トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 鍛造加工装置および鍛造加工方法
【発明者】 【氏名】嶺岸 正弘

【要約】 【課題】歯面の加工精度が高い高精度の歯車を歩留まり良く鍛造加工し得るようにする。

【解決手段】軸方向に往復動自在に装着された可動台25に取り付けられるダイス33が下型21に設けられるとともに、ダイス33に噛み合うダイスリーブ41が設けられている。下型21に対して上下動自在となった上型22には、ダイス33を押し込み移動するパンチ57が設けられるとともに、歯車素材Wの貫通孔に挿入されるガイド部64と歯車素材Wを径方向に押し広げる拡径加工部63とを有するマンドレル58が上型22に設けられている。マンドレル58の拡径加工部63が歯車素材Wを押し広げた後にマンドレル58は戻され、パンチ57によりダイス33をダイスリーブ41に摺動させながら押し込み移動することにより歯車素材Wは内径を縮小しつつ軸方向に押し潰されて歯車が成形される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に貫通孔が形成された歯車素材の外面に歯形を成形する鍛造加工装置であって、
第1金型に軸方向に往復動自在に装着された可動台に取り付けられ、前記歯車素材に成形される各歯に対応した歯形成形歯が形成され前記歯車素材が挿入されるダイスと、
前記第1金型に装着され、前記ダイスの軸方向移動時に前記歯形成形歯に噛み合って前記ダイスが摺動する噛み合い歯が設けられたダイスリーブと、
前記第1金型に向けて軸方向に往復動自在に配置される第2金型に取り付けられ、前記第2金型が前記第1金型に向けて接近移動する際に前記ダイスを押し込み移動するパンチと、
加工前の前記歯車素材の貫通孔に挿入されるガイド部と前記歯車素材を径方向に押し広げる拡径加工部とが設けられ、前記パンチに軸方向に往復動自在に組み込まれるマンドレルと、
前記第2金型に設けられ、前記パンチが前記ダイスに接触するまで前記第2金型が前記第1金型に接近移動して前記拡径加工部が前記歯車素材を押し広げた後における前記第2金型の引き続く接近移動時に前記マンドレルを戻す方向に移動させるマンドレル戻し手段とを有し、
前記マンドレルを戻しながら前記パンチにより前記ダイスを前記ダイスリーブに摺動させながら押し込み移動して前記歯車素材の内径を縮小しつつ軸方向に押し潰して歯車を成形することを特徴とする鍛造加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の鍛造加工装置において、前記第2金型に軸方向に移動自在に装着され、前記第2金型の前記第1金型に対する接近移動時に前記第1金型により駆動される駆動ロッドと、前記第2金型に揺動自在に設けられ、前記駆動ロッドの移動を前記マンドレルの戻し移動に変換する揺動アームとにより前記マンドレル戻し手段を構成することを特徴とする鍛造加工装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の鍛造加工装置において、前記ダイスリーブを前記第1金型に回動自在に装着し、前記ダイスが前記ダイスリーブと摺動するときに前記ダイスを回動させて前記歯車素材にはす歯の歯形を成形することを特徴とする鍛造加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の鍛造加工装置において、前記第1金型に固定され前記ダイスを軸方向に往復動自在に案内するガイド部材に、前記ダイスのテーパ形状の外周面に接触するテーパ形状のガイド面を形成し、前記ダイスが前記パンチにより押し込み移動する際に前記ダイスの軸方向両端部を径方向および周方向に弾性収縮変形させ、前記歯車素材の各歯の歯面にクラウニングを成形することを特徴とする鍛造加工装置。
【請求項5】
中心部に貫通孔が形成された歯車素材の外面に歯形を成形する鍛造加工方法であって、
第1金型に軸方向に往復動自在に装着された可動台に取り付けられ、前記歯車素材に成形される各歯に対応した歯形成形歯が形成されたダイスと、前記第1金型に装着され、前記ダイスの軸方向移動時に前記歯形成形歯に噛み合って前記ダイスが摺動する噛み合い歯が設けられたダイスリーブとにより形成される歯車素材収容スペース内に前記歯車素材を挿入する素材セット工程と、
