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【発明の名称】 横型鍛造機よるリング状ワークの内外径の偏心防止方法
【発明者】 【氏名】赤峰 将範

【氏名】渡邊 守人

【要約】 【課題】横型鍛造装置において、オペレーターの経験と熟練による不正確さを排除した、トランスファーチャックの定量的な移動量の設定方法を提供する。

【解決手段】鍛造時にパンチP、ダイD、ワークWの各中心のずれにより生じるワーク内径の中心Icと外径の中心Ocの偏心を、アプセットされたワークWの外径と同じ径をもつ円柱bとダイDによる成型品の外径と同じ径を持つ円柱aの平面部同士を重ね合わせて2つの円柱aと円柱bの中心を偏心させて固定してなる図7に示すゲージgを用いてトランスファーチャックTCとダイDの中心Dcの位置を意図的にずらして位置設定した後、このゲージgを除去して、パンチPの中心DcおよびダイDの中心DcとワークWの中心Wcの位置を合わせることによりワークWの外径の中心Ocと内径の中心Icの偏心を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状ワークを搬送するトランスファーチャックの位置をダイに対して上下方向およびトランスファーチャックのワーク搬送方向に調整可能な横型鍛造機の鍛造において、鍛造時にパンチの中心およびダイの中心とワークの中心のずれにより生じるワークの内径中心と外径中心の偏心を修正するために、アプセットされたワークの外径と同じ大きさの外径の小径の円柱とダイの穴径と同じ大きさの外径の大径の円柱のそれぞれの中心を偏心した状態で重ね合わせてゲージとし、ゲージの小径の円柱をトランスファーチャックで把持し、かつ、大径の円柱をダイに挿着してトランスファーチャックとダイの各中心を意図的に偏心した状態とし、この偏心した状態の偏心方向に基づき、この偏心方向と逆向きとなるようにゲージを180度回転して把持可能にトランスファーチャックの位置を設定した後、ゲージを除去することによりパンチおよびダイとワークの各中心を合わせることを特徴とするリング状ワークの内外径の偏心防止方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は横型鍛造機により、リング状の製品もしくは円形くぼみのある円形製品を鍛造する際に、製品であるリング状ワークの内径の中心とリング外径の中心の振れすなわち偏心の発生を防止する方法に関し、特に2つの円柱の中心を偏心させて製作したゲージを用いて、トランスファーチャックとダイの中心位置を意図的にずらしてずれの方向および量を知り、これによりずれを調整することでパンチおよびダイとリング状ワークの内外径の中心の位置を合わせる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
横型鍛造機はアプセットされたワークWをトランスファーチャックTCで掴んでダイDの前まで搬送する。続いてダイDの前まで搬送されたワークWはパンチPでダイDに打ち込まれる。
【0003】
鍛造を実施する際には、先ず、鍛造機の現状の設定で、外径寸法、内径寸法、高さおよび偏心の少ない正しいリング状製品が製造可能であるかどうかを試し鍛造を行う。その際には、図1に示すように、はじめにダイDとトランスファーチャックTCの中心TCcを同じ位置に合わせた後、鍛造を行う。
【0004】
製品の外径寸法、内径寸法、高さの精度については、鋼材の切断長さ、金型の精度などがそれらに影響する大きな要因である。しかし、リング状製品の内外径の偏心については、パンチPおよびダイDとワークWの位置関係がそれらに影響する大きな要因である。この偏心をなくすためには、ダイDの中心DcとワークWの中心Wcの位置が、図2に見られるように、一致することが最善であるが、上記のようにダイDの中心Dcの位置とトランスファーチャックTCの中心TCcの位置を合わせても、実際の鍛造時には設備の振れなどのために、図3に見られるように、ダイDの中心Dcの位置とダイDに入るワークWの中心Wcの位置の振れが発生する。この振れがある状態のまま鍛造した場合、ワークWの中心Wcに穴をあけることが出来ずに、結果として、図4に示すように、内径の中心Icと外径の中心Ocが異なることとなる。このために偏心が発生する。ところで、この偏心の発生傾向はパンチP、ダイDおよびトランスファーチャックTCを一度セットした後は、ほぼ同じ傾向を示す。
【0005】
