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【発明の名称】 熱間鍛造プレスおよびその鍛造方法
【発明者】 【氏名】田渡 正史

【氏名】西原 秀司

【要約】 【課題】成形品に適したストロークおよび成形速度で成形することができ、一台で多品種の鍛造が可能である熱間鍛造プレスおよびその鍛造方法を提供する。

【構成】コンロッドCRによってエキセンシャフトESの偏心部Hと連結されたスライドSを、エキセンシャフトESを回転させて移動させる熱間鍛造プレスPにおいて、スライドSの最大ストロークよりも短いストロークで鍛造を行うときに、スライドSが下死点に位置する下死点角度を挟んでエキセンシャフトESの偏心部Hが揺動するように、エキセンシャフトESを正転逆転させる。最大ストロークを必要としない鍛造品を鍛造する場合において、同一方向にのみエキセンシャフトが回転する場合に比べてサイクルタイムを短縮できるので、生産効率を向上させることができ、長物から、薄物、小物鍛造品など多品種の鍛造品を1台のプレスで成形することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンロッドによってエキセンシャフトの偏心部と連結されたスライドを、前記エキセンシャフトを回転させて移動させる熱間鍛造プレスにおいて、
前記スライドの最大ストロークよりも短いストロークで鍛造を行うときに、前記スライドが下死点に位置する下死点角度を挟んで前記エキセンシャフトの偏心部が揺動するように、前記エキセンシャフトを正転逆転させる
ことを特徴とする熱間鍛造プレスにおける鍛造方法。
【請求項2】
前記エキセンシャフトにおける偏心部の前記下死点角度からの揺動角度が、正転方向の揺動角度と逆転方向の揺動角度が同じ揺動角度となるように、前記エキセンシャフトを正転逆転させる
ことを特徴とする請求項1記載の熱間鍛造プレスにおける鍛造方法。
【請求項3】
前記エキセンシャフトの回転速度を、成形される被成形素材に応じた速度に調整する
ことを特徴とする請求項1または2記載の熱間鍛造プレスにおける鍛造方法。
【請求項4】
コンロッドによってエキセンシャフトの偏心部と連結されたスライドと、
該エキセンシャフトに駆動力を供給する駆動手段と、
該駆動手段によるエキセンシャフトの回転を制御する制御手段を備えており、
前記制御手段は、
前記スライドの最大ストロークよりも短いストロークで鍛造を行うときに、前記スライドが下死点に位置する下死点角度を挟んで前記エキセンシャフトの偏心部が揺動するように、前記駆動手段を制御するものである
ことを特徴とする熱間鍛造プレス。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記エキセンシャフトにおける偏心部の前記下死点角度からの揺動角度が、正転方向の揺動角度と逆転方向の揺動角度が同じ揺動角度となるように、前記エキセンシャフトの回転を制御する
ことを特徴とする請求項4記載の熱間鍛造プレス。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記エキセンシャフトの回転速度を、成形される被成形素材に応じた速度に調整する
ことを特徴とする請求項4または5記載の鍛造プレス。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間鍛造プレスおよびその鍛造方法に関する。さらに詳しくは、スライドを作動させるエキセンシャフト(偏心軸)を備えた熱間鍛造プレスおよびその鍛造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱間鍛造プレスは、鍛造エネルギーを蓄積させるフライホイールを、クラッチを介して直接エキセンシャフトの一端に取付けており、上型が取付けられたスライドを駆動する際には、クラッチを繋ぎフライホイールの回転をエキセンシャフトに伝達する構造となっていた(例えば、非特許文献1)。
【0003】
近年、一台のプレスによって複数の製品を鍛造することができる多品種鍛造プレスが要求されている。
鍛造する鍛造品の形状によってプレスに要求されるスライドストロークが異なるため、多品種鍛造プレスとするには、スライドストロークが最も長い鍛造品に合わせて最大ストロークを決定しなければならない。
【0004】
