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【発明の名称】 鍛造品の製造方法
【発明者】 【氏名】野上 芳和

【氏名】磯島 吉晴

【氏名】森下 弘一

【要約】 【課題】材料のボリューム配分の最適化を図ることができ、鍛造品の製品形状が複雑であっても、バリの発生が防止でき、歩留りの向上及び成形荷重の低減を図ることができる鍛造品の製造方法を提供すること。

【構成】出発材料を加熱する加熱工程と、加熱した材料を型により圧縮することで所定の形状に成形する成形工程とを含む鍛造品の製造方法であって、前記出発材料として鍛造品の大きさに対して小片の材料である材料要素を複数用い、前記出発材料となる複数の材料要素を保持する部材として、前記加熱工程における加熱に対する耐熱性を有するとともに前記成形工程における材料の成形を妨げない程度の変形能を有し、最終製品形状に近似する形状の型空間22を有する箱型21(材料保持部材)を用い、前記加熱工程の前に、前記材料要素を型空間22に充填する充填工程を有し、この材料要素を充填した箱型21を前記成形工程における圧縮対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発材料を加熱する加熱工程と、加熱した材料を型により圧縮することで所定の形状に成形する成形工程とを含む鍛造品の製造方法であって、
前記出発材料として、鍛造品の大きさに対して小片の材料である材料要素を複数用い、
前記出発材料となる複数の材料要素を保持する部材として、前記加熱工程における加熱に対する耐熱性を有するとともに前記成形工程における材料の成形を妨げない程度の変形能を有し、最終製品形状に近似する形状の型空間を有する材料保持部材を用い、
前記加熱工程の前に、前記材料要素を前記型空間に充填する充填工程を有し、該材料要素を充填した材料保持部材を前記成形工程における圧縮対象とすることを特徴とする鍛造品の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程における材料の加熱は、無酸化加熱であることを特徴とする請求項1に記載の鍛造品の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程は、
前記材料要素を充填した材料保持部材を圧縮対象とするロール成形により、最終製品形状に応じたボリューム配分となるように材料を予備成形する予備成形工程と、
予備成形した材料を型鍛造により最終製品形状に成形する鍛造工程と、を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍛造品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジン部品であるクランクシャフト等の熱間鍛造異形部品に用いて好適な鍛造品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のエンジン部品であるクランクシャフトやコネクティングロッド等の異形部品(複雑な形状の部品)の製造に際し、金属材料を加熱して型等を用いて外力を加えることで所定形状に成形する熱間鍛造が広く用いられている。
このような熱間鍛造異形部品は、一般的に、棒状の材料であるビレットが所定長さに切断され、加熱されて予備成形された後、荒地成形や仕上げ成形等の型鍛造が行われて製造される。従来の熱間鍛造部品の製造工程の一例について、図8及び図9を用いて、自動車のエンジン部品であるクランクシャフトの場合を例に説明する。図8は従来における鍛造品の製造工程を示すフロー図、図9は従来における鍛造品の製造工程における各工程の成形品等を示す斜視図である。
【0003】
まず、最終成形品であるクランクシャフト104(図9(d)参照)の形状・寸法等に基づく直径を有する円柱状の材料であるビレットが、同じくクランクシャフト104の寸法等に基づく所定の長さに切断される(ステップ(以下「S」と略す)10)。ここでは、図9(a)に示すように、例えば、直径80mmのビレットが長さ400mmの棒状材料101に切断される。次に、棒状材料101が所定の温度(例えば、約1230℃)となるように加熱される(S11)。加熱された棒状材料101は、図9(b)に示すように、クランクシャフト104の形状に基づいて曲げ加工等が施されることにより予備成形され、予備成形品102となる(S12)。
【0004】
そして、予備成形品102は、最終成形品に対して角部等が単純化された荒地形状に成形される荒地工程(S13)、及び荒地成形された材料が仕上げ形状に成形される仕上げ工程(S14)の両工程においてそれぞれ型鍛造され、仕上げ成形品103となる(図9(c)参照)。これら荒地工程及び仕上げ工程における成形荷重(鍛造荷重)は、例えば約4000tとなる。
