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【発明の名称】 ダイスおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】片山 憲一

【氏名】森口 善則

【氏名】藤井 洋

【氏名】佐瀬 直樹

【要約】 【課題】緩み止め効果を向上させたねじ部を製造するダイスおよびその製造方法を提供する。

【解決手段】一対の平ダイス30、40は、平坦部21a、22aと傾斜部21b、22bとが交互に連続するように形成される両フランク21、22を有するステップロックボルト10のねじ山20を転造加工するためのダイスである。そして、固定側平ダイス30では、その転造加工面31における平坦状突起条部33aと傾斜状突起条部33bとが、放電加工用電極50に設けられる各放電加工用突起条51の平坦状放電部52aおよび傾斜状放電部52bによる放電加工によりそれぞれ形成される。また、移動側平ダイス40の転造加工面41も同様に形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード角の緩い区間と急な区間とが交互に連続するように形成されるフランクを有するねじ部を転造加工するための複数の突起条を備える一対のダイスであって、
前記複数の突起条は、前記リード角の緩い区間を転造加工するためのステップ状突起条部と、前記リード角の急な区間を転造加工するため傾斜状突起条部とが交互に連続するように形成され、
前記ステップ状突起条部および前記傾斜状突起条部は、放電加工用電極に設けられるステップ状放電部および傾斜状放電部による放電加工により形成されることを特徴とするダイス。
【請求項2】
前記放電加工用電極は、ダイス鋼よりも強度が低い電極素材で構成されることを特徴とする請求項1記載のダイス。
【請求項3】
前記ステップ状突起条部により前記リード角の緩い区間のリード角がゼロ(平坦)に転造加工されるように、当該ステップ状突起条部が前記ステップ状放電部による放電加工により形成されることを特徴とする請求項1または2記載のダイス。
【請求項4】
リード角の緩い区間と急な区間とが交互に連続するように形成されるフランクを有するねじ部を転造加工するための複数の突起条を備える一対のダイスの製造方法であって、
当該両ダイスの前記複数の突起条を、放電加工用電極に設けられるステップ状放電部および傾斜状放電部による放電加工によって、前記リード角の緩い区間を転造加工するためのステップ状突起条部と前記リード角の急な区間を転造加工するため傾斜状突起条部とが交互に連続するように形成する放電加工行程を有することを特徴とするダイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、緩み止め機能を有するねじ部を転造加工するためのダイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、緩み止め機能を有するねじ部を備えたボルトとして、下記非特許文献1〜3に示すステップロックボルトが知られている。このステップロックボルトは、ボルトのねじ山のフランクに微細なステップ部分と傾斜部分を設け、ボルトのねじ込みに伴う、これらねじ山あるいは相手の部材の塑性変形により、ボルトの緩み止めを達成しようとするものである。
【0003】
図7は、ステップロックボルトを転造するための従来の一対の平ダイス100における転造加工面110の形状を説明する説明図である。なお、図7では、便宜上、一対の平ダイスのうち固定側平ダイス100の転造加工面110のみを一部図示している。
通常、上述のようなステップロックボルトのねじ山は、ねじ部成形前の被転造物を一対の平ダイスである固定側平ダイス100と移動側平ダイスとの間に挟持して所定の押圧力を加えながら転造加工することにより形成される。
【0004】
図7に示すように、固定側平ダイス100の転造加工面110には、ステップロックボルトのねじ山を平面に展開したときの形状とほぼ反対の形状の複数の突起条120が、長方形の側辺に対して一定の傾斜を持った略直線状に設けられている(図7斜線部参照)。転造加工面110の各突起条120には、ねじ山の圧力側フランクを転造加工するため当該圧力側フランクとほぼ反対の形状のフランク121が設けられるとともに、ねじ山の遊び側フランクを転造加工するため当該遊び側フランクとほぼ反対形状のフランク122が設けられている。ここで、圧力側フランクとは、ナット等の相手側部材に締結する際に当該相手側部材のフランクに摺接するフランクであり、遊び側フランクとは、相手側部材に締結する際に当該相手側部材と離間するフランクである。
【0005】
フランク121には、圧力側フランクのステップ部分および傾斜部分とほぼ反対形状のステップ状突起条部121aおよび傾斜状突起条部121bが、それぞれ交互に連続するように設けられている。また、フランク122には、遊び側フランクのステップ部分および傾斜部分とほぼ反対形状のステップ状突起条部および傾斜状突起条部が、それぞれ交互に連続するように設けられている。また、移動側平ダイスの転造加工面にも、同様のステップ状突起条部および傾斜状突起条部を有する複数の突起条が設けられている。
【0006】
【非特許文献1】Journal of Materials Processing Technology Vol,56, p321-332, "Evaluation of Anti-loosening Nuts for Screw Fasteners" H,Fujii et al. 1996.
