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【発明の名称】 潤滑剤吹き付け方法及び潤滑剤吹き付け装置
【発明者】 【氏名】澤村 政敏

【氏名】与語 康宏

【氏名】田中 利秋

【氏名】中西 広吉

【氏名】渡邊 敦夫

【要約】 【課題】短時間で充分に金型を冷却し、潤滑剤を充分に付着させることができる潤滑剤吹き付け方法及び潤滑剤吹き付け装置を提供すること。

【解決手段】被加工材を熱間鍛造した後のプレス装置の金型に潤滑剤を吹き付ける方法及び吹き付け装置1である。その方法においては、潤滑剤を所定の噴霧密度で上記金型に吹き付ける工程と、噴霧密度を徐々に低下させながら上記潤滑剤を上記金型に吹き付ける工程を行う。また、潤滑剤吹き付け装置1は、ノズル本体部11と、配管12と、開閉弁13とを有する。また、ノズル本体部11と開閉弁13との間には容積可変収容部14を有する。容積可変収容部14は、開閉弁13が開いているときにはその内容積を増加させながら潤滑剤を備蓄する。開閉弁13が閉じられたときには内容積を減少させながら潤滑剤をノズル本体部11に供給する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材を熱間鍛造した後のプレス装置の金型に潤滑剤を吹き付ける方法において、
上記金型から成形品を離型した直後に上記潤滑剤を所定の噴霧密度で上記金型に吹き付ける第1吹き付け工程と、
該第1吹き付け工程に続けて、上記噴霧密度を徐々に低下させながら上記潤滑剤を上記金型に吹き付ける第2吹き付け工程とを有することを特徴とする潤滑剤吹き付け方法。
【請求項2】
請求項1において、上記第1吹き付け工程における上記噴霧密度は、0.5cc・s-1・cm-2以上であることを特徴とする潤滑剤吹き付け方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記第2吹き付け工程においては、上記噴霧密度を0.1cc・s-1・cm-2以下にまで低下させることを特徴とする潤滑剤吹き付け方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記第2吹き付け工程は、上記第1吹き付け工程により上記金型の温度を300℃以下にした後に行うことを特徴とする潤滑剤吹き付け方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記第1吹き付け工程においては、上記金型の温度分布に応じてその温度が高い部位程高い噴霧密度で上記潤滑剤を吹き付けることを特徴とする潤滑剤吹き付け方法。
【請求項6】
被加工材を熱間鍛造した後のプレス装置の金型に潤滑剤を吹き付けるために用いられる潤滑剤吹き付け装置において、
該潤滑剤吹き付け装置は、上記潤滑剤を噴霧する噴霧ノズルを1つ以上備えると共に、上記潤滑剤の吹き付け時に上記金型内に配置されるノズル本体部と、該ノズル本体部に上記潤滑剤を圧送する配管と、該配管の途中に設けられた上記配管の開閉弁とを有し、
上記開閉弁と上記ノズル本体部との間には、該ノズル本体部に圧送される上記潤滑剤の一部を備蓄するための容積可変収容部を有し、
該容積可変収容部は、上記開閉弁が開いているときには、上記潤滑剤の圧送圧力によって上記容積可変収容部の内容積を増加させながら上記潤滑剤を備蓄し、上記開閉弁が閉じられたときには、元の形状に戻るように内容積を減少させながら上記潤滑剤を上記ノズル本体部に供給するように構成されていることを特徴とする潤滑剤吹き付け装置。
【請求項7】
請求項6において、上記容積可変収容部は、上記開閉弁と上記ノズル本体部との間における上記配管の少なくとも一部を上記圧送圧力によって膨張可能な弾性素材によって形成してなる弾性配管を有することを特徴とする潤滑剤吹き付け装置。
【請求項8】
請求項6において、上記配管は、上記開閉弁と上記ノズル本体部との間に分岐口を有し、上記容積可変収容部は、上記分岐口に連結されたシリンダと、該シリンダ内に進退可能に配置されたピストンと、該ピストンと上記シリンダの内壁とにより囲まれる内容積が減少する方向に上記ピストンを付勢する付勢手段とを有していることを特徴とする潤滑剤吹き付け装置。
【請求項9】
請求項6において、上記配管は、上記開閉弁と上記ノズル本体部との間に分岐口を有し、上記容積可変収容部は、上記分岐口に連結された収納袋体を有し、該収納袋体は、上記潤滑剤の圧送圧力によって膨張可能な弾性素材からなることを特徴とする潤滑剤吹き付け装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずか一項において、上記潤滑剤吹き付け装置は、上記金型が上記被加工材と接触する金型面の温度分布に基づいて、上記金型面の温度が高い部位程高い噴霧密度で上記潤滑剤が噴霧されるように制御されていることを特徴とする潤滑剤吹き付け装置。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項において、上記開閉弁が開いているときには、上記潤滑剤を噴霧密度0.5cc・s-1・cm-2以上で上記金型に吹き付けるように制御されていることを特徴とする潤滑剤吹き付け装置。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか一項において、上記潤滑剤吹き付け装置は、上記金型が上記被加工材と接触する金型面の温度分布を測定するための温度測定手段と、該温度測定手段によって測定された温度分布の平均温度が300℃以下になったときに上記開閉弁を閉じる開閉弁制御手段とを有することを特徴とする潤滑剤吹き付け装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材を熱間鍛造した後のプレス装置の金型に潤滑剤を吹き付けるための潤滑剤吹き付け方法、及び潤滑剤吹き付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高温に加熱した被加工材を金型を用いて所定形状に成形する熱間鍛造は、自動車部品やその他の成形品を製造する手法として広く利用されている。
