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【発明の名称】 転造ダイスの製造方法
【発明者】 【氏名】梅林 義弘

【要約】 【課題】転造歯形面の加工時間を短縮し、製造コストの削減を図ることができる転造ダイスの製造方法を提供すること。

【解決手段】リードの異なる2重ねじを転造する転造ダイスを製造する方法として、その2重ねじを放電電極50に置き換え、ねじを転造する動作を再現させて加工する製造方法である。そのために、リードの異なる2重ねじ形状の放電電極50と丸ダイス素材30とを回転させると共に、放電電極50を丸ダイス素材30とセグメントダイス素材40との間に配設し、その放電電極50で丸ダイス素材30及びセグメントダイス素材40を並行して放電加工する放電加工工程を備えるので、リードの異なる2重ねじ形状が丸ダイス素材30とセグメントダイス素材40との両方に並行して転写される。これにより加工時間が短縮され転造ダイスの製造コストの削減を図ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並目ねじを形成するための並目ねじ形成用歯形と細目ねじを形成するための細目ねじ形成用歯形とが略円筒形状に構成される丸ダイス素材の外周面に設けられた丸ダイスと、並目ねじを形成するための並目ねじ形成用歯形と細目ねじを形成するための細目ねじ形成用歯形とが略円弧形状に構成されるセグメントダイス素材の内周面に設けられた少なくとも1つのセグメントダイスとを備え、
そのセグメントダイスに対向して配設される前記丸ダイスを前記セグメントダイスに対して回転させることにより、前記丸ダイスの並目ねじ形成用歯形および細目ねじ形成用歯形と、前記セグメントダイスの並目ねじ形成用歯形および細目ねじ形成用歯形との間に狭持された被転造素材の外周面を塑性変形させ、リードの異なる並目ねじと細目ねじとが併存する2重ねじを転造する転造ダイスの製造方法において、
前記丸ダイス素材を回転可能な状態に支持し、前記丸ダイス素材の外周面に対向する位置に少なくとも1つの前記セグメントダイス素材を固定すると共に、前記2重ねじが外周面に形成された放電電極を配設する配設工程と、
前記配設工程により前記丸ダイス素材の外周面と前記セグメントダイス素材の内周面との間に配設された前記放電電極に自転運動と前記丸ダイス素材を中心とする公転運動とを行わせつつ前記丸ダイス素材を回転させると共に、前記放電電極で前記丸ダイス素材と前記セグメントダイス素材とを放電加工することで、前記丸ダイス素材の外周面と前記セグメントダイス素材の内周面とに前記並目ねじ形成用歯形および前記細目ねじ形成用歯形を形成する放電加工工程とを備えることを特徴とする転造ダイスの製造方法。
【請求項2】
前記配設工程は、前記丸ダイス素材の外周面に対向する位置に複数の前記セグメントダイス素材を配設し固定すると共に、前記複数のセグメントダイス素材の内の一のセグメントダイス素材の内周面と前記丸ダイス素材の外周面との間に前記放電電極を配設するものであり、
前記放電加工工程は、
前記配設工程により配設された前記一のセグメントダイス素材の内周面と前記丸ダイス素材の外周面とを前記放電電極により放電加工する第1放電加工工程と、
前記第1放電加工工程により加工された前記一のセグメントダイス素材に隣接する他のセグメントダイス素材の内周面と前記丸ダイス素材の外周面との間を前記放電電極で放電加工する第2放電加工工程と、
前記第1放電加工工程の後であって第2放電加工工程の前に、前記放電電極を前記第1放電加工工程での公転速度より速い公転速度で前記第2放電加工工程により放電加工が開始される位置まで搬送すると共に、前記丸ダイス素材を前記第1放電加工工程での回転速度より速い回転速度で前記第2放電加工工程により放電加工が開始される角度まで回転させる早送り工程とを備えていることを特徴とする請求項1記載の転造ダイスの製造方法。
【請求項3】
前記丸ダイス素材の外周面およびセグメントダイス素材の内周面を研削して補助溝を凹設する補助溝研削工程を前記配設工程の前に備え、
前記補助溝研削工程により研削される補助溝の形状は、前記並目ねじ形成用歯形を形成する複数のねじ山の内の一のねじ山と前記一のねじ山に隣接する他のねじ山との間であって前記細目ねじ形成用歯形のねじ山頂部より前記並目ねじ形成用歯形のねじ山頂部側に位置する部位を研削した形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の転造ダイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、転造ダイスの製造方法に関し、特に、転造歯形面の加工時間を短縮し、製造コストの削減を図ることができる転造ダイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボルトにナットを締結する場合には、ナットの緩み止め手段として、2つのナットを互いに締め上げるダブルナット方式による締結が一般に利用されている。この場合、さらに、リードの異なる並目ねじと細目ねじとが併存する2重ねじボルトを使用することで、リードの異なるナットを互いに締め上げ、ダブルナット方式による緩み止め機能をより発揮させることも行われている。
【0003】
ところで、このような2重ねじボルトは、転造ダイスを用いた転造加工により形成するのが一般的である。