【非特許文献2】日本機械学会論文集、C編、62巻(597号)、p1963−1968、「極端にゆるみにくいねじ締結体の開発」、藤井 洋、他、1996年。
【非特許文献3】日本機械学会論文集、C編、62巻(596号)、p1527−1532、「ねじ締結体のゆるみ機構の解析とゆるみ試験法の開発」、藤井 洋、他、1996年。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば、固定側平ダイス100の転造加工面110における複数の突起条120は、ダイス鋼等の金属材料に切削刃130を用いる切削加工等を施すことにより形成されていた(図7参照)。しかしながら、ダイス鋼は一般に強度が高いため切削加工が困難であり加工コストが高くなる。さらに、ダイス鋼を切削加工するための切削刃130がすぐに磨耗してしまい、摩耗した切削刃130を継続して使用していると各突起条120の形状が均一にならないという問題があった。
【0008】
また、上述のステップロックボルトは、相手側部材に締結する際に、ねじ山の一方のフランクである圧力側フランクにて相手側部材のフランクに摺接する。ねじの緩み止め作用は、圧力側フランクにおいてステップ部分から傾斜部分へ山状に切り換わる部位である山状ねじ部分が相手側部材に食い込むとともに当該ステップ部分が相手側部材に摺接することで、発揮される。
【0009】
図7からわかるように、上記各山状ねじ部分は、複数の突起条120にてステップ状突起条部121aから傾斜状突起条部121bへ谷状に切り換わる部位である各谷状突起条部121cによりそれぞれ転造加工される。そして、各谷状突起条部121cは谷状に形成されるため、ステップ状突起条部121aおよび傾斜状突起条部121bを切削刃130により切削加工する際、当該谷状突起条部121cは、切削刃130の半径相当のR形状に形成されてしまう。
【0010】
このように各谷状突起条部121cがR形状に形成された固定側平ダイス100により圧力側フランクにおけるステップ部分および傾斜部分を転造加工すると、各山状ねじ部分の先端部がR形状にそれぞれ形成される。このため、各山状ねじ部分が相手側部材に食い込みにくくなり、ねじの緩み止め効果が低下してしまうという問題があった。また、移動側平ダイスの転造加工面における各谷状突起条部でも、同様の問題があった。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、緩み止め効果を向上させたねじ部を製造するダイスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のダイスでは、リード角の緩い区間(21a)と急な区間(21b)とが交互に連続するように形成されるフランク(21)を有するねじ部(20)を転造加工するための複数の突起条(32、42)を備える一対のダイス(30、40)であって、前記複数の突起条は、前記リード角の緩い区間を転造加工するためのステップ状突起条部(33a)と、前記リード角の急な区間を転造加工するため傾斜状突起条部(33b)とが交互に連続するように形成され、前記ステップ状突起条部および前記傾斜状突起条部は、放電加工用電極(50)に設けられるステップ状放電部(52a)および傾斜状放電部(52b)による放電加工により形成されることを技術的特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項4のダイスの製造方法では、リード角の緩い区間(21a)と急な区間(21b)とが交互に連続するように形成されるフランク(21)を有するねじ部(20)を転造加工するための複数の突起条(32、42)を備える一対のダイス(30、40)の製造方法であって、当該両ダイスの前記複数の突起条を、放電加工用電極(50)に設けられるステップ状放電部(52a)および傾斜状放電部(52b)による放電加工によって、前記リード角の緩い区間を転造加工するためのステップ状突起条部(33a)と前記リード角の急な区間を転造加工するため傾斜状突起条部(33b)とが交互に連続するように形成する放電加工行程を有することを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、リード角の緩い区間と急な区間とが交互に連続するように形成されるフランクを有するねじ部を転造加工する一対のダイスにおける複数の突起条は、リード角の緩い区間と急な区間とを転造加工するためのステップ状突起条部および傾斜状突起条部を、放電加工用電極に設けられるステップ状放電部および傾斜状放電部による放電加工によりそれぞれ形成される。
【0015】