熱間鍛造においては、高温に加熱した被加工材を金型に導入して成形し、金型から成形品を取り出すという工程が繰り返し行われる。また、金型が被加工材と接触する金型面には、成形時の摩擦低減や成形品の離型性を向上させるために、潤滑剤が吹き付けられる。この潤滑剤の吹き付けは、鍛造時に生じる摩擦発熱や高温の被加工材からの伝熱によって温度上昇した金型を冷却するという役割も兼ねている。
【0003】
熱間鍛造においては、高価な金型の寿命を延長させることが重要視されている。熱間鍛造において、金型の寿命要因の約70%は、金型の軟化による摩耗である。即ち、熱間鍛造を繰り返し行うと、上述のごとく金型の温度上昇と冷却とが繰り返し起こる。その結果、温度履歴が生じ、金型が軟化する。この軟化した金型に鍛造時の機械的負荷等が加わることにより金型が削られて上述のごとく摩耗が生じる。この摩耗を回避するためには、潤滑剤を金型面に均一かつ充分な量で吹き付ける必要がある。
一方、成形品の生産性の向上のため、熱間鍛造の高速化が求められており、潤滑剤を吹き付けるための時間についても短縮化が要求されている。しかし、吹き付け時間を短縮化すると、金型を充分に冷却し、さらに潤滑剤を充分に付着させることが困難になる。
【0004】
そこで、短時間で金型を冷却し、さらに充分量の潤滑剤を付着させるために、例えば次のような方法が開発されている。
即ち、例えば離型剤を噴射塗布するにあたって、離型剤塗布を型打ち直後と型打ち直前との二段階で行う方法が開発されている(特許文献1参照)。また、冷却水を噴射して金型表面温度が潤滑剤の付着最適温度になったことを確認した後、直ちに冷却水噴射を停止するとともに、必要最小量の潤滑剤を噴霧する方法が開発されている(特許文献2参照)。さらに、繰り返し行われる鋳造サイクルにおいて、所定の鋳造サイクルの間にあっては、上記金型の金型面を所望の温度にする工程を経たのちに、上記金型の金型面の全体に処理剤を塗布する工程を行うようにし、他の鋳造サイクルの間にあっては、上記金型の金型面を所望の温度にする工程を経たのちに、上記金型の金型面の一部に処理剤を塗布する工程を行うか、もしくは、上記金型の金型面を所望の温度にする工程のみを行うようにした方法が開発されている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−85887号公報
【特許文献2】特開平6−277782号公報
【特許文献3】特開2003−136211号公報
【0006】
しかしながら、上記従来の方法においても、短時間で充分に金型を冷却し、潤滑剤を充分に付着させることは困難であった。そのため、金型の軟化による摩耗が発生するおそれがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる従来の問題に鑑みてなされたものであって、短時間で充分に金型を冷却し、潤滑剤を充分に付着させることができる潤滑剤吹き付け方法及び潤滑剤吹き付け装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、被加工材を熱間鍛造した後のプレス装置の金型に潤滑剤を吹き付ける方法において、
上記金型から成形品を離型した直後に上記潤滑剤を所定の噴霧密度で上記金型に吹き付ける第1吹き付け工程と、
該第1吹き付け工程に続けて、上記噴霧密度を徐々に低下させながら上記潤滑剤を上記金型に吹き付ける第2吹き付け工程とを有することを特徴とする潤滑剤吹き付け方法にある(請求項1)。
【0009】
即ち、上記第1吹き付け工程において、上記潤滑剤を所定の噴霧密度で上記金型に吹き付けることにより、上記金型の温度を低下させることができる。さらに上記第1吹き付け工程に続けて行う上記第2吹き付け工程においては、ある程度冷却された状態の上記金型に上記噴霧密度を徐々に低下させながら上記潤滑剤を上記金型に吹き付ける。その結果、上記潤滑剤が上記金型に付着し易くなり、上記金型に充分に上記潤滑剤を付着させることができる。
【0010】
即ち、上記潤滑剤は、上記金型の温度がある程度冷却されている状態の方が起こりやすい。本発明においては、上記のごとく、所定の噴霧密度で上記潤滑剤を吹き付ける第1吹き付け工程を行うことにより、上記金型へ上記潤滑剤を付着させる上記第2吹き付け工程の前に上記金型の温度を充分に低下させることができる。また、上記金型の冷却は、比較的高い噴霧密度で上記潤滑剤を吹き付けることにより、速やかに進行させることができる。一方、上記金型への潤滑剤の付着は、比較的低い噴霧密度で上記潤滑剤を吹き付けることにより進行し易くなる。本発明においては、上記第1吹き付け工程において、所定の噴霧密度で吹き付けを行い、上記第2吹き付け工程においては、上記第1吹き付け工程よりも低い噴霧密度で上記潤滑剤の吹き付けを行っている。そのため、上記第1吹き付け工程において優先的に上記金型を冷却させ、上記第2吹き付け工程において優先的に上記潤滑剤を付着させることができる。
【0011】
また、一般に、金型温度と潤滑剤の付着量との関係は、直線的な比例関係にあるわけではなく、さらに噴霧密度と潤滑剤との関係も直線的な比例関係にあるわけではない。即ち、任意の金型温度範囲において、必ずしも潤滑剤の噴霧密度が低いほど潤滑剤が付着し易くなるわけではなく、金型温度に依存して、潤滑剤を付着させるための最適な噴霧密度は変化する(図6参照)。本発明においては、上記第2吹き付け工程において、上記潤滑剤の噴霧密度を低下させながら上記潤滑剤を金型に吹き付けている。そのため、確実に最適な噴霧密度で吹き付けることができ、充分量の上記潤滑剤を金型に付着させることができる。それ故、金型の軟化による摩耗を充分に抑制することができる。
【0012】
また、上記第1吹き付け工程と上記第2吹き付け工程とは、連続的な一連の工程として行うことができるため、時間的なロスがほとんどない。そのため、上記潤滑剤の吹き付けに要する時間の短縮化を図ることができる。
【0013】
