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【発明の名称】 転造ダイス
【発明者】 【氏名】梅林 義弘

【氏名】渡辺 儀高

【要約】 【課題】ブランクを導入する際に、ブランクの滑りを簡易に防止して、おねじの加工の精度を向上させることができる転造ダイスを提供すること。

【解決手段】ロータリー式ロータリー式ねじ転造ダイス1のセグメントダイス20に関し、このセグメントダイス20の食い付き部22の加工歯21aの頂部21b側に山払い面25が形成され、この山払い面25は仕上げ部23から離間するに従って漸増するように設定されている。この山払い面25によりブランクBとセグメントダイス20の食い付き部22における加工歯21aとブランクBとの接触面積を始端側で最大とすることができる。これにより、食い付き部22の始端側で加工歯21aとブランクBとの接触抵抗を大きくしてブランクBの滑りを簡易に防止し、おねじの加工の精度を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸が挿入される軸孔を備える円筒状の丸ダイスと、該丸ダイスの外側に所定の隙間を保持した状態で配設される円弧状のセグメントダイスとを備え、前記セグメントダイスと丸ダイスとは複数の加工歯が設けられた転造歯形面を備えるとともに、前記丸ダイスとセグメントダイスとの間の隙間に被加工部材であるブランクを挟持した状態で前記軸を中心として前記丸ダイスを回転させ、前記丸ダイスとセグメントダイスとに設けられる転造歯形面によって前記ブランクの外周面を塑性変形させてブランクにおねじを有するねじ部品を転造する転造ダイスにおいて、
前記セグメントダイスの転造歯形面は、食い付き部、仕上げ部および逃げ部を備え、
前記食い付き部の加工歯は山払いにより形成される山払い面を備え、
前記山払い面の面積を仕上げ部から離間するに従って漸増させたことを特徴とする転造ダイス。
【請求項2】
前記山払いが施された後の食い付き部を円弧状に形成し、山払い後の食い付き部を山払い前の食い付き部より大径に設定することを特徴とする請求項1記載の転造ダイス。
【請求項3】
前記山払いが施される前の食い付き部を仕上げ部と同径に設定し、山払いが施された後の食い付き部を仕上げ部より大径に設定することを特徴とする請求項2記載の転造ダイス。
【請求項4】
前記山払いは前記軸と平行に食い付き部の加工歯を削除することにより施されることを特徴とする請求項3記載の転造ダイス。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、転造ダイスに関し、特に、ロータリー式転造ダイスにブランクを導入する際に、ブランクの滑りを簡易に防止して、おねじの加工の精度を向上させると共に、セグメントダイスの交換回数を減少させることができる転造ダイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
転造ダイスは、円柱状のねじブランク(ブランクB)の外周面を塑性変形させておねじ等を有した軸状部材(例えば、ねじ部品)を形成する工具であり、例えば、JIS規格B4501(ねじ転造丸ダイス)やJIS規格B4502(ねじ転造平ダイス)に規格されている。例えば、図4に示すような丸ダイス110とセグメントダイス120とを備えたロータリー式ねじ転造ダイス100が使用されている。
【0003】
丸ダイス110の外周面には転造歯形面111が形成され、この転造歯形面111にはブランクBに転造されるおねじに適合した複数の加工歯111aが設けられる。この加工歯111aは頂部111bを頂点とする山形に形成され、頂部111bから離間する谷底部111cを有している。一方、丸ダイス110の外周面の外側には、所定の隙間を保持した状態でセグメントダイス120が配設されている。セグメントダイス120は、上記の丸ダイス110と共にブランクBを挟持して、そのブランクBの外周面を塑性変形させておねじを有するねじ部品を転造する部材であり、丸ダイス110と同様に、転造に適した合金工具鋼又は高速度工具鋼等の金属材料で略円弧状に形成されている。
【0004】
セグメントダイス120の内周面には転造歯形面121が形成され、この転造歯形面121にはブランクBに転造されるおねじに適合した複数の加工歯121aが設けられる。この加工歯121aは頂部121bを頂点とする山形に形成され、頂部121bから離間する谷底部121cを有している。丸ダイス110が軸孔200に挿入される主軸400を中心として回転することにより、セグメントダイス120の加工歯121a及び丸ダイス110の加工歯111aによって、丸ダイス110とセグメントダイス120とに挟持されたブランクBの外周面におねじが転造されるのである。
【0005】