しかし、従来の熱間鍛造プレスを多品種鍛造プレスとした場合、短いストロークしか必要とされない鍛造品であっても、常に最大ストロークで鍛造される。すると、最大ストロークを必要としない鍛造品を鍛造する場合には、その鍛造品専用のプレスを使用する場合に比べてサイクルタイムが長くなってしまい、生産効率が低下してしまうという問題が生じる。このため、異なるスライドストロークが要求される鍛造品を鍛造する多品種熱間鍛造プレスは実用化されておらず、現状では、各鍛造品に専用のプレスで鍛造が行われている。
【0005】
【非特許文献1】“塑性加工技術シリーズ4 鍛造”,社団法人日本塑性加工学会編,1995.8.30,pp325
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、成形品に適したストロークおよび成形速度で成形することができ、一台で多品種の鍛造が可能である熱間鍛造プレスおよびその鍛造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の熱間鍛造プレスにおける鍛造方法は、コンロッドによってエキセンシャフトの偏心部と連結されたスライドを、前記エキセンシャフトを回転させて移動させる熱間鍛造プレスにおいて、前記スライドの最大ストロークよりも短いストロークで鍛造を行うときに、前記スライドが下死点に位置する角度を挟んで前記エキセンシャフトの偏心部が揺動するように、前記エキセンシャフトを正転逆転させることを特徴とする。
第2発明の熱間鍛造プレスにおける鍛造方法は、第1発明において、前記エキセンシャフトにおける偏心部の前記下死点角度からの揺動角度が、正転方向の揺動角度と逆転方向の揺動角度が同じ揺動角度となるように、前記エキセンシャフトを正転逆転させることを特徴とする。
第3発明の熱間鍛造プレスにおける鍛造方法は、第1または第2発明において、前記エキセンシャフトの回転速度を、成形される被成形素材に応じた速度に調整することを特徴とする。
第4発明の熱間鍛造プレスは、コンロッドによってエキセンシャフトの偏心部と連結されたスライドと、該エキセンシャフトに駆動力を供給する駆動手段と、該駆動手段によるエキセンシャフトの回転を制御する制御手段を備えており、前記制御手段は、前記スライドの最大ストロークよりも短いストロークで鍛造を行うときに、前記スライドが下死点に位置する下死点角度を挟んで前記エキセンシャフトの偏心部が揺動するように、前記駆動手段を制御するものであることを特徴とする。
第5発明の熱間鍛造プレスは、第4発明において、前記制御手段は、前記エキセンシャフトにおける偏心部の前記下死点角度からの揺動角度が、正転方向の揺動角度と逆転方向の揺動角度が同じ揺動角度となるように、前記エキセンシャフトの回転を制御することを特徴とする。
第6発明の熱間鍛造プレスは、第4または第5発明において、前記制御手段は、前記エキセンシャフトの回転速度を、成形される被成形素材に応じた速度に調整するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、エキセンシャフトの偏心部が揺動する量、言い換えれば、エキセンシャフトが下死点角度から正転逆転する角度を調整すれば、スライドストロークをプレスの最大ストロークよりも短くすることができる。よって、最大ストロークを必要としない鍛造品を鍛造する場合において、そのサイクルタイムを短縮できるので、生産効率を向上させることができ、長物から、薄物、小物鍛造品など多品種の鍛造品を1台のプレスで成形することが可能となる。
第2発明によれば、正転逆転する角度が同じであるから、エキセンシャフトの回転制御が容易になる。
第3発明によれば、鍛造する製品に適した成形速度で鍛造を行うことができるので、最適な成形速度が異なる鍛造品であっても1台のプレスで成形することができる。
第4発明によれば、制御手段によって駆動手段を制御し、エキセンシャフトの偏心部が揺動する量、言い換えれば、エキセンシャフトが下死点角度から正転逆転する角度を調整すれば、スライドストロークをプレスの最大ストロークよりも短くすることができる。よって、最大ストロークを必要としない鍛造品を鍛造する場合において、そのサイクルタイムを短縮できるので、生産効率を向上させることができ、長物から、薄物、小物鍛造品など多品種の鍛造品を1台のプレスで成形することが可能となる。
第5発明によれば、正転逆転する角度が同じであるから、エキセンシャフトの回転制御が容易になる。