前記第1金型に向けて軸方向に往復動自在に配置される第2金型に取り付けられ、前記第2金型が前記第1金型に向けて接近移動する際に前記ダイスを押し込み移動するパンチと、加工前の前記歯車素材の貫通孔に挿入されるガイド部および前記歯車素材を径方向に押し広げる拡径加工部が設けられ、前記パンチに軸方向に往復動自在に組み込まれるマンドレルとを前記第1金型に向けて接近移動させて前記マンドレルの前記拡径加工部により前記歯車素材を押し広げる押し広げ工程と、
前記歯車素材を押し広げた後における前記第2金型の引き続く接近移動時に前記マンドレルを戻す方向に移動させながら前記パンチにより前記ダイスを前記ダイスリーブに摺動させながら押し込み移動して前記歯車素材の内径を縮小しつつ軸方向に押し潰す分流工程とを有することを特徴とする鍛造加工方法。
【請求項6】
請求項5記載の鍛造加工方法において、前記ダイスが前記ダイスリーブと摺動するときに前記ダイスを回動させて前記歯車素材にはす歯の歯形を成形することを特徴とする鍛造加工方法。
【請求項7】
請求項5または6記載の鍛造加工方法において、前記ダイスが前記パンチにより押し込み移動する際に前記ダイスの軸方向両端部を径方向および周方向に弾性収縮変形させ、前記歯車素材の各歯の歯面にクラウニングを成形することを特徴とする鍛造加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は平歯車やはすば歯車等の円筒歯車を鍛造加工するための鍛造加工装置および鍛造加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中心部に貫通孔を有する円筒歯車には、歯筋が中心軸に平行となった平歯車や歯筋がつる巻き線であるはす歯歯車つまりヘリカル歯車がある。このような円筒歯車を鍛造加工するには、固定された下型とこれに対して上下動自在となった上型とを有する鍛造プレスが用いられており、中心部に貫通孔が形成された環状ないし円筒形状の歯車素材を軸方向に押し潰して歯車素材の外周に歯面を形成するようにしている。このような鍛造加工には、複数の加工工程により歯面の形状を加工する方法と、上型を下型に向けて押し付ける1工程で歯面の形状を加工する方法とがある。
【0003】
1工程で歯面の形状を加工する場合には、特許文献1に記載されるように、上型や下型にピストンを組み込むようにしたり、特許文献2に記載されるように上型内に複数のピストンを組み込むようにした複動式の鍛造プレスと、特許文献3に記載されるように、複動機能を付加して1工程で歯面の形状を加工するようにした鍛造プレスとがある。
【特許文献1】特開2002−307126号公報
【特許文献2】特開平11−156471号公報
【特許文献3】特開2001−47176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の加工工程により歯面の形状を加工する場合には、歯車加工に時間がかかるだけでなく、半製品を工程相互間で搬送するために搬送時における不具合発生があるが、このような問題点は、上記公報に示すように、1工程で歯面の形状を加工すると回避することができる。従来の複動式の鍛造プレスや複動機能を持たせた鍛造プレスを用いた加工においては、環状や円筒形状の歯車素材を軸方向に押し潰すとともに径方向に押し広げることにより歯車素材を塑性変形させて外周部に歯面を成形するようにしているが、十分な塑性変形量を確保することができずに、材料の欠肉が生じて歯の両面では加工精度に差が発生することがあった。
【0005】
特に、はす歯歯車においては歯の両面での加工誤差の発生が大きく、平歯車であっても、歯筋に沿って歯筋方向の中央部から端部に向けて歯厚を漸次減少させるようにしたクラウニングを加工する場合には、歯の両面での加工誤差の発生が大きかった。このため、従来の鍛造プレスを用いた歯車の加工においては、歯車製造の歩留まりを高めることができないという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、歯面の加工精度が高い高精度の歯車を鍛造加工し得るようにすることにある。
【0007】
本発明の他の目的は、鍛造加工による歯車の製造歩留まりを向上させることにある。