このセグメントダイス120には、ブランクBがまず接触する箇所である食い付き部122、ブランクBにおねじを仕上げる仕上げ部123及び加工されたブランクBを排出する逃げ部124が形成される。円弧状に形成されるこれらの食い付き部122、仕上げ部123及び逃げ部124は一般的にそれぞれ異なる径で形成される。
【0006】
詳述すると、真円形状に形成される丸ダイス110の半径(丸ダイス10の中心から加工歯111aの頂部111bまでの距離)をrとし、円弧状に形成される食い付き部122の半径(食い付き部122の円弧の中心から加工歯121aの頂部121bまでの距離)をr1とし、円弧状に形成される仕上げ部123の半径(仕上げ部123の円弧の中心から加工歯121aの頂部121bまでの距離)をr2とし、円弧状に形成される逃げ部124の半径(逃げ部124の円弧の中心から加工歯121aの頂部121bまでの距離)をr3とし、r=r2<r1<r3となるようにセグメントダイス120が形成される。
【0007】
即ち、この食い付き部122における丸ダイス110とセグメントダイス120との間に形成される隙間が、仕上げ部123における丸ダイス110とセグメントダイス120との間に形成される隙間と比べて大きくなるように形成され、逃げ部124における丸ダイス110とセグメントダイス120との間に形成される隙間と比べて小さくなるように形成されていた。
【0008】
なお、セグメントダイス120全体に対して、食い付き部122が60〜70%、仕上げ部123が20〜30%及び逃げ部124が10%の割合になるように設定されていた。また、食い付き部122における加工歯121aの頂部121b側が仕上げ部123及び逃げ部124における加工歯121aの頂部121b側と同形状に加工されていた。
【特許文献1】特開平2−46940(4頁2段落、第9図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、セグメントダイス120の食い付き部122における加工歯121aの頂部121b側が尖形状に形成されると、転造初期において食い付き部122における加工歯121aの尖形状の頂部121b側がブランクBとまず接触するため、ブランクBがセグメントダイス120の加工歯121aと接触する面積が小さくなる。従って、転造初期において食い付き部122における加工歯121aの頂部121b側とブランクBとが接触する際に滑りが発生するという問題点があった。
【0010】
更に、このように滑りが発生してしまうと、転造後のボルト谷底に重なりが発生し、加工不良が生じるという問題点もあった。
【0011】
加えて、重なりが発生する頻度によって転造ダイス100の寿命を判断しているため、転造ダイス100の交換回数が増加するという問題点もあった。
【0012】
一方、特許文献1に開示されるように、セグメントダイスの食い付き部における凹凸の凸部の頂面のうちの一部または全部の表層部に放電処理加工による硬化層を形成して食い付き部の滑りを防止することも考えられる。しかしながら、放電処理加工が別途必要となり、セグメントダイスの製造工程が煩雑化するとともにコストが嵩むという問題点があった。
【0013】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ロータリー式転造ダイスにブランクを導入する際に、ブランクの滑りを簡易に防止して、おねじの加工の精度を向上させると共に、その交換回数を減少させることができる転造ダイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するために、請求項1記載の転造ダイスは、主軸が挿入される軸孔を備える円筒状の丸ダイスと、該丸ダイスの外側に所定の隙間を保持した状態で配設される円弧状のセグメントダイスとを備え、前記セグメントダイスと丸ダイスとは複数の加工歯が設けられた転造歯形面を備えるとともに、前記丸ダイスとセグメントダイスとの間の隙間に被加工部材であるブランクを挟持した状態で前記軸孔を中心として前記丸ダイスを回転させ、前記丸ダイスとセグメントダイスとに設けられる転造歯形面によって前記ブランクの外周面を塑性変形させてブランクにおねじを有するねじ部品を転造するものであり、前記セグメントダイスの転造歯形面は、食い付き部、仕上げ部および逃げ部を備え、前記食い付き部の加工歯は山払いにより形成される山払い面を備え、前記山払い面の面積を仕上げ部から離間するに従って漸増させている。
【0015】
請求項2記載の転造ダイスは、請求項1記載の転造ダイスにおいて、前記山払いが施される前の食い付き部を仕上げ部と同径に設定し、山払いが施された後の食い付き部を仕上げ部より大径に設定している。
【0016】
