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【発明の名称】 転がり軸受用外輪の製造方法及び転がり軸受
【発明者】 【氏名】小林 一登

【氏名】小山 寛

【要約】 【課題】リング状素材に割れを生じさせることなく、大きな拡径率でのローリング成形を可能として、高精度の転がり軸受用外輪を歩留りよく、且つ安定して成形することができる転がり軸受用外輪の製造方法及び転がり軸受を提供する。

【解決手段】鍛造によりリング状素材11を成形する工程と、矩形断面のままリング状素材11を所定の外径D2まで拡径する第1ローリング成形工程と、拡径された中間処理リング状素材11Aに軌道溝16を成形する第2ローリング成形工程と、によって軸受用外輪10を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状で、内周面の軸方向中間部に軌道溝を有し、所定の外径を持った転がり軸受用外輪の製造方法であって、
鍛造によりリング状素材を成形する工程と、
矩形断面のまま前記リング状素材を前記所定の外径まで拡径する第1ローリング成形工程と、
前記リング状素材に前記軌道溝を成形する第2ローリング成形工程と、
を備えることを特徴とする転がり軸受用外輪の製造方法。
【請求項2】
前記第2ローリング成形工程は、前記リング状素材の外周部をリング状の金型で拘束しながら前記軌道溝を成形することを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受用外輪の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法によって製造される外輪を有することを特徴とする転がり軸受。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受用外輪の製造方法及び転がり軸受に関し、より詳細には、ローリング成形によって拡径し、軌道溝を成形する転がり軸受用外輪の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受用外輪は、熱間鍛造、温間鍛造、或いは冷間鍛造などによってリング状素材を成形した後、このリング状素材をローリング成形によって拡径し、内周面の軸方向中間部に軌道溝を成形し、更に切削加工して製作される(例えば、特許文献1参照。)。このような鍛造及びローリング成形によって転がり軸受用外輪を製造すると、鍛造時の目抜き部の径を、製品内径よりも小さくでき、歩留りが向上することから、転がり軸受用外輪の製造に一般的に用いられている。
【0003】
従来のローリング成形による拡径及び軌道溝の成形は同時に行われており、図5に示すように、互いに並行且つ相対回転自在に支持された成形ロール1とマンドレル2との間で、鍛造成形されたリング状素材3の円周方向の一部を径方向に押圧することにより行われる。マンドレル2は、転がり軸受用外輪4の軌道溝5を形成するため、外周面の一部に軌道溝5の形状に近似した母線形状を有するリング状凸部6を有する。
【0004】
具体的には、図5(a)に示すように、リング状素材3をマンドレル2に緩く外嵌させた状態で、マンドレル2を成形ロール1に押圧しながら回転させると、リング状素材3及び成形ロール1が連れ回り回転しながら拡径し、軌道溝5が成形される。ローリング成形の初期段階においては、図5(b)に示すように、リング状素材3は、マンドレル2のリング状凸部6と成形ロール1で挟まれたリング状素材3の軸方向中心部にのみ圧縮応力が作用した状態で拡径される。そして、リング状凸部6の形状がリング状素材3にほぼ転写されると、リング状素材3の軸方向両端部がマンドレル2のリング状凸部6の両側部分に当接し、転がり軸受用外輪4が成形される(図5(c)参照)。
【特許文献1】特開2006−181638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した拡径及び軌道溝の成形が同時に行われる従来のローリング成形によると、図6に示すように、ローリング成形の初期段階においては、リング状素材3の軸方向中心部(リング状凸部6と成形ロール1で挟まれた部分)にのみ圧縮応力が作用し、リング状凸部6の軸方向両側の部分には圧縮応力が作用しない状態で拡径される。このため、圧縮応力が作用しながら拡径されるリング状素材3の軸方向の中心領域3aには割れが発生することはないが、リング状凸部6の軸方向の両側領域3bは、拡径に伴う引張応力のみが作用した状態で拡径されるため、割れが発生し易いという問題があった。従って、拡径率の大きな成形条件で成形することができず、歩留り向上のためには、更なる改善の余地があった。
【0006】
