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【発明の名称】 高強度加工素材およびその製造方法ならびにその製造装置
【発明者】 【氏名】西郡 榮

【氏名】秋田 亨

【氏名】護法 良憲

【氏名】近藤 勝義

【要約】 【課題】大きな径でありながら、微細な結晶組織を持つ高強度の加工素材を製造する。

【解決手段】高強度加工素材の製造方法は、合金素材10を筒状型2の中央空間内に入れる工程と、中央空間内の素材の両端面を押し部材5および第1の支え部材3によって上下方向に圧縮し、素材の長さ方向の一方端部分を筒状型2の端面に沿って径方向外方に移動させて膨出部を形成する工程と、膨出部を筒状型2の端面に押し当てるように膨出部の長さ方向端面に押し部材5を当接させる工程と、押し部材5と第1の支え部材3との間隔を小さくしながら押し部材5と筒状型2の端面との間隔を大きくすることにより、径方向外方への素材流動を素材の一方端部分から他方端部分にまで連続的に行なわせて膨出部の厚みを徐々に大きくしてゆく工程とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または合金素材を筒状型の中央空間内に入れる工程と、
前記中央空間内の素材の両端面を第1の押し部材および支え部材によって上下方向に圧縮し、素材の長さ方向の一方端部分を前記筒状型の端面に沿って径方向外方に流動させて膨出部を形成する工程と、
前記膨出部を前記筒状型の端面に押し当てるように前記膨出部の長さ方向端面に第2の押し部材を当接させる工程と、
前記第1の押し部材と前記支え部材との間隔を小さくしながら前記第2の押し部材と前記筒状型の端面との間隔を大きくすることにより、径方向外方への素材流動を素材の一方端部分から他方端部分にまで連続的に行なわせて前記膨出部の厚みを徐々に大きくしてゆく工程とを備える、高強度加工素材の製造方法。
【請求項2】
前記第1の押し部材と第2の押し部材とを一体的に前進させ、前記筒状型を前記押し部材の前進量よりも大きく後退させる、請求項1に記載の高強度加工素材の製造方法。
【請求項3】
前記膨出部の厚みを大きくした後に、前記素材の中央領域のみを上下方向に圧縮して窪みを形成する工程をさらに備える、請求項1または2に記載の高強度加工素材の製造方法。
【請求項4】
前記膨出部の厚みを大きくするのに先立ち、前記素材の中央領域のみを上下方向に圧縮して窪みを形成する工程をさらに備える、請求項1または2に記載の高強度加工素材の製造方法。
【請求項5】
前記膨出部の厚みを大きくした後に、機械加工により前記素材の中央領域を除去する工程をさらに備える、請求項1または2に記載の高強度加工素材の製造方法。
【請求項6】
前記素材は、溶製材である、請求項1〜5のいずれかに記載の高強度加工素材の製造方法。
【請求項7】
前記素材は、圧粉体である、請求項1〜5のいずれかに記載の高強度加工素材の製造方法。
【請求項8】
前記素材は、前記支え部材側に配置された細粒圧粉体と、前記第1の押し部材側に配置された粗粒圧粉体とを含む、請求項7に記載の高強度加工素材の製造方法。
【請求項9】
前記素材は、前記支え部材側に配置された第1素材と、前記第1素材とは異なった材質からなり前記第1の押し部材側に配置された第2素材とを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の高強度加工素材の製造方法。
【請求項10】
前記素材の材質は、軽合金である、請求項1〜9のいずれかに記載の高強度加工素材の製造方法。
【請求項11】
金属または合金素材を受入れるために上下方向に延びる中央開口を有する筒状型と、
前記中央開口内の素材を一端側から支える支え部材と、
前記中央開口内の素材を他端側から押圧する第1の押し部材と、
前記第1の押し部材によって押圧されることによって前記筒状型の端面に沿って径方向外方に膨出した素材の膨出部を他端側から押圧する第2の押し部材と、
前記第1の押し部材と前記支え部材との間隔を小さくしながら、前記第2の押し部材と前記筒状型との間隔を大きくするように制御する間隔制御手段とを備える、高強度加工素材の製造装置。
【請求項12】
前記第1の押し部材と前記第2の押し部材とは、一体的に設けられている、請求項11に記載の高強度加工素材の製造装置。
【請求項13】
前記第1の押し部材は、前記素材の中央領域に窪みを形成するための凸部を有する、請求項11または12に記載の高強度加工素材の製造装置。
【請求項14】