【0008】
本発明の他の目的は、はす歯歯車を高精度に鍛造加工し得るようにすることにある。
【0009】
本発明の他の目的は、クラウニング付歯形を有する歯車を高精度に鍛造加工し得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の鍛造加工装置は、中心部に貫通孔が形成された歯車素材の外面に歯形を成形する鍛造加工装置であって、第1金型に軸方向に往復動自在に装着された可動台に取り付けられ、前記歯車素材に成形される各歯に対応した歯形成形歯が形成され前記歯車素材が挿入されるダイスと、前記第1金型に装着され、前記ダイスの軸方向移動時に前記歯形成形歯に噛み合って前記ダイスが摺動する噛み合い歯が設けられたダイスリーブと、前記第1金型に向けて軸方向に往復動自在に配置される第2金型に取り付けられ、前記第2金型が前記第1金型に向けて接近移動する際に前記ダイスを押し込み移動するパンチと、加工前の前記歯車素材の貫通孔に挿入されるガイド部と前記歯車素材を径方向に押し広げる拡径加工部とが設けられ、前記パンチに軸方向に往復動自在に組み込まれるマンドレルと、前記第2金型に設けられ、前記パンチが前記ダイスに接触するまで前記第2金型が前記第1金型に接近移動して前記拡径加工部が前記歯車素材を押し広げた後における前記第2金型の引き続く接近移動時に前記マンドレルを戻す方向に移動させるマンドレル戻し手段とを有し、前記マンドレルを戻しながら前記パンチにより前記ダイスを前記ダイスリーブに摺動させながら押し込み移動して前記歯車素材の内径を縮小しつつ軸方向に押し潰して歯車を成形することを特徴とする。
【0011】
本発明の鍛造加工装置は、前記第2金型に軸方向に移動自在に装着され、前記第2金型の前記第1金型に対する接近移動時に前記第1金型により駆動される駆動ロッドと、前記第2金型に揺動自在に設けられ、前記駆動ロッドの移動を前記マンドレルの戻し移動に変換する揺動アームとにより前記マンドレル戻し手段を構成することを特徴とする。
【0012】
本発明の鍛造加工装置は、前記ダイスリーブを前記第1金型に回動自在に装着し、前記ダイスが前記ダイスリーブと摺動するときに前記ダイスを回動させて前記歯車素材にはす歯の歯形を成形することを特徴とする。
【0013】
本発明の鍛造加工装置は、前記第1金型に固定され前記ダイスを軸方向に往復動自在に案内するガイド部材に、前記ダイスのテーパ形状の外周面に接触するテーパ形状のガイド面を形成し、前記ダイスが前記パンチにより押し込み移動する際に前記ダイスの軸方向両端部を径方向および周方向に弾性収縮変形させ、前記歯車素材の各歯の歯面にクラウニングを成形することを特徴とする。
【0014】
本発明の鍛造加工方法は、中心部に貫通孔が形成された歯車素材の外面に歯形を成形する鍛造加工方法であって、第1金型に軸方向に往復動自在に装着された可動台に取り付けられ、前記歯車素材に成形される各歯に対応した歯形成形歯が形成されたダイスと、前記第1金型に装着され、前記ダイスの軸方向移動時に前記歯形成形歯に噛み合って前記ダイスが摺動する噛み合い歯が設けられたダイスリーブとにより形成される歯車素材収容スペース内に前記歯車素材を挿入する素材セット工程と、前記第1金型に向けて軸方向に往復動自在に配置される第2金型に取り付けられ、前記第2金型が前記第1金型に向けて接近移動する際に前記ダイスを押し込み移動するパンチと、加工前の前記歯車素材の貫通孔に挿入されるガイド部および前記歯車素材を径方向に押し広げる拡径加工部が設けられ、前記パンチに軸方向に往復動自在に組み込まれるマンドレルとを前記第1金型に向けて接近移動させて前記マンドレルの前記拡径加工部により前記歯車素材を押し広げる押し広げ工程と、前記歯車素材を押し広げた後における前記第2金型の引き続く接近移動時に前記マンドレルを戻す方向に移動させながら前記パンチにより前記ダイスを前記ダイスリーブに摺動させながら押し込み移動して前記歯車素材の内径を縮小しつつ軸方向に押し潰す分流工程とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の鍛造加工方法は、前記ダイスが前記ダイスリーブと摺動するときに前記ダイスを回動させて前記歯車素材にはす歯の歯形を成形することを特徴とする。
【0016】