また、従来のローリング成形は、リング状素材3の外周面に対して外径寸法を決めるための拘束力が作用しないため、寸法精度が低く、後工程である切削工程での切削代を多く見込む必要があり、歩留り低下と共に、切削コストが高くなる問題点があった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、リング状素材に割れを生じさせることなく、大きな拡径率でのローリング成形を可能として、高精度の転がり軸受用外輪を歩留りよく、且つ安定して成形することができる転がり軸受用外輪の製造方法及び転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の方法により達成される。
(1) 円筒状で、内周面の軸方向中間部に軌道溝を有し、所定の外径を持った転がり軸受用外輪の製造方法であって、
鍛造によりリング状素材を成形する工程と、
矩形断面のまま前記リング状素材を前記所定の外径まで拡径する第1ローリング成形工程と、
前記リング状素材に前記軌道溝を成形する第2ローリング成形工程と、
を備えることを特徴とする転がり軸受用外輪の製造方法。
(2) 前記第2ローリング成形工程は、前記リング状素材の外周部をリング状の金型で拘束しながら前記軌道溝を成形することを特徴とする(1)に記載の転がり軸受用外輪の製造方法。
(3) (1)又は(2)に記載の製造方法によって製造される外輪を有することを特徴とする転がり軸受。
【0009】
尚、本発明で言う「転がり軸受用外輪」とは、上記第1、第2ローリング成形工程後に仕上げ加工等の後工程が行われるものも含むものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の転がり軸受用外輪の製造方法によれば、鍛造によりリング状素材を成形した後、第1ローリング成形工程によって矩形断面のままリング状素材を所定の外径まで拡径するようにしたので、矩形断面の全領域に圧縮応力を作用させながら拡径することができる。これにより、割れの発生を抑制して、大きな拡径率でのローリング成形が可能となる。
【0011】
また、第1ローリング成形工程によって所定の外径まで拡径されたリング状素材に対して、第2ローリング成形工程によって軌道溝を成形するようにしたので、軌道溝成形時の押し込みによる成形量が少なく、安定した生産が可能となる。また、第2ローリング成形工程においては拡径を伴わないので、マンドレルの外径を大きくして剛性を高めることができ、これによりマンドレルの寿命が向上すると共に、転がり軸受用外輪の寸法精度が安定する。
【0012】
また、第2ローリング成形工程において、リング状素材の外周部をリング状の金型で拘束しながら軌道溝を成形すれば、極めて寸法精度が高い転がり軸受用外輪の成形が可能となり、従来後工程とした切削加工の削減が可能となり、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る転がり軸受用外輪の製造方法及び転がり軸受の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る転がり軸受用外輪の製造方法は、第1ローリング成形工程によってリング状素材を矩形断面のまま拡径のみを行った後、第2ローリング成形工程によって拡径を伴うことなく軌道溝の成形のみを行って、転がり軸受用外輪を製造することを特徴とする。
【0015】
転がり軸受用外輪10を成形するためのリング状素材11は、高炭素クロム軸受鋼、高速度鋼、ステンレス鋼等を、熱間、温間、または冷間鍛造により鍛造成形することにより準備される。リング状素材11の断面形状は矩形であり、その外径D1及び内径d1は、製品である転がり軸受用外輪10の外径D2及び内径d2より小さく成形されている。
【0016】
このようなリング状素材11は、先ず、第1ローリング成形工程によって矩形断面のまま拡径のみが行われる。即ち、図1に示すように、リング状素材11は、互いに並行且つ相対回転自在に支持された第1成形ロール12と第1マンドレル13との間で、円周方向の一部が挟持される。第1成形ロール12の内周部及び第1マンドレル13の外周部には、それぞれ転がり軸受用外輪10の幅と略同じ幅を有する矩形溝14、15が設けられている。
【0017】
図2に示すように、リング状素材11を第1マンドレル13に緩く外嵌させた状態で第1マンドレル13を第1成形ロール12に押圧しながら回転させると、リング状素材11及び第1成形ロール12が連れ回り回転する。これにより、リング状素材11は転がり軸受用外輪10の外径D2に近似した外径まで拡径されて、中間処理リング状素材11Aが成形される。
【0018】
このとき、リング状素材11は、矩形断面のまま拡径のみが行われるので、断面の全領域に圧縮応力を作用させた状態で拡径することができ、従って、割れの発生が大幅に抑制される。このため、拡径と軌道溝とを同時に成形する従来のローリング成形と比較して、大きな拡径率でのローリング成形が可能となり、生産効率を大幅に向上させることができる。