第6発明によれば、鍛造する製品に適した成形速度で鍛造を行うことができるので、最適な成形速度が異なる鍛造品であっても1台のプレスで成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図4は本実施形態の熱間鍛造プレスPの概略正面図である。図5は本実施形態の熱間鍛造プレスPの概略側面図である。
【0010】
図4において、符号Bは鍛造プレスPのベッドを示しており、このベッドBの上面に設けられた下ダイホルダーDHの上面に金型Cの下型が取り付けられている。金型Cの上型は、スライドSの下面に設けられた、上ダイホルダーDHの下面に取り付けられている。
スライドSは、コンロッドCRを介してエキセンシャフトESの偏心部Hに連結されている。このエキセンシャフトESは、そのジャーナル部JがクラウンCWに回転可能に支持されている。なお、本明細書では、スライドSを作動させる軸をエキセンシャフトと呼んでいるが、このエキセンシャフトは偏心部を有する軸であればとくに限定されず、フルエキセン形のクランク軸だけでなく、通常のクランク軸等も含む概念である。
【0011】
図4および図5示すように、エキセンシャフトESの端部には、駆動手段10のメインギア13が設けられており、このメインギア13には、中間ギア12を介してピニオン11aが連結されている。このピニオン11aは、クラウンCWに取り付けられたACサーボモータ11の主軸に取り付けられている。このACサーボモータ11は、制御手段20によって、その回転速度や回転方向が制御されている。
【0012】
上記のごとき熱間鍛造プレスPにおいて、最大スライドストロークSmaxで鍛造が行われる場合には、以下の手順で鍛造作業が行われる。
図6は本実施形態の鍛造プレスPが最大スライドストロークSmaxで鍛造する場合におけるエキセンシャフトESの偏心部Hの動きを説明した図である。同図(A)に示すように、スライドSが上死点に位置した状態から、駆動手段10のACサーボモータ11が作動される。スライドSが上死点に位置した状態では、エキセンシャフトESの偏心軸Hの中心軸C2は、ジャーナル部Jの中心軸C1の鉛直上方に位置している。
【0013】
図6(A)の状態から、ACサーボモータ11の作動によりエキセンシャフトESが回転されると(図6では時計回りの回転)、エキセンシャフトESの偏心軸Hの中心軸C2はジャーナル部Jの中心軸C1の周囲を公転し(図6(B))、スライドSが下死点まで移動した段階では、エキセンシャフトESの偏心軸Hの中心軸C2は、ジャーナル部Jの中心軸C1の鉛直下方に位置する(図6(C))。
そして、スライドSが下死点まで移動してからもACサーボモータ11の作動により、エキセンシャフトESは同じ方向(時計回り)に回転され、スライドSが上死点に位置した状態でACサーボモータ11の作動が停止し、エキセンシャフトESの回転も停止される((図6(A))。
そして、上記のサイクルが繰り返されることにより、連続して鍛造が行われるのである。
【0014】
ここで、本実施形態の熱間鍛造プレスPでは、鍛造される鍛造品に必要なストロークが、熱間鍛造プレスPの最大ストロークSmax(図(6)参照)である場合には、上述したように、ACサーボモータ11を一方向にのみ回転させて鍛造を行う。
一方、本実施形態の熱間鍛造プレスPは、最大ストロークSmaxよりも短いストロークしか必要としない鍛造品を鍛造する場合には、スライドSが下死点に位置する下死点角度を挟んでエキセンシャフトESの偏心部Hが揺動するように、エキセンシャフトESを回転させるのである。
【0015】
図3は本実施形態の熱間鍛造プレスPにおけるACサーボモータ11の作動を制御する制御手段20のブロック図である。
図3に示すように、ACサーボモータ11には、その作動、つまり、その回転方向や回転速度を制御する制御手段20が接続されている。制御手段20は、制御機能21、スライドストローク設定機能22、成形速度設定機能23を備えている。
【0016】
スライドストローク設定機能22は、制御手段20に対して熱間鍛造プレスPによって鍛造される鍛造品の情報が入力されると、その鍛造品に適したスライドストロークを設定する機能である。具体的には、エキセンシャフトESの偏心部Hを、スライドSが下死点に位置する角度(図1(B)参照、以下、単に下死点角度という)に対して揺動させる角度を決定する。つまり、鍛造品に適したスライドストロークを実現するために、エキセンシャフトESの偏心部Hを、下死点角度に対して正転方向(図1では時計回り)および逆転方向(図1では反時計回り)にどの程度回転させればよいかよいかを決定するのである。そして、エキセンシャフトESの偏心部Hを正転方向または逆転方向に回転させる角度に基づいて、この角度を実現するために必要なACサーボモータ11の回転量を設定するのである。
