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【発明の名称】 歯車の転造方法および転造装置
【発明者】 【氏名】長縄 智義

【氏名】川内 範明

【要約】 【課題】ローラダイス寿命の向上と成形サイクルタイムの短縮化に好適な歯車の転造方法および転造装置を提供する。

【解決手段】転造を行なう複数の加工歯3A〜3Cを外周部に備えたローラダイス2を円板状ワークWに対して同期回転させつつ所定の押込速度でワークW外周部に押込むことにより、ワークWの外周部に対して転造を行なうにあたり、完成歯形の所望の圧力角よりも大きい圧力角の加工歯3Aを備えたローラダイス2Aにより中間段階の転造歯W2を創成する第1工程と、完成歯形の所望の圧力角の加工歯を備えたローラダイス2Bにより転造歯W2の歯底および歯面を創成する第2工程と、完成歯形の歯先領域を創成する加工歯3Cを備えたローラダイス2Cにより転造歯W2の歯先を創成する第3工程と、を備えるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転造を行う複数の加工歯を外周部に備えたローラダイスを円板状のワークに対して同期回転させつつ所定の押込速度でワーク外周部に押し込むことにより、ローラダイスの加工歯で前記円板状のワークの外周部に対して転造を行ない歯車状部材を転造する歯車の転造方法において、
先ず、完成歯形の所望の圧力角よりも大きい圧力角の加工歯を備えたローラダイスにより中間段階の転造歯を創成する第1工程と、
次いで、前記第1工程で創成した転造歯に、完成歯形の所望の圧力角の加工歯を備えたローラダイスにより転造歯の歯底および歯面を創成する第2工程と、
次いで、前記第2工程で創成した転造歯に、完成歯形の歯先領域を創成する加工歯を備えたローラダイスにより転造歯の歯先を創成する第3工程と、を備えることを特徴とする歯車の転造方法。
【請求項2】
前記第3工程のローラダイスは、主に転造歯の歯先領域に係合するよう歯丈が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の歯車の転造方法。
【請求項3】
前記第3工程は、第2工程で創成した転造歯の歯先で構成する外周の半径方向への振れに応じてローラダイス位置を調整して、転造歯の成形量を円周方向において一様にすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歯車の転造方法。
【請求項4】
前記第1工程のローラダイスの加工歯は、円弧状の歯先と比較的狭い歯底により歯元厚さの大きい山形の歯形を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の歯車の転造方法。
【請求項5】
前記第1工程に続く第2工程のローラダイスの加工歯は、第1工程のローラダイスの加工歯に対して歯先および歯底の幅を拡大して円弧状とした歯形を備え、
第1工程での転造歯の歯底を押し広げてその余肉を歯先へ押し戻すものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の歯車の転造方法。
【請求項6】
前記円板状のワークへの転造歯の創成時に転造歯の軸方向に生ずる余肉は、ローラダイスと対向する位置においてワーク若しくはワークを回転保持しているマンドレルに接して回転している側面拘束ローラに設けた円周溝の側壁にワーク外周の側面を係合させることにより加圧拘束することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の歯車の転造方法。
【請求項7】
転造を行う複数の加工歯を外周部に備えたローラダイスを一対のマンドレルにより挟持した円板状のワークに対して同期回転させつつ所定の押込速度でワーク外周部に押込むことにより、ローラダイスの加工歯で前記円板状のワークの外周部に対して転造を行ない歯車状部材とする歯車の転造装置であり、