【0019】
上記したように、第1ローリング成形工程によって矩形断面のまま所定の外径D2まで拡径のみが行われた中間処理リング状素材11Aは、第2ローリング成形工程によって拡径を伴うことなく軌道溝16の成形のみが行われて転がり軸受用外輪10が製造される。
【0020】
図3に示すように、矩形断面のまま拡径された中間処理リング状素材11Aは、その外周部17がリング状の金型であるリングダイス21に内嵌され外周部17が拘束されると共に、第2マンドレル23に緩く外嵌されセットされる。リングダイス21の内径は、転がり軸受用外輪10の外径D2と同じ寸法を有する。第2マンドレル23の外周部には、軸方向中央部に軌道溝16の形状に近似した母線形状を有するリング状凸部24が形成されている。また、第2マンドレル23は、拡径を伴うことなく溝成形のみを行うので、外形寸法を大きくすることができ、第2マンドレル23の外径D4は、第1マンドレル13の外径D3、好ましくは、鍛造成形されたリング状素材11の内径d1より大きく設定されている。これにより、第2マンドレル23の剛性が高められ、第2マンドレル23の寿命が向上すると共に、転がり軸受用外輪10を精度よく製作することができる。リングダイス21の外周部26は、第2マンドレル23と互いに並行且つ相対回転自在に支持された補助ロール22に当接してバックアップされている。
【0021】
図4に示すように、中間処理リング状素材11Aをリングダイス21に内嵌し、第2マンドレル23に緩く外嵌させた状態で第2マンドレル23をリングダイス21を介して補助ロール22に押圧しながら回転させると、中間処理リング状素材11A、リングダイス21、及び補助ロール22が連れ回り回転し、中間処理リング状素材11Aの内周部に軌道溝16が成形される。
【0022】
この第2ローリング成形工程においては、拡径を伴うことなく溝成形のみが行われるので、中間処理リング状素材11Aには引張応力が作用せず、従って割れが生じることはない。また、押し込みによる成形量が少なく、安定した成形を行うことができる。更に、中間処理リング状素材11Aは、外周部17がリングダイス21によって拘束された状態で溝成形されるので、寸法精度、真円度ともに高い精度で成形することができる。従って、従来後工程とした切削工程を削減することができ、大幅なコストダウンが達成される。
【0023】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、リング状素材の製造方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法によって成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】リング状素材が第1成形ロールと第1マンドレルによって挟持された第1ローリング成形工程の初期状態を示す断面図である。
【図2】リング状素材が矩形断面のまま拡径された第1ローリング成形工程の完了状態を示す断面図である。
【図3】第1ローリング成形工程によって拡径された中間処理リング状素材に、軌道溝が成形される第2ローリング成形工程の初期状態を示す断面図である。
【図4】第2ローリング成形工程が終了して転がり軸受用外輪が成形された状態を示す断面図である。
【図5】拡径と溝成形が同時に行われる従来のローリング成形工程を工程順に沿って示す断面図である。
【図6】図5(b)におけるVI部拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
10 転がり軸受用外輪
11 リング状素材
11A 中間処理リング状素材
16 軌道溝
17 リング状素材の外周部
21 リングダイス(リング状の金型)
D2 転がり軸受用外輪の外径(所定の外径)
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成19年5月11日(2007.5.11)
【代理人】 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平

【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳

【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光


【公開番号】 特開2008−279486(P2008−279486A)
【公開日】 平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願番号】 特願2007−126723(P2007−126723)