例えば、特開2003−260532号公報には、並目ねじ形成用歯形と細目ねじ形成用歯形とが複合した状態で平ダイスを形成し1回の転造工程にて2重ねじを一度に転造加工する技術が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−260532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される平ダイスでは、並目ねじ形成用歯形と細目ねじ形成用歯形との2種類の歯形を備える構成であるためこれら2種類の歯形を高硬度のダイス素材にそれぞれ別々に研削加工する必要があり、その分、加工時間が長くなり、製造コストが嵩むという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、転造歯形面の加工時間を短縮し、製造コストの削減を図ることができる転造ダイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を解決するために請求項1記載の転造ダイスの製造方法は、並目ねじを形成するための並目ねじ形成用歯形と細目ねじを形成するための細目ねじ形成用歯形とが略円筒形状に構成される丸ダイス素材の外周面に設けられた丸ダイスと、並目ねじを形成するための並目ねじ形成用歯形と細目ねじを形成するための細目ねじ形成用歯形とが略円弧形状に構成されるセグメントダイス素材の内周面に設けられた少なくとも1つのセグメントダイスとを備え、そのセグメントダイスに対向して配設される前記丸ダイスを前記セグメントダイスに対して回転させることにより、前記丸ダイスの並目ねじ形成用歯形および細目ねじ形成用歯形と、前記セグメントダイスの並目ねじ形成用歯形および細目ねじ形成用歯形との間に狭持された被転造素材の外周面を塑性変形させ、リードの異なる並目ねじと細目ねじとが併存する2重ねじを転造するものであって、前記丸ダイス素材を回転可能な状態に支持し、前記丸ダイス素材の外周面に対向する位置に少なくとも1つの前記セグメントダイス素材を固定すると共に、前記2重ねじが外周面に形成された放電電極を配設する配設工程と、前記配設工程により前記丸ダイス素材の外周面と前記セグメントダイス素材の内周面との間に配設された前記放電電極に自転運動と前記丸ダイス素材を中心とする公転運動とを行わせつつ前記丸ダイス素材を回転させると共に、前記放電電極で前記丸ダイス素材と前記セグメントダイス素材とを放電加工することで、前記丸ダイス素材の外周面と前記セグメントダイス素材の内周面とに前記並目ねじ形成用歯形および前記細目ねじ形成用歯形を形成する放電加工工程とを備えている。
【0007】
請求項2記載の転造ダイスの製造方法は、請求項1記載の転造ダイスの製造方法において、前記配設工程は、前記丸ダイス素材の外周面に対向する位置に複数の前記セグメントダイス素材を配設し固定すると共に、前記複数のセグメントダイス素材の内の一のセグメントダイス素材の内周面と前記丸ダイス素材の外周面との間に前記放電電極を配設するものであり、前記放電加工工程は、前記配設工程により配設された前記一のセグメントダイス素材の内周面と前記丸ダイス素材の外周面とを前記放電電極により放電加工する第1放電加工工程と、前記第1放電加工工程により加工された前記一のセグメントダイス素材に隣接する他のセグメントダイス素材の内周面と前記丸ダイス素材の外周面との間を前記放電電極で放電加工する第2放電加工工程と、前記第1放電加工工程の後であって第2放電加工工程の前に、前記放電電極を前記第1放電加工工程での公転速度より速い公転速度で前記第2放電加工工程により放電加工が開始される位置まで搬送すると共に、前記丸ダイス素材を前記第1放電加工工程での回転速度より速い回転速度で前記第2放電加工工程により放電加工が開始される角度まで回転させる早送り工程とを備えている。
【0008】
請求項3記載の転造ダイスの製造方法は、請求項1又は2に記載の転造ダイスの製造方法において、前記丸ダイス素材の外周面およびセグメントダイス素材の内周面を研削して補助溝を凹設する補助溝研削工程を前記配設工程の前に備え、前記補助溝研削工程により研削される補助溝の形状は、前記並目ねじ形成用歯形を形成する複数のねじ山の内の一のねじ山と前記一のねじ山に隣接する他のねじ山との間であって前記細目ねじ形成用歯形のねじ山頂部より前記並目ねじ形成用歯形のねじ山頂部側に位置する部位を研削した形状である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の転造ダイスの製造方法によれば、2重ねじが外周面に形成された放電電極によって丸ダイス素材及びセグメントダイス素材を放電加工する配設工程を備えているので、並目ねじ形成用歯形と細目ねじ形成用歯形とを加工する時間を短縮し、丸ダイス及びセグメントダイスの製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【0010】
例えば、ダイス素材は高硬度であるため研削加工が困難で、それに加えて、並目ねじ形成用歯形と細目ねじ形成用歯形との両歯形を備える転造ダイスの場合、並目ねじ形成用歯形と細目ねじ形成用歯形とを別工程にて研削加工しなければならず加工する時間がかかっていた。
【0011】
これに対し、本発明によれば、2重ねじが外周面に形成された放電電極に自転運動と丸ダイス素材を中心とする公転運動とを行わせつつ丸ダイス素材を回転させると共に、放電電極で丸ダイス素材及びセグメントダイス素材を放電加工する放電加工工程を備えるので、放電電極の外周面に形成される2重ねじの形状を丸ダイス素材の外周面及びセグメントダイス素材の内周面に転写することができる。
【0012】
即ち、2重ねじが外周面に形成された放電電極により並目ねじ形成用歯形と細目ねじ形成用歯形とを同時に形成することができる。これにより、並目ねじ形成用歯形と細目ねじ形成用歯形とを加工する時間を短縮し、丸ダイス及びセグメントダイスの製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【0013】
また、本発明によれば、丸ダイス素材の外周面に対向する位置に少なくとも1つのセグメントダイス素材を固定する配設工程と、放電電極で丸ダイス素材とセグメントダイス素材とを放電加工する放電加工工程とを備えたので、丸ダイス素材及びセグメントダイス素材を放電電極によって並行して加工することができる。
【0014】
即ち、1台の加工機を使って丸ダイス素材の加工とセグメントダイス素材の加工とを順番に行う場合に比べて、丸ダイス素材とセグメントダイス素材とを並行して加工するので加工時間を半分にすることができる。その結果、丸ダイス及びセグメントダイスの製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【0015】