仕上げ成形品103は、最終成形品の周囲にバリ103aが形成された形状であり、このバリ103aがトリミングにより切断されて除去される(S15)。バリ103aが除去された仕上げ成形品103は、図9(d)に示すように、最終成形品であるクランクシャフト104となる。その後、冷却が行われ、クランクシャフト104に対し、欠肉やクラック等の鍛造欠陥についての検査が行われる(S16)。
以上の工程を経て製造されるクランクシャフトについては、その歩留りは約75%程度となる。
【0005】
こうした鍛造品の製造方法においては、予備成形における曲げ加工等や、荒地・仕上げ成形における複数回の鍛造を経るものの、鍛造しようとする部品の形状が複雑であるため、鍛造品の外周に形成される余剰の材料であるバリが多くなり歩留りが良くないという問題がある。このため、異形部品の鍛造においては歩留りを向上させることが大きな課題となっており、かかる課題を解決するための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0006】
こうした従来の鍛造品の製造工程においては、最終成形品の大径部に合う直径のビレットが用いられるため、歩留り低減の原因となるバリの、ある程度の発生は避けられないと考えられる。しかし、前記のような予備成形等において、最終成形品に合うように材料の適正なボリューム配分が行われることで、バリの発生を低減させることができる。かかる材料のボリューム配分は、従来、次のような方法により行われていた。
【0007】
まず、鍛造プレスによりボリューム配分を行う方法がある。すなわち、鍛造型を有するプレス装置により、材料を1回または複数回鍛造プレスすることによって、長手方向や幅方向等の所定の方向に材料を流して成形することでボリューム配分を行う。
【0008】
また、ボリューム配分を行う方法としてロール成形による方法がある。すなわち、一般に上下に配設されボリューム配分するための凹凸(インプレッション)を有する成形部が形成されているロール型により、円柱状の棒状材料であるワークを挟み、その状態で上下のロール型を回転させることで、前記成形部によってワークを成形し、ボリューム配分を行う。
【0009】
ここで、ロール成形の一例について図10を用いて説明する。図10は従来のロール成形工程の一例を示す説明図である。
図10(a)に示すように、所定の位置に回転可能に配設される上ロール型111と下ロール型112の間において、図示せぬ搬送装置等により搬送されるワーク110が所定の位置にセットされる。ワーク110は、図示せぬマニピュレータ等を介して操作される保持機構113により掴まれてセット位置に保持された状態となる。この状態から、同図(b)に示すように、上下のロール型111・112が所定の方向に回転することにより、ワーク110が上下のロール型111・112に挟まれ、各ロール型に形成される成形部により所定の成形が施される。これにより、成形部110aが形成される。
そして、図10(c)に示すように、成形が終了すると、上下のロール型111・112はワーク110に対して作用しない位置まで回転する。その後、同図(d)に示すように、ワーク110は保持機構113の移動により所定の経路に送られる。なお、図10(b)〜(d)においては保持機構113の図示を省略している。
このようなロール成形が、必要に応じて複数回(例えば4回)繰り返される。その場合、例えば上下のロール型111・112に、ワーク110を成形するための成形部がワーク110の移動方向(図10における左右方向)に対して複数列(紙面奥行き方向に複数列)形成され、各成形部による成形が終了するごとに、ワーク110が保持機構113により移動・回転等され、ロール成形が複数回繰り返される。これにより、ワーク110についてのボリューム配分が行われる。
【特許文献1】特開2004−261857号公報
【特許文献2】特開2004−122163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前述のような方法により材料のボリューム配分を行う場合、それぞれ次のような問題がある。
すなわち、鍛造プレスによりボリューム配分を行う場合、成形荷重や型の強度などとの関係から、材料を変形させる量に限界があるため、断面減少できる量が少なく(断面減少率が小さく)、十分なボリューム配分を行えない場合がある。ここで、プレス回数を増加することで材料を多段階的に変形させることにより、十分なボリューム配分を行うことが考えられるが、これは製造ラインにおけるサイクルタイムを短縮させる観点からは得策ではない。
【0011】