本発明の鍛造加工方法は、前記ダイスが前記パンチにより押し込み移動する際に前記ダイスの軸方向両端部を径方向および周方向に弾性収縮変形させ、前記歯車素材の各歯の歯面にクラウニングを成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、歯形成形歯を有するダイスと歯形成形歯に噛み合う噛み合い歯を有するダイスリーブとにより形成されるスペースに円筒形状の歯車素材を挿入した状態のもとで、先端にガイド部が設けられその基端部側にガイド部よりも大径の拡径加工部が一体となったマンドレルを用いて拡径加工部により歯車素材を押し広げた後に、マンドレルを戻してダイスリーブとパンチとにより歯車素材を径方向内方と外方とに分流するようにしたので、歯面に欠肉の発生がない高品質の歯車を歩留まり良く製造することができる。
【0018】
歯車としては、平歯車、はす歯歯車のいずれをも鍛造加工することができるとともに、これらの歯車の歯面にクラウニングを形成することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の鍛造加工装置により加工された歯車を示す斜視図であり、図2は本発明の一実施の形態である鍛造加工装置を示す断面図であり、図3は図2の要部を拡大して示す鍛造加工装置の断面図であり、図4は上型が下型に接触した状態における鍛造加工装置を示す断面図であり、図5はマンドレルが戻り移動している状態における鍛造加工装置を示す断面図であり、図6は歯車加工が完了した状態における鍛造加工装置を示す断面図であり、図7(A)〜(D)は図3〜図6にそれぞれ示した7A部〜7D部の拡大断面図である。
【0020】
図1に示す歯車10ははす歯歯車であり、歯11の歯面12とピッチ面との交線である歯筋がつる巻線となっており、中心部に貫通孔13が形成されている。歯車10はクラウニング付歯形となっており、歯面12は歯筋方向の中央部から両端部に向けて肉厚が漸次減少するように成形され、歯面12と歯先面14との交線は湾曲している。
【0021】
図2に示すように、鍛造加工装置20は、第1金型としての下型21と、これに向けて上下方向に接近離反移動自在となった第2金型としての上型22とを備えている。下型21は基台23に固定されるボルスタ24を有し、ボルスタ24は基台23にボルトにより締結される基部筒体24aとこれの上部に固定される支持筒体24bとを備えている。支持筒体24bの内部には外周面が円形となった可動台25が軸方向つまり上下方向に往復動自在に装着され、可動台25に形成された段部26aが支持筒体24bに形成された段部26bに接触すると、可動台25は下降限位置となる。可動台25の上側に位置させて支持筒体24bの内部に固定された取付板27には支持板28が取り付けられており、可動台25が取付板27に接触すると可動台25は上昇限位置となる。可動台25の上下動はガイドロッド29に案内されるようになっており、ガイドロッド29はボルスタ24の基部筒体24aの内部に固定された台座30に取り付けられ、台座30と基台23の間には台座ブロック31が組み込まれている。なお、ガイドロッド29は図2には1本のみが示されているが、台座30には複数本のガイドロッド29が取り付けられている。
【0022】
可動台25の上には取付板27および支持板28の径方向中央部に形成された貫通孔を貫通して支持台32が設けられており、支持台32は可動台25とともに上下方向に往復動自在となっている。支持台32の上にはダイス33が配置されており、ダイス33の外側にはダイスホルダー34が嵌合され、ダイス33およびダイスホルダー34は支持台32および可動台25とともに上下方向に往復動自在となっている。ダイス33は円筒形状となっており、その内面には図7(A)および図7(B)に示すように歯車素材Wに成形される各歯11に対応して歯形成形歯35が形成されている。この鍛造加工装置20ははす歯歯車を鍛造成形するので、ダイス33に形成された歯形成形歯35は、それぞれの歯形成形歯35の歯面12とピッチ面との交線である歯筋がつる巻線となっている。
【0023】