このように、上記第1の発明によれば、短時間で充分に金型を冷却し、潤滑剤を充分に付着させることができる潤滑剤吹き付け方法を提供することができる。
【0014】
第2の発明は、被加工材を熱間鍛造した後のプレス装置の金型に潤滑剤を吹き付けるために用いられる潤滑剤吹き付け装置において、
該潤滑剤吹き付け装置は、上記潤滑剤を噴霧する噴霧ノズルを1つ以上備えると共に、上記潤滑剤の吹き付け時に上記金型内に配置されるノズル本体部と、該ノズル本体部に上記潤滑剤を圧送する配管と、該配管の途中に設けられた上記配管の開閉弁とを有し、
上記開閉弁と上記ノズル本体部との間には、該ノズル本体部に圧送される上記潤滑剤の一部を備蓄するための容積可変収容部を有し、
該容積可変収容部は、上記開閉弁が開いているときには、上記潤滑剤の圧送圧力によって上記容積可変収容部の内容積を増加させながら上記潤滑剤を備蓄し、上記開閉弁が閉じられたときには、元の形状に戻るように内容積を減少させながら上記潤滑剤を上記ノズル本体部に供給するように構成されていることを特徴とする潤滑剤吹き付け装置にある(請求項6)。
【0015】
上記第2の発明の上記潤滑剤吹き付け装置は、上記ノズル本体部と上記配管と上記開閉弁とを有し、さらに上記開閉弁と上記ノズル本体部との間に上記容積可変収容部を有する。上記容積可変収容部は、上記開閉弁が開いているときには、上記潤滑剤の圧送圧力によって上記容積可変収容部の内容積を増加させながら上記潤滑剤を備蓄するように構成されている。また、上記容積可変収容部は、上記開閉弁が閉じられたときには、元の形状に戻るように内容積を減少させながら上記潤滑剤を上記ノズル本体部に供給するように構成されている
【0016】
したがって、上記潤滑剤吹き付け装置においては、上記開閉弁を開いているときには、上記配管を通過する上記潤滑剤の一部を上記容積可変収容部に備蓄し、残部を所定の噴霧密度で上記金型に上記潤滑剤を吹き付けることができる。そのため、上記金型の温度を優先的に低下させることができる。また、上記開閉弁を閉じたときには、上記開閉弁で上記潤滑剤の圧送が停止されるが、上記容積可変収容部に備蓄されていた上記潤滑剤が上記ノズル本体部に供給されて上記噴霧ノズルから金型に吹き付けられる。このとき、上記容積可変収容部は、元の形状に戻るように内容積を減少させながら上記潤滑剤を上記ノズル本体部に吹き付ける。そのため、上記開閉弁を開いているときの上記所定の噴霧密度から噴霧密度を徐々に低下させながら上記潤滑剤を吹き付けることができる。そのため、上記潤滑剤を確実に付着し易い噴霧密度で上記金型に吹き付けることができる。
したがって、上記潤滑剤噴霧装置においては、上記開閉弁を開いているときに上記金型の温度を充分に低下させ、上記開閉弁を閉じたときには、上記潤滑剤を上記金型に充分に付着させることができる。
【0017】
また、一般に、潤滑剤の吹き付け中に噴霧密度を切り替えるためには、新たに別ルートの潤滑剤吹き付け管路や制御弁などが必要となり、潤滑剤吹き付け装置の構造が複雑化し、高価になりやすい。上記第2の発明の上記潤滑剤吹き付け装置においては、上記容積可変収容部を有しているため、上記開閉弁の開閉により、所定の噴霧密度による吹き付けと、噴霧密度を徐々に低下させながら行う吹き付けとを簡単に切り替えることができる。さらに、これらの噴霧密度の異なる吹き付けを連続した一連の工程で行うことができる。そのため、上記潤滑剤の吹き付けに要する時間の短縮化を図ることができる。
【0018】
また、上記第2の発明の上記潤滑剤吹き付け装置を用いると、上記第1の発明の上記第1吹き付け工程と上記第2吹き付け工程とを簡単に実現することができる。即ち、上記開閉弁を開いているときには、上記第1吹き付け工程を行うことができ、上記開閉弁を閉じたときには、上記第2吹き付け工程を行うことができる。
【0019】
以上のように、上記第2の発明によれば、短時間で充分に金型を冷却し、潤滑剤を充分に付着させることができる潤滑剤吹き付け装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
上記潤滑剤を吹き付ける上記金型は、被加工材を熱間鍛造した後の金型であり、通常例えば400℃以上という高温になっている。
上記第1吹き付け工程においては、上記金型から成形品を離型した直後に上記潤滑剤を所定の噴霧密度で上記金型に吹き付ける。
上記第1吹き付け工程における上記噴霧密度は、0.5cc・s-1・cm-2以上であることが好ましい(請求項2)。
上記噴霧密度が0.5cc・s-1・cm-2未満の場合には、上記金型を短時間で充分に冷却させることが困難になるおそれがある。より好ましくは、上記第1吹き付け工程における上記噴霧密度は、1.0cc・s-1・cm-2以上がよい。
【0021】
噴霧密度ρs(cc・s-1・cm-2)は、単位時間あたりに単位面積あたりの金型に到達する上記潤滑剤の量であり、例えば次のようにして測定することができる。即ち、まず、底面に吸水シートを載置したケースを準備する。このケースを金型に配置し、上記潤滑剤を所定時間吹き付け、吹き付け前後における吸水シートの重量変化を測定する。この重量変化を潤滑剤を塗布した時間とケースの底面積とで除することにより噴霧密度を算出することができる。
【0022】
上記第2吹き付け工程においては、上記噴霧密度を徐々に低下させながら上記潤滑剤を上記金型に吹き付ける。
上記第2吹き付け工程においては、上記噴霧密度を0.1cc・s-1・cm-2以下にまで低下させることが好ましい(請求項3)。
上記第2吹き付け工程における上記噴霧密度の低下が0.1cc・s-1・cm-2以下に到達しない場合には、上記金型に上記潤滑剤を充分に付着させることが困難になるおそれがある。また、上記金型に充分量の上記潤滑剤を付着させるために要する時間が増大するおそれがある。
【0023】
また、上記第2吹き付け工程は、上記第1吹き付け工程により上記金型の温度を300℃以下にした後に行うことが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記第2吹き付け工程において、上記潤滑剤をより付着させやすくすることができる。金型の温度が300℃を越えるている状態で上記潤滑剤を吹き付けると、金型の冷却が優先的に起こり、潤滑剤の付着は比較的起こりにくい。よって、上記のごとく、上記第2吹き付け工程は、温度300℃以下で行うことが好ましい。
