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【発明の名称】 圧造成形用ダイス
【発明者】 【氏名】大槻 豊

【氏名】植田 昂

【要約】 【課題】高速圧造成形加工時にダイスの成形加工面の互いの衝突を解消するようにした圧造成形用ダイスを得る。

【解決手段】ドリル部4を成形する圧造成形用ダイスにおいて、成形凹面21の一方の周縁23に切り刃8を形成可能な成形刃24を設け、反対側の成形凹面21の周縁23に突状面22を形成し、前記周縁23から突状面22に沿って逃げ溝12を形成してダイス10の成形加工面20を形成し、ダイス10を突き合わせたときに成形刃24の先端縁が相手の逃げ溝12に入り込むようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ山(5)が形成される脚部(3)の先端部にワークにこのねじ山をねじ込むための下穴を形成する切り刃先形状のドリル部(4)を圧造加工可能なように互いに対向して配置された成形加工面(20)を突き合わせて前記ドリル部を圧造成形する一対の圧造成形用ダイスにおいて、
前記成形加工面を構成する断面凹状の成形凹面(21)の一方の周縁(23)にねじのねじ込み方向回転時に下穴を切削穿孔する切り刃(8)を形成可能な成形刃(24)を設け、この成形刃とは反対側の成形凹面の周縁にこれから連続して先端に向かうにしたがって中心側に傾斜した略三角形状の突状面(22)を形成し、この成形凹面の周縁から突状面の周縁に沿って所定深さの逃げ溝(12)を形成して一方のダイス(10)の成形加工面を形成し、このダイスの成形加工面を互いに対向して突き合わせたときに前記成形刃の先端縁が相手の逃げ溝に入り込むようにしたことを特徴とする圧造成形用ダイス。
【請求項2】
逃げ溝は少なくともドリル部の胴部を形成する成形凹面の周縁に沿って設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧造成形用ダイス。
【請求項3】
逃げ溝は入口側が広く底側が狭くなるよう形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の圧造成形用ダイス。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対してねじをねじ込むための下穴を形成しながらねじ込み可能なドリルタッピンねじの製造において、ドリル部を圧造成形加工するダイスに関し、特に、強度が比較的高くワークに対して十分にねじ込み可能な下穴をあけるドリル部の切り刃を形成するためのダイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワークに下穴をあけながらねじ込まれるねじには先端に切り刃先形状のドリル部を形成した所謂、ドリルタッピンねじが多く採用されている。これらドリルタッピンねじのドリル部は従来は切削により製造されていたが、最近ではこのドリル部を冷間圧造加工により加工している。このような圧造加工によりドリル部を加工するためのダイスは、対向する側の前端に成形加工面を設けたダイスを相対向させて突き合わせ、ねじ素材の脚部の先端をドリル形状に圧造加工するようになっている。このようなダイスでは、大量に整列されて供給されてくるねじ素材に対して圧造加工を行い、ねじ素材の先端にドリル部を形成するようになっているが、このねじ素材が何らかの原因によりダイスの突き合わせ位置まで供給されないで、ダイスの間にねじ素材が入らない状態で互いに突き合わせられることになって、成形加工面が衝突(所謂、空打ち)することになり、ダイスの成形加工面が破損する問題が生じていた。
【0003】
これを解消するために、最近ではダイスを突き合わせたときに互いの成形加工面が衝突しないようにした当り面を互いのダイスの成形加工面の隅に設け、これにより、空打ちが生じないようにしている。これには実開平6−66837号に示されたものがある。これは、前記成形加工面の上部両側と成形加工面の下部に成形加工面の周縁より僅か高くなった当り面を形成したものである。しかしながら、このような現象を解消するためには前記当り面を設ける必要があるが、この当り面をダイスの成形加工面に設けようとすると、限られた大きさの成形加工面に多くの凹凸が形成される構成となり、特に、比較的小さいドリルねじのような部品を圧造成形するダイスにおいては、この当り面を切削あるいは研磨により形成しようとすると、成形加工面との兼ね合いからその加工に時間がかかり、コストの上昇を招いている。