金属または合金からなり、中央領域から径方向外方に向かって噴水状に流れる素材流動組織を有する、高強度加工素材。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、金属加工素材として使用される高強度加工素材およびその製造方法ならびにその製造装置に関するものであり、特に、小さな断面形状の長尺体を塑性加工によって大きな断面形状の短尺体とすることによって、高強度で微細な結晶組織を持つ大径ビレットの製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属または合金の加工素材を塑性加工して比較的大きな製品を得るには、塑性加工前の加工素材のサイズを大きくする必要がある。
【0003】
現状では、マグネシウム合金やアルミニウム合金等の軽合金に対する大型素材の作製法として、鋳造法が主流となっている。しかしながら、鋳造法によって製造した加工素材は、その結晶組織が粗く、強度も弱い。そのため、鋳造法によって得た加工素材を鍛造して製品を製造しても、その製品は満足すべき強度を有しない。
【0004】
ビレット状の加工素材を製造する方法の一例として、据込み機によって棒状体を大きな直径になるように鍛造加工する方法がある。例えば、特開平8−3675号公報(特許文献1)は、アルミニウム合金を10〜50%の据込み率で鍛造加工することを開示している。また、特開2006−152401号公報(特許文献2)は、高Al含有のマグネシウム合金素材に鍛造加工を施してマグネシウム合金成形体を得ることを開示している。
【0005】
素材の座屈等を生じさせずに正常な据込み加工を行なうために、通常、据込み前の素材の直径(D)に対する長さ(L)の比率L/Dは、2以下である。そのため、据込み加工をしても、その塑性変形量が少ないので、結晶組織の微細化があまり進まず、強度の向上も不十分である。
【0006】
鋳造品を押出し加工すれば、結晶組織が微細化し、押出し加工後の素材の強度が高くなる。例えば、特開2003−313646号公報(特許文献3)は、Mg−Mn系合金を押出すことにより、結晶粒を微細化し、強度を高めることを開示している。
【0007】
押出し加工の場合、押出比が大きくなれば強度はそれに応じて高くなる。押出し加工によって所望の高強度を得ようとする場合には、例えば、押出し比(加工前の素材断面積/加工後の素材断面積)を25以上にする必要がある。
【0008】
例えば、押出し比を25にした押出し加工によって直径150mmの大型ビレットを得ようとすると、押出し加工前の素材の直径を750mmにする必要がある。この場合、材質によって異なってくるが、経験上、12000トン〜18000トンのプレス能力が必要になるが、現実には不可能である。現状では、押出し加工によって、高強度で大径の大型素材を得るのは困難である。
【0009】
粉末を出発材料とする場合、粉末を圧縮固化して圧粉固化体を作り、この圧粉固化体を押出し加工して加工素材としてのビレットを製造することもある。この場合においても、押出し加工における問題は、上記と同様である。
【0010】
現状では、従来のいずれの方法においても、大きな直径でありながら、微細結晶組織を持つ高強度の加工素材(ビレット)を得ることが困難である。
【特許文献1】特開平8−3675号公報
【特許文献2】特開2006−152401号公報
【特許文献3】特開2003−313646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、大きな径でありながら、微細な結晶組織を持つ高強度の加工素材を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に従った高強度加工素材の製造方法は、以下の工程を備える。
【0013】
(a) 金属または合金素材を筒状型の中央空間内に入れる工程。
【0014】
(b) 上記中央空間内の素材の両端面を第1の押し部材および支え部材によって上下方向に圧縮し、素材の長さ方向の一方端部分を筒状型の端面に沿って径方向外方に流動させて膨出部を形成する工程。
【0015】
(c) 上記膨出部を筒状型の端面に押し当てるように膨出部の長さ方向端面に第2の押し部材を当接させる工程。
【0016】
(d) 第1の押し部材と支え部材との間隔を小さくしながら第2の押し部材と筒状型の端面との間隔を大きくすることにより、径方向外方への素材流動を素材の一方端部分から他方端部分にまで連続的に行なわせて膨出部の厚みを徐々に大きくしてゆく工程。
【0017】