【0024】
また、上記第2吹き付け工程は、上記第1吹き付け工程により上記金型の温度を250℃以上かつ300℃以下にして行うことが好ましい。金型の温度が250℃未満の状態で上記潤滑剤を吹き付けても、該潤滑剤が上記金型に付着し難くなるおそれがある。
【0025】
上記第1吹き付け工程においては、上記金型の温度分布に応じてその温度が高い部位程高い噴霧密度で上記潤滑剤を吹き付けることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記第1吹き付け工程において、効率的かつ確実に上記金型を冷却することができる。さらに冷却後の上記金型の温度分布のばらつきを小さくすることができる。これにより、上記第2吹き付け工程において、上記金型に均一かつ充分に上記潤滑剤を付着させることができる。
上記金型の温度分布は、金型内部に設置した熱電対、非接触式温度分布測定装置、又は金型温度解析装置等により測定することができる。
【0026】
また、例えば後述の潤滑剤吹き付け装置を用いて上記潤滑剤の吹き付けを行う場合には、上記噴霧密度は、例えば噴霧ノズルの口径、噴霧ノズルの配置、潤滑剤の圧送圧力、ノズルから金型面までの距離等によって制御することができる。また、上記潤滑剤をエアー(圧縮空気)と共に噴射させることにより吹き付けを行う場合には、エアーの圧力によっても上記噴霧密度を制御することができる。また、噴霧ノズルから噴射された潤滑剤は、円錐状に広がりながら上記金型面における一定の範囲に吹き付けられるが、この一定範囲の中心位置を制御することによっても、上記噴霧密度を制御することができる。
【0027】
次に、上記潤滑剤吹き付け装置について説明する。
上記潤滑剤吹き付け装置は、上記開閉弁と上記ノズル本体部との間に、該ノズル本体部に圧送される上記潤滑剤の一部を備蓄するための容積可変収容部を有している。
上記容積可変収容部としては、上記開閉弁と上記ノズル本体部との間における上記配管の少なくとも一部を上記圧送圧力によって膨張可能な弾性素材によって形成してなる弾性配管を有することが好ましい(請求項7)。
この場合には、簡単に上記容積可変収容部を構成することができる。
【0028】
即ち、上記開閉弁が開いているときには、上記潤滑剤の圧送圧力によって上記弾性配管が膨張し該弾性配管の内容積が増大した状態で上記潤滑剤が上記ノズル本体部に供給される。このとき、上記弾性配管は、該弾性配管の管壁の付勢力に抗して上記潤滑剤の圧送圧力が上記弾性配管を膨張させる方向に作用する力と、該弾性配管が膨張前の形状に戻ろうとする方向に作用する付勢力とが平衡状態になるまで膨張する。一方、上記開閉弁が閉じられたときには、上記潤滑剤の圧送圧力による上記弾性配管を膨張させる方向に作用する力がなくなる。そのため、上記弾性配管は、該弾性配管が元の形状に戻ろうとするときの付勢力によって、増大した上記弾性配管の内容積を減少させながら該弾性配管内の上記潤滑剤を上記ノズル本体部に供給することができる。
【0029】
したがって、上記開閉弁を開いているときには、所定の噴霧密度で上記金型に上記潤滑剤を吹き付けることができ、上記金型への潤滑剤の付着よりも優先して上記金型の温度を低下させることができる。また、上記開閉弁を閉じたときには、上記開閉弁を開いているときの上記所定の噴霧密度から噴霧密度を徐々に低下させながら上記潤滑剤を吹き付けることができる。そのため、上記弾性配管という簡単な構成で、潤滑剤の付着のための最適な噴霧密度で上記潤滑剤を上記金型に吹き付けることができる。
【0030】
上記弾性素材は、上記潤滑剤の圧送圧力によって膨張可能な樹脂やゴム等の弾性素材から適宜選択することができる。このような弾性素材を選択することにより、上記開閉弁が開いているときには、上記弾性配管が上記潤滑剤の圧送圧力によって膨張した状態で上記潤滑剤の吹き付けが行われる。上記開閉弁を閉じると上記弾性配管は付勢力によりもとの形状に戻ろうとするため、上記開閉弁を閉じたあとにも上記潤滑剤が上記金型に吹き付けられる。
上記弾性配管としては、具体的には、例えばゴムホース、ビニールホース等を用いることができる。
また、上記潤滑剤の圧送圧力は、上記潤滑剤を上記配管中に供給するポンプ等によって調整することができる。
【0031】
次に、上記配管は、上記開閉弁と上記ノズル本体部との間に分岐口を有し、上記容積可変収容部は、上記分岐口に連結されたシリンダと、該シリンダ内に進退可能に配置されたピストンと、該ピストンと上記シリンダの内壁とにより囲まれる内容積が減少する方向に上記ピストンを付勢する付勢手段とを有していることが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記開閉弁が開いているときには、上記配管内で圧送される上記潤滑剤の一部が上記分岐口から上記付勢手段の付勢力に抗して、上記ピストンと上記シリンダの内壁とにより囲まれる空間に備蓄される。上記配管内で圧送される上記潤滑剤の残部は、上記ノズル本体部に供給された上記噴霧ノズルから上記金型に吹き付けられる。上記ピストンと上記シリンダの内壁とにより囲まれる空間には、上記付勢手段によってその内容積を減少させる方向へ働く付勢力と、上記潤滑剤の圧送圧力によってその内容積を増大させる方向に働く力とが平衡状態になるまで上記潤滑剤が備蓄される。
上記開閉弁を閉じると備蓄された上記潤滑剤が上記ピストンの付勢力によって上記配管に押出されて上記ノズル本体部から上記金型に吹き付けられる。
上記付勢手段は、上記潤滑剤の圧送圧力によって収縮が可能なバネ、ゴム、樹脂等の弾性体から適宜選択することができる。
【0032】
また、上記配管は、上記開閉弁と上記ノズル本体部との間に分岐口を有し、上記容積可変収容部は、上記分岐口に連結された収納袋体を有し、該収納袋体は、上記潤滑剤の圧送圧力によって膨張可能な弾性素材からなることが好ましい(請求項9)。