請求項3記載の転造ダイスは、請求項2記載の転造ダイスにおいて、前記山払いが施される前の食い付き部を仕上げ部と同径に設定し、山払いが施された後の食い付き部を仕上げ部より大径に設定している。
【0017】
請求項4記載の転造ダイスは、請求項3記載の転造ダイスにおいて、前記山払いは前記軸孔と平行に食い付き部の加工歯を削除することにより施されている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の転造ダイスによれば、食い付き部の加工歯に山払いを施すことにより山払い面を形成し、この山払い面により食い付き部における加工歯の頂部側の面積を増加させて食い付き部とブランクとが接触する面積を増加させたので、食い付き部における加工歯とブランクとの接触抵抗を大きくして滑りの発生を防止することができるという効果がある。
【0019】
また、請求項1記載の転造ダイスによれば、この山払い面の面積を仕上げ部から離間するに従って漸増させているので、ブランクを導入する際に食い付き部における加工歯とブランクとの接触面積をもっとも大きくして接触抵抗を最大とすることができ、滑りがもっとも発生するブランクの導入時において滑りが発生することを効果的に防止できるという効果がある。
【0020】
更に、滑りの発生を防止することにより、転造後のボルト谷底に重なりが発生することを防止しておねじ加工の精度を向上させることができるという効果がある。よって、ボルト谷底に発生する重なりの頻度により行われる転造ダイスの交換回数を減少させることができるという効果がある。
【0021】
請求項2記載の転造ダイスによれば、請求項1記載の転造ダイスの奏する効果に加え、山払いが施された後の食い付き部を円弧状に形成した、即ち食い付き部を円弧状に山払いしたので、食い付き部を直線状に山払いするよりも、山払い面の面積変化を緩やかとすることができ、この食い付き部から円弧状に形成される仕上げ部へと移行する際の被転造素材の変形過程の繋がりが良くなり、歯形の精度が向上するという効果がある。
【0022】
また、請求項2記載の転造ダイスによれば、山払い後の食い付き部を山払い前の食い付き部より大径に設定するので、セグメントダイスにおける食い付き部の占める割合を変えることなく、食い付き部の長さを長くすることができ、セグメントダイスに効率よく転造歯形面を形成することができるという効果もある。
【0023】
請求項3記載の転造ダイスによれば、請求項2記載の転造ダイスの奏する効果に加え、通常、仕上げ部より大径に形成される食い付き部を仕上げ部と同径に設定するため、山払い前の食い付き部から仕上げ部まで同じ円弧状で形成でき、セグメントダイスを簡易に形成することができるという効果がある。
【0024】
請求項4記載の転造ダイスによれば、請求項3記載の転造ダイスの奏する効果に加え、前記山払いは丸ダイスの軸孔と平行に食い付き部の加工歯を削除することにより施されるので、ブランクの軸方向において各加工歯の高さを一致させることができる。このように各加工歯の高さが一致することにより、ブランクを丸ダイスの軸孔と平行に支持することができ、ブランクの倒れがなく、倒れによる加工不良の発生を防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例であるロータリー式ねじ転造ダイス1の設置状態を示す正面図である。尚、図1中の矢印Rは、丸ダイス10の軸孔2に挿入される主軸4の回転方向、即ち、丸ダイス10の回転方向を示している。
【0026】
まず、図1を参照して、ロータリー式ねじ転造ダイス1の全体構成について説明する。ロータリー式ねじ転造ダイス1はブランクBの外周面を塑性変形させておねじを有するねじ部品を転造するための工具であり、丸ダイス10とセグメントダイス20とを備えている。
【0027】
図1に示すように、丸ダイス10は、丸ダイス10の軸孔2に転造盤3に設けられた主軸4が挿入されることにより、転造盤3に固定されている。この主軸4は、駆動モータ及び減速機により構成された駆動装置(図示せず)により、矢印R方向、即ち、反時計方向へ回転されるように構成されており、この主軸4の回転により、丸ダイス10が図1の矢印R方向へ回転駆動されるのである。
【0028】
図1に示すように、丸ダイス10の外周面より外側には、セグメントホルダ5により保持されたセグメントダイス20が所定の隙間を保持した状態で配設されている。セグメントダイス20は丸ダイス10と共にブランクBを挟持してそのブランクBの外周面を塑性変形させておねじを有するねじ部品を転造する部材であり、転造に適した合金工具鋼又は高速度工具鋼等の金属材料で略円弧状に形成されている。
【0029】
セグメントダイス20の内周面には、ブランクBに転造されるおねじに適合した転造歯形面21が形成されており、この転造歯形面21及び丸ダイス10の転造歯形面11によって、両ダイス10,20に挟持されたブランクBの外周面におねじが転造されるのである。