ダイス33の外側にはガイドリング36がガイド部材として嵌合しており、このガイドリング36は支持板28に上に固定されている。ガイドリング36と支持筒体24bとの間には環状の固定部材37が取り付けられており、固定部材37は支持筒体24bに固定される締結リング38により固定されている。固定部材37には当接板39が固定され、この当接板39は中央部に貫通孔が形成されダイス33とダイスホルダー34の外周部とを覆っている。
【0024】
支持台32の径方向中央部にはダイスリーブ41が組み込まれており、このダイスリーブ41は中心部にガイド孔42が設けられ、図7(A)〜図7(D)に示すように、外面にはダイス33に形成された歯形成形歯35に噛み合う噛み合い歯43が形成されている。ダイスリーブ41はスリーブ支持台44の上に配置されており、スリーブ支持台44は、台座30の中心部の取付孔に上下動自在となった支持ロッド45の上にスラストベアリング46を介して回転自在に配置されている。
【0025】
下型21内にはクッションピン47が軸方向に移動自在に装着され、その先端は可動台25に当接しており、このクッションピン47には油圧シリンダやコイルばね等の駆動源により上方に向かう推力が加えられている。このクッションピン47により可動台25には上型22に向かう推力が加えられ、この推力によって可動台25は取付板27に当接する位置まで上型22に向けて上昇移動する。可動台25が上昇限位置となると、ダイス33はダイスホルダー34が当接板39に当接する上昇限位置となる。このように、ダイス33、支持台32および可動台25は、図3および図4に示すように、ストロークSの範囲で上下方向に往復動自在となっている。なお、クッションピン47は、図2には1本のみが示されているが、下型21には複数本のクッションピン47が装着されている。
【0026】
鍛造加工時におけるダイス33、ダイスホルダー34等の軸方向の移動時には、ダイスリーブ41は軸方向には移動することなく、ダイス33の歯形成形歯35がダイスリーブ41の噛み合い歯43に沿って摺動しながらダイス33が軸方向に移動することになる。歯車素材Wにはす歯歯車を成形するときには、歯形成形歯35および噛み合い歯43が歯車10に対応してはす歯となっているので、ダイス33がダイスリーブ41に沿って摺動するときにダイスリーブ41は回動することになる。歯車10を鍛造加工した後には、加工された歯車10を下型21から外部に取り出すために、下型21内にはエジェクターピン48が上下動自在に設けられており、このエジェクターピン48の上端は支持ロッド45に当接している。このエジェクターピン48を上型22に向けて上昇移動させると、支持ロッド45およびスリーブ支持台44を介してダイスリーブ41が上昇移動して、鍛造加工後の歯車10が外部に取り出される。
【0027】
図3〜図6に示すように、ダイスホルダー34の外周のガイド面49aは下端面から上型22側の上端面に向けて径が大きくなるテーパ形状となっており、このガイド面49aに接触するガイドリング36の内周のガイド面49bはガイド面49aに対応して下端面から上端面に向けて径が大きくなるテーパ形状となっている。したがって、ダイス33とダイスホルダー34とが下方に向けて押し込まれると、ダイスホルダー34はガイドリング36によって径方向に弾性収縮変形することになる。図7に示すように、ダイス33とダイスホルダー34の軸方向中間部には空隙50が環状となって形成されており、ダイス33とダイスホルダー34とが下方に押し込まれると、ダイス33の軸方向両端部が径方向および周方向に弾性収縮変形し、歯車素材Wの各歯の歯面にクラウニングが成形されることになる。
【0028】
図2に示すように、上型22は下型21に対して軸方向に接近離反移動自在となったメインラム51を有し、このメインラム51は油圧シリンダ等を駆動源として上下方向に往復動されるようになっている。メインラム51に形成された嵌合孔52には下型21の基台23に固定されたガイドポスト53が嵌合しており、メインラム51はガイドポスト53により案内されて上下動することになる。なお、ガイドポスト53は、図2には1本のみが示されているが、下型21には複数本のガイドポスト53が取り付けられている。
【0029】