上記の工程を備える本発明によれば、径方向外方への素材流動を素材の一方端部分から他方端部分にまで連続的に行なわせて膨出部の厚みを徐々に大きくしてゆくものであるので、小径の長尺体を出発素材として用いて、最終的に大径の短尺体またはビレットを容易に製造することができる。また、素材を順次部分的に上下から圧縮して径方向外方へ流動させる塑性加工を与えることにより、最終的に得られる加工素材の結晶組織を微細化することができる。
【0018】
一つの実施形態では、第1の押し部材と第2の押し部材とを一体的に前進させ、筒状型を押し部材の前進量よりも大きく後退させる。他の実施形態として、第1の押し部材と第2の押し部材とを別々に動作させるように別体で構成してもよい。
【0019】
素材を上下方向に圧縮して径方向外方へ素材流動させる塑性加工では、最終的に得られる加工素材に、中央領域から径方向外方に向かって噴水状に流れる素材流動組織が現れる。そのため、外周領域の結晶組織は微細化されるものの、中央領域の結晶組織は余り微細化されない。そこで、中央領域の結晶組織を微細化して強度を高めるために、径方向外方への素材流動によって径を大きくした加工素材に対して、その中央領域のみを上下方向に圧縮して窪みを形成するようにしてもよい。
【0020】
加工素材の中央領域の結晶組織を微細化して強度を高める他の方法として、上記の膨出部の厚みを大きくする塑性加工に先立ち、素材の中央領域のみを上下方向に圧縮して窪みを形成するようにしてもよい。他の方法として、膨出部の厚みを大きくした後に、機械加工により、強度の弱い素材の中央領域を除去するようにしてもよい。
【0021】
出発素材は、溶製材であってもよいし、粉末を圧縮固化した圧粉体であってもよい。
【0022】
出発素材として圧粉体を用いる場合、支え部材側に細粒圧粉体を配置し、第1の押し部材側に粗粒圧粉体を配置するようにしてもよい。このような配置であれば、粗粒圧粉体は確実に径方向外方へ素材流動するので、最終的に得られる加工素材は全体に亘って微細化した組織となる。
【0023】
一つの実施形態として、支え部材側に第1素材を配置し、第1の押し部材側に第1素材とは異なった材質の第2素材を配置するようにしてもよい。このような配置形態であれば、素材の塑性流動により異種金属同士を良好に結合させることができる。
【0024】
出発素材の材質は、例えば、マグネシウム合金やアルミニウム合金等の軽合金である。
【0025】
上記の製造方法を実施するための製造装置は、金属または合金素材を受入れるために上下方向に延びる中央開口を有する筒状型と、中央開口内の素材を一端側から支える支え部材と、中央開口内の素材を他端側から押圧する第1の押し部材と、第1の押し部材によって押圧されることによって筒状型の端面に沿って径方向外方に膨出した素材の膨出部を他端側から押圧する第2の押し部材と、第1の押し部材と支え部材との間隔を小さくしながら、第2の押し部材と筒状型との間隔を大きくするように制御する間隔制御手段とを備える。一つの実施形態では、第1の押し部材と第2の押し部材とは、一体的に設けられている。例えば、第1の押し部材は、素材の中央領域に窪みを形成するための凸部を有する。
【0026】
上記の製造方法によって製造された高強度加工素材は、金属または合金からなり、中央領域から径方向外方に向かって噴水状に流れる素材流動組織を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。本発明の方法および装置によって塑性加工されるべき金属または合金の種類に特に制約はないが、好ましい例として、マグネシウム合金やアルミニウム合金等の軽合金を挙げることができる。本発明は、比較的大きな径または横断面積でありながら、微細な結晶組織を持つ高強度の加工素材を得ようとするものである。高強度加工素材は、鍛造等の塑性加工によって所望の製品形状に成形される。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る高強度加工素材の製造方法および製造装置を示している。高強度加工素材製造装置は、上下方向に延びる中央開口を有する固定型1と、固定型1の中央開口内に上下動可能に受入れられた筒状型2と、第1支え部材3と、第2支え部材4と、押し部材5とを備える。
【0029】