また、ロール成形によりボリューム配分を行う場合、十分なボリューム配分を行おうとして断面減少率が高くなると、材料の内部でシェブロンクラック等の割れが発生する場合がある。また、ロール成形においては、ワークは前記のとおり保持機構等により掴まれた状態となることから、その掴まれる部分はロール成形を行うことができないため、鍛造品の形状によっては十分なボリューム配分が行えない場合がある。
【0012】
このように、ビレットから切断された1本の棒状材料が成形されてボリューム配分が行われる従来の方法においては、ボリューム配分についての自由度を高めることが困難であり、ボリューム配分できる限界が低かった。
一方、材料についてのボリューム配分が不十分であることに起因して発生するバリは、鍛造品の成形面積を広げるため、成形荷重を増大させる原因となる。かかる成形荷重の増大は、型寿命の低下やプレス装置の大型化等につながる。
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、材料のボリューム配分の最適化を図ることができ、鍛造品の製品形状が複雑であっても、バリの発生が防止でき、歩留りの向上及び成形荷重の低減を図ることができる鍛造品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0015】
すなわち、請求項1においては、出発材料を加熱する加熱工程と、加熱した材料を型により圧縮することで所定の形状に成形する成形工程とを含む鍛造品の製造方法であって、前記出発材料として、鍛造品の大きさに対して小片の材料である材料要素を複数用い、前記出発材料となる複数の材料要素を保持する部材として、前記加熱工程における加熱に対する耐熱性を有するとともに前記成形工程における材料の成形を妨げない程度の変形能を有し、最終製品形状に近似する形状の型空間を有する材料保持部材を用い、前記加熱工程の前に、前記材料要素を前記型空間に充填する充填工程を有し、該材料要素を充填した材料保持部材を前記成形工程における圧縮対象とするものである。
【0016】
請求項2においては、前記加熱工程における材料の加熱は、無酸化加熱であるものである。
【0017】
請求項3においては、前記成形工程は、前記材料要素を充填した材料保持部材を圧縮対象とするロール成形により、最終製品形状に応じたボリューム配分となるように材料を予備成形する予備成形工程と、予備成形した材料を型鍛造により最終製品形状に成形する鍛造工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、材料のボリューム配分の最適化を図ることができ、鍛造品の製品形状が複雑であっても、バリの発生が防止でき、歩留りの向上及び成形荷重の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る鍛造品の製造方法は、例えば、自動車のエンジン部品であるクランクシャフトやコネクティングロッド等の熱間鍛造異形部品の製造に際して好適に用いられるものであり、出発材料を加熱する加熱工程と、加熱した材料を型により圧縮することで所定の形状に成形する成形工程とを含む。
【0020】
そして、本発明に係る鍛造品の製造方法は、その出発材料として、鍛造品の大きさに対して小片の材料である材料要素を多数用いる。すなわち、従来はビレットから切り出された1本の棒状材料が用いられていたところを、多数の小さな材料片となる材料要素群を鍛造品の製造過程における出発材料として用いる。
材料要素は、その大きさとしては、従来用いられていた棒状部材が、例えば、直径80mm、長さ400mmであるのに対して、径が数mm程度の小片材料を用いる。また、材料要素の形状としては、円柱状(筒状)、角柱状、立方体状、球状あるいはこれらの組合せ等、種々の形状を用いることができる。
【0021】
一方、本発明に係る鍛造品の製造方法においては、前記のような材料要素群を保持する部材として、前記加熱工程における加熱に対する耐熱性を有するとともに前記成形工程における材料の成形を妨げない程度の変形能を有し、最終製品形状に近似する形状の型空間を有する材料保持部材を用いる。
そして、前記加熱工程の前に、前記材料要素を材料保持部材の型空間に充填する充填工程を有し、この材料要素を充填した材料保持部材を前記成形工程における圧縮対象とする。
すなわち、材料保持部材において最終製品形状に近似する形状の型空間に材料要素群を予め充填し、その充填した状態で、材料要素群を材料保持部材ごと所定の温度に加熱し、加熱した状態の材料要素群を、型鍛造等により材料保持部材ごと型により圧縮することで所定の形状に成形する。
【0022】
材料保持部材としては、材料要素群の加熱工程における加熱に対する耐熱性を有するとともに成形工程における材料の成形を妨げない程度の変形能(高変形能)を有するものであれば、その素材や構成等は限定されない。