さらに、2台の加工機を使って丸ダイス素材の加工とセグメントダイス素材の加工とを並行して行う場合に比べて、2台目の加工機を設置する場所を省略することができるので、丸ダイス素材及びセグメントダイス素材を加工する加工機を設置するためにかかる設備投資費を削減することができ、加工コストの内、設備投資費分のコストを削減することができる。その結果、丸ダイス及びセグメントダイスの製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【0016】
請求項2記載の転造ダイスの製造方法によれば、請求項1記載の転造ダイスの製造方法の奏する効果に加え、丸ダイス素材及び複数のセグメントダイス素材の加工時間を短縮し、製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【0017】
即ち、本発明によれば、配設工程は、丸ダイス素材の外周面に対向する位置に複数のセグメントダイス素材を配設し固定するものであり、第1放電加工工程は、配設された複数のセグメントダイス素材の内の一のセグメントダイス素材と丸ダイス素材とを加工するものであり、第2放電加工工程は、それら複数のセグメントダイス素材の内の他のセグメントダイス素材と丸ダイス素材とを加工するものである。
【0018】
よって、複数のセグメントダイス素材を1つずつ配設して加工する場合と比較して複数のセグメントダイス素材が配設されているのでセグメントダイス素材を配設するために加工機を停止させる回数を減らすことができる。これにより、丸ダイス素材及び複数のセグメントダイス素材の加工時間を短縮し、製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【0019】
また、本発明によれば、放電加工工程は、第1放電加工工程の後であって第2放電加工工程の前に早送り工程を備えて構成されており、その早送り工程は、放電電極を第2放電加工工程により放電加工が開始される角度まで搬送しつつその放電電極を第1放電加工工程での放電電極の公転速度より速い公転速度で搬送するものであると共に、第1放電加工工程により放電加工された丸ダイス素材を第2放電加工工程により放電加工が開始される角度まで回転させつつ第1放電加工工程での丸ダイス素材の回転速度より速い速度で回転させるものである。
【0020】
よって、放電電極と丸ダイス素材との回転速度を速くした分、丸ダイス素材及び複数のセグメントダイス素材が放電電極によって加工されていない時間を短縮することができる。これにより、丸ダイス素材及び複数のセグメントダイス素材の加工条件を変えることなく加工時間を短縮し、製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【0021】
請求3記載の転造ダイスの製造方法によれば、丸ダイス素材の外周面およびセグメントダイス素材の内周面を研削して補助溝を凹設する補助溝研削工程を配設工程の前に備えている。よって、その凹んだ部位が放電加工されないので放電加工に伴う放電電極の消耗を低減することができる。
【0022】
即ち、補助溝研削工程により研削される複数の補助溝は、並目ねじ形成用歯形を形成する複数のねじ山の内の一のねじ山と一のねじ山に隣接する他のねじ山との間の位置に配設される。更に、その補助溝は、ねじ山の延設される方向に平行に配設されている。また、一のねじ山と他のねじ山との間は、ねじの谷であり加工される量が多くなる部位である。そのねじの谷になる部位をあらかじめ研削したので、放電電極が加工する丸ダイス素材及びセグメントダイス素材の量が減り放電電極の消耗を低減させることができる。
【0023】
よって、1個の放電電極で加工できる丸ダイス素材及びセグメントダイス素材の数が増え、丸ダイス素材及びセグメントダイス素材1個当たりの放電電極を交換する時間と放電電極の消耗度合いとを低減することができる。これにより、放電電極の交換回数が少ない分、放電電極を交換するための費用が削減され、製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【0024】
また、本発明によれば、補助溝研削工程によって凹設される補助溝の形状は、丸ダイス素材及びセグメントダイス素材に形成される細目ねじ形成用歯形のねじ山頂部より並目ねじ形成用歯形のねじ山頂部側に位置する部位を研削した形状であるので、細目ねじ形成用歯形が形成される部位を研削してしまうことを防止し、細目ねじ形成用歯形の部分的な欠損を防止することができる。よって、設計図通りに丸ダイス素材及びセグメントダイス素材を製造することができ、丸ダイス及びセグメントダイスの品質を向上させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、ロータリー式転造盤100について説明する。図1は、ロータリー式転造盤100の概略を示した概略平面図である。
【0026】
ロータリー式転造盤100は、一方向(図1紙面反時計まわり方向)に回転する主軸101を備えており、この主軸101には丸ダイス10が嵌合されている。この丸ダイス10は、略円柱形状の被転造素材Bの外周面を塑性変形させて2重ねじのおねじを有するねじB1を転造する部材であり、転造に適した合金工具鋼又は高速度工具鋼の金属材料にて略円筒形状に構成されている。
【0027】
丸ダイス10の外周面には、被転造素材Bを転造する2重ねじ形成用歯形面11が180度対向する位置に形成されている。また、丸ダイス10の内周面には、丸ダイス10の回転軸心方向(図1紙面垂直方向)に向かって延びるダイス用キー溝10aが凹設されている。同様に主軸101にもダイス用キー溝10aに対応して主軸用キー溝101aが凹設されており、この両キー溝10a,101aにキー102が挿入されることにより、丸ダイス10がキー102を介して主軸101に嵌合されている。
【0028】
一方、丸ダイス10の外周面に対向する位置には、セグメントダイスホルダ103にて保持されたセグメントダイス20が配設されている。セグメントダイス20は、前述した丸ダイス10と共に被転造素材Bを狭持して、その被転造素材Bの外周面を塑性変形させて2重ねじのおねじを有するねじB1を転造する部材であり、丸ダイス10と同様に、転造に適した合金工具鋼又は高速度工具鋼の金属材料にて略円弧形状に構成されている。
【0029】