メインラム51には円筒形状の固定台54が取り付けられており、この固定台54にはナット部材55によりパンチホルダー56が取り付けられている。パンチホルダー56の径方向中央部にはパンチ57が固定されており、このパンチ57は上型22を下型21に向けて接近移動させるとダイス33の表面に当接し、ダイス33を支持台32および可動台25とともにクッションピン47により加えられる推力に抗して押し込み移動する。このように、メインラム51を下型21に向けて移動させる推力は、クッションピン47によりダイス33に上型22に向けて加えられる推力よりも大きく設定されている。
【0030】
パンチ57の径方向中央部にはマンドレル58がパンチ57に対して軸方向に往復動自在に組み込まれており、マンドレル58はパンチ57に軸方向に摺動自在に組み込まれた円筒形状のホルダー61に嵌合して固定される基部62とこれの先端に一体となった拡径加工部63とこれの先端に一体となったガイド部64とを有している。ガイド部64は歯車素材Wに予め形成された貫通孔の内径よりもやや小径となっており、拡径加工部63は貫通孔の内径よりも大きく設定されている。つまり、拡径加工部63はガイド部64よりも大径となっている。
【0031】
ホルダー61およびマンドレル58の基端には係合プレート65が固定されており、メインラム51に固定された支持プレート66と係合プレート65の間には、マンドレル58に対して下型21に向かう推力を加えるための推力付加手段67が設けられている。この推力付加手段67はばね部材や油圧シリンダ等により形成されており、上型22を下型21に接近移動させてマンドレル58の拡径加工部63が歯車素材Wの貫通孔10w内に押し込まれて歯車素材Wの径を押し広げる際には、後退移動しないような推力が推力付加手段67によりマンドレル58に加えられている。
【0032】
パンチホルダー56には駆動ロッド71が軸方向に往復動自在にマンドレル58と平行となって装着され、駆動ロッド71の下端部はパンチホルダー56の下面から下方に突出しており、この駆動ロッド71はコイルスプリング内蔵のガススプリング72が付設されている。パンチホルダー56には支持ピン73を中心に揺動自在に揺動アーム74が装着され、この揺動アーム74の先端部は係合プレート65に当接してマンドレル58に係合している。揺動アーム74には駆動ロッド71の上端部に設けられた頭部71aが揺動アーム74の長手方向中央部に当接している。当接板39には駆動ロッド71に対向する位置に当接駒39aが設けられており、上型22を下型21に向けて接近移動させて、駆動ロッド71の先端が当接駒39aに当接した後における上型22の引き続く接近移動により、駆動ロッド71は下型21の当接板39により停止されるので、パンチホルダー56に対しては上方に駆動される。このように、駆動ロッド71がパンチホルダー56に対して上方に向けて駆動されると、支持ピン73を中心に揺動する揺動アーム74を介してマンドレル58は戻される方向に上方に向けて駆動される。
【0033】
このように、駆動ロッド71および揺動アーム74は、上型22が下型21に向けて所定ストローク以上接近移動した後における引き続く上型22の接近移動をマンドレル58の戻し移動に変換してマンドレル58を戻す方向に移動させるためのマンドレル戻し手段を構成している。図3に示すように、揺動アーム74の先端が係合プレート65と接触する接点と、揺動アーム74の回動中心点との間の寸法をLとすると、回動中心と駆動ロッド71の作用点との間の距離L1は、作用点と接点との間の距離L2よりも短く設定されており、上型22が下型21に向けて移動するストロークよりも、駆動ロッド71と揺動アーム74により形成されるマンドレル戻し手段により戻されるマンドレル58の戻り移動ストロークの方が大きくなるように設定されている。なお、駆動ロッド71は、図2には1本のみが示されているが、パンチホルダー56には複数本の駆動ロッド71が装着されており、それぞれの駆動ロッド71に対応して揺動アーム74がパンチホルダー56に装着されている。
【0034】
次に、上述した鍛造加工装置20により歯車素材Wを加工して図1に示すはす歯歯車10を成形する手順について説明する。上型22が下型21から離れた状態のもとで、円筒形状の歯車素材Wがダイス33の内部に挿入されてダイスリーブ41の上端面の上に配置される。これにより、歯車素材Wはダイス33とダイスリーブ41とにより形成される歯車素材スペースの内部に挿入される。このようにして素材セット工程が終了した後に、パンチ57とマンドレル58とを有する上型22が下型21に接近するように下降移動される。