このような偏心を防止する手段として、図5に示すように、従来よりダイDの中心Dcの位置とトランスファーチャックTCの中心TCcの位置とをずらす方法が取られている。この場合のずらす量は、試作の時点で、図6の模式図に示すように、得られた製品の肉厚の最大値d1および製品の肉厚の最小値d2を測定し、ワークWの中心Wcがダイの中心Dcからずれている量を(d1−d2)/2として修正する。また、この場合、上下左右のどの方向に中心を移動させるかについては、製品に影響がない程度の浅い鍛造痕を意図的にパンチPにより、このパンチPの打痕跡を上になるようにしてワークWに付け、その打痕跡との位置関係よりワークWの中心WcがダイDのどの方向に偏っているかを判別し、ワークWの中心Wcを移動させている。すなわち、ダイDの中心Dcの位置とワークWの中心Wcの位置のずれの量および方向を加味して、ワークWのずれ方向に対して反対方向へずれている量だけトランスファーチャックTCを移動させる。
【0006】
そのトランスファーチャックTCの移動させる最適量および方向は上記方法により分かる。しかし、実際のトランスファーチャックTCの移動調整はオペレーターが実際の移動量の決定を行っており、この場合は客観的な数値的判断によるものではなく、オペレーターの経験および熟練に基づく主観的な判断で行っている。このために正確な移動量を設定することは困難である。
【0007】
さらに、このような従来のトランスファーチャック位置の確認方法としては、原点位置からのトランスファーチャックの移動量を電子的電磁的なセンサーを利用して確認する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法はトランスファーチャックとダイとの位置を設定するものではなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−25040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術では、横型鍛造装置におけるダイとトランスファーチャックの各中心の相対位置の確認はオペレーターの経験による判断で行っているため、中心のずれを解消するために狙ったトランスファーチャックの移動量に応じた最適の大きさの移動を行うことは困難である。そこで、本発明が解決しようとする課題は、オペレーターの熟練度、技術格差という経験と熟練による不正確さを排除してトランスファーチャックの定量的な移動量を設定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題を解決するための手段は、先ず、ダイDとトランスファーチャックTCの位置関係が明確に出来るような、図7に示すような、トランスファーチャックTCにアプセットされたリング状のワークWの外径と同じ径をもつ小径の円柱aと、ダイDによる成型品の外径と同じ径を持つ大径の円柱bとから、それらの平面部同士を重ね合わせてずれの測定用のゲージgに形成する。この場合、円柱aは円柱b内にあるものとし、円柱aと円柱bの各中心を偏心させて重ね合わせて偏心量Cを有するゲージgとする。
【0011】
一方、予備的にリング状のワークWにパンチPにより浅い鍛造痕をリング面に形成し、この鍛造痕である打痕跡によりワークWとダイDの偏心量を確認する。すなわち、リング状のワークWの径方向の肉厚の最大値を測定してd1とし、またワークWの径方向の肉厚の最小値を測定してd2とする。これらの肉厚の最大値d1と肉厚の最小値d2から偏心量を(d1−d2)/2として求める。さらに、上記のゲージgの円柱aと円柱bの各中心の偏心量のうち最も近値する大きさの偏心量となる方向にゲージgを回転して、その回転位置に固定したゲージgの円柱aをトランスファーチャックTCで把持し直しトランスファーチャックTCを移動した後、円柱bをダイDへセットするものとする。
【0012】
この場合、偏心量を調整するためのトランスファーチャックTCの移動方向は、ゲージgに偏心方向を示すマークmを入れ、マークmの向きで移動方向が分かるようにしている。一方、上記の予備的に求めた(d1−d2)/2の偏心量の大きさに基づき、ゲージgの偏心方向と逆方向にトランスファーチャックTCの位置を移動して調整する。このトランスファーチャックTCの位置の調整を終えると、ゲージgをトランスファーチャックTCおよびダイDから除去した後、ワークWをトランスファーチャックTCに把持して鍛造を開始するものとする。
【0013】