前記ワークを挟んでローラダイスと対向するように配置されて、ローラダイスとともにワークに圧接して回転することによりローラダイスによる転造荷重をバックアップしながら転造歯形の側面に生じる余肉を円周溝の側壁により押し戻す側面拘束ローラと、
完成歯形の所望の圧力角よりも大きい圧力角の加工歯を備えて中間段階の転造歯を創成する粗創成ダイスと、完成歯形での所望の圧力角の加工歯を備えて転造歯の歯形形状を修正して完成歯形の歯底および歯面を創成する歯底・歯面創成ダイスと、完成歯形の歯先領域を創成する加工歯を備えて、前記歯底・歯面創成ダイスで創成された転造歯の歯先を修正する歯先創成ダイスと、を切換え可能としたローラダイスと、を備えることを特徴とする歯車の転造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の転造方法および転造装置に関し、特に、ローラダイスと円板状ワークとを噛み合わせて同期回転させることにより歯形を創成するようにした歯車の転造方法および転造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からローラダイスと円板状ワークとを噛み合わせて同期回転させることにより歯形を創成するようにした歯車の転造方法および転造装置は提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、転造を行なう複数の加工歯を外周部に備えたローラダイスを円板状のワークに対して同期回転させつつ所定の押込速度でワーク外周部に押込むことにより、ローラダイスの加工歯で前記円板状のワークの外周部に対して転造を行ない歯車状部材を転造する歯車の転造方法である。そして、サイクルタイムを短縮でき且つ工具寿命を長期化可能とするために、先ず、完成歯形の所望の圧力角よりも大きい圧力角の加工歯を備えたローラダイスにより中間段階の転造歯を創成する第1工程と、次いで、前記第1工程で創成した転造歯に、完成歯形の所望の圧力角の加工歯を備えたローラダイスにより転造歯の歯底の仕上げおよびインボリュート歯面を概略創成する中間工程および転造歯のインボリュート歯面を歯先も含めて仕上げ創成する仕上げ工程とからなる第2工程と、を備えるようにしている。
【特許文献1】特開2006−917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では、第2工程の仕上げ工程として、完成歯形の所望の圧力角の加工歯を備えたローラダイスにより転造歯の噛合いインボリュート歯面と歯先とを創成する構成となっているため、ローラダイスの加工歯の歯丈が高く欠けやすい形状となる結果、工具寿命が短いという不具合があると共に、創成負荷を大きくできない(耐成形負荷性が低く)ことにより、創成サイクルタイムが長くなるという不具合があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ローラダイス寿命の向上と成形サイクルタイムの短縮化に好適な歯車の転造方法および転造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、転造を行なう複数の加工歯を外周部に備えたローラダイスを円板状のワークに対して同期回転させつつ所定の押込速度でワーク外周部に押込むことにより、ローラダイスの加工歯で前記円板状のワークの外周部に対して転造を行ない歯車状部材を転造する歯車の転造方法および転造装置において、完成歯形の所望の圧力角よりも大きい圧力角の加工歯を備えたローラダイスにより中間段階の転造歯を創成する第1工程と、前記第1工程で創成した転造歯に、完成歯形の所望の圧力角の加工歯を備えたローラダイスにより転造歯の歯底および歯面を創成する第2工程と、前記第2工程で創成した転造歯に、完成歯形の歯先領域を創成する加工歯を備えたローラダイスにより転造歯の歯先を創成する第3工程と、を備えるようにした。