材料保持部材の構成としては、例えば、材料保持部材を全体として前記耐熱性及び変形能を有する素材により形成する構成や、かかる耐熱性及び変形能を有する素材により被覆部材を形成するとともに、その内部に被覆部材の変形に追従できる粉状物や粒状物を充填する構成等が考えられる。
前者の構成については、材料保持部材を構成する素材として、耐熱性ウレタン系樹脂(ウレタンゴム)や砂を用いることが考えられる。後者の構成については、耐熱性ウレタン系樹脂を用いてシート状の被覆部材を形成するとともに、その内部に砂等を充填する構成が考えられる。なお、材料保持部材を構成する素材として砂を用いる場合は、鍛造品の材料に対する砂の混入を避ける観点から、後者の構成、つまり被覆部材により砂を全体的にコーティングして用いることが好ましいと考えられる。また、材料保持部材は、その材料要素との接触部分について、加熱工程における加熱等により鍛造品の形状や機能に影響するような材料要素との化学反応を起さない素材により構成される。
【0023】
このように、出発材料として小片の材料要素を多数用いるとともに、耐熱性及び高変形能を有する材料保持部材を用い、この材料保持部材の型空間に材料要素を充填した状態で、材料保持部材ごと材料の加熱及び成形を行うことにより、予め材料が適正にボリューム配分された状態で材料の加熱及び成形が行われることとなるので、材料のボリューム配分の最適化を図ることができ、鍛造品の製品形状が複雑であっても、バリの発生が防止でき、歩留りの向上及び成形荷重の低減を図ることができる。
【0024】
すなわち、出発材料として小片の材料要素を多数用いることで、材料の形状の成形形状に対する制約が緩和されてボリューム配分についての自由度を高めることができる。そして、鍛造品の最終製品形状に近似する型空間を有する材料保持部材を用い、その型空間に材料要素を充填することで、材料を予め最適なボリューム配分とした状態で保持することができ、その状態で加熱及び成形を行うことができる。これにより、極端に複雑な製品形状であっても、材料要素の大きさや形状を工夫することで、その製品形状に対応するボリューム配分を行うことが可能となる。
また、適正なボリューム配分を行うことができることからバリの発生を防止することができるので、鍛造品の成形面積が広がることを防止することができ、成形荷重を低減することができる。これにより、型寿命の向上やプレス装置の小型化を図ることができる。
さらに、材料保持部材の型空間の形状を調整することにより、鍛造品の形状に沿う自由なボリューム配分を行うことができるので、従来のように1本の棒状材料から鍛造品の成形を行う場合には鍛造品の形状によっては必要であった曲げ加工等の成形工程を適宜省略することが可能となり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0025】
以下、本発明に係る鍛造品の製造方法について、鍛造品をクランクシャフトとした場合を例に実施の形態に即して具体的に説明する。
【0026】
第一実施形態について説明する。
本実施形態では、図1に示すように、出発材料として円柱状の形状を有する材料要素10を用いる。材料要素10は、その大きさが直径3〜10mm、長さ5〜10mm程度のものを用いる。かかる大きさの材料要素10は、鍛造品であるクランクシャフトの大きさに対して十分小片の材料となる。また、材料要素10の素材としては、クランクシャフトを構成する素材、例えばアルミニウム合金等のように容易に成形を行うことができる金属素材等を用いる。
材料要素10は、その直径を同じくする線材を所定の長さに切断すること等により準備することができる。つまり本実施形態では、直径3〜10mmの線材を、長さ5〜10mm程度に切断することで多数の材料要素10を準備することができる。
【0027】
本実施形態では、材料保持部材として、全体として厚板状であって材料要素10を充填するための型空間12を形成する箱型11を用いる(図3参照)。
箱型11は、耐熱性ウレタン系樹脂(ウレタンゴム)を素材として構成される。
型空間12は、クランクシャフトの最終製品形状の近似する形状を有し、箱型11を(図3(b)等における上下方向に)貫通した状態で設けられる。具体的には、型空間12は、ジャーナル部、ピン部、カウンタウエイト部等のクランクシャフトを構成する各部の形状に沿う形状を有することにより、全体としてクランクシャフトの最終製品形状の近似する形状を有する。
【0028】
これら材料要素10及び箱型11を用いた本実施形態のクランクシャフトの製造方法について、図2及び図3を用いて説明する。図2は第一実施形態に係る鍛造品の製造工程を示すフロー図、図3は同じく製造工程を示す説明図である。なお、図3において、(a)、(c)及び(e)は平面図を、(b)、(d)及び(f)は側面図を示し、(a)と(b)、(c)と(d)、(e)と(f)がそれぞれ対応する平面図及び側面図となる。
【0029】
