【0031】
図1に示すように、常態姿態におけるアーム10およびビレットホルダ11の位置は、回転体9の回転方向(時計回り)に沿ってA1〜A6で示すことができる。ここでA1は、ビレットホルダ11に対するビレット2の積み降ろしを行うビレット着脱位置を、A2およびA3は待機位置を、A4およびA5は、潤滑槽4内の潤滑剤3中にビレット2の全体が浸漬された状態となる浸漬位置を、A6は潤滑槽4からビレット2を引上げて、ビレット2の表面に付着の潤滑剤を乾燥・定着させる乾燥位置を示す。なお、図1において、符号18は乾燥位置(A6)において、ビレット2に乾燥風を当てるためのファンを示す。
【0032】
A1のビレット着脱位置では、図5に示すように、乾燥位置(A6)を経て潤滑処理が終了したビレット2をロボットハンド15でチャックして、ビレットホルダ11から取り外すとともに(矢印S2参照)、未処理のビレット2をビレットホルダ11に搭載させる(矢印S1参照)。潤滑処理が終了したビレット2は、ロボットハンド15によってシュート7に送られる(矢印S3参照)。
【0033】
ビレットホルダ11に搭載された未処理のビレット2は、A2次いでA3の待機位置を経て、潤滑槽4内の潤滑剤3内に浸漬され、A4、およびA5の浸漬位置で、その表面に潤滑剤が塗布される。
【0034】
A5の浸漬位置を経たビレット2は、乾燥位置(A6)に送られる。この乾燥位置(A6)では、ファン18からの乾燥風により、ビレット2の表面に付着の潤滑剤を乾燥・定着させて、ビレット2の表面に潤滑層を形成する。
【0035】
このように、回転体9を時計まわりの方向に所定角度(60°)ずつ回転させて、これを一回転(360°)させるだけで、ビレットホルダ11に搭載されているビレット2を、ビレット着脱位置(A1)、浸漬位置(A4、A5)、乾燥位置(A6)に順送りに移動させて、先入れ先出し方式で六個のビレット2に対して、潤滑処理を連続的に行うことができるようになっている。
【0036】
そのうえで、本実施形態に係る処理装置1では、潤滑槽4からのビレット2の引上げ開始角度θ1と、乾燥位置における停止角度θ2とを規定することで、液垂れなどに起因する液斑の発生を抑えて、ビレット2の表面に形成される潤滑膜の均一化を図り、潤滑処理の品質向上を図っている。
【0037】
図3に示すように、前記引上げ開始角度θ1は、潤滑槽4内の潤滑剤3の液面高さ(h1)と、ビレット2の上端面2aとで規定されている。具体的には、前記ビレットホルダ11に搭載され潤滑剤3に浸漬された状態のビレット2が、回転体9の回転に伴って潤滑剤3の液面から出始めるときの、液面高さ(h1)とビレット2の上端面2aとのなす角度を引上げ開始角度θ1としており、該引上げ開始角度θ1が90°以内となるように設定している。
これによれば、当該角度θ1が90°以上である場合に比べて、潤滑剤3からのビレット2の引上げ時において、上端面2aに掬い取られる潤滑剤3の液量を抑えることができるので、乾燥位置(A6)において、上端面2aに残存した潤滑剤3が側面に垂れることに起因する液斑の発生を抑制することができ、したがって、ビレット2の表面に均一な膜厚の潤滑膜を形成することができる。
【0038】
また、図4に示すように、前記停止角度θ2は、水平方向と乾燥位置(A6)におけるビレット2の下端面2bの端面方向とで規定されている。具体的には、前記潤滑剤3内から引上げられ前記乾燥位置(A6)にあるビレット2の下端面2bと水平方向とのなす角度を停止角度θ2としており、該停止角度θ2を60°以内に設定している。
前記停止角度θ2は、水平方向から回転体9の回転方向および回転方向とは逆の方向に向けて規定されている。つまり、乾燥位置(A6)にあるビレット2は、水平方向に対して−60°回転(下方へ60°回転)した位置から、水平方向に対して+60°回転(上方へ60°回転)した位置までの範囲内に停止していることとなる。
停止角度θ2を60°以内としたのは、当該角度θ2が60°より大きくなると、ビレット2の下方に指向する側面の部分に潤滑剤が溜まりやすく、当該部位の潤滑膜の膜厚が歪に大きくなりやすいことによる。これに対して、乾燥位置(A6)における停止角度θ2が60°以内に設定されていると、潤滑剤が一箇所に溜まることを効果的に防ぐことができるので、ビレット2の表面に均一な膜厚の潤滑膜を形成することができる。
【0039】
次に、シュート7の搬送終端からのロボットハンド20によるビレット2のチャック方法について、図5乃至図7を参照して説明する。図6に示すように、シュート7は、上向きの開口を有するV字溝状の傾斜路であり、先のロボットハンド15(図5参照)にチャックされてシュート7に載せられたビレット2は、シュート7の傾斜路に沿って自重で落下移動するようになっている。
【0040】
図6において、符号30は、シュート7の搬送終端となる下端部に装着されて、ビレット2の下端面2bを受け止めて、シュート7上におけるビレット2の落下限界を規制するためのストッパーを示す。このストッパー30は、シュート7のV字溝の下端部に沿う支持部30aと、支持部30aの遊端部から上向きに折り曲げられた本体部30bとで構成されるL字状の金具であり、本体部30bの先端部でビレット2の下端面2bを受け止めて、その落下限界を規制する。
ストッパー30は、その本体部30bがシュート7の下端部から所定の間隙を置いた位置に存するように配設されている。したがって、シュート7の搬送終端において、ビレット2はその上半部がシュート7で支持され、下半部がシュート7の下端部から突出して、ストッパー30の本体部30bで受け止められるような片持ち状の傾斜姿勢で支持されている。
【0041】
図6および図7(a)(b)において、符号20は、シュート7からのビレット2の積み降ろし作業を担うロボットハンドを示す。このロボットハンド20は、急峻な傾斜面21a・21aを対向面として有する一対の保持片21・21で構成される上広がりテーパー状のV字形に形成されている。