【0030】
図示しないブランク供給装置から供給されたブランクBは、丸ダイス10とセグメントダイス20との間に形成される隙間へ送り込まれる。この送り込まれたブランクBは、軸孔2による丸ダイス10の回転に伴って、セグメントダイス20の内周面に沿って丸ダイス10の回転方向と反対方向(図1では時計方向)へ回転されつつ、丸ダイス10の回転方向へ移送される。かかる移送に伴って、ブランクBの外周面は、丸ダイス10の転造歯形面11とセグメントダイス20の転造歯形面21とにより塑性変形されて、おねじが形成されるのである。
【0031】
次に、丸ダイス10について説明する。図2は、本実施例におけるロータリー式ねじ転造ダイス1の正面図である。
【0032】
丸ダイス10は、上述した転造盤3に設けられた主軸4に係合され、ブランクBの外周面を塑性変形させておねじを転造するためのものであって、この丸ダイス10は、転造に適した合金工具鋼又は高速度工具鋼等の金属材料で円筒状(輪状)に形成されている。
【0033】
丸ダイス10の外周面全周には、上述したように、転造歯形面11が設けられており、この転造歯形面11にはブランクBに転造されるおねじに対応する複数の加工歯11aが形成されている。この複数の加工歯11aを転造歯形面11の正面視で斜め方向に延出させて設け、各加工歯11aは頂部11bと谷底部11cとを備えている。
【0034】
各加工歯21aは丸ダイス10の径方向での断面形状において頂部11b側が尖形状に形成される山形状に形成されるとともに、おねじの山形状を形成する谷底部11cは最も低い位置に形成され、この谷底部11cを介して隣接する加工歯11aはV字状に連続して形成されている。この加工歯11aの頂部11bと谷底部11cとにより、丸ダイス10の転造歯形面11はブランクBの外周面に山形状を加工することができるのである。また、この転造歯形面11はブランクBのおねじの長さと同じ長さ(図2紙面垂直方向)で形成される。
【0035】
次に、図2を参照して、セグメントダイス20について説明する。セグメントダイス20は、丸ダイス10の転造歯形面11との間でブランクBの外周面を塑性変形させておねじを転造するためのものであって、その内周面には転造歯形面21が設けられる。この転造歯形面にはブランクBに転造されるおねじに対応する複数の加工歯21aが形成されている。この複数の加工歯21aを転造歯形面21の正面視で斜め方向に延出させて設け、各加工歯21aは頂部21bと谷底部21cとを備えている。
【0036】
各加工歯21aは丸ダイス10の径方向での断面形状において頂部21b側が尖形状に形成される山形状に形成されるとともに、ボルトの谷底を形成する谷底部21cは最も低い位置に形成され、この谷底部21cを介して隣接する加工歯21aはV字状に連続して形成されている。この加工歯21aの頂部21bと谷底部21cとにより、セグメントダイス20の転造歯形面21はブランクBの外周面に山形状を加工することができるのである。また、この転造歯形面21は丸ダイス10の転造歯形面11と同様にブランクBのおねじの長さと同じ長さ(図2紙面垂直方向)で形成される。
【0037】
その転造歯形面21には、転造方向(図1右側から左側)へ向けて、食付き部22、仕上げ部23および逃げ部24が順に連続して設けられている。本発明では食い付き部22に山払いが施されるが、まず山払いする前の状態のセグメントダイス20について説明する。
【0038】
食い付き部22は、セグメントダイス20の転造歯形面21をブランクBにおける外周面に食い付かせる為の部位である。
【0039】
真円形状に形成される丸ダイス10の半径(丸ダイス10の中心から加工歯11aの頂部11bまでの距離)をRとし、円弧状に形成される食い付き部22の半径(食い付き部22の円弧の中心から加工歯21aの頂部21bまでの距離)をR1とし、円弧状に形成される仕上げ部23の半径(仕上げ部23の円弧の中心から加工歯21aの頂部21bまでの距離)をR2とし、R=R2=R1となるようにセグメントダイス20が形成される。
【0040】
即ち、食い付き部22に山払いが施される前においては、丸ダイス10とセグメントダイス20との間に形成される隙間が仕上げ部23と食い付き部22とで同じになるように、セグメントダイス20が形成される。なお、食い付き部22の円弧の中心と仕上げ部23の円弧の中心は同一に設定されている。
【0041】
このように仕上げ部23と食い付き部22とを同じ径で形成することができるので、円弧状の仕上げ部23を延長させるだけで食い付き部22を形成することができ、セグメントダイス20の形状が簡略化され、セグメントダイス20の転造歯形面21の形成が容易となる。この食い付き部22には、山払いが施されるが、この山払いが施された食い付き部22の詳細については、後述する。