そのセグメントダイス20の内周面には、被転造素材Bを転造する2重ねじ形成用歯形面21が形成されており、この2重ねじ形成用歯形面21と丸ダイス10の外周面に形成される2重ねじ形成用歯形面11とによって丸ダイス10とセグメントダイス20とに狭持された被転造素材Bの外周面に2重ねじのおねじが転造される。
【0030】
また、ロータリー式転造盤100は、被転造素材B1を丸ダイス10とセグメントダイス20との間隙に供給する被転造素材供給装置(図示せず)を備え、この被転造素材供給装置は、丸ダイス10とセグメントダイス20との間隙を連通する通路である被転造素材供給通路104と連結されている。
【0031】
被転造素材供給装置(図示せず)から供給された被転造素材Bは、被転造素材供給通路104を介して丸ダイス10とセグメントダイス20との間隙に送り込まれる。この送り込まれた被転造素材Bは、主軸101による丸ダイス10の回転に伴って丸ダイス10の回転方向とは反対の方向(図1紙面時計まわり方向)へ回転されつつ丸ダイス10の回転方向に移送される。よって、被転造素材Bの外周面は、丸ダイス10の2重ねじ形成用歯形面11とセグメントダイス20の2重ねじ形成用歯形面21とにより塑性変形されて、2重ねじのおねじが形成される。
【0032】
次いで、図2を参照して、丸ダイス素材30の構成について説明する。図2(a)は丸ダイス素材30の側面図であり、図2(b)は、丸ダイス素材30の外周面の展開図であある。なお、図2(b)では、隣接する補助溝31の境界線を実線で図示している。
【0033】
図2(a)に示すように、丸ダイス素材30は、略円筒形状に構成されその外周面に2重ねじ形成用歯形面11(図1参照)が加工されて丸ダイス10(図1参照)となるものである。
【0034】
丸ダイス素材30の外周面には、複数の補助溝31が凹設されており、その外周面以外は丸ダイス10(図1参照)と同一に構成されている。即ち、丸ダイス素材30を加工するNC放電加工機(図示せず)がロータリー式転造盤100の主軸101(図1参照)と略同一形状の回転軸301(図6(a)参照)を備えている場合には、丸ダイス素材30は、丸ダイス10がロータリー式転造盤100の主軸101に嵌合される方法と同じ方法で、NC放電加工機の回転軸301に嵌合される。
【0035】
よって、ロータリー式転造盤100の主軸101(図1参照)に丸ダイス10が嵌合されて回転されるのと同様に丸ダイス素材30がNC放電加工機の回転軸301に嵌合されて回転される。
【0036】
また、図2(b)に示すように、丸ダイス素材30の端面32は、転造方向(図2(b)左右方向)に平行に配設される面である。複数の補助溝31は、その端面32に対して角度A23を成して配設されており、その複数の補助溝31の内の一の補助溝31と他の補助溝31とは、端面32に対して直角方向(図2(b)上下方向)に距離P23を保って互いに平行に配設されている。
【0037】
なお、角度A23は、後述する放電電極50のリード角A2(図5(b)参照)と略同一の角度に設定され、距離P23は、後述する放電電極50のピッチP2(図5(b)参照)と略同一の寸法値に設定されている。
【0038】
次いで、図3を参照して、セグメントダイス素材40の構成について説明する。図3(a)はセグメントダイス素材40の側面図であり、図3(b)は、セグメントダイス素材40の内周面の展開図である。なお、図3(b)では、隣接する補助溝41の境界線を実線で図示している。
【0039】
まず、図3(a)及び図3(b)を参照してセグメントダイス素材40の構成について説明する。図3(a)に示すように、セグメントダイス素材40は、略円弧形状に構成されその内周面に2重ねじ形成用歯形面21(図1参照)が加工されてセグメントダイス20(図1参照)となるものである。
【0040】
セグメントダイス素材40の内周面には、複数の補助溝41が凹設されておりその内周面以外はセグメントダイス20(図1参照)と同一に構成されている。即ち、セグメントダイス素材40を加工するNC放電加工機(図示せず)がロータリー式転造盤100のセグメントダイスホルダ103(図1参照)と略同一形状のホルダ(図示せず)を備える場合には、ロータリー式転造盤100のセグメントダイス20がセグメントダイスホルダ103によって保持される方法と同じ方法で、セグメントダイス素材40がNC放電加工機のホルダ(図示せず)によって保持される。
【0041】
これにより、丸ダイス素材30(図2参照)及びセグメントダイス素材40(図3参照)は、丸ダイス10及びセグメントダイス20(図1参照)がロータリー式転造盤100に配設されるのと同様にNC放電加工機(図示せず)に配設される。
【0042】
また、図3(b)に示すように、セグメントダイス素材40の端面42は、転造方向(図3(b)左右方向)に平行に配設される面である。複数の補助溝41は、その端面42に対して角度A24を成して配設されており、その複数の補助溝41の内の一の補助溝41と他の補助溝41とは、端面42に対して直角方向(図3(b)上下方向)に距離P24を保って互いに平行に配設されている。なお、角度A24は、後述する放電電極50のリード角A2(図5(b)参照)と略同一の角度に設定され、距離P24は、後述する放電電極50のピッチP2(図5(b)参照)と略同一の寸法値に設定されている。
【0043】
次いで、図4を参照して丸ダイス素材30の外周面に形成される補助溝31の詳細構成について説明する。図4は、図2のIV−IV線における丸ダイス素材30の部分拡大断面図である。なお、2重ねじ形成用歯形面11が形成された場合の断面形状を破線にて示している。なお、補助溝31及び補助溝41は、断面形状でとらえれば同一の構成であるため補助溝41の説明は省略する。また、並目ねじ形成用歯形11bと細目ねじ形成用歯形11aとの形状を鋭角に図示しているが、実際には、山頂及び谷底は幅狭の曲面及び平坦面とされている。
【0044】
図4に示すように、補助溝31は、丸ダイス素材30の外周面に凹設されるものであり、補助溝底部31aとその補助溝底部31aの両端に連成される2つの補助溝フランク部31bとを備えている。また、2重ねじ形成用歯形面11が後述する放電電極50(図5(a)参照)により放電加工された場合には細目ねじ形成用歯形11aと並目ねじ形成用歯形11bとが形成される。
【0045】