【0035】
図3および図7(A)は、上型22の移動によってマンドレル58の先端のガイド部64が歯車素材Wの貫通孔10wの中に挿入した状態を示す。引き続く上型22の下型21に向かう下降移動によって、マンドレル58の拡径加工部63が歯車素材Wの貫通孔10wの内部に入り込み、拡径加工部63により歯車素材Wは径が大きくなるように押し広げられる。
【0036】
図4および図7(B)は、パンチ57の先端がダイス33とダイスホルダー34の上面に当接して押し広げ工程が終了した状態を示す。歯車素材Wが押し広げ加工されると、その外周部の一部はダイス33の内面に形成された歯形成形歯35相互間の歯溝の中に入り込んで歯車素材Wに歯11の一部が塑性加工される。この状態のもとでは、駆動ロッド71は当接駒39aには接触しておらず、パンチ57が引き続いて下型21に向けて接近移動すると、ダイス33がパンチ57により押し込まれて歯車素材Wは軸方向に押し潰され、径が大きくなるように塑性加工される。
【0037】
引き続いて上型22が下型21に向けて下降移動すると、図5および図7(C)に示すように、駆動ロッド71が下型21の当接板39の当接駒39aに当接して移動が阻止され、駆動ロッド71はパンチ57およびパンチホルダー56に対しては相対的に上方に移動する。これにより、パンチ57の下降移動に伴って、駆動ロッド71により揺動アーム74が駆動されてマンドレル58はホルダー61とともに上方、つまり戻す方向に移動される。
【0038】
このように、マンドレル58を戻す方向に移動させながら、パンチ57によりダイス33をダイスリーブ41に沿って摺動させながら押し込み移動させると、マンドレル58の先端部のガイド部64が歯車素材Wの貫通孔10w内に位置することになるので、歯車素材Wは拡径加工部63よりも小径のガイド部64との間に形成される隙間の中に塑性変形により入り込みながら軸方向に押し潰されることになる。つまり、歯車素材Wは径方向内方に塑性変形すると同時に軸方向に押し潰されるように塑性変形することになり、歯車素材Wは外側の歯形部分と内側の中空部分とで分流状態となって塑性変形する。これにより、塑性変形量が大きくなって、鍛造加工後の歯車10の歯面12に欠肉の発生が無くなり、ダイス33の歯形成形歯35の形状に対応した高精度の歯面12を有する歯車10を加工することができる。
【0039】
この分流加工工程においては、上述のように、マンドレル58の戻り移動ストロークは、上型22の下降移動トスロークよりも大きく設定されているので、図7(C)に示すように、マンドレル58の拡径加工部63とガイド部64との境界部である段差面68はダイスリーブ41の上端面との間に隙間69を形成するようにして戻り移動することになり、歯車素材Wの径方向内外両方向への分流変形が円滑に行われるようになる。
【0040】
ダイス33がパンチ57によって押し込まれると、ダイス33はガイドリング36に対して下降移動することになり、この移動時にはダイスホルダー34はその外周面のテーパ形状のガイド面49aがガイドリング36のガイド面49bに沿って摺動するので、径が縮小する方向に弾性縮小変形することになる。この弾性縮小変形によってダイス33は軸方向両端部が径方向および周方向に弾性収縮変形することになり、歯車10の各歯11の歯面12にはクラウニングが成形される。ただし、この鍛造加工装置20によって、クラウニングが施されない歯車を鍛造加工する場合には、ダイスホルダー34のガイド面49aとガイドリング36のガイド面49bとをテーパ形状とすることなく、それぞれをストレートな外周面とすることになる。
【0041】
図6および図7(D)は、上型22が下死点まで下降移動しパンチ57が下降限位置となって、分流工程が終了した状態を示す。これにより、円筒形状の歯車素材Wは鍛造加工によって図1に示す歯車10に成形される。このようにして歯車10の鍛造加工が終了した後には、上型22は下型21から離すように上昇駆動され、上昇移動の初期にはクッションピン47によりダイス33は可動台25,支持台32とともに上昇限位置まで駆動される。上型22が上昇限位置まで駆動されたら、エジェクターピン48によりダイスリーブ41を上昇移動させることにより、製造された歯車10はダイス33の外部にまで取り出されることになる。