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明では、完成歯形の成形工程として、第1工程で創成した転造歯に、完成歯形の所望の圧力角の加工歯を備えたローラダイスにより転造歯の歯底および歯面を創成する第2工程と、前記第2工程で創成した転造歯に、完成歯形の歯先領域を創成する加工歯を備えたローラダイスにより転造歯の歯先を創成する第3工程と、を備えるため、歯底・歯面加工と歯先加工とが分割されて各工程の成形負荷が軽減され、ローラダイス、特に第3工程のローラダイスの寿命を向上できると共に、歯形の成形サイクルタイムを短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の歯車の転造方法および転造装置を一実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。図1は本実施形態の歯車の転造方法を含む歯車製作の各工程を説明する工程図、図2は本実施形態の歯車の転造装置の概略図、図3〜図5は各ローラダイスの加工歯の形状を示す正面図、図6〜図8は歯車の転造過程を示す歯形説明図である。
【0009】
図1において、本実施形態の歯車の製造方法は、工程(A)に示すように、先ず、厚肉の鋼板を円形に打ち抜き加工することによりブランク材Wを製作する。次いで、工程(B)に示すように、ブランク材Wの外周部および図示しない取付ボス部等を除いてその他の部分の板厚をプレスよりなる段差成形機によりコイニング加工を施して薄肉化させる。さらに、工程(C)に示すように、スピニング加工機よりなる増肉成形機により外周部を押し潰して外周部に歯形転造可能に増肉してリム部W1を形成し、歯車転造が可能な歯車素材を得る。そして、工程(D)において、ローラダイスを工程(C)で得た歯車素材のリム部W1の外周に押し当て両者を同期回転させることにより歯車素材のリム部W1外周に転造歯形を創成する。さらに、工程(E)により、歯車のチャンファ面等の機械加工が実施されて歯車として完成させるようにしている。このチャンファ面の加工は、転造歯車が常時噛合状態で使用されるのでなく、必要時にのみスライドされて他の歯車と噛合う場合、例えば、エンジンのスタータ歯車等に使用される場合に付加される。
【0010】
前記工程(D)での歯車の転造装置は、図2に示すように、ワークWを挟圧保持して回転させる主軸として機能する一対のマンドレル1A、1Bと、マンドレル1A、1Bにより回転される歯車素材としてのワークWと同期回転しつつワークW外周に加工歯3A〜3Cを押付けてワークW外周に転造歯W2を創成するローラダイス2と、ローラダイス2と対向した位置においてマンドレル1A、1B外周に接触して連れ回り回転しつつワークW外周に創成される転造歯W2の幅方向のはみ出しを規制する側面拘束ローラ4とを備える。
【0011】
前記マンドレル1A、1Bは、加工対象となる円板状のワークWを、そのリム部W1が一方のマンドレル1A先端に嵌合させた状態で挟圧保持するよう互いに同一軸線上に位置するよう配置されて一対の主軸1を備える。前記一対の主軸1は、軸方向に進退可能に配置され、互いに先端同士を離間させて開くことでワークWを着脱可能とし、互いに接近させることによりワークWを挟圧保持可能であり、保持状態で回転駆動することでワークWを回転駆動する。
【0012】
前記ローラダイス2は、前記マンドレル1A、1Bの主軸1と平行な軸5上に軸5と共に回転するよう保持され、外周部には加工歯3A〜3Cを備える。前記軸5は、マンドレル1A、1Bの主軸1と同期して回転し且つ主軸1に対して接近離脱方向に移動可能に構成され、主軸1への接近移動によりローラダイス2の加工歯3A〜3CをワークW外周に押し当ててワークW外周を塑性変形させてワークW外周に転造歯W2を創成するよう機能する。前記ローラダイス2は、粗ダイス2A、歯底・歯面仕上げダイス2Bおよび歯先仕上げダイス2Cの順に軸上に固定して配置され、創成工程毎に横(軸方向)に移動させることにより粗ダイス2Aから歯底・歯面仕上げダイス2Bおよび歯先仕上げダイス2Cと切換えて使用する。各ダイス2A〜2CはワークWのリム部W1の幅より充分大きな幅を備えている。
【0013】