【0017】
ここで、鍛造品に適したスライドストロークを実現するために、スライドSは、鍛造開始前に、必要なスライドストロークの長さの分だけ下死点位置から上方の鍛造待機位置に配置される(図1参照)。スライドSを鍛造待機位置に配置するには、エキセンシャフトESの偏心部Hを下死点角度から回転させる必要がある。以下では、鍛造待機位置にスライドSを配置させるために、エキセンシャフトESの偏心部Hを下死点角度に対して正転方向または逆転方向に回転させる角度を揺動角度という。とくに、下死点角度に対して正転方向の揺動角度(図1ではθ1)は正転側揺動角度θ1、下死点角度に対して逆転方向の揺動角度(図1ではθ2)は逆転側揺動角度θ2で示す。
【0018】
なお、鍛造品に適したスライドストロークが熱間鍛造プレスPの最大ストロークSmaxと等しい場合や、最大ストロークSmaxとほとんど同じである場合には、スライドストローク設定機能22によって揺動角度は180°と決定される。この場合、スライドストローク設定機能22は、ACサーボモータ11を同一方向に連続回転させるようにACサーボモータ11の回転量を設定するのは、いうまでもない。
さらになお、スライドストローク設定機能22で設定されるスライドストロークは、実際にスライドSが移動する長さであってもよい。この場合には、設定されたスライドストロークに基づいて、制御機能21によりエキセンシャフトESの偏心部Hの揺動角度θ1,θ2および、この揺動角度θ1,θ2を実現するために必要なACサーボモータ11の回転量が算出される。同様に、スライドストローク設定機能22がエキセンシャフトESの偏心部Hの揺動角度θ1,θ2を設定する場合には、この揺動角度θ1,θ2を実現するために必要なACサーボモータ11の回転量を制御機能21が算出する。
【0019】
成形速度設定機能23は、制御手段20に対して熱間鍛造プレスPによって鍛造される鍛造品の情報が入力されると、その鍛造品に適した成形速度を設定する機能である。具体的には、鍛造品に適した成形速度、つまりスライドSの移動速度を実現するために必要なACサーボモータ11の回転速度を設定する。
なお、成形速度設定機能23で設定される成形速度は、実際にスライドSが移動する速度であってもよいし、そのスライドSの移動速度を実現するために必要なエキセンシャフトESの回転速度であってもよい。この場合には、設定されたスライドSが移動する速度やエキセンシャフトESの回転速度に基づいて、制御機能21によりACサーボモータ11の回転速度が算出される。
【0020】
制御機能21は、スライドストローク設定機能22および成形速度設定機能23において設定されたスライドストロークおよび成形速度に基づいて、ACサーボモータ11を制御する機能を有している。具体的には、制御機能21は、設定された正転側揺動角度θ1および逆転側揺動角度θ2の範囲内でエキセンシャフトESの偏心部Hが揺動するように、ACサーボモータ11を、設定された成形速度で正転方向、逆転方向に回転させる。
なお、制御機能21は、エキセンシャフトESの偏心部Hが揺動角度θ1,θ2以上には回転しないようACサーボモータ11の作動を制御するのであるが、ACサーボモータ11の主軸の回転量をモニタリングして制御してもよいし、検出器などによってスライドSの位置を検出し、このスライドSの位置に基づいてACサーボモータ11の作動を制御してもよい。
【0021】
制御手段20が以上のごとき構成であるから、制御手段20に対して熱間鍛造プレスPによって鍛造される鍛造品の情報が入力されると、制御手段20から供給される信号に基づいてACサーボモータ11が作動される。すると、鍛造する製品に適したスライドストロークおよび成形速度となるようにエキセンシャフトESの偏心部Hが揺動するから、必要とするスライドストロークが最大ストロークよりも短い鍛造品であっても、その鍛造品に適したスライドストロークで鍛造することができる。しかも、各鍛造品に適した成形速度で鍛造することができるから、長物から、薄物、小物鍛造品など多品種の鍛造品を1台のプレスで成形することが可能となる。
【0022】