このとき、ねじ部の圧力側フランクに対応するダイスの複数の突起条において、ステップ状突起条部から傾斜状突起条部へ谷状に切り換わる部位である各谷状突起条部は、ダイスを放電加工するための放電加工用電極におけるステップ状放電部から傾斜状放電部へ山状に切り換わる部位である各山状放電部でもって放電加工により形成される。
【0016】
上記各山状放電部は山状に形成されるため、放電加工用電極における各ステップ状放電部および各傾斜状放電部を切削刃を用いる切削加工等でもって加工するとき、当該各山状放電部の先端部は、R形状に形成されることなく外方へ突出する角部を有するようにそれぞれ形成される。
【0017】
このように加工される放電加工用電極でもって、ダイスの転造加工面に各ステップ状突起条部および各傾斜状突起条部等を形成するために当該転造加工面を放電加工すると、上述したように各山状放電部の先端部が外方へ突出する角部を有するように形成されているので、当該転造加工面における各谷状突起条部がR形状に形成されることなく角張るように形成される。
【0018】
このように加工される一対のダイスでもって、被転造物に上述のリード角の緩い区間と急な区間とが交互に連続するように形成されるフランクを有するねじ部を転造加工すると、圧力側フランクにおけるリード角の緩い区間から急な区間へ山状に切り換わる部位である各山状ねじ部分の先端部が、R形状に形成されることなく外方へ突出する角部を有するように形成されるので、当該各山状ねじ部分が相手側部材に食い込みやすくなる。
したがって、緩み止め効果を向上させたねじ部を製造することができる。
【0019】
請求項2の発明では、放電加工用電極は、一般に転造ダイス用の素材として用いられるダイス鋼よりも強度が低い電極素材、例えば、銅合金素材の電極などで構成される。このため、放電加工用電極としてダイス鋼に対して強度が低い電極素材を使用することにより、放電加工用電極を容易に加工することができる。
【0020】
これにより、放電加工用電極の切削加工等の工程およびダイスの転造加工面の放電加工等の工程が追加されるものの、作業が困難であるダイスの転造加工面の切削加工等の工程が廃止されるので、ダイスの転造加工面を加工する作業自体が容易になり作業性が向上する。
【0021】
さらに、放電加工用電極の加工においては強度が低い電極素材を切削加工等するため切削刃等の摩耗が抑制されるので、切削刃等の摩耗に起因する放電加工用電極の形状のばらつきが抑制される。このため、この放電加工電極を用いた放電加工により形成されたダイスの転造加工面における複数の突起条の加工精度が向上し、このダイスにより転造加工されたねじ部の加工精度も向上する。
したがって、緩み止め効果を向上させるとともに加工精度を向上させたねじ部を製造することができる。
【0022】
請求項3の発明では、ステップ状突起条部によりリード角の緩い区間のリード角がゼロ(平坦)に転造加工されるように、当該ステップ状突起条部がステップ状放電部による放電加工により形成される。
【0023】
これにより、ねじ部のリード角の緩い区間のリード角がゼロになるので、当該リード角がゼロの区間では、軸方向の力がそのまま摩擦力に変化し、ねじを回そうとする分力が全く働かないから、リード角がゼロの区間の摩擦力がより強くなり、より強い緩み止め作用を奏する。
【0024】
請求項4の発明では、リード角の緩い区間と急な区間とが交互に連続するように形成されるフランクを有するねじ部を転造加工する一対のダイスの製造方法として、当該両ダイスにおける複数の突起条を、放電加工用電極に設けられるステップ状放電部および傾斜状放電部による放電加工によって、リード角の緩い区間を転造加工するためのステップ状突起条部とリード角の急な区間を転造加工するため傾斜状突起条部とが交互に連続するようにそれぞれ形成する。
このようにしても、上記請求項1記載のダイスと同等の作用効果を有するダイスを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。図1(A) は、本実施形態に係るボルト(以下、ステップロックボルト10ともいう)を示す斜視図であり、図1(B) は、図1(A) のねじ山20の拡大斜視図である。
図1(A) に示すように、ステップロックボルト10には、つるまき線に沿うように形成されるねじ山20を有するねじ部11が設けられている。ねじ山20には、ナット等の相手側部材に締結する際に、相手側部材のフランクに摺接する圧力側フランク21(図1(A) にてねじ山20の上側)と、相手側部材と離間する遊び側フランク22(図1(A) にてねじ山20の下側)とが形成されている。
【0026】