すなわち、鍛造時にパンチPの中心およびダイDの中心とワークWの中心のずれにより生じるワークWの内径の中心Icと外径の中心Ocの振れ、すなわち偏心を、アプセットされたワークWの外径と同じ外径の円柱aとダイDによる成型品の外径と同じ外径の円柱bからなり、かつ、これらの2つの円柱aと円柱bの平面部同士を重ね合わせて2つの円柱aと円柱bの中心を偏心させて固定して形成したゲージgを用い、トランスファーチャックTCの中心TCcとダイDの中心Dcを意図的にずらしてずれの方向を求め、その上で逆方向にトランスファーチャックTCの位置設定した後、このゲージgを除去することにより、パンチPの中心PcおよびダイDの中心DcとワークWの中心Wcの位置を一致させることによりワークWの外径の中心Ocと内径の中心Icの偏心を防止するリング状製品の鍛造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアプセットされたワークの外径と同じ外径の円柱とダイによる成型品の外径と同じ外径を持つ円柱からなり、これら2つの円柱の平面部同士を重ね合わせた部分の2つの円柱の中心を偏心させて製作したゲージを使用し、予め、トランスファーチャックとダイの偏心を調整することとしたので、ダイとトランスファーチャックの位置関係をオペレーターの熟練による主観で捕らえる方法ではなく、ゲージの偏心量という定量的な数値で容易に正確に調整が実施でき、したがってリング状製品の偏心が的確に防止でき、さらに調整時間の短縮が図れるなど、本発明は従来にない優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の最良の実施の形態について説明する。横型鍛造装置で鍛造を実施する際に、先ず、横型鍛造装置の現状の設定により、リング状体の外径寸法、内径寸法、高さおよび少ない偏心からなる正しい製品が製造可能であるかどうかを試し鍛造により試すものとする。その際に、図1に示すように、はじめにダイDの中心DcとトランスファーチャックTCの中心TCcを同じ位置に合わせした後、試し鍛造を行う。図2は、ダイDの中心DcとワークWの中心Wcが一致している場合を示している。
【0016】
このようにダイDの中心DcとワークWの中心Wcが一致するように、ダイDの中心DcとトランスファーチャックTCの中心TCcの位置を合わせても、実際の鍛造時には、設備の振れなどのため、ダイDの中心DcとダイDに入るワークWの中心Wcの位置に、図3に示すように、ずれ、すなわち、偏心が発生する。その結果、図4に示すように、得られたリング状製品であるワークWの外径の中心Ocと内径の中心Icにずれすなわち偏心が生じる。
【0017】
この偏心を防止するため、図5に示すように、ダイDの中心Dcの位置とトランスファーチャックTCの中心TCcの位置をずらす方法を採用する。そのずらす大きさは、試し鍛造の時点で得られた、図6に示す、リング状製品であるワークWの外径Odおよび内径Idの間の肉厚の最大値d1および最小値d2を測定し、ワークWの中心WcがダイDの中心Dcからずれている量を(d1−d2)/2として求める。さらに、ずれを解消するためにトランスファーチャックTCの中心TCcの位置を上下左右のどちらに移動するかを知るために、上記の試し鍛造において、製品に影響がない程度の浅い鍛造痕を形成する。この場合、鍛造痕である打痕跡が上になるようにパンチPにより意図的に設け、その打痕跡との位置関係により、ワークWの中心WcがダイDのどちらの方向に偏っているかを判別する。
【0018】
次いで、ダイDの中心Dcの位置とワークWの中心Wcの位置のずれの量および方向を見出して、ワークWのずれ方向と反対方向へトランスファーチャックTCをずれている量だけ移動するものとする。この場合、先ず、アプセットされたワークWの外径Odと同じ外径をもつ円柱aと、ダイDの穴径と同じ外径を持つ円柱bからなり、かつ、円柱aと円柱bを偏心した状態として平面部で重ね合わせて、図7に示す、ゲージgを製作した。予めゲージgに偏心されている方向を示すマークmを形成した。次いで、横型鍛造装置のトランスファーチャックTcでゲージgの円柱aの部分を挟持し、ゲージgの円柱bの部分をダイDへセットする。このセットにおいては、ゲージgを回転してズレの位置合わせをしてゲージgがトランスファーチャックTcで保持してダイDに挿入できるものとする。上記のように、ゲージgは偏心されている方向を示すマークmを有するので、この方向確認することで偏心方向を知り、次いで、上記の試作の時点で測定したワークWのずれの量の(d1−d2)/2だけ偏心方向と逆方向へ、トランスファーチャックTcを移動して調整する。このように調整することでトランスファーチャックTcの移動方向の調整は容易に実施できた。すなわち、偏心量Cの大きさだけトランスファーチャックTCの中心TCcとダイDの中心Dcの相対移動が可能となった。これらの調整をした後に、鍛造装置からゲージgを除去し、その後に本番の鍛造を行うものとする。