前記粗ダイス2Aは、ワークW外周に歯形の基本形状を創成する比較的加工度の高い加工を施すものであり、加工歯3Aに加わる転造負荷の最も高い加工を行なうことなる。このため、その加工歯3Aは、図3に示すように、圧力角(歯直角圧力角、くさび角度ともいう)が比較的大きく、円弧状の歯先を備え、しかも、比較的狭い歯底により歯元厚さの大きい山形の歯形を備えるよう形成している。このように歯元厚さが大きく圧力角の比較的大きい山形の加工歯3Aは、加工されるワークWとローラダイス2との歯形位相合せの機能を備え、創成時のワークW外周への押込み時に生ずる曲げ負荷に対して高い強度を備えるものとでき、高い耐久性を発揮する。また、円弧状の歯先はワークWに形成する転造歯W2とのなじみを良好として転造歯W2にまくれ込み等を生じさせないようにしている。前記圧力角は創成されたワークWの転造歯W2の内部にまくれ傷等の内部欠陥が発生しない適正な角度を試行実験などにより予め導き出して設定する。
【0014】
前記歯底・歯面仕上げダイス2Bは、粗ダイス2AによりワークW外周に創成された転造歯W2に対して、修正を加えて転造歯W2の歯底W3・インボリュート歯面W4のプロフィールを決定するものである。このため、その加工歯3Bは、図4に示すように、創成される転造歯が製品形状と同一の圧力角を形成するための圧力角を備え且つ歯先および歯底の幅を拡大した円弧状として備え、ワークW外周に創成される転造歯W2のインボリュート歯面W4および歯元幅を製品形状と同一形状に形成させるようにしている。なお、この加工歯3Bの歯底は転造歯W2の歯先に相当する部位と相対するが、転造歯W2の歯先を逃げた形状に形成されて、創成時に転造歯W2の歯先形状を創成するものではない。ワークW外周の粗ダイス2Aにより創成された転造歯形は、歯底・歯面仕上げダイス2Bにより歯底部が拡幅され、その余肉がインボリュート歯面W4および歯先に押し出されてインボリュート歯面W4および歯先W5を拡幅させるよう修正される。
【0015】
前記歯先仕上げダイス2Cは、歯底・歯面仕上げダイス2Bにより創成された転造歯W2の歯先に対して、最終修正を加えてインボリュート歯面W4に連なる歯先部分を製品形状と同一形状にするものである。このため、その加工歯3Cは、図5に示すように、製品形状とは歯先と歯底とが入れ替わっているが、創成される製品形状の歯先部分と同一形状を備えるが、製品形状をなすインボリュート歯面W4とは、その先端側において若干の寸法においてのみ噛合うように、その歯丈が低く形成されている。図示例では、転造歯W2の歯先をより平坦にするよう、加工歯3Cの歯底面の形状を顕著に変更している。
【0016】
前記側面拘束ローラ4は、前記ローラダイス2と対向した位置においてマンドレル1A、1B外周に接触してマンドレル1A、1Bにより連れ回り回転されるよう配置され、ローラダイス2からワークWに加えられる転造荷重を主軸1と共に受止める。側面拘束ローラ4の外周には、転造歯車Wのリム部W1と同一幅に形成した円周溝4Aを備え、円周溝4AをワークW外周のリム部W1に係合させることによりワークWのリム部W1にローラダイス2により転造歯形が創成される際に転造歯形の幅方向へはみ出した余肉をリム部W1側へ戻してワークWのリム形状を整えるように機能する。
【0017】
以上の構成の歯車の転造装置による歯車の転造方法について以下に説明する。
【0018】
先ず、転造装置の離反している左右のマンドレル1A、1B間に、工程(C)で成形した歯車素材のリム部W1をいずれか一方のマンドレル1A先端に嵌合させ、左右のマンドレル1A、1Bを前進させ、リム部W1の内周側をマンドレル1A、1Bの先端同士により挟圧してワークWを保持させる。次いで、側面拘束ローラ4の円周溝4Aとマンドレル1A、1Bに保持されたワークWのリム部W1との軸方向位置を合せて、側面拘束ローラ4の外周をマンドレル1A、1B外周に押し当て、側面拘束ローラ4の円周溝4A内にワークWのリム部W1を嵌合させる。
【0019】
次いで、マンドレル1A、1Bを回転駆動させる。マンドレル1A、1Bの回転により保持されたワークWが回転されると共にマンドレル1A、1Bに接している側面拘束ローラ4も回転される。ワークWのリム部W1は側面拘束ローラ4の円周溝4Aにその一部を入り込ませつつ回転する。