圧力側フランク21は、リード角が0(ゼロ)である区間(以下、平坦部21a)とリード角が急な区間(傾斜部21b)とが交互に連続するように形成されている。また、遊び側フランク22も、圧力側フランク21と同様に、リード角が0(ゼロ)である区間(以下、平坦部22a)とリード角が急な区間(傾斜部22b)とが交互に連続するように形成されている。
【0027】
また、図1(B) に示すように、圧力側フランク21において平坦部21aから傾斜部21bへ山状に切り換わる部位である各山状ねじ部分21cは、圧力側フランク21の平坦部21aが相手側部材に摺接する際に、当該相手側部材に食い込むことでねじの緩み止め作用を発揮する役割を果たす。
【0028】
以上のように構成されるステップロックボルト10のねじ山20は、一対の平ダイスである固定側平ダイス30および移動側平ダイス40を有する公知の転造加工装置でもって転造加工することにより形成される。ここで、固定側平ダイス30および移動側平ダイス40について、図2〜図4を参照して説明する。図2は、固定側平ダイス30および移動側平ダイス40を用いてステップロックボルト10のねじ山20を転造加工により製造する原理説明図である。図3(A) は、固定側平ダイス30の転造加工面31を側面からみた部分断面図であり、図3(B) は、固定側平ダイス30の転造加工面31を正面からみた部分正面図である。図4は、図3(A) に示す4−4線相当の切断面による断面図である。
【0029】
両平ダイス30、40は、転造に適したダイス鋼等の金属材料から略長方形の厚板状に形成されており、その対向する転造加工面31、41には、ステップロックボルト10のねじ山20を平面に展開したときの形状とほぼ反対の形状の複数の突起条32、42が、長方形の側辺に対して一定の傾斜を持った略直線状に設けられている(図2、図3及び図4の斜線部参照)。固定側平ダイス30の転造加工面31と移動側平ダイス40の転造加工面41とは、互いに線対称な形状であるから、以下、固定側平ダイス30の転造加工面31を代表して説明する。
【0030】
図3および図4に示すように、転造加工面31の各突起条32には、ねじ山20の圧力側フランク21を転造加工するため当該圧力側フランク21とほぼ反対の形状のフランク33が設けられるとともに、ねじ山20の遊び側フランク22を転造加工するため当該遊び側フランク22とほぼ反対形状のフランク34が設けられている。
【0031】
フランク33には、圧力側フランク21の平坦部21aおよび傾斜部21bとほぼ反対形状の、平坦状突起条部33aおよび傾斜状突起条部33bが、それぞれ交互に連続するように設けられている。また、フランク34には、遊び側フランク22の平坦部22aおよび傾斜部22bとほぼ反対形状の、平坦状突起条部34aおよび傾斜状突起条部34bが、それぞれ交互に連続するように設けられている。
【0032】
そして、フランク33の平坦状突起条部33aから傾斜状突起条部33bへ谷状に切り換わる各部位には、圧力側フランク21の山状ねじ部分21cとほぼ反対形状の、谷状突起条部33cがそれぞれ形成される。
【0033】
図5は、放電加工用電極50による固定側平ダイス30の転造加工面31の放電加工を説明するための概念図である。図6は、放電加工用電極50における複数の放電加工用突起条51の形状を説明する説明図である。
以上のように構成される固定側平ダイス30の転造加工面31における各突起条32は、放電加工用電極50を有する公知の放電加工装置でもって当該転造加工面31を放電加工することにより形成される(図5参照)。この放電加工用電極50は、ダイス鋼等よりも強度が弱く放電加工に適した銅合金等の金属材料(電極素材)により形成されており、当該放電加工用電極50には、固定側平ダイス30の各突起条32とほぼ反対の形状の複数の放電加工用突起条51が、長方形の側辺に対して一定の傾斜を持った略直線状に設けられている(図6斜線部参照)。
【0034】
図6に示すように、各放電加工用突起条51には、各突起条32のフランク33、34を放電加工するためこれら各フランク33、34とほぼ反対の形状のフランク52、53が設けられている。
【0035】
フランク52には、フランク33の平坦状突起条部33aおよび傾斜状突起条部33bとほぼ反対形状の、平坦状放電部52aおよび傾斜状放電部52bが、それぞれ交互に連続するように設けられている。また、フランク53には、フランク34の平坦状突起条部34aおよび傾斜状突起条部34bとほぼ反対形状の、平坦状放電部53aおよび傾斜状放電部53bが、それぞれ交互に連続するように設けられている。
【0036】