即ち、補助溝31を凹設したので、放電電極50の細目ねじ部54(図5(b)参照)及び並目ねじ部53(図5(b)参照)によって加工される部分を削減することができる。これにより、放電電極50の細目ねじ部54及び並目ねじ部53が放電加工により消耗する量を低減することができる。
【0046】
よって、1個の放電電極50(図5(a)参照)で加工できる丸ダイス素材30の数が増え、放電電極50を交換する間隔を長くすることができる。これにより、放電電極50の交換回数が少ない分、放電電極50を交換するための費用が削減され、製造コストの削減を図ることができる。
【0047】
補助溝底部31aは、補助溝31の長手方向(図4紙面垂直方向)に連成される円周上の平坦面である。また、補助溝底部31aは、細目ねじ形成用歯形11aの山頂部から補助溝31により形成されるねじ山頂部側に距離L1移動した位置に形成されている。
【0048】
即ち、補助溝底部31aは、細目ねじ形成用歯形11aの形成される位置より研削加工される側(図4上側)に位置しているので、補助溝底部31aを研削加工するときに細目ねじ形成用歯形11aが形成される部分を削り取られないようにすることができる。よって、設計図通りに丸ダイス10(図1参照)を製造することができるので、丸ダイス10の品質を向上させることができる。
【0049】
また、補助溝フランク部31bは、並目ねじ形成用歯形11bのフランク部分と平行に形成され、並目ねじ形成用歯形11bのフランク部分から補助溝31によって形成されるねじ山頂部側に距離L2移動した位置に形成されている。
【0050】
即ち、補助溝フランク部31bは、並目ねじ形成用歯形11bの形成される位置より研削加工される側(図4上側)に位置しているので、並目ねじ形成用歯形11bが形成される部分を研削加工時に削り取られないようにすることができる。
【0051】
よって、並目ねじ形成用歯形11bが形成される部分を削り取られないようにすることができるので設計図通りに丸ダイス10を製造することができる。したがって、丸ダイス10(図1参照)の品質を向上させることができる。
【0052】
さらに、補助溝フランク部31bは、並目ねじ形成用歯形11bのフランク部分と平行に形成されているので、加工される位置が違っていても加工量が均一になる。よって、放電電極50の並目ねじ部53(図5(b)参照)が放電加工により消耗する量を均一にすることができる。これにより、並目ねじ形成用歯形11bの加工精度を均一に保つことができる。したがって、丸ダイス10(図1参照)の品質を向上させることができる。
【0053】
さらに、距離L1と距離L2とを調整することで放電電極50の細目ねじ部54(図5(b)参照)と並目ねじ部53(図5(b)参照)との消耗度合いを調整し、細目ねじ部54と並目ねじ部53との形状変化のばらつきを低減することができる。よって、放電電極50(図5(a)参照)により加工される2重ねじ形成用歯形面11の加工精度を均一に保つことができる。これにより、設計図通りに丸ダイス10(図1参照)を製造することができ、丸ダイス10の品質を向上させることができる。
【0054】
なお、距離L1より距離L2を大きく設定すると細目ねじ部54と並目ねじ部53との形状変化のばらつきを低減することができる。
【0055】
次いで、図5を参照して、放電電極50の構成について説明する。図5(a)は放電電極50の側面図であり、図5(b)は、図5(a)のVbで示した部分を拡大した部分拡大側面図である。なお、図5(b)では、理解を容易とするために、放電電極50に形成される細目ねじの形状を2点鎖線にて仮想的に図示している。また、並目ねじ部53と細目ねじ部54との形状を鋭角に図示しているが、実際には、山頂及び谷底は幅狭の曲面及び平坦面とされている。
【0056】
図5(a)に示すように、放電電極50は、丸ダイス素材30及びセグメントダイス素材40(図2から図4参照)に2重ねじ形成用歯形面11(図1参照)及び2重ねじ形成用歯形面21(図1参照)を形成するために使用される放電加工用の電極であり、放電加工に適した材料(例えば、銅−タングステン合金や銀−タングステン合金のほか、銅、黄銅、グラファイト、銅−グラファイトなど)から略円柱形状に形成される。また、放電電極50の下端側(図5(a)下側)には、丸ダイス素材30及びセグメントダイス素材40に放電加工を施すための放電加工部51が設けられている。
【0057】
図5(b)に示すように、放電加工部51は、リードの異なる並目ねじと細目ねじとが併存する2重ねじの形状をしている。また、放電加工部51は、丸ダイス素材30(図2(a)参照)及びセグメントダイス素材40(図3(a)参照)に並目ねじ形成用歯形11b(図4参照)を加工するピッチP2の並目ねじ部53と細目ねじ形成用歯形11a(図4参照)を加工するピッチP1の細目ねじ部54とを備えている。
【0058】
なお、リードは、ねじのつる巻き線に沿って軸の周りを一周するとき、軸方向に進む距離(規格表番号JISB0101−1205)であり、ピッチは、ねじの軸線を含む断面において、互いに隣り合うねじ山の相対応する2点を軸線に平行に測った距離(規格表番号JISB0101−1206)である。即ち、ほぼ同一の構成を表す尺度であるのでピッチが異なればリードも異なる。
【0059】
よって、2重ねじが外周面に形成された放電電極50により並目ねじ形成用歯形11b(図4参照)と細目ねじ形成用歯形11a(図4参照)とを同時に形成することができる。これにより、並目ねじ形成用歯形11bと細目ねじ形成用歯形11aとを別々に加工する場合に比べて並目ねじ形成用歯形11bと細目ねじ形成用歯形11aとを加工する時間が短縮され、丸ダイス及びセグメントダイスの製造コストの削減を図ることができる。
【0060】
また、並目ねじ部53と細目ねじ部54との形状は、丸ダイス10(図1参照)及びセグメントダイス20(図1参照)によって転造される2重ねじの形状と対応した形状である。即ち、図5(b)に示すように、並目ねじ部53及び細目ねじ部54の形状は、JISにて規定されるねじ形状の一部分によって構成されている。
【0061】
さらに、放電加工部51は、一般的なねじの材料として使用される各種金属類より柔らかいグラファイトにて構成されているので、ねじを研削又は切削にて加工する加工機であれば、放電電極50を加工することができる。よって、特殊な加工機を必要としないため、放電電極50の加工コストを低く抑えることができる。