【0020】
次いで、粗ダイス2Aの加工歯3AがワークWのリム部W1と重なるようローラダイス2を軸方向に位置合せし、図2に示すように、粗ダイス2AをワークWのリム部W1外周に押し当てて押込んでゆく。リム部W1外周は粗ダイス2Aの加工歯3Aとの噛合いにより、外周が加工歯3Aと係合する部分で窪まされ、その余肉が残余の部分で盛上げられて創成されてゆく。
【0021】
押込み初期においては、加工歯3AとワークWとの接触が断続的に行われるため、転造荷重の発生が間歇的となり、振動が発生しやすいため、押込み速度を高めて、早めに連続的な接触へ移行することが望ましい。また、加工歯3Aによるリム部W1外周への転造加工は、リム部W1の側方(軸方向)への余肉のはみ出しを伴い、はみ出した余肉はリム部W1が側面拘束ローラ4の円周溝4Aと係合する際に円周溝4Aによりリム部W1内方に押し戻される。
【0022】
粗ダイス2Aの押込み量が規定された位置に達した段階(加工歯3Aのピッチ円とワークWに創成された転造歯車のピッチ円とが互いに接触して回転している段階)で押込みを停止させ、次いで、ローラダイス2をワークWから離反させると、粗ダイス2Aにより創成されたリム部W1外周には、図6に示すように、粗ダイス2Aの加工歯3Aと同様の輪郭を備えた転造歯W2が形成(転写)される。
【0023】
次に、ローラダイス2の歯底・歯面仕上げダイス2Bの加工歯3BがワークWのリム部W1と重なるようローラダイス2を軸方向に位置合せし、歯底・歯面仕上げダイス2BをワークWのリム部W1外周に押し当てて押込んでゆく。歯底・歯面仕上げダイス2Bの加工歯3Bの歯先はリム部W1外周の転造歯W2の歯底W3と、また、加工歯3Bの歯底はリムW1外周の転造歯W2の歯先W5と、夫々噛合う。
【0024】
さらに、歯底・歯面仕上げダイス2Bを押込むと、加工歯3Bの歯先によりリム部W1外周の転造歯W2の歯底部分に食い込み、歯底W3を拡大させると共にその余肉がリムW1外周の転造歯W2の歯先W5側にせり上げられ、歯先W5を太らせてゆく。また、加工歯3Bによる転造加工によりリム部W1の側方(軸方向)へはみ出した余肉はリム部W1が側面拘束ローラ4の円周溝4Aと係合する際に円周溝4Aによりリム部W1内方に押し戻される。
【0025】
そして、加工歯2Bの図示しないピッチ円とワークWに創成された転造歯W2の図示しないピッチ円とが互いに接触して回転する状態となる歯底・歯面仕上げダイス2Bの押込み量が規定された位置に達した段階では、リム部W1外周の転造歯W2の歯底W3が予め規定された量まで窪ませられて転造歯W2の歯底W3が製品形状と同一形状に形成される。同時に、その歯底W3である窪みの形成によりはみ出した余肉が転造歯W2のインボリュート歯面W4を予め設定した歯面形状に太らせると共に、インボリュート歯面形状を形成するに余分となった余肉は転造歯W2の歯先にはみ出し、歯先W5を予め設定した太さに太らせる。また、粗ダイス2Aにより形成された転造歯W2の歯先W5の先端も歯底・歯面仕上げダイス2Bの加工歯3Bの歯底により押し潰されて押し戻され、前記余肉と共に新たな歯先W5を形成する。
【0026】
この段階で、押込みを停止させ、次いで、ローラダイス2をワークWから離反させると、歯底・歯面仕上げダイス2Bにより創成されたリム部W1外周には、図7に示すように、歯底・歯面仕上げダイス2Bの加工歯3Bと同様の輪郭を備えた転造歯W2が形成(転写)される。得られた転造歯W2は、その歯先W5部分の形状を除いて、製品形状と同様の形状を備えた歯底W3とインボリュート歯面W4形状を備える歯車形状を備える。得られた転造歯W2の歯先W5は、その形状が製品形状とは一致されていないが、そのボリュームのみは製品形状の歯先W5のボリュームと一致されるよう形成される。
【0027】