この場合には、上記開閉弁が開いているときには、上記配管内で圧送される上記潤滑剤の一部が上記分岐口から上記弾性素材からなる上記収納袋体を膨張させながら該収納袋体内部に備蓄される。上記配管内で圧送される上記潤滑剤の残部は、上記ノズル本体部に供給された上記噴霧ノズルから上記金型に吹き付けられる。上記収納袋体内には、膨張した収納袋体がもとの形状に戻ろうとする力と、上記潤滑剤の圧送圧力による上記収納袋体の内容積を増大させる方向に働く力とが平衡状態になるまで上記潤滑剤が備蓄される。
上記開閉弁を閉じると上記収納袋体は該収納袋体自体の付勢力によりもとの形状に戻ろうとするため、上記開閉弁を閉じたあとにも備蓄された上記潤滑剤が上記金型に吹き付けられる。
上記弾性素材は、上記潤滑剤の圧送圧力によって膨張可能な樹脂やゴム等の弾性素材から適宜選択することができる。
【0033】
次に、上記潤滑剤吹き付け装置は、上記金型が上記被加工材と接触する金型面の温度分布に基づいて、上記金型面の温度が高い部位程高い噴霧密度で上記潤滑剤が噴霧されるように制御されていることが好ましい(請求項10)。
この場合には、効率的かつ確実に上記金型を冷却することができる。さらに冷却後の上記金型の温度分布のばらつきを小さくすることができる。これにより、上記開閉弁を閉じた後において、上記金型に均一かつ充分に上記潤滑剤を付着させることができる。
上記金型の温度分布は、金型内部に設置した熱電対、非接触式温度分布測定装置、又は金型温度解析装置等により測定することができる。
【0034】
上記金型の温度分布は、金型の形状によって異なる。一般には、金型面の凹凸が密集している部分ほど蓄熱し易く高温になり易い傾向にある。上記金型の温度分布は予め測定しておくことができる。この測定結果に基づいて、上記のごとく、上記金型面の温度が高い部位程高い噴霧密度で上記潤滑剤が噴霧されるように上記潤滑剤吹き付け装置を制御することができる。
上記潤滑剤吹き付け装置において、上記噴霧密度は、上述のごとく、ノズル本体部における噴霧ノズルの配置、噴霧ノズルの口径、潤滑剤の圧送圧力、ノズルから金型面までの距離、エアー圧力、潤滑剤吹き付け中心からの距離等を制御することにより調整できる。
【0035】
また、上記潤滑剤吹き付け装置は、上記開閉弁が開いているときには、上記潤滑剤を噴霧密度0.5cc・s-1・cm-2以上で上記金型に吹き付けるように制御されていることが好ましい(請求項11)
上記噴霧密度が0.5cc・s-1・cm-2未満の場合には、上記開閉弁を開いているときに上記金型を短時間で充分に冷却させることが困難になるおそれがある。より好ましくは、上記開閉弁を開いているときの上記噴霧密度は、1.0cc・s-1・cm-2以上がよい。
【0036】
上記潤滑剤吹き付け装置は、上記金型が上記被加工材と接触する金型面の温度分布を測定するための温度測定手段と、該温度測定手段によって測定された温度分布の平均温度が300℃以下になったときに上記開閉弁を閉じる開閉弁制御手段とを有することが好ましい(請求項12)。
この場合には、上記開閉弁制御手段によって上記開閉弁と閉じたときに、上記可変収容部から供給される上記潤滑剤を上記金型により付着させやすくすることができる。
【0037】
即ち、金型の温度が300℃を越えている状態で上記潤滑剤を吹き付けると、金型の冷却が優先的に起こり易く、潤滑剤の付着は比較的起こりにくい。よって、上記温度測定手段と上記開閉弁制御手段とを有する上記潤滑剤吹き付け装置を用いて、上記開閉弁を閉じるタイミングを上記のごとく金型の平均温度で制御すると、上記金型に上記潤滑剤がより付着し易くなる。
上記開閉弁制御手段が上記開閉弁を閉じるときの上記金型の平均温度は、より好ましくは、250℃以上かつ300℃以下がよい。上記金型の平均温度が250℃未満の状態で上記開閉弁を閉じて上記潤滑剤を吹き付けても、該潤滑剤が上記金型に付着し難くなるおそれがある。
【0038】
上記温度測定手段としては、例えば金型内部に設置した熱電対、非接触式温度分布測定装置、又は金型温度解析装置等を用いることができる。また、上記開閉弁制御手段としては、ソレノイド、モータ、シリンダ等を用いることができる。
【実施例】
【0039】
(実験例)
次に、本発明の実施例について説明するために、まず、異なる温度の金型に異なる噴霧密度で潤滑剤を吹き付けたときにおける金型の温度低下量及び潤滑剤付着量について検討を行った。
本例において、金型としては、図1に示すごとく、自動車のエンジン部品であるコンロッドを成形するための金型9を用いた。金型9は上型91と下型92とからなり(図2参照)、図1は、その一例として上型の金型面を示している。同図に示す金型9においては、連結した2つのコンロッドを成形できるよう金型面95が形成されている。
【0040】
また、潤滑剤の吹き付けは、潤滑剤吹き付け装置2を用いて行った(図2及び図3参照)。
同図に示すごとく、潤滑剤吹き付け装置2は、潤滑剤の吹き付け時に金型9内、即ち上型91と下型92との間に配置されるノズル本体部21と、ノズル本体部21に潤滑剤を圧送する配管22とを有する。ノズル本体部21は、潤滑剤を吹き出す噴霧ノズル211を複数備える。潤滑剤は、潤滑剤ポンプ(図示略)により、所定の圧送圧力で配管211内に圧送される。
また、上型91及び下型92の内部には、金型9の温度分布を測定するために、温度測定手段として、φ0.5mmのシース熱電対(図示略)が設けられている。この温度測定手段により、金型面95の温度分布、正確には金型の表面から0.5mmの深さにおける温度分布をモニターすることができる。
【0041】
また、図4に示すごとく、各噴霧ノズル211は、潤滑剤吹出し口212と圧縮空気吹出し口213とを有している。ノズル本体部21には、配管22から各噴霧ノズル211に潤滑剤を供給する潤滑剤管路(図示略)と、圧縮空気ポンプ(図示略)から送られる圧縮空気を供給する圧縮空気管路(図示略)とが具備されている(図1参照)。ノズル本体部21内を通って噴霧ノズル211に送られた潤滑剤3は、潤滑剤吹出し口212から吹き出される。このとき、潤滑剤3は、圧縮空気管路を通って噴霧ノズル211に送られ、圧縮空気吹出し口213から吹き出された圧縮空気5と一緒に吹き出される。図3に示すごとく、噴霧ノズル211から吹き出された潤滑剤3は、圧縮空気と混じって状態で、上型91及び下型92に吹き付けられる。