筒状型2は、金属または合金素材10を受入れるために上下方向に延びる中央開口を有している。第1支え部材3は、筒状型2の中央開口内に入れられた素材10を一端側(図示した実施形態では下端側)から背圧をかけながら支えるものである。第2支え部材4は、筒状型2の一方側端面(図示した実施形態では下端面)を、背圧をかけながら支える。押し部材5は、筒状型2の中央開口内に入れられた素材10を他端側から押圧して上下方向に圧縮し、筒状型2の他方側端面に沿って径方向外方に膨出させる。図示した実施形態では、押し部材5は、素材10の膨出部も押圧できる大きさを有しているが、他の実施形態として、筒状型2の中央開口内に位置する素材部分を押圧する第1押し部材と、第1押し部材によって押圧されることによって筒状型2の端面に沿って径方向外方に膨出した素材膨出部を押圧する第2押し部材とを別々に動作させるように別体で構成してもよい。
【0030】
第1支え部材3および押し部材5は、互いにその間隔を近づけるように移動されて筒状型2の中央開口内の素材10を上下方向に圧縮する。図示した実施形態では、第1支え部材3は静止位置に保たれ、押し部材5が下降する。
【0031】
背圧をかけながら筒状型2の一方側端面を支える第2支え部材4は、上下方向に移動可能である。第2支え部材4を上下方向に移動させれば、筒状型2もそれに応じて上下方向に移動する。筒状型2の上端面および押し部材5は、素材10の径方向膨出部分に対して押圧力を付与する。
【0032】
第1支え部材3、第2支え部材4および押し部材5に対する移動制御は、次の動作を実現できるように行なわれる。すなわち、高強度加工素材製造装置は、出発素材10に対する塑性加工を行なうに際し、押し部材5と第1支え部材3との間隔を次第に小さくしながら、押し部材5と筒状型2の上端面との間隔を次第に大きくするように制御する間隔制御手段を備える。
【0033】
次に、図1の(a)〜(d)を参照しながら、本発明の一実施形態に係る高強度加工素材の製造方法を説明する。
【0034】
図1の(a)に示す状態では、出発素材10が筒状型2の中央開口内に受入れられている。出発素材10の上方端部分は、筒状型2の上端面から上方に突出しているので、筒状型2の上端面と押し部材5との間にリング状隙間が形成される。
【0035】
図1(a)に示す状態から押し部材5を下降させて素材10の上方端部分を圧縮下降すると、図1(b)に示すように、素材10の上方端部分は筒状型2の上端面と押し部材5との間を径方向外方に膨出する。筒状型2は、素材膨出部に対して常に背圧をかけるように移動制御される。
【0036】
図1(c)は、加工途中の状態を示している。間隔制御手段は、押し部材5の下降速度に比べて、第2支え部材4および筒状型2の下降速度を徐々に大きくしてゆく。このような制御により、押し部材5と第1支え部材3との間隔は次第に小さくなるが、押し部材5と筒状型2の上端面との間隔は次第に大きくなる。より具体的に説明すると、素材10の膨出部分に対しては、押し部材5から与えられる下方への押圧力と、筒状型2から与えられる上方への背圧力とが作用している。この下方への押圧力と上方への背圧力との差により、筒状型2が押し部材5よりも大きな量だけ下降する。そして、筒状型2がより大きく下降することにより筒状型2の上端面に形成される隙間に、押し部材5によって圧縮加工された素材が径方向外方に流動して入り込む。この径方向外方への素材流動は、素材10の上方端部分から下方端部分にまで連続的に行なわれるので、素材10の膨出部の厚みは徐々に大きくなり、最終的には、図1(d)に示すような大きな径で短尺のビレットが得られる。このように、素材10を順次部分的に上下から圧縮して径方向外方へ流動させる塑性加工を行なうことにより、最終的に得られる加工素材の結晶組織は微細化し、強度も向上する。
【0037】
図2は、図1に示した新式据込み工法の荷重曲線を示している。横軸は時間で、縦軸は素材に作用する荷重である。時間および荷重の数値は、出発素材の材質、大きさ等によって変わるので、記載した数値は単なる例示として理解すべきである。図中、符号a,b,c,dは、図1の工程(a)、工程(b)、工程(c)、工程(d)に対応するものである。加工の初期段階(a)で、出発素材10の上方端部を押し部材5によって圧縮加工する際に荷重曲線は急激に立ち上がり、素材10の膨出部が筒状型2の上端面と押し部材5との間の初期隙間を埋めるまでは荷重曲線はほぼ横ばいになる。そして、素材10の膨出部が上記の初期隙間を埋めた後に、膨出部に筒状型2からの背圧が作用するようになると、荷重曲線は急激に立ち上がり、その後、下降の途中段階(c)では荷重曲線はほぼ横ばいになる。最終段階(d)で筒状型2の下降が停止した瞬間に、荷重曲線が急激に立ち上がる。
【0038】