【実施例1】
【0019】
外径55mm、内径25mm、高さ15mmのリング状製品を製造するために、2つの円柱aおよび円柱bからゲージgを形成した。この場合、これらの2つの円柱aの中心および円柱bの中心をずらして平面部で重ね合わせてゲージgとした。このゲージgの寸法は、アプセットされたワークWの外径が53.8mm、ダイDの外径が55mmであることから、円柱aの径daを53.8mmとし、その高さhaを10mmとし、さらに円柱bの径dbを55mmとし、その高さhbを12mmとした。
【0020】
ダイDの中心DcとトランスファーチャックTCの中心TCcを合わせた状態で、ダイDによりリング状製品を予備的に鍛造した。この予備的に鍛造したリング状製品における外径と内径の中心の偏心量Cの最大値は1.0mmであった。また、この時の偏心の方向は、時計の12時方向を上とした場合、4時30分の方向であった。そこで、ダイDを基準としてトランスファーチャックTCの相対位置の偏心量Cが最小になるように、ゲージgを回転して10時30分の方向にゲージgに形成の偏心方向を示すマークmを合わせた。さらに、ダイDの中心Dcを基準としてトランスファーチャックTCを1.0mmだけ移動してトランスファーチャックTCでゲージgの円柱aを把持し得るように調整した。その後、ゲージgを除去して、ワークWをトランスファーチャックTCで把持してダイDにより鍛造した。その結果、得られたリング状製品の偏心量Cは最大で0.4mmで、偏心は満足できる範囲に改善できた。ダイDに対するトランスファーチャックTCを移動するために要した設定時間は、ゲージgを使用しない場合は30分であったが、本発明におけるゲージgの使用により15分となった。このように、本発明のゲージgを使用する方法は設定時間の短縮においても大いに改善できた。
【0021】
さらに、ダイDの穴径が55mmであるものに対し、ゲージgの円柱bの外径dbが54mmであり、この円柱bの径dbのみが異なるゲージgを使用して偏心量の調整の設定を行った。しかし、ゲージgの円柱bの外径dbとダイDの穴径の間に1mmの差があるため、セットした時にずれを生じ、このゲージgを使用して調整して鍛造したリング状製品の偏心量Cの最大値は0.8mmとあり、偏心の改善は不十分であった。そこで本発明では、ダイDの1種類に対してその穴径と同じ大きさの円柱bの外径dbを有する1個のゲージgを製作して専用として使用するものとした。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】パンチおよびダイとトランスファーチャックの各中心を同じとする位置関係にあるパンチ、ダイ、トランスファーチャックおよびワークを示す図である。
【図2】ダイとワークの最適な位置関係を示す図である。
【図3】ダイの中心とトランスファーチャックの中心が同じで、かつ、ダイの中心とワークの中心が異なる位置関係を示す図である。
【図4】ワークの外径の中心と内径の中心の偏位を示す図である。
【図5】ダイの中心とトランスファーチャックの中心が偏位している位置関係を示す図である。
【図6】リング状製品の偏心の概念を示す図である。
【図7】2つの円柱で構成し、2つの円柱の中心をずらして平面部で重ね合わせて形成のゲージを示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0023】
P パンチ
D ダイ
TC トランスファーチャック
W ワーク
Wc ワークの中心
Ic ワークの内径の中心
Oc ワークの外径の中心
TCc トランスファーチャックの中心
Dc ダイの中心
d1 ワークの肉厚の最大値
d2 ワークの肉厚の最小値
a ゲージのトランスファーチャック側の円柱
b ゲージのダイセット側の円柱
C 偏心量
da 円柱aの外径
db 円柱bの外径
m 偏心方向を示すマーク
ac 円柱aの中心
bc 円柱bの中心
【出願人】 【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
【出願日】 平成18年9月25日(2006.9.25)
【代理人】 【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至

【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理


【公開番号】 特開2008−80339(P2008−80339A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−259645(P2006−259645)