【0042】
塑性加工時におけるダイス33の押し込み移動と、塑性加工後に歯車10を外部に取り出す際のダイス33の上昇移動とにおいては、ダイス33はダイスリーブ41に対して摺動することになり、この摺動時にはダイス33の歯形成形歯35とダイスリーブ41の噛み合い歯43との噛み合いにより、ダイスリーブ41は回動することになる。ただし、この鍛造加工装置20によって、歯筋が中心軸に平行となった平歯車を鍛造加工する場合には、歯形成形歯35と噛み合い歯43の歯筋は中心軸に平行となっているので、ダイスリーブ41を回動させることは不要となる。
【0043】
このように、本発明の鍛造加工装置20は、図1に示すようなはす歯歯車を鍛造加工することができるとともに、ダイス33とダイスリーブ41を交換することにより鍛造加工装置20によって平歯車を鍛造加工することできる。また、ダイスホルダー34とガイドリング36を交換することによってクラウニングが形成されていない歯車を成形加工することができる。これらの歯車を鍛造加工するときには、歯車素材Wは径方向に内外両方向に分流されて塑性変形することになるので、塑性変形量を増加させることができ、歯面における欠肉の発生を防止して高品質の歯車を製造することができる。欠肉の発生を防止できるので、歯車製造の歩留まりを向上させることができる。
【0044】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、ガイド部材としてのガイドリング36は環状に一体に連なった部材としても良く、ガイドリング36にスリットを形成したり、複数のセグメントによりガイドリング36を形成することによって径方向に変形し易くするようにしても良い。また、ダイス33とダイスホルダー34との間に形成される空隙50は、ダイス33の外周面とダイスホルダー34の内周面との少なくともいずれか一方に環状の凹部を設けることによって形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の鍛造加工装置により加工された歯車を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態である鍛造加工装置を示す断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示す鍛造加工装置の断面図である。
【図4】上型が下型に接触した状態における鍛造加工装置を示す断面図である。
【図5】マンドレルが戻り移動している状態における鍛造加工装置を示す断面図である。
【図6】歯車加工が完了した状態における鍛造加工装置を示す断面図である。
【図7】(A)は図3における7A部の拡大断面図であり、(B)は図4における7B部の拡大断面図であり、(C)は図5における7C部の拡大断面図であり、(D)は図6における7D部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0046】
21 下型(第1金型)
22 上型(第2金型)
25 可動台
32 支持台
33 ダイス
34 ダイスホルダー
35 歯形成形歯
36 ガイドリング(ガイド部材)
41 ダイスリーブ
43 噛み合い歯
49a,49b ガイド面
57 パンチ
58 マンドレル
63 拡径加工部
64 ガイド部
65 係合プレート
67 推力付加手段
71 駆動ロッド(マンドレル戻し手段)
W 歯車素材
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成18年11月16日(2006.11.16)
【代理人】 【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和

【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高

【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子


【公開番号】 特開2008−126231(P2008−126231A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−309894(P2006−309894)