【0042】
仕上げ部23は、食付き部22によりブランクBの外周面に転造されたおねじを仕上げて、おねじをブランクBへ成形する部位であり、仕上げ部23における加工歯21aの外形が丸ダイス10の加工歯11aの外形と同一に形成されている。即ち、R=R2となるようにセグメントダイス20が形成されている。この仕上げ部23の終端には、逃げ部24が設けられている。
【0043】
逃げ部24は、仕上げ部23により仕上げられたブランクBをロータリー式ねじ転造ダイス1の転造歯形面11,21から排出するための部位である。円弧状に形成される逃げ部24の半径(逃げ部24の円弧の中心から加工歯21aの頂部21bまでの距離)をR3とすると、R2<R3となるようにセグメントダイス20が形成され、ねじ山が転造されたブランクBをロータリー式ねじ転造ダイス1から排出させている。
【0044】
次に、山払いが施された食い付き部22について詳述する。図3はセグメントダイス20の食い付き部22における拡大図である。
【0045】
食い付き部22は、始端側から終端側にかけて丸ダイス10の軸孔2と平行であって円弧状に内径円筒研磨を加えることで食い付き部22の加工歯21aの頂部21b側に山払い面25が形成され、この山払い面25は仕上げ部23から離間するに従って漸増するように設定されている。
【0046】
従って、この山払い面25によって、ブランクBとセグメントダイス20の食い付き部22における加工歯21aとブランクBとの接触面積が始端側で最大となり、終端側で仕上げ部23の加工歯21aの頂部21bと同様に最小となるように転造歯形面21が形成されている。
【0047】
このように食い付き部22の始端側でセグメントダイス20の加工歯21aとブランクBとの接触面積が最大となるので、食い付き部22の始端側で加工歯21aとブランクBとの接触抵抗が最大となり、接触抵抗を大きくすることができる。このように接触抵抗を大きくすることで、セグメントダイス20の食い付き部22における各加工歯21aでブランクBを確実に保持することができ、ブランクBと食い付き部22における各加工歯21aとが接触する際に発生する滑りを防止することができる。
【0048】
更に、ブランクBと食い付き部22における各加工歯21aとが接触する際に発生する滑りの発生を防止することにより、転造後のボルト谷底に重なりが発生することを防止しておねじ加工の精度を向上させることができる。よって、ボルト谷底に発生する重なりの頻度により行われる転造ダイス1の交換回数を減少させることができる。
【0049】
また、この山払い面25は仕上げ部23から離間するに従って漸増するように設定されている、即ち、山払い面25の面積は始端側から仕上げ部23側に近づくに従って漸減されるので、セグメントダイス20の食い付き部22における加工歯21aとブランクBとの面積が仕上げ部に近づくに従って漸減されることとなる。よって、ブランクBに形成されるおねじの谷底21cのV字形状が序々に深く形成される(ブランクBの外周面の塑性変形を序々に進行させる)ことから、ブランクBに急激な荷重をかけることなく、即ちブランクBにかかる過剰な応力を抑制しておねじを転造でき、ねじ部品の精度を向上させることができる。
【0050】
加えて、円弧状の食い付き部22を円弧状の仕上げ部23と同径に設定するため、山払い前の食い付き部22から仕上げ部23まで同じ円弧状で形成でき、セグメントダイス20を簡易に形成することができる。このように食い付き部22と仕上げ部23とを同径に形成すると、丸ダイス10とセグメントダイス20との間に形成される隙間が仕上げ部23と食い付き部22とで同じとなり、食い付き部22の始端側においてブランクBを導入するために必要な隙間を確保することができない。しかしながら、本発明では仕上げ部23から離間するに従って漸増する山払い面25が食い付き部22の始端部側に形成されるので、山払いにより食い付き部22の加工歯21aは頂部21bから谷底21cまでの距離を短くすることができ、食い付き部22の始端側でブランクBを導入するために必要な隙間を確保できる。
【0051】
即ち、食い付き部22に円弧状の山払いが施されると、この山払いされた後に現出する円弧状の仕上げ部23の半径(食い付き部22の円弧の中心から加工歯21aの山払い面25までの距離)をR1´とし、R=R2<R1´となるようにセグメントダイス20が形成される。このように山払いを施すことにより、接触面積を増加させるだけでなく、食い付き部22の始端側にブランクBを導入するために必要な隙間を現出させることができる。
【0052】
更に、この山払いは直線状ではなく、円弧状に施されるので、食い付き部22を直線状に山払いするよりも、山払い面25の面積変化を緩やかとすることができ、この食い付き部22から円弧状に形成される仕上げ部23へと移行する際の被転造素材(ブランクB)の変形過程の繋がりが良くなり、歯形の精度が向上する。