また、最大ストロークSmaxを必要としない鍛造品を鍛造する場合、各鍛造サイクルにおいてエキセンシャフトESを1回転させず、その鍛造品に必要なスライドストロークを実現する揺動角度θ1,θ2を合わせた角度だけエキセンシャフトESを回転させている。すると、1サイクルにつきエキセンシャフトESが一回転する場合に比べて、1サイクル中にエキセンシャフトESが回転する角度を少なくなりサイクルタイムを短縮できるので、生産効率を向上させることができる。
【0023】
さらに、スライドSをコンロッドCRを介してエキセンシャフトESの偏心部Hに連結しているので、正転側揺動角度θ1と逆転側揺動角度θ2が同じ角度になると、エキセンシャフトESが正転方向逆転方向のいずれの方向に回転しても同じスライドストロークで鍛造を行うことができる。すると、一定のストロークで連続して鍛造を行う場合、正転側揺動角度θ1と逆転側揺動角度θ2を同じ角度とすれば、エキセンシャフトESの回転制御が容易になるので、好適である。
【0024】
なお、エキセンシャフトESの揺動角度は、正転側揺動角度θ1と逆転側揺動角度θ2とを、必ずしも一致させなくてもよい。例えば、正転側揺動角度θ1を逆転側揺動角度θ2よりも大きくしておけば、エキセンシャフトESが逆転方向に回転する場合におけるスライドストロークを、正転方向に回転する場合におけるスライドストロークよりも長くできる。すると、正転動作で成形を行ったものが、成形前に比べ(スライドストローク方向に)長くなるように鍛造される場合に好適である。
【0025】
つぎに、本実施形態の熱間鍛造プレスPによって、この熱間鍛造プレスPの最大ストロークSmaxよりも短いスライドストロークによって鍛造する場合を説明する。
なお、以下では図1に基づいて説明するが、エキセンシャフトESの正転方向を時計回りとし、逆転方向を反時計回りとして説明する。
また、図1では、正転側揺動角度θ1と逆転側揺動角度θ2とが、同じ角度である。
【0026】
図1に示すように、要求されるストロークが長さSL1の場合、スライドSは、下死点に位置している場合に比べて長さSL1だけ上方に配置された状態で鍛造開始タイミングまで待機する(図1(C))。この状態とするために、制御手段20によってACサーボモータ11が作動され、エキセンシャフトESは下死点角度から逆転方向に回転される。そして、エキセンシャフトESが逆転側揺動角度θ2まで回転した状態でACサーボモータ11はその作動が停止され、エキセンシャフトESの回転も拘束される。
【0027】
鍛造が開始されると、図1(C)状態からエキセンシャフトESは正転方向に回転される。そして、エキセンシャフトESが正転方向に逆転側揺動角度θ2だけ回転すると、スライドSは下死点まで移動するから(図1(B))、被成形素材は上下の金型Cに挟まれて鍛造される(図4参照)。
スライドSが下死点に位置してからも、エキセンシャフトESはさらに正転され、スライドSが下死点から長さSL1だけ上方に位置するまで回転する。言い換えれば、エキセンシャフトESは正転側揺動角度θ1となるまで正転方向に回転する。そして、エキセンシャフトESが正転側揺動角度θ1となると、制御手段20によってACサーボモータ11の作動が停止され、エキセンシャフトESの回転も拘束されるから、スライドSの移動も停止する(図1(A))。
つまり、図1(C)の状態から、図1(A)の状態となるまで、エキセンシャフトESが正転方向に回転すると、最初のサイクルC1が終了するのである(図2(A))。
【0028】
最初のサイクルC1が終了してから次のサイクルC2が開始するまでの間は、エキセンシャフトESの回転が停止した停止期間STとなる(図2(A))。この停止期間ST中には、最初のサイクルC1で鍛造された鍛造品の搬出や、新しい被成形素材の搬入、金型Cへの潤滑剤の吹きつけなどが行われ、これらの作業が終了すると、次のサイクルC2が開始される(図4参照)。
【0029】
次のサイクルC2が開始されると、図1(A)の状態からエキセンシャフトESは逆転方向に回転される。つまり、最初のサイクルC1の鍛造時と逆方向にエキセンシャフトESは回転される。そして、エキセンシャフトESが正転側揺動角度θ1だけ回転すると、スライドSは下死点まで移動するから(図1(B))、被成形素材は上下の金型Cに挟まれて鍛造される。
このサイクルC2でも、スライドSが下死点に位置してからもエキセンシャフトESの回転は継続し、スライドSが下死点から長さSL1だけ上方に位置するまで回転、つまり、エキセンシャフトESは逆転側揺動角度θ2となるまで逆転方向に回転する。そして、エキセンシャフトESが逆転側揺動角度θ2となると、制御手段20によってACサーボモータ11の作動が停止し、スライドSの移動が停止され(図1(C))、次のサイクルC2が終了するのである(図2(A))。