上記のように素材を上下方向に圧縮しながら徐々に変形部分を径方向外方に塑性流動させて膨出部をつくり、この膨出部の厚みを徐々に厚くしてゆく塑性加工によれば、比較的小さなプレス能力で小径長尺体から大径短尺体を製造することができる。また、上下からの加圧力と径方向外方への塑性流動により素材の結晶組織は、微細化する。この塑性加工を温間で行なえば、動的再結晶により結晶組織の微細化がより促進する。
【0039】
図3は、上記の新式据込み工法における素材の流れを図解的に示している。図示するように、この塑性加工法であれば、素材は中央領域から径方向外方に向かって噴水状にながれるので、最終的に得られる加工素材は、図4に示すように、中央領域から径方向外方に向かって噴水状に流れる素材流動組織を有するものとなる。このような素材流動(塑性流動)の結果、最終的に得られるビレット状の加工素材では、外周領域の結晶組織は微細化されるものの、中央領域の結晶組織は余り微細化されない。そこで、中央領域の結晶組織を微細化して強度を高めるために、種々の加工を施すようにしてもよい。これについては、後に図面を参照して説明する。
【0040】
図16は、マグネシウム合金(AZ31)の溶製材に対して、図1の新式据込み工法による塑性加工を行なうことによって得た加工素材のマクロ組織写真である。また、図21は、マグネシウム合金(AZ31)粉末の圧粉固化体に対して、図1の新式据込み工法による塑性加工を行なうことによって得た加工素材のマクロ組織写真である。これらの図から、中央領域から径方向外方に向かって噴水状に流れる素材流動組織を観察することができる。
【0041】
次に、加工素材の中央領域の結晶組織を微細化して強度を高めるための種々の方法を説明する。
【0042】
図5(a)は、新式据込み工法の最終段階の状態を示している。図示した実施形態では、加工素材10の中央部は第1支え部材13によって下から支えられ、外周領域は筒状型14によって下から支えられている。第1押し部材11は素材10の中央領域を押圧し、第2押し部材12は、径方向外方に膨出して形成された外周部を押圧する。図5(a)に示す据込み完了状態から、図5(b)に示すように第1支え部材13を上方に移動させ、素材10の中央領域を圧縮加工し、中央領域にあった素材を外周領域に移動させる。筒状型14は、外周領域に移動した素材の膨出部により下方に動かされる。この塑性変形により、加工素材10の中央領域の結晶粒は微細化し、強度が向上する。
【0043】
図6に示す方法では、(a)に示す据込み完了状態から、図6(b)に示すように、第1押し部材11を下降させるとともに、第1支え部材13を上昇させて、素材10の中央領域を上下から圧縮変形させる。中央領域の圧縮変形により中央領域にあった素材が外周領域に移動し、それに伴って、第2押し部材12は上方に移動し、筒状型14は下方に移動する。この塑性変形により、加工素材10の中央領域の結晶粒は微細化し、強度が向上する。
【0044】
図7に示す方法では、新式据込み工法の開始時に素材10の中央領域を圧縮変形させるものである。図7(a)に示すように、押し部材15は素材10の中央領域に窪みを形成するための凸部15aを有している。このように素材10の中央領域に窪みを形成して中央領域の厚みを減じた状態で径方向外方への素材流動を生じさせるようにすれば、強度の弱い中央領域の体積が小さくなるので、全体としての強度は向上する。
【0045】
図8は、新式据込み工法完了後のビレット10に対して鍛造加工を施す方法を示している。鍛造装置は、ビレット10を受入れる中央開口を有する固定型18と、ビレット10を下から支える下ベース17と、ビレット10の中央領域に窪みを形成するための凸部16aを有する上パンチ16とを備える。図8(c)および(d)に示すように、凸部16aを有する上パンチ16によってビレット10の中央領域を圧縮して窪みを形成すれば、中央領域の材料が外周部に移動し、全体としての強度が向上する。
【0046】
図9は、新式据込み工法完了後のビレット10に対して、上下から、上パンチ19および下パンチ20によって鍛造加工を施す方法を示している。上パンチ19および下パンチ20は、それぞれ、ビレット10の中央領域に窪みを形成するための凸部19aおよび20aを有しているので、鍛造後のビレット10は、その中央領域の上下に窪みを有する形状となる。
【0047】
図10は、新式据込み工法完了後のビレット10の中央領域を機械加工により除去して、中央部に中央穴21を形成する方法を示している。この方法によれば、強度の弱い中央領域を除去しているので、ビレットのほぼ全領域は良好な強度を有するものとなる。