この創成工程において、粗ダイス2Aの加工歯3Aの圧力角が適正な圧力角から小さい側にずれた場合や大きい側にずれた場合には、歯底・歯面仕上げダイス2Bの加工歯3Bによる転造歯W2の創成時に、インボリュート歯面W4領域と歯底領域との境界部分やインボリュート歯面W4領域と歯先W5領域との境界部分において、転造歯W2の表面部分が歯面W4内部にまくれ込み、いわゆる「まくれ傷」という内部欠陥となって、歯車としての使用時に歯面剥離の原因となる。したがって、粗ダイス2Aの加工歯3Aの圧力角は創成されたワークWの転造歯W2の内部にまくれ傷等の内部欠陥が発生しない適正な角度を試行実験などにより予め導き出して設定する必要がある。
【0028】
次に、ローラダイス2の歯先仕上げダイス2Cの加工歯3CがワークWのリム部W1と重なるようローラダイス2を軸方向に位置合せし、歯先仕上げダイス2CをワークWのリム部W1外周に押し当てて押込んでゆく。さらに、歯先仕上げダイス2Cを押込むと、加工歯3Cの歯底によりリム部W1外周の転造歯W2の歯先W5部分の形状が修正され、歯先W5を成形してゆく。また、加工歯3Cによる転造加工によりリム部W1の側方(軸方向)へはみ出した余肉はリム部W1が側面拘束ローラ4の円周溝4Aと係合する際に円周溝4Aによりリム部W1内方に押し戻される。
【0029】
そして、加工歯3Cの図示しないピッチ円とワークWに創成された転造歯W2の図示しないピッチ円とが互いに接触して回転する状態となる歯先仕上げダイス2Cの押込み量が規定された位置に達した段階では、リム部W1外周の転造歯W2の歯先W5が予め規定された幅まで膨らまされ予め設定した歯先幅となる。この段階で、押込みを停止させ、次いで、ローラダイス2をワークWから離反させると、仕上げダイス2Cにより創成されたリム部W1外周には、図8に示すように、仕上げダイス2Cの加工歯3Cと同様の輪郭を備えた転造歯W2が形成(転写)される。
【0030】
ところで、この歯先仕上げダイス2Cによる創成加工においては、図9に示すように、加工される転造歯W2の外周歯先面の半径方向への振れ量を検出する外周振れ検出センサ10を設けると共に、コントローラ11は前記外周振れ検出センサ10よりの検出値に基づいて、ローラダイス2の加工歯3Cを備える歯先仕上げダイス2Cのワークとしての転造歯W2に対する押付け位置を調整可能としている。
【0031】
即ち、転造歯W2の外周径が大きくなる領域では歯先仕上げダイス2Cの押付け位置を前記外周径が大きくなる差分を限度として後退させ、転造歯W2の外周径が小さくなる領域では歯先仕上げダイス2Cの押付け位置を前記外周径が小さくなる差分を限度として前進させるよう、歯先仕上げダイス2Cの押付け位置を調整するようにしている。なお、検出角度位置と歯先仕上げダイス2Cによる創成角度位置とのズレ(図示例では、角度180度より若干小さい角度)に対応して、歯先仕上げダイス2Cの押付け位置の制御は、検出部位が回転し成形部位へ到達した時に、転造歯W2の外周振れ量を基にローラダイス2の位置を変更し成形量が一定となるようにする。
【0032】
このように、歯先仕上げダイス2Cによる創成加工においては、歯先仕上げダイス2Cの押付け位置を、予め設定したピッチサークル通りの位置に達するまで円周方向一様に押付けるのではなく、創成される転増歯W2の半径方向寸法が許容される範囲内において微調整するようにしている。即ち、歯先仕上げダイス2Cによる転造歯W2への成形量が一定となる方向に調整している。
【0033】
例えば、転造歯W2の外周径が大きくなる領域において、予め設定したピッチサークル通りの位置に達するまで円周方向一様に押付ける場合には、歯先仕上げダイス2Cの創成加工により、図10に示すように、転造歯W2の歯先面に連なるインボリュート歯面W4形状が本来のインボリュート形状より膨らむ結果となり、形状精度のよい歯車形状が得られないこととなる。
【0034】
しかしながら、前記したように歯先仕上げダイス2Cによる成形量を円周方向一様にすることにより、転造歯W2の内周側に連なるインボリュート歯面W4の形状が、製品形状(歯底・インボリュート歯面仕上げダイス2Bによる成形形状)の状態から、歯先形状の成形時における成形量に影響されて、変形されることを抑制することができる。このため、形状精度のよい歯車形状を得ることができる。
