トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 金属製品の製造方法
【発明者】 【氏名】中崎 盛彦

【氏名】金井 智則

【要約】 【課題】熱間塑性加工において不良が抑制されうる条件決定方法の提供。

【解決手段】鍛伸の暫定条件が、入力部において入力される(STEP1)。演算部は、この暫定条件に基づき、FEMシミュレーションによって金属材料の中心の到達温度T1及び空隙圧着パラメータG1を算出する(STEP2)。到達温度T1は加工限界温度Toと対比され、空隙圧着パラメータG1は空隙閉鎖限界値Gcと対比される(STEP3)。算出された到達温度T1及び空隙圧着パラメータG1並びに対比の結果は、表示部14に表示される(STEP4)。到達温度T1が加工限界温度To以上であるとき、及び空隙圧着パラメータG1が空隙閉鎖限界値Gc以下であるとき、暫定条件が再入力される。到達温度T1が加工限界温度Toより低く、かつ空隙圧着パラメータG1が空隙閉鎖限界値Gcより大きいとき、この暫定条件が決定された加工条件となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料の中心の到達温度T1が加工限界温度Toより低く、かつ空隙圧着パラメータG1が空隙閉鎖限界値Gcより大きい加工条件が、FEMシミュレーションによって決定されるステップ
及び
この加工条件により、金属材料の圧縮を伴う熱間塑性加工が、この金属材料に施されるステップ
を含む金属製品の製造方法。
【請求項2】
金属材料の熱間塑性加工の暫定条件が、入力部から入力されるステップ、
この暫定条件に基づいたFEMシミュレーションによって金属材料の中心の到達温度T1及び空隙圧着パラメータG1が演算部で算出されるステップ
及び
この到達温度T1と加工限界温度Toとの対比及び空隙圧着パラメータG1と空隙閉鎖限界値Gcとの対比がなされるステップ
を含む加工条件決定方法。
【請求項3】
上記対比の結果が勘案された新たな暫定条件が、入力部から入力されるステップ、
この新たな暫定条件に基づいたFEMシミュレーションによって金属材料の中心の到達温度T1及び空隙圧着パラメータG1が演算部で再度算出されるステップ
及び
この到達温度T1と加工限界温度Toとの対比及び空隙圧着パラメータG1と空隙閉鎖限界値Gcとの対比がなされるステップ
をさらに含む請求項2に記載の加工条件決定方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造、圧延等の圧縮を伴う塑性加工による金属製品の製造方法に関する。詳細には、本発明は、熱間塑性加工の加工条件の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大径である丸棒鋼の製造方法として、鍛伸が用いられている。この鍛伸は、自由鍛造法の一種である。鍛伸では、鋼塊が長手方向に間欠的に送られつつ、この鋼塊が上金敷及び下金敷で押圧される。押圧では、上金敷が下金敷に向かって圧下する。圧下により鋼塊の断面寸法が減少し、かつ鋼塊が長尺化する。圧下により、鋼塊の断面形状が整えられる。複数段の鍛伸により、鍛造製品である丸棒鋼が得られる。鍛伸方法の一例が、特開2000−24744公報に開示されている。
【特許文献1】特開2000−24744公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
鋼塊のその中心部に、鋳造時の凝固収縮に起因した空隙(いわゆる巣)が生じていることがある。この空隙は、鍛伸により押しつぶされる。押しつぶしにより、空隙周辺の金属が圧着される。圧着が不十分であると、製品である丸棒鋼に空隙が残存する。空隙は、欠陥である。鋼塊の温度が十分高く設定されることにより、又は圧下率が十分高く設定されることにより、空隙の残存が抑制される。