【0062】
次いで、図6及び図7を参照して、丸ダイス10及びセグメントダイス20の製造工程について説明する。図6(a)及び図6(b)と図7(a)及び図7(b)は、放電電極50が丸ダイス素材30及びセグメントダイス素材40を製造している時の放電電極50と丸ダイス素材30とセグメントダイス素材40との配置を示した配置図である。なお、理解を容易にするために、補助溝31,41は省略して図示している。
【0063】
本実施の形態における丸ダイス10(図1参照)及びセグメントダイス20(図1参照)の製造工程では、合金工具鋼又は高速度工具鋼等にて構成される素材に補助溝31,41を加工して丸ダイス素材30及びセグメントダイス素材40(図2から図4参照)を作成する補助溝研削工程と、作成された丸ダイス素材30及び複数(本実施の形態では2個)のセグメントダイス素材40をNC放電加工機へ配設する配設工程と、配設された丸ダイス素材30及びセグメントダイス素材40を放電加工する放電加工工程とを備えている。さらに、放電加工工程は、第1放電加工工程と早送り工程と第2放電加工工程とを備えている。
【0064】
図6(a)は、配設工程が終了して第1放電加工工程が開始される状態の放電電極50と丸ダイス素材30との配置を図示している。
【0065】
配設工程の前の補助溝研削工程では、補助溝31(図2参照)が略円筒形状のダイス素材に研削され、補助溝41(図3参照)が略円弧形状のダイス素材に研削され丸ダイス素材30及びセグメントダイス素材40が作られる。
【0066】
配設工程では、図6(a)に示すように、直径D1の丸ダイス素材30を回転軸301に嵌合し、丸ダイス素材30の外周面に対して丸ダイス素材の径方向外側に距離Lの位置に複数のセグメントダイス素材40の内周面を180度対向して配設する。また、その丸ダイス素材30とセグメントダイス素材40との間に2重ねじの形状に形成された放電電極50を配設する。
【0067】
図6(b)は、第1放電加工工程が終了して早送り工程が開始される状態の放電電極50及び丸ダイス素材30の配置を図示しており、図6(b)に示す破線は、図6(a)における放電電極50の位置と丸ダイス10のキー102の位置とを示している。
【0068】
図6(b)に示すように、配設工程の後に放電加工工程に移行する。その放電加工工程は、第1放電加工工程と早送り工程と第2放電加工工程とを順に行う。
【0069】
即ち、第1放電加工工程では、丸ダイス素材30を反時計周り(図7紙面反時計周り)に角度A3だけ回転させる。それと並行して放電電極50を時計周り(図7紙面時計周り)に角度A5(A5は360度以上なので模式的に表している。)だけ自転させつつ丸ダイス素材30を中心とする反時計周り(図7紙面時計周り)に角度A4だけ公転させる。なお、放電電極50の自転とは、放電電極50の軸心まわりの回転を言い、放電電極50の公転とは、丸ダイス素材30(回転軸301)の軸心まわりの回転を言う。
【0070】
その結果、複数のセグメントダイス素材40の内の丸ダイス素材30の一側(図6(a)左側)に配設される一のセグメントダイス素材40と丸ダイス素材30とが放電電極50によって放電加工される。なお、第1放電加工工程では、丸ダイス素材30を回転速度V3(図示せず)で回転させ、放電電極50を公転速度V5a(図示せず)で公転させつつ自転速度V5b(図示せず)で自転させる。
【0071】
よって、一のセグメントダイス素材40に2重ねじ形成用歯形面21が形成されて一のセグメントダイス20が完成し、丸ダイス素材30に一の2重ねじ形成用歯形面11が丸ダイス素材30の回転方向に向かって形成される。
【0072】
よって、丸ダイス素材30の加工とセグメントダイス素材40の加工とを順番に行う場合に比べて、丸ダイス素材30とセグメントダイス素材40と並行して加工するので加工時間を半分にすることができる。これにより、丸ダイス10(図1参照)及びセグメントダイス20(図1参照)の製造コストの削減を図ることができる。
【0073】
図7(a)は、早送り工程が終了して第2放電加工工程が開始される状態の放電電極50及び丸ダイス素材30の配置を図示しており、2点鎖線は、放電電極50が早送り工程によって移動している状態を示しており、破線は、図6(b)における放電電極50の位置と丸ダイス10のキー102の位置とを示している。
【0074】
図7(a)に示すように、第1放電加工工程の後の早送り工程では、放電電極50の自転を停止し、放電電極50を丸ダイス素材30から離間させる。その後、放電電極50に丸ダイス素材30を中心とする公転運動を行わせつつ、その放電電極50を第2放電加工工程の開始位置である他のセグメントダイス素材40と丸ダイス素材30との間に配設する。
【0075】
よって、複数(本実施の形態では2個)のセグメントダイス素材40を1つずつ配設して加工する場合と比較して複数(本実施の形態では2個)のセグメントダイス素材40が配設されているのでセグメントダイス素材40を配設するためにNC放電加工機(図示せず)を停止させる回数を減らすことができる。これにより、丸ダイス素材30及び複数(本実施の形態では2個)のセグメントダイス素材40の加工時間を短縮し、製造コストの削減を図ることができる。
【0076】
また、離間された放電電極50は、公転速度V5aより速い公転速度で公転すると共に丸ダイス素材30は、回転速度V3より速い回転速度で回転する。よって、放電電極50の公転速度V5a及び丸ダイス素材30の回転速度V3を速めた分、放電電極50が加工をしていない時間を短縮することができる。これにより、丸ダイス素材30及び複数のセグメントダイス素材40の加工条件を変えることなく加工時間を短縮し、製造コストの削減を図ることができる。
【0077】
また、早送り工程では、丸ダイス素材30を第1放電加工工程が終了した位置から角度A33(A33=360度−A3)まで回転させる。よって、丸ダイス素材30を第1放電加工工程の加工開始位置(図6(a)の丸ダイス素材30の位置)に戻し、放電電極50を第1放電加工工程の加工開始位置(図6(a)の放電電極50の位置)に対して180度対抗する位置に配置するので、丸ダイス素材30の外周面の180度対向する位置に2重ねじ形成用歯形面11がそれぞれ加工される。