【0053】
加えて、山払い後の食い付き部22を山払い前の食い付き部22より大径に設定するので、セグメントダイス20における食い付き部22の占める割合を変えることなく、食い付き部22の長さを長くすることができ、セグメントダイス20に効率よく転造歯形面21を形成することができる。また、この山払いは円弧状に形成されるセグメントダイス20に施されるので直線状に山払いを施す場合に比べて加工しやすく、内径円筒研磨を施すことにより簡易に山払い面25を形成することができる。
【0054】
また、始端側から終端側にかけて丸ダイス10の軸孔2と平行に内径円筒研磨を加えることで食い付き部22の加工歯21aの頂部21b側に山払い面25を形成する。このように丸ダイス10の軸孔2と平行に加工歯21aを削除するので、転造時にブランクBは転造歯形面21の進行方向において同じ高さを有する加工歯21aと常に接触することとなり、ボルトの倒れがなく、ブランクBを丸ダイス10の軸孔2と平行に支持することができ、倒れによる加工不良の発生を防止できるという効果がある。また、同じ高さを有する加工歯21aと常に接触することから、ブランクBは転造歯形面21の進行方向において同じ面積を有する山払い面25と接触することとなり、ブランクBにかかる荷重が進行方向で均一化され、ねじ部品の転造精度を向上させることができる。
【0055】
なお、本発明のセグメントダイス20は、セグメントダイス20全体に対して逃げ部24が10%の割合に設定され、セグメントダイス20全体に対して90%の割合に設定される食い付き部22及び仕上げ部23は円弧の中心を同一にして同径で形成される。この同径に形成された食い付き部22及び仕上げ部23の一部に山払いが施されるが、この山払いはセグメントダイス20全体に対して30〜35%に設定される。
【0056】
従って、実質的に食い付き部22は30〜35%、仕上げ部23は55〜60%及び逃げ部24は10%の割合に設定されることとなる。
【0057】
詳述すると、セグメントダイス20の食い付き部22に山払いを施して山払い面25を設けることで、食い付き部22の始端側においてセグメントダイス20の加工歯21aとブランクBとの接触面積を大きくすることができ、その結果、食い付き部22のセグメントダイス20全体に対して占める割合を小さくできる。
【0058】
このようにセグメントダイス20全体に対して食い付き部22の占める割合を小さくできるため、食い付き部22の径を仕上げ部23の径と同じに設定することで、食い付き部22の山払いが施されない部分を仕上げ部23と同様に機能させることができる。また、このように食い付き部22の一部を仕上げ部と同様に機能させることで、セグメントダイス20全体に対して仕上げ部23が占める割合を実質的に大きくでき、ブランクBのおねじ加工の転造精度を向上させることができる。
【0059】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0060】
例えば、加工歯に山払い加工を施して山払い面を設けると、その山払い面の周縁部が鋭角となり、加工歯の耐久性の低下を招く。そこで、本発明のロータリー式ねじ転造ダイスでは、後述するように、山払い面の周縁部に面取り加工が施された面取り面部を形成してもよい。これにより、加工歯がチッピング等により損傷することを抑制して、ロータリー式ねじ転造ダイスの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施例であるロータリー式ねじ転造ダイスの設置状態を示す正面図である。
【図2】ロータリー式ねじ転造ダイスの正面図である。
【図3】ロータリー式ねじ転造ダイスの要部拡大図である。
【図4】従来のロータリー式ねじ転造ダイスの正面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 ロータリー式ねじ転造ダイス
10 丸ダイス
11 転造歯形面
20 セグメントダイス
21 転造歯形面
22 食い付き部
23 仕上げ部
24 逃げ部
25 山払い面
【出願人】 【識別番号】000103367
【氏名又は名称】オーエスジー株式会社
【出願日】 平成19年3月8日(2007.3.8)
【代理人】 【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー


【公開番号】 特開2008−221236(P2008−221236A)
【公開日】 平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願番号】 特願2007−58864(P2007−58864)