【0004】
鋼塊の温度は、加工性に影響する。温度が低い場合、圧下率が大きく設定され得ない。小さな圧下率は、パス回数の増加を招く。加工性の観点からも、鋼塊の温度が十分高く設定される必要がある。
【0005】
鋼塊の鋳造時には、ミクロ偏析が生じる。具体的には、結晶粒界に沿って炭素原子等がリッチな領域が生じる。状態図において、炭素原子濃度が多いほど、固相線の温度は低い。炭素原子がリッチな領域は、溶融しやすい。鍛伸では、圧下により加工熱が発生する。この加工熱により、鋼塊の中心は昇温する。高温に加熱された鋼塊にさらに加工熱が発生することにより、鋼塊の中心は極めて高温に達する。この中心近傍の、炭素原子がリッチな領域において、溶融が生じることがある。この現象は、オーバーヒートと称される。オーバーヒートにより、製品である丸棒鋼の内部に疵が生じる。
【0006】
空隙の抑制及び加工性の観点からは、鋼塊の温度が高く設定される必要がある。一方、オーバーヒートの抑制の観点からは、鋼塊の高すぎる温度は好ましくない。鍛伸では、鋼塊の温度制御が極めて重要である。しかし、空隙及びオーバーヒートが生じず、しかも優れた加工性が得られる温度の範囲は狭い。鋼塊の温度制御には、困難が伴う。
【0007】
空隙に起因する不良及びオーバーヒートに起因する不良の抑制は、重要である。不良率は、鋼塊の加熱温度、加熱時間、圧下量、金敷の形状、鋼塊の送り量等の種々の加工条件に依存する。経験に基づく条件設定のみでは、不良を十分には抑制できない。同様の問題は、圧延等の他の熱間塑性加工にも見られる。
【0008】
本発明の目的は、熱間塑性加工において不良が確実に抑制されうる製造方法の提供にある。本発明の他の目的は、この製造方法における加工条件の決定方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る金属製品の製造方法は、
金属材料の中心の到達温度T1が加工限界温度Toより低く、かつ空隙圧着パラメータG1が空隙閉鎖限界値Gcより大きい加工条件が、FEMシミュレーションによって決定されるステップ
及び
この加工条件により、金属材料の圧縮を伴う熱間塑性加工が、この金属材料に施されるステップ
を含む。
【0010】
本発明に係る加工条件決定方法は、
(1)金属材料の熱間塑性加工の暫定条件が、入力部から入力されるステップ、
(2)この暫定条件に基づいたFEMシミュレーションによって金属材料の中心の到達温 度T1及び空隙圧着パラメータG1が演算部で算出されるステップ
及び
(3)この到達温度T1と加工限界温度Toとの対比及び空隙圧着パラメータG1と空隙 閉鎖限界値Gcとの対比がなされるステップ
を含む。
【0011】
好ましくは、この決定方法は、
(3)上記対比の結果が勘案された新たな条件が、入力部から入力されるステップ、
(4)この新たな条件に基づいたFEMシミュレーションによって金属材料の中心の到達 温度T1及び空隙圧着パラメータG1が演算部で再度算出されるステップ
及び
(5)この到達温度T1と加工限界温度Toとの対比及び空隙圧着パラメータG1と空隙 閉鎖限界値Gcとの対比がなされるステップ
をさらに含む。
【発明の効果】
【0012】