【0042】
上記のような構成の潤滑剤吹き付け装置2を用いて、被加工材を熱間鍛造した後の金型9に3種類の異なる噴霧密度ρs(0.1cc・s-1・cm-2、0.3cc・s-1・cm-2、0.5cc・s-1・cm-2)で一定時間潤滑剤を吹き付け、このときの温度低下量を測定した。
具体的には、まず、上記温度測定手段により、吹き付け開始時における金型9の表面から0.5mm深さの位置の温度(初期型温度)を測定した。次いで、潤滑剤吹き付け装置2を作動させて各噴霧密度での吹き付けを開始し、開始から0.5秒後の温度低下量(型温低下量)を温度測定手段により測定した。同様の測定を初期型温度及び噴霧密度を変えて行った。その結果を図5に示す。
なお、噴霧密度は、潤滑剤の圧送圧力と噴霧密度との関係を予め上述の吸水シートを用いた方法により測定し、圧送圧力を制御することにより、上述のごとく所定の噴霧密度に制御した。
【0043】
また、上記潤滑剤吹き付け装置2を用いて、被加工材を熱間鍛造した後の金型に4種類の異なる噴霧密度(0.03cc・s-1・cm-2、0.1cc・s-1・cm-2、0.3cc・s-1・cm-2、0.5cc・s-1・cm-2)で潤滑剤を吹き付け、このときの潤滑剤の付着量を測定した。
具体的には、まず、上記温度測定手段により、吹き付け開始時における金型9の表面から0.5mm深さの位置の温度(初期型温度)を測定した。次いで、潤滑剤吹き付け装置2を作動させて各噴霧密度での吹き付けを開始し、開始から0.5秒後の潤滑剤付着量を測定した。同様の測定を初期型温度及び噴霧密度を変えて行った。その結果を図6に示す。
【0044】
なお、潤滑剤付着量は、次のようにして測定した。
即ち、まず外径240mm、厚さ20mmの金型の中央部に、外径20mm、厚さ20mmの潤滑剤付着量測定用金型を埋め込んだ。次いで金型をホットプレート上で所定の温度に加熱し、潤滑剤を吹き付けた。そして、潤滑剤吹き付け前後における潤滑剤付着量測定用金型の重量変化を測定し、この重量変化と潤滑剤付着量測定用金型の表面積とから潤滑剤付着量(g・m-2)を算出した。
【0045】
図5より知られるごとく、例えば0.5cc・s-1・cm-2以上という比較的高い噴霧密度で潤滑剤を吹き付けると、金型温度を速やかに低下させられる傾向がある。また、この傾向は、金型の温度が比較的高温の状態にあるほど顕著に現れることがわかる。したがって、金型を冷却させるときには、例えば0.5cc・s-1・cm-2以上という比較的高い噴霧密度で潤滑剤を吹き付けることが好ましいことがわかる。
【0046】
また、図6より知られるごとく、比較的低い噴霧密度で潤滑剤を噴霧させると、短時間でより多くの潤滑剤を金型に付着させられる傾向がある。また、この傾向は、金型の温度が低温の状態にあるほど顕著に現れることがわかる。したがって、金型に潤滑剤を付着させるときには、例えば0.1cc・s-1・cm-2以下にまで噴霧密度を低下させることが好ましいことがわかる。また、図6より知られるごとく、潤滑剤を付着させるための最適な噴霧密度は、必ずしも低ければよいという訳ではなく、吹き付け時の温度によって異なることがわかる。
【0047】
(実施例1)
次に、本発明の実施例について、図7〜図11を用いて説明する。
本例においては、第1吹き付け工程と第2吹き付け工程とを行うことにより、被加工材を熱間鍛造した後のプレス装置の金型に潤滑剤を吹き付ける方法について説明する。
第1吹き付け工程においては、金型から成形品を離型した直後に上記潤滑剤を所定の噴霧密度で上記金型に吹き付ける。また、第2吹き付け工程においては、上記噴霧密度を徐々に低下させながら上記潤滑剤を上記金型に吹き付ける。第2吹き付け工程は、第1吹き付け工程に続けて行う。
【0048】
金型としては、上記実験例と同様に、コンロッドを成形するための金型9を用いた(図1参照)。
また、本例においては、図7に示すごとく、潤滑剤吹き付け装置1を用いて潤滑剤の吹き付けを行った。
図7に示すごとく、本例の潤滑剤吹き付け装置1は、実験例で用いた装置と同様に、潤滑剤の吹き付け時に金型9内に配置されるノズル本体部11と、ノズル本体部11に潤滑剤を圧送する配管12とを有する。配管12の途中には、配管12の開閉弁13が設けられている。
また、ノズル本体部11は、潤滑剤を噴霧する噴霧ノズル111を複数備えている。各噴霧ノズル111は、上記実験例と同様に、潤滑剤吹出し口と圧縮空気吹出し口とを有しており、上述のごとく潤滑剤吹出し口から吹き出された潤滑剤は、圧縮空気吹出し口から吹き出された圧縮空気と一緒に吹き出される。
【0049】
また、本例の潤滑剤吹き付け装置1においては、予め測定した金型の温度分布に基づいて、金型面の温度が高い部位程高い噴霧密度で潤滑剤が噴霧されるように、各噴霧ノズル111をノズル本体部11上に配置してある。具体的には、金型面95において特に高温な部位から噴霧ノズルに下ろした垂線が噴霧ノズル(潤滑剤吹出し口)の中心に配置し、かつ噴霧ノズルから噴射された潤滑剤が金型面全体に吹き付けられるように、噴霧ノズルの位置及び向きを調整した。さらに、金型9とノズル本体部11との距離及び圧縮空気の圧力等を調整した。これにより、潤滑剤の圧送圧力を5atmとしたときの金型面95における噴霧密度の分布が0.5cc・s-1・cm-2以上となるように調整した。
【0050】
また、本例の潤滑剤吹き付け装置1は、図8に示すごとく、開閉弁13とノズル本体部11との間に容積可変収容部14として弾性配管を有する。この弾性配管14は、配管12の少なくとも一部を潤滑剤の圧送圧力によって膨張可能な弾性素材によって形成してなる。本例においては、弾性配管14としては、市販のビニールホースを用いた。
【0051】