まず、材料要素10を箱型11の型空間12に充填する充填工程を行う(S100)。
本工程では、図3(a)に示すように、箱型11の型空間12に材料要素10を隙間なく充填する。ここで、箱型11を貫通する型空間12に材料要素10を保持するため、型空間12を箱型11の一側(下側)から塞ぐ底板13を用いる。
材料要素10の型空間12への充填は、作業者等による手作業あるいは充填用の機械を用いて行う。
なお、底板13には、クランクシャフトの形状に応じた凹凸を適宜形成してもよい。この場合、材料要素10は、型空間12の及び底板13の凹凸により形成される空間に充填されることとなる。
【0030】
次に、材料要素10を加熱する加熱工程を行う。本工程では、いわゆる無酸化加熱を行う(S110)。
無酸化加熱に際しては周知の方法を用いることができ、例えば、ガス雰囲気炉内において、窒素ガスや水素ガスからなる雰囲気中で無酸化状態での加熱を行う。すなわち、本工程では、材料要素10を充填した箱型11ごと、無酸化加熱を行う。したがって、箱型11は、この無酸化加熱を行う加熱工程における加熱に対する耐熱性を有する。
【0031】
このように、加熱工程における材料の加熱を無酸化加熱とすることにより、材料要素10の表面に酸化スケールが生成することを防止することができる。これにより、加熱工程における加熱処理終了後において、例えばショットブラスト等により材料要素10の表面を研削等して酸化スケールを除去するための工程が不要となり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0032】
続いて、加熱した材料を型により圧縮することで所定の形状に成形する成形工程としての仕上げ工程を行う(S120)。
本工程では、図3(c)〜(f)に示すように、例えば下型14及び上型15を有する鍛造型を備えるプレス装置により、材料要素10を充填した箱型11ごと型鍛造を行う。なお、図3(e)においては、上型15の図示を省略している。
下型14及び上型15がそれぞれ有する成形面14a・15aは、図示では簡略化しているが、鍛造品であるクランクシャフトの最終製品形状に対応する形状を有する。つまり、下型14と上型15との型閉じ状態で成形面14a・15aにより形成される成形空間が、クランクシャフトの最終製品形状となる。
【0033】
下型14及び上型15による型鍛造を行うに際しては、まず、箱型11に充填した材料要素10を、成形面14a・15aに対して所定の場所に位置させる。
具体的には、図3(c)、(d)に示すように、まず、型空間12に材料要素10を充填するとともに底板13で保持した状態の箱型11を、下型14の成形面14a上における所定の場所にセットする。そして、底板13を横方向にスライドさせること等により外す。この際、底板13に前記のようなクランクシャフトの形状に応じた凹凸を形成する場合は、その凹凸は、底板13の板面(型空間12を塞ぐ側の面)に対して出没可能に設ける。そして、底板13を外す際は、凹凸を埋没させて底板13の板面を水平面とした状態で底板13をスライド等させる。
【0034】
底板13を外すことにより、箱型11の型空間12に充填した材料要素10の一部はこぼれ、下型14の成形面14a上の所定の場所に落下する。これにより、材料要素10が、下型14及び上型15の成形面14a・15aに対し所定の場所に所定の量だけ位置することとなる。つまり、クランクシャフトの最終製品形状を形成する成形面14a・15aに対し、材料要素10が、クランクシャフトの各部位に応じた所定の量だけ位置することとなる。
【0035】
そして、上型15を下降させること等により鍛造型を型閉じ状態とすることで、材料要素10を箱型11ごと圧縮して型鍛造を行い、所定の形状つまりクランクシャフトの最終製品形状に成形する。
この際、箱型11は、その有する変形能によって鍛造型による圧縮により潰されて変形し、材料要素10の成形は箱型11によって妨げられることなく行われる。すなわち、前述した下型14と上型15との型閉じ状態で形成される成形空間は、鍛造型の型閉じにより圧縮され変形した状態(潰された状態)の箱型11の形状が考慮され、クランクシャフトの最終製品形状となるように形成される。ここで、型鍛造により成形した材料のみを箱型11から取り外すため、鍛造型に箱型11を保持するための機構(例えば、箱型11を鍛造型側に押さえ付けて保持するピンを有するシリンダ機構等)を設けてもよい。
このようにして、材料要素10を充填した箱型11を成形工程における圧縮対象とする。かかる仕上げ工程における型鍛造により、最終製品形状の鍛造品であるクランクシャフト(図9(d)参照)を得る。
【0036】
そして、仕上げ工程で得たクランクシャフトについての検査工程を行う(S130)。
本工程では、型鍛造により得たクランクシャフトを冷却した後、そのクランクシャフトに対し、欠肉やクラック等の鍛造欠陥についての所定の検査を行う。