【0048】
図1に示した新式据込み工法では、出発素材の一方端部から他方端部に向かって徐々に、径方向外方への素材の塑性流動を生じさせている。従って、出発素材の一方端部が先に外周部に膨出し、他方端部は中央部に残る傾向がある。このような傾向に着目して、異種の金属または合金材料を接合することができる。
【0049】
図11に示す方法では、素材10は、支え部材側に配置された細粒圧粉体22と、押し部材側に配置された粗粒圧粉体23とからなる。このような配置形態の素材10に対して新式据込み工法を行なえば、初期の段階で粗粒圧粉体23が径方向外方へ素材の塑性流動を起こして微細化されるので、据込み後に最終的に得られるビレット状の形態では、全体がほぼ均一な細粒となる。なお、細粒圧粉体22として、例えば、押出材を粉砕したものや、アトマイズ粉末を使用することができる。
【0050】
図12は、棒状の圧粉体24の上に異種材質である溶製材プレート25を載せ、この状態で新式据込み工法を行なう方法を示している。この方法によれば、初期の段階で溶製材プレート25が棒状圧粉体24の上端部分を取り囲む腕状の形態になり、その後、逐次的に棒状圧粉体24が腕状の形態の溶製材プレート25の内面に沿って噴水状に素材流動するので、両者を良好に接合することができる。
【0051】
図13は、棒状の圧粉体26の上に異種材質である棒状の溶製材27を載せ、この状態で新式据込み工法を行う方法を示している。この方法によれば、初期の段階で溶製材27が棒状圧粉体26の上端部分を取り囲む腕状の形態になり、その後、逐次的に棒状圧粉体26が腕状の形態の溶製材27の内面に沿って噴水状に素材流動するので、両者を良好に接合することができる。
【実施例1】
【0052】
マグネシウム合金(AZ31)からなる溶製材を出発素材として用い、この出発素材に対して押出し加工したものと、図1に示した新式据込み工法を適用したものとを比較した。
【0053】
図14は、出発素材であるマグネシウム合金溶製材のミクロ組織を示している。出発素材のビッカース硬さHvは、56.0であった。
【0054】
押出し条件は、次の通りであった。
【0055】
押出比 :r=37(φ43→φ7)
加熱温度:400℃
押出速度:18.5mm/s
図15は、上記の条件で押出し加工した押出材のミクロ組織を示している。押出材の素地の粒径は5〜7μmであった。また、押出材のビッカース硬さHvは、66.5であった。
【0056】
新式据込み工法の加工条件は、次の通りであった。
【0057】
据込比 :75%(φ25×L75→φ50×L18.5)
加熱温度:450℃
加圧速度:5mm/s
図16は、上記の条件の据込みによって得た据込材のマクロ組織を示している。また、図17は据込材の中央部のミクロ組織を示し、図18は据込材の外周部のミクロ組織を示している。据込材中央部の素地の粒径は150〜200μmであり、据込材外周部の素地の粒径は5〜30μmであった。また、据込材中央部のビッカース硬さHvは、55.0であり、据込材外周部のビッカース硬さHvは、64.2であった。
【実施例2】
【0058】
マグネシウム合金(AZ31)粉末からなる圧粉体を出発素材として用い、この出発素材に対して押出し加工したものと、図1に示した新式据込み工法を適用したものとを比較した。
【0059】
図19は、出発素材の粉体のミクロ組織を示している。粉体素地の粒径は1μm以下であり、粉体のビッカース硬さHvは、120であった。
【0060】
押出し条件は、次の通りであった。
【0061】
押出比 :r=37(φ43→φ7)
加熱温度:450℃
押出速度:18.5mm/s
図20は、上記の条件で押出し加工した押出材のミクロ組織を示している。押出材の素地の粒径は2〜4μmであった。また、押出材のビッカース硬さHvは、75.0であった。
【0062】
新式据込み工法の加工条件は、次の通りであった。
【0063】
据込比 :75%(φ25×L75→φ50×L18.5)
加熱温度:450℃
加圧速度:5mm/s
図21は、上記の条件の据込みによって得た据込材のマクロ組織を示している。また、図22は据込材の中央部のミクロ組織を示し、図23は据込材の外周部のミクロ組織を示している。据込材中央部の素地の粒径は2〜5μmであり、据込材外周部の素地の粒径は2〜4μmであった。また、据込材中央部のビッカース硬さHvは、72.0であり、据込材外周部のビッカース硬さHvは、77.6であった。
【実施例3】