【0078】
これにより、丸ダイス10の180度対向する位置で同時に転造を行う2カムタイプの転造盤でも、本発明の製造方法によって作られた丸ダイス10及びセグメントダイス20を使用することができる。
【0079】
図7(b)は、第2放電加工工程が終了した状態の放電電極50と丸ダイス素材30との配置を図示しており、破線は、図7(a)における放電電極50の位置と丸ダイス10のキー102の位置とを示している。
【0080】
図7(b)に示すように、早送り工程の後に、第2放電加工工程では、丸ダイス素材30を反時計周り(図7紙面反時計周り)に角度A3だけ回転させる。それと並行して放電電極50を時計周り(図7紙面時計周り)に角度A5(A5は360度以上なので模式的に表している。)だけ自転させつつ丸ダイス素材30を中心とする反時計周り(図7紙面時計周り)に角度A4だけ公転させる。
【0081】
その結果、丸ダイス素材30と複数のセグメントダイス素材40の内の丸ダイス素材30の一側に180度対向する位置の他側(図7(a)右側)に配設される他のセグメントダイス素材40とが放電電極50によって放電加工される。なお、第2放電加工工程では、丸ダイス素材30を回転速度V32(図示せず)で回転させ、放電電極50を公転速度V5a2(図示せず)で公転させつつ自転速度V5b2(図示せず)で自転させる。
【0082】
よって、丸ダイス素材30の加工とセグメントダイス素材40の加工とを順番に行う場合に比べて、丸ダイス素材30とセグメントダイス素材40と並行して加工するので加工時間を半分にすることができる。これにより、丸ダイス10及びセグメントダイス20の製造コストの削減を図ることができる。
【0083】
このように、第1放電加工工程では、一のセグメントダイス素材40を放電加工し、第2放電加工工程では、他のセグメントダイス素材40を放電加工し、第1放電加工工程および第2放電加工工程では、丸ダイス素材30を放電加工する。よって、丸ダイス10及びセグメントダイス20が完成する。
【0084】
ここで、図6(b)を参照して、丸ダイス素材30の回転速度V3(図示せず)と放電電極50の公転速度V5a(図示せず)及び自転速度V5b(図示せず)の関係について説明する。なお、第2放電加工工程での、丸ダイス素材30の回転速度V32(図示せず)と放電電極50の公転速度V5a2(図示せず)及び自転速度V5b2(図示せず)の関係は、第1放電加工工程での、丸ダイス素材30の回転速度V3(図示せず)と放電電極50の公転速度V5a(図示せず)及び自転速度V5b(図示せず)の関係と同等であるので説明は省略する。
【0085】
ねじB1(図1参照)を転造するように放電電極50と丸ダイス素材30とを動かす場合には、放電電極50の外周面とセグメントダイス素材40の内周面とがすべることなく対向しつつ、放電電極50の外周面と丸ダイス素材30の外周面とがすべることなく対向しなければならない。
【0086】
そのためには、放電電極50の外周がセグメントダイス素材40の内周上と丸ダイス素材30の外周上とを一定時間に転がる距離が同一になるという条件を満たさなければならない。よって、上記条件を満たすように放電電極50を丸ダイス素材30の回転速度V3(図示せず)に応じた公転速度V5a(図示せず)及び自転速度V5b(図示せず)で動かす必要がある。
【0087】
まず、セグメントダイス素材40の内周面を角度A4で加工する場合について丸ダイス素材30と放電電極50との回転する角度について説明する。図6(b)に示すように、セグメントダイス素材40の内周面と丸ダイス素材30の外周面との加工される距離が同一になるように丸ダイス素材30を角度A31(A31=(D1+2L)/D1×A4)だけ回転させる。なお、D1(図6(a)参照)は、丸ダイス素材30の直径であり、L(図6(a)参照)は、丸ダイス素材30の外周面とセグメントダイス素材の内周面との距離である。
【0088】
さらに、丸ダイス素材30は丸ダイス素材30の回転方向(図7紙面時計周り方向)と反対の面に加工が進められていくので、セグメントダイス素材40(図6(a)参照)の内周面を角度A4で加工した後には、放電電極50の中心位置は丸ダイス素材30を中心として角度A32(A32=A4)だけ公転した位置にあり、丸ダイス素材30の加工開始位置は、丸ダイス素材30の外周面が加工される分の角度A31に放電電極50の公転する分の角度A32とを足した分の角度A3(A3=A31+A32)だけ回転した位置になる。
【0089】
一方、セグメントダイス素材40と丸ダイス素材30とが加工される距離と放電電極50の外周がセグメントダイス素材40に対して回転する距離とが同等になるように放電電極50を角度A5(A5=(2×3.14×(D1/2+L)×A4/360度)/(2×3.14×L/2)×360度−A4)だけ自転させる。
【0090】
即ち、角度A5は、セグメントダイス素材40の内周面の距離を放電電極50の外周面で除算した値に360度を乗算し、NC放電加工機(図示せず)基準とするために放電電極50の公転分の角度A4を差し引いて算出される値である。
【0091】
上述したそれぞれの角度(角度A3,角度A4,角度A5)は、セグメントダイス素材40を角度A4で加工するときに回転する角度であり、それぞれ割合(角度A3:角度A4:角度A5)はそのまま速度(回転速度V3:公転速度V5a:自転速度V5b)の割合と一致する。
【0092】
よって、V3:V5a=A3:A4を計算するとV5a=D1/(D1+L)/2×V3となり、V3:V5b=A3:A5を計算するとV5b=(D1+L)/L×D1/(D1+L)/2×V3となる。
【0093】
このように、丸ダイス素材30の回転速度V3(図示せず)と放電電極50の公転速度V5a(図示せず)及び自転速度V5b(図示せず)の関係は、丸ダイス素材30の直径D1と丸ダイス素材30とセグメントダイス素材40との距離Lとによって決まる関係であるので、公転速度V5aと自転速度V5bとは、直径D1と距離Lとに応じて丸ダイス素材30の回転速度V3に対する速度に設定される。
【0094】