【0030】
次のサイクルC2後の停止期間STが終了すると、3回目のサイクルC3が開始するのであるが、このサイクルC3では、エキセンシャフトESは再び正転方向に回転される。
そして、3回目のサイクルC3が終了し、3回目のサイクルC3終了後の停止期間STが終了すると、4回目のサイクルが開始し、このサイクルでは、エキセンシャフトESは再び逆転方向に回転される。
【0031】
上記のごとく、本実施形態の熱間鍛造プレスPは、スライドSが下死点に位置する下死点角度、つまり、エキセンシャフトESの偏心部Hの中心軸C2がジャーナル部Jの中心軸C1の鉛直下方に位置する角度に対し、エキセンシャフトESを、その偏心部Hが揺動するように正転逆転させるので、その最大スライドストロークSmaxよりも短いストロークSL1の鍛造品であっても鍛造を行うことができる。
しかも、各サイクルにおいて、正転側揺動角度θ1と逆転側揺動角度θ2とを合わせた角度分だけエキセンシャフトESを回転させればよいので、1サイクルあたりの回転角度を、(360°−(θ1+θ2))だけ少なくすることができる。よって、1サイクルあたり、エキセンシャフトESが(360°−(θ1+θ2))だけ回転するのに必要な時間を削減することができるから、生産効率を向上させることができる。
【0032】
また、図2(B)に示すように、短いスライドストロークで鍛造を行う場合(図2(B)では符号SSのライン)における成形速度を、最大スライドストロークSmaxで鍛造を行う場合(図2(B)では符号LSのライン)における成形速度と同じとしてもよいし、異なる成形速度としてもよい。すると、スライドストロークShが同じであっても、1サイクルに要する期間が短かい高速サイクルSSHとしたり、1サイクルに要する期間が長い低速サイクルSSとしたりすることができる。
よって、本実施形態の鍛造プレスPによれば、スライドストロークは同じであるが最適な成形速度が異なる鍛造品や、スライドストロークも成形速度も異なる鍛造品であっても1台のプレスで成形することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は熱間鍛造プレスは、スライドを作動させるエキセンシャフト等のクランク軸を備えた熱間鍛造プレスであって、ギヤブランク、コンロッド、CVJ等の熱間鍛造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態の鍛造プレスPが最大スライドストロークSmaxよりも短いストロークSL1で鍛造する場合におけるエキセンシャフトESの偏心部Hの動きを説明した図である。
【図2】(A)は本実施形態の鍛造プレスPにおけるスライドストロークの時間変化を示した図であり、(B)スライドストロークおよび成形速度を変化させた場合における1サイクル内のスライドストロークの時間変化を比較した図である。
【図3】本実施形態の熱間鍛造プレスPにおけるACサーボモータ11の作動を制御する制御手段20のブロック図である。
【図4】本実施形態の熱間鍛造プレスPの概略正面図である。
【図5】本実施形態の熱間鍛造プレスPの概略側面図である。
【図6】本実施形態の熱間鍛造プレスPが最大スライドストロークSmaxで鍛造する場合におけるエキセンシャフトESの偏心部Hの動きを説明した図である。
【符号の説明】
【0035】
10 駆動手段
11 ACサーボモータ
20 制御手段
P 熱間鍛造プレスP
CR コンロッド
S スライド
ES エキセンシャフト
H 偏心部
J ジャーナル部
θ 揺動角度
【出願人】 【識別番号】502235326
【氏名又は名称】住友重機械テクノフォート株式会社
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100089222
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 康伸

【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博


【公開番号】 特開2008−786(P2008−786A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172311(P2006−172311)