また、このような当り面があるダイスでドリル部を成形加工した場合、ドリルタッピンねじのねじ素材が相対向して突き合わせ圧造加工動作するダイスに合わせて連続して供給されている間はこのダイスが損傷することなく、所定の形状のドリル部が得られるが、この圧造加工は高速で行われているため、ねじ素材がこの圧造加工に合わせて供給されずに前記空打ち現象が生じると、ダイスの慣性力により互いのダイスの成形加工面は依然として衝突して損傷が生じている。これはドリル部の切り刃を得るためにはできるだけ互いのダイスが最接近するように調整する必要があるためであり、ドリル部の均一な製造のための隙間調整に多くの時間を必要としている。しかも、圧造加工から得られるドリル部はねじ素材を打圧することで円柱状の素材を圧縮変形させて形成するものであるから、これの圧造加工時に生じる余分な素材は成形加工面からはみ出てバリとなっており、切り刃となるドリル部の外周縁はその組織が荒くなり、ドリル部の強度が低く比較的厚いワークであると、下穴が完全にあかず、切り刃が潰れる等の問題もある。これを解消するために図7及び図8に示すように、ドリル部104の胴部を形成する成形面121の周縁123から少し離れた位置においてこれに沿い筋状の溝112を形成し、圧造加工時に生じるバリが成形面121の外方へ飛び出さないようにしているものもある。
【特許文献1】実開平6−66837号公報
【特許文献2】特開昭60−121031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように成形加工面から少し離れた位置においてこれの周縁に沿いバリの外方への飛び出しを阻止する溝を形成してもバリの飛び出し阻止が不十分であり、切り刃はその強度が十分に向上していない。また、ねじ素材を互いのダイスの間に位置させて相対向する成形加工面で圧造加工する構成であるので、ねじ素材が何らかの原因でこれらダイスの間に位置せず空打ち状態になると、依然としてこれらダイスの成形加工面が衝突し、これに破損が生じている。このため、ダイスの交換が頻繁に発生することになり、依然としてコストの上昇を招いている。更に、これに当り面を形成しても、互いのダイスの成形加工面の突き合わせにおいてその最接近寸法の調整に多くの時間と労力がかかっている。しかも、前記当り面を成形加工面の加工が容易となるように、ダイスの下側だけに形成した場合は、理論上はこれで衝突を回避することになるが、高速圧造加工においては、ダイスの慣性が働き、依然として互いのダイスの衝突を解消することができない等の課題が生じている。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解消するとともに高速圧造成形加工時にダイスの成形加工面の互いの衝突を解消するようにした圧造成形用ダイスを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、ねじ山5が形成される脚部3の先端部にワークにこのねじ山5をねじ込むための下穴を形成する切り刃先形状のドリル部4を圧造加工可能なように互いに対向して配置された成形加工面20を突き合わせて前記ドリル部4を圧造成形する一対の圧造成形用ダイスにおいて、前記成形加工面20を構成する断面凹状の成形凹面21の一方の周縁23にねじのねじ込み方向回転時に下穴を切削穿孔する切り刃8を形成可能な成形刃24を設け、この成形刃24とは反対側の成形凹面21の周縁23にこれから連続して先端に向かうにしたがって中心側に傾斜した略三角形状の突状面22を形成し、この成形凹面21の周縁23から突状面22の周縁に沿って所定深さの逃げ溝12を形成して一方のダイス10の成形加工面20を形成し、このダイス10の成形加工面20を互いに対向して突き合わせたときに前記成形刃24の先端縁が相手の逃げ溝12に入り込むようにした圧造成形用ダイスを提供することで達成される。
【0007】
また、この目的は前記構成に加えて、逃げ溝は少なくともドリル部4の胴部を形成する成形凹面21の周縁23に沿って設けられていることからも達成され、更に、逃げ溝は入口側が広く底側が狭くなるよう形成されていることで、相対向するダイスの成形凹面の周縁が互いに衝突することが回避されることからも前記目的が達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドリルタッピンねじのねじ素材の先端部を互いのダイスの間に位置させ、これに一対のダイスを突き合わせて圧造加工する際にドリル部の切り刃を成形する成形刃が相手のダイスの逃げ溝に入る位置となっているので、ねじ素材から周辺に飛び出したバリを鋭く押圧して極薄状に成形することになり、ドリル部に先鋭な切り刃の形成が可能になる。また、ダイスの繰り返し圧造加工において、都度、供給されるねじ素材が相対向するダイスの成形加工面の間の所定位置に位置していない状態においてダイスが互いに突き合わせられても、ダイスの成形刃は一方のダイスの成形加工面に衝突しないで逃げ溝内に入ることになるので、ダイスが空打ちすることが無くこれの破損が減少し、ダイスの寿命も延びる。