この決定方法により、不良が生じにくい加工条件が容易に見出されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法の様子が示された斜視図である。図1には、熱間自由鍛造の一種である鍛伸の様子が示されている。鍛伸では、溶製、鋳造等の工程を経て、鋼塊2が得られる。この鋼塊2には、鋳造時の凝固収縮により、中心近傍に空隙が生じている。鋼塊2の中心近傍には、ミクロ偏析も生じている。この鋼塊2は、加熱炉に投入されて加熱される。加熱時間が短いときは、鋼塊2の中心は、表面よりも温度が低い。換言すれば、鋼塊2は温度分布を有している。加熱時間が十分長いときは、鋼塊2の温度は均一である。図1に示されるように、鋼塊2が所定位置にセットされと、上金敷4が下降し、下金敷6が上昇する。換言すれば、鋼塊2は圧下される。圧下により、鋼塊2の断面寸法が低減し、又は断面形状が変形する。鋼塊2は、図示されていない搬送手段により、矢印Aの方向に間欠的に搬送される。この搬送に同調して、圧下が繰り返される。
【0015】
第一回目の鍛伸が終了すると、母材が90°回される。この母材に、第二回目の鍛伸が施される。この鍛伸によっても、母材の断面寸法が低減し、又は断面形状が変形する。母材にはさらに、所定回数の鍛伸が施される。これら鍛伸により、母材の断面形状が徐々に円に近づく。こうして、鍛造製品である丸棒鋼が得られる。
【0016】
不良のない丸棒鋼が得られるには、鍛伸により空隙が完全に圧着される必要があり、かつ鋼塊2にオーバーヒートが生じない必要がある。不良の有無は、加工条件に大きく依存する。
【0017】
加熱炉の温度が高いほど、鋼塊2の中心が達する温度が大きいので、オーバーヒートが生じやすい。オーバーヒートの抑制の観点から、加熱炉の温度が低く設定されることが好ましい。しかし、温度が低すぎる場合は、鍛伸の効率が悪い。
【0018】
加熱時間が長いほど、鋼塊2の中心が達する温度が大きいので、オーバーヒートが生じやすい。オーバーヒートの抑制の観点から、短い加熱時間が好ましい。しかし、加熱時間が短すぎると、鋼塊2の表面温度が低すぎて、鍛伸の効率が悪い。
【0019】
圧下量が大きいほど、空隙が圧着されやすい。しかし、大きな圧下量により大きな加工熱が生じる。大きな加工熱によってオーバーヒートが生じるおそれがある。
【0020】
加熱炉の温度、加熱時間及び圧下量以外にも、不良率に影響する加工条件が種々存在する。他の加工条件としては、鋼塊2の送り量、金敷の形状、鋼塊2の初期形状等が挙げられる。不良の抑制には、適正な加工条件が決定される必要がある。
【0021】
図2は、本発明に係る加工条件決定方法に用いられるシステム8が示された概念図である。このシステム8は、入力部10、記憶部12、表示部14及び演算部16を備えている。入力部10、記憶部12及び表示部14は、それぞれ演算部16と接続されている。入力部10の例としては、キーボード、マウス及びタッチパネルが挙げられる。典型的な記憶部12は、ハードディスクである。表示部14の例としては、モニタ及びプリンタが挙げられる。典型的な演算部16は、CPUである。
【0022】
図3は、図2のシステム8が用いられた加工条件決定方法が示されたフロー図である。この決定方法では、オペレーターにより、鍛伸の暫定条件が入力部10で入力される(STEP1)。演算部16は、この暫定条件に基づき、FEMシミュレーションによって金属材料の中心の到達温度T1及び空隙圧着パラメータG1を算出する(STEP2)。到達温度とは、鍛伸の間に鋼塊2の中心が到達する最高温度の、シミュレーションによる予測値である。空隙圧着パラメータとは、鋼塊2の空隙が完全に圧着されるのに必要な力の積分に関する指標であって、シミュレーションによる予測値である。空隙圧着パラメータとしては種々の算出式が採用されうる。自由鍛造及び圧延に適した空隙圧着パラメータとしては、静水圧積分Gmが挙げられる。静水圧積分Gmは、下記数式(I)によって算出されうる。
【0023】
【数1】