【0037】
以上の工程により製造するクランクシャフトについては、その歩留りは約100%となる。すなわち、多数の材料要素10が、箱型11によって鍛造型に対して予め適正なボリューム配分で位置した状態から、成形工程における型鍛造を行うので、成形工程において余剰の材料により形成されるバリが発生せず、歩留りが限りなく100%に近い値となる。
また、バリが発生しないことから、成形荷重を低減させることができる。具体的には、従来の鍛造品の製造方法における成形荷重が例えば約4000tであるのに対し、本実施形態における成形荷重は、約3000tに低減することができる。
また、バリが発生しないことから、トリミング等のバリを除去するための工程が不要となり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、十分に材料のボリューム配分が行われた状態で成形を行うので、成形工程において、予備成形形状や荒地成形形状等の複数の成形形状を経ることなく最終製品形状とすることができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0039】
第二実施形態について説明する。なお、第一実施形態と重複する内容については適宜その説明を省略する。
本実施形態では、出発材料として、第一実施形態と同様の円柱状の形状を有する材料要素20を用いる(図1参照)。
【0040】
本実施形態では、図4に示すように、材料保持部材として、全体として厚板状であって材料要素20を充填するための型空間22を形成する箱型21を用いる。
箱型21は、耐熱性ウレタン系樹脂(ウレタンゴム)を素材として構成される。
型空間22は、クランクシャフトの最終製品形状の近似する形状を有し、箱型21に対して溝状に(貫通することなく)設けられる。具体的には、型空間22は、ジャーナル部、ピン部、カウンタウエイト部等のクランクシャフトを構成する各部の形状に沿う形状を有することにより、全体としてクランクシャフトの最終製品形状の近似する形状を有する。
【0041】
これら材料要素20及び箱型21を用いた本実施形態のクランクシャフトの製造方法について、図5〜図7を用いて説明する。図5は第二実施形態に係る鍛造品の製造工程を示すフロー図、図6は材料要素20を充填した状態の箱型21を示す平面図、図7は第二実施形態に係る鍛造品の製造工程における予備成形工程を示す説明図である。
【0042】
まず、材料要素20を箱型21の型空間22に充填する充填工程を行う(S200)。
本工程では、図6に示すように、箱型21の型空間22に材料要素20を隙間なく充填する。
【0043】
次に、材料要素20を加熱する加熱工程を行う。本工程では、いわゆる無酸化加熱を行う(S210)。すなわち、本工程では、材料要素20を充填した箱型21ごと、無酸化加熱を行う。
【0044】
続いて、加熱した材料を型により圧縮することで所定の形状に成形する成形工程として、予備成形工程としてのロール成形工程(S220)、及び鍛造工程としての仕上げ工程(S230)を行う。
すなわち、本実施形態における成形工程は、材料要素20を充填した箱型21を圧縮対象とするロール成形により、最終製品形状に応じたボリューム配分となるように材料を予備成形する予備成形工程と、予備成形した材料を型鍛造により最終製品形状に成形する鍛造工程とを含む。
【0045】
ロール成形工程においては、上ロール型24と下ロール型25とを有するロール成形型を用い、ロール成形により多数の材料要素20を押し固めることにより、材料を最終製品形状に応じたボリューム配分となる予備成形形状に成形する。
上ロール型24及び下ロール型25は、所定の位置において各回転軸24a・25aを有し回転可能に配設される。上ロール型24及び下ロール型25は、予備成形形状に対応する形状の成形面24b・25bをそれぞれ有し、これら成形面24b・25bが、各ロール型24・25の所定の回転範囲で互いに対向するように構成される。つまり、上下のロール型24・25間に材料が挟まれた状態で、各ロール型24・25が所定の方向に回転することにより、材料が成形され予備成形形状となる。
【0046】
したがって、ロール成形工程では、材料要素20を充填した箱型21を所定の搬送経路26に沿って搬送し、上下のロール型24・25に対して所定の成形位置にセットする。その状態から、各ロール型24・25を所定の方向(図7における各ロール型24・25の矢印参照)に回転させ、各ロール型24・25の成形面24b・25b間に箱型21を挟み、材料要素20を箱型21ごと圧縮して成形する。
この際、箱型11は、その有する変形能によってロール成形型による圧縮により潰されて変形し、材料要素20の成形は箱型21によって妨げられることなく行われる。このようにして、材料要素20を充填した箱型21を成形工程(ロール成形工程)における圧縮対象とする。