更に、互いのダイスの取付調整において、ダイスの最接近位置の調整も容易になり、段取り時間が短縮される。また、ドリル部先端を形成する成形刃は相手側ダイスの突状面から下方に後方下方へ向けて傾斜しているので、互いのダイスを突き合わせても衝突することがない。しかも、従来のように、当り面が必要なくなり、ダイスの成形加工面の形成において、その加工作業が容易になる。その上、この逃げ溝は素材の圧造加工時に発生するバリの発生時にバリの飛び出しを制限することができ、これにより素材の組織の自由な流れが阻止されるとともにバリは成形刃で押圧されて極薄状に成形されることになるからこの部分の組織が緻密になり、ドリル部の切り刃の強度も向上する等の特有の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図6に基づき説明する。図6において、1は頭部2と一体の脚部3の先端部にドリル部4を形成し、ドリル部4から頭部2にかけてねじ山5が形成されたドリルタッピンねじである。この頭部2にはドライバビット(図示せず)と係合可能な十字溝6が形成されており、ドリルタッピンねじ1に回転を伝達する形状であれば、−溝、六角穴あるいは頭部外形形状が六角、四角等の多角形形状であってもよい。ドリルタッピンねじ1のドリル部4はねじのねじ込み回転方向側にすくい面7が形成されており、この面の外周には切り刃8が形成されている。この切り刃8はワーク(図示せず)に下穴をあけるときにワークを削りながら穿孔するようになっており、この後、ドリル部4で形成された下穴に脚部3に形成されているねじ山5が雌ねじ(図示せず)を形成しながらねじ込まれるようになっている。
【0010】
このようなドリルタッピンねじ1のドリル部4は図1及び図3に示すように、一対のダイス10、10を対向して突き合わせることによりねじ素材30の脚部31の先端部に圧造成形加工される構成であり、互いに相対向するダイス10、10の前端の対向面には成形加工面20が夫々形成されている。この成形加工面20はその中心線上にドリル部4の胴部外周面を略半周形成するよう断面扇形形状の成形凹面21を有しており、この成形凹面21は図1及び図2に示すように、前記ドリル部4の先端を形成するように略円錐形状となって、先端に達するにしたがって浅くなるように形成されている。この成形凹面21の先端側で、図1において、向かって左側には前記ドリル部4のすくい面7を形成する突状面22が設けてあり、この突状面22は成形凹面21を構成する周縁23においてダイス10の上端から僅かに下がった途中を基点にして、前記周縁23に連続して先端に向かうにしたがって中心側に傾斜した略三角形状の平面状となっている。この成形凹面21と突状面22とから構成される成形加工面20の周囲には前記周縁23及び突状面22からダイス10の外方に向かって後方及び下方へ夫々傾斜する傾斜面11が形成された形状となっており、前記成形加工面20がダイス10の前方に突き出た形状となっている。
【0011】
また、前記成形加工面20の突状面22が位置する側には成形凹面21の周縁23とこれから突状面22の外側の周縁に沿い、これらにできるだけ接近した距離を有して所定深さの逃げ溝12が形成されている。更に、この逃げ溝12の位置は前記成形凹面21の中心線を挟んで突状面22の無い側に形成されている成形刃24即ち、ドリル部4のねじ込み方向回転時に下穴を切削穿孔する切り刃8を形成可能な成形刃24が図4及び図5に示すように、ダイス10、10を相対向して突き合わせたときに一方のダイス10の成形刃24と他方のダイス10の逃げ溝12とが互いに沿う位置となっている。具体的には、成形刃24と逃げ溝12の側壁13との間隔(S)は0.02mm〜0.03mmとなるよう設定されている。これによりダイス10、10が相対向して高速で突き合わせられたときに成形刃24の先端縁は逃げ溝12に僅か入り、成形刃24は互いの相手のダイス10に衝突しない構成となっている。
【0012】
この逃げ溝12はダイス10、10の互いに対向する入口側が広く、これより奥にある底側が狭くなった、例えば、台形形状の断面となっており、特にこれに限定しないが、これに代え半円形状あるいは三角形状の断面であってもよい。尚、成形加工面20の中心側に位置する逃げ溝12の側壁13は相手ダイス10の成形刃24の内側に沿う平行な面となる角度にすることで、成形刃24の逃げ溝12への接触がより確実に除かれる。
【0013】