【0064】
マグネシウム合金溶製材およびマグネシウム合金圧粉体に対する工法別の荷重比較を表1に示す。
【0065】
【表1】


【0066】
表1から明らかなように、新式据込み工法によれば、比較的小さな荷重でφ50という大径のビレットを容易に製造することができる。表1に示した押出条件と同じ条件でφ50の押出材を得ようとすると、3000トンを超える荷重が必要になる。
【0067】
それに対して、新式据込み工法で押出材と同等の特性(固化率、強度等)が得られるならば、荷重は120トン程度であり、押出し法による荷重の1/25となる。このように新式据込み工法によれば、大幅な荷重低減を実現できる。
【0068】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明は、大きな径でありながら微細な結晶粒径を持つ高強度の加工素材を得る方法および装置として、有利に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る新式据込み工法を図解的に示す図である。
【図2】図2は、新式据込み工法の荷重曲線を示す図である。
【図3】新式据込み工法における素材流動を図解的に示す図である。
【図4】新式据込み工法によって得た最終加工素材内の素材流動を図解的に示す図である。
【図5】新式据込み工法の最終段階で、素材の中央領域を塑性変形させる方法の一例を示す図である。
【図6】新式据込み工法の最終段階で、素材の中央領域を塑性変形させる方法の他の例を示す図である。
【図7】新式据込み工法の初期段階で、素材の中央領域を塑性変形させる方法の一例を示す図である。
【図8】新式据込み工法完了後の素材の中央領域に対して、鍛造によって塑性変形を与える方法の一例を示す図である。
【図9】新式据込み工法完了後の素材の中央領域に対して、鍛造によって塑性変形を与える方法の他の例を示す図である。
【図10】新式据込み工法完了後の素材の中央領域を、機械加工によって除去する方法の一例を示す図である。
【図11】2種類の圧粉体を積み重ねた素材に対して、新式据込み工法を適用した例を示す図解図である。
【図12】棒状圧粉体とプレート状溶製材とを重ねた素材に対して、新式据込み工法を適用した例を示す図解図である。
【図13】棒状圧粉体と棒状溶製材とを重ねた素材に対して、新式据込み工法を適用した例を示す図解図である。
【図14】出発素材としてのマグネシウム合金(AZ31)溶製材のミクロ組織を示す写真である。
【図15】押出材のミクロ組織を示す写真である。
【図16】溶製材のマクロ組織を示す写真である。
【図17】据込材中央部のミクロ組織を示す写真である。
【図18】据込材外周部のミクロ組織を示す写真である。
【図19】出発素材としてのマグネシウム合金(AZ31)圧粉体の粉体のミクロ組織を示す写真である。
【図20】押出材のミクロ組織を示す写真である。
【図21】据込材のマクロ組織を示す写真である。
【図22】据込材中央部のミクロ組織を示す写真である。
【図23】据込材外周部のミクロ組織を示す写真である。
【符号の説明】
【0071】
1 固定型、2筒状型、3 第1支え部材、4 第2支え部材、5 押し部材、10 素材、11 第1押し部材、12 第2押し部材、13 第1支え部材、14 筒状型、15 押し部材、15a 凸部、16 上パンチ、16a 凸部、17 下ベース、18 固定型、19上パンチ、19a 凸部、20 下パンチ、20a 凸部、21 中央穴、22 細粒圧粉体、23 粗粒圧粉体、24 圧粉体、25 溶製材プレート、26 圧粉体、27 溶製素材。
【出願人】 【識別番号】391037799
【氏名又は名称】株式会社ゴーシュー
【出願日】 平成18年10月5日(2006.10.5)
【代理人】 【識別番号】100091409
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英彦

【識別番号】100096792
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 八郎

【識別番号】100091395
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 博由


【公開番号】 特開2008−87066(P2008−87066A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2006−273686(P2006−273686)