また、潤滑剤吹き付け装置1は、金型面95の温度分布を測定するための温度測定手段5を備えている。温度手段としては、実験例と同様に、φ0.5mmのシース熱電対を用いた。また、開閉弁13としては電磁弁を用いており、潤滑剤吹き付け装置1は、温度測定手段5によって測定された温度分布の平均温度が300℃以下になったときに電磁弁13を閉じる開閉弁制御手段6を備えている。
【0052】
次に、本例の潤滑剤吹き付け装置1による潤滑剤の吹き付け方法について説明する。
まず、開閉弁13を開いた状態で潤滑剤ポンプ(図示略)を作動させ、圧送圧力5atmで潤滑剤を配管12内に供給した。配管12内に供給された潤滑剤は、開閉弁13及び弾性配管14を通過し、弾性配管14を通ってノズル本体部11に圧送される。ノズル本体部11に到達した潤滑剤は、噴霧ノズル111から例えば400℃以上という高温状態の上型91及び下型92に吹き付けられる。
【0053】
このとき、弾性配管14においては、図9に示すごとく、潤滑剤の圧送圧力によって弾性配管14が膨張し、その内容積が増大している。弾性配管14においては、その管壁141の付勢力に抗して潤滑剤3の圧送圧力が弾性配管14を膨張させる方向に作用する力と、弾性配管14が膨張前の形状(図8参照)に戻ろうとする方向に作用する付勢力とが平衡状態になるまで膨張する。この膨張状態を維持したまま、図7に示すごとく、潤滑剤3がノズル本体部11に圧送されて噴射ノズル111から0.5cc・s-1・cm-2以上という高い噴霧密度で金型9に吹き付けられる(第1吹き付け工程)。
このように、例えば400℃以上という高温状態の金型9に、0.5cc・s-1・cm-2以上という高い噴霧密度で潤滑剤3を吹き付けると、金型9への潤滑剤3の付着よりも優先的に金型9の冷却を行うことができる(上記実験例参照)。なお、潤滑剤の吹き付けを開始してから、金型表面から0.5mmの深さの位置における温度変化の様子を図10に示す。
【0054】
また、本例の潤滑剤吹き付け装置1においては、金型温度が低下し、温度測定手段5によって検出される温度分布の平均温度が300℃以下になると、開閉弁制御手段6によって開閉弁13が閉じられる。これにより、開閉弁13から弾性配管14への潤滑剤の供給が遮断される。そして、弾性配管14が膨張状態(図9参照)から元の形状(図8参照)に戻ろうとするときの付勢力によって、増大した弾性配管14がその内容積を減少させながら、弾性配管14内の潤滑剤を噴霧ノズルに供給する。この潤滑剤3が噴霧ノズル111から金型9に吹き付けられる。このとき、潤滑剤3は、弾性配管14の付勢力によって弾性配管14から押出されるため、噴霧密度を徐々に低下させながら潤滑剤を吹き付けることができる(第2吹き付け工程)。そして、噴霧密度を0.1cc・s-1・cm-2以下にまで低下させて吹き付けることができる。
【0055】
このように、低い噴霧密度で潤滑剤を吹き付けるため、金型に潤滑剤が付着し易くなる(実験例参照)。また、上記実験例で示したごとく、金型温度と潤滑剤が付着し易い噴霧密度との間には比例的な相関関係があるわけではなく、必ずしも例えば300℃以下という低温状態で噴霧密度が低い程ほど潤滑剤が付着し易いという訳ではない(図5参照)。本例においては、開閉弁を閉じたときには、噴霧密度を低下させながら潤滑剤を吹き付けることができる。そのため、より確実に最適な噴霧密度で金型に潤滑剤を吹き付けることができる。
【0056】
本例の潤滑剤潤滑剤の吹き付け開始からの噴霧密度の変化の様子を図11に示す。
図11に示すごとく、本例においては、潤滑剤の吹き付けを開始してから所定の噴霧密度で潤滑剤を金型に吹き付ける(第1吹き付け工程)。これにより、金型の温度を短時間で充分に低下させることができる。さらに第1吹き付け工程に続けて、ある程度冷却された状態の金型に噴霧密度を徐々に低下させながら潤滑剤を金型に吹き付ける(第2吹き付け工程)。その結果、潤滑剤が上記金型に付着し易くなり、金型に充分に上記潤滑剤を付着させることができる。
【0057】
(実施例2)
本例は、実施例1とは異なる構成の容積可変収容部を備えた潤滑剤吹き付け装置を用いて潤滑剤の吹き付けを行う例である。
図12に示すごとく、本例の潤滑剤吹き付け装置7は、実施例1と同様に、ノズル本体部11と配管12と開閉弁13とを有している。また、実施例1と同様に温度測定手段5及び開閉弁制御手段6とを有している。
【0058】
潤滑剤吹き付け装置7においては、開閉弁13とノズル本体部11との間の配管12に分岐口121が形成されている。この分岐口121に容積可変収容部8が連結されている。本例の潤滑剤吹き付け装置7、弾性配管の代わりに、分岐口121とこれに連結された容積可変収容部8とを有する点を除いては、実施例1の潤滑剤吹き付け装置を同様の構成を有している。
【0059】
図13及び図14に示すごとく、容積可変収容部8は、シリンダ81と、シリンダ81内に進退可能に配置されたピストン82と、ピストン82とシリンダ81の内壁とにより囲まれる空間84の内容積が減少する方向にピストン82を付勢する付勢手段83とを有している。また、配管12は、開閉弁13とノズル本体部11との間に分岐口121を有し、この分岐口121にシリンダ81が連結されている。また、付勢手段83としては、ばねを有している。このばね83は、配管12内で圧送される潤滑剤3の圧送圧力によって収縮可能なばね定数を有している。
【0060】
図12に示すごとく、本例の潤滑剤吹き付け装置7においては、開閉弁13を開いた状態で潤滑剤ポンプ(図示略)を作動させ、所定の圧送圧力で潤滑剤を配管12に供給すると、実施例1と同様に、潤滑剤はノズル本体部11に圧送される。ノズル本体部11において、潤滑剤3は、噴霧ノズル111から所定の噴霧密度で金型9に吹き付けられる。このとき、図14に示すごとく、配管12に供給された潤滑剤3の一部は、分岐口121から付勢手段83の付勢力に抗してピストン82を押動し、ピストン82とシリンダ81の内壁とにより囲まれる空間121に備蓄される。この空間121には、付勢手段83によってその内容積を減少させる方向に働く付勢力と、潤滑剤3の圧送圧力によってその内容積を増大させる方向に働く力とが平衡状態になるまで潤滑剤3が備蓄される。