【0024】
数式(I)において、σは静水応力を表し、σeqは相当応力を表し、εは相当ひずみを表す。
【0025】
加工方法に応じ、補正された静水圧積分Gm’が採用されてもよい。補正された静水圧積分Gm’の算出方法の一例が、下記数式(II)に示されている。
【0026】
【数2】


【0027】
数式(II)において、Cは定数を表す。
【0028】
到達温度T1は加工限界温度Toと対比され、空隙圧着パラメータG1は空隙閉鎖限界値Gcと対比される(STEP3)。加工限界温度To及び空隙閉鎖限界値Gcは、予め決定された値であり、記憶部12に格納されている。加工限界温度To及び空隙閉鎖限界値Gcは、加工フォーマスター試験、グリーブル試験、モデル実験、実操業の結果等に基づき、決定される。到達温度T1が加工限界温度Toを超えたとき、オーバーヒートが生じる。空隙圧着パラメータG1が空隙閉鎖限界値Gcより小さいとき、不十分な圧着に起因して空隙が丸棒鋼に残存する。
【0029】
算出された到達温度T1及び空隙圧着パラメータG1並びに対比の結果は、表示部14に表示される(STEP4)。オペレーターは、この表示の内容を確認する。
【0030】
もし到達温度T1が加工限界温度To以上であるとき、新たな暫定条件がオペレーターによって入力される(STEP1)。この新たな暫定条件に基づき、到達温度T1及び空隙圧着パラメータG1が演算部16で再度算出される(STEP2)。再計算で得られた到達温度T1は加工限界温度Toと対比され、空隙圧着パラメータG1は空隙閉鎖限界値Gcと対比される(STEP3)。これらの結果は、表示部14に表示される(STEP4)。
【0031】
空隙圧着パラメータG1が空隙閉鎖限界値Gc以下であるとき、新たな暫定条件が入力される(STEP1)。この新たな暫定条件に基づき、到達温度T1及び空隙圧着パラメータG1が演算部16で再度算出される(STEP2)。再計算で得られた到達温度T1は加工限界温度Toと対比され、空隙圧着パラメータG1は空隙閉鎖限界値Gcと対比される(STEP3)。これらの結果は、表示部14に表示される(STEP4)。
【0032】
このような、暫定条件の入力(STEP1)、算出(STEP2)、対比(STEP3)及び表示(STEP4)が、繰り返される。到達温度T1が加工限界温度Toよりも小さく、かつ空隙圧着パラメータG1が空隙閉鎖限界値Gcよりも大きいとき、その暫定条件が加工条件として決定される(STEP5)。この加工条件に基づいて鍛伸が実行され、丸棒鋼が得られる。この丸棒鋼では、不良が抑制されうる。
【実施例】
【0033】
正角寸法が800mmである鋼塊が鍛伸によって丸棒鋼とされるパススケジュールの一部が、図4に示されている。このスケジュールでは、中心温度が1125℃である鋼塊に、第一パスによって正角寸法800mmから正角寸法750mmへの鍛伸がなさる。第二パスによって正角寸法750mmから正角寸法700mmへの鍛伸がなされ、第三パスによって正角寸法700mmから正角寸法650mmへの鍛伸がなされ、第四パスによって正角寸法650mmから正角寸法600mmへの鍛伸がなされ、第五パスによって正角寸法600mmから正角寸法550mmへの鍛伸がなされる。図4から明らかなように、パスの進行に伴い、中心温度が徐々に上昇する。FEMシミュレーションにより、第五パスにおいて中心温度T1が加工限界温度Toに達することが判明した。このパススケジュールでは、第四パスで鍛伸が中断され、鋼塊が冷却されることが好ましい。冷却後、鋼塊は1125℃まで再加熱され、この鋼塊に第五パス以降のパスが施される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
FEMシミュレーションによる加工条件の決定は、圧延等の、金属材料の圧縮を伴う種々の塑性加工において有効である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法の様子が示された斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係る加工条件決定方法に用いられるシステムが示された概念図である。
【図3】図3は、図2のシステムが用いられた加工条件決定方法が示されたフロー図である。
【図4】図4は、本発明の実施例に係る加工条件決定方法が適用されるパススケジュールが示されたグラフである。
【符号の説明】
【0036】
2・・・鋼塊
4・・・上金敷
6・・・下金敷
8・・・システム
10・・・入力部
12・・・記憶部
14・・・表示部
16・・・演算部
【出願人】 【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
【出願日】 平成18年10月4日(2006.10.4)
【代理人】 【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾

【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎


【公開番号】 特開2008−87058(P2008−87058A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2006−272462(P2006−272462)