【0042】
以上のような構成からなるロボットハンド20でビレット2をチャックする手順について、図6および図7(a)(b)を参照して説明する。まず、ロボットハンド20の傾斜面21a・21aにより、ビレット2のシュート7の下端部からの突出部位を持上げて、該傾斜面21a・21bによりビレット2の外周面を下方向から挟持保持する(図6の矢印S4参照)。このとき、図7(b)に示すように、ビレット2の最下端部が、ストッパー30の本体部30bの先端部に干渉しない、十分な高さ位置までビレット2を持上げる。
次いで、ビレット2を持上げた状態で、ロボットハンド20を下方向に移動させる(図6の矢印S5参照)。これにより、シュート7の下端部からビレット2を取り出すことができ、潤滑処理後のビレット2を次の工程に搬送することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態に係るビレット用潤滑処理装置1によれば、回転体9に装着された6本のアーム10とを備えるディッピング装置5によって、先入れ先出し方式で、各アーム10の先端のビレットホルダ11に装着されたビレット2を潤滑剤3が収容された潤滑槽4内へ連続的に送り込んで、ビレット2の表面に潤滑膜を形成するようにしたので、潤滑処理の作業効率の格段の向上を図ることができる。
【0044】
加えて、この処理装置1によれば、駆動機構が回転体9を一方向に所定角度ずつ回転させるもの(ステッピングモータ8)であればよく、従来の特許文献1のようなコンベア式や、特許文献2のような二本の旋回アームを交互に旋回させる方式に比べて、駆動機構の構造が簡単で部品点数が少なくて済み、さらにコンパクトな全体構造にすることができ、安価に製造することができる。換言すれば、この処理装置は、一つのモータ8だけで可動させることができ、安価に製造できる点でも優れている。
【0045】
また、複数本のアーム10で構成されるアームユニット16の個数を増やすことだけで、潤滑処理時間の変更や、これに伴う回転体9の循環時間の変更に簡便に対応できる点でも優れている。つまり、乾燥処理が長時間を要するなど、一つのビレット2に対する潤滑処理に時間が掛かる場合には、回転体9に装着されるアームユニット16の個数を増やすだけで、処理能力の増強を図ることができる。このように、本実施形態に係る処理装置1は、モータ8の個数を増やすことなく、アームユニット16の個数を増減するだけで、ビレット2の潤滑処理に要する時間の変化に対応することができ、装置全体の処理能力の変更調整が容易である点でも実用利便上優れている。
【0046】
また、本実施形態においては、図6および図7に示すように、シュート7の搬送終端となる下端部から所定の間隙を置いた位置に、ビレット2の落下限界を規制するためのストッパー30の本体部30bを配設し、該本体部30bによって、ビレット2がその下半部がシュート7の下端部から突出するような片持ち状の傾斜姿勢で支持されるようにするとともに、当該突出部位をロボットハンド20の傾斜面21a・21aで持上げることで、該ロボットハンド20でビレット2を保持できるようにしている。これによれば、アクチュエータ等の構造を必要とすることなく、ビレット2をロボットハンド20でチャックすることができるので、その点において、処理装置1の全体コストの削減に貢献することができる。ロボットハンド20を上広がりテーパー状の傾斜面21a・21aで構成することにより、円柱状のビレット2の径寸法に左右されることなく、ビレット2を保持(チャック)することができるので、ビレット2の径寸法に対応して複数種のロボットハンド20を用意する必要がなく、この点においても処理装置1の全体コストの削減に貢献することができる。
【0047】
上記実施形態においては、回転体9を回転駆動させるアクチュエータとして、ステッピングモータ8を採用していたが、本発明はこれに限られず、出力軸の位相を制御することができるアクチュエータであれば、当該ステッピングモータには限定されない。
【0048】
また、上記実施形態においては、ディッピング装置5からのビレット2の送出を行う搬送用のシュート7を例にして、本発明(請求項4)を説明したが、本発明はこれに限られず、ディッピング装置5に対するビレット2の供給用のシュートに、本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るビレット用潤滑処理装置の正面図である。
【図2】本発明に係るビレット用潤滑処理装置の平面図である。
【図3】潤滑槽からのビレットの引上げ開始角度θ1を説明するための図である。
【図4】乾燥位置における停止角度θ2を説明するための図である。
【図5】ロボットハンドによるビレットホルダからのビレットの積み降ろし作業を説明するための図である。
【図6】ロボットハンドによるシュートからのビレットのチャック作業を説明するための図である。
【図7】ロボットハンドによるシュートからのビレットのチャック作業を説明するための図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ビレット用潤滑処理装置
2 ビレット
2a ビレットの上端面
2b ビレットの下端面
3 潤滑剤
4 潤滑槽
5 ディッピング装置
7 シュート
8 アクチュエータ(モータ)
9 回転体
10 アーム
11 ビレットホルダ
20 ロボットハンド
30 ストッパー
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年11月16日(2006.11.16)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎


【公開番号】 特開2008−126242(P2008−126242A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−310810(P2006−310810)