ただし、上述した速度の関係は、簡易的な計算結果に基づく関係であるので、実際には、放電加工した結果を元に様々な調整が行われることは容易に推察できるものである。
【0095】
ここで、図8を参照して、丸ダイス10及びセグメントダイス20が備える2重ねじ形成用歯形面11及び2重ねじ形成用歯形面21の詳細構成について説明する。なお、2重ねじ形成用歯形面11及び2重ねじ形成用歯形面21は、1個の放電電極50(図6(b)参照)によって加工されているので、丸ダイス10の外周面に形成されているものであるかセグメントダイス20の内周面に形成されているものであるかという違いはあるが拡大して平面的にとらえれば同一であるため2重ねじ形成用歯形面21の説明は省略する。
【0096】
図8(a)は、2重ねじ形成用歯形面11の部分拡大展開図であり、図8(b)から図8(f)は、それぞれ図8(a)のb−b線からf−f線における2重ねじ形成用歯形面11の部分拡大断面図である。
【0097】
なお、図8(a)では、2重ねじ形成用歯形面11の並目ねじ形成用歯形11bの山頂線を実線で、細目ねじ形成用歯形11aの山頂線を破線で、それぞれ示す一方、谷底線を省略して図示している。また、図8(b)から図8(f)では、理解を容易とするために、細目ねじ形成用歯形11aの形状を2点鎖線にて仮想的に図示している。また、並目ねじ形成用歯形11bと細目ねじ形成用歯形11aとの形状を鋭角に図示しているが、実際には、山頂及び谷底は幅狭の曲面及び平坦面とされている。
【0098】
図8(a)に示すように、並目ねじ形成用歯形11bと細目ねじ形成用歯形11aとは互いに交差して延びている。上述したように、細目ねじ形成用歯形11aのピッチは並目ねじ形成用歯形11bに対して半分のピッチで構成されているので、転造方向(図8(a)左右方向)への位相が360度ずれるごとに、細目ねじ形成用歯形11aが並目ねじ形成用歯形11bを横切ることになる。
【0099】
その結果、細目ねじ形成用歯形11aは、図8(b)から図8(f)に示すように隣り合った並目ねじ形成用歯形11bの内の一方の並目ねじ形成用歯形11bから他方の並目ねじ形成用歯形11bに向けて断面積を徐々に変化させつつずれていく。なお、並目ねじ形成用歯形11bは、図8(b)に示すように、その谷底を細目ねじ形成用歯形11aの谷底に一致する深さ位置に形成されている。
【0100】
よって、丸ダイス10及びセグメントダイス20は、リードの異なる並目ねじと細目ねじとが併存する2重ねじを転造することができる。
【0101】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0102】
上記実施の形態では、補助溝研削工程が補助溝底部31aを平坦面に研削する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、細目ねじ形成用歯形11aの形状に倣う形状に研削しても良い。この場合、細目ねじ部54の消耗度合いを均一にすることができるので細目ねじ形成用歯形11aの加工精度を均一に保つことができる。これにより、丸ダイス10の品質を向上させることができる。なお、セグメントダイス20についても同様であるため説明を省略する。
【0103】
また、上記実施の形態では、配設工程が2個のセグメントダイス素材40をNC放電加工機へ配設する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、3個のセグメントダイス素材40を配設しても良い。この場合、2重ねじ形成用歯形面11を3箇所に形成できるので最大3箇所で転造できる丸ダイスとセグメントダイスとを製造することができる。これにより、使用状況に応じた丸ダイスとセグメントダイスとを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】ロータリー式転造盤の概略を示した概略平面図である。
【図2】(a)は、丸ダイス素材の側面図であり、(b)は、丸ダイス素材の外周面の展開図である。
【図3】(a)はセグメントダイス素材の側面図であり、(b)は、セグメントダイス素材の内周面の展開図である。
【図4】図2のIV−IV線における丸ダイス素材の断面の部分を拡大した部分拡大断面図である。
【図5】(a)は、放電電極の側面図であり、(b)は、図5(a)のVbで示した部分を拡大した部分拡大側面図である。
【図6】(a)及び(b)は、放電電極が丸ダイス素材及びセグメントダイス素材を製造している時の放電電極と丸ダイス素材とセグメントダイス素材との配置を示した配置図である。
【図7】(a)及び(b)は、放電電極が丸ダイス素材及びセグメントダイス素材を製造している時の放電電極と丸ダイス素材とセグメントダイス素材との配置を示した配置図である。
【図8】(a)は、2重ねじ形成用歯形面の部分拡大展開図であり、(b)から(f)は、それぞれ図8(a)のb−b線からf−f線における2重ねじ形成用歯形面の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 転造ダイス
10 丸ダイス
11、21 2重ねじ形成用歯形面(細目ねじ形成用歯形,並目ねじ形成用歯形)
11a 細目ねじ形成用歯形
11b 並目ねじ形成用歯形
20 セグメントダイス
30 丸ダイス素材
31,41 補助溝(補助溝)
31a 補助溝底部(補助溝の一部)
31b 補助溝フランク部(補助溝の一部)
40 セグメントダイス素材
50 放電電極
51 放電加工部(放電電極の一部)
53 並目ねじ部(放電電極の一部)
54 細目ねじ部(放電電極の一部)
A2 リード角(リード)
B 被転造素材
B1 ねじ(2重ねじ)
【出願人】 【識別番号】000103367
【氏名又は名称】オーエスジー株式会社
【出願日】 平成19年2月20日(2007.2.20)
【代理人】 【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー


【公開番号】 特開2008−200710(P2008−200710A)
【公開日】 平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願番号】 特願2007−39316(P2007−39316)