このような構成の一対のダイス10、10において、図3に示すねじ素材30の脚部31がこれら相対向するダイス10、10の間の所定位置に位置決めされてから互いのダイス10、10の前面が突き合わせられて高速圧造成形加工が行われると、脚部31の先端部には塑性変形が加えられる。この時、余分な素材としてのバリ(図示せず)は成形加工面20から外方に、即ち、傾斜面11上に飛び出すが、この飛び出し時において逃げ溝12にバリの一部は嵌り込み、バリの飛び出しが制限される。そして、これとほぼ同時に互いのダイス10、10の成形刃24がこの逃げ溝12の位置に達し、バリは押圧されて極薄筋状に成形され、ドリルタッピンねじ1のドリル部外周の形状が得られる。このようにしてバリが逃げ溝12に嵌ることにより、素材の流れが制限されて素材の組織が荒くならずに緻密な組織が得られ、ドリル部4の外周に形状が均一で比較的高い強度の切り刃8が形成される。
【0014】
このようにドリル部4の高速圧造成形加工毎に確実にねじ素材30が所定位置に供給されている場合は正確にドリル部4は形成されるが、一方、何らかの原因でねじ素材30が供給されていない状態で、互いのダイス10、10が突き合わせされた場合、所謂、空打ちが生じた場合は、互いの成形加工面20が衝突する状態となる。この時のダイス10、10は慣性力を受けているから図5に示すように、成形加工面20の成形刃24の先端は僅か互いの逃げ溝12内に入る。このとき、ドリル部4の先端切り刃8を形成する成形加工面20の成形刃24は突状面22より僅かに前方へ突き出ており、しかも、突状面22の下方は後方下方へ向けて傾斜した傾斜面11となっており、相手ダイス10の成形加工面20が再接近した状態では、相手ダイス10の成形刃24は前記傾斜面11に接しないように調整された構成となっている。これにより、成形刃24は損傷を受けることが無く、ダイス10、10の寿命は長くなる。
【0015】
次に、このようにしてドリル部4が形成されたねじ素材30は続いて脚部31にねじ山5を転造成形する転造ダイス(図示せず)に供給されて全てのバリは除かれ、脚部31にねじ山5とこれの先端にドリル部4が形成されたドリルタッピンねじ1が得られる。このようにして得られたドリルタッピンねじ1と従来技術により得られたドリルタッピンねじ1とのねじ込み時間を夫々測定し、これの比較を行ったのでその結果を表1に示す。この測定におけるワークは、厚さ2mmの冷間圧延鋼板(SPCC板)を2枚重ねたものを使用し、ドリルタッピンねじ1の呼び径は4.8mmで長さは19mm、ねじ込み推力は245N、回転速度は2500rpmの条件で、ドリルタッピンねじサンプル10本を夫々ねじ込んだ場合において、ねじ込み開始からワークにねじの頭部座面が着座するまでの時間を測定した。
【0016】
【表1】


【0017】
この結果、従来のドリルタッピンねじ1は1本当たりのねじ込み時間は平均2.95秒であり、本発明により得られたドリルタッピンねじ1は1本当たりのねじ込み時間は平均2.44秒であった。この結果から本発明により得られたドリルタッピンねじ1が0.51秒早くねじ込まれることが解った。これはねじの呼び径及び長さは同じで圧造加工により得られるドリル部4の精度の違いによる速い下穴形成から得られたものであり、ダイス10、10の成形加工面20の形状の相違によりもたらされたものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明おけるダイスの成形加工面の拡大正面図である。
【図2】図1の部分平面図である。
【図3】本発明によるダイスの実施の形態を示す斜視図である。
【図4】一対のダイスの突き合わせ状態を示す拡大要部平面図である。
【図5】本発明の要部拡大断面図である。
【図6】ドリルタッピンねじの正面図である。
【図7】本発明の従来例のドリル部成形状態を示す正面図である。
【図8】図7のA−A線に沿うねじ素材を除いた平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ドリルタッピンねじ
2 頭部
3 脚部
4 ドリル部
5 ねじ山
6 十字溝
7 すくい面
8 切り刃
10 ダイス
11 傾斜面
12 逃げ溝
13 側壁
20 成形加工面
21 成形凹面
22 突状面
23 周縁
24 成形刃
30 ねじ素材
31 脚部
【出願人】 【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
【出願日】 平成18年9月29日(2006.9.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−87011(P2008−87011A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2006−268540(P2006−268540)