そして、フランク52の平坦状放電部52aから傾斜状放電部52bへ山状に切り換わる各部位には、フランク33の谷状突起条部33cとほぼ反対形状の、山状放電部52cがそれぞれ形成されている。
【0037】
以上のように構成される放電加工用電極50は、切削刃60を有する公知の切削加工装置により切削加工されて形成される。
【0038】
このとき、図6からわかるように、フランク52における各山状放電部52cの先端部は、平坦状放電部52aおよび傾斜状放電部52bを切削刃60でもって切削加工するとき、当該切削刃60の形状に応じてR形状に形成されることなく、外方へ突出する角部を有するように山状に形成される。
【0039】
このように加工される放電加工用電極50を採用した上記放電加工装置でもって、当該放電加工用電極50を固定側平ダイス30の転造加工面31に近接させながらこの転造加工面31を放電加工する(図5参照)。この放電加工により各突起条32の平坦状突起条部33aおよび傾斜状突起条部33b等が形成されると、各谷状突起条部33cは各山状放電部52cによりR形状に形成されることなく角張るように形成される。
【0040】
また、移動側平ダイス40の転造加工面41における各突起条42も、上述のように切削加工される放電加工用電極を採用した上記放電加工装置でもって当該転造加工面41を放電加工することにより同様に形成される。
【0041】
このように加工される固定側平ダイス30および移動側平ダイス40をその転造加工面31と転造加工面41とが所定の間隔で対向するように配置した後、転造加工面31と転造加工面41との間にステップロックボルト10を転造するための被転造物を挿入する。そして、上記転造加工装置でもって移動側平ダイス40をα方向に移動させることにより、ステップロックボルト10のねじ山20が転造加工される(図2参照)。
【0042】
このとき、圧力側フランク21における各山状ねじ部分21cの先端部は、各谷状突起条部33cによりR形状に形成されることなく外方へ突出する角部を有するように形成されるので、平坦部21aが相手側部材に摺接する際に各山状ねじ部分21cが相手側部材に食い込みやすくなる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る一対の平ダイス30、40は、平坦部21a、22aと傾斜部21b、22bとが交互に連続するように形成される両フランク21、22を有するステップロックボルト10のねじ山20を転造加工するためのダイスである。そして、固定側平ダイス30では、その転造加工面31における平坦状突起条部33aと傾斜状突起条部33bとが、放電加工用電極50に設けられる各放電加工用突起条51の平坦状放電部52aおよび傾斜状放電部52bによる放電加工によりそれぞれ形成される。
【0044】
このとき、転造加工面31において平坦状突起条部33aから傾斜状突起条部33bへ谷状に切り換わる各谷状突起条部33cは、放電加工用電極50における平坦状放電部52aから傾斜状放電部52bへ山状に切り換わる各山状放電部52cでもって放電加工により形成される。
【0045】
上記各山状放電部52cは山状に形成されるため、放電加工用電極50における各平坦状放電部52aおよび各傾斜状放電部52bを切削刃60を用いる切削加工でもって加工するとき、上記各山状放電部52cの先端部は、R形状に形成されることなく外方へ突出する角部を有するように形成される。
【0046】
このように加工される放電加工用電極50でもって、固定側平ダイス30の転造加工面31に平坦状突起条部33a、34aおよび傾斜状突起条部33b、34b等を形成するために当該転造加工面31を放電加工すると、上述したように各山状放電部52cの先端部が外方へ突出する角部を有するように形成されているので、当該転造加工面31における各谷状突起条部33cはR形状に形成されることなく角張るように形成される。また、移動側平ダイス40の転造加工面41も同様に形成される。
【0047】
このように加工される固定側平ダイス30および移動側平ダイス40でもって、ステップロックボルト10に平坦部21aと傾斜部21bとが交互に連続するように形成される圧力側フランク21を有するねじ山20を転造加工すると、圧力側フランク21の各山状ねじ部分21cの先端部が、R形状に形成されることなく外方へ突出する角部を有するように形成されるので、当該各山状ねじ部分21cが相手側部材に食い込みやすくなる。
したがって、緩み止め効果を向上させたねじ山20を製造することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る固定側平ダイス30および移動側平ダイス40を放電加工する際に使用される放電加工用電極50は、ダイス鋼よりも強度が低い電極素材、例えば、銅合金素材の電極などで構成される。このため、放電加工用電極50としてダイス鋼に対して強度が低い電極素材を使用することにより、放電加工用電極50を容易に加工することができる。