【0047】
ロール成形工程において多数の材料要素20を押し固め一体の予備成形形状とした材料(以下、「予備成形品」という。)は、箱型21から取り外し、あるいは箱型21ごと、後述する仕上げ工程における鍛造型を備えるプレス装置へと所定の搬送経路により搬送する。
【0048】
なお、ロール成形工程においては、ロール成形型による成形を終えた箱型21を再度(複数回)用いることで、複数の箱型21を用いて連続的にロール成形を行うこともできる。
この場合、例えば図7に示すように、ロール成形に際して材料要素20を充填した箱型21を搬送する搬送経路26を、往路26a及び復路26bを有する循環経路とするとともに、予備成形品のプレス装置への搬送に際しては、ロール成形型による成形を終えた箱型21から予備成形品を取り外し、その箱型21を再度ロール成形に用いる(箱型21a参照)。そして、一旦ロール成形に使用した箱型21aに対して、次のロール成形までの搬送経路26において、前述した充填工程及び加熱工程を行う。
【0049】
仕上げ工程においては、例えば下型及び上型を有する鍛造型を備えるプレス装置(図示略)により、ロール成形工程を経た予備成形品あるいは予備成形品を含む箱型21ごと型鍛造を行う。本工程に用いる鍛造型は、下型及び上型を有しその型閉じ状態で形成される成形空間が、クランクシャフトの最終製品形状となる。
そして、プレス装置により予備成形品を圧縮して型鍛造を行い、所定の形状つまりクランクシャフトの最終製品形状に成形する。かかる仕上げ工程における型鍛造により、最終製品形状の鍛造品であるクランクシャフト(図9(d)参照)を得る。
その後、仕上げ工程で得たクランクシャフトについての検査工程を行う(S240)。
【0050】
以上の工程により製造するクランクシャフトについては、その歩留りは約100%となる。すなわち、多数の材料要素20が、箱型21によってロール成形型に対して予め適正なボリューム配分である状態から、ロール成形工程におけるロール成形(予備成形)を行い、その予備成形品に対して仕上げ工程における型鍛造を行うので、成形工程において余剰の材料により形成されるバリが発生せず、歩留りが限りなく100%に近い値となる。
また、バリが発生しないことから、成形荷重を低減させることができる。具体的には、従来の鍛造品の製造方法における成形荷重が例えば約4000tであるのに対し、本実施形態における成形荷重は、約3000tに低減することができる。
また、バリが発生しないことから、トリミング等のバリを除去するための工程が不要となり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0051】
上記各実施形態においては、材料要素を保持するための材料保持部材を、一体の箱型11・21として説明したが、これに限定するものではなく、例えば、材料保持部材を、下型及び上型等のように複数の型要素からなる分割型として構成することもできる。つまりこの場合、複数の型要素が、その型閉じ状態で最終製品形状に近似する形状の型空間を形成する構成となる。
また、上記実施形態では、鍛造品としてクランクシャフトを例に説明したが、本発明に係る鍛造品の製造方法は、他の種々の鍛造品の製造に際して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る材料要素を示す斜視図。
【図2】第一実施形態に係る鍛造品の製造工程を示すフロー図。
【図3】同じく製造工程を示す説明図。
【図4】第二実施形態に係る箱型を示す斜視図。
【図5】第二実施形態に係る鍛造品の製造工程を示すフロー図。
【図6】材料要素を充填した状態の箱型を示す平面図。
【図7】第二実施形態に係る鍛造品の製造工程における予備成形工程を示す説明図。
【図8】従来における鍛造品の製造工程を示すフロー図。
【図9】従来における鍛造品の製造工程における各工程の成形品等を示す斜視図。
【図10】従来のロール成形工程の一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0053】
10・20 材料要素
11・21 箱型(材料保持部材)
12・22 型空間
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年8月23日(2006.8.23)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎


【公開番号】 特開2008−49363(P2008−49363A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−227099(P2006−227099)