【0035】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0036】
(ア)転造を行なう複数の加工歯3A〜3Cを外周部に備えたローラダイス2を円板状のワークWに対して同期回転させつつ所定の押込速度でワークW外周部に押込むことにより、ローラダイス2の加工歯3で前記円板状のワークWの外周部に対して転造を行ない歯車状部材を転造するにあたり、完成歯形の所望の圧力角よりも大きい圧力角の加工歯3Aを備えたローラダイス2Aにより中間段階の転造歯W2を創成する第1工程と、前記第1工程で創成した転造歯W2に、完成歯形の所望の圧力角の加工歯を備えたローラダイス2Bにより転造歯W2の歯底W3および歯面W4を創成する第2工程と、前記第2工程で創成した転造歯W2に、完成歯形の歯先W5領域を創成する加工歯3Cを備えたローラダイス2Cにより転造歯W2の歯先W5を創成する第3工程と、を備える。このため、歯底・歯面加工と歯先加工とが分割されて各工程の成形負荷が軽減され、ローラダイス2、特に第3工程のローラダイス2Cの寿命を向上できると共に、歯形の成形サイクルタイムを短縮することができる。
【0037】
(イ)第3工程のローラダイスである歯先創成ダイス3Cは、主に転造歯W2の歯先領域に係合するよう歯丈が設定されていることにより、その制作費を低減することができると共に工具寿命を向上させることができる。
【0038】
(ウ)第3工程である歯先創成は、第2工程である歯底・歯面創成ダイス2Bにより歯底W3・歯面W4が創成された転造歯W2の歯先W5で構成する外周の半径方向への振れに応じてローラダイス位置を調整して、転造歯W2の成形量を円周方向において一様にすることにより、転造歯W2のインボリュート歯面W4の変形を抑制でき、形状精度の高い歯車部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態を示す歯車の転造方法を含む歯車製作の各工程を説明する工程図。
【図2】同じく本実施形態の歯車の転造装置の概略図。
【図3】ローラダイスの粗加工歯の形状を示す正面図。
【図4】ローラダイスの歯底・歯面を創成する加工歯の形状を示す正面図。
【図5】ローラダイスの歯先を創成する加工歯の形状を示す正面図。
【図6】粗加工歯により創成された転造歯の形状を示す正面図。
【図7】歯底・歯面の加工歯により創成された転造歯の形状を示す正面図。
【図8】歯先の加工歯により創成された転造歯の形状を示す正面図。
【図9】歯先の加工歯による創成方法を示す説明図。
【図10】歯先の加工歯による成形荷重を増加させた場合の歯面の変形状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0040】
W ワーク
W1 リム部
W2 転造歯
1 主軸
1A、1B マンドレル
2 ローラダイス
2A 粗ダイス(第1工程のローラダイス)
2B 歯底・歯面仕上げダイス(第2工程のローラダイス)
2C 歯先仕上げダイス(第2工程のローラダイス)
3A〜3C 加工歯
4 側面拘束ローラ
4A 円周溝
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成19年3月20日(2007.3.20)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜

【識別番号】100114236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 正弘

【識別番号】100120178
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 康成

【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭


【公開番号】 特開2008−229665(P2008−229665A)
【公開日】 平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願番号】 特願2007−73191(P2007−73191)