【0061】
また、実施例1と同様にして温度測定手段5及び開閉弁制御手段6により開閉弁13が閉じられると、開閉弁11から下流側への潤滑剤の供給が遮断される(図12参照)。その結果、図12〜図14に示すごとく、ピストン82の付勢力によって備蓄された潤滑剤3が開閉弁とノズル本体部との間の配管12に押出され、ノズル本体部11から金型9に吹き付けられる。このとき、潤滑剤3は、ピストン82の付勢力によって押出されるため、噴霧密度を徐々に低下させながら潤滑剤3を吹き付けることができる。
【0062】
このように、本例の潤滑剤吹き付け装置7を用いると、開閉弁13の開閉により、所定の噴霧密度で潤滑剤を金型9に吹き付ける第1吹き付け工程と、噴霧密度を徐々に低下させながら潤滑剤3を金型9に吹き付ける第2吹き付け工程とを行うことができる。その結果、金型9の冷却を速やかに行うことができると共に、金型9に潤滑剤を充分に付着させることができる。
【0063】
また、本例の潤滑剤吹き付け装置7においては、容積可変収容部8として、図15及び図16に示すごとく、収納袋体85を用いることもできる。この収納袋体85は、開閉弁とノズル本体部との間の配管12の分岐口121に連結されている。また、収納袋体85は、配管12内で圧送される潤滑剤により膨張可能な弾性素材からなる。
【0064】
上記のごとく、容積可変収容部8として収納袋体85を用いた場合には、開閉弁13を開いた状態で潤滑剤を配管12に供給すると、潤滑剤3の一部が収納袋体85の内部に備蓄される(図12、図15、及び図16参照)。
即ち、配管12内で圧送される潤滑剤3の一部が分岐口121から収納袋体85を膨張させながらその内部に備蓄される。収納袋体85内には、膨張した収納袋体85がもとの形状に戻ろうとする力と、潤滑剤3の圧送圧力による収納袋体85の内容積を増大させる方向に働く力とが平衡状態になるまで潤滑剤3が備蓄される。
【0065】
開閉弁13が閉じられると、開閉弁13とノズル本体部11との間の配管12への開閉弁13からの潤滑剤の供給が遮断される。その結果、膨張状態にある収納袋体85(図16参照)は自身の付勢力によりもとの形状(図15参照)に戻ろうとする。その結果、収納袋体85内に備蓄された潤滑剤3が金型9に吹き付けられる。このとき、潤滑剤は、弾性素材からなる収納袋体85の付勢力によって押出されるため、噴霧密度を徐々に低下させながら潤滑剤を吹き付けることができる。
【0066】
このように、容積可変収容部8として弾性素材からなる収納袋体85を用いた場合においても、開閉弁13の開閉により、所定の噴霧密度で潤滑剤3を金型9に吹き付ける第1吹き付け工程と、噴霧密度を徐々に低下させながら潤滑剤3を金型9に吹き付ける第2吹き付け工程とを行うことができる。その結果、金型9の冷却を速やかに行うことができると共に、金型9に潤滑剤3を充分に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実験例にかかる、金型(上型)の金型面の形状を示す説明図。
【図2】実験例にかかる、潤滑剤吹き付け装置の構成を示す説明図。
【図3】実験例にかかる、潤滑剤吹き付け装置による金型への潤滑剤の吹き付けを潤滑剤吹き付け装置のノズル本体部の先端側から観察した様子を示す説明図。
【図4】実験例にかかる、噴霧ノズルの構成を示す断面図。
【図5】実験例にかかる、潤滑剤の吹き付けを開始したときの金型温度(初期型温度)と、吹き付け開始から0.5秒後における金型温度の低下量との関係を示す線図。
【図6】実験例にかかる、潤滑剤の吹き付けを開始したときの金型温度(初期型温度)と、吹き付け開始から0.5秒後における潤滑剤付着量との関係を示す線図。
【図7】実施例1にかかる、潤滑剤吹き付け装置の構成を示す説明図。
【図8】実施例1にかかる、開閉弁とノズル本体部との間に形成された弾性配管の断面を示す潤滑剤吹き付け装置の部分拡大図。
【図9】実施例1にかかる、潤滑剤の圧送圧力によって膨張状態にある弾性配管の断面を示す潤滑剤吹き付け装置の部分拡大図。
【図10】実施例1にかかる、潤滑剤の吹き付けを開始してからの時間と、金型表面から0.5mmの深さの位置における温度との関係を示す線図。
【図11】実施例1にかかる、潤滑剤の吹き付けを開始してからの時間と、噴霧密度との関係を示す線図。
【図12】実施例2にかかる、潤滑剤吹き付け装置の構成を示す説明図。
【図13】実施例2にかかる、開閉弁とノズル本体部との間に形成された付勢手段(ピストン)の断面を示す潤滑剤吹き付け装置の部分拡大図。
【図14】実施例2にかかかる、潤滑剤がシリンダ内に備蓄された状態の付勢手段の断面を示す部分拡大図。
【図15】実施例2にかかる、開閉弁とノズル本体部との間に形成された付勢手段(収納袋体)の断面を示す潤滑剤吹き付け装置の部分拡大図。
【図16】実施例2にかかる、潤滑剤が収納袋体の内部に備蓄されて膨張状態にある付勢手段の断面を示す潤滑剤吹き付け装置の部分拡大図。
【符号の説明】
【0068】
1 潤滑剤吹き付け装置
11 ノズル本体部
111 噴霧ノズル
12 配管
13 開閉弁
14 容積可変収容部
3 潤滑剤
9 金型
【出願人】 【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年9月28日(2006.9.28)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰

【識別番号】100110700
【弁理士】
【氏名又は名称】岩倉 民芳

【識別番号】100130155
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥起


【公開番号】 特開2008−80377(P2008−80377A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−264136(P2006−264136)