【0049】
これにより、放電加工用電極50の切削加工および両平ダイス30、40の転造加工面31、41の放電加工等の工程が追加されるものの、作業が困難である両平ダイス30、40の転造加工面31、41の切削加工等の工程が廃止されるので、両平ダイス30、40の転造加工面31、41を加工する作業自体が容易になり作業性が向上する。
【0050】
さらに、放電加工用電極50の加工においては強度が低い電極素材を切削加工するため切削刃60の摩耗が抑制されるので、切削刃60の摩耗に起因する放電加工用電極50の形状のばらつきが抑制される。このため、この放電加工用電極50を用いた放電加工により形成された両平ダイス30、40の転造加工面31、41における各突起条32、42の加工精度が向上し、両平ダイス30、40により転造加工されたねじ山20の加工精度も向上する。
したがって、緩み止め効果を向上させるとともに加工精度を向上させたねじ山20を製造することができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)固定側平ダイス30および移動側平ダイス40の転造加工面31、41における平坦状突起条部33aにより、ステップロックボルト10における圧力側フランク21の平坦部21aのリード角がゼロ(平坦)に転造加工されることに限らず、平坦状突起条部33a(ステップ状突起条部)により平坦部21aのリード角が傾斜部21bのリード角に対し十分に小さいリード角を有するよう転造加工されるように、当該平坦状突起条部33aが平坦状放電部52a(ステップ状放電部)による放電加工により形成されてもよい。
【0052】
(2)放電加工用電極50の複数の放電加工用突起条51は、切削刃60を有する上記切削加工装置により切削加工されて形成されることに限らず、例えば、研削加工等の機械加工を用いて加工するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1(A) は、本実施形態に係るステップロックボルトを示す斜視図であり、図1(B) は、図1(A) のねじ山の拡大斜視図である。
【図2】固定側平ダイスおよび移動側平ダイスを用いてステップロックボルトのねじ山を転造加工により製造する原理説明図である。
【図3】図3(A) は、固定側平ダイスの転造加工面を側面からみた部分断面図であり、図3(B) は、固定側平ダイスの転造加工面を正面からみた部分正面図である。
【図4】図3(A) に示す4−4線相当の切断面による断面図である。
【図5】放電加工用電極による固定側平ダイスの転造加工面の放電加工を説明するための概念図である。
【図6】放電加工用電極における複数の放電加工用突起条の形状を説明する説明図である。
【図7】ステップロックボルトを転造するための従来の一対の平ダイスにおける転造加工面の形状を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10…ステップロックボルト
20…ねじ山
21…圧力側フランク
21a…平坦部(リード角の緩い区間)
21b…傾斜部(リード角の急な区間)
21c…山状ねじ部分
30…固定側平ダイス
31、41…転造加工面
32、42…突起条
33、34…フランク
33a、34a…平坦状突起条部(ステップ状突起条部)
33b、34b…傾斜状突起条部
33c…谷状突起条部
40…移動側平ダイス
50…放電加工用電極
51…放電加工用突起条
52、53…フランク
52a、53a…平坦状放電部(ステップ状放電部)
52b、53b…傾斜状放電部
52c…山状放電部
60、130…切削刃
【出願人】 【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
【出願日】 平成19年6月15日(2007.6.15)
【代理人】 【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人

【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦


【公開番号】 特開2008−307583(P2008−307583A)
【公開日】 平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願番号】 特願2007−158809(P2007−158809)